お断り

本作は「魔法少女まどか☆マギカ」及びその外伝とのクロスです。

キャラが爽やかにぶっ壊れています。

一応、馬鹿話的なものを作る予定ですが、
それは流れ次第と言う部分も。

それでは今回の投下、入ります。

  *  *  *

「恭介っ」
「やあ」

学校で言えば放課後に当たる時間。
上条恭介は入院中の病室で日課の様に美樹さやかのお見舞いを受けていた。

お見舞いのお花を生けたさやかが差し出したのは、CDだった。
病室と言う事で、恭介はプレイヤーにセットしたCDをイヤホンで楽しむ。
二股のイヤホンの一方をさやかに差し出して。

さやかには、少なくとも悪気はないのだろう。
と言うか、百パーセント善意なのは恭介にもよく理解出来る。

クラシックには素人同然のさやかが持って来るのは、
恭介好みのクラシック、ヴァイオリンの名曲。それも、相当なレア物だ。
さやか自身は謙遜しているが、手間も予算も決して簡単ではない。

「恭介?」
「ん?」

ふと、声をかけられた恭介がさやかの方を見る。
さやかは、たった今まで窓を見て物思いしていた恭介を少し心配そうに見ていた。

「ありがとう」
「う、うん」
「難しいけど見込みがあるって言うから、
こんな素晴らしい演奏が出来る様に僕も頑張らないとね」
「う、うんっ」

さやかは、少しほっとした様だった。
思えば運がいい、例え交通事故に遭ったにせよ、それは新聞上の日常茶飯事。
それでもあのポケットを手に入れる事が出来た自分は運がいいに決まっている、と、
恭介はややこんがらかった理屈を一応納得していた。

さやかは、幼い頃から、ステージで演奏して来た恭介の事を知っている。
もしもこれで左腕が動かないままで、
過去の自分を誰よりも知っているさやかが連日辟易する程にクラシックのCD等持って来た日には、
動かない筈の左手の空手チョップでCDを叩き割っていたかも知れない。

真面目にそうであっただろうと、今なら自覚出来るだけに、
今こうして隣にいるさやかの存在に、恭介は自分の幸運を痛感する。

恭介が気が付いた時には、さやかはつつつと下を向いていた。
それまでの間、客観的に言えば恭介はじっとさやかを見つめていたと言う事になる。
体の余裕が心の余裕となった恭介がふっと微笑みを浮かべると、
さやかはますます縮こまっていた。

「………」

そして、恭介はふと思い出す。

(さやかって、スタイルいいんだよな………)

とんでもないアイテムが手に入った勢いに任せて、
見るだけなら「大人のプロ」を見まくった後な訳だが、
だからこそ、恭介の歳にして分かる事もある。

プロはそれ以外よりも非常識だからこそ売り物になるのであり、
最初のハプニングで見たさやかは常識的に見て決して見劣りしない筈だと。

今のご時世にさやかや仁美のその姿を見るのは、
プロ相手の遥か彼方に非常識である、と言う事はひとまずおく。
幼い頃から一緒で、幼い頃から男勝りだった女の子が、
年頃の少年から見てすっかり女性そのものの肉体を備えていた、と、
その事を恭介は目の当たりにしていた。

(そう言えば志筑さんも………
何考えてるんだ、折角お見舞い来てくれたのに)

志筑仁美は関係性では「友達の友達」に近い間柄だが、
それでも他の女子よりは親しい、そしてクラス公認と言ってもいい美少女なお嬢様。
その志筑仁美が可愛い女の子はある意味当然として、
今まであまり女の子として接して来なかったが、
可愛い女の子ではないのか? と改めて考えるなら、

「寒かった?」
「ちょっとね」

すすっとベッドの掛布団をずり上げる恭介にさやかが尋ねた。

  *  *  *

「さやか」
「やっ、恭介」
「上条君、こちらですわ」
「うん」

何をしていたのかもよく覚えていないが、
恭介はさやか、仁美とのんびりとした時間を過ごしていた。
その時、さやかと仁美は一糸まとわぬ真っ裸で、恭介からは何もかも丸見え、
柔らかで綺麗な姿に感心はしたかも知れないが、
そんな姿の二人と穏やかなひと時を過ごす事に就いて、
恭介はひとかけらの違和感も覚えていなかった。

