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2.なんで私と契約するのか聞く。

「何で、私なの?」
そもそもの疑問を御門君にぶつける。

私の質問に御門君はすぐには答えなかった。
胸元に手を当て、じっと考えるようなそぶりを見せる。
「託されたからです」
やがて、御門君は静かに答えた。
「誰に?」
私の再度の問いに御門君は沈黙する。
胸元に当てた手は、今度は軽く握られて。
御門君は視線をそこまで下げてじっとそれを見つめてから、顔を上げた。
「僕とも、あなたとも縁の深い人です」
私から視線をそらさずに、御門君が答えた。
「え?それってどういう……」
そこまで言ったとき、不意に景色が変わっていくのに気がついた。

「あれ?」
見回せば、だんだん辺りが白み始めている。
「……夢の終わりが訪れたようです。あなたの意識が目覚め始めているのでしょう」
御門君も私と同様に辺りを見回しながら、淡々と答える。
「もう、朝なんだ………まだ、聞きたいことあったんだけど」
薄れていく御門君の姿を見つめながら呟く。
「聞いて、みますか」
「え?」
御門君からの意外な一言に、私は思わず聞き返してしまった。
もし、今のが聞き違いでなければ……御門君は私に話をしてくれると言う事になる。
「ただし、聞いてしまえば本当に引き返せません。
おそらく、まだ今なら打つ手はあるでしょう……いえ、必ず手を打ちます」
そこで一度言葉を止めてじっと私を見つめる。
どこか意思のこもった強いまなざしで、御門君はそう断言した。
「もし、話を聞く決心がついたのなら……病院の近くの公園へ来て下さい。
来れば分かるようにしておきますので、いつでもかまいません」
言い終えてから、御門君は私に向かって恭しく頭を下げる。
「では」
その一言を最後に、私の意識は浮上していった。

「………眩しい」
差し込む太陽の光。
……またカーテンを閉め忘れたらしい。
その眩しさに目を細めながら、私は夢のことを思い出していた。

「決心がついたら、公園……か」
幸いなのかは分からないけど、今日は土曜日。
御門君の話を聞くには絶好のチャンスと言えるかもしれない。
(でも、御門君はいつでもいいって言ってたよね。うーん……)
土曜日の次は日曜日。つまり同じチャンスは明日もある。

それに、御門君の言うとおり戻れないのだとしたら……今すぐ決断してしまうのは早すぎるかもしれない。
(とりあえず、今のところは大丈夫みたいだし……どうしようかな?)

今日は
1.御門君のところに行ってみる
2.とりあえず外に出て散歩でもしながら考えてみる
3.今日こそは家でゆっくりする

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2.とりあえず外に出て散歩でもしながら考えてみる

(天気もいいし、散歩にでも行こうかな)
ベッドから立上り、足の具合を確かめる。
最初の頃に比べればかなり良い。
多少痛みはするけれど、足を引きずるほどではなくなっている。
着替えてキッチンへ行くとすでに春樹も起きていた。

「姉さん、おはよう。休みなのに早いね」
「おはよ。お父さんとお母さんは?」
「父さんは仕事の付き合いでゴルフ一泊。母さんも、仕事が残ってるって休日出勤」
「そっか、二人とも忙しいんだね…」
二人とも仕事人間でめったに家にいない。
春樹が焼いてくれたトーストを食べて立ち上がる。

「あれ?姉さんでかけるの?」
「うん、天気もいいし散歩に行こうと思って」
(ゆっくり考えたいこともあるし…)
「じゃ、ちょっとまって俺もついていくよ」
「え?」
「姉さんわすれたの?姉さんは不安定なんだって。消えちゃうかもしれないんだよ?」
「……あ」
すっかり忘れていた。

1.春樹と一緒に行く
2.一人で行く
3.散歩をやめる

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2.一人で行く

「だ、大丈夫だよ!いつもそうなるわけじゃないだろうし」
慌てて春樹の申し出を断る。

「春樹には春樹の予定があるだろうし、つき合わせたら悪いもの」
ただでさえ春樹を巻き込んで申し訳ないと思っているのだ。
この上、私の都合で春樹の自由を奪ったりできない。

