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①「それでキスしちゃったんだ、サイテー」
ボソッと呟く。
事情があったとはいえ、今までの真剣な隆がなんだか一気に台無しになってしまった気がする。
……ついでに言うと私の感謝の気持ちとか無駄に悩んだ時間とかも。
(流されやすいにもほどがあるよ、隆……)
私は白けた気持ちのまま、隆を見る。
「まあ……確かにキスしなくてはならないと言うならともかく、
別にそうじゃないのにキスしてしまうって言うのは……ちょっと」
春樹も呆れたように隆を見ている。
「いや、その、それは」
言い訳するつもりだったのか、隆は口を開いたけど……うまく言葉にはならなかったみたい。
「…………ごめん…………」
やがて、私に向かって大きく頭を下げた。
1、「私に謝られても困るよ」
2、「謝ってすむ問題じゃないよ」
3、「隆は誰でもいいわけ?」
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1、「私に謝られても困るよ」
私の言葉に、隆が情けない顔をする。
私はため息をついてふと手に持ったままの回覧板に目をおとした。
(あれ?)
いつもの町内会誌の隙間から何かがのぞいている。
(封筒?)
それを引き抜く。
『大堂 愛菜 さま』
表には私の名前が印刷されている。
「…な、に?」
「どうしたの姉さん?」
「どうした?」
春樹と隆が私の持つ封筒に移る。
なんで回覧板に手紙なんて挟まっているのか?
ひっくり返してみると、差出人の名前。
それは…
①水野先生
②周防さん
③隆
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③隆
隆の名前だった。
宛名と同じく…手書きではない、印刷されたもの。
何の手紙なんだろう?
普通に考えるなら、最近の事……それについての謝罪の手紙?
でも、それにしてはなんというか……固い感じがするし、
なにより回覧板に挿む意味が分からない。
回覧板に入れてしまえば、近所の目に付くのは当然のこと。
どこでどうなってしまうかもわからない。それが分からない隆じゃないはず。
近所の人たちがそうするとは思えないけど……。
家にはポストだってある。
お互いのメールアドレスだって知っている。
……私に伝えるなら、他にもいろいろな方法や手段はあるはず。
(まあ、他の方法で伝わったかはちょっと分からないけどね)
何せ、大きく誤解していたわけだし。
……一部誤解でないところもあったけど。
それとも、特に重要なことではないのだろうか?
もしくは個人的なことではない……それこそご近所に関わるようなこととか?
あるいは、意識が無いときの隆が関係している?
「姉さん?誰からの手紙だったの?」
春樹の問い。
隆もじっと私の答えを待っているようだ。
私は……
①隆に覚えがあるか聞いてみる
②中を確認してみる
③手紙がいつからあったのか近所に確認する
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①隆に覚えがあるか聞いてみる
「この封筒、差出人が隆になっているよ?」
隆は私の持っている封筒を掴む。
「俺、こんなの書いた記憶が無いんだけどな……」
私は息を呑んで封筒から手紙を取り出す。
『はじめまして。僕は隆の中に潜む武といいます。
さきほど隆と愛菜さんが影についての話をしていたので、僕の存在も信じてもらえるかもしれないと思い筆を執りました』
冒頭から、妙に意味深だ。
私は手紙を声に出して読み進める。
『僕は隆の細胞を培養して作られたクローンでした。
組織は能力者の力を集めています。
ですから、施設では今でも僕のような多くの能力者の複製を作り続けているのです。
三年前、交通事故で隆が意識不明の重態になった際、損傷部分はコピーである僕の体が使われました。
それ以降、僕の意識は隆の中で目覚め、分割されていた能力は一つになりました。
影を操る力の覚醒は僕を取り込んだことによる副作用によるものです。
隆の意識がまれに剥離した場合、僕が出てきます。今のところ、僕の存在に組織は気付いていないようです。
ですが、僕は組織の人間に従うようにマインドコントロールを施されています。
僕の存在に組織が気付けば、いつどこで、あなたを傷付けてしまうかわからないのです』
『愛菜さん、あなたはすでに組織に狙われています。組織はその特殊な力の覚醒を待っています。
組織の狙いはあなたの』
あれ……中途半端のところで終わってる……。
隆の中に武君って別人格がいるっていうこと?私の特殊な力の覚醒?