ー ー ー ー ー

ぱちっ、と、目を開けた恭介は、
既に陽の光を含んだカーテンの向こうから雀の声を聞いていた。

「おはよう、上条君」
「ああ、おはようございます」

目をこすりながら、恭介は顔見知りの看護師とあいさつを交わす。

「今朝はゆっくりだったわね」
「ええ、ちょっと本を読み過ぎたみたいで」
「そう。それじゃあ始めますね」

そう言って、彼女は先輩ナースと共にテキパキと仕事を始める。
彼女はまだ一見すると二十歳前後にも見える若手で、
最近までは心の余裕どころではなかった恭介ではあるが、
それでも当初からの付き合いで、ちょっと可愛らしい感じの若手看護師とは
多少は事務的を超える程度に打ち解けた間柄だった。
特に、少し前までの自分であれば、
看護師も苦労しただろうと今では恭介も自覚している。

「………!? ち、ちょっと待ってっ」
「?」

未だ、表向きは腕も脚も回復には程遠い、と言う事で、
いつも通りの着替えの手伝いを突如制止する恭介に
二人の女性看護師がちょっと首を傾げる。

「どうしましたかー?」

後輩ナースが、仕事的な、それでいて優しい何時もの口調で尋ねた。

「あ、えっと、ちょっと、待って下さいね」

恭介が、身を起こしたままの布団を一度ずずずっとずり上げて上ずった声で言う。
無論、異性の看護よる着替え、それも思春期の男子と言う事で、
普段であっても看護師はタオル等を用意して、
露出と心の負担が最低限になる様に配慮してくれている。
今では、恭介もそれを普通に受け入れていたのだが、

「えっ、と………続けて下さい」
「分かりました」

気持ちを切り替え、恭介は観念する。
入院生活も続いていたと言う事で、
なんと言う事はない筈、と、半ば自己暗示をかける。
その通り、二人の看護師も何という事もなく、
いつも通りに手際よく清拭と着替えを進めていく。

「………ありがとうございました」

それが終了した時には、恭介はいつもより多めに頭を下げていた。

「まあ、今は体も不自由な事だし、
生理現象みたいなものだって分かるでしょう?
私達も仕事だから、ね」
「ありがとうございます」

いい意味でビジネスライクな若い看護師の言葉に、恭介はもう一度頭を下げていた。

ー ー ー ー ー

「………」

夜、「きょうじき」によって中の三時間が外の一分に設定された「かべ紙秘密基地」で
まずは思い切りヴァイオリンを弾き込んだ上条恭介は、
「水細工ふりかけ」で作った一人用ソファーに身を埋めながら、
「天才ヘルメット」と「技術手袋」によって市販の大型テレビに接続した
「アニメばこ」の作品を鑑賞していた。

「やっぱり、こういう事になるのかなぁ」

「アニメばこ」は、原作となる書籍を引き出しに入れたら
それを自動的にアニメ化してしまう。
アニメオリジナリティーないい意味で期待を裏切るのはなさそうな機械であるが、
原作レイプとか作画崩壊とか万策尽きた等と言う事とは無縁な機械である。

そして、今、恭介がぶっ続けに鑑賞していたのは、
入院前ならそもそも趣味から外れていたし、気恥ずかしくてとても手が出ない類の、
絵柄だけは萌えアニメチックに可愛い、中身は流行りのライトノベルよりも更に
ワンランクツーランク上にそのものズバリのエロ系がメインの代物だった。

昨今、その界隈ではチート、ある日突然トンデモ能力を駆使して、
と言うものが流行りと言うか定番化している。
時間停止もあるが、王道は催眠だろう。

ああ言う事をしてこういう事をして、しまいにはクラスの女子全員
壁に手をつかせて一列に並ばせて後ろから以下略で、
学校丸ごとハーレムの頂点に君臨して好き放題にやりまくりながら初恋もget、と、
乱暴に平均化すればこういう事になるだろうか。

そんなだからして、「四次元若葉マーク」と「石ころぼうし」と
「とうめいマント」と「フワフワオビ」と「タイムベルト」と「どこでもドア」を駆使した
病院脱走散歩中に。それが出来る境遇となった恭介の食指が動き、
早速に有り余る現金を「自動販売タイムマシン」に投入して
買い揃えてアニメ鑑賞に至っていた。

