ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

影の中の使い魔-3

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匿名ユーザー

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サモン・サーヴァントの儀式の終わった日の夜、ルイズは眠ることが出来ずにいた。
目をつぶっても昼間に起きた出来事が頭の中を駆け巡る。気がついたら東の空から太陽が昇り始めている。
あの後使い魔が消えたことで最もショックを受けていたのは意外にもキュルケだった。
今まで見たことない素直さでルイズに謝ってきたのだ。正直どう反応すればいいか分からなかったので適当に流しておいたが。
ルイズが思いのほか冷静だったのは、自分の手元に召喚した奇妙な箱が残ってたからだ。
今はもう火は出てない。あの時の騒ぎで気づいたときにはもう消えていた。だが壊れたわけではないようだ。

たぶんこの箱から火を出せば再びあの使い魔は現れる。
そして再び私を襲うんだろう。向こうはこっちの事を主人と認識してないようだ。
「あ~もう。どうしよう」
思わずつぶやく。が、そういいながらも心の中ではひとつの覚悟を決めつつあった。
今まで誰よりも努力してきたつもりだが、それでも報われず魔法が成功したためしはない。
その自分が始めてほぼ成功したと言う事ができたのだ。後もう少し。
後はあの使い魔に私を主人と認めさせる。そしてどのメイジにも負けない信頼関係を作る…!
(点火「する」。ではなく点火「した」なら使ってもいい!)
ルイズの手の中で火が踊った。

また後ろに現れるのではないかと思って、あらかじめ背中に壁を付けておいた。
世の中には背中を見られたら死んでしまう奇病があるという話を意味もなく思い出す。
予定通りと言うべきかどうか、使い魔は今度は自分の前に現れた。
昼間と全く同じ格好の黒尽くめの亜人。そして。
「おまえ…『再点火』したな!」
第一声も全く同じ。
違うのはそれに立ち向かうようにして杖を握りしめるルイズ。
「ええ。『再点火』したわよ」

ドドドドドドドドドドドドドドド…………

(やっぱり影だ……)
さっきからその場をうろうろするだけの使い魔を見てルイズは確信する。
昼間の出会いのとき心に引っかかったいくつかの単語。
再点火、チャンス、選ばれるべき者、影。
キュルケはこの使い魔がルイズの影に触れた後で、ルイズが叫び始めたと言っていた。
今回はあらかじめ自分の影が壁に向かうようにロウソクを立てておく。
余計な影ができると困るのでカーテンは閉めておいた。
これらは自分の影を守る為の作戦だったのだが、別の事実も浮かび上がらせることになった。

(こいつ。さっきから影の部分しか歩いてない)
使い魔がさっきから歩いているのは、ロウソクの光によって出来た家具の影の部分だけだった。
ひとまず自分は安全地帯にいることを認識したルイズは、使い魔に話しかけてみる。
「あんた名前は?私の使い魔なんでしょ?」
使い魔は動きを止めこっちを見ると答えた。

「チャンスをやろう!お前には向かうべき二つの道がある!一つは生きて『選ばれるべき者』への道!」
(ど~しろっていうのよ)
全く会話にならない。こいつはもしかしてこれ以外の言葉を知らないのか?思わず嘆息してしまう。
ああ。サモン・サーヴァントはもうやり直しできないし、使い魔は話を聞かないし。つまりハサミ討ちの形になるな…
…………だんだんむかっ腹がたってきたわ。なんで私だけ使い魔のためにいろいろ考えて寝不足にならないといけないの?
逆じゃあないのか?選ぶのは私で、寝不足になるのはこの使い魔のほうなんじゃないのか?
ルイズは相変わらず演説を続ける使い魔に向かって足を踏み出した。

使い魔がルイズの影に触れたと思った瞬間、使い魔に肩を掴まれている状態になっている。
昼間の再現。だからルイズはあわてなかった。
「チャンスをや「うるさい!!!」」
また同じことをリピートしようとする使い魔に一喝する。
「意味わかんないこと言ってんじゃないの!アンタは私の使い魔なの!私がご主人さまなの!」
ルイズはその目をけっして使い魔から離さず睨み続ける。
使い魔の動きが止まる。そして。
「チャンスをやろう!お前には「だからもうそれは聞いた!!」」
使い魔の動きが再び止まる。
「チャン「うるさい!!!」」

両者の動きが再び止まった。相変わらず使い魔の感情を読み取ることはできない。
どれくらいその状態が続いたか分からない。ルイズにはそれこそ永遠のように感じた。だが睨みは効かせ続ける。
使い魔はしばらくするとルイズの肩からトンと押すように手を離した。
よろけて転びそうになる!と思ったのは一瞬で、気がつくと少し離れた場所に立っている。

