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②「お、重い」

一回り大きい修二くんの身体が上にあって身動きが出来ない。

「し、修二くん、早くどいて」
「ったた…、うわ、愛菜ちゃんごめん、すぐ退くから!」
ガコンと音を立てて、修二くんは持ったままの蓋を床に置くとあわてて立ち上がる。

「大丈夫?愛菜ちゃん?」
「う、うん。なんとか」
修二くんが差し出してくれた手を取って、立ち上がる。
制服に付いたほこりを叩きながら足元を見ると、取れてしまった蓋が置かれている。
重そうな蓋は蝶番を止める部分が錆びて弱くなっていたのか、壊れてしまったようだ。

「壊れちゃったね、どうする?」
「まあ、仕方ないよ。かなり重いし、ただ置いておくだけで大丈夫じゃない?」
軽くいいながら、修二くんは蓋の取れた床を覗き込む。

「うーん、暗くて奥が見えないな…」
「ほんとだ…」
見える部分は急な石の階段だった。3段くらいまでは見えるが、もともと薄暗い体育館倉庫だ、その先は真っ暗で見えない。

「降りてみようよ」
楽しそうな顔で、修二くんが私を振り返る。

私は…
①「うん、行ってみよう」
②「嫌だよ、やめよう」
③「いいけど、せめて電灯とか持ってこようよ」

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③「いいけど、せめて電灯とか持ってこようよ」

(そういえば…ハンドライトを持っていたような)

お化け屋敷で使うために偶然持ってきていたのを、ふと思い出した。

「私、ちょうど電灯を持ってきているの。ちょっと待ってて」
「あ、愛菜ちゃん待って…」

修二くんの声が聞こえたような気がしたけれど、私は教室に向かって駆け出した。

教室に戻り、自分の手荷物を探る。
「見つけた」
電灯を手に持つと、急いで体育館倉庫に戻ってきた。

「お待たせ、修二くん」
私が息を切らせて戻ってくると、すでに修二くんの手には電灯が握られていた。

「あれ…。どうして修二くんが電灯を持っているの?」
「さっきの工具箱の中に入っているのを見つけたんだ。なのに愛菜ちゃん、俺の話も聞かずに飛び出しちゃうし」
修二くんは手元の電灯をいじりながら、じーっと私を見た。
「……ご、ごめん」
「それじゃ、愛菜ちゃんが持って来た電灯を使うからさ」
修二くんはなぜか、手元の電灯を工具箱に仕舞ってしまった。

「どうして? 二つあった方が明るいでしょ?」
「えーっ、ダメだよ。こういうシチュエーションは俺の腕にしがみ付きながら怖がってもらわないと。
そのためには、電灯は一つじゃないとね」
そう言いながら、修二くんは爽やかに笑った。

(この笑顔…裏があるようにしか見えない)

「張り切って、行こう♪ ね、愛菜ちゃん」
私の手をさりげなく取ると、ゆっくり石段を降りはじめる修二くん。
少し動揺しながら、修二くんに手を引かれ一歩一歩階段を下りていった。

中に入ると真っ暗だったが、電灯で照らすと石畳に囲まれたトンネルのようになっていた。
整然と並べられた石畳は、どう考えても人工的に作った物のようだ。
地下水が染み出しているのか、全体的に湿っていて足元も悪くなっていた。

「意外と奥までありそうだね。先に進む? もう止めておく?」
強張っているのを私を見てさすがに心配したのか、修二くんが尋ねてきた。

①先に進む
②やっぱり止めておく
③もう少し、中の様子をみる

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①先に進む

「大丈夫だよ、行ってみよう」
せっかく教室まで戻って、ライトを持ってきたのだから何があるのか見てみたい。
身体がこわばるのは、まわりが良く見えないから本能的にそうなってしまうだけで、怖いわけではないのだ。

(なんたって、『見える』修二くんがぜんぜん怖がってないもの…)
何かよくないものが居るなら、私が行きたいと言ってもきっと止めるだろう。
それに、なぜかこの先を確認しなければいけない気がする。

