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②ここに鍵になりそうなものがないか探す

(忘れないために必要なものは何だろう)
せっかく夢でお母さんとの約束を思い出したのに、このまま忘れてしまいたくない。
私は濃い霧の中で必死に考える。

(駄目。こんな濃い霧じゃ何も見つからないよ)

諦めかけたその時、白い霧を裂くように、ドロドロの黒い霧が地面を這いずりながら現れた。
その黒い霧は、二つの穴が目のようにぽっかり開いている。
地面を這う黒い霧はしばらく動かず、空洞の目で私を静かに見続けた。

(な、何これ……気持ち悪い……)

地面を動くドロドロの霧は、一つの小さな黒い塊を空中に吐き出した。
すると、その塊に吸い込まれるようにして急速に人型が形成されていく。
私は恐怖のあまり、その場から動けない。

「我ヲ……」
「!?」
「我ヲ……コノ場カラ……解放……」
「………!」
「封印……解ク……」

かすかに女の人のような声が聞こえる。
しゃがれ声で聞き取りにくいけど、確か誰かがしゃべっている。
とても息苦しそうに呻いているから、こっちまで胸の辺りが苦しくなってくる。

「……あ、あの」
「コレ……ヲ……」

黒い塊の女の人は手を伸ばす。
私は何か手渡されるのだと気づいて、両手を受け皿のようにして出す。
差し出されたのは、首にかける緋色の勾玉だった。

「あ、ありがとう。私にくれるの?」

黒い人型は首をゆっくり縦に振り、うなずいた。

「あの、あなたの名を……名前を教えて」
「………我ノ…名…ヨモツシコメ…………」
「よもつしこめさん、これはお母さんとの事を忘れないための鍵なんだよね?」

よもつしこめと名乗った黒い霧は、人型が保てないのかまたドロドロの黒い霧に戻っていく。

「忘レルナ……我……汝ノ中ニ………」

私は……
①続きをみる
②目覚める
③考える

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③考える

私は手の中に残った勾玉を見る。
ヒヤリとした石の感触が心地よい。
それにしてもヨモツシコメと名乗った人は、どうしてここに居たのだろう?
ここは私の夢のはず。

(あ、でも、私の中にいるって最後に言ってたっけ?)
あとは……確かこの場から開放とか、封印がどうとか言っていた。

(封印…解く? 封印を解く? あ、前の言葉から合わせると、封印を解いてここから開放してほしいって意味だったのかも?)
ここ、と言うのは私の夢の中という事で良いのだろうか?
ということは、あの人はなぜか私の夢の中に封印されている事になる。
そして、この勾玉が封印を解く鍵になっている?

「でもどうすればいいのか分からないよ……」
受け取った勾玉をひっくり返してみたり、なにか変わった事がないかじっくり見てみたが特に変わった様子はない。

「とりあえず首にかけてみる、とか?」
そのように造られているようだし、試しに首にかけてみる。

「あれ?」
掛けた途端、不思議と懐かしい感じに襲われる。

「この勾玉を身に付けたのは初めてじゃない? うーん、でもそんな記憶はないなぁ」
だいたいこれを見たのも初めてなのだ。
思考はそこで止まってしまい、どうすればいいのか浮かんでこない。

「こういうときはどうすれば良いんだっけ……?
えっと……そういえば隆がやってたゲームで……発想の転換? 考える方向を変えるんだよね?」
以前隆がやっていたゲームで、行き詰ったときによく使われていた。

「どうやって封印をとくかじゃなくて、誰が封印しているのか考えてみよう」
私の夢の中なのだし、普通に考えれば私自身なのだろうけど……。

①やっぱり私
②勾玉
③ヨモツシコメ
④他の誰か

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①やっぱり私

この夢の中に黒い影がいるという事は、私自身が身の内に封じたこと考えるのが自然だ。

(だけど封印の記憶なんて……私には全く無いしな)

考える方向を変えてみても、こればっかりは情報不足で手に負えそうも無い。
今の私では、せいぜいあれこれと想像を巡らせることしか出来ないだろう。

(あ、そういえば……)

