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「なぁ、いつ帰って来んだ?」 「今日は午前で終わりだ」 「じゃあ、飯は一緒に食えるんだな?」 「ああ。じゃ、行ってくる」 「気ィつけろよ」 バタン ドアの閉まる音がした 後には高杉一人が家の中にのこされた。 さて、土方が帰ってくる前に、 掃除 洗い物 洗濯 ゴミだしを やっておかなければ。 「先ほどの会話といい、どっちが嫁だかわかったもんじゃねぇ……」 高杉はため息をつく。 高杉晋助 現攘夷浪士の中で最も過激で最も危険な男……のはずである。 家は裕福で、子どものころから家の手伝いなどは一切やらなかったほどのおぼっちゃんでもあった。 それなのに、いったいどうして人の家の家事を、しかも自ら進んでやっているのだろうか。 答えはいたって単純。惚れているからである。 高杉が、土方に。 『ウィーン』 掃除機をかけながら高杉は考え込んでいた。 実は彼には最近、ある悩みがあった。 それは、 (土方は俺を愛してくれているのだろうか) という、客観的に見るとなんとも馬鹿げた悩みだった。 (俺は土方を愛している。この世の誰よりもだ。) 高杉にはそう言い切れる自信があった。 はじめて土方に対する思いを実感したのは何年も前のことである。 それなのにその恋は、冷めるどころか徐々にヒートアップしていってるということは、誰よりも高杉自身がよくわかっていた。 高杉は惚れている。 土方に、完全に。 しかし土方の方はどうなのだろうか。 ひょっとしたら強引過ぎる俺に、ただ流されてるだけなのではないのか? 幕府の命令で、俺を監視しているだけではないのか? 高杉は、だんだんそう思い始めてきたのである。 「…っ馬鹿じゃねえのか!テメェの嫁を疑うなんてよォ……」 『ガチャガチャ』 食器のぶつかる音がする。 『ガー』 洗濯機のまわる音がする。 『サッサッ』 ゴミをまとめる音がする。 高杉は無意識にこれらの仕事をこなしていた。というのも、頭の中が一杯一杯だったからだ。もはや頭と体が、まったく別の生き物のような状態なのである。 「そういえば……再開してから見たことねぇな。アイツが笑うところ。」 自分は果たしてどのくらい土方に幸せを与えてきたのだろう。 考えてみろ。あいつが笑うとき、周りには誰がいる? 俺か?いや、違う。 真撰組だ。 高杉のテンションは、徐々に下がりつつあった。 ---- 家事が終わった。後は土方を待つだけである。 実は昨日、夜遅くまで土方を抱いていたゆえに、高杉は眠くて仕方なかった。 土方が帰ってくるまで1時間以上ある。 高杉はゴロリとソファーの上に寝転ぶと、目をつぶった。 ---- 帰ってみると、家の中がやけに静かだった。 いつもはうるさいくらいのお出迎えをしてくれるはずなのに、どうしたのだろうか。 リビングルームに行くとその理由は明確になった。 高杉はソファーのうえで寝息を立てていた。 土方はとりあえず自室に行き、制服を着替えた。今日は5月とは思えないほどの暑さ。汗をかいたのでシャワーだけでも浴びようと思い、風呂場へ向かった。 体を洗い、頭を洗い、洗い場で体を拭き、着流しを来てリビングに戻ってもさっきと変わった様子はなかった。 「まだ寝てやがんのかよ……」 土方はそう呟き、ソファーの近くの椅子に腰を下ろした。 風が吹いている 土方は高杉の寝顔を観察した。 前髪が風になびいて右目にかかっている。 いくらどけてもまた風で元の位置に戻ってしまう。 仕方がないのでそのまま眺めた。 「きれいだ……」 本心からいった言葉だった。 あんなに自分勝手で、わがままでエロくて、 「でもかっこいい……」 小さい声で言ってみる。 土方は自分と高杉の顔の距離を縮めた。つまり、高杉の顔に自分の顔を近づけた。 「なぁ、愛してるよ晋助……」 またもや小声で言ってみる。 大丈夫だ 今なら高杉も寝ていて気付かないだろう。 土方は自分の唇を、高杉の唇に少しだけ触れさせた。 