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土方十四郎は優秀な生徒だった。 剣道部副将。風紀委員副委員長。 勉強の面においても、常にクラスでトップである。 ただ、一科目を除いては。 「土方。」 「なんですか?」 「ちょっと話がある。生徒指導室まで来い。」 そう言って部活に行こうとしていた土方を止めたのは高杉だった。 高杉は、銀魂高校の保険医と同時にZ組の科学の授業も担当している。 実は土方は数ヶ月前から高杉とつきあっていた。もちろんこのことは周りに知られてはいない。教師が生徒に手を出したなんて知られたら、教育委員会が黙っちゃいないだろうし、ましては男同士だ。 とにかく、部活に遅れることを近藤さんに報告してから行かないと。 土方は近藤の机に向かった。そこには沖田もいた。 「近藤さん、俺ちょっと生徒指導室に呼び出されているから、先に部活行っててくれ。」 「どうしたんですかィ、優等生土方が呼び出しくらうなんざァ珍しい。」 そう言ったのは沖田だった。 「なんでもねぇよ。すぐ行くから。」 「ああ、わかった。頑張れよ、トシ。」 何を? ---- 「なぁ、総悟。」 土方が教室を出たとたん、近藤が口を開いた。 「最近トシの様子がおかしくないか?」 「俺も気付いてまさァ。」 「特に……」 「そうですねィ……」 「「科学の授業中とか。」」 ---- 生徒指導室のドアを開けると高杉が座っていた。 さほど大きくないこの部屋には、他の場所から移してきた机やいすが、無造作に隅に寄せられている。 真ん中に机がひとつ、向かい合うようにいすが二個。 高杉はそのうちのひとつに座っていた。 「遅かったじゃねぇの。」 「近藤さんに遅刻報告してたんだよ。」 「……まあ、いいぜ。女は男を少し待たせるくらいがちょうどいいからな。」 「誰が女だ!」 眼帯をしたその顔で、高杉はケタケタと笑った。 やっぱり。土方は確信した。 俺はこの男が苦手だ。 「何で呼び出されたかわかるか土方?」 「………」 「この前の試験の結果だ。」 高杉はそう言うと、土方の解答用紙であろう紙を5枚机に置いた。 「国語96、数学91、英語93、社会89。クラス内ではトップだ。」 それなのに、と高杉は続けて、土方の前に理科の答案用紙を出した。 「俺の教科だけ赤点だ。」 「………」 「お前、理科苦手だったっけか?」 そんなはずねぇよなァ、と高杉はつぶやく。 やめろ。 その顔を俺に向けるな。 その眼で俺を見るな。 その声で俺に話しかけるな。 「……おい、聞いてんのか土方!」 「うるせぇよ!!」 両手でバンと机をたたいて立ち上がる土方を見て、高杉は驚いた。 「おい。」 「話しかけるな!」 その顔が嫌いだ。 その眼が嫌いだ。 その声が嫌いだ。 変な気持ちになる…… 俺が俺でなくなっていくような…… 高杉は何もしゃべらなくなった。 ---- 10分立った。 相変わらず両者は黙ったままだった。 土方はだんだん後悔してきた。 高杉は…ただ俺の受験のこと心配してくれただけなのに、俺は逆切れして…、高杉は悪くないのに。 そう考えると次第に土方の目の前がかすんでいった。 「高杉…」 「なんだ?」 俺があんなに逆切れしたのに 高杉は静かに返事をした。 そのやさしさも…… 「嫌いだ……。お前の良いところが全部……」 嫌いなんだ……… どうしようもないくらいもどかしい 「俺はお前が好きだぜ土方」 いけねぇか? そう聞かれて土方は首を横に振った。 「授業中…お前の授業中、変な気持ちになるんだよ。なんかこう…体が熱くなって、顔を合わせらんねぇんだ。」 土方はうつむいたまま話し始めた。 こんなこと、言い訳にしかならないというのは知っていた。 「つまりは俺に欲情してんのか。」 「なっ……」 土方は反論しようと口を開いたが、何も言えなかった。 「ホント…かわいいな、お前。」 「かわいくなんかねぇよ!」 「授業に集中できねぇんだろ?ハッ、そりゃ成績も下がるな。俺としては、お前銀八の教科が一番できてたからよォ」 嫉妬したぜ? そういわれて土方は顔が熱くなった。 ---- (あとがき) 初めて書きました。3Z バージョンです。 シリアスな中でも甘いのができたんでよかったです。
