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「…え?」
ある日、小波は学校で二人の後輩から妙な質問を受けていた。
「自信を持つにはどうしたらいいかって?」
コクコクと思いっきり首を縦に振る後輩二人。
赤よりのピンク色の髪をした、ツインテールの小柄な一年生・犬川乙(きのと)と、
同じく一年でショートカット・斬れそうなくらい太いアホ毛・肩幅はしっかりしてそうなのに乙と同じぐらいの身長・そしてボソボソとした聞き取るのに苦労するような音量で喋る無口な少女の犬飼栞を見て、
彼女は「常に視られることを意識すると、背筋も伸びて自信に繋がる」と答えた。
「なる程、「視られること」ですね! ありがとうございます!」
喜び勇んで駆けて行く二人を見て、彼女は「大丈夫かしらあの二人、何か勘違いしていなければいいけど…」と呟き、教室に戻ろうとし…
……廊下でばったり小笹に会った。
「あ…今日は」
「…あ…ひ、久しぶりですわね…」
何故か小笹は小波から視線をそらす。
「昨日も学校で会ったはずなんだけどね…」
「うるさいですわね! その…あの日から、お互い避けていましたから…」
彼女は小波に責められた事を気にしていたようだ。
「そうね…最近はあなたの待遇を思い出すと、嫉妬して自分が何をするかわからなかったから…」
その呟きに小笹が過剰反応した。
「んなっ…! 私があなたに嫉妬されるですって!」
「ちょっと、声が大きいわ」
廊下の生徒達が何事かと振り返る。
「む…」
「そうね…ちょっと、屋上に行きましょうか」
ざわめく生徒達に「なんでもないわ」と言って、小波は小笹と屋上へと向かった。


…屋上に出ると、まだ風は強く、そして冷たかった。
「……本当はね、あなたのこと妬ましかったの」
壁に背をもたれさせ、小波は呟いた。
「だって、あなたったらご主人様の部下に拾われたでしょ? 彼、なかなかいい人みたいじゃない?
 あなたのこと、本当に好きみたいだし…」
「なっ…ななっ…」
言われて小笹の顔が赤くなり、言葉が詰まる。
「それに比べて私は、いつまで経ってもご主人様の所有物よ? 何度も呼び出されたし…気がつくと喜んでる自分がいて…本当、自分がわからなくなってきたわ」
「ぅ…た、確かに、私の方があなたの上にいますわね…で、でも! 私だって…あの男に…」
それ以上は小笹には言えなかった。小波の目が、今までと違う輝きを持っていたことに気がついたから。
「フフッ…慰めてくれてるの? ありがとう。でも、必要ないわ。だって…」
俯いていた小波が顔を上げる。小笹には一瞬、彼女の目が濁っているように見えた。
「今はとっても、あれが気持ちいいから」
フフフッ、と小声で怪しく笑う。
「まったく、なんであんなに嫌だったのかしら…嫉妬から小笹さんを責めて泣かせてやりたいと考え始めていた自分が馬鹿みたい…」
小笹は今のブツブツと呟き続ける彼女から得体の知れない恐怖を感じた。
「あ、あの…ちょっと…」
「…ところで…」
「…あっ!? な、何かしら? ですわ?」
恐怖による混乱から一瞬で正気に戻るが、声が裏返る小笹。
「大丈夫? 声が裏返ってるけど…」
「な、なんでもありませんわ! で、何かしら?」
なんとか平静を保とうと声を整える。
「さっき、犬川さんと犬飼さんが、妙なこと私に聞いてきたんだけど…何か知ってる?」
「…妙なこと?」
「何でも、自信をつけるにはどうしたらいいかって…」
聞いた途端、小笹がワナワナと震えだした。
「…おのれあの二人! …よりによって犬坂小波に尋ねるとは~!!」
「…あなたの仕業だったの? 一体何故?」
「ああ、胸を大きくしたいけどどうすればいいか、って聞かれたから、自信を持てば自ずと胸だって大きくなるって教えてあげたんですわ」
「………」

それを聞いて小波は何かを考え始めた。
「…あの…一体どうしたんですの?」
小笹は不安に包まれた。今までこんな彼女を見たことはない。
「ええ…ちょっとね…」
小波は怪しい笑みを浮かべ、「ごめんなさい…彼氏とお幸せに…」と言うと、階段を下っていった。

所変わって体育館。
「……いた」
小波はそこへ来ていた。
自分も知っている後輩二人の知り合いで、さっき聞いた質問内容から、もしかしたら吾の元にも来るかもしれない…と思ったのだ。
そして吾が校庭にいなかった以上、体育館か更衣室に要ると踏んだのだが…果たしてその予想は当たっていた。
「やっぱりあの話題について聞いてるのかしら…」

