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秋森良樹編 第4話-4」(2007/05/20 (日) 17:46:16) の最新版変更点

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秋森良樹編 第四話『ずっとそばにいてくれたキミ』(3)  奇妙な格好で硬直している先輩の表情を観察する。驚きに歪んでいるが、 その細面の美貌は損なわれてはいない。  ボールから遠ざかるように背けられた顔のおかげで、長い髪に隠された 血管が透けるほど真っ白なうなじが覗き見える。触れると、さらりとしているのに 吸い付くような滑らかさがあった。 「俺、悪人?」  先輩を眺めて呟く。驚きと少々の怯えが見える先輩の表情と自分の体勢を省みると、 生娘と、それを権力を傘にモノにしようとする悪代官の構図に見えなくもない。 やる事はそれに近いわけだが……先輩の記憶にも残らないし、 なによりまったく害がないのだからと自分を納得させる。  改めて先輩の姿を見ると腰が引けたおかげで、その豊かな胸が前に出ている。 重力の関係もあるのか、セーラー服に包まれたたっぷりの量感は、 さらにそのふくらみを増しているようだった。  俺は回りこむと、後ろから鷲掴みにする。 「おお……」  思わずうめいてしまう。まだ四月であるため厚手の冬用セーラーの、 さらに下にはブラの感触もあるというのに、俺の指はそれらが無いかのように 先輩の胸へと沈んで行く。  感触を楽しむようにゆっくりと指を動かすと、その動きに合わせて乳房は自在に形を変える。 押し込めば極上のマシュマロのような弾力を返しながら綿のように俺の手を受け入れ、 離せば追いかけるように温もりが指に擦り付けられる。  時間が止まった空間では、物の手触りなどに違いが出る。簡単に言えば、 柔らかな物が少し硬くなるのだ。それなのに先輩の胸ときたら、 この状態でも真里菜先生と同じくらいの柔らかさを保っている。もし元の時間の流れの中だったら どれほどの感触となるのだろう……。うっかり時間停止を解除してしまいそうになりながら、 俺は夢中になって行為を続けた。  だが、すぐに物足りなくなる。その魅力を十分に堪能できるとはいえ、 布地の上からの感触だけでは満足できない。やはり、こういうものは『生』が一番だ。  俺は『取り寄せバッグ』から裁ちバサミを取り出すと、後ろからセーラー服の 首周りに差し入れる。力を入れると硬い抵抗を押しのけて、ザクッという音と共に 冬服がカラーごと裁たれる。背中側を真っ二つに開くと、ブラ以外に別の布地が現れた。 「……スリップ? それともペチコートかな?」  シルクで出来ているのだろう、その背中を覆う下着の一種を摘み上げて記憶を探る。 キャミソールに似ているけど、スカートをめくってみれば、その先端が スカートの裾ギリギリの位置まで伸びている。あまり多いとは言えない 俺の女性下着への知識では、それがペチコートだろうと予想するのがせいぜいだった。  ま、そんな事はどうだって良いんだが。  ……ぴかーん!  邪魔になるぺチコートを腰まで裂き、ハサミをしまおうとしたところで 俺の頭にひらめきランプが点灯する。  俺は『スペアポケット』から『ロボッター』を取り出して、ハサミに取り付ける。 ロボット化したハサミが空中で待機するのを見て、俺は一つの命令を下した。 「この女の人の服をボロボロに切り裂いてくれ。なるべくエッチに見えるように」  ハサミは頷くように一度俺に向かって刃先を傾けると、先輩の正面に回りこんだ。  布を裁つジャキジャキという音を聞きながら、俺は純白のブラジャーに手をかける。 これもシルク製のようで、飾り気のない背中側も艶やかで触り心地が良い。  ホックを外してやると、はじけるようにブラが前へと吸い込まれる。どうやらこの布地、 先輩の巨乳を随分と締め付けていたと見える。締め付けられ、圧縮された状態でも あの触り心地……胸を拘束する邪魔な布が取り払われた今、先輩のおっぱいは どれほどの魅力を見せてくれるのだろう? 俺の期待はいやが上にも高まり、舌なめずりをした。  一度深く呼吸をし、背中の切り口からわずかに湿度を含む脇を抜け、制服正面を押し上げる 両のふくらみを握る。 「……やわらけぇ……」  吐息を漏らす。  