(今のは『私の体』を掴んでたんじゃないのね)
息を落ち着かせながらそんなことを考える。
使い魔の方を見てみる。雰囲気が変わったとは思えないが、もう襲ってくる様子はないようだ。
「あんた名前は?」
答えは返ってこない。
またひとつ嘆息。
「じゃあもうここは譲歩して私から言うわ。ありがたく聞きなさい。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
反応はない。
「あんたを選んだ者よ」
やっぱり反応はない。
どうやってこの使い魔と信頼関係を作る?というよりコミュニケーションを取る?……ルイズは頭を抱えた。そのとき。

「ブラック・サバス」
「え?」

とりあえず名前は知ることができた。いやブラック・サバスが名前なのか本当は分からないのだが
この際細かいことは考えないでおく。とりあえず一歩進んだ。ここから少しずつ進めればいい。努力には慣れてる。
この使い魔は何ができるのか。とりあえず簡単な命令からやってみようと思った。
「洗濯とか分かる?コレ」
ルイズは洗濯物が入ったカゴをブラック・サバスに渡す。
使い魔はそれを受け取ると…………なんの躊躇もなく食べた。
え……ルイズはその行動にしばらく絶句してしまう。なにをやったこの使い魔は!?

「何やってんの!すぐ出しなさい!このバカ犬!」
もう信頼関係なんて言葉は頭から飛んでいた。ブラック・サバスは我関せずといった雰囲気でルイズを見下ろしている。
「どうしたのルイズ?」
鍵がかかってたはずのドアが開き、廊下からキュルケが入ってくる。

と、その瞬間ブラック・サバスの姿が消え去った!
「あ!」
思わずルイズは声をあげる。あわててキュルケの横を抜け廊下に出て左右を見渡す。
わずかにだが廊下の端を影の線が伸びている。
もしあれが影上でしか動けなくてもこの上を伝って行けば相当移動できるだろう。
さらに時間が立って影の範囲が大きくなればほとんど学校中を移動できるのでは?
「ちょっとルイズどうしたのよ」
後ろを見るとキュルケが不思議そうにこちらを見ている。その足元には赤くてでかいトカゲが。おい尻尾燃えてるぞ。
「ああ、この子が私の使い魔のフレイムよ。あのさ~、えーと、あんたの使い魔は……やっぱ」
キュルケが珍しく言葉を濁すように話している。どうも自分がルイズの使い魔を殺したと勘違いしているようだ。
最近珍しいキュルケばっか見るな。なんてルイズは思いながらも
「使い魔に逃げられた」などと言うことも出来ずに、ただ廊下の先を見つめていた。

汚れたエプロンなどを洗濯するために水汲み場へ向かうメイドが一人。シエスタである。
今日もいい天気だ。というかよすぎる。
シエスタは少しでも日の光から離れるため校舎の日影の部分を歩いていた。
しかし水汲み場まで残り数メートルは日影がない。それに水汲み場自体は影になるところが無く、日に照らされている。
それでも太陽の光を反射してキラキラと光る水汲み場を見ると、涼しい気持ちになる。
水汲み場へ歩いていく。回りには誰もいなくて、付いてくるのは自分の影だけ。

「お前にチャンスをやろう」
後ろから声が聞こえヒッと悲鳴をあげてしまう。あわてて後ろを振り向く。
そこには黒い帽子に黒いマント、人間とはとうてい思えない顔と体、そしてその右手にはなぜか洗濯かご。
見詰め合うこと数分。
「あの……何かようですか?」
根負けしたシエスタは、目の前の怪しさ爆発の存在に声をかけた。

15分後そこには2人並んで洗濯しているシエスタとブラック・サバスの姿が!
「私ここで使用人をやらさせてもらっています。シエスタと申します」
「…………」
「あ、この洗濯道具は自由に使っていただいてけっこうですよ」
「…………」
「そ、その格好暑くないですか?」
「…………」
「ウミネコだ。ありゃーカモメじゃねぇーぜ。ウミネコだ。どうやって見分けるか知ってるか?」
「…………」

(…………空気が重い。エコーズACT3ってレベルじゃねーぞ!)
横からの妙なプレッシャーに思わず泣きそうになる。
黙々と洗濯をする隣の亜人に、なにか他に話題はないかと頭を回転させる。
「あなたはどなたの使い魔なんですか?」
……やはり返事はない。もう黙ってさっさとしあげてしまおう。そう思ったとき
「ルイズ」
驚いて横を見るが、使い魔は相変わらず手は動したままこっちを見ようとはしない。
「ルイズ……ミス・ヴァリエールの使い魔なんですね?」
シエスタは会話が繋がったことに驚き、思わず声が大きくなる。

すると急に辺りが暗くなる。何事かと上を見ると巨大なドラゴンが空を通過していく。
「すごいですね。あれも使い魔なんでしょうか。わたし龍は初めて見ました」
ひとり興奮しながらも隣のサバスに話し続ける。
しかし、横を見ると使い魔はいなかった。洗濯物とカゴも消えていた。

To Be Continued 。。。。?

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