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秋森良樹編 第三話『美人教師の秘密』(7)

「……しまったな……」
 軽率な行動を後悔しつつ、俺は小さなため息とともに、疲れた体で机の上に突っ伏した。
 その原因は、五時間目のとある会話から始まる。

「どこに行ってたんだ?」
 昼食の報復を受けたんだろう、少しだけ落ち込んでいるような亮輔の隣から、長久が
声をかけてきた。
 俺は外でメシ食ってただけと極普通に答え、廊下でトイレに行くと言ってすれ違った
時人の席に座る。本鈴はすでに鳴っていたが、本日の五時間目を担当する現国の桐嶋先生はいつも
5~10分ほど遅刻してくる。それを知っている他のクラスメートたちも思い思いに散らばって、
きちんと席についている者はほとんどいない。
「さっきまで話してたんだけど、薬関係にもいいものがあるんだよなぁ。たとえば……」
 昼の間もその話題で盛り上がっていたのか、秘密道具の使い方について色々と話してくる長久たちに
適当に相槌を打ちつつ、俺はその時間を利用して、いまだに飛び跳ねつづける心臓を
落ち着けにかかった。
 時間が俺の意に反して動き出し時、俺は秘密道具が使えなくなったのかと混乱の極みにあったと
言ってもいい。そしてコピーしておいた『タンマウォッチ』が正常に機能した時は、
その場にへたり込むほどに安心した。
 再度時間を止めて原因を調べると……何の事はない、腕時計に組み込んだ『タンマウォッチ』の
電池が切れてしまっただけの事だった。あのアラームは電池切れの警告だったんだ。
 それが分かると、俺はすぐに『ハツメイカー』と作業ロボットたちを使って大容量バッテリーを
作ってタイムウオッチに組み込んだ。ついでとばかりに高効率ソーラーパネルやいくつかの秘密道具を
組み入れるなど、さらなる改造もした。おかげでベースになった俺の腕時計の形がなくなるほど
ゴツく重くなったけれど、外見はさらに改造する事で、重さは『ふんわりズッシリメーター』で
調節してなんとかなった。

 そして現在、俺の手持ちの秘密道具はこの『タイムウォッチ』を始めとした改造・発明品と
食料・薬品しか入っていないスペアポケットだけだ。他の秘密道具は電池交換と、
それに充電出来るように改造するため作業ロボットたちに引き渡してきた。
ついでに故障している道具の選り分け(改造ついでにタイムウォッチに『タケコプター』を
合成しようとしたら、一つ故障していた)とメンテナンス、さらに『フエルミラー』で
道具を増殖させるよう指示してきたから、全ての作業が終わるのは今日の夜くらいになるだろう。
 時間を止めて作業を見守るという手もあったが、さきほど感じた恐怖からか、俺は外に出る事を
優先させていた。
「……あと、『タスケロン』ってのもあったよな」
 鼓動が落ち着きはじめ、ようやく長久たちの会話が耳に入ってくるようになる。
「『タスケロン』? そんなのあったか?」
 俺は『リストブック』の内容を思い返すが、そんな物は見た覚えが無い。おぼろげながらマンガで
読んだ覚えはあるのだけれど……ひょっとしたら取り込んだ本の内容が古くて、
載っていなかったのかも知れない。
「ああ、あったな~、そんなの」
 亮輔がうんうんと頷いているあたり、実際にあるようだ。気になってどんな道具か訊いてみる。
「あ~っと……確かマンガだとのび太が、自分の手伝いさせるために飲んだ薬だったよな」
「そうそう。それでしずかちゃんに宿題の手助けしてもらったんだよ」
 長久も古い記憶を思い出すように亮輔の言葉を補足する。
「飲んだら困ってる人を手助けをせずにいられなくなるんだろ? 便利だよな、それって
『ヤりたいけど相手がいなくて困ってる』って言えば、そいつがヤらせてくれたり、
風俗とか案内してくれるかも」
「お前の場合、『ヤりたい』の前に『AV女優と』って付きそうだな」
「あたぼうよっ! ついでに俺のAV企画も通してもらうかな」
「へぇ、それって……」
「遊んでないで席につけ~」
 俺の言葉をかき消すように現国の桐嶋先生の太い声が教室を圧した。桐嶋先生の声は低いくせに
良く通っていて、気構えをしていないとまるで怒鳴られたような威圧感に背筋に震えが走る事がある。
高校・大学と応援団長をやってきたせいらしい。

