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ゼロのパーティ-23」(2007/10/31 (水) 20:52:31) の最新版変更点

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「きゃああああああああああ!」 30mはあろうかというゴーレムの落とす影は、強烈なプレッシャーになる。 その重圧に、最初にキュルケが悲鳴を上げた。 そしてその悲鳴を合図に、ここにいる全員が蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく。 未だ、身体に縛られて思うように動けない、僕と才人を除いて。 「おい、おいていくなよ!」 才人が去っていくキュルケの背中に叫んだ。 しかし、キュルケはそのまま本塔の方へと走り去っていってしまう。 自力で何とかするしかないか。 幸い、僕にはスタンドがある。 パワー自体は強くないが、このくらいの縄、刃物さえあれば切断は可能だ。 まず、僕は今この広場にある刃物は、僕の槍、デルフリンガー、キュルケの買ってきた剣の3つだ。 デルフは論外だ。威力は兎も角、切れ味は鈍い。第一、今タバサの竜がくわえているしな。 次にキュルケの買ってきた剣。コレが一番の候補だが、これまたタバサの竜がくわえたままだ。 となると、切りづらいが僕の槍しかないか。 僕はハイエロファントを、立てかけておいた槍に向かって伸ばす。 と、それに合わせたかのように、我に返ったルイズが此方へ駆け寄ってきた。 「な、何で縛られてるのよ! あんた達!」 「お前等が縛ったんだろうが!」 兎に角、駆け寄ってきたルイズは、僕達の縄に手を掛け、それをほどこうとする。 しかし、男二人を縛り上げている縄だ。そう簡単にはほどけないだろう。 案の定、ルイズはその縄の前に悪戦苦闘している。 そうこうしている合間にも、ゴーレムの影は刻一刻と此方に迫り来る! 僕も急ぎ、槍の穂先を外そうと試みるが、今に限って中々外れない。 クソッ! こんな時に! 「ルイズ! お前だけでも逃げろ!」 「く、このロープ!」 良し、何とか外れた。 が、今から槍の穂先をたぐり寄せても、どうやら間に合いそうにない! そんな僕の頭に、いつぞやと同じような選択肢が浮かぶ。 3択-一つだけ選びなさい  ①ハンサムの花京院は突如、起死回生の案が思い浮かぶ。  ②誰かがきて助けてくれる。  ③踏みつぶされてペシャンコ。現実は非情である。 僕の理想は2だが、キュルケは既に逃げ、タバサは既に上空。どうがんばっても間に合いそうにない。 ルイズは僕らと同じ立場だから、アテにはならない。 となると1しかないが、ハイエロファントで引っ張り上げようにも、3人同時は辛いし、何よりとっかかりになる物が無い。 となればッ! 「エメラルドスプラッシュ!」 僕は自分めがけてエメラルドスプラッシュを放つ。 これなら多少怪我は負うが、命は助かるッ! 「え!? ……きゃあ!」 「お、おいちょっと待……うぐあっ!」 「ぐうッ!」 とっさに撃ったエメラルドスプラッシュは加減が効かず、縄を引きちぎって、僕ら三人の身体は大きく宙に舞い上げられた。 思わず食いしばった歯が唇を切ったのか、口内に血の味が広がる。 が、そんな痛みは全身の激痛に比べれば……ッ! 直後、地面に身体が叩きつけられた衝撃に加え、才人、ルイズの身体が、僕の上へとのしかかる。 その衝撃に思わず、意識が飛びそうになった。 が、何とか意識を一枚繋いで、二人の様子を確認する。 才人や、ルイズは落下の衝撃が弱まった御陰で、意識を持っている様だ。すぐには動けないだろうが、逃げることは出来るだろう。 とりあえず、首の皮一枚だが、命は繋がったか。 幸い、ゴーレムの動きがのろく、大雑把なのでもううっかり進路上にでも出てしまわない限り、大丈夫であろう。 が、身体の痛みはどうしようもないな…ッ 何とか、未だに激痛のする身体を持ち上げ、僕はゴーレムの様子を見る。 先程までは影しか見えなかった、そのゴーレムはいやにずんぐりむっくりな体型をしていた。 そしてその肩の所には、黒いローブをまとった人影。おそらくアレが、侵入者。つまりこのゴーレムを操っているメイジだろう。 残念ながら、ローブのフードを深くかぶっている為、顔は解らない。 わざわざ姿をさらしているのは、自信の現れだろうか。 其奴はこっちをちらりと見、どうでも良いかと判断したのか、僕らを無視して本塔の方へと近づいていく。 「痛ぅ… 何なのよ、もう!」 「ぐぅっ…… 花京院! もう少し、やり方があるだろ!」 「助かっただけマシです。