が、次の瞬間にそれはディープキスに変わっていた。 あまりの出来事に驚き、すぐさま唇を引き離そうとする土方だが、高杉は土方の後頭部に手をおき、自分の唇に密着させているのでなかなか離れることができない。というより、引き離そうとしたのは最初だけで、あとはもう、接吻という行為におぼれていた。 数十秒立ってようやく自由を手にした土方は高杉をにらめつけてやろうと向き直った。 土方は驚いた。 いや、驚いたなんてものではない。 明日は吹雪か?と、真面目に疑いさえした。 「土…方……っ」 高杉は泣いていた。 目にたまっているそれは明らかに涙で、 自分の名前を呼ぶその声はかすかに震えていて、 瞬きをしたら水が零れ落ちた。 「もう一回言ってくれよ…」 「なにを?」 「愛してるって……」 「はぁ!?」 「頼む……」 「………」 土方は高杉の胸元に頭を当てて 「愛してる……」 と言った。 「ホントか…?」 「俺の言うことが信じられねぇのか?」 土方は笑った。 「それだ」 「は?」 「それだよ……俺の見たかったものは……」 「………」 「わらってくれるか?俺のために」 土方は答える代わりに薬指を見せた。 そこには、銀色に輝く指輪がはめられていた。 「おま…それ……」 「情けねぇ顔すんじゃねえよ」 「ずっと…つけててくれたのか?」 気がつかなかった 自分がこんなにも幸せであったのを 「いつだ?」 「あ?」 「いつから起きてたんだよ」 「……ああ」 ついさっきのディープキスのことか 「お前が帰ってきたときから」 「ずっと、寝た振りしてたのか?」 「寝ながら悩んでた」 「悩んでた?何を?」 「…いや、くだらねぇ悩みだった。もう解決した」 だが、まあ新たな悩みができちまった。 これからどうやってこいつを幸せにしていくか、考えなけりゃなんねぇ。 なぁ、土方 ---- (あとがき) これでもかっていうくらい高杉を情けなくしてみました。 どーしよっかなこれ?
「なぁ、いつ帰って来んだ?」 「今日は午前で終わりだ」 「じゃあ、飯は一緒に食えるんだな?」 「ああ。じゃ、行ってくる」 「気ィつけろよ」 バタン ドアの閉まる音がした 後には高杉一人が家の中にのこされた。 さて、土方が帰ってくる前に、 掃除 洗い物 洗濯 ゴミだしを やっておかなければ。 「先ほどの会話といい、どっちが嫁だかわかったもんじゃねぇ……」 高杉はため息をつく。 高杉晋助 現攘夷浪士の中で最も過激で最も危険な男……のはずである。 家は裕福で、子どものころから家の手伝いなどは一切やらなかったほどのおぼっちゃんでもあった。 それなのに、いったいどうして人の家の家事を、しかも自ら進んでやっているのだろうか。 答えはいたって単純。惚れているからである。 高杉が、土方に。 『ウィーン』 掃除機をかけながら高杉は考え込んでいた。 実は彼には最近、ある悩みがあった。 それは、 (土方は俺を愛してくれているのだろうか) という、客観的に見るとなんとも馬鹿げた悩みだった。 (俺は土方を愛している。この世の誰よりもだ。) 高杉にはそう言い切れる自信があった。 はじめて土方に対する思いを実感したのは何年も前のことである。 それなのにその恋は、冷めるどころか徐々にヒートアップしていってるということは、誰よりも高杉自身がよくわかっていた。 高杉は惚れている。 土方に、完全に。 しかし土方の方はどうなのだろうか。 ひょっとしたら強引過ぎる俺に、ただ流されてるだけなのではないのか? 幕府の命令で、俺を監視しているだけではないのか? 高杉は、だんだんそう思い始めてきたのである。 「…っ馬鹿じゃねえのか!テメェの嫁を疑うなんてよォ……」 『ガチャガチャ』 食器のぶつかる音がする。 『ガー』 洗濯機のまわる音がする。 『サッサッ』 ゴミをまとめる音がする。 高杉は無意識にこれらの仕事をこなしていた。というのも、頭の中が一杯一杯だったからだ。