「そう?それじゃ行くよ」
私の言葉に、修二くんは私の手を引いて歩き出す。
慎重に足を進めていくが、どこまで行っても石畳の通路だ。

「どこまで続いてるのかな?」
さすがに、不安になってくる。

「うーん…、まだ先があるみたいだ。ずっと一本道だし迷うことはないけど…」
修二くんは首を傾げながら、いつもの調子で話す。

「でも、距離的にもう学校の敷地はとっくに出てるね」
修二くんは言いながら、今まで来た歩いてきた方向を照らす。
すでに降りてきた階段も見えない。
それから、これから向かう道へ明かりを戻し肩をすくめた。
来た道同様、先の道も光の届く範囲は今までと変わらず石畳の通路で、その先は暗がりで見えず、どれだけ続いているのか見当もつかない。

「どこまで続いてるんだろうね?っていうか、なんでこんな通路が学校の体育館倉庫につながってるんだろ…?」
「さあ?どこにつながってるか分かれば推測することは出来るけど、どこにつながってるのか分からないままじゃね~」
う~んと、うなりながら修二くんは困ったように言う。
確かにどこにつながってるか確認できなければ、目的なんて分かるはずもない。

「そうだよね…、でもあんまり遅いと一郎くんも心配しちゃうよね」
機材の点検も結局まだやっていない。

どうしよう…。
①このまま進む
②あと5分だけ進んでみる
③戻る

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②あと5分だけ進んでみる

「愛菜ちゃんが不安なら、俺はここでやめてもいいよ?」

(どうしようかな…せっかくだし、もう少し先に行ってみたいかも)
「もう少しだけ進んでみようよ。一郎くんが心配する前に帰るようにしないといけないから…あと5分くらいならいいよね」
「……俺は愛菜ちゃんが大丈夫かって聞いているんだけどな」
修二くんの声色が少しだけ曇った。

「私はまだ平気なんだけど、点検が終わってないし……一郎くんに迷惑はかけられないよ」
「兄貴のことなんて、今はどうでもいいじゃん」
「どうでもいいって…そんな言い方はよくないよ。兄弟でしょ?」
「兄弟ね。顔も同じだし、時々嫌になるよ。すぐ比べられるしさ」

一郎くんのことを頼りしている時もあれば、今みたいに疎ましそうにするときもある。
昨日の一郎くんといい、二人の関係は微妙なバランスで成り立っているのかもしれない。

「一郎くんに比べられて、嫌なの?」
「別に……嫌って訳じゃないけど。それより、兄貴は放っておいても平気だよ。後から携帯で連絡すればいいしさ」
「忙しい一郎君を手伝うつもりで点検しているのに、手間をとらせるわけにはいかないよ」
「さっきから、兄貴のことばっかりだ」
「どうしたの? 修二くん」
「なんでもない」
繋がっている修二くんの手に力が篭った。
歩幅もさっきより大きくなって、私を引っ張るように歩いていく。

「修二くんってば」
「口を開けば一郎くん一郎くんって……兄貴がそんなにいい? そりゃ、兄貴はしっかりしてて頼りになるし、ずっと学年トップの成績だよ。
テニスだって中学では兄貴の方が上手かったのに、卒業と同時に辞めたちゃったし。くやしいけど、俺がどれだけ努力してもいつも兄貴の方が秀でてる」
憮然と言い放ちながら、ずんずんと歩いていく。
顔までは見えないけれど、きっと怒っているのだろう。

「しゅ、修二くん。早い。……もう、10分以上経ってるよ」
男の子の歩幅についていけず、とうとう私は音を上げてしまった。
その言葉に反応するようにピタリと歩みを止めると、修二くんは私に向き直った。
「ここには俺と愛菜ちゃんの二人きりって気付いてる? 」
一歩、修二くんは私に近づくと、手元の明かりを消してしまった。
真っ暗闇になり、完全に視界が奪われる。
ただ、繋いだ手のぬくものだけが頼りになってしまった。
「く、暗いよ……」
「前にも言ったと思うけど、愛菜ちゃんと付き合いたいと思っているのは本当だよ。キスしたのだって……まったく下心が無かったと言えば嘘になるしね」
「修二君……」
「俺が怖い? 愛菜ちゃん」
意外なほど、冷静な口調で修二くんが尋ねてくる。

