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ゼロのパーティ-21」(2007/09/18 (火) 22:19:28) の最新版変更点

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二度目の虚無の曜日。 今日ばかりは僕も衛兵の仕事が無く、才人もルイズについていく授業がないので、僕たちにとっても休日なのだ。 もっとも才人は一昨日に、授業中に他の女の子のスカートをのぞいているということで、暫く授業に連れて行く事はしないとルイズが言っていたので、既に昨日から休日状態だが。 この二度目の休日を前にして、特にやることのない僕らは、いつものように厨房で朝食を取っていた。 既にご飯抜き期間は終わっているのだが、僕たちの貧相な食事が改善されたわけではないので、未だに食事事情は厨房に依存している。 衣食足りて礼節を知る。それらをキチンと行わないで、頭ばかり下げろと言うルイズは、実に横暴である。 ああいう相手には、絶対に頭を下げたくない。 頭というものは、そう簡単に下げられるものじゃあないんだ。 それはともかく、いつも厨房に世話になって場かりでは心苦しいので、何か手伝いたいと申し出た結果、 「才人、ちゃんと拭いてください。まだ濡れているじゃあないですか」 「そんなこと言っても、うまくできねぇんだよ」 「ですから、コントローラーの十字キーを回すようにして……」 「十字キーって、いったい何ですか?」 「シエスタは気にしないでください」 現在の皿洗いに至っているのである。 正直、迷惑にならず手伝えるのがコレと、後はウェイターしか無かった所為なのだが。 ちなみに皿洗いはシエスタも含め、ほぼ残りの人数全員でやっている。 「こんなもんか?」 「そうそう、そんな感じです」 才人が拭いた皿をこっちに見せてくる。先程までとは、湿り気が格段に違う。 ちゃんと親指を使うか使わないかで、皿洗いの加減は大きく変わるのだ。 ちなみに才人が一番少なく、僕が一番多く洗っている。 「ノリアキさんて、器用なんですね」 「まぁ、これはコツさえつかめればすぐ出来ますから」 といいながら、スタンドを使いながら洗っているので、早くて当たり前なのだが。 「ほんと、ノリアキさんて何でも出来るんですね」 皿洗いが終わった後、他の厨房の人たちの休憩に合わせて、僕らも彼らの話に混じる。 相変わらず、僕は才人と違って距離を取る人間が少なくない。 魔法が使えると勘違いされたままなので、一歩引かれているのはそうだが、それ以上に、やはりスタンドが見えてないのだと考えてしまった時、ひどく冷めてしまうのが原因なんだろう。 そんな僕に対しても、気軽に話しかけてくれたりするシエスタの存在に僕は頭が下がる思いである。 馴染み深い容姿といい、シエスタという女性は人の心を和ませる女の人だ。 側にいるとホッとする気持ちになる。 こんな事を言うのも何だが、恋をするとしたら、あんな気持ちの女性がいいと思います。 それに、オオホーン! オホン! オホーン! ムネ オオホーン! も綺麗ですし。 そういうわけで僕はこの時間、シエスタと他愛のない話をしていたのだった。 ちなみに才人はその間、主にマルトーさん達コック集団に絡まれている。 これも一重に、マルトーさんの才人贔屓のたまものなのだが。 安らぐ時間ではあるが、流石にいつまでも厨房にいるわけには行かない。 邪魔をしてしまっては、せっかく手伝いを申し出たことも無駄になるからな。 僕たちは程々で、厨房に別れを告げ、広場へと向かう。 日課となっている武器の素振りを行うためだ。 この素振りは、意外なことに才人の方が言い出したことであった。 才人が武器を持てば、左腕のルーンが光り出し、身体能力が上昇するのは既に解っている。 それを才人自身が試したいと言い出して、素振りや打ち込みを日課として加えたのだった。 まぁそういうわけで、広場にたどり着いたは良いが、肝心の練習スペースがなかった。 具体的にいうなら、いつものように屯所近辺の広場で練習をしに来た僕らを、使い魔、使い魔、使い魔達の群れが迎えたからだ。 どうやら休みということで、学園の生徒達が使い魔の羽を伸ばさせているらしい。 「サボろうか?」 「言い出したのは才人の方でしょう。……確か、本塔脇の広場なら、人も居ないはずです」 そういうわけで、さぼりたそうにチラチラ広場を横目に追う才人と共に、僕は本塔脇の広場へと進路を変えた。 