やはりその予想は大当たりだった。
吾は今、ちょうどその話題を直に聞かれ、答えているところだった。
「僕は大きくて困ってる方だからねぇ…大きくなる方法ねぇ…」
後輩達に話しかけていた吾の脳裏に一瞬、『あの男』のことが頭をよぎる。
……あの人なら…なんか簡単に出来そう…
と考えてしまうが、自分がとんでもないことを二人に教えようとしていたことに気付き、頭をブンブンと振り不審がる二人の視線を受けながらなんとか納得できそうな答えを探す。
「そうだ、牛乳でも飲んでみた……ら?」
後輩二人にそこまで言ったところで、吾は固まった。
小波が、なんかどこか怖い顔で近づいてくるのだ。いつもならば怖いと思ったことがない表情なのに。
「あ…」
そして気がついた。彼女のことが怖いのは、自分があの時彼女にも襲われたからだと。
「あら、二人もここにいたのね」
「あ、犬坂先輩」
「………」
乙は元気に挨拶を、栞は無言でぺこりとお辞儀を返す。
「二人はそこで待っててちょうだい。ちょっとだけ、吾さんにお話があるの」
「え、あの、私達は…」
「いいから。吾さん、ちょっと…」

そう言うと、小波は吾を連れて二人に話が聞こえないように距離をとった。

「ねえ吾さん…どうして、あの二人にご主人様のこと、教えてあげないの?」
「…っ! や、やっぱり、あの人ならできるんですか?」
「ええ。私も何度も大きくしたり元に戻したりされて…ふふっ…恥ずかしかったけど、気持ちよすぎて死ぬかと思っちゃった」
頬を染め、妖艶な笑みを浮かべる小波。
「せ、先輩は…あれが、気持ちいいんですか?」
「あら? じゃあ、吾さんは気持ちよくなかったの?」
「あ、当たり前ですっ!」
「そう…」
小波は少し考えると、すぐに攻め方を変えた。
「確かに、私もちょっと前までは嫌だったわ」
「だったらっ…」
「でも、気持ちよかった。認めたくなかっただけ。吾さんもそうなのよ」
「そんな…」
すかさず、揺さぶりをかける小波。
「じゃあ、仮に気持ちよくなかった、としておきましょう。で、吾さんはあの二人をどう思うの?」
「どうって…後輩だけど?」
「それだけかしら?」
小波の瞳が怪しく光った。どうやら心の底まで主に服従してしまったらしい。
「本当はうっとうしく思ってたんじゃないの?」
「そ、そんな…なんで…」
吾が驚いたのは、小波がこんな発言をしたからというのもある。
しかし、それ以上に、今いわれたことで自分が本当に、少なからずそう思ってしまっていたことに驚いていた。
「だってそうでしょう? 自分はあんな目にあったのに、他のみんなはいつも通り、見せ付けるように元気で…見ていて、多かれ少なかれ嫉妬ぐらいするわよね」
「そ、それは…」
「自分は変なことで体が喜ぶようにされちゃったのに、他の人たちはいつものまま。それどころか…」
「そ、それどころか?」
「吾さん、あなた、自分が狙われた理由が自分の体…原因の一つが、胸のせいだと思わなかった?」
「!」
「それなのにあの二人は胸を大きくしたいとか言ってあなたに聞いてきたのよ? どう? それでもあの二人を許せるかしら?」
「………」
吾は無言で俯いた。
「…だから……ね。あの二人に、自分が一体どんな馬鹿馬鹿しい事をしてるんだろうって、解らせてあげなさい」
しかし、それでも吾は答えない。
「本当にいいの? こんなチャンス逃しちゃったら、吾さん、あなたご主人様にお仕置きされちゃうんじゃないの?」
「!! そ、それは…」
吾の心が、大きく揺れた。小波は吾の耳元に顔を寄せ、囁きかける。悪魔の囁きを。
「あんなかわいい子が二人もなのよ? 逃しちゃったら酷い目に合わされるかもしれないし、逆に差し出せば、あなたへの被害が減るんじゃない? ……ご褒美も貰えるかも…」
「あ…」
吾の心が再び揺れた。しかしそれは後輩を差し出すことに対してではない。
あの日以来、吾の体には異常な性癖が芽生えていた。
それは、排泄の度に体が絶頂を迎え、言いようのない幸福感を覚えること。
あまりにも絶頂と同時に放尿することを強制され続けたため、体が放尿するたびに絶頂を迎えさせるようになってしまったのだ。
いわゆるパブロフの犬である。
無論、そこには主の道具使用の効果もあったのだろう。『ハッピープロムナード』などという道具で放尿・絶頂と同時に幸福感を与えられ続けたことが原因と見て間違いなかろう。
それ故、吾の体は主による異常な行為を求めてしまっていたのだ。主との異常性交をすることによって、もっと大きな幸福を味わえるのではないか。そう思い始めてしまっていた。
そしてその思いは『体を元に戻したい』という想いを無意識の部分から吾の思考を侵食し始めていたのだ。

「…そう…だね…」
吾は、ゆっくりと頷いた。
「僕が悪いんじゃない、だって先輩やご主人様が怖いんだから…誰だってそうするよ…それに、御褒美として…この体、元に戻してもらえるかもしれないし…」
そう自分に言い聞かせ、後輩二人のところへ戻っていった。