私は……
①「怖くないよ。修二くんを信じているから」
②「怖いよ。でも、修二くんを信じているから」
③「修二くんは卑怯だよ。私を使って一郎君に勝とうとしてる」

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②「怖いよ。でも、修二くんを信じているから」

冷静に聞かれて私は一瞬自問する。
確かに修二くんが急変してしまう可能性を考えると怖い。
けれどそんな事にはならない、という妙な確信があった。
そう思い答えると、闇の中修二くんが笑うような気配があった。

「う~ん、妙な所で妙な信頼を得ちゃってるんだな~」
「だって、修二くんはいつも私のことを考えて行動してくれてるでしょ」
何も知らない私に水野先生のことを最初に教えてくれたのも修二くんだ。
怪我をして保健室に居た私をすごく心配してくれたし、休んだときには家まで来てくれた。
あの時のキスだって、私の調子が良ければチャンスがあっても修二くんはしなかったと思う。

「一郎くんは嫌なことがあったら、大切な人を自分が盾になって抱え込んで守ろうとするタイプだけど、修二くんは一緒に並んで一緒に乗り越えたいタイプでしょ?」
私が言うと、修二くんはうーんとうなってそうかもと答える。

「だから信頼できるよ。修二くんが私を本当に付き合いたいと思うほど好きで居てくれるなら、ね」
修二くんは一緒に歩いていきたい相手の気持ちをないがしろにするような人じゃないとおもう。

「うわ、でかい釘さされた気分」
修二くんがおどけた調子で笑い、明かりをつける。
けれど明かりに浮かび上がった顔は真剣だった。
修二くんはその明かりを、向かっていた先へと向ける。

「さてと、おしゃべりはおしまい。そろそろ出てきたらどうかな?」
「え?」
修二くんが照らした先、光がギリギリ届くあたりに人の足が見えた。
修二くんの言葉に、その足が動き近づいてくる。

光に浮かび上がったのは…
①冬馬先輩
②周防さん
③しらない人

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②周防さん

「よっ! 愛菜ちゃん」
片手を挙げながら、近づいてくるのは間違いなく周防さんの姿だった。

「す、周防さん!?」
「そんなに驚かなくでもいいじゃないか。幽霊かと思ったか? だったら、ちゃんと足だって付いてるぞ」
「すごく心配していたんですよ!」
私の目の前まで近づいてきた周防さんを改めて見つめる。
今は再び会えた事が、何よりも嬉しい。

「この通り、すっかり良くなったよ。心配かけて、ゴメンな」
そう言って、周防さんは私の頭の上にポンと手を載せた。

「謝らなくちゃいけないのは、私の方です。助けてくれてありがとうございました」
「いいってこと。俺は愛菜ちゃんを守るって約束していただろう? だから、気にするなって」
載せられた手が、私の髪をくしゃくしゃと撫でた。
周防さんが戻ってきてくれて、本当によかった。

「周防ってたしか……反主流派の人だっけ」
傍らにいる修二くんが呟いた。
「あ…うん。そうだよ」
修二くんが周防さんの事を知っているということは一郎くんから話をすでに聞いているのだろう。

「ところで、愛菜ちゃん。その隣にいるのは誰かな?」
周防さんは修二くんの姿を見ながら、尋ねてきた。
私が紹介しようとすると、修二くんはそれを制すように一歩前に出た。
「俺は宗像修二って言います。あなたには、コードNO.711と説明した方が早いでしょうか」
修二くんは試すような視線を周防さんに向けている。
周防さんは困ったように頭を掻くと、真剣な顔で口を開いた。

「はじめまして、宗像くん。俺はそのコードナンバーってのが、大嫌いなんだ。二度と俺の前では使わないで欲しい」
そう言って、周防さんは握手を求めるように手を前に出した。
修二くんは周防さんの言葉を聞いて、フッと緊張を解くと周防さんの手を握り返した。
「どうも。俺には兄貴もいるんで、修二と呼んでください」
「いい名前だ。じゃあ、遠慮なくそう呼ばせてもらおう、修二」
意気投合した二人は、固い握手を交わした。