例えるなら、フルーツを生クリームとギュウヒで包んだ饅頭。表面はさらりとすべる癖に 指に吸い付き、しっとりとした素肌が心地よい抵抗をして、指を果肉に埋めていく。  例えるなら、極上のスポンジケーキ。食い込ませた指から力を抜けば、 その弾力でふんわりと元の形に戻って痕も残さない。  そしてなにより、先輩のおっぱいは、見た目以上に豊かだった。  ちっこい背丈に見合い、俺の手はそれほど大きい物ではない。それを差っ引いても 手の中にある先輩の胸はデカい。なにせ、手首を先輩のアンダーバストにくっつけた状態では、 指を伸ばしてもその先が丸い山の頂上まで届かないのだ。 「カップサイズ、幾つだよ……」  長い髪に顔を埋め、シャンプーの匂いと唇に触れる首筋の感覚を楽しみながら、 二つの山を螺旋を描くようにこね上げる。  ブラが外れて分かった事だが、先輩の胸は先に向けて尖ったミサイルのような紡錘型をしている。 いや、飛行船のような、と言う方が正しいか。服を着ている時には丸く見えたが、 それは押さえつけられた結果だったらしい。乳首は少し大きめのようで、 反応が帰ってくるはずもない時間が止まったこの世界でも、コリコリとした感触を 指先に伝えてくる。つい真里菜先生の物と比較してしまい、 同時にそれを摘み上げた時の嬌声が思い出される。  少し背伸びして、先輩の肩に顎を擦り付けるようにして驚きの浮かぶ横顔を覗く。  寄せられた眉根、閉じられた目、軽く開かれた口……快感にあえぐ顔に見えなくもない。 そう思った途端、先輩の甘いあえぎが聞こえてきたような気がした。 「……良いんですか、先輩?」  揉みしだく手を休めず、その時の声を想像しながら問い掛ける。空想の中で、 先輩は胸から与えられる快感に翻弄され、ただ愛らしい喘ぎを上げ続けていた。  責め方を変え、押しつぶすように乱暴に揉みこむ。ひそめられた形の良い眉が、 痛みとそれに伴う喜悦、両方に耐えているように見える。  反応が返ってくるのは脳内でのみ、実際には無反応。人形を相手にしているような物だが、 こうして想像して遊ぶというのも、なかなかに興奮を覚える。  俺はいっぱいまで背伸びして鼻先で肩に掛かる髪をかき分けると、 小さめの耳を舐め、かじる。さらさらとした手入れの行き届いた髪が鼻先をくすぐりながら その進路を開いて行く。ひだの少ない小振りの耳は、少し硬かった。  不意に手の周りが冷たくなる。自動化したハサミが制服の胸を切り開いたようだ。 ハサミが仕事は終わりとばかりに空中に待機しているのを見て、 俺は弄んで歪んでしまった両乳房の形を整えてやると、正面に出る。  と、予想以上の光景に嘆息した。 「こりゃまた……」  制服を切り裂かれた先輩の姿を、上から下まで舐めるように見る。俺の予想としては、 レイプ漫画チックに所々破けていたり裂けていたり……という物だったが、それを遥かに越えて あのハサミは動き回ったようだ。  まずはスカート。これは腰骨から横の布しか残っておらず、正面と今切り落とされた後ろ側は 根元から無くなって純白のパンティーが丸見えだ。白いレース編みの上に薄いブルーのリボンと 花状のフリルをあしらった、清純を絵に描いたような高級そうな下着も、 手を使わずどうやってやったのかゴム部分から股間まで三角形に切り抜かれて、多めな陰毛も 性器も完全に露出している。切られた布はお尻から尻尾のように垂れ下がって うっすらとシミのあるクロッチの内側をさらけ出していた。  上は袖が完全に無くなり、セーラーカラーしか残っていない胸から腹にかけては、 つんと尖った乳白色の乳房が外れかけたブラと共に突き出している。 ブラもカップ部分が完全に切り落とされ、ベルト部分のみが残っている。……きちんとつけたら、 この凶悪なまでにいやらしい胸が、さらに扇情的に強調される事だろう。  その上、切り口はみな無理矢理引きちぎったようにキザキザになっていたり、 足元には細かく切り刻まれた服の残骸を撒き散らしてあるあたり演出が細かい。  無言でサムズアップすると、ハサミは誇らしげにそっくり返った。  俺は先輩の腕の中にもぐりこみ、吸われるのを待っているかのような乳首にむしゃぶりつく。 口の中に広がる、甘酸っぱいかすかな汗の匂い。滑らかな皮膚に比べたら 多少デコボコした感のある突起を舌で舐めまわしながら、もう片方も弄ぶ。 