421
③「チハルは私のぬいぐるみなの」

私が説明をしようとすると、チハルは一郎君と修二君の前に出た。
そして二人を指差しながら、驚いたように目を見開く。
「おんなじ顔がふたつ! ねえ、ねえ見てよ。ヘンだよ愛菜ちゃん」
「チハル、そんなこと言っちゃ駄目よ。あはは、ご、ごめんね……」

「………」
「俺の方がイケてるって!」
一郎君と修二君はそれぞれ別の反応をみせる。
チハルの登場で、その場の張り詰めた緊張感はどこかへいってしまったようだ。

(とりあえずチハルのおかげで場が和んだみたい。……助かったよ)

隆は物珍しそうに、チハルを上から下まで眺めている。
「ていうか、なんで人の姿になってんだ? あの熊のぬいぐるみなんだろ? お前」
「お話できるし、こっちの方がいいでしょ」
チハルはその場でクルクルまわりながら答えた。
「いいとか、悪いとかじゃないって。ぬいぐるみが人になるなんておかしいだろ?」
「でも、隆の大好きな愛菜ちゃんも喜んでくれたよ」
「だーっ。わ、わかったから…お前はもう何もしゃべるな!」
顔を真っ赤にさせながら、隆はチハルの口を手で押さえた。

(誤解を解くためにも、隆が敵じゃない事とチハルの事を説明しなきゃ)
私はおとといの出来事と、チハルが人の姿になった経緯を簡単に話した。

「興味深いな。その精霊は力をつけ始めているのか」
一郎君はチハルを見ながら腕を組んだ。
「湯野宮が敵じゃないのかよ……」
修二君は「だまされたー」と叫んでいる。

キーンコーンカーンコーン。
学校中にHR開始のチャイムが鳴り響く。
冷静になって周囲を見回すと、すでに私達だけになっていた。

どうしよう?
①このまま話を続ける
②走って教室に行く
③今度また話の続きがしたいと提案する

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③今度また話の続きがしたいと提案する

「あ!もう遅刻じゃない…、この話はまた後にしよう?」
「そうだな…、湯野宮にはもう少し聞きたいこともあるし」
「それはこっちにもあるさ。まあ、愛菜急ごうぜ」
「あ、うん」
隆に促され、急いで学校に向かおうとしたその時、腰に回った腕に踏み出しかけた足を止める。

「愛菜ちゃん…ボクはどうすればいいの?」
「チハル…えっと、家でお留守番していてくれる?」
「ええええ!?愛菜ちゃんと一緒がいい!!」
「でもね、チハル、学校には関係ない人が行っちゃいけないのよ」
「ボク、人じゃないもん!」
「それはそうだけど…」
「それに、春樹を守るって愛菜ちゃんと約束した!春樹もいるんでしょ?」
確かにチハルと約束した。けれど、学校には連れて行けないのだ。

「こら、お前愛菜を困らせるんじゃない。てか、ぬいぐるみが人になれるんだから他のもんにもなれるんじゃないのか?」
隆が見かねて助け舟を出してくれる。

「人とかぬいぐるみじゃ学校に行けないけど、他のもんになっておとなしくしてるなら別に連れていったって害はないだろ」
「え?」
思わず隆を見つめる。

「ほら、腕時計とか携帯ストラップとか…、そういうのになれるなら愛菜と一緒だし心配ないだろ?」
「そうだな。この精霊はかなり力が強い。大堂をそばで守るのにふさわしいといえる」
最後に「性格は難だが」と小声で付け加えて、一郎くんも隆の言葉に頷く。

「でも、コイツが一日おとなしくしていられるか?」
そんな一郎くんの言葉に、修二くんが「無理だろ」といいながら肩をすくめた。

「チハルは、他のものになれるの…?」
私がたずねるとチハルはうーんと考えて、頷いた。

「たぶん、大丈夫」
「それじゃ早く決めちゃえよ、授業に遅れるぜ」

それじゃあ…
①腕時計になってもらう
②携帯ストラップになってもらう
③やっぱり家に帰ってもらう。

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②携帯ストラップになってもらう

「じゃあ、携帯ストラップになってもらっていい?」
「うん。いいよ」
言うが早いか、チハルは『ポン』と軽い音を立てて消える。
次の瞬間、私の手の平にはテディベアの携帯ストラップが乗っていた。

