ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

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匿名ユーザー

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本日も爽やかな日差しが照り、吹くそよ風もまた心地よく感じた。
そんな午前中に、またも才人はタライに両腕突っ込んで洗濯というお決まりの仕事をやっつけていた。
「あー。やっぱ平和が一番だよなぁ」
のどかな陽気の中、殴り合いも殺し合いもない日々の連続こそ幸せなのだと。
才人は爺さんのように達観していた。
才人がギーシュとジャイロの決闘に横槍を入れ、信じられない活躍をしたと、シエスタから聞いたころには、既に数日が過ぎていた。
気がつくと、ベッドの上にいて、右腕は板でしっかりと固定され、全身の擦り傷や打撲には、湿布や包帯が巻かれている。
「……ん。 ここ、は……?」
目が覚めて、周りを見渡す。首をひねっただけで、全身が小さな痛みを訴えた。
「気がつきましたか? サイトさん」
寝ている才人の隣に、シエスタがいた。
「どうして、ここに?」
「ミス・ヴァリエールに頼まれまして、サイトさんの看護をさせていただきました。どこか痛むところはありませんか?」
「あ……、うん。大丈夫だよ、このぐらい」
むっくりと上半身を起き上がらせ、才人が丈夫さをアピールする。
「無理はなさらないでください。サイトさん、先日まで大変だったんですから」
「平気さ。大変って、そんな大げさな」
笑って答える。

「いいえ。サイトさん。昨日は本当に危なかったんですよ。学院のお医者様にも『危篤ダ。今夜ガ山ダ』って言われたんですから」
危篤、ですか。さすがにそれは洒落にならないな、と才人も苦笑いを浮かべた。
そのシエスタの後ろに……、机にうつ伏せて、小さく寝息を立てる。ルイズの、姿があった。
「ルイズ……?」
「そっとしておいてあげてください。ルイズさん、今朝方までほとんど寝てないんです。サイトさんの容態を、とても気にしていましたから」
「そっか……。なんだ、こいつ」
いいとこあるじゃんか。と、才人は眠るルイズの顔を見て、言葉には出さず、彼女に感謝した。
「あれ? ……なあシエスタ。ジャイロは?」
部屋を見渡す。ここに、ジャイロがいなかった。
「ジャイロさんですか? きっと図書館のほうじゃないですか。昨日から随分、入り浸っているようでしたから」
「図書館? ……え? 昨日から!? だってあいつ、俺より大きな怪我してたのに、もう動けるのかよ!?」
才人が記憶している最後のジャイロは、胴体に穴が開き、瀕死の重傷者そのものである。
なのに、自分より早く回復して、普通の生活に戻っているとは。
驚きを通り越して、呆れるしかなかった。

――ギーシュが大きく、吹っ飛ぶ。 口から血を吐き、ギーシュが仰向けに倒れた。
「ギーシュ!」
モンモランシーが、叫ぶ。取り乱したように駆け寄ろうとした彼女を、学友達が抑える。
「離して! 離してよ! ギーシュ! ギーシュ! お願い! 返事をしてぇ!」
悲壮な表情は、それを見ている者も、辛い。
勝負は、決した。だがジャイロは、さらにギーシュのほうへ歩み寄る。
「……何するの!? 止めて! これ以上ギーシュに何するのよぉ!!」
モンモランシーが必死に腕を伸ばして、ジャイロの行動を止めようとする。ジャイロがギーシュの胸に手を当てる。少しの間、確かめるように触れると、黙って立ち上がり、踵を返す。
「心配すんなお嬢ちゃん。あの小僧はまだ生きてるぜ」
モンモランシーの前を通り過ぎたその時、そう簡単に言った。
「ほ、ほんとう……?」
「胸骨が折れてるから、まったく無事とは言えねーがな。ギプスしずれーとこだから、しばらくは笑ったり咳き込んだりすりゃ苦しむだろうが、命に別状はねェ。」
ま、心配なら医者に見せてやんな、とジャイロは笑って、金歯を見せた。

モンモランシーが手を振り切って、ギーシュのもとに駆け寄る。彼が言った無事という言葉を、自分の目で。自分の手で、確かめたかった。
そして彼の顔がはっきり見えるところまで近づいて――。
「ギーシュ様! 大丈夫ですか!? しっかり! しっかりなさってください!」
彼女より早く、ギーシュに駆け寄る、女が、一人。
マントの色は茶色。……ということは一年生。自分より、一学年下だ。外見では、そこまではわかる。そして、顔立ちも、幼さが残りはするが、まあまあ、整っているんじゃないの? と、彼女は思った。
対して、急遽この場に乱入する形になった、一年生の少女。
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異様な気配に、後ろを振り向く。
二年生の黒のマントを風になびかせながら、ものすごい顔で睨んでくる、女が一人。
女性と言うものは、なぜかこういう修羅場になると、状況判断力は飛躍的にアップするもので。
彼女達は――、共に、心で理解しあって、しまった。
『僕が生涯愛する人は、君唯一人』
そんな聖人のような言葉、吐いておきながら。
「嘘吐きぃぃぃぃっ!!」
「信じてたのにぃっ!!」
乙女達の渾身の一撃が、彼の中心に、見舞われる。
その音を聞いて、思わずマリコルヌは、押さえてしまった。

ふらふらになりながら、ジャイロはルイズと才人、そしてシエスタの元に戻ってくる。
「ちょ、ちょっとあんた! 大丈夫なの本当に!?」
ルイズが、すっかり血を流しつくしたような肌色のジャイロを見て、そう言った。
「あー……? まあちーとヤベェかもしんねーな……。緊急だが手術をする。シエスタ、裁縫針とか持ってねーか。ピンでもいいぜ」
ジャイロが、シエスタに、そう言うと、懐から、荒く巻いただけの糸を取り出す。
「あんた……。一応聞くけど、それ、何?」
「何って見りゃわかんだろ。糸だ糸。コレで開いた穴塞ぐんだぜ……ごふっ!」
げしっ。
ルイズの前蹴りが、ジャイロの鳩尾に突き刺さる。
「あんたバッカじゃないの!? そんなきったない糸で傷縫ったら、死ぬわよホントに!」
ルイズが、そう言って、ジャイロから糸を取り上げる。
「お、オイ! なにしやがんだオメー! そりゃそんじょそこらの糸とはわけが違うんだ! それで縫えばこのぐれーの傷治んだよォ。いいから返せコンニャロー」
「あんた常識もなにもあったもんじゃないわね! そんなデマカセ幼児だって信じないわよ! いま医者呼んであげるから、そこで大人しくしてなさい!」
「……あ。ヤベー……。おチビ……。オレなんか……スゲー寒気してきた……。目ェ霞んで寒ィーんだけどよォー……」
「ふん! そんなデマカセ言ったって返さないわよ!」
「なんかオレ……スッゲーヤベーんじゃねーかなァー……ぁー……ぁ」
どさり、とジャイロがぶっ倒れた。
「ちょ、ちょっと!? あんた冗談も大概にしなさいよ! ほら、はやく起きなさいよ!」
「あの……、ミス・ヴァリエール? ジャイロさん、白目剥いてますけど……」


ジャイロ・ツェペリ   → 出血多量のため気絶。学院の専属医に『今夜ガ山ダ』と言われる。
平賀才人        → 骨折と打撲の他、謎の昏睡状態に陥る。学院の専属医に『今夜ガ山ダ』と言われる。
ギーシュ・ド・グラモン → 胸骨骨折。睾丸二個潰れる。学院の専属医に『男トシテオワタ』と言われるが、後に二個残っていることが判明、事無きを得る。

(To Be Continued ⇒  )

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