※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

エピローグ

二限目の休み時間。
「……ん?」
女生徒Cだ。AとBの姿は見えない。まあ……あんな痴態を見た後だしなあ……
しかし気になる。普通、いじめっ子というものは弱い人間だ。大勢集まらなければ怖くはない。
でも。
その暗い情念を秘めた表情に胸騒ぎを覚えた夕貴は『することレンズ』を出した。
「!」
Cは、またどこかに希美香ちゃんを呼び出したのか。
体育館裏みたいに見えたけど。
……行こう。

「……な、何でしょう……」
ドン!
「あうっ!」
問答無用で希美香の胸元を掴み、そのまま体育館の壁に叩きつける。
「うるさいわよ」
「す、すみま」
ドッ!
「っ!は……か、くふっ!」
「うるさいって言ってんでしょ!調子に乗ってんじゃないの!?」
謝ろうとした希美香の腹に一撃。そしてぐりぐりと壁と拳の間で腹を嬲る。
話を聞く気はまったく無い。
Cは胸ポケットからカッターを出して、希美香の制服の胸元に突きつけた。


「!?」
「!?」
肉の裂ける感覚がCの手に伝わる。
血の色が希美香の目に映る。
「……何やってんだよ」

笹本夕貴。

「この子に何しようとしてんだよ」
Cのカッターの刃を……素の右手で掴んでいる。
「は、離してよ……!」
グイと引けば、また肉を切る感覚。
その右手からの感覚の恐怖に、Cの方が先に手を離す。
血の上った頭から、すっかり血の気が引いてしまった。
「どうしたんだよ?切ろうとしてたんだろ?」
カッターの刃を握ったまま、夕貴は希美香とCの間に割り込む。
希美香は夕貴の背中をぎゅっと強く掴んで離さない。
「服でも髪でも、切る気だったんだろ?肌切っても別にいいと思うけど?……覚悟が足りてないね。
 殺したいほど憎い相手でもないのに、くだらない理由で人を傷つけようなんて中途半端な根性で」
カッターの刃を強く握る。
「……この子はあたしの友達だ。二度と手ぇ出すな!」
バキリ。
刃が折れて、夕貴の血飛沫がCの頬にかかった。


Cがほうほうのていで逃げ出した後。
「あ……ごめん、希美香ちゃん。怖がらせて」
希美香はぶるぶると首を振ると、夕貴の右手をハンカチでくるんだ。
「そ、そんな事ありませんですよ……う、嬉しいんです……センパイ……」
「希美香ちゃん……」
「私、前もこんな事っ、されて……また、服切られて……いじめらんじゃないかって、って」
大粒の涙を流しながら希美香は話す。
ところどころ支離滅裂だったが……心が痛い事は、夕貴にもよくわかった。
「センパイが、来てっ……夢、みたいで……すごく、すごく嬉しかった、です」
夕貴は、藍よりもさらに小さな希美香の体を包み込むように抱きしめた。
しゃくりあげる希美香の背中を撫でつつ。
「センパイ……ごめんなさい、ごめんなさいっ」
「ど、どうしたの?」
「わ、私、実は……センパイの事、疑ってましたですっ、購買のパン、くださってたり、ひっく、
 か、カンタンに靴、探してくれたりっ、」
じっと聞く夕貴。
「わざと優しくして……わ、私を利用するんじゃないかって……ごめんなさいっ、ごめんなさい、
 こ、こんな怪我、させて……私、もう、どうしていいか……ぐす」

「希美香ちゃん、あたし、希美香ちゃんの事守ってあげたいよ」
腕の中の希美香がピクッと震えた。
返答を待たずに言葉を続ける。
「どーもあたしって、希美香ちゃんみたいな子ほっとけない性質なんでさ」


「良かったら、これからもあたしを頼ってくれると嬉しいんだ。……とりあえずね。希美香ちゃんが
 今してくれると嬉しい事は……泣き止んで、笑ってくれる事かな……」
希美香の目元に、キス。
……してから。
(やばっ!)
つい藍との付き合いのせいで唇が出てしまった事に気付く。
希美香は……

「……センパイ……」
…………。
頬を染めていた。
なんだか、かなりいい感じの雰囲気?
希美香ちゃん、そっち系に嫌悪感ナシ?

「藍さんの家で、みんなで笑ってた時……センパイへの疑いは、もう晴れてたんです。……あの時
 泣いちゃったのは、そういう理由だったですよ」
昼休み。
屋上で制服のまま寝転がっている夕貴、その隣でしがみつくように寝転がっている希美香。
「センパイ……」
腕の中の希美香を見る夕貴。
「……何?」
「……大好き、です」
夕貴はとりあえず希美香を全力で抱きしめた。