もはや頭と体が、まったく別の生き物のような状態なのである。 「そういえば……再開してから見たことねぇな。アイツが笑うところ。」 自分は果たしてどのくらい土方に幸せを与えてきたのだろう。 考えてみろ。あいつが笑うとき、周りには誰がいる? 俺か?いや、違う。 真撰組だ。 高杉のテンションは、徐々に下がりつつあった。 ---- 家事が終わった。後は土方を待つだけである。 実は昨日、夜遅くまで土方を抱いていたゆえに、高杉は眠くて仕方なかった。 土方が帰ってくるまで1時間以上ある。 高杉はゴロリとソファーの上に寝転ぶと、目をつぶった。 ---- 帰ってみると、家の中がやけに静かだった。 いつもはうるさいくらいのお出迎えをしてくれるはずなのに、どうしたのだろうか。 リビングルームに行くとその理由は明確になった。 高杉はソファーのうえで寝息を立てていた。 土方はとりあえず自室に行き、制服を着替えた。今日は5月とは思えないほどの暑さ。汗をかいたのでシャワーだけでも浴びようと思い、風呂場へ向かった。 体を洗い、頭を洗い、洗い場で体を拭き、着流しを来てリビングに戻ってもさっきと変わった様子はなかった。 「まだ寝てやがんのかよ……」 土方はそう呟き、ソファーの近くの椅子に腰を下ろした。 風が吹いている 土方は高杉の寝顔を観察した。 前髪が風になびいて右目にかかっている。 いくらどけてもまた風で元の位置に戻ってしまう。 仕方がないのでそのまま眺めた。 「きれいだ……」 本心からいった言葉だった。 あんなに自分勝手で、わがままでエロくて、 「でもかっこいい……」 小さい声で言ってみる。 土方は自分と高杉の顔の距離を縮めた。つまり、高杉の顔に自分の顔を近づけた。 「なぁ、愛してるよ晋助……」 またもや小声で言ってみる。 大丈夫だ 今なら高杉も寝ていて気付かないだろう。 土方は自分の唇を、高杉の唇に少しだけ触れさせた。 が、次の瞬間にそれはディープキスに変わっていた。 あまりの出来事に驚き、すぐさま唇を引き離そうとする土方だが、高杉は土方の後頭部に手をおき、自分の唇に密着させているのでなかなか離れることができない。というより、引き離そうとしたのは最初だけで、あとはもう、接吻という行為におぼれていた。 数十秒立ってようやく自由を手にした土方は高杉をにらめつけてやろうと向き直った。 土方は驚いた。 いや、驚いたなんてものではない。 明日は吹雪か?と、真面目に疑いさえした。 「土…方……っ」 高杉は泣いていた。 目にたまっているそれは明らかに涙で、 自分の名前を呼ぶその声はかすかに震えていて、 瞬きをしたら水が零れ落ちた。 「もう一回言ってくれよ…」 「なにを?」 「愛してるって……」 「はぁ!?」 「頼む……」 「………」 土方は高杉の胸元に頭を当てて 「愛してる……」 と言った。 「ホントか…?」 「俺の言うことが信じられねぇのか?」 土方は笑った。 「それだ」 「は?」 「それだよ……俺の見たかったものは……」 「………」 「わらってくれるか?俺のために」 土方は答える代わりに薬指を見せた。 そこには、銀色に輝く指輪がはめられていた。 「おま…それ……」 「情けねぇ顔すんじゃねえよ」 「ずっと…つけててくれたのか?」 気がつかなかった 自分がこんなにも幸せであったのを 「いつだ?」 「あ?」 「いつから起きてたんだよ」 「……ああ」 ついさっきのディープキスのことか 「お前が帰ってきたときから」 「ずっと、寝た振りしてたのか?」 「寝ながら悩んでた」 「悩んでた?何を?」 「…いや、くだらねぇ悩みだった。もう解決した」 だが、まあ新たな悩みができちまった。 これからどうやってこいつを幸せにしていくか、考えなけりゃなんねぇ。 なぁ?土方 ---- (あとがき) これでもかっていうくらい高杉を情けなくしてみました。 どーしよっかなこれ?

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