土方十四郎は優秀な生徒だった。 剣道部副将。風紀委員副委員長。 勉強の面においても、常にクラスでトップである。 ただ、一科目を除いては。 「土方。」 「なんですか?」 「ちょっと話がある。生徒指導室まで来い。」 そう言って部活に行こうとしていた土方を止めたのは高杉だった。 高杉は、銀魂高校の保険医と同時にZ組の科学の授業も担当している。 実は土方は数ヶ月前から高杉とつきあっていた。もちろんこのことは周りに知られてはいない。教師が生徒に手を出したなんて知られたら、教育委員会が黙っちゃいないだろうし、ましては男同士だ。 とにかく、部活に遅れることを近藤さんに報告してから行かないと。 土方は近藤の机に向かった。そこには沖田もいた。 「近藤さん、俺ちょっと生徒指導室に呼び出されているから、先に部活行っててくれ。」 「どうしたんですかィ、優等生土方が呼び出しくらうなんざァ珍しい。」 そう言ったのは沖田だった。 「なんでもねぇよ。すぐ行くから。」 「ああ、わかった。頑張れよ、トシ。」 何を? ---- 「なぁ、総悟。」 土方が教室を出たとたん、近藤が口を開いた。 「最近トシの様子がおかしくないか?」 「俺も気付いてまさァ。」 「特に……」 「そうですねィ……」 「「科学の授業中とか。」」 ---- 生徒指導室のドアを開けると高杉が座っていた。 さほど大きくないこの部屋には、他の場所から移してきた机やいすが、無造作に隅に寄せられている。 真ん中に机がひとつ、向かい合うようにいすが二個。 高杉はそのうちのひとつに座っていた。 「遅かったじゃねぇの。」 「近藤さんに遅刻報告してたんだよ。」 「……まあ、いいぜ。女は男を少し待たせるくらいがちょうどいいからな。」 「誰が女だ!」 眼帯をしたその顔で、高杉はケタケタと笑った。 やっぱり。土方は確信した。 俺はこの男が苦手だ。 「何で呼び出されたかわかるか土方?」 「………」 「この前の試験の結果だ。」 高杉はそう言うと、土方の解答用紙であろう紙を5枚机に置いた。 「国語96、数学91、英語93、社会89。クラス内ではトップだ。」 それなのに、と高杉は続けて、土方の前に理科の答案用紙を出した。 「俺の教科だけ赤点だ。」 「………」 「お前、理科苦手だったっけか?」 そんなはずねぇよなァ、と高杉はつぶやく。 やめろ。 その顔を俺に向けるな。 その眼で俺を見るな。 その声で俺に話しかけるな。 「……おい、聞いてんのか土方!」 「うるせぇよ!!」 両手でバンと机をたたいて立ち上がる土方を見て、高杉は驚いた。 「おい。」 「話しかけるな!」 その顔が嫌いだ。 その眼が嫌いだ。 その声が嫌いだ。 変な気持ちになる…… 俺が俺でなくなっていくような…… 高杉は何もしゃべらなくなった。 ---- 10分立った。 相変わらず両者は黙ったままだった。 土方はだんだん後悔してきた。 高杉は…ただ俺の受験のこと心配してくれただけなのに、俺は逆切れして…、高杉は悪くないのに。 そう考えると次第に土方の目の前がかすんでいった。 「高杉…」 「なんだ?」 俺があんなに逆切れしたのに 高杉は静かに返事をした。 そのやさしさも…… 「嫌いだ……。お前の良いところが全部……」 嫌いなんだ……… どうしようもないくらいもどかしい 「俺はお前が好きだぜ土方」 いけねぇか? そう聞かれて土方は首を横に振った。 「授業中…お前の授業中、変な気持ちになるんだよ。なんかこう…体が熱くなって、顔を合わせらんねぇんだ。」 土方はうつむいたまま話し始めた。 こんなこと、言い訳にしかならないというのは知っていた。 「つまりは俺に欲情してんのか。」 「なっ……」 高杉の言葉に土方は反論しようと口を開いたが、何も言えなかった。 「ホント…かわいいな、お前。」 「かわいくなんかねぇよ!」 「授業に集中できねぇんだろ?ハッ、そりゃ成績も下がるな。だがなァ…」 高杉は少し笑って 「お前銀八の教科が一番できてたからよォ」 嫉妬したぜ? そういわれて土方は顔が熱くなった。 ---- (あとがき) 初めて書きました。3Z バージョンです。 シリアスな中でも甘いのができたんでよかったです。

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