元来、上条恭介は真面目でストイックな人間である、
少なくともそういう一面を強く持っている。
そうでなければ、取り敢えず地元の同年代では指折りと言われる程の修練は出来ない。
だから、ポケットを手に入れて一通り遊び倒してケガによる将来への不安も解消してからは、
一度すっぱり縁を切ってスペアポケットをしまいこんでいた。

幼少期からのヴァイオリニスト志望者として、
うっかり子どもらしく遊び倒してしまう事の怖さ危うさを叩き込まれ、
我慢する事を身に着けていたからこその判断でもあった。

例外として、この「かべ紙秘密基地」の中で、
完全治癒状態でのヴァイオリンの弾き込みは続けている。
前にも書いたので若干略するが、
一旦「ソノウソホント」で完全治癒してから「分身ハンマー」で分身を呼び出し、
「入れかえロープ」でその分身と入れ替わった肉体を使って、
元々の肉体は「ペタンコアイロン」で一時的に停止して収納。

練習が終われば「入れかえロープ」で元に戻ってから
「ソノウソホント」で完全治癒も取り消す事になる。
愛用のヴァイオリンは、父に頼んで外部での弾き込みを継続してもらっているが、
「タイムコピー」を使ってこちらにも取り寄せて「かべ紙秘密基地」に隠し持っていた。

力一杯時間の限り弾き込むと甘いものの一つも欲しくなるし、
余り時間の進行を歪め過ぎると肉体が成長、老化しかねない気がする、
と言う事で、病院での検査対策もかねて練習には分身の肉体を使っている。

そんなだからこそ、治る、と絶対保障されると言う比較で言えば恵まれた状況ではあっても、
感覚としては遅々として進まない本来の自分の肉体に苛立つのも仕方がない。
とにかく、優先度の低い我欲はすぱっと後回しにして諦める。
今までヴァイオリンのためにそうして来た恭介は、
今回も誘惑が特大であるからこそ、まずは自分でルール設定して封印に挑んだ。

ここ暫くは、ヴァイオリン練習以外のポケット使用を控え、
楽しみと言えばお見舞いに来る幼馴染の美樹さやかと他愛の無い話をする事ぐらい。
後は、リハビリと読書と勉強に黙々と時間を費やしている。

元々、努力する習慣を身に着けて来ただけに、
回復が約束されていると言う恵まれた状況での努力には十分希望を持っている。
それでも、演奏技術とまではいかなくても「つけかえ手ぶくろ」を使えば
人目のない所ぐらい不自由のない人造手足で勉強や日常生活を、と、
思う事は何度でも何度でも何度でもあるが、
意思の力であえて封印して入院生活を送る。

そうやって、今までもそうして来ただろう、
そもそも本当なら出来なかった事だ、とばかりに、
無尽蔵に欲望を叶えるポケットごと煩悩らしきものをまとめて心の押し入れに押し込んで
ひたすら先の先に見える未来だけを見て
小さく小さく黙々と歩みを進めて来た、と言うのがつい先日までの事。

その結果、頭の方が先行し過ぎて体の方から無理だと言って来た、
と、気恥ずかしさ溢れる経験でそう解釈した恭介は、
これ又すっぱりといっぺん楽しめるだけ楽しんでみようと頭を切り替えて今に至る。

  *  *  *

夜、恭介の病室の扉がノックされた。

「いいですかー?」
「どうぞ」

扉を開けて入って来た女性は、顔見知りの若手看護師だった。
いつもの定期巡回、いつもの質問に恭介は答える。
しかし、布団の中では、さりげなく「きょうじき」が発動し、
病室内の三時間が外部の一分に設定されていた。
付け加えると、シフトを確認するのも面倒なので、
この日の夜勤は「あらかじめ日記」で恭介が設定したものだった。

「まだ時間は十分あるし、
たまには少しばかりお話するのもいい事じゃないですか?」
「そうね」

「腹話ロボット」を装着した恭介の言葉に、
彼女は疑いも見せず来客用の椅子に掛ける。
学校に通っていた頃は、身近にさやかがいた事もあって
ごく普通に人間関係を過ごしていたつもりだった。
だが、特に入院してから、只でさえおかしな事をするに当たって、
例え言葉の信憑性にどれだけ下駄をはかせる事が出来たとしても、
少なくとも女性を口説くのには向いていない。そんな自分を恭介も理解しつつあった。

