フォン・ノビタスキーさん


「・・・案外とあっさりぶっ壊れるもんだな」
肺の奥まで吸い込んだ煙を吐き出しながら呟いた。
俺の眼前には、ボコボコに経こんだ青いドラム缶のような物体が転がっている。
痺れた右手にはバットがある。コイツを叩きのめす為に使ったものだ。
ひびの入った眼鏡越しに見える世界は、思ったほど開放感のあるものでもなかった。
長きに渡り俺を縛り付けていた枷は、たった今外れたというのに・・・
咥えていたタバコを吐き捨てる。足元に落ちたそれが畳を焦がす様子を暫く眺めた
後、俺は青い残骸を蹴り転がし、腹に張り付いていた不細工なポケットを取り外した。
そして、それを自分の腹につける。
「もっと早くこうするべきだったのかもしれねぇな・・・」
腹のポケットを摩りながら呟く、黄色いシャツに白い半円形のポケット。なんとも
間抜けな様だが、まあコイツから得られる恩恵を考えたら、これくらは我慢しなきゃ
バチがあたるってもんだ。
「さて・・・と。カタぁ着けるか」
俺は腹のポケットから、鈍色に光る塊を取り出した。
ビッグガン。こいつは一撃で戦車を吹き飛ばす威力がある。
普通に考えたらこんなもんぶっぱなしたら、腕の骨くらい折れちまいそうだが、そこは
22世紀の科学力って奴で、射手がダメージを受けるような事にはならんようになってる
らしい。
親指で撃鉄を引き起こし、足元に転がるガラクタに無造作に銃口を向ける。
「・・・んじゃな、青ダヌキ」
引き金は思っていたよりも軽かった。


一言でまとめるのならば棘。
論ずるべくもあるまい。誰しもが奴を目にした時、そう思うはずだ。
大体前々から気に入らなかった。カメラ位置ごとに髪型が変わっているとしか思えない。
横から見たら3本で、上から見たら6本、普通に考えたら棘が18本ありそうなもんだが、
実際はそうでもないらしい。
あくまでらしい、であって、確認はできない。ベタって奴の表現力の低さ故に、情報量が
少ないのだ。
「・・・なんだよ!のび太のくせに!」
カエルを潰した様なその声が、俺の意識を現実世界へと引き戻す。
デフォルトの状態ですらつり上がった瞳を、怒りに更に吊り上げさせ、俺を見ている。
不満げに尖らせた口元、まあ機嫌の良いときでもとがっているので、実際感情の起伏によっ
て現れる変化の量がどれ程のものなのかは、いまだにわからないのだが・・・
「なあ、それってくせっ毛なのか?それとも努力してそうしてんのか?」
奴の顔が一瞬で上気する。いわれて怒るくらいならそんな独創的な髪型にしなくてもいい
物を・・・
「のびたの癖になまいきだ!!」
右手を振り上げ、猛然と襲い掛かってくる。
はっりいってケッタイな髪型の小男が怒り狂った表情で襲い掛かってくる様は失笑を禁じえない
物があるが、残念ながら俺の腕力はこんな腰巾着の小男にすら及ばない。
このままいたら数十秒後には確実に俺はアスファルトにキスしている事だろう。
だが、そんな結果に甘んじる程俺はお人よしじゃあない。
いや、ついこないだまでの俺はそうだったかもしれんが、そんな仮面を被り続ける事にはもう
疲れ果てていた。
ポケットに手を突っ込み、薄汚れた木箱を取り出す。
そして、奴の拳が俺の顔に到達するほんの少し前に、その箱の蓋を少しだけ開き、奴に向けた。
刹那、奴の下半身がまるで凍りついたかのように動きを止め、そのままつんのめるように奴は
地面に倒れ付した。
「うげえっ!な、なんだこれ!足がうごかないぞ!のび太、何しやがった!」
五月蝿い。黙れ。カエルの潰れた様なその声にはもううんざりなんだよ。
手に持っていた箱を倒れた奴の額の上に、バランスを取って置いてやる。


