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第六話「小心者の休日」

今日は普通に寝た。ぐっすり寝るのはいい。『瞬間寝ざぶとん』もいいけど、たまにはこうして寝るべきかな?
ま、寝てるはずの時間を『時間貯金箱』に時間を貯められる分便利だが。
さて、今日は何をしよう? 俺は道具ガイドを取り出し、使えそうな道具を探す。
…かるがる手ぶくろとスーパー手ぶくろの違いって何だ? ま、んなこたどうでもいいか。
あなただけの物ガス…朝美に使うか? でも、もう必要ないかな…
エアコンボール?周りの気温を調節できる、か…よし、電気代の節約に使おう。
逆世界入りこみオイル…ああ、あったなあ。入りこみ鏡を巨大化すれば事足りるな…
いろいろとリストを見た俺は、『衛星テレビ』を打ち上げる。これでいつでも地球上のどこでも覗くことが出来る。
さながら今の俺は、地上の人間すべてを見下ろせる神と言ったところか? 以上、神様ごっこおしまい。
ん?神様ごっこ? そういえば神さまステッキ、神さまプール、神さまぼう、神さまマイクというものがあったな。
強化・改造あるいは応用しだいでいくらでも使い道が広がるな。とりあえずメモしておこう。
さて、暇つぶしに農業でもやってみるかな? えーと、確か…あった!『趣味の日曜農業セット』。田植えを楽しんで土になじんでみよう。
えーと、これを行う部屋を出して…かべ紙格納庫でいいかな?
いや待て!!
俺はビッグライトで『入りこみ鏡(ミラー)』を巨大化させ、それをかべ紙ひみつ基地の中の壁に貼り付け、鏡の中の世界に入り込んだ。
俺は外に出て、『鏡の世界』の世界(ややこしいな)を見渡す。今度この世界でキャンピングカプセルを使って泊まるのも面白いかもしれない。

この世界には俺以外誰もいないのだから、俺の王国を作るのも面白い。『穴掘り気』と『地下工事マシン』で一大地下帝国を作るのも面白い。飽きるまでそういうことを行える、その力は俺にはある。
俺は見晴らしのいいビルの屋上に『趣味の日曜農業セット』をセットする。さて、水を引き、米と、もち米の種(でいいのか?)を植え…
あーーーーーっ!そうだ、俺はアレの改造をしたかったんだ!
俺は農作業を中断して(実際に作業する前だったのだが)、もはやお馴染みの『天才ヘルメット』『技術てぶくろ』に加え、『時門』を取り出す。
俺は時門を改造し、『特定の一部屋の時間の流れのみ遅くする装置、時門・改』を作りたかったのだ。全世界一律に時間の流れが遅くなったらあんまりお得って感じしないし。
時間制御の道具が相手だけあって、改造には相当の時間がかかるだろう。
俺は表の世界に出て、自分の部屋で時門の改造を始めた。

…………ふう。終わった。もう午後の二時も近い。さて、何をするかな…
俺は『衛星テレビ』を取り出し、美女を探し始めた。朝美を落としたばかりだというのに、俺は何を考えてるんだか…なんて。顔は好みじゃなくても美人で高飛車な性格なら、落としたとき楽しいだろうな。
一通り町を見た俺は『スパイ衛星』を取り出し、朝美の様子を見ることにした。

そこには、部屋でおびえている朝美と、朝美にニヤついた顔で話しかけている中年男の姿があった。
ん?なんだこの中年は?朝美がおびえているのはこの男のせいか?
男は朝美に何事か言った後、部屋を出て行った。
朝美は男が部屋から遠のいたのを確認すると、鍵のかかった引き出しを開け、中からトランシーバーを取り出した。

ってーことは…

『…じんさま…ご主人さま…聞こえますか…』
やっぱり。


「おお、聞こえるよ。」
『…グス…お願いします…助けてください…ご主人さまぁ…』
「ああ、すぐ行く。泣きやめ。」
俺は時間を止めると、すぐに朝美の部屋に向かった。

「で、何だ?」
朝美「はい…実は…」
要約するとこうだ。朝美があの中年オヤジに部屋を盗撮され、言う事を聞かなければその映像や写真を世間に公開するというのだ。そういえば朝美の部屋を盗撮してたときもあのオヤジがビデオに写っていたような…管理人だからと気にしなかった俺は馬鹿ですか?
朝美を襲った俺がそいつに文句を言う権利もないのだろうが、俺のものに手を出されたという事が気に入らなかった。
どうする?物騒だが殺すか? 道具を駆使すれば証拠を消す事も出来るだろう。
いや、しかし万が一証拠が残ると…とりあえず情報集めだ。
「で、あの男について、何か知ってないか?」
朝美「いいえ…わかりません。」
まさか何も知らないのか…? コイツならありうる…ま、いい。全力で情報を集め、あとでコイツにむだな労力をかけたお仕置きと称していろいろとしてやれる。何をするかは…すべてが終わった後、考えよう。
まず俺は時間を止め、『この寮にいてあの男について有益な情報を持つ人物』を探した。『尋ね人ステッキ』を改造し、倉庫に閉じ込められていた女教師を捜し当て、そいつの髪の毛を一本回収し、『アンケーター』に入れ、質問を開始した。
…数分後。
どうやらあの男は加藤という偽名を使っており、婦女暴行が目的でこの寮に忍び込んだらしい。その際、本物の加藤はどうやらこの男に殺されたらしく、加藤の知り合いを月曜につれてきて偽加藤を警察に引き渡す予定だったらしい。
だが、偽加藤にその話をしたのがまずかった。それが起爆剤となったのかどうかは分からないが、彼女を電話で呼び出し、監禁・暴行に及んだというのだ。また、奴はその後何人かの女子生徒を襲う予定だったらしい。ということは…
俺は管理人室へ行き、パソコンを起動した。朝美に見せてもらった写真はパソコンからプリントされたものであった。ならば……………ビンゴ!!

