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②5年前


私が小学6年生、春樹が小学5年生。
あの頃はまだ、私と春樹の身長は同じくらいだった。
私は中学に上がってすぐに身長が伸びなくなって春樹に追い越されたのだ。

(そういえば、春樹は最初再婚に反対してたんだっけ…)
当時のことを思い出す。

春樹に最初に会って言われたのは、『お前らなんか必要ない!』という言葉だった。
そのときはショックで、私は泣いてしまったのだ。
後から知ったことだけれど、義母は前の夫の暴力が原因で離婚していて、そんな義母を見て育った春樹は父親という存在を疎ましく思っていたらしい。
当時のことを春樹は汚点だというけど、義母を守るための言葉だったって父も私もわかっている。
それに、そんなすれ違いも1週間もすれば消えていた。
春樹の心にどんな変化があったのかわからない。
一週間が過ぎた頃、春樹は約束してくれた。『母さんだけでなく姉さんも、父さんも守れるくらいに強くなる。ずっと守る』恥ずかしそうに、私にそう言った。
すっかり忘れていたけれど、春樹はこうして約束を守ってくれている。

「あれから5年か…」
小さくつぶやく。
そして、連鎖のように本当の母のことが脳裏に浮かぶ。
あれから5年ということは、母が居なくなってから…

1、8年
2.、10年
3、12年

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2.、10年

もう、10年たつんだ。

実の母がいなくなった日のことは、おぼろげにだけど今でも覚えている。

寂しそうな笑顔。
「愛菜には幸せに生きてほしいから」
ゆっくりと私の頭をなでる手。
囁くような、悲しい別れの言葉。
「だから、ごめんね……愛菜」
私は曖昧な意識の中で、その全てを感じていた。

そして目が覚めたら、母はいなくなっていた。

探した。とにかく探した。
何度も、必死に。その名前を呼んで。
母が辿ったかも分からない道を走って。
涙で前が見えなくなっても、転んでも、とにかく走って。

「もう、やめよう……」
あの日の悲しい気持ちがよみがえった気がして。
……それを追い払うように私は頭を何度も振った。

そのとき、不意に聞こえる声。
「姉……さん?」
見下ろせば春樹が寝ぼけたような表情のままでこちらを見ていた。
「どうか、したの?」
寝起きの声のまま春樹が問いかけてくる。

①「何でもないよ」
②「昔のことを思い出してたの」
③「これからのことを考えたの」

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②「昔のことを思い出してたの」

「……むかし?」
「うん、春樹に初めて会ったときのこと、春樹にあうずっと前のこと……」
あの人は今どうしているだろうか?
ふと気になった。

「どうしてるのかな……」
無意識につぶやいていた。

「……?……ぁ」
私のつぶやきに不思議そうな顔をしながら起き上がろうとした春樹が、私の手をつかんでいることに気づいて慌てて手を放した。

「ご、ごめん姉さん。毛布まで……」
「こっちこそごめんね。疲れてるんでしょ?」
「いや、平気だよ」
そういって笑う春樹に、わたしも笑顔を返す。

「ねぇ……俺に合う前のことって、姉さんの本当の母さんのこと?」
少しの沈黙の後に春樹が口を開いた。

「うん……」
「思ったんだけどさ、姉さんの母さんって行方不明になったんだよね?」
「……うん」
「もしかして……姉さんの母さんも何か力を持っていて、それが理由で居なくなったとか考えられない?」
「……え?」
思ってもみなかったことだ。
記憶の中の母を思い出す。

母は……
1、どこにでも居るような普通の人だった
2、どこか夢見がちでぼんやりした人だった
3、とても活動的だったけれどよく転ぶひとだった

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1、どこにでも居るような普通の人だった

「普通の人、だったと……思うよ」
10年も前の記憶。
もう写真を見なければ顔すらはっきり思い出せない。
けれど母に何か特別な力があるようには感じなかった。
普段は優しいけれど、怒るときにはすごく怖い。
どこにでもいるような普通の母親だったと思う。

「そうなんだ?力っていうのは遺伝とは関係ないものなのかな?」
「さぁ?少なくとも、父さんは普通だよね?」
「……そうだね。仕事人間だけどね」
春樹はそのまま何か考えているようだった。