「な、なんなんだそれ!一体なにしやがる!」
「この箱にはゴーゴンの首って、まあ一種のモンスターみたいな奴が入ってる。こいつに睨まれ
たらなんでもかんでも石みたいにカチンコチンになっちまうって寸法さ。落としたら箱が開いち
まって、中から出てきちまうだろうな」
奴が息を呑む音が俺の耳に届いた。
「な、な、な、な、なんだって・・・おいのび太、冗談やめてくれよ・・・」
「うまくバランス取り続けてりゃあ、そのうち誰か助けてくれっかもしんねえな・・・」
タバコを咥えてから火が無い事に気づいた。あちこちポケットを探すが、ライターもマッチも
出てこない。
「なあ、火、持ってねぇか?」
「そ、そんなもの小学生がもってるわけないだろ!なあのび太助けてくれよ!悪かったよ!この
通りだよ!頼むよぉ!」
「持ってねえなら持ってねえって答えときゃいいんだよ。無駄口叩いてっと、バランス崩して箱
おとしちまうぜ」
潰れ蛙声が一瞬で止む。あと10秒も耳にしてたら、俺どうにかなっちまったかもしれねえな。
「んじゃ、頑張んな。あとコイツぁ俺からの餞別だ。やるよ」
俺は懐から黒いタイマーのような物を取り出した。
「1分でいいか。まあ楽しみな」
「な、な、な、なんだよこれ。爆弾かよ!ひどいよ!」
「爆弾じゃねえ、バカ弾さ。じゃあな、スネ夫。さようなら」
「ひ、ひどいよー!たすけてママー!!うわ~ん!」
背を向けて歩き出す。くそったれ、ヤニが完全に切れた。どっかにライター売ってそうな所は・・・
あぁ?考えてみりゃ、俺、今四次元ポケット持ってんだっけ。
なんか火のかわりになりそうなもんは・・・安全たき火じゃ役にたたねえし・・・
「たすけて、助けてママー!助け・・・アジャラカモクレン!」(ピキーン!)
シナリオライターで火ぃ着くかな・・・


悪夢で目が覚めた。
「・・・クソったれ。スレの住人がこぞって俺を叩きやがるってのか・・・」
予知夢アメが間違った夢を見せることは無い。という事はほど遠からずこの夢は現実になるって
事だ。
まあ無理も無い。ぽっと出の新人がエロスレでわけのわからん文章ばっかり書いてりゃあ叩かれ
んのは当たり前だ。
「・・・エロスレか。んじゃあそれなりの事ぁしますかねぇ・・・」
とは言え、しずかを犯っちまうのは、まだ早い。どうせだったら趣向を凝らしてじっくりといたぶって
やりたい所だからな。
ンじゃあ他には・・・主要キャラにゃあ他にろくな女はいねえ。
ジャイ子なんて犯ろうもんなら、スレ住人どもに叩かれずに済む筈がねえし、大体俺のチンポも
立ちゃしねえ。
他にはみんなのかーちゃん類だが、俺ぁババ線じゃねえし・・・
「まー、そこいらのねーちゃんでも道具使って犯すか・・・しかしまだ2時(午後)じゃねーか。
お昼寝タイム真っ最中だぞ・・・クソかったりぃな」
かったりぃから道具に任せる事にしよう。
とりあえず取り寄せバッグでアダルトショップからバイブレーターを拝借する。えげつない色の
バイブ10本ばかりにロボッターをつけ、どこでも窓を用いて女子高にばらまいた。
「さて、これでやる事やったし、寝るべぇ。後から結果はタイムテレビで見りゃあいいだろう。
俺ぁ眠みーんだ」
一仕事終えた達成感を胸に、俺は再び床についた。


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最終更新:2007年05月25日 14:53