昼休みの校舎裏、その隅っこの更に暗がり、そこに地味な生徒が一人佇んでいる
「・・・・・・」
確か鹿山亮・・・だったかな・・・成績は中の上、運動は下の上、どこにでもいそうなメガネ
特徴と言える物は寝相がいい事と割と大人しいタイプだという事くらいか

しかしコイツも運が悪かった・・・どこまでも普通だってのに、入学直後の不良共の洗礼に巻き込まれたのが運の尽き
否応無しに不良共に目を付けられて、その空気は1年にも伝わり、イジメられ始める
今じゃ学校内で最も注目を浴びるイジメられっ子(笑)

「この学校は基本放任主義だしなー・・・」

先生に助けを求めた所で学校中の不良を相手にしようなんて先生がいる訳ない、
面倒くさい物は放っておく人間の性というヤツだ、第一助けなんぞ求めればイジメがヒドくなるしな

まぁそんなこんなでイジメは放っておけばエスカレートするもんで
授業中だろうが何だろうがイジメられまくり;;
今じゃこんなトコで昼休みを安全に過ごすのが学校で最大の楽しい時間という訳だ(哀)

「!!」

慌てて携帯をイジリ始める・・・メールが届いたんだろうな
誰にも見つからないようにマナーモードにする周到さ、出来る限り身を縮めてガンバっていた努力
それでも不良が暇潰しをしようと思えばそんな安息は吹き飛ぶ・・・
無論そのメールを無視してまで休暇を満喫する事は出来る、その後の制裁が怖くなければ─

「哀れだな・・・」


今日のメニューはトランクス一丁でパトラッシュごっこらしい
どこで拾ってきたか分からないようなフライドチキン人形を引きずりながら、
4つん這いで校庭を歩かされている

「・・・・・・アイツでもいいかな」

うん、次の所有者はあいつでいいかも知れない
周り中全員が敵という事は、要するに回り全てを客観的に見れるという事だ
そんな奴は中々いない、渡すならそういう奴の方が面白いかもな・・・

「もうちょっと様子を見てみるか」







「やっと・・・やっと終わった・・・」
今日、本当に長い長い一日が終わった・・・
ピッカピカの一年生?もうオレ、入学三ヶ月でボロ雑巾に近いんですが・・・

夕闇に染まりつつある町を、長い影を引きずりながらトボトボと歩き続ける
家までは約12Km、自転車なんていう上等な物は持っていない

「今日はいつにも増してヒドかったな・・・」
殴る、蹴るは日常茶飯事とはいえ、皆の前で恥をかかされるのだけは未だにツラい、殴られるのが辛くない訳ではないが
「ん?あれ・・・」
携帯電話にメールが届いた・・・入学祝いに買ってもらったヤツを不良のボロボロのと交換させられた物だ
【今から第二倉庫に来い、5分以内な】

            • え?
ここから走っても学校まで軽く1時間はかかるんですが?
ていうか2時間くらいかけてここまで来ていきなり引き返すの・・・?

色々と平謝りしつつカンベンしてくれとのメールを送ってみた
─返事は期待も予想も寸分違わず裏切ってはくれなかった─

【いいから走って来いつってんだよ殺すぞ?】

「・・・・・・」
葛藤・・・─ここまで来たってのに引き返すか─・・・ロクな用件ではあるまい
しかし行かざるを得ない
行かなければ何をされるか分かったモノではない、ヘタをすれば冗談抜きで海に浮かぶ事になる

「だークソ!!」

全力で走って(途中走りつかれて歩いたりして)1時間と15分・・・時計は既に8時を回っている
息も絶え絶え、満身創痍、目なんて完全にイッちゃってる─

第二倉庫・・・体育館の横に設置された広い用具倉庫・・・バーベル等の体を鍛える道具が置いてある
そして最近まで女子校のこの学校で、好き好んでここに集まる人間は少ない、そう、人が来ないのだ─

[※入学直後に探検気分で鹿山がうろついて不良の喧嘩に巻き込まれてイジメられる原因になった場所でもある]

「ハァッ・・・ゼィ・・・コヒュ・・・ヒィハァ・・・」
完全に死に掛けで・・・それでも尚第二倉庫(イジメられる場所)に到着した鹿山・・・しかし・・・そこには・・・

─誰もいなかった─

そこで鹿山の意識は途切れた


[不良達の会話(カラオケボックスにて)]
「そだ、アイツん家遠いって聞いたんですけど、今から学校に呼び出すってのはどうですか?」
「お、いいねぇー・・・んじゃメールで呼び出すか」
「どのくらいの時間で来させます?」
「とりあえず5分でよくね?明日は時間に遅れたってことでボコろうぜ」
「アハハハハ(爆)」

[再び第二倉庫]

今は何時だろう
どうやらあのまま気絶していたらしい・・・
乾いた笑いが込み上げてくる
とても笑えるような気分じゃないのに・・・

「ははっ・・・はは・・・」
なんで自分だけこんな目に遭うんだろうか・・・あの日ここで喧嘩を見てしまったから・・・?

─違う─



「弱いからか」

人間の本質は弱いものイジメか・・・いや人間だけじゃない、生物全てに言えることだ
弱いから強い側に命令される
弱いから強い側に食われる
弱いから強い側に殺される
同じことだ

「ハハ・・・ヤだな・・・弱いのって・・・」

相手が数が多かろうとなんだろうと・・・物ともしないような「強さ」が・・・

「そうだねぇ~・・・」
「・・・?」
聞きなれない声が隣からするな
「誰・・・?」
「ん~・・・誰でもいいじゃないか」
「そうだね・・・」
オバケかな・・・もうオレの体なんかで良ければ食っちゃっていいよ・・・
「オバケとは失敬な・・・もうちょっとマシなモンだよ」
考えてることが分かるのか・・・少なくとも人じゃないな・・・
「とりあえずコレ・・・やるよ、好きなように使え」
ゴソゴソと制服をイジる感触で、ポケットの中に何かが入れられたのが分かった
「オレは・・・あのアレ・・・○EATHNOTEの○ュークみたいなモンだから
これからお前のことはいつも見てるよ、いやストーカー行為ってのは分かるけどさ・・・」

しかしそこでまた意識は途切れ始めた
最後に聞こえたのはこれだけだった

「それ使って出来るだけ楽しんでくれよ、それを見るのが俺の楽しみなんだから、Good Night」


[─まァそんなこんなで○ラえもんのポッケを手に入れた訳で─]



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最終更新:2009年06月20日 18:07