「…あ」
ふと、思い出す。

1、「一郎君たちに聞いてみればいいんじゃない?」
2、「さっき隆がファントムを…」
3、「そういえば、一年生に御門君っていた?」

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2、「さっき隆がファントムを…」

「どうしたの? 姉さん」
「あのね、さっき街で黒い影をまとった隆を見かけたんだ」
「隆さんが黒い影を?」
「うん。隆にはファントムをつくる力があるらしいの」

幼馴染の隆に、そんな恐ろしい力があったなんて事が未だに信じられない。
少し流されやすいところはあるけれど、ごく普通の高校生だと思っていた。
初めて手をつないだ時は、びっくりしたけど嬉しかったのに……。
だけど、それも私を狙う目的だったかもしれないと思うと胸が痛い。

「隆さんとこれからどうするつもり?」
「どうするって……」
「だって、姉さんと隆さんはまだ付き合ってるんだろう?」

そうだった。春樹には水野先生と隆が一緒いるところを見た話しかしていなかった。
「……私が一方的に言っただけだけど、別れたよ」
「そうか……」
「だけど、隆と一度ちゃんと話をしなくちゃいけないとは思ってるんだ」

気まずいかもしれないけど、どういうつもりで付き合ったのかきちんと隆の口から聞きたい。
もし私を狙っているなら、その目的も。

「俺は……危険だと思う。やめておいた方がいい」

①「危険かもしれないけど、やっぱり話しておきたいよ」
②「そうだね、春樹のいう通りにするよ」
③「やっぱり隆と水野先生は同じ組織なのかな?」

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③「やっぱり隆と水野先生は同じ組織なのかな?」

「違うんじゃないか?」
「え?どうして?」
「同じ組織の人間なら、一郎先輩が水野先生を隆さんへけしかける理由がないじゃないか」
「あ…そうか」
「別の組織か、もしくは隆さんはどこにも属していないか…」
隆が水野先生の組織とは関係ないと聞いてなんとなくほっとする。

「まあ、推測だよ。でも、姉さん本当に危険なんだから、隆さんには近づかないこと!」
「……どうしても?」
「当たり前だろ!?隆さんと話しがしたいなら、ファントムを退治できるようになってからにしてくれよ?取り付かれたら大変なんだからね」
「あ、そっか、そうだよね…」
見ることはできても、ファントムを退治できないんだから、万が一取り付かれるようなことがあったら大変だ。

(でも、隆はいままで私にファントムを取り付かせようとはしなかったのよね…?)
もしその気になれば、今までだって隆はいつでも私にファントムを取り付けることができたはずだ。
そういうと、春樹は首を振った。

「今までは姉さんと隆さんの関係は良好だったじゃいか。ファントムを取り付ける理由なんてなかったよ」
「……そうかな?」
「そうさ。もし水野先生が隆さんへちょっかいをかけなければ、何もしなくても姉さんは隆さんを信用してたろ?」
「そうだね、たぶん……」
「でも、これからは違う。姉さんは隆さんを不信に思ってる」
「うん……」
「自由にならないなら、自由にできるようにファントムを取り付けることだってするかもしれない」
「………」
春樹の言うことはもっともだ。

じゃあ、どうすればいいんだろう…
1.隆に近づかない
2.一郎君か修二君と一緒に行く
3.それでも一人で話しをしに行く

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3.それでも一人で話しをしに行く

春樹に言うことは、正しい。
でも、裏切られたけれど、私はまだ隆を嫌いになれないでいた。
悔しくて、悲しいけれど他にも隆とはたくさんの思い出があるからだ。
幼い頃の隆は元気な男の子で、暗くなるまでよく遊んだ。
そんな過去からは、何かを企てていたようには思えない。

「わかったよ、春樹」
「絶対に隆さんには近づかないこと」
「……大丈夫だってば」

(ごめんね春樹。どうしても納得できないんだ)

隆が別の組織、または単独で動いているのは間違いなさそうだ。
だけど、ファントムを取り付けなかったことについて理由がはっきりしない。
操れる力があって、当時の私はそれが見えないのだから、取り付かせたほうが早い。
一郎君が水野先生に近づいていたように、もし何らかの理由があって隆も水野先生に近づいていたとしたら……。
そこに私の力を狙っている理由も隠れている気がする。