まぁこの一週間、暇な時間はいつも身体を動かしていたため、その気持ちは分からなくもない。 別に、目的があってこの行為に及んでいるわけじゃあないしな。 たどり着いた本塔脇の広場には、案の定、人影はない。 平日にこんな所による人間なんていうのは、まず居ないからな。当然だろう。 そういうことで、才人は早速デルフリンガーを手に取り、素振りを始める。 素振りをする必要のない僕はこの時間を、いつものように槍を加えたスタンドの動き方を模索する時間として使う事にした。 己を知るという事は、なかなか良い教訓である。 ゲームだって、キャラの癖をよく知っていれば、CPUに負けることなんて無いのだ。 格ゲーの実力だって、連コインした数だけ強くなるのだから。 「ハッ!」 とりあえず、いつものように適当に槍を振ってみる。 流石に某無双のように、いとも簡単に振り回すことは出来ない。 スタンドを使えば身長的には何とか足りるものの、余り速く振り回せないため、コレなら何も持たずに動いた方がマシだ。 どうしても使うというのなら、足場か力点の一つとして使うのが、一番効果的だろう。 穂先をもって、殴りかかるのもいい。 パワーの無いスタンドだが、これならばそこそこにダメージを与えられるだろう。 ただ槍自体が重いので、握っている間は、大きく人型を崩せないのが問題だな。 試しに槍の穂先を握って、標的用に用意した木片へと突き刺してみた。 ガッシリと刺さって、ちょっとやそっとでは抜けそうにない感じである。 これならばつかむ所が無いような場所であっても、ハイエロファントを使った移動が出来る。 その後、色々試した結果、大体一回で最大移動距離は100mぐらいと言う結論に至った。 僕はその距離を身体によく教え込み、槍の穂先を元の柄へと戻す。 と、才人の方もどうやら素振りを終えたようだ。汗をぬぐいながら、僕の方へと歩いてくる。 「どうでしたか?」 「全然ダメ」 才人はそういって、思いっきりため息をついた。 このやりとりも、既に素振りを始めた時から、ほぼ毎日繰り返されているやりとりだ。 しかしいつものように、手元にデルフリンガーがない。 「相変わらず、ちゃんと切れねぇんだよなぁ」 僕は才人が先程から打ち込んでいたモノ……やや太めの木に藁を巻いて、人の胴体くらいにしたものを見る。 その木には、所彼処に斬りつけた後が残っているが、実際に切れている箇所は殆どない。 一カ所だけ、切断寸前まで切られた箇所があるものの、そこにはデルフリンガーが食い込んだままとなっている。 何があったのだろうか? 気になって、僕は才人に尋ねてみた。 「何故、デルフリンガーが刺さってるんですか?」 「抜けなくなったんだよ」 成る程、スッゲー解りやすいッ! この上ないシンプルな説明に、そう思うが、僕が聞きたいのはそんな事じゃない。 聞きたいのは、どういう過程で彼処に刺さったか、だ。 「質問を変えよう。どうやって、あんな抜けないような所まで、デルフリンガーを突き刺したんだい?」 「いや、決闘の時みたいにスッパリいくと思ったんだが、中々切れねえからさ。感情にまかせて思いっきり斬りつけたらさ、腕のコレがパァーって光って、いきなり身体がこう、軽くなってさ、グサーッと……」 「それはつまり、こういう事ですか? 『いらいらしてた自分の心境に合わせて、だんだん力が強くなった』……と」 「Exactly(そのとおりでございます)」 成る程。精神状態に合わせて、ルーンは発光の具合を変えるのか。そしてそれに併せて、才人の力も上昇すると。 そういう所はスタンドに近いな。 改めてコレがなんなのか、少し気になる所だ。 この世界のものであるのは間違いないのだが。 ……以外と、デルフリンガー辺りが何か知っているかもしれない。 「デルフ。何か解りますか?」 そう思ってデルフリンガーに喋りかけるも、返事はない。 そういえば、先程から一度も喋っていなかったな。 何か、喋れない理由でもあるのか? 「先程からデルフが何も言わないのは、コレが原因でしょうか?」 「……多分、そうじゃねえか?」 よく見ると、鍔の先の部分が木に引っかかってカチャカチャ出来ないようだ。 不思議剣の癖に、カチャカチャしないと喋れないのか!? 僕らはデルフの、その良く解らないメカニズムについて考えようかと思ったが、このままでは余りにもデルフが可愛そうなのでやめておく事にした。 「ともかく才人、何とかしてデルフをここから抜きましょう」 「でも、どうやって抜くんだよ」 「ここまで食い込んだのなら、その逆も出来るはずです。