371
③まじないの話を振る

(そうだ、まじないの事があったんだ。するなら早い方が良いよね)
お義母さんの出してくれたスリッパを履きながら尋ねる。

「お義母さん。お義母さんは占いって信じてる?」
「占い?そうね、良い事は信じるけれど悪い事は信じない事にしているわ」
「そっか。じゃあおまじないとかは?」
私の問いかけに、お義母さんは台所でお茶を入れていたその手を止めて何かを思い出しているような仕草を見せた。
「子供の頃はクラスの女の子達とやったと思うわよ。バラの花びらに好きな人の名前を書いてハンカチに包んで肌身離さずに持っていると両思いになれる、とかね」
「へえ、そんなおまじないあったんだ」
「ええ、懐かしいわ。愛ちゃんも恋のおまじないでもするの?」

無邪気にそう問い掛けるお義母さんに違う、と言いかけてふと思いついた。
「…うん、まあ。それでお義母さんにもできれば協力してもらいたいんだけど」
「あら!嬉しいわ、お義母さん愛ちゃんの恋のキューピッドになれるのね?」

テーブルの向こうのお義母さんはまたしても何かを誤解しているみたいだけれど。
(ファントムが憑りつかないようにするまじない、なんて説明できないし…)
諦めてお義母さんの言うことに曖昧に頷いて、まじないをさせてもらうことにした。

「ご飯の支度してるところごめんね、ちょっとだけこっちにきて座ってくれる?」
私がそう言うと、お義母さんはエプロンで手を拭きながらそそくさとリビングに現れた。
不思議なくらい乗り気なお義母さんに苦笑いをこぼしながらソファに座ってもらう。
「目を閉じてゆっくり深呼吸して…そう」
素直に指示に従ってくれるお義母さんの正面に、御門くんから教わったとおり魔方陣のような図形の印を人差し指と中指で一つずつゆっくりと切ってゆく。

(最後に、お義母さんに触れれば良いんだよね)
丁度魔方陣の真ん中辺り、お義母さんの額にそっと触れると触れた指に痺れるような鋭い痛みが走った。
「…っ!」
とっさに手を引いた所で辺りの空気が重量を増したかのように、突如私の体を倦怠感が襲う。
「…愛ちゃん?どうかしたの?」
見ればお義母さんが不思議そうに私を見上げている。

どうしよう?
①なんでもないと取り繕う。
②お義母さんの気分はどうか尋ねる。
③やっぱりまだ少し気分が悪くて、と部屋に戻る。

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①なんでもないと取り繕う。

「あ、なんでもないよ」
お義母さんに笑って見せる。

「終わったの?」
「うん。ありがとう」
「愛ちゃんの恋が実るといいわね」
それから、うまくいったらちゃんと紹介してね、と台所へ戻っていく。
私はそれを見送って、ソファに倒れこむように座り込む。

(つ、疲れる…)
自分の力で人を守るというのは、こんなにも大変なことなのか。
ただ単に、私が力の使い方がわかっていないからこんなに疲れるのか。
この倦怠感が一時的なものなのか、効果がある限りずっと続くのかすらわからない。

(あとで、御門くんに聞いてみよう…)
ソファにずるずると横になり、目を閉じる。



気づいたら庭に立っていた。

(あれ?)
そして、すぐに疲れて眠ってしまったのだと気づく。

「愛菜ちゃん!」
呼ばれて振り向くと、男の子が立っていた。
10歳位の黒目がちな瞳が印象的なかわいい男の子。
短パンにシャツ、首に水色のリボン。
男の子は私に駆け寄ってきて、じゃれ付くように腕を絡めてきた。
この動作に、ふと小さな影がだぶる。

「……チハル?」
まさか、と思いつつ口に乗せた名前に、男の子がうれしそうににっこり笑った。
「愛菜ちゃんにお話しがあって、がんばったんだ!」
ほめてほめて、とぎゅっと抱きついてくる。

(チハルって、人の姿しててもやっぱりチハルだわ)
思わず笑ってしまう。
チハルはしばらく私に抱きついたりじゃれてきたり、自分の体を確かめるように眺めたりしていた。
どうやら、ここへ来た目的を忘れてしまっているみたいだ。

