591
③「そういう隆の料理の腕はどうなのよ?」

隆の言う事は正しいのかもしれないけれど。
なんとなく釈然としないものを感じてそう問い掛けると、隆はふふんと笑った。

「人並み程度には。まあ、お前よりはまっとうな料理作れるぜ」
「まっとうなって……さっきから随分な言い様じゃない」
「だから言ってるだろ。料理が上手くなりたいんならマズイものを作ったらマズイって気付かなきゃ駄目だ。お前のとこの春樹やおばさんみたいに黙ってちゃ愛菜はわからないだろ」

散々な言われように言いたい事もあったはずなのに、隆の言葉に私は思わず口をつぐんでしまった。
(春樹も、お義母さんも……私に気を使って何も言わなかったのかな?)
「そう、だね。……我慢してマズイもの食べさせるなんて、可哀想だよね」
「愛菜?……やれやれ」
押し黙ってしまった私の前で、隆は困ったような顔で溜息をついた。

「春樹やおばさんに関しては確かにそうかもしれないけどな。その点、俺なら大丈夫だ。さっきから言ってるけど、お前にマズイ物喰わされたらちゃんとマズイって言ってやる」
下がり気味だった視線をゆっくり上げると、真っ直ぐにこちらを見る隆と目があった。
「だから、お前は遠慮無く俺を実験台にすれば良い。俺の胃腸は頑丈なんだ、ちょっとやそっとじゃびくともしねえよ」
「隆……ありがとう」
隆なりの優しさが嬉しくて、素直にお礼を言うと隆は照れたようにそっぽを向いてしまった。
「別に。礼を言われるほどのことでもないだろ。……俺自身のためでもあるし」
「? そうなの? 隆ってば食いしん坊なんだね」
「……」
「隆?」
「あーもう良いよ、そういう事で!」
隆はどことなく不機嫌そうにお皿に残っていた八宝菜を口に詰め込んだ。
(? 変な隆)


それから二人で黙々と食事をとっていると、丁度会話の切れるタイミングを計ったかのように携帯が鳴った。

「おい愛菜、誰からだ?」


ディスプレイに映し出された番号は……
①周防さんの携帯の番号 (周防)
②一郎くんの携帯の番号 (一郎)
③修二くんの携帯の番号(修二)
④春樹の携帯の番号(春樹)
⑤電場ボックスからの着信(冬馬)
⑥未登録の携帯の番号(美波)
⑦固定電話の番号(あれば近藤先生)
⑧非通知での着信(592の選択に続く)

592
⑤電場ボックスからの着信(冬馬)

「電話ボックスからみたい……誰だろう?」
誰か電池が切れて、仕方なく電話ボックスからかけてきたのだろうか?
そう思いながら、通話ボタンを押す。

「もしもし?」
「………」
出てみたが、相手の返事が無い。

「? もしもし? どちら様ですか?」
しばらく待つがやはり返事が無い。

「どうした? いたずら電話か?」
こちらの様子に隆が聞いてくる。

「そう、なのかな?」
電話を切ろうかと思ったそのとき、抑揚の無い声が聞こえてきた。

「……愛菜」
「え? もしかして、冬馬先輩?」
「はい」
なるほど冬馬先輩なら携帯電話をもっていなさそうだ。
それ以前に携帯番号を教えた記憶も無いけれど……。

(周防さんに聞いたのかな?)
「愛菜、心を落ち着けてください」
「え?」
「あなたの心が乱れていて、チューニングが出来ないのです」
「あ……」
そうだ冬馬先輩なら電話なんか使わなくても、私に話かけて来る事は簡単なはずなのだ。
それが出来ないほど、私は春樹が出て行ったことに動揺していたということか。

「ご、ごめんなさい」
「いいえ……」
そのまま、先輩は黙り込んでしまう。
そしてまもなくビーという音と共に、回線が切れてしまった。

「あ、切れた」
「用事はなんだったんだ?」
「それが、聞く前に切れちゃって……」
「なんだそりゃ?」
隆が訳が分からないと言う風に、首をかしげる。

(何か用事があったんだよね?)
でなければ電話なんてかけてこないだろう。

(でも、先輩が電話なんて……あ、隆がいるから?)
冬馬先輩ならチューニングがうまくいかなければ、電話よりも先にこの家へやってきそうだ。
けれど冬馬先輩は私が親しくしている人がいるところには、あまり自主的に現れない。
だいたいが私と冬馬先輩が居るところへ、誰かがやってくるという感じだった気がする。
昨日も結局すぐに帰ってしまった。