 わたわたと席にもどる生徒たちにの姿に混じって、時人が教室に戻ってきたのが見えた。
「今日は40ページから始める。中野、8行目から読め」
「はい。『発掘隊の朝は早い。午後休み(シエスタ)のカバーアップのために』……」
 定例の挨拶もそこそこに指示された朗読を聞きながら、俺は真面目に教科書をの文面を追う。
少なくとも周りからはそう見えているはずだ。
 実際に俺が見ているのは目の前のスクリーン……サングラスをHMDに改造して
『かたずけラッカー』で見えなくした物だ。ディスプレイに映像を提供している、つるから伸びる
透明なコードは『タイムウォッチ』を経由して机の中の『リストブック』に繋がっている。
『タイムウォッチ』に合成した『サイコントローラ』を使って、『本』の機能を呼び出しているのだ。
 『本』の内容を確認するが、やはり『タスケロン』なんて道具は見あたらない。飲む前に詳細を
確認したかったが、載っていないなら仕方がない。後で登録する事にして、机の下で
スペアポケットをあさる。
 現在、俺は『薬製造機』で作った強力精力剤を服用したおかげで、今日放った分が完全に
回復した上に、少しエロい事を考えただけでも痛いほどにテントが張られてしまうような状況にある。
多分、十発や二十発出したくらいでは萎えないほどの絶倫状態だろう。おかげでヤりたくてヤりたくて
たまらないほど『困っている』。
 それをどうやって解消しようかと悩んでいたのだけれど、答えが向こうからやってきてくれた。
俺はこっそりと『タスケロン』を飲み込むと、二人へのお礼に使えそうな道具を探し始める。
 薬を飲んで5分としないうちに、教室に変化が訪れた。
「……山中、どうした? 顔が赤いぞ?」
 桐嶋先生のいぶかしげな声がする。振り返ると桐嶋先生が廊下側後ろの席の山中を
覗き込むようにしていた。確かに、窓際の俺からも分かるほど山中の顔は赤く、ふらふらと不安定に
上体が揺れている。
「だ、大丈夫です……」
 山中は答えるが、その声は非常に弱弱しい。桐嶋先生は山中の額に手を当てると大声をあげた。
「すごい熱じゃないかっ!」
「だ、大丈夫ですよ……」

 ああ、熱か……いったいどうしたんだろう? 何かできないかな?
 俺が疑問を浮かべる間にも、桐嶋先生は山中の言葉を否定する。
「なにが大丈夫なもんかっ! すぐに保健室に行けっ!! ……おい、一人じゃ危ないから
誰か一緒についていってやれ」
「俺が行きます」
 先生の言葉に間髪いれずに誰かが答える。クラスの視線が集中する……その対象は、俺だ。
 あれ? 俺なんでこんな事を言ったんだ?
「おお、秋森か。すまんが行って来てくれ」
 桐嶋先生は一瞬意外そうな顔をしたが、すぐに俺を招き寄せて山中を引き渡した。疑問は残るが
言い出してしまった以上、引っ込みがつかなくなってしまったので、山中に肩を貸して保健室に
連れて行く。
「……ごめん、秋森……」
「気にするな。困ったときはお互い様だ」
 山中の謝罪に、俺は当たり前の事のように答える。嫌なはずなのに、不思議と不機嫌な声に
ならない。
 ……はぁ、せめてこいつが女子だったら喜んで運んでやったのだけど。

 それからは、なぜかトラブル続きだった。
 山中を保険医に引き渡す。中年の保険医は……。
「授業中ゴメンなんだけど、玄関に包帯とかの補充分が届いてるの。取ってきてもらえないかしら?」
 薬品類の入ったダンボールを渡して教室に戻る途中、世界史の栗田老教諭に……。
「おお、秋森じゃないかっ。すまんが社会科教室から資料を取ってきてもらえんか?」
 資料を片手に栗田の教室に向かう途中、科学室前で……。
「きゃあぁぁぁぁっ! 蛇口がとれちゃったぁっ!!」
 ずぶ濡れになりながら水を止めた後、乾かすついでに外に出た時……。
「俺なんて、俺なんてぇぇぇぇぇっ!!」
 屋上からダイブした自殺志願の男子を身を持って(押しつぶされて)救助し……etc.etc.。