「別に、俺はそんなこと気にしないのに……」
なんだか少しさびしそうに春樹が言う。

(どうしたんだろう?)
私が不思議に思って見ていると、春樹は小さく頭を振った。
「……なんでもないよ。
まあ、姉さんの邪魔しても悪いしね。くれぐれも十分気をつけて行ってきてよ?
人通りの寂しいところとかは極力避けて、何かあったらすぐに連絡すること。
わかった?」
春樹の口調に思わず笑みがこぼれてしまう。
だって今の言い方……お義母さんにそっくりだったから。
「あはは。なんか春樹、お義母さんみたいだよ?」
私があんまりにも笑うからだろうか?
少し拗ねた表情で言葉を続けようとする春樹。
「……俺だって口うるさく言いたくて言ってるわけじゃないよ。ただ……」
「わかってる」
それを制して、私は言う。
「わかってるよ。私のこと、心配してくれてるんだよね?」
「ん」
今度は大仰に頷く春樹に、また笑ってしまった。

「じゃあ、行ってくるよ。春樹も気をつけてね?」
「ああ……行ってらっしゃい、姉さん」
春樹に見送られて、私は家を出た。

………………さて、どこに行こうかな?
歩きなれた道を目的も無く歩いていく。

「あ」
しばらく歩いていくと、道が三つに分かれる。

右に行けば、いろいろなお店が建ち並ぶ繁華街。
左に行けば、御門君が夢で言っていた公園や病院がある。
直進すれば、学校と……あと、ファミリーレストランとか喫茶店とかの飲食店がいくつかあったはず。

さあ、どの道を行こう?

1.右
2.左
3.直進

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3.直進

なんとなく学校へ向けて歩く。
いつも通っている道なのに、休日というだけでまったく違う風に見える。
学校までは行かずに、途中の喫茶店に入ってミルクティーを頼む。
ミルクティーが来るまでの間ぼんやりと、外を眺める。

(御門くんは、今ならまだ打つ手があるって言ってた…)
聞いてしまえば引き返せない。
(でも、知らないままでいいのかな?)
御門くんと私に縁の深い人…一体だれだろう?
(必ず手を…うつ……って、御門くんにとって危険だったりしないのかな?)
とりとめのない思いが行ったり来たりする。

(もし、聞いてしまったら、春樹を完全に巻き込んでしまう)
でも、何も知らないまますべてが終わっているというのも、落ち着かない。

「お待たせしました」
目の前に置かれたミルクティー。
考え事を一時中断して、カップを口に運ぶ。

(おいしいなぁ)
甘さが身にしみる。甘いものをとると落ち着く感じがする。
ホッとため息をついて、もう一度窓の外に視線を向けた。
行きかう人をぼんやりと眺めていると、知っている人の顔。
あれは…

1、水野先生
2、隆
3、周防さん

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2、隆

あれは……隆!

最後に見たのは、別れを告げたときだった。
あの時は、私も気が動転していてろくに顔を見ることすらできなかった。

公園通りに向かって、隆はゆっくり歩いている。
私はその姿をただ眺めることしか出来なかった。

(今、隆に話しかけても何を話していいかなんて分からないよ)
そんな気持ちのまま、隆の背中を窓越しに見送っていると、ふと、異常に気付く。

(あれ……隆の背中に黒い……影?)

確かに、隆の背中を覆うように黒い影が張り付いている。
隆の中にするりと入ったかと思えば、またずるりと出てくる。
まるで、隆の体を住処にしているような動きだ。

「まさか……ファントム……」

どんどん隆は遠くに行ってしまう。
このままじゃ、見失ってしまいそうだ。

私は……
①急いで追いかける
②一人では何もできないので諦める
③一郎君と修二君に連絡する

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③一郎君と修二君に連絡する

慌てて携帯電話を取り出し、リダイヤルボタンを押す。
すぐに明るい声がした。

「愛菜ちゃん、おはよ~。なになに?デートのお誘い?」
「ち、ちがっ!隆、隆に」
「あいつがどうかしたの?」
「隆にファントムがついてるの!」
「……そりゃ、そうだよ。あいつは、ファントムを作る力を持ってるんだから」
「……え?」
思いがけない言葉に、思考がとまる。

(隆の力…?じゃあ、昨日のは、隆が…?)
「一つ、教えてあげる。ファントムに取り付かれてしまったら、ファントムは人の内にはいるんだ。外から見ただけじゃわからない。俺達でもね」
(じゃあ、隆の中に入っているわけじゃないあれは、隆が操ってるファントム…?)
「もちろん、ちょっとした手順を踏めば、取り付かれてるのかそうでないのかはわかるけどね」
電話の修二君の声がやけに遠く感じる。