(案外家の近くに居たりして……)

①チューニングをあわせてみる
②また電話がかかってくるのを待つ
③カーテンを開けて庭を見る

593
③カーテンを開けて庭を見る

なんとなく気になった私は、居間のカーテンを開けて庭を見た。
すると庭の先、道路を挟んだ電柱に一瞬だけ人影を見つた気がした。

(もしかして……冬馬先輩かな)

冬馬先輩だったら、春樹が出て行った事について詳しく知っているかもしれない。
そう思うと、居ても立ってもいられなくなる。

「私、少し外に行ってくる」
「待てよ。何言ってんだ、こんな時に」

出て行こうとする私の腕を、隆は素早く掴んだ。
私はその手を振りほどこうとしたけど、力ではとても敵わない。
諦めた私を見て、隆は掴んだ手を離すと静かに口を開いた。

「今、お前が出て行っておばさんはどうするんだ。わかってるのか」
「……だけど、このままじゃ」
「焦る気持ちはわかるが、美波って人が言っていただろう。今は待つしかないんだよ」
「でも……」
「それにさっきの電話で春樹の無事は確認できたんだ。明日になったら動きがあるかもしれないしな」

きっと隆は私を安心させようとしたのだろう。
けど、さっきの春樹の様子からは明日何事も無かったように帰ってくるとは思えなかった。

「……そうだよね、隆の言うとおりだよ」
「分ってくれれば良いんだ」
「私、疲れたし寝るよ」
「あ、ああ……」

隆が残っている居間の扉を閉めて、私は自室へと戻る。
チハルは規則正しい寝息を立てて、ベッドで休んでいる。
起こさないように部屋の電気を点けず、もう一度窓際に立ってカーテンを開ける。
すると私に気づいていないのか、人影がこちらの様子を伺うように立っていた。

(やっぱり誰か居る。どうしよう……)

私は……
①チューニングをあわせてみる
②外に出る
③チハルを起こす

594
①チューニングをあわせてみる

外に居るのが冬馬先輩かはここからだと確信が出来ない。
昨日襲撃があったばかりだし組織に関係する人かもしれないのだ。

(隆が止めてくれて良かったかも…)
少し隆に感謝しつつカーテンを閉めて、チハルを起こさないようにそっとベッドに座る。

(落ち着いて落ち着いて……)
春樹の事は心配だけれど、もしかしたら冬馬先輩がなにか知っているかもしれない。
冬馬先輩がわざわざ連絡して来たのだから、春樹のことじゃなくてもきっと大切な事だろう。
冬馬先輩を思い浮かべながら意識を集中する。

(冬馬先輩、聞こえますか? 冬馬先輩?)
しばらく呼びかけていると、最近なじんできた声が聞こえてきた。

(愛菜、聞こえます)
(冬馬先輩、よかった。さっきは途中で電話が切れちゃったから…。ところで、何かあったんですか?)
(はい……)
先輩が頷くような気配がして、冬馬先輩はぽつぽつと話し出す。

(今日、学校で活動している主流派の者が、何者かに意識を操作されました)
(それって……)
今日の放送室であったことを思い出す。
一郎君と修二君が組織の主流派と決別する事を宣言した時の事だろう。

(組織はすぐにそれに気づき、なんらかの行動を開始したようです)
冬馬先輩の言葉のとおりなら、あのとき一郎君と修二君が行動を起こさなければ春樹は出て行かなかったと言うことだろうか……?