 理不尽な事続きでボロボロの体を引きずりながら教室に向かう。すでに五時間目終了の
チャイムがなり、廊下を生徒たちが行き交っている。

「……ど、どーなってやがる……」
 うめき声に怒りがこもるのも無理はないだろう。なんで俺だけがこんな目に遭わなくては
いけないんだ……。もしかして、いままで好き放題してきた報いか?
「よーしきっ♪」
 ポン、と背中を叩かれる。子供っぽいけれど、透き通るような、伸びのあるアルトの声音。
振り向くとふわふわと柔らかそうなボブカットが飛び込んできた。
「なんだ美久か……」
「『なんだ』はご挨拶だなぁ~。こんな可愛い幼馴染に声をかけてもらった第一声がソレなわけ?」
 彼女は両手を腰に当てて拗ねたような顔をする。拗ねているはずなのだが、鼻にかかったような
甘い声とくりくりとした大きな目のおかげか、それさえも非常に可愛く映る。
 早瀬美久、一年生。俺がこっちに引っ越して来てからの最初の友達で幼馴染だ。小・中と
常に同じクラスですごし、高校に入ってようやく別のクラスに分かれた腐れ縁でもある。
特記事項として、俺と同じくらいの背しかない。
「で、なにか用か?」
 それを無視して話し掛ける。この拗ねがただのスタイルだと知っているからだ。美久も
すぐにいつもの、何が楽しいのか分からない微笑顔になる。
「授業でクッキー焼いたの。食べる?」
「ああ」
 本当はお昼に渡したかったんだけど教室にいなかったから、と言う美久から紙の袋をもらう。
リボンを解くと、甘い匂いと共に十枚ほどの白いクッキーが現われた。
「ラングドシャ?」
「うん。他にチョコチップも作ったよ。食べちゃったけど」
「……で、なにを混ぜた?」
 えへへーと笑う美久の顔が一瞬固まったのを俺は見逃さない。袋を開けたときに感じたかすかな
ツンと鼻をつく匂いを感じたのは間違いではないらしい。俺は目を細めて美久を見た。
「だ、大丈夫だよっ。食べられる物だしっ」
 慌てて言い募る美久への視線が、さらにきつくなっていく。
 美久は料理が上手い。昔からこいつの料理の試食をしてきたから、俺はこいつの料理の腕は
よく知っている。……それと同時に、たまに普通は使わない材料を使ってとんでもない物をつくる癖も
知っている。なにせ、俺は最初に食ったこいつの料理で病院送りにされたのだから……。

 俺の視線に耐えられなくなったのか、おろおろとうろたえ、半泣きになりながら訴えてきた。
「ううう……だって聞いた話をちょっと試してみたくなったのよぉ……頼めるのは
良樹くらいしかいなくて……」
 叱られた子犬のようにシュン、となる美久。それを見て、何を入れたのか訊く前に手が、
口がひとりでに動いた。
「わーったよ、食えばいいんだろ?」
 何が加えられているかわからないラングドシャを一枚取り、美久の期待を込めた視線を浴びながら
口に運ぶ。
 ……!!
 な、なんだぁ、この口の中いっぱいに広がるえも言われぬ味わぁっ!! 一口噛んだだけで
吐き気がこみ上げてきたぞ。
「……み、美久ぅ……」
「あ……あはははははは……やっぱり『お酢』は不味いみたいだね……」
 美久は引きつった笑いを浮かべながら徐々に後ろに下がっていく。
 酢? 酢なんて入れたのか、このアマぁ……。
「試しに作ってみたはいいんだけど、自分で食べる勇気がなくてさ。処分に困ってたのっ!
今度埋め合わせするから許して~」
 そう言って美久は、ぴゅーっという擬音がぴったりな速さで廊下の彼方に消えていった。
俺は吐き気渦巻く腹を抱えながら、美久のチビのクセに良く発達した尻をにらみつけるのが
精一杯だった。

 教室に戻ると、すぐにいつもの三人が俺の所に寄って来て授業をサボった理由を聞いてきた。
桐嶋先生も俺が戻ってこないことを怒っていたらしい。うう、ホントはサボっちゃいないんだよぉ……。
「そうそう、さっきの『タスケロン』の話なんだけどさ」
 長久が苦笑しながら話題を変える。
「あれって、飲んだ人を助けるんじゃなくて、飲んだ人が困っている人を助けずには
いられなくなる薬なんだってさ」
 ……何だって?

