1999年5月7日 NHK-BS2「松本孝弘ソロ・プロジェクト~B'zへの挑戦~」布袋寅泰との対談

布…布袋寅泰

布:通った道が一緒だっていう、なんか安心感?
松:うん。…ていうか僕らの頃ってその、通る道って結構一つしかなかったりするじゃないですか。
布:うん。
松:最初、初めの頃ってさぁ。
布:…やっぱ、(咳払い)あのー…、好きなバンドのポスター…欲しくて、買いに行ったりとか?そのポスターが目当てで、予約したりとかするとさ、例えばツェッペリン買ったらジミー・ペイジのポスターだったし。
松:うん。
布:パープル買えば、
松:リッチーのねぇ。
布:ねぇ。ポスターだったし。
松:うん、うん。
布:ロック=ギターっていうのはやっぱ
松:うん。
布:少なくとも僕らの間には
松:そうですね、うん。
布:…まぁそれが僕にとってミック・ロンソンだったりとか?
松:うんうん。
布:だんだんその趣味は違えどさぁ。
松:うん。
布:うん。…まぁあと、ギターのあの重みとか?
松:うん。
布:…なかなか良い音が出てくれない感じとか?
(松本咳をする)
布:そればっかりはギタリスト同士じゃないと話せなかったりしますよね。
松:そうですね。うんうん。…うん。
布:…でも、こと…とうとうあれじゃないすか。歌う…ギタリストに(笑)*1
松:………そうきたか(笑)えー、そうなんですよね(笑)まぁ後輩としては、*2
布:ハッハッハッハッ(笑)
松:うん(笑)出せる限りの力をね、
布:うーん。
松:出して。
布:でも楽しいでしょ?
松:わりとねぇ、そのー…何て言うの?もともとのきっかけは、…そのほら、全然さぁ、音楽作ったりとか、こう…まぁ歌うってことでさぁ、いわゆる方向が全然普段と変わるじゃない。
布:うーん。
松:あれはねぇ、やっぱねぇ、新鮮でしたよね。
布:うーん。
松:例えばあと言葉書くこととかさぁ、
布:うーん。
松:結構楽しいなぁと思って。
布:…苦しいけどね。
松:うん。…だからねスゴい作ってるときは、本当に大変なことしてるんだなっていうね、
布:うーん。
松:気になれたの自分で。
布:なるほどね。
松:でもほら、作り終えたらさぁ、こう…そんなたいそうなことしてたのかな?って気分になれるじゃない。
布:あぁ~、なるほどね。
松:だからその段階で結構ワンステップ上がれてんだよね、多分ね。
布:うーん。
松:うーん、まぁほら、大先輩を前にね、
布:いやいやいや(笑)
松:そんなこと言うのも何ですけど(笑)
布:何を言いますか(笑)でもだから、歌うようになって初めてボーカリストの大変さとか知るじゃない。
松:うんうんうんうん。
布:うん。いやぁ、ヒムロックに何か…もうちょっとブレスがある曲を書いてあげればよかったなぁ(笑)とかさぁ。
松:あぁあぁ。
布:自分の曲ってとにかくブレスが無い曲ばっかりだったみたいな、
松:うん。
布:自分で歌い始めて気が付いたりとか。
松:うんうん。
布:ほら歌う…呼吸とギター弾く呼吸って違うじゃないですか。
松:うん、うん。
布:特にライブなんかやると思うけど、
松:うん。
布:やっぱダウンする、思いっきり…ダウンピッキングする時は、息吸うわけないじゃないですか、「ハァ~」ってさぁ。
松:そうだね。
布:うん。
松:吐くよね。
布:だから思いっきりギターいった後に…ボーカル…マイクに向かう時に息がないとかさぁ。
松:うんうんうん。
布:最近ようやくバランス取れてきたけど。
松:うーん。
布:でも楽しいよね。
松:うん。
布:やっぱり松本さんの書く曲ってのも、絶対的にメロディーがあって、
松:うん。
布:歌が…あるべき曲があったからこそB'zっていう形になったんだろうし。
松:うんうん。…そうだね。
布:歌うのは必然だったような気がしますけどね。
松:うん。…でも結構一緒に飲んだりすると、やっぱ海外の話よく出ますよね。
布:…やっぱ、(咳払い)…憧れっていうか…。
松:うーん。
布:んー…日本人である前に地球人でありたいなーって思うしね、
松:うーん。
布:世界人になりたいなって思うしさ。…ギターを手にした時に、そんな夢も一緒に手にしたような気がするしさ。
松:うん。
布:…やっぱ、プレイすると楽しいですよね。
松:うん。
布:ビジネスが広がっていくとかっていう意味合いじゃなくて全く。
松:うん。
布:あの…世界中でプレイしたいなーとは思うし。
松:それはありますよね。