周防さんに会えたし、何か尋ねようかな。
①どうしてここにいるのかを尋ねる。
②怪我は大丈夫だったのか尋ねる。
③この通路について尋ねる。

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①どうしてここにいるのかを尋ねる。

「ところで、どうして周防さんがこんなところにいるんですか?」
「うーん。それはこっちが聞きたいくらいなんだけどな」
周防さんは私と修二君を交互に見ながら、苦笑した。

「体育館倉庫で偶然この隠し通路を見つけて、ここまで歩いてきたんです。ね、修二君」
修二君は私の言葉に黙って頷いた。
そして真剣な顔で握手を解くと、口を開いた。

「高村さん、教えてください。あなたは研究所の反主流……今の組織のやり方に対抗する組織なんですか?」
「修二。おまえさんがどうしてその事を知っているんだ」
周防さんの様子も真剣なものに変わった。
「ご、ごめんなさい。私が教えたの」
私は二人の間に入るようにして言った。
「あれ? 俺、愛菜ちゃんに言ってないはずだけど…ってあいつか、無口なくせにおしゃべりだな」
周防さんはぶつぶつと文句を言っている。

「高村さん。……実は俺と兄貴は今まで、主流派に手を貸していました」
修二君は苦々しげに呟いた。
「コードナンバーを持っているなら施設出身者だし、当然だろうな」
周防さんは驚く様子もなく淡々とした様子だ。
「そしてさっき、その取引を反故にしました」
「……それはすごい勇気じゃないか。だが、殺されるかもしれないぞ?」
「今のところ、それはないです。でも、この先どうなるかわかりません。兄貴は反対するだろうけど、俺はあなたの組織に協力したいと考えています」

周防さんは黙って聞いていた。
しばらくの重い沈黙が流れ、それに耐え切れなくなった修二くんが口を開きかけた。
すると、それを制すように周防さんが人差し指を左右に振った。
「ノンノン。す・お・う」
「?」
修二君はきょとんとした顔で周防さんを見ている。

「その高村ってのだけは勘弁して欲しいんだ。仲間にしちゃ他人行儀だろ、周防でいい。もっと気楽に話していいからな」

さすがの修二君も呆気にとられていたれど、理解したようにゆっくり頷いた。
「じゃあ、勝手に呼ばせてもらうよ。周防」
「オーケー。そういうノリの方が俺も楽だしな」
そう言って、周防さんは楽しそうに笑った。

①どうしてここにいるのかを改めて尋ねる。
②怪我は大丈夫だったのか尋ねる。
③この通路について尋ねる。

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②怪我は大丈夫だったのか尋ねる。

「周防さん、あの……」
「ん?」
周防さんは以前と変わらない様子で私に目を向ける。
二人の会話に割って入るようで少し躊躇しつつも、ずっと気になっていた事を口にした。
「怪我の具合はどうなんですか?もう、あちこち動いたりして大丈夫なんですか?」
「怪我?周防が?」
横で聞いていた修二君が首を傾げる。それも当然かもしれない、こうして見る限りは周防さんは少しも体調が悪そうな素振りは見せないのだから。

「この前、私周防さんに助けてもらったの。そのせいで周防さんがとても危ない目にあって、その後どうしてたのかずっと気になってて……」
修二君に説明しながらあの時の事を思い出したのか、知らず握り締めた手が小さく震えた。
夢で出会った周防さんは私の前で大丈夫だと笑って見せた。けれど、あれから心のどこかに周防さんのことがずっとひっかかっていた。
何が出来る訳ではないけれど、会ってこの目で無事を確かめたかったのだ。