私は
①隆に意見を聞く
②春樹に意見を聞く
③自分で考える
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①隆に意見を聞く
「ねえ、私と隆が影の話をしてからそんなに時間経ってないわよね?」
「そうだな、電話を切ってここにくるまで20分もたってなかった」
「その間に、この、武くん?は手紙を書いたの…?」
「そうなるんだろうな……でも………俺はその間の記憶ははっきりある」
いつの間に…?という疑問がわく。
「もしかして、隆さんとは別に、この武という人格もミストを作れるんじゃないですか?」
春樹が言う。
「その武が予め操れるようにしておいた人間を使ったとは考えられないですか?」
「じゃ、もしかして隣の人がミストに…?」
「俺ちょっといって調べてくる」
隆が立ち上がって、リビングを出て行く。
「…隆さんも後天的ではなく先天的に能力があって、それを組織に利用されていたということか…」
春樹がポツリとつぶやく。
「え?」
「この手紙が嘘じゃないなら、組織はなぜか覚醒前の隆さんの力を知っていたことになる」
私はその言葉を頭の中で反芻する。
「隆さんの力がこの事故で移植したことによる副作用なら、本来はもっと別の力を見込まれてクローンが作られたはず…」
1.「予知の力を持ってる人が組織にいる?」
2.「一郎君や修二君みたいに力のある人を見つけることが出来る人がいる?」
3.「私の力はまだ覚醒していない…?」
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2.「一郎君や修二君みたいに力のある人を見つけることが出来る人がいる?」
「そうなるだろうね。赤ん坊に力が備わっているのがわかるんだから……」
春樹は手紙を見つめながら呟いた。
「水野先生は一郎君や修二君の力を利用したいのよね? それって、組織の中に見る能力がある人がいないからじゃないの?」
「もしかしたら、能力者かどうかを判別できる方法を組織は手に入れているのかもしれない」
「どういうこと?」
「組織は高度のクローン技術があるみたいだし、能力者を判別できる技術があってもおかしくは無いよ」
そう言って、春樹は手を組んだ。
「じゃあ、水野先生が一郎君と修二君に近づく理由は何? それにあの双子は「見える力」の能力なんじゃないの?」
「一郎先輩と修二先輩が持っている「見える力」が高度なのかもしれない。たとえば、組織にはどういう能力を持っているかまでは判別できないとか……」
「そっか。修二君は隆がファントムを操る能力があるって知っていたものね」
「どちらにしろ、一郎先輩たちに聞いてみないことにはわからないよ」
私は
1.隆が帰ってくるのを待つ
2.一郎君か修二君に電話する
3.もう少し春樹と話を続ける
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3.もう少し春樹と話を続ける
あ、でも…
「でも、まって…一郎君と修二君にも私の力は分からないみたいだったよ?」
確かにあの二人は見える力を持っているといっていた。
でも、いつも私の中の力を探ろうとしているようだった。
なんとなく春樹の言葉に頷いてしまったが、隆の場合は…
「隆がファントムを操れるって分かってたのは、隆の周りにいつも影があるからじゃないかな?」
私は春樹に、ファントムに取り付かれたら見ただけでは分からないことを伝える。
取り付かれるわけでもなく、影をまとっているのはそれを作り出せる人だけ。
「なるほど…、それじゃあ別の目的で近づいてるってことになるのか…」
春樹はまた何かを考え出した。そして小さくつぶやく。
「……カギ」
「え?なに?」
「修二先輩は、自分たちが水野先生が探しているものへのカギだって言った」
私は修二君の言葉を思い出す
『ん~、情報そのものじゃないんだけどね。たぶん情報へとつながる…カギ、かな?』
たしかそう言っていた。
「もしかしたら、本当にカギなのかもしれない。あの時は僕も姉さんも力のことは良くわかってなかった。だから先輩は真実を言わなかった。あのときの言葉「情報」を「力」に置き換えれば…」
「力へとつながるカギ?」
「そうだよ、組織が姉さんの力を狙ってるのは間違いない。でも、姉さん自身に力を持っている自覚がない」
私は春樹の言葉に頷く。
「可能性は二つ。まだ力に覚醒していない。もうひとつは、力を封印されているか」
春樹の言葉に聞きたいことが増えていく。
①「力を封印?」
②「二人は私を監視してるってこと?」
③「私の力が分からないのに、カギになってるの?」
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②「二人は私を監視してるってこと?」
いつ覚醒してもいいように……そして、覚醒した能力が何であるかを確かめるために?