布:うん。
松:ホントもうだって…関係ないもんね、うん。
布:うーん。
松:うん。
布:やっぱりさぁ、たまたま立ち寄ったミラノかなんかで、
松:うん。
布:坂本…龍一さんのポスター、コンサートのポスターなんか見ると悔しいもんね。
松:うーん。
布:日本人の前に世界人…でいらっしゃる事。
松:うん。
布:まぁスタイルは違えどさぁ、
松:うん。
布:色んな人たちが、色んな場所で、
松:うん。
布:頑張ってきたものにはリスペクト…
松:うん。
布:するしさぁ。また自分でもそういう自分の道を、…作っていきたいなぁっていうか。
松:作りたいですね、是非ねぇ。
布:うん。
松:うん。
布:まぁ、
松:一緒にさぁ、飲んだ時にさぁ、
布:うん。
松:言ってたじゃない。単純にさぁ、そのほら、子供の頃にさぁ、なんだろ…こう例えば…ギター持ってさぁ、すごい人数の前でやりたいって言うのと同じような感じでさぁ、
布:うん。
松:ワールドツアーやりたいじゃん!って言ってたじゃん。
布:やりたいんだよね、うん。
松:あれね、すごく俺印象深いんだけどねぇ、…ちょっと何ていうの?本当に全然、子供の頃のことを忘れてないなっていうかさぁ。
布:うーん。
松:単純にそうなんだよね。
布:うん。
松:ワールドツアーやりたいじゃん!っていうさぁ。
布:でもさぁ、…最近思うんだけどいつもそれを思い出していないと、
松:うん。
布:叶わないだろうし、やりたいと思わなくなってきちゃうだろうし。まぁ年齢的な危機感(笑)も感じるし。
松:ハッハッハッ(笑)
布:あとは大御所だけかよみたいなさぁ。大御所になるくらいだったらちょっと…なんか、ロックンロールっていう名前を人生から外したいなっていう気もするしねぇ。…でもまぁギターを手にした時からそういった意味合いだと、もうパスポートはあるわけですよね。
松:うん。
布:あとはもうそれを…色んな国で判子を…もらっていきたいっていうかさぁ。…でも僕はやっぱ人生…んー…まぁ最期がいつだかわかんないですけど?
松:うん。
布:振り返った時に…やっぱでっかいアドベンチャーだったなぁと思いたいしねぇー。冒険…?まぁ男の子…な限りは…冒険が全てのような気がするし、…やっぱ冒険してる人に憧れるしさぁ。
(松本、煙草に火をつけようとするが、ライターが付かないのか何度か点火を試みて諦める)
松:うん。
布:冒険…っていう言葉自体に何かジェラシーしちゃうぐらい。だから…ん…ギターを持った冒険も続くんだろうし、ギターを持ってない時の自分の人生っていうのもあるわけでね。そこも、男として、もしくは人間として冒険的ではありたいなって思いますけどね。
松:うん。
布:だから、やっぱ、今までやらなかったことにチャレンジしていくとか?
松:うん。…そうだねぇ。
布:煙草吸う?
松:あぁ、どうもすいません、ありがとうございます。
(布袋、松本の煙草に火をつける)
松:まぁでもホント楽しくやりたいっすよ、…うーん。
布:うん。
松:だからその…、音楽…のさぁ、こういう俺たちって音楽の仕事に携ってるじゃない?まぁ仕事であり趣味であったりとか楽しみであったりすんだけどさぁ。リタイアって多分ないと思うんだよね。
布:うん。
松:うーん。だから、ホントに…アリーナでさぁ、動き回ってやんなくたってさぁ、
布:うん。
松:例えば…ホントに…自分が楽しんでさぁ、ちっちゃいクラブでさぁ、
布:うん。
松:ギター一本で歌っててもいいしさぁ。だから恐らくそのー…、死ぬまで?本当いつ死ぬかわかんないけど、死ぬまでリタイアって多分ないと思うんだよね。だからその間ホントに…、楽し…自分が楽しめるってことは聴いている人もきっと楽しめるだろうからさぁ。そういう風に、続けていけるっていうね。あとやっぱ、そのー…、多分ギターもさ、辞めないじゃない、ずっと。
布:うーん。
松:うん。
布:…まぁ老人とギター。
松:フッ(笑)老人とギターね(笑)
布:その図がなんとなく浮かぶもんね(笑)
松:だからその、いつがホントに終わりかわかんないけど、そのー…もう布袋君なんか今もきっとそうだと思うけど、その上手いだとかさぁ、
布:うん。
松:そんなことじゃなくて、いいよね~って…
布:そうだね。
松:いう感じにはなりたいよねぇ。
布:まず自分が気持ちいいっていうところから、
松:うーん。
布:なっちゃうよねぇ。いや上手い下手で言っちゃったら、もう会話が…何も成り立たなくなってしまうっていうかさぁ。
