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①私からもう一度頼んでみる

(私から修二くんにもう一度頼んで見るよ。だから明日学校が終わってから家に来てくれるように伝えてくれない?)
チハルが私の言葉を春樹たちに伝える。

「分かりました、何が何でも連れてきます」
「任せとけ、ちゃんと連れてきてやるよ」
(二人とも、無理やりはダメだからね……)
二人とも修二くんが嫌がったら、気絶させてでも連れてきそうな勢いだ。

(そういえば、明日は周防さんが来てくれるって言ってたよね?)
「明日スオウがくる?」
「ああ、そうそう。お前の寝てる原因が分からなかったから、とりあえず呼んでおいた。原因が分かったから断っておくか?」
(ううん、聞きたい事があるから)
さっき見た夢が気になる。きっとあれは普通の夢じゃない。

「愛菜ちゃん、スオウに聞きたい事があるって」
「聞きたいこと? なんだ?」
(うん、ちょっと気になることがあって……、ねえ春樹、秋人さんって急に性格が変わったんだよね?)
「ええ、以前はもっと優しい人だったよ。
 そんなに態度には出さないようにしてるようだったけど、気がつくと助けられてたってことも結構あったな」
(やっぱりだいぶ性格が変わったみたいだね)
秋人さんが言っていた「闇」と言う言葉が気になった。
周防さんはそれが何か分かっているような口ぶりだったから、明日来たら聞きたいと思ったのだ。

(それにさっき一瞬春樹の気配が黒く変わった……それも気になる)
いまは全く感じないけれど、あの時確かに今までの春樹なら口にしないことを言った。

(周防さんにそのことも確認したいし、ね)
(愛菜ちゃん……?)
不安そうにチハルが心に話しかけてくる。
チハルにも春樹の異常が分かったのかもしれない。

①チハルを安心させる
②もっと秋人さんのことを聞く
③今日はもう寝る

772
③今日はもう寝る

(周防さんに来てから尋ねればいいか……)

神宝と神器を体に馴染ませるためには、少しでも休んだ方が良い。
いくらチハルとの会話でも、少しは力を使っている。

(チハル。ちょっと疲れたらかもう寝るね。春樹と隆にも言っておいて)
(わかったー。おやすみ、愛菜ちゃん)
(おやすみ。チハル)

意識が落ちて、また夢が現れた。

(これは壱与の中。……でも、あれから数年経ってるみたい……)
大堂愛菜の意識は壱与の中で、また静観しはじめる――。

あれから、私たちはお互いの気持ちを封印し、強い信頼関係を築いていった。
けれど、三種の神器はその拠り所を失い、力を弱めていく一方だった。
人間に与えられた祝福だったけれど、私が壊してしまったのが原因だ。
託宣も最近は得られず、巫女としての使命に限界を感じ始めていた。

「壱与!」
「帝……!」

久しぶりに現れた帝は、少しやつれ気味だった。
天災続きで、政にも影響が出ているのだろう。

「今日は面白いものを持ってきた。見てくれないか」

顔色とは裏腹に、帝は子供のようにはしゃぎながら私にある竹簡をみせる。

「これはなんでしょう?」
「大陸から贈られたものだ。しかし、文字というのは難しいな……」
「えーっと……これは経典ですね」
「なぜ分かる? まさか、君は大陸の文字が読めるのか!?」
「ええ。出雲と楽浪郡は貿易が盛んでしたので……」
「すごいぞ! 頼む、僕に文字を教えてくれないか」

(教えてしまってもいいのかしら……)

①教える
②教えない
③考える

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①教える

「いいですよ」
「本当か!? ありがたい」

これを期に、私は帝に文字を教えることになった。
大和が大陸と本格的に貿易を始めたのが、最近だという話だった。
帝は要領がいいのか、砂が水を吸うように文字を覚えていく。
そして、数ヶ月もしない内にほとんどの文字が読めるようになっていた。

「この仏教というのは、興味深い教えだな」

帝はしみじみと竹簡を見ながら、呟いている。

「どういった内容なんですか?」
「うーん。色々なことが書いてあるな」
「色々……」
「一言でいうと、心の在り方を説いている……というところだ」
「心の在り方?」
「個である意識の問題かな。たとえば、思うようにならない苦しみがあるだろう?」
「はい」

(災厄に疫病……思うようにならないことばかり)