「おおおっ!!」
三人は同時に感嘆の声をあげる。
「マジでストラップになってるし……」
「これで先ほどの話が真実だと証明されたということか」
「また熊のぬいぐるみかよ」
修二君、一郎君、隆がそれぞれのリアクションをとっていた。

「大人しく、いい子でいてね」
私は小さなテディベアをギュっと握り締める。
テディベアになったチハルは手の中で苦しそうにジタバタと手足を動かした。
「い、痛かった? ごめんね」
「ははっ。携帯ストラップになっても性格は変わらないんだな」
隆は私の手の平の携帯ストラップをひょいと奪い取ると、チハルをつついた。
チハルは手足を懸命に動かして、隆の指から逃げようとしている。

「……遊んでいる暇は無い。早くしないと授業が開始していまう」
一郎君は腕時計をチラリと眺めて、ため息を吐いた。
「真面目な兄貴が遅刻だなんて、クラスの奴らきっと驚くよな」
「……うるさいぞ、修二」
一郎君はジロリと睨みつける。
「おお、怖い怖い。それじゃ、別れは惜しいけど愛菜ちゃん、バイバイ」
「大堂。また今度、詳しい話をきかせて欲しい」
私達よりも一足先に一郎君と修二君は教室へ向かった。

「愛菜。俺たちも早く行こうぜ」
隆に促され、私は走り出す。
あれ? 私、何か忘れているような気がするけど……。

私は…
①今日から隆がうちに来る事を思い出す。
②とりあえず教室へ急ぐ
③春樹にチハルを預けにいく事を思い出す。

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③春樹にチハルを預けにいく事を思い出す。

「隆!先に行ってて、春樹にチハルを預けてくるから!」
「おい、授業に遅れるぞ?」
「適当に言い訳しといて!」
「言い訳って…」
「じゃ、よろしくね!」
言いおいて、一年生の教室へ向かう。

(いまなら、まだギリギリ授業前だから、先生は教室についてはいはず…)
春樹の教室まで走り、後ろのドアから中をのぞく。
まだ、教室内はざわめいていて先生が居ないことがわかる。
私はそっと後ろの戸を開けると、一番近くの席の子に春樹を呼んでもらう。

「おーい、春樹!おまえご指名」
「え?」
その声に、いっせいに教室内の視線が私に集まる。

(うわ…、恥ずかしいかも…)
「姉さん?どうしたのさ」
春樹は私をみて走りよってくる。
教室内の視線を避けるように、廊下に出て、春樹は後ろ手に戸をしめる。

「あのね、これ…春樹もってて」
「何…?これって…」
強引に渡された携帯ストラップをみて春樹は複雑そうな視線を向けてきた。

「うん、チハルなんだけどね、学校に居る間は春樹がもってて。それじゃ私教室戻るね。授業おくれちゃう」
「ちょっと、姉さん!」
春樹の声が追いかけてきたが、私は気にせずに教室へと小走りで向かう。

(春樹頑固だから、これくらい強引じゃないと絶対受け取ってくれないわ)
そう思いながら、角を曲がったとたん誰かにぶつかった。

「きゃ…」
反動でよろけると、がっしりした手が私を支えた。

「大丈夫か?廊下は走るんじゃない」
「あ…、近藤先生……すみません」
近藤先生は今の時間授業がないのか、手ぶらで何ももっていなかった。

「ん?……君は確か……」

①「春樹の姉です」
②「すみませんぶつかるの2度目ですね」
③「授業に遅れてしまうので、失礼します」

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①「春樹の姉です」

「ああ、大堂君の。ところで授業がもう始まるのだが……」
近藤先生はそこまで言って、ふと私の顔を凝視した。

「あ、あの…?」
「顔色が悪いな。あぁ、保健室へいく途中だったのか」
近藤先生は、ふと自分が歩いてきた方向を見て言った。

(わたし、そんなに顔色良くない?)
確かに昨日からいろいろあって、疲れはあまり取れていないけれど、昨日の夜よりはだいぶマシになっていた。
朝、一郎くんたちや隆、チハルも特にそういうことは言っていなかったけれど…。