昨日、封印という言葉を使っていた人が居たのをふと思い出す。
それは放送室での修二くんの言葉だ。

『だから、へーきだって。愛菜ちゃんは心配症だなぁ。
俺達にこの目がある以上、主流派は手出しできないんだよ。
俺達が見つけなければ、封印を解くこと――』

この後、修二くんは一郎くんになぜか咎められていた。
という事は、二人は封印について情報を握っているはずなのだ。

(教えてくれるか分らないけど、聞いてみる価値はあるよね)

忘れていたお母さんとの思い出を含めて、私と『封印』には深い関わりがあるのは間違いない。

八方塞がりで何も出来なかった私に、少し光明が見えてきた。
お母さんとの約束とこの勾玉。二つが打開策になればいい。

冬馬先輩や双子から情報を聞き出すのは難しいだろう。
けれど今、私が考えていることを話せば、何らかの反応があるはずだ。

少しずつ意識が浮上していくのが分かる。
どうやら現実では朝を迎えたようだ。


陽の光に顔をしかめながら、私はゆっくり目を開ける。

そこに居たのは……
①お義母さん
②隆
③チハル

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②隆

「お、やっと起きたか」
「……た、隆!? 何で私の部屋にいるのよ!」
「なんでって、お前を起こしに来たんだろうが、時計見てみろ?」
言われて時計を見て見ると、いつも家を出る時間の15分前だった。

「……! ちょっと、何でもっと早く起こしてくれないのよ!」
「起こしたさ、な?チハル?」
「うん、でもね、愛菜ちゃん起きなかったんだよ」
「まったく、寝汚いやつだよな。そんなにいい夢でもみてたのか?」
「夢?……うーん、覚えてないな」
「ま、夢なんてそんなもんだけどな……っと、こんな悠長に話してる暇無いぞ」
「あ、そうだった」
「とりあえずパン焼いておくから早く来いよ」
「う、うん」
隆が出て行ったのを確認して、大慌てで着替えをする。
下に降りると、隆がすでにパンを齧っていた。

「お義母さんは……?」
「朝早くに仕事に行ったらしい、ほらそこにメモ」
メモを見ると、隆の言うとおり仕事でもう出る事と帰りが遅くなること、そしてもう大丈夫だといった内容だった。

「ほら、早く食え」
「あ、うん」
受け取ったパンを牛乳で流し込む。
時計を見ると、なんとかいつもの時間に家を出られそうだ。

「急げー行くぞ」
玄関からは隆のせかす声が聞こえてくる。

「いまいくー」
慌ててカバンを持って玄関に行くと、準備を済ませた隆が戸に手をかけているところだった。
私も慌てて靴をはいてその後に続こうとして、入り口で立ち止まった隆の背中にぶつかってしまう。

「ちょ、ちょっと……急に止まらないでよ!」
「……なんでこんなところにいるんだ?」
隆は私の言葉を聞いていなかった。
不思議そうにつぶやくのが聞こえる。

(誰かいるのかな?)
そう思って隆の影から外を見て見ると、そこには……

①冬馬先輩
②修二くん
③桐原さん

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③桐原さん

「あら、おはようございます」

隆につられたようにその場で固まってしまった私に気が付いたのか、桐原さんは
にっこりと笑って頭を下げた。チハルの昨日の言葉ではないけれど、綺麗な笑顔が
何故かどことなくくすんで見える。

「……昨日俺の言ったこと、聞いてなかったのか? あんた、見かけに寄らず物分りは
良くないみたいだな」

隆が私をかばうように立ったまま桐原さんに声をかけた。表情はわからないけれど、
背中越しに聞こえる隆の声に友好的な雰囲気は微塵も感じられない。
一方の桐原さんは、険悪な隆の言葉にも少しも動じることなく真っ直ぐに隆を見据えて
言った。