「なぜ苦しむのか。それは、比べているんだ。思い通りになった自分と。そして嘆く」
「なんとなく……わかります」
「苦しむことも嘆くことも比べる事自体が無意味なんだ。自分自身も原因と結果の一つに過ぎないのだから。
その大きな流れの中で自分は生かされている。けれど、自分の行いもまた原因を作り結果を生む。
だから、身の丈にあった出来ることを精一杯すればいい。要約すればそんな感じだろうな」
「難しいですね」
「まあな。僕は絶対者である神の系譜だ。だが、この教えは絶対神を否定している」
「神であることに、疲れているのですか?」
「そうだな……。きっと、そうなのだろうな」
「でも……」

そう言いながら、私は言葉を続ける。

「でも……すべての中に神はいます。小川のせせらぎの中にも。風の中にも。
たとえ祝福がなくなってしまったとしても、人はその美しい声を聞くことが出来るはずです」

「そうか。やはり君は:…気高く…強いな……」
帝は私を見ながら、穏やかに笑った。

(二人が何を言っているのか全然わからなかった……)

私は……
①夢を終える
②続きを見る
③考える

774
③考える

二人が何を言っているのかは分からなかったけれど、壱与の言った言葉は私も知っていることだ。

(すべての中には神がいる……)
壱与が言っている神には精霊も含まれているのだろう。
チハルは、精霊は力が強くなると神に昇格すると言っていた。
つまり、すべてのものは神になれる可能性を秘めているのだ。
壱与にとってそれは当たり前で、帝がなぜそんな事を言うのか不思議に思っている。
私はふと、壱与のいるこの時代の風景を見たくなった。
大和に来てから壱与の記憶はほとんどが神殿の室内で、外の景色はその窓から見える範囲に限られていた。

(ちょっと見て見たいな……)
ふとそう思うと、不意に視界が変わった。

(ここは……?)
どうやら森のなからしい。
現代の日本では限られた場所でしか感じることが出来ない濃い緑の香り。
重さを感じてしまうくらい濃密な空気。
そして、そこここに感じる力の気配。

(この力の一つ一つが精霊なのかな? ……あれ?)
澄んだ力の気配とは異質な気配を感じて私はそちらに意識を向けた。

(なんだろう……懐かしい感じもするのに、嫌な感じもする……)
確認したいけれど、かすかに感じる嫌な気配にためらってしまう。

どうしよう……
①行く
②行かない

775
①行く

(せっかく来たんだしね)

私は湿り気を帯びた空気を吸いながら、深い森をさらに進んでいく。
すると、鏡のように澄んだ池が見えてきた。

「お前は……誰だ」

うしろから声がして私は振り向く。
すると、隆が立っていた。

「隆!!」
「……人間じゃないな。何者だ」
「隆……なんでこんな所に? 迎えに来てくれたの?」
「タカシ? それはどんな食べ物だ。うまいのか?」
「何言ってるの? それに……そんな裸みたいな格好してたらお腹痛くなるよ」
「貴様……よく見ると鬼だな」

隆はそういうと、途端に敵意むき出しにして私を睨む。
(ヘンな隆……)
それに……格好だけじゃなくて、いつもの隆とは決定的に違っているものがあった。

「耳……だ」
「鬼め。ここの精霊たちを喰いにきたのだろううが、そうはいかないからな」
「よく出来てる耳。隆が作ったの?」
「この土地を守護する者として貴様を倒す!」
「何の変装…わかった! お化け屋敷のだ」

私はその良く出来た耳をギュッと触る。
すると生きているみたいに暖かくて、ピクンと動いた。

「わ! 本当に生えてるみたい」
「気安く触るな!」
「狼男のつもり? だけど、香織ちゃんから聞いてるでしょ。うちクラスは和風だよ」
「俺の話も完全に無視とは……大した度胸だ。死んでから後悔するんだな!」

そう言うと、隆は私に掴みかかってきた。
どうする?

コマンド
①たたかう
②にげる
③ぼうぎょ

776
③ぼうぎょ

私はとっさにぎゅっと目を瞑り、顔の前で手を交差して頭をかばう。
けれど、衝撃は来なかった。

(あれ?)
不思議に思って、おそるおそる目を開ける。
目の前に隆はいなかった。
あわてて周りを確認すると、私の後で呆然と立っている隆がいた。

「すり抜けた? ……貴様、普通の鬼でもない、のか?」
悔しそうに唇をかみしめる隆に、私はふと疑問を覚える。

(そういえば隆に、私が鬼になったこと言ってないよね……? 何で知ってるの?)
春樹が隆に言ったのだろうか?
いや、春樹がわざわざそういうことを言うとは思えない。
それにあの耳も、温かくて血が通っているようだった。

「何者だ……その強い力……」
敵意をむき出しにしたまま、警戒するように隆は幾分腰を落として私を見ている。
いつでも飛びかかれるような態勢だ。
それに、すり抜けたってどういうことだろう?
私はさっき普通に触ることが出来た。

「ね、ちょっと聞いていい? あなた隆じゃないの?」
「だからそれはなんだ?」
「そっか、違うのか……」
けれど、見れば見るほどそっくりだ。

(耳だけは違うけどね……そういえばさっき……)
ここを守護するものとか、精霊を喰いにきたとか言っていたような?