後ろから揉みこんだ時とはまた別の、正面から押しつぶした物が 強い弾力を持って跳ね返ろうとする抵抗が、また、良い。  汚れを知らない白い果肉に舌と唾液で痕をつけ、ピンクがかった茶色の頂きを 下品にジュルジュルと吸う。てらてらと濡れていやらしい照り返しを放つ、 吸った事でさらに硬く勃起した突起を眺めると、もう片方も同じようにする。  ナメクジでも這ったかのように、縦横無尽に光る筋がつけられた乳房。滴り落ちるほどに 濡れぼそっり、尖りきった先っぽ。散々に弄ばれ、なまめかしい艶に彩られた釣鐘型の巨乳に、 俺の我慢も限界が来た。  俺はおもむろにズボンを脱いで肉槍を取り出すと、鈴口から湧き出す透明な液体を 先輩の濃い目な陰毛に擦り付ける。艶やかな若草の上をすべる感触と、 毛の先が肉棒をくすぐる刺激にひくひくと震える一物を押さえ、どこで楽しもうかと頭を巡らせる。 「ふぅむ……」  ここはやはり、この凶悪なまでに艶っぽい二つの肉球にはさんでしごき上げるか? ふわふわと柔らかな双丘は、登校中に使った、ただデカいだけの胸などとは 比べ物にならないほどの快感を与えてくれるだろう。その上で白濁液にまみれた先輩の顔や胸は、 表情もあいまって非常に背徳的かつ扇情的な物となるはずだ。  だが、素股も捨てがたい。硬直した時間の中では不可能な挿入の代替行為だが、 太ももなどでしっかりとホールドしてやれば、挿入しているのと変わらない悦楽がある。 長いスカートで普段から露出させないためか、シミ一つなく、 極上の絹糸で織られたビロードのように滑らかな先輩の太ももと、 星を散らしたような美しい黒髪と同質の、黒々とした陰毛にはさまれてしごけば、 下手をしなくても挿入するより良いかも知れない。  薬のおかげで増大した精力&精液量を考えると、正常位の素股なら一回の射精で顔だけでなく 全身に精液を振りかける事も可能だ。名門桜塚のお嬢様というからには男も知らないだろう。 そんな汚れを知らない癖にひどく男好きする肉体を、どろどろの漢汁で汚すというのも悪くない。  『タイムウォッチ』を確認すると、バッテリメーターは『Mid』の位置で止まっている。 少なくとも、あと数時間は確実に時間を止めていられる残量だ。  ――決定。両方やってやる。  それだけの時間があれば、存分に先輩の体を味わっても十分におつりが来る。  ついでだから、ただぶっかけるなどとは言わずに、頭の天辺からつま先まで、 余すところなくザーメンパックをしてやろう。特に先輩の黒髪に白濁は映える事だろう。  時間が止まっている以上、何をしたって先輩は知らないのだし、切り刻んだ服だって 最終的に元に戻せるのだから、俺が行為を思いとどまる理由はない。精液だって、 アソコに流れ込まないようにさえ注意すれば、最悪の悲しい事態だけは免れられるだろう。 全身に染み渡るように広がった大量のザーメンは、『ずらしん棒』で排水溝にでも流せば良いし。  事後処理の方法が決まったところで、携帯のカメラで先輩の現状を撮影する。記念撮影兼、 これから色々と動かす先輩を元に戻せるようにだ。 「じゃあ先輩、いろいろヤらせてもらいますよ?」  再び庇うように掲げられた両腕の間に張り込み、軽く開かれた下唇にキスをする。 上下両方の唇を奪えなかったのが少し不満だったが、自分の口で細い下唇を固定し、 つるつるとした粘膜を舌で弄ぶ事で良しとした。いつかこの愛らしい唇全部奪ってやろう、うん。  駐車場から玄関に続くアスファルトの上に毛布を敷くと、 驚きに目を閉じている先輩の腰を、しがみつくようにして抱える。顔に伝わる無駄な肉の一切ない、 本物のモデルのようなほっそりとして滑らかな腹部の感触に、思わず頬ずりしてしまった。 「うーん……」  硬い弾力の腹に顔を埋めたまま、脳点をくすぐるひも状にしか布地残していないそれを 少しの間見詰める。俺はそれを毟り取って投げ捨てると、『スーパー手袋』をつけて 先輩の腰骨を抱えなおした。腰の左右二点のみで支えられた先輩の体は、 支えを求めて俺に向かって倒れてくる。  ぼゆん……  予定通り俺の顔に向かって降りてきた先輩のおっぱいは、そんな音が聞こえそうな感じでたわみ、 その反動で数回、ごく小さくではあるが確かに俺の顔面で弾む。 「おぅ……」  俺の顔で弾むなんて予想外の出来事とその度に繰り返された、 つきたてのお餅でコーティングされた巨大なグミが押し当たるような感覚に、 先輩の柳腰を支える手をうっかり離してしまいそうになる。  ……おんなじ『乳房』って分類なのに、なんで人によってこうも違うのだろう。特に美久とか。  頭の中で、つるぺたな幼馴染の洗濯板と至福の量感を持って顔面を押し包む 豊かな双果を比べつつ、より幸せを求めて顔をそこにもぐりこませるように動かす。 先につけた自分の唾液に顔が汚れたが、気にするほどでもない。というか、 この巨乳にはさまれている喜びに比べたら、たいていの事はどうでもよく感じてしまうだろうな、 男なら。  股間の肉棒がずくんずくん唸りをあげるほどの多幸感にしばし酔いしれる。 この乳房の狭間に俺の一物がはさまれ、しごかれる事を考えると、 それはさらに痛みを覚えるほどに張り詰めた。その時だった。  ビーッ!  快楽の予感に息を乱しつつ、脇に敷かれた毛布に先輩を横たえようとした俺は、 突然鳴り響いた大きなアラーム音に彼女を取り落としてしまう。ゴトリと痛そうな音が聞こえた。 「どういう事だよ!」  俺は信じられない気持ちで『タイムウォッチ』を凝視する。バッテリメーターは、 いつのまにか『Low』を示し、そこを指す液晶の指標は あと数分程度しか電源が持たない事を示して点滅していた。その下にある時刻表示が 電圧0までのカウントダウンを開始している。  俺はありえない出来事に混乱する頭で考える。  バッテリーはまだ数時間分残っていた。いくら先輩の胸の触り心地に夢中になっていたとしても、 その時間は多く見積もってもせいぜい10分程度。それが突然なくなるなど、普通はありえない。  ……先日、童貞を卒業した時のように、時間感覚がなくなるほどに 完全に意識を飛ばしてしまっていたのかも知れないが、その時の様に暴走していないから 今回は多分関係ないだろう。ならば…… 「……故障か?」  一番ありうる可能性だ。もともと、ド○えもんの道具というヤツは故障が発生しやすい。 それを『ウルトラミキサー』を使って複数の道具を無理矢理一つにまとめた上で さらに改造を施したのだから、どこかに無理が来るのは当然といえる。 「だからって、このタイミング起こるなよぉっ!!」  最悪のタイミングで訪れた現象に、頭を抱えて絶叫する。このやるせない想いと 暴走寸前のコイツはどうしたらいいんだよぉ……。 「……って、そんな事考えてる場合じゃねぇ!」  俺の代わりに泣いている一物をなだめなだめ、大急ぎでズボンをはく。 粘液で濡れた下着が気持ち悪いが贅沢を言っている暇はない。  続いてレイプ寸前といった有様で毛布の上で固まっている先輩を引き起こし、 果てしなく扇情的に切り刻まれたセーラー服に『復元光線』を当てた、が。 「も、戻らない……?」  元の姿に復元されたのは、一番破損が少ない純白のパンティだけだったのだ。 絶対に直さなくてはならないボロボロのセーラー服は、なんど光線を当ててもまったく直らない。  刻一刻と減りつづける腕時計のカウントに、俺は焦った。  今は登校時間で、あたりには数多くの生徒たちがいる。このまま時間が動き出したら 先輩が恥ずかしい思いをするだけじゃない。その男の劣情を誘いまくるいやらしい姿態を、 果てしなく強調する変態じみた改造セーラーを着ているのだ。間違いなく『露出狂』だのなんだの、 彼女のまったく意図していない光景のせいで、そんなレッテルを貼られて 後ろ指を指される事になる。そうなれば彼女は転校を余儀なくされるだろう。  先輩は三年生だ。せっかく二年も通い続けた学校から、どことも知らない場所へと 追い出されてしまう事になる。それも知り合いからの侮蔑の視線にさらされながら、だ。  仲の良かった友達からの冷たい視線の痛みも、誰一人知る人のいない場所に放り出される孤独も、 俺は嫌になるほど知っている。なのに俺のせいで、被害者でしかない先輩に あの辛さを味あわせるなんて絶対にゴメンだ。  途方になんて暮れている時間はない。『復元光線』をにらみつけ、必死に原因を考える。  ――故障か? いや、パンティは直ったから違う。破損の大きさ? いや、 生き物以外なんでも直せるから『復元光線』なんだ。じゃ、やっぱり故障? しかし……。  時間が無いという焦りから思考は空回りをしてしまう。そのせいで、コピーしてある 『タンマウォッチ』で時間停止期間を引き延ばせば良い事にも気付かなかった。  