「あーっ、先輩、もうお話は終わったんですか?」
「うん…」
「………」
「…えっ、何か違う、って? どうしたの栞ちゃん?」
どうやら栞は雰囲気の違いに気付いたらしい。
「なんでもないよ…ところで二人は、胸を大きくしたいんだったよね?」
「はいっ!」
「………」
相変わらず、二人は元気よく首を縦に振る。
それを見て、吾は腹が立ってきた。
(いい気なもんだね…僕はあんなに恥ずかしい目に遭わされたのに…胸を大きくしたいんだって?)
(そうだよ…僕が襲われた理由もきっとそのせいだよ…! そんなに大きくしたきゃ…!)
だが、吾は感情が顔に表れることを隠すのが下手だった。そこは小波が上手くフォローした。彼女らの間に入って、二人が吾の顔を見れないように体で隠し、話しかけた。
「二人とも、大きくて困ってる人にそんな聞き方をしてはいけないわ。ねえ?」
小波が吾の方を見て話しかけると、吾が正気に戻る。
「え、あ…はい……」
慌てて顔を触り、表情をいつも通りに保とうとする吾。
「えっと、二人とも、知り合いにそういうことの出来そうな人がいるから、紹介するよ」
「いいんですかぁっ!」
「……っ!」
キラキラした目で話しかけてくる二人。
「…うん。じゃあ連絡を取るから、ここで待ってて」
「行ってらっしゃい。じゃあ、私もこれで」
小波は吾と一緒にその場を去った。
吾の後ろで、彼女がニヤリと笑ったことを、誰も気付かなかった。

「あ、もしもしご主人様…実は…吾さんが…」
「あの…だからその二人は僕が連れて行きますから…その…」
「まあ、そういうことです。吾さんも今回活躍してくれたから、彼女にご褒美の一つも上げてくださいね」
「あと、話の流れから…医者っぽく偽装していたほうが、いいと思う…」
小波が携帯を閉じると、すぐに校門近くの路地裏に『どこでもドア』が現れた。

「先輩、こっちにその人がいるんですか?」
「…うん。きっと、彼なら君達の要望をかなえられると思うよ」
「……」
「栞ちゃん…そんなに急がなくても逃げないから…」
二人は気付かない。
後ろを歩く小波が怪しく笑い、まるで監視や品定めでもするかのように彼女達を見ていることを。吾が顔を怪しく歪めていることを。
「さあ、ここだよ。入って」
そして建物の入り口のように偽装された『どこでもドア』から、二人は入っていった。

………
「やあ、よく来たな」
そして今、彼女達の前には…
病院の一室のように偽装された空間と、白衣に身を包んだ男、『主』が立っていた。
「………」
「え、怪しい? だめだよ、そんなこと言っちゃ…」
「………」
「本当に出来るのかって…先輩達がそう言うんだから出来るんじゃないかな?」
主の姿を見るなり、二人はなにやら失礼な会話を始めた。
吾はいつ彼が本性を現すかとヒヤヒヤしている。もっともそれは自分を偽る建前で、本当は、「いつ自分が裏切ったことをばらされるかヒヤヒヤしている」なのだが。
「あー…用件は軽く聞いている。とりあえず、そこのベッドに横になってくれ」
二人は疑うこともなく、主の指差した先にある二つのベッドにそれぞれ横たわった。
「それじゃあ二人とも、力を抜いて…そうだなぁ…」
主は栞の傍らに立つと、まず彼女の上体を起こさせ、後ろから胸に優しく手を這わせた。
「………」
栞は無反応で主のされるがままになる。診察の一種だと思っているのだろうか。
主の手が優しく栞の胸を揉み、こねるように動く。
「……っ…」
しばらく続けていると、いい加減栞の顔に赤みがさしてくる。主は怪しまれないように手をどけると、再び彼女をベッドに寝かせ目をつぶらせた。
「なるほどな…さてと、次は…」
主が乙の方を振り返ると、彼女は今の光景を見てたのか、すっかり真っ赤になっていた。
「…覗き見とは趣味が悪いな」
「…はっ…あ…あわあわ…」
「そんなに目を白黒させるな。冗談だ」
同じように乙の上体を起こし、胸を揉み始める主。
乙は胸をゆっくりとこね回され、顔を赤らめ、しばらくすると熱いと息を吐き始める。
「なるほど、乙ちゃんの方が少し大きいみたいだね…」
「は…はいぃ…」
いつもの元気はどこへやら、胸が大きくなることを信じて無抵抗で動こうともしない乙。小さな体に不釣合いな熱い息を吐きながら、おとなしくされるがままになる。

…ふと、主が気がつくと、吾が恨みがましそうな目で見つめていた。おおかた、自分に比べて随分とこの二人が優しくされていることが気に入らないのだろう。
その意図を読み取った主は『催眠グラス』と融合させた眼鏡をかけると、乙の上着をめくった。
「じゃあ次は、直接触らせてね。もうちょっと詳しく調べるから」