「だから、年頃のダメージを回復するためには、何と言う事もないと。
だから自然な事だとアーダコーダアーダコーダ」

自分の口から発せられる詭弁の山とそれが齎す結果に、
元々は自分の意思とは言え、恭介は心の底から呆れ返る。

「どうかしら上条君?」
「凄く、綺麗です」

恭介は、生唾を飲んで本音をそのまま答えた。
そんな恭介の目の前では、
二十歳を幾つも過ぎていない若い女性が、
昨今ではむしろ実務的には使わないナースキャップだけを身に着けた姿で
飾り気もなくまるで何時もの仕事中の様に立っている。
彼女は、僅かばかり妖艶な笑みを浮かべ、ベッドの縁に裸のヒップを乗せる。

「あ、あの?」
「何かしら?」
「その、おっぱい、どれぐらい大きいんですか?」

実の所、この作戦の決行の前、
チート道具を手に入れた馬鹿者の行動を試す心境になった恭介は、
手始めにタイムテレビで病院の更衣室をあちこち探っていた。

そして、顔見知りでちょっと気になる彼女のいるタイミングを見つけると、
「四次元若葉マーク」と「石ころぼうし」と「とうめいマント」と「フワフワオビ」と
「タイムベルト」と「どこでもドア」の病院脱走セットでそこに突入したりもしている。

そこで分かった事は、どちらかと言うと美人と言うよりまだ可愛いタイプの彼女は
意外なぐらいにグラマーだったと言う事。

暫くストイックに徹していた恭介だけに、
豊満な大人の膨らみと柔らかに見える下半身を持ちながらも、
仕事柄結構な筋肉質で締まる所は締まった全身を下着姿で見ただけでも
直ちに自分一人で欲望を遂げよう、と発想するには十分過ぎた。
十分過ぎたのだが、それでも自制し、そこで自制した結果
何故かどうせならと言う事で今に至っている。

「93センチのFカップ」
「そう、ですか」
「興奮した?」
「は、はい」

ちょっとにじり寄っての問いに、恭介は素直に答える。
既に、「腹話ロボット」のスーパー詭弁パワーにより、
今は恭介の性的好奇心に尽くす事がナースなお仕事だと確信している。

「触っても、いいですか?」
「どうぞ」
(柔らかい………)

まず、頭に浮かんだのはその一言だった。
成人女性として十分に豊かな双つの膨らみ。
右手と、僅かずつ動き出した左手でその感触を確かめる。
温かくて柔らかい、それだけでも、恭介の若い本能はこれはまずい、と警告する。
そして、恭介が何かを口に出す前に「腹話ロボット」が彼の口を塞ぐ。

「僕のペ○スで健康的なオ○ニーのお手本を見せてくれますか?」
「ええ」

かくして、彼女は職業的な手際の良さで恭介の下腹部を裸に剥くと、
右手にローションを塗って既に熱く天を衝くものを握り、
用意されていたタオルを上から被せた。
タオルとローションはあらかじめ用意されていたものだった。

「あ、あっ」

恭介が喉を見せて天を仰ぎ、脱力するまでの時間は秒の単位だった。

「手も自由にならないし、入院してるとね。
でも、オナ○ー自体に害はないけど、
変に刺激的なやり方だと将来困った事になるから、
こうやって適度な圧力で包み込むのがいいの」
「ありがとうございます」

用意されていたぬるま湯での手際のいい後始末を受けながら、
恭介はぽーとした表情でお礼を述べる。
そして、自分の下腹部が清められるのを見下ろしながら、
恭介はもう一度生唾を飲んだ。

「はい、出来た………」
「あの………」
「何?」

優しい微笑みを見ながら、恭介は意を決する。

ー ー ー ー ー

「ん、んっ」

病室に、くぐもった声が小さく響く。
結局の所上半身裸、下半身も半ば裸になった恭介は、
ベッドの上で右腕で彼女に抱き着き、
豊かな膨らみにちょっと顔を埋めてから無心に乳首を吸っていた。