残り時間を確認する。あと二分と残っていない。ビービーと間隔を短くして鳴り続ける アラーム音に神経を逆なでされイラつく俺の目に、切り落とされたセーラー服の布片が映った。 「まさか!」  俺は大きいまま落ちているスカートの布地を元あった所に押し付けると光線を当てる。 見事に布は元に戻った。 「接着剤と同じって事か」  どうやら『復元光線』は、ある程度部品が残っていないと再生が出来ないらしい。 そうと分かれば切り落とされた布全てを元の位置に戻せば良いのだけど……前後の布だけが 切り落とされたスカートはともかく、上着は小さな布切れとなって先輩の立っていたあたりに 散乱している。俺がハサミに指示した結果なのだが、今はそう言った自分が恨めしい。  このぼろ布の山を俺の手で元に戻すには、絶対的に時間が足りない。 せめて、この布が自分で動いてくれれば……。  ……ぴっかーん! 「『ロボッター』っ!」  『スペアポケット』からありったけの『ロボッター』をつかみ出すと、 散らばった布切れに向かって撒き散らす。いくらかは地面に転がった物の、ほとんどは セーラー服の残骸に取り付いた。 「あるべき場所に戻れっ!」  俺の命令に反応して、自立行動出来るようになった断片が先輩に向かって殺到した。 全ての布がもどった所で『復元光線』を照射し、役目を終えた『ロボッター』を回収する。  最後に毛布を『スペアポケット』に突っ込んだところで、 脇に転がっていた純白の紐と二つの半球の存在に気付いた。 「……ブラ、戻してねぇ……」  さっき投げ捨てた、先輩の巨乳を拘束する乳バンド。慌て過ぎて、その存在を完全に忘れていた。 見れば、先輩の豊か過ぎる胸は冬仕様のセーラーの厚い布地をはちきれんばかりに押し上げて、 乳首のポッチを淫靡に浮かび上がらせている。  タイムリミットは既に10秒を切った。ロボット化して付け直させる時間も、 先輩の通学鞄に潜ませる時間も無い。両手でもった白布と先輩を見比べ、 後で返すつもりで『スペアポケット』に入れる。  ポケットを学生服に隠した所で警報が止まり、世界に音が戻って来た。 何とか先輩の名誉と学校生活を守れた事に安堵した瞬間、俺は後頭部の衝撃と共に 叫ぶ間もなく正面に向かって弾き飛ばされる。 「きゃっ!?」 「良樹!? 先輩っ!」 「お嬢様っ!!」  一瞬空白になった意識に先輩と美久の悲鳴、それに男の声が飛び込んでくる。  ……ああ……。そう言えば、先輩に向かって野球部のボールが飛んできてたんだったな……。 俺はちょうどそのコースに立っていたから、先輩の代わりにボールが命中した、と。 ……不埒な真似をした罰かな、こりゃ。  しかし、体が吹っ飛ぶほどの弾丸ライナーって一体なんだよ? 目から火花が出るどころか、 目玉そのものが飛び出しそうな勢いだっだぞ。  ……ああ、今ごろ痛みが来た。患部がジンジンと熱くて、そこだけ割れるように痛い。 まさかとは思うが、骨にヒビでも入ったか? 後で『お医者さんカバン』を使おう。  ズキズキと痛む後頭部とは反対に、顔面はすごく気持ちいい。真綿のようにふわふわとした 柔らかな物に包まれて、その上とても暖かい。それにこうしているだけで安心するような いい匂いがするし……。 「あ、あの……」  居心地のよさに浸っていると、涼やかな声が上から降ってくる。 ボールの直撃したショックが抜けきらないのか朦朧とした頭をそちらに向けると、 うっすらと頬を染め、きょとんとした表情の先輩が俺を見詰めていた。  その綺麗な面立ちを見詰めながら、俺は現状把握に努める。  ……吹き飛ぶ直前、俺の前には先輩がいた。で、俺は正面に吹っ飛んだ。 そして、キスが出来そうなほど間近にある先輩の顔。  どうやら、俺は先輩の盾になったついでに彼女を押し倒していたらしい。そうなると、 いままで顔を埋めていた柔らかな物は、ノーブラの先輩のおっぱいか。 「えと……無事ですか?」  念願の、動いている時間の中で先輩の極上の乳房に埋もれたと言うのに、 俺の口から出たのは、そんな感動も何もない当たり前の言葉だった。ボールの衝撃で、 頭のネジがいくつか外れるか緩むかしたようだ。 「はい……あの、かばって、下さったのですか?」  今ひとつ状況を掴みきれていない顔で先輩は聞いてくる。 「……ええ……本当は手でつかむなり叩き落すつもりだったんですけど」  先輩の体に夢中になって、飛んできていたボールの事などすっかり忘れていたなど、 間違っても言えない。