「朝から随分なお言葉ですね。まあ、結構です。今日の私はとても機嫌が良いので」
「はあ? あんた、一体何しに来たんだ。生憎俺たちは春樹ほどお人よしでもないんでな
……愛菜、行くぞ。遅刻しちまう」
「た、隆…待ってよ」

言いたいことだけ言うと、隆はさっさと桐原さんの横を通り過ぎた。私も玄関の鍵をかけると
慌てて隆の後に続く。

(桐原さん、ほんとに何の用なんだろう? やっぱり、春樹のことかな……)

昨日の悔しそうな桐原さんの顔が一瞬頭を過ぎって、通りすがりざま思わず桐原さんの方に
目をやった。私の視線に気が付いたのか、桐原さんは勝ち誇ったように清清しい声でこう言った。

「お礼を言うのは、また次の機会にします。春樹くんのお姉さん……失礼、元・お姉さんでしたね」

ぎょっとして振り返った私に目もくれず、桐原さんは何事も無かったかのように学校の方に
歩き出した。

(いま……桐原さん、なんて言ったの)

「おーい、愛菜! 何やってんだ遅れるぞ!」

桐原さんの言葉が聞こえなかったのか、大分前の方に行ってしまった隆がこちらに向かって
大声を張り上げている。

どうしよう?
①桐原さんを呼び止めて詳しく話を聞く
②隆を追いかけて今聞いた事を説明する
③とりあえず遅刻してしまうので、後で他の人に相談する

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②隆を追いかけて今聞いた事を説明する

「た、隆!」
慌てて隆に駆け寄って、その制服の裾を掴む。

「なんだよ?」
「さっき、桐原さんが……、私の事を春樹の元お姉さんって……ね、どういう事、春樹が私の弟じゃなくなるってことなの?」
「は? そんなわけないだろ? 昨日だってちゃんと言ってたじゃないか、必ず戻るって。春樹を信じてやれよ」
「そうだよね……」
そうだ確かに昨日春樹は、必ず戻ると言った。
桐原さんの言葉は昨日だって、彼女に都合の良いものだけだった。

(春樹を信じよう)
春樹の言葉以外に惑わされないように。
隆と無言のまま俯き加減で通学路を歩く。
最後の曲がり角を曲がって、何気なく顔をあげると冬馬先輩が立っていた。

「冬馬先輩……?」
「ん?」
私の呟きが聞こえたのか、隆も先を見る。

「……あー、確か昨日の」
そのまま冬馬先輩の前まで歩き、二人で足を止める。

「先輩おはようございます」
「冬馬先輩おはようございます」
「……おはようございます」
隆と二人で挨拶すると、少しの間の後に挨拶が返ってきた。

「こんな所でどうしたんですか?」
目上の人に対してはそれなりに、丁寧な言葉になる隆が不思議そうにたずねる。

「春樹さんの居場所が分かりました」
「え、マジで?」
「本当ですか?先輩!」
こんなに簡単に春樹の居場所が分かって驚く私立ちに、冬馬先輩は頷いた。

「はい、春樹さんは、研究所にいます」
「やっぱり!で、春樹は無事なの?」
「はい、今の所は」
「よかったな、愛菜」
「うん……ありがとうございます冬馬先輩」
心底ホッとして、冬馬先輩にお礼をいうと「いいえ」と静かに首を振った。

「それにしても、昨日の夜のことだったのに早かったな」
「愛菜が心配していたので、力を使いました」
「力……? そういえば冬馬先輩の力って?」
「水を操る力です」
「水? 何でそんなので春樹の居場所が分かるんだよ?」
「空気中には水分が含まれていますから」

それって……
①「水分を伝って人を探すんですか?」
②「水分があれば何でも分かるんですか?」
③「ものすごくすごい力じゃないですか?」

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③「ものすごくすごい力じゃないですか?」

思わずそう口にすると、なぜか冬馬先輩はゆっくりと目を伏せた。
「すごくは、ありません。水分を伝って所在を探っただけですし、せいぜい100km圏内が限界ですから。
研究所の立地が幸いしました」
「100kmって……関東のほぼ全域か?!」
口をついて出た声が思いのほか大きかったのか、隆は慌てて声をひそめる。
「とんでもない力でしょう、どこがすごくないんです?」
「そうですよ、私もびっくりです。冬馬先輩ってやっぱりすごかったんですね」