どうする?
①私と周防さんを助けてくれたお礼を言う
②話したいことがあったんじゃないかと促す
③どうして人の姿になったのか聞く

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①私と周防さんを助けてくれたお礼を言う

「チハル、私と周防さんを助けてくれてありがとう。
あの時、チハルが来てくれなかったらどうなっていたかわからなかったよ」
チハルは満面の笑みを浮かべて、ほめてほめてとまたじゃれ付いてきた。

「えらい、えらい。チハルはいい子」
そう言って、私はチハルの頭を撫でてあげる。
「愛菜ちゃんにほめられた!ボクってすごーい」
チハルは楽しそうに、くるくるとその場で回りだした。

(ぬいぐるみの時と行動がまったく一緒だ)

「そうだ、チハル。私にお話があったのよね?」
私は気を取り直して、チハルに尋ねる。

「あっ……! ボク何しにきたんだっけ?」
「憶えてないの?」
「うん。愛菜ちゃんとお話できたのがうれしくって、忘れちゃった」
「大切なお話があったんじゃないの?」
「忘れちゃうくらいだから、あんまり大切じゃなかったのかもしれない。
でもいいや。こうやって愛菜ちゃんとお話ができるんだもん。ねーねーもっとお話しよう」

(話をしている内に思い出すかもしれないよね)

①「やっぱり、ハチルって男の子だったんだね」
②「チハルって神様なのよね?」
③「チハルは歳をとらないの?」

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②「チハルって神様なのよね?」

私の言葉に、チハルはきょとんとした顔で見上げてきた。
それから、難しい声で考え込む。

「人はそう呼んだりする、けど…ボクはまだそこまでじゃないよ」
「え?そうなの?」
「うん、ボクは愛菜ちゃんに大事にされてるから、昇格するのも早いと思うけどね」
「神様って、昇格してなるものなの…?」
「ボクたちみたいな、人に作られたものは、大事にされてれば昇格するよ」
にっこりわらって、チハルが言う。

「自然のもの…木なんかは年月を重ねれば神様に昇格するんだ」
「あぁ…そういえば御神木とかってそんな感じよね」
神社にあるような巨大な木を思い出して頷く。

「じゃあ、チハルは今は神様じゃない、とすると何?」
「えーっと…、人間がいう精霊?が近いのかなぁ」
「精霊?」
精霊と聞いて、昔隆がやっていたゲームを思い出す。
隆は面白いといってやっていたけど、私には良くわからない内容だった。
でも、確かそのゲームの中では精霊と契約をして力を借りるみたいな内容だった気がする。
そういうとチハルがぱっと笑った。

「思い出した!」
そういって、首のリボンを指差す。

「愛菜ちゃんに新しいリボンもらったから、こっちのリボンをあげる」
「え?」
「ボクがずっと身につけてたから、御守!」
「目が覚めたら、新しいのと交換してね」
にこにことチハルは言が言う。

私は…
①頷いてお礼を言う
②どういう効果があるのか聞く
③どうやって使うのか聞く

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①頷いてお礼を言う

「うん、どうもありがとうね。大事にするから」
屈みこんでチハルの視線にあわせてそう言うと、チハルは満足げにうなずいた。
「愛菜ちゃんがいままでだいじにしてくれたぶんもおかえしするよ。きっとだよ」
「そっか。じゃあチハルのリボンと取替えっこだね」
「とりかえっこだね」

オウム返しにそう言うチハルが可愛くて、手をのばしてつややかで柔らかな髪に触れると
まるでぬいぐるみを撫でているような手触りだった。
チハルはくすぐったそうに目を細める。
(精霊っていってもこうしてるとふつうの男の子と変わらないんだなあ)
私も目の前のチハルにつられたように自然と笑みがこぼれた。

「ん、もうじかんみたい。愛菜ちゃんのことよんでるよ」
不意にチハルが上目使いでそう告げた。
「私を?」
「うん。ほんとは愛菜ちゃんともっとおはなししたかったけど…じゃあまたね。
またおはなししようね。りぼんだいじにしてね」
チハルは小さな手で私の手を引き寄せると、小指と小指を絡ませて指切りをした。