 キーンコーン

「あ…」
そこで、始業のベルが鳴った。

「だが、今日は保健室は開いていない。先生が研修で居ないからな」
「そうなんですか…」
近藤先生は少し考えるように眼鏡を人差し指で持ち上げる。

「少し休むにしても職員室、だと気疲れするか…ああ、茶道室、あそこなら畳だし茶道部が放課後につかうくらいだから、今なら横になっていても大丈夫だ」
近藤先生はすっかり私が具合が悪くて保健室へ行こうとしていたと思い込んでいる。

「茶道室の鍵を持ってくるから、先に行っていなさい」
近藤先生が職員室へ向かって歩いていこうとする。

どうしよう…
①「はい、わかりました」
②「いえ、教室へ戻ります」
③「具合が悪いわけではないので…」

426
①「はい、わかりました」

近藤先生の言うことを素直に聞いて、私は茶道室に向かって歩き出す。
(思っていた以上に疲れがたまっていたのかな)
茶道室の前でそんな事をぼんやり考えていると、近藤先生がやって来た。
その手には誰かの持ち物なのか、花柄のブランケットを抱えている。

「待たせたな」
近藤先生は鍵穴に鍵を差込み、引き戸を開けてくれた。
「……失礼します」
慣れない場所で、少し緊張しつつ靴を脱ぐ。中に入ると、ほんのりといぐさの香りがした。

「大丈夫か? もし、辛いようなら帰宅を進めるが」
近藤先生は戸口の前に立ったまま、話しかけてきた。
ひとつ高い段差にいるはずなのに、まだ先生を見上げなければならない。
「少し休めば大丈夫だと思います」
「そうか。では私は行くが、気分が優れないときは職員室に来るように」
「はい」
「あと、君のクラスの担任教師には私の方から伝えておくが…何年何組だ?」
私はクラスと自分の担任の名を伝えた。
「了解した。あとこれは……少し小さいかもしれないが寝るときに使いなさい」
近藤先生はそう言って、私にブランケットを手渡してくれた。
そのブランケットを受け取り、「ありがとうございます」と言って会釈をした。

「気分が良くなったら、鍵を閉めて毛布と共に職員室に返しておいてくれればいい。
後で大堂君にも顔を出すように言っておく」
「すみません、お願いします」
それだけ言うと、近藤先生は去っていった。

(親切でいい先生かもしれないな)
私はフーっと息を吐きながら畳みに座り込み、ブランケットを膝にかけた。
(ひざ掛けとして使っていたのかな。誰の物だろう? まさか近藤先生の物じゃないよね)
そう思っているとタグに名前が書いてあるのを見つけた。そこには『水野』と書いてある。

私は
①使うのをためらう
②考える
③とりあえず横になる

427
③とりあえず横になる

(いくら水野先生の持ち物だからってブランケットが何かするってことは、ないよね)
一瞬不安が過ぎったけれど、思い直して膝にかけたままその場に横になる。
すこしひんやりとする畳の感触を背中に感じながら、目を閉じると全身がけだるさに包まれた。やはり自分が思っているほど回復していなかったようだ。

(近藤先生、恐るべし、かも)
そんなことを考えて、一人笑った。
瞼は閉じたまま、それでも眠りが訪れる訳でもなく静かに時は過ぎてゆく。何かを考えるのも億劫で、まるで壊れたぜんまい仕掛けの人形のように横たわっていた。

時間の感覚もないまま、どの位そうしていたのだろうか。
一人きりの茶道室に不意に入口の戸をノックする音が響いた。

(誰だろう……?)
返事をしようとしたのに空気が漏れるばかりで何故か声が出ない。起き上がろうにも体は重く固まってしまったように動かない。
やっとのことで重い瞼を開けると、音も無く滑るように入口の戸が開いた。