「愛菜ちゃん、聞いてる?」
「あ、うん」
修二君の呼びかけに慌てて返事をする。

「あいつも愛菜ちゃんを狙ってるっていったろ?」
「うん……」
信じたくないことがどんどんと起こる。

「愛菜ちゃんひとりなの?早く家に帰ったほうがいい。見つかったら大変だよ」
「うん…ありがとう」
電話を切って隆が消えていったほうを見る。

1、隆をおいかける
2、しばらくこの場に残る
3、家に帰る

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3、家に帰る

ふと春樹のことが気になった。
(そうだ春樹には見えないんだから、もし取り付かれたら…)

その可能性に思い至ってあわてて家に向かう。
春樹を狙ってくる可能性もあるって一郎君たちが言っていたのを忘れていた。
(なるべく二人でいたほうがいいのかもしれない…)

私は春樹にファントムが取り付かないように。
春樹は私が消えてしまわないように。
「ただいま。………春樹?」

いつもならすぐに返事が返ってくるのに返事がない。
あわててリビングへ向かう。
「春樹……?」

リビングをのぞくと、春樹はソファで寝ていた。
(よかった…)

ホッと息をついて春樹の顔を覗き込む。
規則正しい呼吸。
(疲れてるのかな?でもここで寝てたら風邪ひくかも)
「春樹?」

ためしに呼んでみる。
「……ぅ?」

小さく返事をするもののおきる気配がない。
どうしよう?

1、無理やり起こす
2、上掛けを持ってくる
3、いたずらする

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2、上掛けを持ってくる

私は二階に毛布を取りに上がった。

ここの所身の周りで色々ありすぎて疲れていた。
でもそれは春樹だって同じこと。
世話焼きで口うるさくてしっかり者で。

でも、春樹は私の弟なのに。

私は次から次に起こる不可解な出来事に振り回されてばかりで
自分のことで精一杯だったけれど、春樹はいつだって傍で支えてくれた。

春樹には本当にいつも心配のかけどおしだ。

リビングに戻ると横になっている春樹の肩口まで毛布をかけた。
「……いつも心配かけてばっかりだね。頼りないお姉ちゃんで、ごめんね」
静かに寝息をたてる春樹にそっと声をかける。

(そういえば春樹の寝顔を見るのは久々かも)
思いついて知らず小さく笑みがこぼれた。

「……さ、ん…」
見守るように見つめていた春樹が不意に苦しげな声をあげた。

「春樹?」
「姉、さん……だめ…だ…」
呼びかける声にも目を覚ます様子は無く、苦悶の表情を浮かべてうなされている。

「春樹、どうしたの?」
頬を触れるように軽く叩くと凄い力で手を捕らえられた。
何度か声をかけてみるも手を掴んだまま離そうとしない。

(指先、白っぽくなってきちゃった…)
春樹は眉根を寄せてうなされたままだ。

どうしよう?
1、手が痛いのでむりやり手をはがす
2、心配なので引き続き声をかける
3、空いている方の手で携帯に電話をかける

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2、心配なので引き続き声をかける

「春樹?大丈夫だよ。私ここにいるから」
うなされる合間に何度も呼ばれる。

「大丈夫、ここにいるよ」
そのたびに何度も大丈夫だと言い聞かせる。
あやすように何度も何度も声をかけていると、表情が柔らかくなっていく。

「大丈夫」
だんだんと落ち着いてきた呼吸に安心する。
さっきよりは力が入っていないが手は離してもらえない。
手を離そうとすると、そのたびに力が強くなる。
仕方なく春樹の横に座る。

することもないので、これからのことを考える。

1.御門くんのこと
2.春樹のこと
3.隆のこと

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2.春樹のこと

春樹は力が無いことに、とてもショックを受けていたみたいだった。
だけど、守るっていうのは何も危険から身を守ることばかりじゃない。
春樹が居てくれていることが、私の支えになっているのは間違いない。
だから、やっぱり私は春樹に守られているんだ。
それに、春樹が居ると私は消えないって言っていたし。

(ありがとう、春樹)
そっと、春樹の前髪に触れた。

私はリビングにある、家族の集合写真に目をむける。
父と私、そして、義母と春樹が緊張した面持ちで家の前に立っている。
家族になった日の記念に撮影したものだ。

(よく見ると……春樹ってば全然笑ってないよ)

私を生んでくれた母は、私が小さい時に突然いなくなってしまった。
父と私は何年も帰りを待っていたけれど、結局、母が帰ってくることは無かった。

そして、父が再婚することになった。
それが義母と春樹の出会いだ。

はじめて春樹に会ったのは確か……
①3年前
②5年前
③7年前

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