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  *  *  *

ppp.ppp.ppp

寒っ。
冷え込みやがる。

「キョンくーん、起きてーっ」

体は布団を求めてやまない所だが、

「シャンミー、シャンミー、シャミごっはんだよーっ」

妹と言う名前朝一番の刺客は母親からの命令を忠実に実行して、
必殺布団はぎから転げ落ちたシャミセンを掲げてデタラメな歌と共に去っていく。
せめて、毛布をもって露出面積を可能な限り減少させたい所だ。一分でも二分でも。
ああ、カーテンの隙間からは何か白い雪、なんてロマンチックなもんじゃない氷結が見えてるしな。

しかもだ、まずい事に、
体の冷え込みをより質の悪いものにする異常事態が、こちらの体にも勃発してるらしい。
おいおい、何年ぶりだって。大体そんな余力は残していなかった筈だし、
それに、俺の脳内シアターで何が上映されたらこうなったのやら、さっぱり分からん。覚えてない。
やっぱり妥当な所ではMIKURUフォルダであろうか、

いや、夢って事は、おいおいおいおい冗談じゃないぞ又とか言うのか又とか。
まかり間違ってだ、それが出来る心当たりはだった一人だけであると言う以上、
この結果から逆算するとあのやけにグラマーで一糸まとわずにじり寄って来たピンク過ぎる展開、

いや、それはないだろう。うん、記憶には無い。いっぺんたりとも記憶に無い。
だから、違う、そうであってくれ頼むからそういう事に
だから、無いんだって。今から想像してる場合じゃないだろドラ息子が。

とにかく、母親こだわりの朝食まで時間がない。
キャスティング的に変更の無い第二の刺客が舞い戻って来たらかなり面倒な事になる。
まずは着替えだ。それはいつも通り。
着替えた後で、包み込んで隠匿して回転開始まで気付かれない位置関係をキープしつつ洗濯機へと潜入させる。
その手順の脳内確認と着替えの動作を同時進行で展開している最中に、俺の足は何かを蹴った。
こんな所に何を放り出した?

  *  *  *

諸々の辻褄を合わせ、朝食から身支度まで辛うじていつも通りに外に出ると、寒かった。
文化祭前後までやたら暑かった筈なんだが、シベリア寒気団の連中はあくまで律儀に出番を待っていたらしい。
アイスピックでつついたとしたら、良い感じにカチ割れるんじゃないかって所まで、
抜かりなく確実に零下に冷やしてくれたもんだなやれやれだ。

少なくとも、長い坂道の通学路がより一層憂鬱になるぐらいの効果はあったって事だ。
しかも、ハルヒはハルヒで何か難しい顔をしてたっけな。
まあ、あの様子からして最悪の夢見と言う俺が想定した最悪過ぎるシナリオだけは回避されたらしい。

これは本当にやれやれだ。そして、まあこの時期の事だ、
あの仏頂面の向こうでぐつぐつ煮込んでる匂いぐらいは見当もつくさ。

それが当たれば又、一波乱あるんだろうが今日の、
ああ、放課後まではSOS団雑用係にしては平穏な時間って事にしといてくれ。
それで、実際に平穏な一日が半分ほど終わって迎えた放課後。
俺はちょっと早めに部室に向かう。

「長門だけか?」

俺の問いに、長門は本からちょっと顔を上げ、ミリ単位で頷く。
その長門はいつも通り、部室の片隅でパイプ椅子に座り、
ひっそりとSF小説のページをめくっていた。
ん?眼鏡…いや、眼鏡はとっくの昔にやめたんだったな何言ってんだ俺?

早々に暖を取りたい所だが、ここはスイッチだけを入れて用事を済ませよう。

「長門」

俺の呼びかけに、長門は本から僅かに目をこちらに向ける。

「これ、何だか分かるか?」

俺は、長門にトランシーバー型の機械を差し出す。

「俺の部屋にあったんだ。見た事も無い機械だ」
「先取り約束機」

相変わらず話が早い奴だ。相変わらず話が早すぎて必要最低限にも追い付いていない。

「異時間同位体との間で契約を締結するために用いられる」
「異時間?」

って事は朝比奈さん関係か?
さっき、ここに来る途中で会った時は鶴屋さんと一緒だったからな。
タイミングを見て、ハルヒの目をかすめて確認しておく事が、気配。
ああ、長門も察したか。

「待たせたわね!」
「待ってねーよ」

一人しゃがみ込み、電気ストーブに手を翳しながら応じる俺。
全く、いつもながらに百万ワットの団長様だぜ騒々しい事この上無い。
ああ、どうやらこっちからすりゃ悪い予感がまとまったみたいだな。

実にはち切れそうに爆発的。要約すりゃあ元気いっぱいって事だ。
そんなハルヒ団長閣下のフルパワーを前にすりゃあ、
悪いが何と言うか、真夏の真昼の太陽の側で月がなんかちょっと妙な光を発していたとしても、
普段無口な宇宙人謹製読書アンドロイドがけったいな戯れ言を生でツイートしていたとしても
発見に遅れが生じるのも無理からぬ所、だったんだろうな。

「………………………
……………髪の長い涼宮ハルヒ……………
……………照れ屋で純情可憐な眼鏡っ娘文学少女……………
……………情報統合思念体のいない……………普通の人間の普通の少女……………
……………ユニーク……………」ペラッ

J・S・KYONの休息-了-