誤魔化すように苦笑する。途端、先輩の顔がはっとする。 「大丈夫で……」 「くぉるぁ良樹っ! いつまで先輩に抱きついてるのっ!?」  大音声と共に学生服のカラーが引っ張られ、俺は先輩から引き剥がされる。 そこには、膨れっ面をした美久がいた。 「好きで抱きついてたんじゃねぇ」  心配するより先にそれか? と美久をにらむ。視界の端で、先輩が執事の人に 助け起こされているのが見えた。 「女の子を押し倒して喜んでる変態にする心配はないよっ」  そう言うと、美久は片手を俺の背中に当て、まだ掴みっぱなしだったカラーを 思いっきり引っ張りやがった。 「ぐげ……びぐ……し゛ま゛る゛……」 「とーぜんでしょ、絞めてるんだから」  カラーを留める爪を外している以外、きっちりと着込んだ学生服が美久に引っ張られて 首に食い込む。呼吸が止まり、さらに頭もぼーっとしてきた。  なんか知らんが、美久のヤツ相当怒ってやがる……。俺、こいつの気に触るような事したっけ? というか、昨日準備した『あらかじめ日記』の内容には、俺が酷い目に遭うなんて事は 一切書いてないぞ? 「あの、早瀬さん。その方は……」  再び意識が空白に染まり始めた時にかけられた先輩の声は、女神から差し伸べられた 救い手のように俺は感じた。 「これ? こいつがわたしの幼馴染の良樹ですよ」  と、美久はようやくその手を離した。  美久、後でお仕置き決定。人を『コレ』扱いするんじゃねぇ。 「ああ、この方が……」  へたり込んでむせ返る俺を興味深そうに見ると、先輩はかがんで俺と視線を合わせる。 その際、長目のスカートを押さえてまとめ、地面につかないよう自然に気を配っている姿に マイクロミニ上等な一般女子高生には無い、新鮮な驚きを感じた。  どこか胸をかばうような仕草が見えるのは、ブラジャーが突然消失した事に気付いたからだろう。 「良樹さん……で良いですよね? 助けていただいてありがとうございます。お体は大丈夫ですか? 相当酷くぶつかった様でしたけど……」 「ええ……痛い事は痛いですけど、特には……あたっ!」  伸ばされた先輩の手が、俺の後頭部にさする。その手が直撃部に触れて鈍い痛みが走った。 「こぶ、になってますね。血は……出ていないようですけど」  周辺を、包み込むようになでる手が心地よい。誰かから、純粋に気遣ってもらえるってのは、 とても嬉しい事だ。それもこんな楚々とした美人が相手なら特に。  ……が、俺は素直に受け取れない。  時間が止まっている間の出来事とは言え、あれだけの事をして、 あまつさえ『白濁漢汁全身パック』などという事を実行しようとした張本人としては、 この純粋な視線が痛い。  因果応報とも言えるこの怪我を、被害者本人から心配されればされるほど、 良心にちくちくとした痛みが増して行く。それに、この光景を見ている登校中の生徒の視線も 気になるし……。  罪悪感と気恥ずかしさから逃れるため、俺は勢いをつけて立ち上がる。 「あっはっはっ、心配はいらないですよ。俺は頑丈が取り得なんです! この程度はどうって事はないですよ!!」  元気をアピールするため、空を見上げて大げさにガッツポーズをとる。  静かな反応に視線をずらすと、先輩はぽかんとした顔で俺を見上げていた。 ……ヤベ、ちょっとわざとらしすぎたか?  と思ったら、先輩は目じりを下げて品の良い微笑を浮かべた。 「うふふふ……良樹さんって、面白い人ですね」 「ただバカなだけですよ。良樹っていつもこんな感じだから」  美久も、呆れたような苦笑で答える。その物言いに、俺は口を尖らせた。 「バカはねーだろ、バカは。……ところで、二人とも知り合いなのか?」  二人を見比べる。美久と先輩。初対面にしては親密な雰囲気のために、気になっていた。 「そーだよ。受験の下見に来た時に知り合ったの」 「その時、家庭科室で一緒にお菓子作りをしたんですよ。早瀬さん、料理がお上手で…… 私(わたくし)も新しいレシピを教えてもらったんです」  にこにこと、楽しそうに先輩が後を引き取る。 「おかげでレパートリーの幅も増えましたし……ありがとうございます、早瀬さん」 「ううん、お礼なんていいですよ。それより、部活見学の時に出してもらったケーキ、 とっても美味しかったです。あれ、先輩が作ったって聞きましたよ」 「ええ。