僕ら二人で、思いっきりデルフを引っ張りましょう」 「でも握る所、柄しかないぜ?」 「忘れましたか? 才人。僕には『コレ』があります」 そういって僕はスタンドを発現させる。 このハイエロファントを使えば、力を無駄なく引っ張ることに使えるはずだ。 具体的には、才人がデルフリンガーの柄を持ち、僕はハイエロファントで鍔の頭、やや刃がむき出しになっている箇所をつかむ。そして僕はそのハイエロファントの手を引っ張るという方法だ。 普通なら、そんな所は危ないのだが、デルフは錆び錆びの上、スタンドはスタンドでしか傷つけられない。気にする必要もないだろう。 「それでは才人。オー・エス! で同時に力を込めて引っ張りましょう」 「何か綱引きみたいだな。……解った」 僕は一つ、コホンと咳払いをして呼吸を整え、ハイエロファントの触手を強くつかむ。 普通は、生身の人間からはさわれないのだが、スタンドは精神の力。出来ると思えば出来るのだ。 「では」 「オー・エス!」 「オー・エス!」 「「オー・エス!」」 「「オー・エス! オー・エス! オー・エス! ………」」 しかし、未だデルフリンガーは木から抜ける気配がない。 「才人、もっと気張ってください!」 「コレで全力だつーの!」 「呼吸を調整すれば、力がもっと出るはずです」 「つっても、どうすんだよ」 ……確か、記憶によれば…… 「一秒間に十回呼吸を…」 「できるか!」 間違えた。コレはジョースターさんがいっていた、波紋の呼吸法だ。 寧ろ出来るなら、称えてやってもいいと思う。 そうではなくて、誰にでも出来そうなこと…… 「二回、鼻で息を吸って、口から一息に空気を吐くんです。肺の中の空気を1ccも残さないように!」 「…後半のは、関係ねえ気もするが…… 解った!」 これなら、息が荒くなることもなくならず、リズムに合わせて力を入れることが出来る。 僕もその呼吸に合わせて、力を込める。 「……」 「アッ!」 端から見れば、僕はパントマイムをしているようにしか見えないと気がついたのは、引っ張ってる最中に、通りかかった女性……確か学園長の秘書とかいう、ロングビルの奇異の視線を浴びた時であった。 何もない所を、力一杯、息を荒くして引っ張る男というのは、さぞかし奇異に見えるだろう。 いや最悪、構図的に、才人の後ろ姿、さらにいえばお尻を見て、興奮していたように見えなくもない。 何でこんな所に居るんだ! と心の中で毒づく。 「まぁ、人に言えない趣味は色々ありますものね」 そういいながら、ロングビルは僕に哀れみの視線を向けてくる。 止めろ! そんな目で僕を見るな! 何でいつも僕がこういう目に遭うんだ! こういうトラブルは才人の役目だろう! そう思いながらも、僕は弁明の言葉を考えるが、いいものが思いつかない。 そもそもスタンドがらみの事で、いい言葉が思いつくというのなら、元の世界でも疎外感なんて感じるわけがないだろう。 そうこうしている内に、ロングビルはそそくさとこの場から立ち去っていった。 最後まで僕に哀れみの視線を向けながら。 僕と才人は、何も言えずにその後ろ姿を、ボケーッと見送った。 しかし、何故彼女はこんな所にいたんだ? ここは本当に何もない所だ。偶に人が居ないことを利用して、色々やっている人間も居るようだが、彼女もそういう類なのだろうか? まぁ、今の僕には関係のないことだ。 それより! 「才人。少し、その木から離れてください」 「花京院、何をするつもり……」 僕はスタンドの手に精神を集中させる。 それに併せて、破壊のエネルギーが、雫となってその腕からポタリポタリと流れ出す。 「おい! それじゃデルフも巻き込まれるだろ!」 「僕はバカではありません。自分というものを知っている」 僕だって、才人が素振りをしている間に、いろいろとスタンドについて試してきたのだ。 再び腕に集中された破壊のエネルギーに、神経を集中させる。 既にエメラルドスプラッシュを放つのに、十分なエネルギーは溜まっているが、このままでは才人のいう通り、デルフリンガーを巻き込む。 だから僕は、その力をさらに一点に集中させ、よりピンポイントに対象を破壊する姿をイメージする。 記憶の僕にも出来たことだ。僕にだって出来無いことはない。 そして心を落ち着け、その力をエメラルド色の固まりへと変えて、デルフリンガーを挟んでいる木に叩き込むッ! 「『エメラルド・スプラッシュ』!」 