そういえば、昨日ファントムが現れたときも、
『うーん、こっそり見張ってて正解?ってね♪』
修二君はそう言っていた。
それが心配からなのか、監視からなのか……私には判別がつかない。
「その可能性がないわけじゃないよ。
あの二人は、まだ姉さんに全部明かしてるわけじゃないし……
そこに何かがないとはいえないからね」
春樹が重々しく呟く。
そうだ。
あの二人にはそれぞれの目的があるはず。
そして、それを私たちはまだ知らない。
(でも、今の段階じゃ、どうにもならない……どうすることもできない)
今の私が問いかけたところで、二人が答えてくれる可能性は低い。
せめて、もう少し何か変化があれば……少なくとも変に疑ったりとか悩んだりとかもなくなるんだろうけど。
(それにしても……)
①隆、遅いな……大丈夫かな?
②春樹はよくこんなにいろいろと思いつくよね
③今一番謎なのってもしかして御門くん?
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③今一番謎なのってもしかして御門くん?
最近の出来事にかかわってる人の中で一番なぞの多い人。それは御門くんだ。
御門くんの行動を思い出す限りでは、敵とは思えない。
水野先生の組織にかかわっている可能性も0に近い。
(なぜか私を守るっていってくれる…)
自然と視線が痣へと向かう。
私が御門くんを拒否しない限り不完全ではあるけれど契約上の主の私。
(私の力はなに?)
御門くんに会いにいけば、すべてがわかる。
組織がなぜ私を狙うのかも、私の力も、そして御門くんが何者なのかも。
「……もどった」
いろいろ考えているうちに、隆が戻ってきた。
顔には疲労の色。
「どうしたの!?」
「隣の人、春樹が言ったとおりミストが取り付いてて…ちょっと処理してきた」
そういって、疲れ果てたというかんじで、ソファに座る。
1、「それじゃあ、この手紙は本当のことなんだ」
2、「隆、無理しないでっていったでしょ!?」
3.、「私に何が起こってるのか、聞いてくる」(御門くんに会いに行く)
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1、「それじゃあ、この手紙は本当のことなんだ」
「隆さんの中に武という別人格がいるのは間違いないってことだね」
春樹は隆を見て目を伏せた。
戻ってきてから、隆の顔色が悪いようにも見える。
疲労のせいか、ぐったりとうなだれていた。
「疲れたから……横になっていいか?」
「ちょっと待ってて。客間にお布団を敷いてくるから」
「いい……。このソファーで少しだけ寝させてくれ」
「うん」
隆は横になると、目を瞑った。
「隆さんのために、何か飲み物でも作ってくるよ」
春樹はそう言って、キッチンに向かう。
「なぁ、愛菜」
隆は目を閉じたまま話しかけてくる。
「何?」
「やっぱり……俺たちの関係は…もう終わってるんだよな?」
最終更新:2007年05月18日 00:50