「だから、助けて欲しかったら助けて欲しい人に飲ませないと意味がないんだって」
 亮輔が苦笑する。
「しかもだ。あの薬はどうやら困っている人のところへ飲んだ者を誘導する効果もあるらしくてな、
コミックスでものび太がえらい目にあっていた。もしあるなら決して自分では
飲んではいけない薬だな……良樹、お前ひょっとして真里菜先生に頼まれ事をされまくるのは、
あの薬を常時服用してるからじゃないのか?」
 時人のからかうような口調に、倒れそうになる感覚に襲われる。
 つまり、俺がいままで巻き込まれてきたトラブルってのは、みんな『タスケロン』のせいなのか? ……やはり、よく確認してから飲むんだったぁ……。
「時人……一ついいか?」
「なんだ?」
「『タスケロン』って、効果時間ってあるのか?」
 これだけは訊いておかなくてはいけない。もし永続型なら……とりあえず亮輔たちを
張り倒してから考えよう。
「あるぞ」
 時人はあっさりと答えて二人がこうむるはずの被害を消し去った。
「コミックスで見る限り、効果が続くのは半日……6ないし8時間ほどというところだな。
しかしまた、なんでそんな事を気にする?」
「いや……それが分かればいいんだ……」
 俺は疲れているからと三人と別れて席に戻り……冒頭へと繋がる。ああ、身も心もボロボロだぁ……。

「……きもりくん、秋森君っ!」
 ゆさゆさと体が揺さぶられる。顔を上げると真里菜先生の綺麗な顔があった。うっすらとした
上品な化粧の仕方が、先生の理知的な顔立ちに艶を乗せているようで、ぼーっと見惚れてしまう。
 あれ? なんで先生がこんな所で俺を覗き込んでるんだ?
「ほら、もう授業始めるわよ」
 疑問を口にするまもなく、先生は身を翻して教壇に戻っていく。
 きょろきょろと見回すと全員が立ち上がって号令を待っていた。どうやら放課の間に眠ってしまい、
そのまま六時間目に突入したらしい。俺は慌てて立ち上がった。
「今日は15ページからね。詩だけど、みんな上手く訳せたかしら?」
 着席して俺は急いで教科書をとりだす。真里菜先生はいつも朗読から始めるからだ。

「それじゃ、いつものようにみんな付いて来てね? Repeat after me,"Fly me to the moon.
Let me see play among the star..."」
 先生の歌うような朗読。高校の時にイギリスに留学した事あるというだけに、先生の発音は
英語の教師である事を差し引いても綺麗だ。そのせいか、他の教師ならリピートは
必ずお経のようになるのに、彼女の時だけはその天上の歌声のような声に引きずられるかのように
みんな気合を入れて読み上げる。俺も少しぼんやりする頭を何とか動かして追随する。
頭が普通に動作するようになったのは、朗読が半分ほど過ぎた頃だ。
「In other words, hold my hand... In other words――」
 教科書を読み上げる先生の横顔をこっそりと見る。ふっくらとして人好きのする容貌。
知的に秀でた額に、太すぎず細すぎずの眉。真剣に授業をしていても、微笑ましい柔らかさを持った瞳。
すっきりと通った鼻筋に、薄いくせにやたら肉感的な唇。時々湿らせるために出てくる
赤い舌がなんとも色っぽい。
「……はい、それじゃあ水谷さんの列。一文ずつ読んで訳を言って行ってください」
 どこからどう見てもいつもの先生だった。昼に校舎裏で見た陰りはどこにもない。
先生の言っていた通り、俺と話した事で少しは気がまぎれたんだろうか? もしそうなら
すごく嬉しいけれど……。
「"Fly me to the moon." 私を月へ飛ばしなさい」
「うん、直訳ならそれでいいんだけど、ここは『私を月に連れて行って』とする方が……」
 先生が優しく訳の間違いを指摘し、注意された水谷も真剣にそれを聞く。
それが順次後ろへ続いて行き、他の生徒は聞き取って自分の間違いを直していく。
どこにでもある授業風景だろう。
 に、しても。結局昼は聞けなかったけど、先生の悩みってなんなんだろうな。しっかりした
大人の女性である先生が泣き出すほどの悩みなんて、想像もつかない。
 案外、男の事かも知れないな。不意にそう思う。
 先生は言うまでもなく美人だ。浮いた話が聞こえて来ないとは言え、彼氏の一人や二人いたって
おかしくはないだろう。そう言えば弁当だって『大切な人にだけ』なんて言っていたから、
案外これが当たりなのかも知れない。