そこに立っていたのは……
①近藤先生
②春樹
③御門くん

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①近藤先生

私が目を開けているのを見て近藤先生は少し片眉をあげる。
「返事がないから眠っているのかと思った、具合はどうだ?」
言いながら近寄ってくる近藤先生を目線で追う。

「すみません、ちょと動けそうにないです…」
声を出すのも一苦労で、ちゃんと先生に聞こえているかすらわからない。
近藤先生は、さらに顔をしかめ私の額に手を置く。

「熱はないようだが…」
そんな近藤先生をぼんやりと見ていると、ふと先生の背後の天井にくろい靄が見えた。
(あれは…ファントム!?)
慌てて起き上がろうとするが、体は言うことをきかず腕が少し動いただけだった。
けれど、ファントムは何かするでもなくそのまま消えていく。

 キーンコーン

そのとき、授業終了のチャイムがなった。
「ああ、授業が終わったが…、君は帰ったほうが良いんじゃないか?」
確かにこの調子では勉強どころではない。
私が頷くと、近藤先生も頷いて立ち上がる。

「私は車だから送っていこう。お家の方にも連絡してくるから」
「あ、あの!家には誰も…」
もう両親とも仕事に出てしまっている。
先生が私の言葉に、難しい顔をして何か口にしようとしたとき、急に廊下が騒がしくなる。
バタバタと誰かが走ってくる足音が複数。
あいたままの戸から姿を見せたのは、隆と修二君だった。

「愛菜!」
「愛菜ちゃん!」
二人は私の顔を見てほっとしたようにため息をつく。

「心配させるなよ…、すぐ戻ってくるって言いながら全然戻ってこないから…っと、近藤先生」
隆が文句をいいながら私に近づこうとして、隣に近藤先生が居ることに気づく。

(あ、さっきの影は隆が私を心配して…探してくれたんだ)
あれ、じゃあ修二君はどうやって私の場所がわかったんだろう?
隆は同じクラスだけど、修二くんは別のクラスだから私が授業に出なかったことは知らないはずなのに…。

「愛菜ちゃん大丈夫?今日の朝微妙に体調が悪そうだったから心配してたんだよ?……愛菜ちゃんの力が教室じゃないところにあるから心配しちゃったよ」
私の隣までやってきた修二君が、心配そうな顔をしたまま言う。最後のほうは近藤先生に聞こえないように小声だ。

「二人とも静かにしなさい、大堂さん、家に誰も居ないなら学校で休んでいるか?誰も居ない家よりは、まだ人が居る学校のほうが良いかもしれない」
近藤先生の言葉に少し考える。

どうしよう…
①家に戻る
②このままここで休む
③がんばって授業に戻る

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③がんばって授業に戻る

(この間も学校を休んでいるし、授業を受けないと遅れちゃうよ)

勉強どころではないほど疲弊しているけれど、無理は承知の上だった。
先週は怪我や力の騒動でほとんど授業に出ていないのに、文化祭が終わったらすぐに中間テストが待っている。
優秀な春樹や双子の二人とは違って私の場合、それなりに頑張らないとすぐ成績が下がってしまう。

「授業に戻ります。そうしないと……ついていけなくなってしまいますから」
両手をついて立ち上がろうと力を入れるけれど、腕に力が入らない。
「だ、大丈夫? 愛菜ちゃん」
隣にいる修二君がすかさず私を支えてくれる。

「まだ顔色が悪い。無理をして授業に出たとしても、その状態では身につかないだろう」
「そうだぜ、愛菜。お前の分までしっかりノートとってきてやるから、大人しく寝てろ」
(隆の字って特徴ありすぎて、ノートを見せてもらっても多分読めないよ)
そんな私の心の声など届くはずもなく、近藤先生と隆は当然のように反対してきた。

けれど、修二君だけは反対せず、ゆっくり私を立ち上がらせてくれる。
「愛菜ちゃんが授業に戻るって言っているし、行かせてあげなよ」
隆に向かってそう言うと、今度は先生に向き直る。
「先生はご存知無いかもしれませんが、大堂さんは先週怪我をしてしまって休んでいます。行かせてあげてください」

(え? てっきり修二君にも反対されると思ってたのに)
私は修二君の顔をじっと見つめる。
すると、私に向かってウインクしながら、小声で「俺に任せて」と話しかけてきた。
(修二君?)