恭介がレンタルDVDで目に付くままにチョイスした、
ごく最近観たDVD映画が随分昔の脱税映画だった事の影響があったのかどうなのか。

ともあれ、寂しい彼には今はそれが必要だ、と、
「腹話ロボット」の力説に頷いた若い女性看護師は、
左手で恭介の頭を優しく撫で、
その内に下半身にタオルを被せて再びローションを塗った右手で
そのタオルの下を優しくしごき、未だにねばっこい青臭い液体を放出していた。

「ちょっと、ここに立って下さい」
「ええ」

看護師が再び恭介の身を清め、衣服を治した後は、少しの間雑談が続いていた。
その間、彼女は恭介よりちょっと大人の成人女性として、
彼女自身は持て余す事はあるのか、その時はどうしているのか、
初体験から体験記、イザと言う時のための実用知識まで、
問われるまま、更にその上の事もあけすけに朗らかに語っていた。

その後で、看護師は恭介にお願いされそれに従う。
そして、恭介は上から下まで可愛いお姉さんナースの結構なプロポーションを目に焼き付けてから、
布団の中で「ウルトラストップウォッチ」を発動させた。

そして、まずは「腹話ロボット」を外すと、
作業用に「つけかえ手ぶくろ」で不自由な手足を人造品に交換した。
必要なものは「ウルトラストップウォッチ」で叩いて時間停止を解除しながら、
私的に用意したローションや汚れたタオルやぬるま湯のバケツを
一度「チッポケット二次元カメラ」で写真化してベッドに隠す。
そして、部屋の隅においておいた機械箱の摘まみを下ろしておいてから、
「ウルトラストップウォッチ」のスイッチを押した。

恭介の目の前で真っ裸で突っ立っていた女性看護師は、
目を真ん丸に見開きながらも何も言う事も出来ず、

「天才ヘルメット」と「技術手袋」で作られた機械箱に仕込まれた
「シナリオライター」からの指令通りに
つつつつーっと両腕を上げてくるくると回転し、

丸見えのおっぱいからその下のお臍、黒い陰り、
白い背中に頼もしい重みを感じるお尻、太腿まで改めて披露してから
恭介が用意したナースキャップを外し元の下着と白衣を身に着ける。

恭介は、それを見届けてから再び「ウルトラストップウォッチ」のスイッチを押し、
布団の中で動いていた市販のストップウオッチの時間を確認すると、
「ウルトラストップウォッチ」で叩いた「ワスレンボー」を手にベッドを降り、
背後から看護師の頭を「ウルトラストップウォッチ」で、続いて「ワスレンボー」で
こんと叩いてから「ウルトラストップウォッチ」のスイッチを二度押しする。
「ワスレンボー」には、「天才ヘルメット」と「技術手袋」によって、
有線の精密記憶喪失タイマーが接続されていた。

ー ー ー ー ー

「あの、どうしました?」

「ウルトラストップウォッチ」の時間停止を解除した後、
そう尋ねた恭介は、実際の所心拍数の急上昇を自覚していた。

「え?」
「いや、なんかぼーっとして」
「う、ううん、なんでもない。
お加減は大丈夫ですね」
「ええ、大丈夫です」

恭介が言うが早いか、つかつかと歩み寄る看護師に恭介は目を丸くしていた。
それは、恭介自身自分でも声が上ずっていると分かるのだから無理はない。

「上条君は真面目過ぎるタイプだから言っておくけど、
こないだの本当に気にしてないし気にしてたら仕事にならないし
一通りの生理現象はもちろん心得てるから。
だから、右手は使えるんだからテキトーに抜くもの抜いてぐっすり寝てちょうだい。
リハビリとかも頑張ってるんだから、以上」

「分かりました」

思いの他、可愛らしいぐらいににっこり素直な返答が返って来て、看護師は内心ほっとする。
只でさえ最近は少々落ち着いたが元々気難しい所のある少年患者相手に、
一歩間違えなくても子どもへのセクハラそのものだが、
まだまだ未熟者の職業的な勘がこれがいい、と言うものに従った言動だった。

かくして、背中からヒップラインをリアル過ぎる描写で心眼透視されている事等露知らず、
若きナースは少々気難しい患者の部屋を去って行く。

それを見届けた恭介は、「つづきをヨロシク」で病室のあちこちの空中に固定し、
「かたづけラッカー」で消しておいた市販の高性能デジタルビデオカメラを回収して、
本日三度目は少々きつくてもありがたい助言に従おうと心に決めていた。

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最終更新:2017年11月20日 03:49