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■聖戦と死神(オッフェンブルグの戦い)

「眩暈がする程の血の雨の薫に咽ぶことなく その男は笑っていた… 」

………………

 
 「聖戦と死神」の冒頭のシーンである。
 最初に聞いたときは、まず何の事かは解らなかったが、繰り返し聴いているうち、ぞっとするような光景が浮かぶようになる。

   
  

 寄せ手は、フランドル王国軍。野心家である国王キルデベルト6世の命を受け、プロイツェンの国境を突破し、強略と殺戮を繰り広げる。
 その中の最初の一つが、オッフェンブルグであった。

 現在のオッフェンブルグは、広大な「黒い森(シュヴァルツバルト)」の懐にある、小規模の都市だ。<ガリア>の中のオッフェンブルグの描写は、とにかく血の匂いと炎のはぜる音、死体がゴロゴロ転がっているという程度のものでしかないが、おそらくは三方に森林を頂く平均的な町城であったに違いない。
 
 この侵略軍を率いているのは、まず間違いなく“ベルガの客将(アルベルジュ)”であろう。
 後の述懐によれば、かれは「世界を憎み呪い」、ただ復讐のために軍を率いていたという。その復讐劇の口火を切る戦場が、オッフェンブルグである。
 双方の戦力は不明だが、この地で相当の犠牲者が出たのは間違いない。特にプロイツェン軍は甚大な被害を受けたであろう。プロイツェンの騎士Gefenbauer(ゲーフェンバウアー)は、この戦だけで兄、弟、父、そして数多の戦友を失ったという。名だたる騎士の一族でさえこの有様なのだから、他の将兵の惨状たるや推して知るべしである。
 軍民を問わず、彼らプロイツェン人の網膜には、常に陣頭で死を振りまき続ける「銀色の死神」の姿が、目に焼き付いて離れなかったに違いない。
 

  ――敵味方にとって悪夢のような殺戮が終了し、生きている者が居なくなった市街に、ただ一人立ちつくしている男がいる。
 白銀の甲胄を身に纏ったその男は、狂気のような笑みを浮かべて、プロイツェン人の死体が累々と地表を埋め尽くす光景を眺めていたに違いない。


 

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