「……だから、大丈夫って言ったろ?」
そう言って周防さんは目を細めて笑った。それから私の握り締めた手をその大きな両手で引き寄せると、目線を合わせるように長身を屈めて私を見た。
「ほら、手だって冷たくない。俺は簡単に死にゃしないよ、そんなに心配しなさんな」
語りかける周防さんのゆっくりした優しい口調が、まるで何も知らない子供をあやしているようで面白くなくて、私は足元へ視線を外した。
「心配、します。心配したらいけないんですか」
「いいや、愛菜ちゃんに心配してもらえるなんてこんなに嬉しいことはないさ。ただ」
「……?」
途中で言葉を区切って続きを口にしようとしない周防さんが気になって、私は恐る恐る顔を上げた。目が合った周防さんはかすかに、そしてどこか寂しそうに笑った。
「お前さんの心配そうな悲しい顔は好きじゃない。俺はお前さんの、笑顔が好きなんだ」

「俺だってそうだけどなー」
不意に、隣りにいた修二君が口を開いた。その声は控えめに、けれどはっきりこの展開がおもしろくないと訴えている。
「……っ!」
修二君の一言で我にかえる。至近距離で手を取り合う格好になっている今の状況を思い出して一瞬で頬が熱くなった。周防さんの手をほどいて素早く一歩後ろに下がる。
「す……周防さん、相変わらずですねっ」
「相変わらず、良い男だろ?愛菜ちゃんも相変わらずの照れ屋だな、変わってなくておにーさん嬉しいよ」
それまでの悲しげな様子は消え、目の前の周防さんはいつも通りの笑顔を浮かべて片目をつぶってみせた。
(もう、ほんとに周防さんてば……)

不意に、通路の奥の暗がりから声が響いた。
「良い男はあんな無茶などしませんよ。ねえ、周防?」
背中からかけられた声に、周防さんは小さく「げっ」と漏らした。辺りに硬質な足音を響かせながら現れたのは、見覚えのない華奢な男の人だった。
周防さんと同じ歳の頃のその人は、さっき声を聞いていなければ女性と間違えそうな繊細な雰囲気の美しい細面に、薄暗い通路に場違いのとびきりの笑顔を浮かべている。
突然の登場人物に、私と修二君は二人目を見合わせた。
「美波(みなみ)、いたんなら最初から声かけろよ。物陰で盗み聞きなんて、趣味悪いな」
周防さんは振り返ってその人に向かって毒づいた。美波と呼ばれたその人は、ちらりと私に目をやってにっこり笑う。
「いたいけなお嬢さんをたぶらかすよりは幾分マシだと思いますけどね」
「たぶらかすって……お前……」
周防さんは彼の言葉に額に手を当てて盛大に溜息をついた。

(なんだかすごく打ち解けてるかんじだけれど……)
「愛菜ちゃん、あの人誰?知ってる人?」
耳元で囁く修二君に黙って首を振る。視線は周防さん達に向けたまま、修二君は独り言のように呟いた。
「隠してるっぽいんだけど、なんとなくあれは只者じゃなさそうな……」

どうしよう?
①おとなしく周防さんにその人が誰なのか聞く。
②ずばり本人に直接誰なのか聞いてみる。
③修二君にどう只者じゃないのか尋ねる。

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③修二君にどう只者じゃないのか尋ねる。

「どう只者じゃないの?」
修二君は私の問いに「うーん」と首をかしげた。
そして、私だけに聞こえるほどの小声で耳打ちしてきた。
「はっきりとした事は言えないけどかなりの力を持っていると思う」
「どれくらいの力? 冬馬先輩よりも力がありそうなの?」
「それは無いよ。あれは異常だしさ」
そうやって私に説明している時も、ずっと修二君は美波さんの力を探っているようだった。

「なるほどな。修二は能力を見抜く力があるのか…」
周防さんは修二君の心でも見透かしたような口ぶりで呟いた。
「そういう周防は、変わった能力みたいだね」
さっきまで美波さんを見ていた修二君が、今度は標的を変えるように周防さんをジッと見つめる。
「俺の能力、バレちゃったのか…。その力はえらく精度がよさそうだな」
「兄貴と一緒じゃないと全然ダメなんだ。あの美波って人みたいに隠されたら見抜けないし。だけど、二人だったらこんなもんじゃないよ」
修二君と周防さんは力の事を話しているのだろうか。
私には及びのつかない会話を交わしている。