「お願いします。次の授業に行かせてください。隆もいいよね?」
私は改めて、先生と隆ににお願いする。
二人とも仕方がなさそうに、なんとか納得してくれた。

キーンコーン

「ヤバイ、授業が始まった! 愛菜。早く戻ろうぜ」
チャイムと同時に隆に促される。
「ごめん、隆。先に行ってて。私、ここの鍵を返してくるよ。修二君もありがとう。近藤先生、ご心配をおかけしました」
全員にペコリと頭を下げる。
「無理だと感じたらすぐ誰かに言いなさい」
「愛菜。早く戻ってこいよ」
そう言いながら、二人は廊下へ出ていった。

「修二君。もう授業が始まったよ?」
私は茶道室に残ったままの修二君に話しかける。
けれど、修二君は何も言わずに後ろ手で扉を閉めてしまった。
「え……。修二君?」
「……愛菜ちゃん。さっき、俺に任せてって言ったよね?」
そう言いながら、修二君はじりじりと私に向かって近づいてくる。
私は……

①何か考えがあるのか尋ねる
②二人きりが怖くなって逃げる
③黙っている

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①何か考えがあるのか尋ねる

「何か、いい考えでもあるの…?」
じりじりと近づいてくる修二君を見上げながらたずねる。
修二君はにっこり笑うと頷いた。

「もちろん。愛菜ちゃんの今の状態は慣れない力の使いすぎによるもの。わかってるよね?」
修二君の言葉に、私は頷く。

「で、使い方がうまくないから、余計な力をつかっちゃって今とっても不安定になってるんだ。ここまでオッケ?」
私は再度頷く。

「不安定になってるから、心と体がうまくつながっていなくて、体がだるく感じたりうまく動かせなくなってるんだよね」
「なるほど…」
修二君の説明はわかりやすい。

「だから、今の状況を打開するには、不安定になっている力を正常に戻してやればいい」
「そっか…、でどうするの?」
「方法は二種類。自分で意識的に不安定になっている力を元に戻す方法。でも愛菜ちゃんは力の使い方がうまくできてないみたいだから、今回はもう一つの方法になる」
「それは?」
「外部から働きかけて正常に戻す方法」
「要するに、修二君が外から私に働きかける、ってこと?」
「そういうこと!いいかい、俺を信じて拒まないで流れを感じるんだ」
「わかった」
「それじゃあ、目を閉じて、深呼吸をして」
私は言われたとおり目を閉じて深呼吸をする。

「心を落ち着かせて…ゆっくり息を吸って、吐いて、吸って…」
修二君の言葉にあわせるようにゆっくりと呼吸をする。
声にあわせて息を吸ったとたん、やわらかいものが口に触れた。
そこから、なにかが流れ込んでくる。
驚いて目を開けると驚くほど至近距離に修二君の顔。

(キス…してる!?)
そう思ったときには、修二君が離れていった。

「どう?今のでだいぶ良くなったはずだけど」
突然のことに呆然としている私に、修二君が尋ねてくる。
言われれば、確かにかなりすっきりしている。

「もしかして初めて?」
修二君がちょっと笑って言う。確かに初めてだ。けれど何も言えずに黙っていると、修二君が立ち上がる。

「そっか……俺が初めてなんだ、ありがとう愛菜ちゃん」
(何がありがとうなのかさっぱりわからないよ、それに何でそんな顔するの…?)
混乱気味の私に、修二君は胸が苦しくなるくらい綺麗に微笑んで、私に背を向けると部屋を出て行く。

(あ…これって…夢で……)
フラッシュバックする夢の記憶に慌てて追いかけようと足を踏み出しかけ、小さな金属音に足を止める。

(ここの鍵…)
落としてしまった鍵を拾い上げる。

どうしよう…
①修二君を追いかける
②職員室に鍵を返しに行く
③鍵はあとにして教室に戻る

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最終更新:2007年06月18日 08:59