次第に明るくなっていくあたりの様子と共に、名残惜しそうなチハルの輪郭は段々うっすらとぼやけてゆく。
大丈夫、またすぐに会えるから
チハルにそう言おうとして、視界が白く染まる。

目を覚ますとそこにいたのは……
①お義母さん
②お父さん
③春樹

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②お父さん

「愛菜。大丈夫か?」
お父さんが心配そうに私を覗き込んでくる。

「目が覚めたか……。上で少し休んだらどうだ?」
「平気だよ。ありがとう」
そう言って、私はソファーに座りなおした。

(そうだ。早くおまじないをしなくちゃ……)

「あ、あのね。学校で流行ってるおまじないがあるんだけど……お父さんにもしていい?」
「まじない?」
唐突な私のお願いに、お父さんは眉間に皺をよせた。

「あ……。えー、えっと、このおまじないは両親にしないと効果が無いんだって。さっき、お義母さんにもしたんだよ」
私は取り繕うように説明する。
「そうなのか?」
食事の支度が終わって、リビングに戻ってきたお義母さんにお父さんは尋ねた。

「ええ、そうよ。女の子は占いやおまじないに頼りたくなるものなのよ。協力してあげて」
そう言って、お義母さんは楽しそうに、にこにこと笑った。
「よく判らんが……。一体、どうすればいいんだ?」
「……おまじないしてもいいの?」
「ああ……好きにすればいい」

一番の難関だと思っていたお父さんがすんなりと承諾してくれるとは意外だった。
お父さんにソファに座ってもらう。
「目を閉じてゆっくり深呼吸して……」
さっきの要領で、魔方陣を人差し指と中指で一つずつゆっくりと切っていく。

(最後に、お父さんに触れれば……痛っ)
指に痛みが走り、さっきよりも酷い倦怠感が私を襲った。

「はい! おしまい。ありがとう、お父さん」
私は体の不調を悟られまいと、明るく振舞う。
「………そうか」
お父さんはよく判らないものに付き合わされたという顔をしていた。

私は、
①休むために自室に行く
②ここで春樹を待つ
③両親に話しかける

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①休むために自室に行く

「私、部屋に戻って休むね」
そういって私は立ち上がった。

本当は春樹が帰ってくるまで待っていようとも思った。
……だけど今の状態で、きちんとした話ができるかと言われれば分からない。

なら今のうちに少しでも休んでおいて、話をするための障害を少しでも取り除いておいたほうがいいと思った。

「あら……愛ちゃん、大丈夫なの?」
お義母さんが心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫だよ、ちょっと疲れただけだから」
私はできるだけ笑顔を作ってそれに答えた。

(そう、少し休めば大丈夫だよね)
何とか不調を悟られないように、ゆっくりと歩き出した。

「お義母さん。春樹が帰ってきたら、起こしてくれる?」
そしてリビングを出て行く前に、お義母さんに一声かけておく。

「ええ、わかったわ」
「ありがと……おやすみなさい」
お母さんの声とお父さんの視線に見送られて、私はリビングを後にした。

「………」
自分の部屋に帰り着き、声もなくベッドに倒れこむ。
うつぶせに倒れこんでしまったので少し息苦しかったけれど、今は体を動かすことがなんとなく面倒だった。

『あなたに少しばかり負担を強いることになる。正直、僕はあまり気が進みません』
御門君の言葉を思い出す。
(確かにこれは……負担が、くる……)
それでも意識だけは何故か妙にさえていて、なかなか眠気がやってこない。