「ちょ、ちょっと、もしかして私が精霊を食べるとでも思ってるの!?」
「食べないとでも言うのか? 貴様鬼だろう……ちょっと変わってるが」
「食べるわけ無いじゃない!」
そりゃあ、野菜なんかにも精霊がいるのだからそういう意味では食べてると言えるけど……。

「野菜とか果物とかは食べるけど、それにも精霊がいるんだろうけど……むやみに食べたりしないわよ」
私の言葉に、隆のそっくりさんはぴくっと耳を動かした。
けれどそれは私の言葉に反応した分けでは無いらしい、私もすぐに異変に気付く。

「なに、この嫌な感じ……」
さっき感じた嫌な感じがこちらに近づいて来る。

「敵が来る」
「え?」
「お前の仲間だろう」
「……鬼ってこと? でも、鬼の一族は壱与以外……まさか、高村の一族?」
力の弱くなった鬼、それが高村の一族だといっていた。

突然空気が震える。まるで、何かが引き裂かれたかのような感じがした。

「な、なに!?」
「くそっ、鬼めっ」
隆のそっくりさんが、ものすごい勢いで嫌な感じがする方へと走って行く。

私は……
①追いかける
②この場にいる
③考える

777
①追いかける

「隆! 待ってよ!!」
私は急いでその背中を追いかけた。

(足、早すぎ……)

「見つけた……手負いの鬼だ」
隆のそっくりさんが草むらに隠れる。
私もそれにならった。

陰から覗いたその姿は、それなりの地位を持っているであろう男性だった。
小川の脇、大木に座り込んでその身を隠している。
身体から止めどなく血が流れ、酷い怪我をしていた。

(助けなきゃ……)
「おい、お前!ちょっと待てって!!」
そっくりさんの制止を振り切り、草むらから飛び出すと男性の前に立つ。
「大丈夫ですか? すぐに祈祷を……名前を教えてもらっていいですか?」
祈りを捧げるためには対象者の名前が必要だった。
「……守…屋」
「わかりました。それ以上はしゃべらないでください」
私はその男性の身体に触れ、祈り始める。

「見つけたぞ! こっちだ!!」
その時、男性を追ってきた兵のひとりに見つかってしまった。
(どうしよう……このままじゃ、この人死んじゃうよ)

もぞもぞと草むらが動いて、隆のそっくりさんが現れる。
そして男性を背負うと、私に向かって口を開いた。
「こっちこい。見つからないとこまで走れ!」

私は……
①ついていく
②やめる
③考える

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①ついていく

私はあわてて隆のそっくりさんについていく。
人を一人背負っているとは思えない速さで走って行く彼に、付いて行くのが精一杯だ。

「おい、お前たち侵入者だ、かく乱しろ」
そっくりさんは走りながら周りに向かって声をかけている。
その声に反応するように、精霊のものと思われる力が幻影を作り出していく。

「すごい……」
振り返って見ると、幻影に惑わされた兵士が別の方向へ走って行く。
しばらく走り、繁みに囲まれて隠れるのによさそうな木の根元で、そっくりさんは守屋さんを降ろした。

「ここまでくれば平気だろ」
「………っ」
「! すぐに癒します」
私はあわてて傷の上で手をかざす。
守屋さんの名前を唱え、神に祈る。
身の内にある、神宝の力が守屋さんを癒していく。
鬼ということもあるのか、力はすぐに守屋さんの傷を塞ぐ。
流れた血はさすがに戻せないけれど、これで命に危険は無くなったはずだ。
守屋さんはぐったりとしていて、まだ話す元気は無いようだ。

「あんた、その力……巫女? いや、だが間違いなく鬼の気配が……」
隆のそっくりさんがぶつぶつと言っているのに気付いて、私は振り変える。

「私は鬼だけど、巫女でもあるの……昔ね」
「昔?」
「うーん、なんて説明すればいいのかな? 前世?」
「ふーん……?」
そっくりさんは納得したのかしないのか、あいまいに返事をする。
とりあえず、このそっくりさんに名前を聞いてみようと、私は立ち上がってむきあう。