 だとするなら、その彼氏がそんな一途な先生を傷付けるような事を言ったのかも。だから先生は
あんなに真剣に悩んで……。
 手の中でシャープペンシルがミシリときしむ。
 先生のあの悲嘆に暮れた顔を思い出し、顔も知らない先生の彼氏にムカッ腹が立った。
同時に先生に抱きしめられた時の感触と体温、それに甘い体臭を思い出す。
 彼氏って言うくらいだから、先生を抱きしめたりキスをしたり、その先だって自由に出来るんだろう。
そう、あの良い匂いのする柔らかな肌をまさぐり、唇を吸い、秘められた場所に……。
 ……。
 ……やめておこう。これ以上は精神衛生上、極悪だ。俺はテントを隠すために椅子に深く座りなおし、
バナナのように曲がった金属製シャープペンシルを筆箱に戻した。
 別に先生にいるのかも知らない彼氏が原因とは限らないわけだし、考えるならもう少しマシな事を
考えよう。そうだな、例えば……あ、先生への悪戯を考えてなかった。
「……はい、これで訳は完了ね。この詩で難しいところは――」
 黒板の前で解説に入った先生が正面を向くのを見計らって時を止める。
『サイコントローラ』を組みこんだおかげでいちいちネジを押し込まなくても、考えただけで時間を
止められるようになった。
 硬直した先生の前に行き、ジッと眺める。
 やっぱり、あの時みたいに恥ずかしいポーズを取らせて瞬間的に時間を動かすってのがいいかな? 昨日までのタイトスカートと違ってロングのフレアースカートだからめくり易そうだし、
男子たちも先生の艶姿が見たいところだろう。ついでに色々と写真もとって個人的に楽しむ事にしよう。
「でわ、早速……」
 踝まである先生のスカートの裾を持つ。女子たちのミニスカートと違って、
めくりがいがありそうだ。俺は思いっきり捲り上げる。
「そぉれっ! ……!?」
 俺はめくり上げた姿勢のまま固まった。
 人は信じられない物を見た時に『自分の目が信じられない』という表現を使う。今の俺が、
ちょうどその状態だ。

 ぶわっ、とモンローのごとく大きくめくれ上がったスカート。ほっそりとした腰に
ちょこんとついたヘソまでも見えている。軽く広げて体を支えている足は
ストッキングに包まれる事もなく、白いきめ細かな肌をさらしてすらりと伸びていた。
太ももは美しい曲線を描いて張り、ふくらはぎと合わせて細長く流麗なSの字を描いている。
 しかし、その付け根にはあるべき物がなかった。包まれるべき物が包まれていなかった。
 ……いや、一応は包まれていると言った方がいいかも知れない。例え、整えられている、
黒々とした陰毛のほとんどが露出していたとしても。
 その包む物は腰骨からY字に先生の秘部に掛かり、それに添って白雪のような肌は
赤く擦れた痕がある。三本の線の交差点はクリトリスの上で結ばれ下線は淫裂に食い込み、
少し動いただけでも性器を刺激するつくりだ。
 俺は何度も目をこすって先生の股間を見た。しかし、それでそこを縛りつけている麻縄が
消えるわけじゃなかった。
 そして――気付いてしまった。明るい茶色の縄の一部分が、しっとりと濡れて色を変えていた事を。
「……」
 俺は乱暴にスカートを叩きおろすと席に戻って時間を動かした。
「……て、事なのよ。ここはテストに出やすい部分だから――」
 先生の声を右から左に通過させながら窓の外を見る。
 六時間目が終わり、帰りのHRの時間になり、朝言われた手伝いを始めても俺は一度も
先生の顔を見る事はなかった。