重ねてそうかけた私の言葉に、冬馬先輩は「いえ」とだけ答えて学校の方へ首を巡らせた。
「とりあえず春樹さんに当面の危険はなさそうです。が、周防と美波にも連絡をとって
できる限りの対策は講じる必要があると思います。その話は、また後程」
隆もいつもより少しだけ興奮した様子で頷いた。
「あ…ああ、そうか。とりあえず学校に行かねえと遅刻するか。行くぜ、愛菜」
「うん。…冬馬先輩、今日の放課後って時間取れそうですか?」
学校に向かって歩き出していた冬馬先輩の後姿に声をかけると、先輩は静かに振り返った。
「時間なら、作ります。放課後、愛菜の授業が終わったら迎えに行きます」
「ありがとうございます。でも、文化祭の準備とかは大丈夫ですか?」
「…今は春樹さんの奪還が最優先です」
いつもの通りあまり抑揚の無い声でそう告げると、冬馬先輩は再び歩き出した。

「おい、愛菜。あの先輩いつもあの調子か?」
「そうだけど……先輩?!」
なんとなく隆と会話を交わしていると、先を行く冬馬先輩が小さくよろけて右手を壁についた。
慌ててかけよると、顔色こそいつもと変わらないものの目を閉じて額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
「だ、大丈夫ですか、先輩!」
「……なんでもありません。愛菜は隆さんと学校へ行ってください、僕は大丈夫です」
そう言う冬馬先輩は壁に寄りかかって浅い呼吸を繰り返している。

(どうしよう、どう見ても大丈夫には見えないけど……)

①大丈夫だと言うのでこのまま隆と学校へ行く
②心配なので学校を休むように説得する
③事情に詳しそうな周防さん・美波さんに連絡する

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②心配なので学校を休むように説得する

「先輩、もしかして力を使いすぎたんじゃないですか? 」
心配しながら冬馬先輩を覗き込むと、浅かった呼吸は幾分収まってはいるようだ。
だけど、立っていられないのか相変わらず壁にもたれたままだった。

「なんだか、すごく苦しそうだよ」
「いえ、本当になんでもないです」
「……私に何か出来る事は無いかな?」
「すぐに治るので平気です。愛菜は学校へ行ってください」
「……でも」
「僕の場合、数十分こういてしていれば……ですから気遣いは必要ありません」
「そんな、心配なのに」
「心配など無用です」
「やっぱり駄目! そんな顔してる先輩を置いて学校に行けるわけ無いよ!」

言葉とは裏腹に全然大丈夫そうには見えない冬馬先輩に向かって、私ははっきりと言い放った。
そして、私と冬馬先輩の様子を黙ってみていた隆に声を掛ける。

「ごめん、隆。先に学校に行ってて」
「なんなら俺も居てやろうか」
「大丈夫。それより学校に行って担任の先生に少し遅刻するって言ってほしいんだ」
「そうか。わかった」

隆は私の言葉に頷くと、学校へ向かって走り出す。
それを確認して、私は再び冬馬先輩に声を掛けた。

「先輩、そんな体調ですし今日は学校をお休してください」
「……………」
「私でよければお家まで送りますよ」
「……………」
「冬馬先輩?」

壁にもたれて、黙ったまま目を閉じている先輩に話しかける。
だけど、冬馬先輩は私の言葉に薄くしか反応も示さない。

「……………」
「先輩?」
「………………」
「冬馬先輩、本当に大丈夫ですか!?」

不安に駈られた私は、思わず先輩の肩に触れた。
その瞬間、電流のような鋭い痛みが指先に走る。

(……ヨモツへグイシツ者……ヨ……)
(彷徨ウ剣ノ力…黄泉二テ与エタ我ニ……其ノ御霊ヲ捧ゲヨ……)

①突然頭の中に声が聞こえた
②この言葉は自分自身がしゃべっているのだと気づく
③気にしない

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②この言葉は自分自身がしゃべっているのだと気づく

(な、何……)

指先に痛みが走った後、私は耳元で聞きなれた自分の声を聞いた。
それが自分自身が言葉を発している――そこまで理解するのには少し時間が掛かってしまった。
最初は奇妙な違和感だったのが段々と、薄気味悪い実感に変わっていく。
その事実がなんだか無性に怖くなって、思わず、私は口を両手で塞ぐ。

(私、今なんてしゃべったの?)