「私、愛菜っていうの。あなたは?」
「アイナ? 変な名前だな……。 俺は……」
そっくりさんはそこで言葉を濁し、視線をさまよわせふと一点で視線を止めた。
そちらをみると、木の枝が風で揺れ葉に光が反射してている。

「俺のことは光輝とでも呼べばいい」
「コウキ?」
「そうだ」
「ていうか、いま思いついたみたいな答えなんだけど?」
「あたりまえだ、良く知りもしない相手に本名を教える精霊がいるわけ無いだろう」
いわれて、記憶がよみがえる。
そういえば、真名とはとても大切なものだった。
現代でこそ普通に名乗りあっているが、この時代では真名を握られると言う事は命を握られるのと同意だった。

(普通に名前教えちゃったよ……ま、いいか)
光輝が私の真名をしって、何かするとは思えない。

とりあえず……
①ここはどこか聞く
②守屋さんの様子を見る
③追っ手が来ないか探って見る

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②守屋さんの様子を見る

(守屋さん。大丈夫かな……)

守屋さんの身なりは、ちゃんとしていた。
材料の乏しいこの時代でも、上等なものはすぐにわかる。

(若く見えるけど……この人、身分が高い)

だけど、なぜ追われていたんだろう。
あの兵は、たぶん大和も者だ。

(ということは……出雲の民……?)

大和の兵に追われている鬼ならば、逃げ延びた出雲の民に違いない。
けれど壱与の記憶を遡ってみても、王族で思い出すことは出来なかった。
(身分は高いけど、きっと王族じゃないんだ……)

その時、守屋さんの口から意外に名前が漏れる。

「おやめ……くだ……さ…い…帝…」

「え?」
驚いた私を見て、光輝が振り向く。
「どうした。何を驚いているんだ?」
「この守屋さんが、今、おやめください帝って……。まるで…家臣みたいに…」
それを聞いて、光輝が腕を組んで首を振った。

「あんたの聞き間違いだろ。鬼と大和の帝といえば、いくさで殺しあった国同士だ。
森の中に住んでる俺でも知ってる事だぜ」
「うん。そうだね……」

(でも、たしかにそう聞こえたんだけどな)

「ところで……鬼の女」
私が考え込んでいると、光輝が声をかけてきた。
「あのさー。鬼じゃなくって、愛菜って呼んで欲しいんだけどな」
光輝はキョトンとした顔で私を見て、鼻の頭を掻いている。

「どうしたの?」
「あ、いや……。なんでもない……」

①「何、気になるじゃない」
②「名前が呼び辛いの?」
③「それにしても、隆にそっくりだね」

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③「それにしても、隆にそっくりだね」

鼻の頭を掻く仕草もそっくりだ。
もしかしたら、隆と同じで照れてるのかもしれない。

「そのタカシってのはなんだ?」
「私の幼馴染だよ」
「じゃあ鬼なのか」
途端不機嫌そうに、光輝は顔を顰める。

「違うよ。人間。精霊と話をすることが出来るけど、鬼じゃないよ」
「なんで鬼に人間の幼馴染なんているんだよ」
「なんでといわれても……私が鬼になったのだって最近だし……」
「はぁ? 元々はお前も人間だったって言うのかよ」
意味が分からないと言うように、光輝は首をかしげる。

「うん、そうだよ。三種の神器と契約しちゃったから、鬼として目覚めたんだって」
「わけわかんね。大体、神器は大和が管理してるだろ。最近はその力もやけに弱くなってるが……。
 それに、お前の中にあるのは神器じゃないだろう」
「分かるの?」
「あのなあ……俺はこの地を任されてるんだ。 それなりに地位が高いんだよ。
 これくらい分からないでどうする」
「へぇ……光輝ってえらいんだ」
隆と同じ顔だからあまりそういう感じはしないけれど、そういえばさっき周りの精霊に命令していた。

「当たり前だろ? まったく礼儀を知らない奴だな」
「ご、ごめんね」
そうだ、隆とそっくりだけど光輝は隆じゃない。
地位の高い精霊みたいだし、隆と同じ感じで話していたらすごい失礼なことなのかもしれない。

(って、あれ? ……これって夢、だよね?)
これは過去の私の夢ではないのか?
けれどここに壱与はいない。壱与はあの神殿から出られない。
そして壱与の記憶のどこにも光輝のことは無かった。守屋さんのことも。

どういうこと?
①実際に過去に来ている
②他の誰かの夢
③気にしない事にする

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