贅沢を言わないでください」 「お前なぁ…」 どうやら二人も起きたようだ。 二人は震える体を動かして、互いに肩を貸すような体勢でゴーレムを見上げる。 「しかし、なんなんだよ。あれ」 「わかんないけど、巨大なゴーレムね」 二人が見たままの感想を述べた。 あんなに大きくては、生半可な城壁では意味がないだろう。 「あんなデカイのアリかよ……」 「あのサイズのゴーレムを操れるなんて、トライアングルクラスのメイジに違いないわね」 トライアングル。確か、分け方としてはスクウェアの下のクラスだったか。 「アレでトライアングル…… ということは、スクウェアはもっと大きいゴーレムを操れるんですか?」 「サイズ的にはあのくらいが限度だけど、スクウェアクラスとなると、もっと機敏だったり、全身が鉄で出来てたりするわね」 アレよりも凄いのが居るというのか。 全身土で出来てるとはいえ、重量だけならン百トンぐらいありそうなのだが。 常識が通じない世界だと思ったが、まさかここまでとは。 まさしくファンタジーだな。 しかし、一体何が目的で…… 「どうして、こっちの方に来るのよ!」 キュルケの悲鳴にも似た大声によって、僕の思考は中断される。 見れば、キュルケが丁度ゴーレムの進路上に突っ立っていた。今にも踏まれそうな状況だ。 上空のタバサも気がついたのか、キュルケを助けようと急降下しているが……アレでは間に合いそうにない。 だが、そこは丁度さっきエメラルドスプラッシュを放った場所と、今僕がいる場所の一直線上。 つまり、 「僕がスタンドの力で、簡単に引っ張り上げられる! 『ハイエロファント・グリーン』ッ!」 引っ張られたキュルケの身体は、低空で風を切るようにして、僕達の方へ引き寄せられた。 「大丈夫ですか?」 「え、ええ。助かったわ……」 キュルケは少し呆然とした感じの表情で、僕の顔を見ている。 しかし、とっさのことだったので、引っ張る時にスタンド越しではあるが、思いっきりキュルケのムネを触ってしまった。 その、何というか、大きいことは良いことだと思います。 柔らかくて、張りがあって…… って、何を考えている、僕はッ! そうやって、僕の思考があちら側に行っている間に、巨大なゴーレムは本塔の辺りに付き、その大きな上体を反らして、拳を思いっきり本塔の壁に叩きつけた。 ッ!? 本来、見えないはずの衝撃が、見えたような錯覚を覚える程の強さを伴い、空気を伝わって広場全体に広がる。 まるで耳栓をしている人間の横で、銅鑼を叩いたような感じである。 その衝撃が広場に伝わりきったのを確認して、黒ローブの人物は腕を下げる。。 すると、召使いが王の命令を聞くようにゴーレムはゆっくりと本塔から腕をどけた。 「なッ!」 そこで僕の目に入ったのは、傷一つついていない壁。 あの衝撃を耐えられる耐久度。一体、何で出来て居るんだ? 驚かずには居られない! それは黒ローブの人物にとっても意外なことだったらしく、しばし、その動きを停止させていた。 そしてしばし間をおいて、ゴーレムはもう一度上体を捻って、パンチの体勢を造った。 今度は先程と違い、振り上げられたその腕が、鈍い光を放っている。 明らかに土じゃあない。 あの光沢は、金属の物だ。 「……宝物庫!」 突然、ルイズが声を上げた。 宝物庫。いったい何のことだ? 「思い出したわ。ここは丁度、宝物庫の裏手になるのよ」 「ってことは、つまり泥棒か」 「凄く大胆な泥棒ね」 「盗賊といった方が正しい気がします」 成る程、あくまで盗むのが目的だったから、僕達を無視して本塔に近づいた訳か。 音がしなかったのは、この大胆な盗難行為を隠蔽するためか、兎に角、人を寄せない為なのは間違いない。 だとすれば、ここに僕らが来たのは相手にとっては大誤算ということなのか。 と、すると、次はどんな行動を取ってくる? そう思っている内に、二回目の衝撃が辺りに走る。 今度は先程より強烈だ。 しかし相変わらず、壁には傷一つついていない。 それを見、黒ローブの人物は突然、此方に向きを変えた。 今度は此方を確認する。という感じではなく、明らかに此方に狙いを変えたといった風である。 どうやら、強行逃走に目的を変えたようだ。 「あんた達も運が無かったねぇ!」 黒ローブの人物が声を上げ、右手を振り上げた。その手には、教鞭程度のサイズの杖が握られている。 それに合わせ、ゴーレムも同じように右腕を振り上げる。 「恨むのなら、こんな所にきちまった、自分の不運を恨みな!」 その言葉と共に、ゴーレムはその振り上げた右腕を振り下ろしてきたのだった。 To be contenued……

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