(……今日も結局、力と関わっちゃったな……)
眠れない間、ふとそんなことを思った。
そしてまず私が考えたのは……

①御門君や一郎君の言った気になる言葉について
②周防さんの行方について
③春樹の行方について

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②周防さんの行方について

(……周防さん……)
私は夢を最後に会えないでいるその人のことを思った。

(無事なのはわかってる。けど)
私はおもむろに今日所持していたバッグに手を伸ばした。
そして、中から周防さんに渡しそびれたプレゼントを取り出す。

(周防さん……今、どこでどうしてるんですか)
その袋を抱きしめながら、私の意識は深く沈んでいった。
せめて、夢でまたあえたら。そんな風に思って。



そこは、見慣れた学校の校庭。
見慣れない光景であるのは、今が夜だからか。
―――それとも景色の半分近くを、オレンジのような何かが照らしているからか。

そして、私の腕の中で―――私とそう年の変わらない男の子が傷だらけで横たわっている。

「泣か、ないで」
途切れ途切れに言葉をつむぎだす男の子。
私を心配させないためなのか、一生懸命に笑おうとしている。

その声に、その顔には覚えがあった。
でもそれがいつのどこの誰のものなのか、答えが浮上してこない。

「これは、きっと、罰、だから。だから、いい、んだ」
男の子は私に手を伸ばし、そっと髪に触れてくる。
そして、その手をぎこちなくゆっくり動かしながらようやく笑みと呼べるものをその顔に浮かべた。
「信じる、って言葉、嬉し、かった。ありがと。ごめ、ん」
それから、その男の子の口が僅かに動く。

『        』

ぱたり。
手が力なく地に落ちて―――それが、最後だった。
それきり。

「い……いやああああああああ!!!」
私は叫びながら目を覚ます。
「はぁっ……はぁっ……」
息を整えてながら体を起こし、辺りを見回す。

そこはいつもの私の部屋だった。
その事実に強く安堵する。

(何なんだろ、今の夢……)
だんだんと落ち着いてきたのか、そんなことを考える余裕が出てくる。

今の夢、少し気になる。
どこが一番気になるかと言うと―――

①夢の内容を覚えていると言う事実
②夢の中に出てきた男の子に既視感があったこと
③夢の場所が夜の校庭であったこと

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②夢の中に出てきた男の子に既視感があったこと

声にも顔にも私は覚えがあると感じていた。
そして、その場所は私達の学校だった。
(一体、誰だったの……?)

『罰、だから。だから、いい、んだ』
『信じる、って言葉、嬉し、かった』

その一つ一つが私の頭の中から離れない。
言葉としては、あまりに悲しい響きだ。
そして、最後の言葉も知ることは出来なかった。

私の腕の中で徐々に力を失っていく、男の子の体の重みまで感じられた。
今でも、その男の子を抱きしめている感覚が残っている。
胸が裂けそうなほど、寂しくて、苦しかった。

(だめ、考えてはだめよ)

私の能力が予知夢だと決まったわけではない。
それに、武くんは『予知夢だと思い込んでしまったから』と言っていた。
(私が強く思う事で、本当の事になってしまう可能性だってあるんだ)
悪夢を消し去るように、私は頭を振る。

(絶対にこんな未来にはさせない)

そして私は……
①これからの事を考える
②リビングに下りていく
③窓の外を見る

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①これからの事を考える

(まず、春樹が戻ってきたらおまじないをして…)
夢を追い払うように、私はこれからのことを考える。

(あ、そういえば…)
リビングで眠っていたときの夢を思い出して、チハルをかばんから出す。
チハルはすっかり忘れられていたからか、ぱしぱしと私の手を叩いた。

「ごめんね、ちょっと疲れちゃって」
謝ると、チハルは首をかしげた。

「大丈夫だよ」
チハルに笑って見せて、買ってきたリボンを取り出す。

「新しいリボンに変えるね」
古いリボンを解き、新しいリボンをつけてあげる。
チハルは新しいリボンをつけてあげると、くるくると回りだした。
私は古いリボンをどうするか一瞬悩んで、とりあえず枕元に置いた。
時計を確認すると、まだそんなに時間は経っていない。

(また明日から学校か…)
あんまり休んだ気がしない上に、疲れは休む前より溜まっている。

「あ!忘れてた!」
文化祭でやるお化け屋敷に使うモノを各自分担でもって行くことになっていたのを思い出す。

私が持っていくのは
①釣竿
②黒い布
③ハンドライト

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