拡散ではなく、密集されて放たれた、その破壊のビジョンは、デルフリンガーを挟んでいた木の、上半分だけをボグォーンと綺麗に吹き飛ばす。 一点集中型のエメラルドスプラッシュ。 普段はショットガンの様に拡散させて放つエネルギーを、拳大まで圧縮して打ち出す。 こうすることでより確実に、相手を狙撃(シュートヒム)出来る。 が、まだ集中が甘いせいか、普通のエメラルドスプラッシュより威力が弱い。 もう少し努力が必要だな。 「やっと自由に慣れたぜ。全く相棒、もう少し大事に扱ってくれよ」 「いやぁ、わりぃ。まさかあんな事になるなんて…… すまねえ、花京院」 「いえ、良いんですよ」 そう思うのなら、今すぐ走ってロングビルの誤解を解いてもらいたいものだ。 まあ初めからこうしていれば、誤解なんて起きなかったのだが。 しかし、こうも色々続くと、もう一度素振りをしようなどという気力は起こらなくなるな。 「ともかく、一回部屋に戻りましょう」 「おう」 あのわがまま桃色自称ご主人サマも、今頃、うだうだと管を巻いているのだろう。 僕たちは、一度ルイズの部屋に戻ることにした。 正直に言うと、お風呂に入りたいのだが、夜になりきっていない今は、まだ誰かに目撃される恐れがある。 具体的には、厨房や屯所の人間にだが。 二人で居る所を観られ、また先程の様な誤解をされるのはゴメンだ。 僕は足下に置いておいた槍に手を伸ばす。 「痛ッ……!」 「どうした!?」 僕は突然、右の手のひらに鋭い痛みを覚え、思わず声を出した。 何があったのかと、思わず手のひらを見る。 そこにはうっすらと、切り傷が浮かんでいた。 「傷…? 一体何処で切ったんだ?」 思わず、首を傾げる。 少なくとも、今日、皿洗いをしていた時点では存在していなかった。 だとすると切ったのは、それ以降……つまり、広場に行ってからということになる。 しかし、広場ではずっと槍を持っていたので、切り傷が付くとは思えない。 だとすると、切り傷がつくことがあり得るのは、デルフリンガーを引っ張った時だが…… スタンドが物理手段で傷つくなどということは 絶 対 に あり得ない。 おそらく誤って、デルフの刀身のどこかに触れてしまったのだろう。 「大丈夫かよ」 「ええ、思ったほどの事はありません。驚いただけです。早く行きましょう」 これ以上考えて、才人に変な心配をさせることもあるまい。 いろいろあったことを振り払うかのように、僕は足早に、ここを立ち去ることにした。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 「そういえば、デルフ」 「あん?」 ルイズの部屋へと行くための、既に登り慣れた階段の途上。 僕は手に持ったデルフに、気になっていたことを質問する。 「才人の左腕のルーン。アレについて何か知りませんか?」 「あ、俺もそれが少し来になってんだ」 僕の質問に、才人が同調する。 今回の事といい、なにやら解らないことが多すぎる。 こういう時は、僕らの辞書的存在である、デルフに聞くのが手っ取り早い手段である。 ちなみに、異世界から変える手段云々について聞いてみたが、流石にそれについては解らないらしい。 デルフは暫く、刀身をふるわせ、やがてカチャカチャと鍔をならした。 「何か、こう、頭の隅にひっかかってんだが…… 随分昔のことでな……」 「刀身と一緒に、頭まで錆びたんですか?」 「うるせ」 「つか、お前、一体何処が頭なんだよ」 「多分、柄」 つか、と接続して訪ねられたので、柄と答える。 才人は何か受けているようだが、ネタにしては余りにも微妙すぎる。 山田君、座布団を持って行きなさい。 と、もうルイズの部屋の前まで来てしまった。 三階だから、そもそもそれほど遠くないからな。 僕は部屋のノブへと手を伸ばす。 すると中から、ルイズとキュルケの話し声が聞こえてきた。 「どうい……味? ツェル……トー」 「だから、ノリ……と……トに丁度良い……を手に入れ…………そっちを……使い……」 「おあいにく………使い……僕の使う道……なら間に合ってるの」 「あ~ら、それなら…………」 なにやら中で揉めているらしい。 そもそもあの二人が一緒で、もめごとが起こらなかったケースを見たことがないんだ。当たり前の事か。 僕は今までのことから、これから起こることを想像し、才人にここを離れることを促す。 「才人、今すぐ回れ右です」 「? どうしたんだよ?」 しかし遅かった。 僕たちが、部屋を去ろうというタイミングで、キュルケがドアを開いたのだった。 