突然のことで、自分が何を話していたのかすら思い出せない。
何か意味を含んだ言葉を発していたりだろうけど、内容は全然覚えていない。
ただ自分の話し言葉ではない、大仰そうな言葉を使っていたような気がする。

「……菜。愛菜」

霧散していた思考が冬馬先輩の声で、一気に私の元に戻ってきた。

「冬馬、先輩……?」

さっきまで目を閉じて苦しそうにしていた冬馬先輩と目が合う。

「私……今……何か言っていましたか?」
「………はい」
「一体、私は……何を………」

それ以上言葉が続かない。
そんな動揺を隠しきれない私を見て、冬馬先輩はゆっくりと口を開く。

「心配ありません。今の言葉は僕に投げかけられたものでしょう」
「冬馬先輩に?」
「はい」
「一体誰がって……私が先輩に言ったけど……」

自分が言った言葉なのに身に覚えが無い。
そう言ったら、冬馬先輩にヘンに思われてしまうだろうか。

「恐らく、あなたの口を借りて贖物(あがもの)を必ず引き渡すように釘を刺したのです」
「アガモノ?」
「はい。願って剣の力を獲たからには、それなりの代償を差し出さなくてはならない……実によくある話です」

私は……
①「願って剣の力を獲たって?」
②「私の口を借りてって…一体誰が言ったの?」
③「それよりも体はもう大丈夫ですか?」

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①「願って剣の力を獲たって?」

「…………」
「今のは、一体誰が私に言葉をしゃべらせたの?」
「……………」

冬馬先輩は黙ったまま、何も答えようとはしなかった。
壁に預けた体を起こして、制服についた砂埃を払っている。

(答えたくないのかな)

聞けば素直に教えてくれる冬馬先輩が何も言わないのだから、これ以上聞くのは難しいだろう。

(剣の力を得た……ってどういう事だろう)

そういえば冬馬先輩の先天的な力について、具体的に聞いたことは無かった。
他の人から聞くには、規格外のすごい力を持っているらしいという話だけ。
以前聞いた話では、冬馬先輩の父親が深く関わっていると言っていたけど……。

「あの、冬馬先輩の先天的な力って……一郎くんと修二くんみたいな相手の能力を見ることでは無いよね?」
「はい。僕は鏡ではないので見ることは出来ません」

私に向き直った冬馬先輩がようやく答えてくれる。
さっきまで辛そうにしていた体調もいつの間にか良くなっているようだ。

(カガミ……そういえば前に一郎くんが……)

夜の児童公園で言った意味深な言葉を思い出す。

「前に一郎くんが、鏡が割れていては使い物にならないって言っていたよ」
「……そうですか」
「鏡って何? 一郎くんは何も教えてくれなかったけど、特別なことに使う道具とか?」
「そうですね……鏡というのは恐らく、彼自身を指した言葉だと思います」
「一郎くん自身が鏡なの?」
「はい。正確には、鏡と言う名の神の力に取り付かれ、今もまだ束縛されたままの彼の魂――を言っているのだと思われます」
「…………」

(冬馬先輩の言っている意味がよく分らないよ)

唐突な先輩の説明では、次の問い言葉すら簡単に出てこない。
もう少し噛み砕いて教えてもらえると良いのだけど、今はそんな贅沢も言っていられないのだろう。

①「なら先輩は……剣ってこと?」
②「鏡って神様の力なの?」
「じゃあ冬馬先輩の先天的な力は具体的に何ですか?」

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