管理人室のパソコンには、女子生徒六人の名前がつけられたフォルダがあった。無論、その中には朝美の名もある。
俺はそのパソコンから女子生徒六人のデータをコピーすると、データを消そうとして…思いとどまった。
消された事を知った偽加藤は、朝美たちに暴力を振るうかもしれない。下手に事を荒立てる可能性がある。ならば…
俺は名前の書いてあった女子の部屋を確認した後、朝美のところへ戻った。恐らく奴は月曜になれば出て行くだろうから、その時まで俺が彼女を守ってやればいい。
他に数名の女子が被害に遭っていたようだが、それはそれで横から見てればおかずになるだろうし、偽加藤から守る代わりに体を要求する事も出来るだろう。
……ん?でもやるこたぁ一緒だからそううまくいかないか?ま、いいか。奴のお陰で美女の資料が手に入ったと思えば。
俺は時間を動かす。

「…待たせたな。」
朝美「え? いえ、私は待ってなどいませんが…」
ま、朝美も俺がまた何かしたということぐらい分かっているだろう。
俺はこれから何をするか話す。内容は偽加藤が来たら俺が何とかするから、隠れてろというものだった。
何をするかというと、『ツモリナール』を使う、といったものなのだが。

午後十時…
俺は朝美の部屋に偽加藤が来るたび、『ツモリナール』を使いごまかしてきた。そして、ふと思った。
一体やつは何時になれば出て行くんだ…?
俺は『タイムテレビ』を取り出すと未来の管理人室を見た。ヤツが五時に寮から出て行く姿が見えた。
今はもう暗い。ならばヤツに時間を錯覚させ、早めに寮から追い出すことは出来ないか?
あとはやつが時計を見る前に適当なところで眠らせればいい。

俺は偽加藤が管理人室に戻るタイミングを見計らい、『グレードアップ液』をかけた『ツモリナール』を偽加藤に聞かせ、時間を止めて柱時計の針を進めた。
…すると。
案の定、偽加藤は時間を勘違いして寮から出て行った。俺は後始末のため、いしころ帽子をかぶって後をつける。しかしすぐに、偽加藤がつぶやく。

偽加藤「そういや、俺はパソコンの中のデータ、消したっけか?」

偽加藤はそうつぶやくと、なんと寮へ戻った。俺は後をつける。ばれる前に何とかしなければ…
いざというときは『ブラックホールペン』の中に追放することも考えた。
管理人室に戻ると、一人の女生徒がパソコンをいじっていた。すぐに偽加藤がその女生徒と話を始める。
どうやら彼女は偽加藤のパソコンのデータを消去したらしい。あとは警察に電話するとの事。すると偽加藤は彼女に襲い掛かった。
これはいけない!俺は時間を止めて朝美の部屋に行くと時間を戻し、『テレパしい』で即座に彼女に事情を伝えると、
朝美を管理人室に連れてきた(なおこの時、いしころ帽子を外していない)。
朝美は黒電話で偽加藤の後頭部を殴ると、襲われていた女生徒に叫んだ。
朝美「は、早く警察に電話するんだよ!!」
朝美はない頭を絞り、偽加藤との会話で時間を稼ぎ始める。俺も手伝ってやろうと思い、偽加藤の胃に『スロー』を放り込む。
偽加藤の動きがゆっくりになると、すぐにパトカーのサイレンが聞こえてくる。
つかまったときもスローが効いていると大変なので、今度は『クイック』を胃の中に放り込む。すると偽加藤は朝美を突き飛ばして逃げ出した。
俺は急いで後を追う。

偽加藤は塀を乗り越え、着地した直後、走ってきたパトカーに引かれて死んだ。
…死んだ、か…
おそらく朝美達には事情聴取が行われるだろう。二、三日会えないかな。時を止めて移動し、朝美に事の顛末を伝え、俺は自分の部屋に戻った。
朝美は別れるとき、泣きそうな顔をしていたが…どうやら理由は俺にかわいがってもらえなかったかららしい。

やれやれ、新しい獲物でも探すかな?
俺は『衛星テレビ』と『タイムテレビ』を併用し、新しい獲物とその弱みの捜索にとりかかった。
実はさっき町を見渡したとき、泣かせたら楽しそうなコを見つけたんだ。
フフフ…我ながら面白いアイデアが思いついたぞ…

俺は次のターゲットを決めてから、偽加藤の撮った盗撮映像を見た。
そして次はどうやって朝美を責めるか、次のターゲットはどう責めるかなど、いろいろなことを考えながら、その日は眠りについた。