松:うーん。
布:…やっぱもうちょっと愛情とか?
松:うん。
布:スピリッツとかさぁ。ちょっとクサい言い方だけど、
松:うん。
布:やっぱそういうもので語られるもんなんだなぁっていうか、…やっぱそういう…うん、気付…そうなっちゃうよねぇ~。あと…良い音かどうかだよね。
松:うん。
布:その人の音かどうかとか?…ただ、上手い下手…、が…もしも、ギターを弾く為に…上で、
松:うん。
布:大切なものだとしたらさぁ、…あまりにも儚い悲しいっていうか。
松:うーん。
布:うん。…やっぱさすがにジェフ・ベックの横で弾くのはちょっと(笑)気が引けますけど。フッ(笑)でもどんなギタリストともやっぱ、セッションしたいなぁって思えるもんね。
松:うん。
布:やっぱそう思えた時っていうのは、「あっ、抜けたな」っと思ったけどね。…自分は自分?…誰みたいになりたいってずっと思ってちゃうと、
松:うん。
布:…もしその誰かとやっ…が隣に来た時に、結構照れくさいじゃないですか。
松:うん。
布:キース・リチャードみたいになりたくて、ずぅーっとキース・リチャードばっかりやってて、キース・リチャードみたいになっても、…キース・リチャードはもういるわけで。
松:うーん。…そうだね。
布:うん。キース・リチャードにはなれないわけでさぁ。布袋にもなれなければ松本になれないわけじゃないですか。
松:うん。…だからその個人の通過点であればいいんだよね、その憧れの人っていうのはさ、うん。
布:うん。だからもしも僕らから何か感じてもらえるとしたら、
松:うん。
布:そういうスピリット…ですよね。
松:うん。
布:…絶対だって俺、松本さんのギターなんか弾けないし、松本さんも俺のギターは弾けないだろうし。
松:いやぁ、ホント弾けないよ。うん。
布:そういうもんじゃん、なんかさぁ。
松:うん。…そうだよね、音もだって俺が布袋君のセットで弾いたって、多分全然…
布:違うよねぇ。
松:音違うだろうし。
布:だって今だったらさぁ、どんなギター持ったって自分の音しちゃうでしょ?
松:多分ね。うん。
布:もう嫌なぐらい(笑)フフフ(笑)
松:フッ(笑)
布:俺も嫌になっちゃうもんね。どのアンプでどのギター持っても、またこの音かよって思っちゃうぐらいさぁ。
松:あぁ。
布:多分これしか出来ないんだよね、もうね。
松:うん。
布:今まであれやりたいこれやりたいって思ってたけど、これしか出来なかったらこれやるっきゃないでしょっていうか。
松:うん。
布:そういう…(笑)いい意味での開き直りが出てきた頃?…やっぱ大人の…ロックンロール…ギタリストになってくんだろうなぁと思うけどねぇ。
松:うん。…深いですよね。すごくね。
布:深いですよね。
松:ねぇ。ホントに…まず子供の頃にその、ロックンロールっていうのがあってさぁ、やっぱ上辺から入っていくじゃない。その…例えば音なんかもその上辺の一つだと思うんだけどさぁ、その奥に何があんのかっていうのをさぁ…、探求しだしたのなんて…ホントここ数年…
布:うん。
松:ぐらいからだもんね、30過ぎて。…でホントだんだん面白くなっていくよね。
布:そうだね。
松:うん。
布:だんだん愛しくなっていくしね。
松:うん。
布:…いやだからすごい…ギターやってよかったなぁって思うもん。
松:うん。
布:もうホントに…中途半端な人間だったからさぁ。その何やっても…何か途中止まり?
松:うーん。
布:すぐ飽きちゃって…ですぐ次のものに行っちゃって。ギターだけっすよね、人生の半分以上も。
松:そうなんだよね、うん。
布:うん。
松:ホントそう。だってギターとさぁ、いる時間のほうが長いんだもんね、もうね。
布:そうなんですよね。
松:今や。
布:家族より(笑)
松:フフ(笑)
布:いやでも大切にしなきゃと思うよね。
松:うん。


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最終更新:2012年01月23日 00:06

*1 1999年3月25日発売のシングル『THE CHANGING』と1999年4月14日発売のアルバム『KNOCKIN'“T”AROUND』にて、松本は初のボーカルを務めている。

*2 布袋は1988年10月5日に発売された初のソロアルバム『GUITARHYTHM』以降、毎回ボーカルを務めている。