それを黙って見ていた美波さんは、微笑みながら私に話しかけてきた。
「……彼は修二君だったかな。あの力、敵にまわすと怖い能力ですね」
「え? 見える力ってそんなに怖いんですか?」
私は美波さんの言葉に疑問を感じて話しかけた。
「それは、恐ろしいですよ。それぞれに備わっている先天的な特殊能力の性質を知られるということは、死に直結していますからね。
タネを明かされた手品は、その瞬間から手品では無くなる…。だから能力者は皆、少しでも見抜かれないように隠そうとするのです」

(あれ?そういえば一郎君と修二君って私の能力を知らないのよね…。もしかして『封印』と関係があるのかな)

私がボンヤリ考えていると、隣で美波さんがクスクスと笑っていた。
「愛菜さんだったかな。君は表情が次々と変わって、見ていて飽きませんね」
「そ、そうですか?」
私は褒められているのか、からかわれているのか分からず、曖昧な返事をした。
「ああ…私としたことが、自己紹介がまだでしたね。私は大宮美波と申します。周防の考え方に共感して、行動を共にしているのです。
これから、よろしくお願いしますね」
美波さんは優雅な物腰で、私に挨拶をした。

①美波さんのことをもっと尋ねる
②ここにいる理由を尋ねる
③この通路について尋ねる。

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②ここにいる理由を尋ねる

「こちらこそよろしくお願いします。ところで……」
私は美波さんに改めて会釈をして、尋ねる。

「周防さんと美波さんはなぜここに?」
「それはこっちのセリフなんだけどな、愛菜ちゃん」
私の言葉に、修二くんから私に顔を向けて周防さんが苦笑する。

「なぜって……」
私は修二くんと顔を見合わせる。

「俺たちは学校の体育館倉庫でここの入口を見つけて、面白そうだから行ってみようって、ね?」
修二くんの言葉に私も頷く。

「あー……なるほど。入口に目くらましをかけてたけど、愛菜ちゃんと修二の力の前には無意味だったってことか」
周防さんは肩をすくめて笑う。

「一応一般人には分からないようにしてたんだけどな。見つけたのが愛菜ちゃん達でよかったといえばよかった、のかな?」
「結果的には良かったといえますが、本来あってはならないことですよ、周防。きちんと反省してくださいね」
周防さんの言葉に美波さんはやんわりと釘をさす。
その言葉に周防さんは苦虫をつぶしたような顔になり、がっくりとうなだれた。

「なんか周防ってあの人に頭上がらないんじゃないか?」
こっそりと修二くんが私にささやいてきたが、私はどう答えていいのか分からずあいまいに笑う。
少しの間うなだれていた周防さんだったが小さく「反省タイム終わり」と呟いて顔を上げると、いつもどおり顔を上げにっこり笑う。

「そうそうなんで俺たちがここにいるか、だったよね」
「復活早っ」
「それが俺の長所だし」
思わず突っ込みを入れた修二くんにあっさりと周防さんは言って、言葉を続ける。

「今はもう使われていなくて、知ってる人も少ないけど、昔組織が使っていた建物につながってるんだ」
「え!?」
驚く私と修二くんに、周防さんはいたずらっぽくウインクする。

「でも主流派は知らない通路なんだよ。昔、処分されることが決まった実験体にされてる人を、こっそり逃がすために反主流派が作ったものでね」
「良くこれだけの通路を、主流派に気付かれずつくれたなぁ」
「能力者の力を微妙に捻じ曲げたり、無効化する研究もされててね、その技術をフル活用して作ったんだ。今でも主流派の能力者のアンテナに引っかからないように、いろいろ仕掛けが作動したままだよ」
「現に今までこの通路を感知した能力者は居なかったんですけれどね」
そう言って、美波さんは私たちを見て首を傾げた。

質問するなら今かな?
えっと…
①「今、この先はどこにつながってるんですか?」
②「逃がした人は、どうなったんですか?」
③「じゃあ、私たち侵入者だと思われたんですね」
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