でもよかった~。私の自信作だったのですけど、当日は早引きしてしまいましたから 食べていただいた方に直接感想を聞けなくて、残念に思っていたんです」 「あれなら『美味しい』以外の感想はありませんよ~。特にあの生クリーム、 隠し味に何を使ったんですか?」 「まぁ、お気づきに? あれはですね……」  楽しそうに『女の子の会話』に入る二人。……一瞬にして置いてきぼりを食らってしまった。 俺も料理は出来なくは無いが、少し突っ込んだ話題になるとついていけない。 特に菓子作りなど、まるっきり分からないからな。 「よろしいでしょうか?」  にこやかに料理の話題で盛り上がる二人をどうしようかと途方に暮れていると、 先輩の車を運転していた執事がやってきた。  線の細い体をドレスシャツとタキシードで包んだ中背の初老男性で、 念入りに整えられた髪に白い物が混じっている。外人の血が入っているのか大きな鷲鼻の上に、 ちょこんと小さな眼鏡が乗っていた。 「お初にお目に掛かります。私、桜塚家の執事をしております長瀬と申します。  お嬢様を守っていただき、ありがとうございます。おかげでお嬢様も傷一つなく、ご無事でした」  好々爺そのものといった笑顔で慇懃に頭を下げる執事さんに、俺は少し気後れを感じる。 他人に、それも遥かに年上の大人に、こんな丁寧な態度で接されるのは生まれて初めてだった。 「いえ、ご丁寧にどうも……」  照れくささに頭をかきながら頭を下げる。そんな俺を見て、執事さんは一瞬だけ笑みを深くする。 「時に、お怪我の具合はいかがですか? 鈍器で煉瓦を叩き割るような音がしておりましたので すぐにでも病院へお連れしたいのですが」  ……そんな音がしてたのかい。ショックでまるで聞こえなかったのだろうか? 顔が引きつる。 「い、いやぁ……大丈夫ですよ? 体に変なところはないですし、頭もコブの所が痛いだけで……」 「そうですか……それでは、なにかございましたらこちらにご連絡を。頭の怪我でございますし、 異常がありましたらすぐにでも……」  そう言って名刺を渡される。職業と名前、連絡先だけが書かれた簡素な造りの名刺だ。 「それと、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」 「あ……秋森良樹と言います」  初めて見た名刺に気を取られ、反応が少し遅れる。 「よいお名前ですね。では秋森様、重ね重ね、ありがとうございます。  ……ところで、お嬢様方」  笑顔で執事の長瀬さんは会釈をすると、まだまだ話の尽きそうにない女性達に声をかける。 「ご歓談もよろしいのですが、いささか時間が押している物と存じ上げます。 続きはまた、後ほどになされてはいかがでしょうか?」 「あっ、ホントだ! 予鈴まで十分ない……」 「まぁ、つい話し込んでしまいましたね。ありがとう、長瀬さん」  長瀬さんの言葉にぴたりと話をやめる二人。うぅむ……あの割り込み辛いところへ 見事に割り込むとは……。話の腰を折らせるのも、執事の重要なスキルというやつか? 「先輩、三年生の下駄箱って離れてるから、そろそろ行かないと遅刻しますよ?」  美久が時計――今度は自分の――を見て桜塚先輩を促す。  珍しい事に、この学校は一・二年生用と三年生用の下駄箱は別々の場所にあり、 しかも三年生用は校門や自分達の使う教室両方から、随分と離れている。 多分、受験一色になって運動がまともに出来なくなるのを、少しでも軽減するためだとは 思うのだが……使う方としては結構いい迷惑だよな。その分早く起きなきゃいけないし。 「そうですね。では、一足お先に行かせていただきますね」  先輩は軽く美久に笑いかけると、俺に向き直る。体の動きに合わせてノーブラの胸が、 俺の目の高さで小さく踊った。俺が吸い上げて、強引に勃起させた乳首の出っ張りは見えない。 元に戻った上で、冬服の厚みに押しつぶされたのだろう。  その爆発的な自己主張を止めない胸の真中に右手を置くと、先輩は綺麗な微笑みを浮かべた。 「自己紹介、まだでしたよね? 私は……」 「あ、雪奈だ」  名乗ろうとした矢先、先輩の後ろから声がかかる。そこにはウチの制服を来た女生徒が三人、 脱色した髪を春風に乱させながら立っていた。  けばけばしい化粧にピアス、だらしなく着崩した制服と、折り目正しい先輩とは対照的な、 いかにも今風のコギャル達だ。 