「あら、ここにいたのね。丁度よかったわ」 「丁度良いわ。あんた達自身に決めて貰いましょう」 キュルケとルイズが、なにやら僕らの方へと詰め寄ってくる。 見るとキュルケの手には、なにやら小綺麗な槍と剣が。 先程の会話内容から察するに、どうやら僕たちがどちらの道具を使うか、について揉めているようだ。 「ねぇ、ノリアキ? 今、あなたの持っている槍と、私の持っている槍、どちらがステキ?」 そういってキュルケは、僕に槍を渡してくる。 その際、 「あなたの持っている槍、本当は80エキューだそうよ。それに比べてアタシの槍は、正真正銘300エキュー。女も武器も、ゲルマニアの方がいいわよ」 等と言ってきた。 きっとあの店主は「いつもは半額以下で売ってるモンねー」とか思っていたに違いない。 そう思うと、少し、店主に対する怒りが沸いてくる。 まあそれはともかく、僕は受け取った槍をまじまじと見つめる。 うん。成る程。近くで見ればかなり綺麗で、刀身は美しい光を放っている。 続けて、僕の持っている槍を見る。 悪くはないが、アレに比べれば分が悪い。槍だけであれば、間違いなくキュルケの持っている方だ。 しかし、コレは槍を選ぶだけの問題でないのは、キュルケとルイズの様子を見れば解る。コレはどちらを選ぶかということでもあるのだ。 正直に言うと、どちらも選びたくない。 方や高慢ちきでムネもない、自称ご主人様。方やおっぱいは大きいが、気まぐれな六股、いや七股女。 ルイズにするべきか! キュルケにするべきか! コイツは迷うッ! 迷うッ! 暫く二人にジーッと見つめられる中、僕は一か八か、適当に言いつくろってその場を逃れる手段に出た。 「せっかくだから、僕はこっちの赤い扉……じゃあない! この、僕が持っている槍を選びます!」 その一言で、キュルケは驚愕に、ルイズは勝ち誇ったような表情になる。 だが、僕にルイズを選ぶつもりはないので、言葉を続けていく。 「しかしッ! 槍自体で言うのならキュルケの槍を選ぶ!」 その一言に、二人の表情が逆転した。 しかし僕はまだ言葉を続ける。 「だが僕はッ! ルイズにこの槍を買ってくれと頼んだ。だから、この槍は僕自身の手で選んだ槍だ」 自分でも言っていて苦しい話だ。コレで誤魔化せるわけがない。 だから僕はスケープゴートを用意する。 「だから君たちの決着をつけると言うことに対しては公平じゃあ無い! だから、使い魔という以外に負い目のない、才人が決めるのがふさわしいと思う! 僕もそれに決定に従おう!」 「俺ぇ!?」 彼女たちにしてみれば、互いに決着をつけられればそれで良いのだ。 僕は才人を差し出して、二人の出方を見ることにした。 当の才人は、いきなり自分の名前が出てきたことで、おろおろとしている状態だ。 許せ、才人。後でお茶を煎れてやるから。 「下僕はアタシの槍を……」 「あなたの選んだ槍じゃないでしょ? 第一、槍自体はあたしのを選んだのよ?」 「「じゃあ……やっぱり」」 そういって二人は才人の方に詰め寄る。 「「どっち?」」 キュルケが、ルイズが才人を睨む。 才人は一層を混乱した様子で、額に汗を浮かべながら二つの剣を見、その後、僕に恨めしそうな視線を向けてきた。 だが僕は気にしない。 「言っていることが滅茶苦茶」 何時の間にやら部屋から出てきたタバサが、僕に対してそんなことを言ってきた。 というか、部屋にいたのか。 僕はタバサの、その都合の悪い言葉を無視して、才人の様子を伺い続ける。 どうやら才人の方も決まったようだ。 才人は一度、大きく息を吸ってから、答えを出した。 「その、二本とも、ってダメ?」 才人に出来るであろう、目一杯可愛げな表情を浮かべ、そんなことを言い出した。 流石才人! そこに痺れもしないし、憧れもしない。どっちかっていうと引く。 案の定、才人は二人に思いっきり蹴っ飛ばされる。 その顔はどこか、やり遂げたようにすがすがしい。 才人のその勇気ある行動! 僕は軽蔑の意を表す! 「ねぇ」 「なによ」 「そろそろ、決着をつけませんこと?」 「そうね」 「あたしね、あんたのこと、大っ嫌いなのよ」 「わたしもよ」 「気が合うわね」 「……決闘よ!」 まぁ、そんな調子で、才人がどちらの剣を使うかについて、ルイズとキュルケが決闘するということになったのだった。 さて、どうなる事やら。 To be contenued…… ----

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