隆と水野先生を音楽室で見たときは、とにかくショックでただ逃げ出したかった。
そのせいで、ちゃんと話すらもできなかった。
また逃げ出せば、真相はいつまでも分からないままだ。
ファントムが見える今なら、新たな真相が明らかになるかもしれない。
春樹の言うとおり危険を冒すことにもなるけど……。

私は自室に戻り、携帯を手とって
①隆にメールをする
②隆に電話をかける
③やっぱり止める

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②隆に電話をかける

直接に会うのは危険だけれど電話なら…?
隆との付き合いは長い。声だけでも嘘をついているかどうかは大体判別できる。
短縮に入っている隆の番号を押す。

(さっきどこかへ向かっているようだったけれど…でるかな)
1コール 2コール 3コール ……

「愛菜!?」
3コール目で慌てたような隆の声。

「………」
「……愛菜から電話もらえるって思わなかった」
とっさに言葉の出なかった私にかまわず、隆が言葉をつむぐ。

「愛菜ごめん。俺、お前を傷つけてばっかりだな」
謝罪の言葉。今回隆は言い訳する気はないようだ。

「……隆、聞きたいことがあるの」
「………なんだ?」
私の真剣な声に、隆の声も真剣なものに変わる。

1、「隆は水野先生に、何がしたかったの?」
2、「隆はいつからファントムを作れるようになったの?」
3、「隆はどうして私を狙っているの?」

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2、「隆はいつからファントムを作れるようになったの?」

「ファントム…?」
何のことだか分からない、といった感じの隆の声。ウソはついていない。

(あ、そうか、ファントムって呼び方は一郎君たちの呼び方なんだ…)
「えっと、黒い霧みたいなもやもやした…隆の周りにあるのよ」
「愛菜にも見えるのか…?いつから……」
「私は最近よ。で、隆はいつからあれを作れるの?」
私が見えるのは御門君との契約のおかげだ。けれどそれは言わないでおく。

「……いつから、と聞かれるとはっきりとは分からないとしか答えられないな」
少し考えるような間の後隆が話し出す。

「中学二年くらいからか?俺はミストの…俺はアレをミストって呼んでるんだけど…、ミストの存在を知った。それからそれを作ったり操れることに気づいた」
隆の声にウソはない。

「見え始めてしばらくして、俺が作った以外のミストが愛菜を狙ってるってことに気づいたんだ」
「え?」
思いがけない隆の言葉。

「ミストの性質は分かってる。だから必死だったよ。なるべく近くにいて他のミストを愛菜に近づけないようにするのにさ…」
隆の声にウソは感じられない。
それじゃあ、一郎君たちがウソをついているのだろうか?
けれど一郎君たちにもウソをついている様子はなかった。

それじゃあ一体…?

1.隆が私を狙ってるって言うのは一郎君たちの勘違い?
2.やっぱり隆がウソをついてる?
3.一郎君たちが本当は敵?

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1.隆が私を狙ってるって言うのは一郎君たちの勘違い?

隆の影と別の第三者が操る影を間違えているとしたらあり得る話だ。

「ねえ、そのミストは誰が操っているのかは判るの?」
「そこまでは判らない。だけど、他の誰でもなく愛菜だけを狙ってくる」
「私だけを?」
「なのに愛菜は見えてないみたいだし、こっちは大変だったんだからな」

(隆がずっと守ってくれていたって事だよね)

「愛菜にもミストが見えるようになったって事はもう影を操ることも出来るんだよな」
「ううん。私は見えるだけで、操れないんだ」
「えっ! じゃあ今まで通り愛菜のお守りは継続しなくちゃいけないって事か。まぁ、見えるようになったのなら少しはマシか」
「影の事、一度でも相談してくれればよかったのに……」
「愛菜にミストの話しても、テレビの観過ぎって笑うだけだろ」
「確かに、信じなかったかも」

そして、電話の向こう側の隆が不意に黙り込む。
隆が次に話し出すまで、私はじっと待った。

「……ヘンな影が見える事、愛菜に黙っていたせいで…誤解させて、悲しませて……その……」
「うん」
「……悪かったっていうか…」
「ううん、私こそ今までごめんね」
「でさ、電話だけじゃなんだし今から会えないか? あのファミレスで待ってるからさ」

私は……
①ファミレスに向かう
②断る
③考える

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