「雪奈、この時間にこんなところにいるなんて珍しいね~」 「いつもウチラより先に教室行って、本読んでんのにねぇ」  バカっぽい口調で口々に先輩に話し掛けるコギャルたち。物怖じしない言い方からして、 クラスメートあたりだろうか? 先輩は苦笑を浮かべる。 「今日はちょっとトラブルがありまして……」 「トラブル? そんな事よりさ、急がないと遅刻しちゃうじゃん。行くよ」  コギャルの一人が先輩の手首をつかんで、早足で下駄箱に向かう。 「え? あ、あの私……」  コギャルに引っ張られて前のめりになりながら、先輩は何度も俺に向かって振り返った。 けれど、そのコギャルは先輩の様子を見ても足を止める気配は無い。 「ほら、急がないと遅刻するだろ!」  ……というか、その反応に鬱陶しげな視線を向けた? 「じゃ、執事さん。今日も雪奈を借りてきますね」 「お嬢様の事は、あたしたちに任せておいてね~」  残った二人も長瀬さんを一瞥して走り出す。後にはあっけにとられた俺と美久、 それに笑顔の代わりに渋面を浮かべた長瀬さんが取り残された。 「……あいつら、なに?」 「クラスメート、かな?」 「お嬢様のご学友でございます。……ただ、あまり良い感じのする方々ではありませんが……」  先輩の友人、というにはイメージにそぐわない女達について首をかしげる俺達に、 長瀬さんが回答をくれる。長瀬さんも彼女達には良い印象を持っていないようだ。 「それでは、私もここで失礼させていただきます。秋森様も早瀬様も、 ご勉学にお励みください」  そう言って一礼すると、長瀬さんは車に向かう。俺達はなんとなく気が抜けた気分で 顔を見合わせた。 「……いくか?」 「そだね……」  二人して途切れがちになった生徒の流れに入っていく。 しばしの間、俺達は無言で足を動かすだけだった。  俺が『あらかじめ日記』で予定した一日は、まだ始まってはいない……。 美久(以下美):作者さん、いいかげん『良樹編』の続き書いてよ! 『処女調教法』ヒロイン(以下処):そうですわっ! 私とあの方とおまけを交えた                  甘い生活もネタがあるんですから書いてください!!                  ……あら? 良樹(以下良):あー……俺も催促(脅迫)に来たんだが……この状態だ。(熱線砲で肩を叩きつつ) 作者(以下作):(サラサラサラ……サラサラサラ……) 美:……は、灰になって崩れ始めてる……。 処:おかしいですわね。この人なら、灰ではなく塩になる事を選びそうですのに……。 美:あの、そういう問題じゃなくて(汗) 良樹、なんで? 良:……俺たちの話を書いてるノートPCが、今日死んだらしい。 処:じゃあ、いままで書き溜めた分は!? 良:HDDが完全に死んでないらしいから復旧はできそうだけど、   最低でも今週中は無理っぽいぞ? しかもだ、明日は片道四時間の出張が入ってるんだって。 美:出張の移動時間って、この人が一番SS書ける時間だよね、確か……? 処:と言う事は、そのショックで……? 良:正確にはPCが壊れた事と、書きたくても書けない状況、更に言えば前から目をつけていた   中古ノートを明日用に買いに行ったら売りきれていたって言うトリプルショックで   灰化してるらしい……もちろん、SSもまったく進まないわけだ。 美:そんな……! 作者さんっ、灰になってないで、根性でPC復旧して書いてよっ!! 良:まてまてまてっ、棍棒で叩き潰そうとするなっ! それ以前に死人に鞭打つようなマネは……。 処:そうですわ、早瀬さん。どうせしばらくしたら復活するんです。   折檻ならその時にすればよろしいですわ。その時は私も協力させていただきますけれど。 良:そうだ。俺の方も先生と美久の分あわせてのお仕置き考えてあるから、おちつけ、どうどう。 美:わたしは馬じゃなーい! ……で、どんな事? 良:ああ、こういうのだ…… (主人公たちはお仕置き方法で盛りあがってる……) 作:(みなさんゴメンナサイ……もうしばらく灰でいさせて下さい……(泣)   あと、暇な人さん乙。) [[次話に進む>秋森良樹編 第4話-5]] [[戻る>へたれ作家Aさん]] [[小説保管庫に戻る>小説保管庫]]

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