(春樹が出て行ったのも、その事に関係してるんですね?)
(弟さんが出ていったのですか?)
(あ、うん……春樹の本当のお父さんが迎えに来て……)
そういえば、冬馬先輩には春樹が本当の弟ではないことを話していない。

(春樹のお父さんは高村なの……私も詳しくは知らないけど……。
今周防さんが調べてくれてる……)
(周防が?)
冬馬先輩の様子から、春樹の消息については何も知らないのだと推測する。

(うん、今日お義母さんに聞いて知ったんだけど、春樹と周防さんて従兄弟なんだって)
(……そうですか。では、弟さんの本当の父親は高村博信ですね)
(高村……博信……?)
突然出てきた名前に驚くが、冬馬先輩は組織に居たし周防さんとも親しくしているようだから,その辺りは詳しいのかもしれない。
冬馬先輩なら組織の場所も知っているだろう。
そんな事を考えているとふと、今冬馬先輩はどこに居るのか気になった。
さっきの人影は冬馬先輩だろうか?

①高村博信について聞く
②春樹が連れて行かれた場所に心当たりが無いか聞く
③今、冬馬がどこに居るか聞く

595
①高村博信について聞く

(高村博信……?春樹のお父さん……?)
(……はい)

春樹の口からほとんど語られたことの無い父親の存在。
私でも名前を聞くのは初めてのことだった。
お義母さんや春樹を傷つけてきた人とは一体どんな人物なんだろう。
何より、この騒動にも深く関わっているのは間違いない。

(冬馬先輩、高村博信について教えて)
(わかりました。ですが周防から聞いた話ですので、知らない事もあります)
(うん。構わないよ)

私は姿勢を正して、より意識を集中させた。
すると、またぽつぽつと冬馬先輩が話し出した。

(高村博信……高村研究所の所長をしている男です)
(やっぱりそうなんだ)
(……心当たりがあったんですか?)
(うん、なんとなくだけどね)
(………………)
(ごめん、話の腰を折って。続きを聞かせて欲しいな)
(はい)

冬馬先輩の頷くような気配まで伝わってきた気がする。
もしかしたら、少しずつ私の力も強くなっているのかもしれない。

(彼は所長以外にも、この近くの総合病院で院長を兼任していたそうです。
しかし三年前、研究に専念したいという理由で院長は退いています)
(この近くの病院……それって公園のそばにある総合病院のことかな)
(はい、そうです)
(他は? 他に何か知ってる?)
(高村博信の家族構成です)
(それも教えて)
(現在、妻はいません。今は、秋人……春樹さんの兄と二人で屋敷に暮らしているそうです)
(秋人?)

また知らない名前が出てきた。
春樹のお父さんの息子で春樹の兄である秋人という名の人物。
だけど、春樹からもお義母さんからもその存在を聞かされた事は一度も無い。

私は……
①秋人について聞く
②春樹が連れて行かれた場所に心当たりが無いか聞く
③夜も遅いし話を終える

596
①秋人について聞く

(春樹にお兄さんがいるなんて……お義母さんも春樹も一言も……)
(兄と言っても、母親が違います。春樹さんと4つ年が離れています)
4つ違いの春樹のお兄さん、という言葉に不意に春樹が家に来たばかり頃の事を思い出す。

(もしかして……、春樹のお兄さんって眼鏡をかけた人ですか)
(はい、確かに眼鏡を着用しています。会った事があるのですか?)
(一度だけ……)
そう5年前、春樹が家出をするのではないかと勘違いしてついて行った時、その帰りにそれらしい人に会っている。
確かにあの時、春樹はあの人を「兄さん」と呼んでいた。
その人は春樹が「兄のように慕ってくれている」といっていたけれど……。
とても優しそうな人だったと記憶している。
今思うと春樹と仲よくなれたのは、ミケとあのお兄さんのおかげのような気さえする。
そういえばミケはどうしただろう?
私は当然お兄さんの連絡先は知らないし、春樹はあの後お兄さんについて話す事はなかった。
うやむやのまま、ミケはあのお兄さんに預けたままの状態になっている。
もう5年だからミケも大分年を取ったのではないだろうか?
思わず過去に浸りそうになって、あわてて冬馬先輩に意識を戻す。

(とても優しそうな人だったよ)
(そうですか……?)
冬馬先輩が少し不思議に思う気配がする。

(? どうかしたの?)
(いいえ、彼もあなたには優しいのかもしれません)
(え? 春樹にも優しかったけど……)
どうやら私と冬馬先輩の間には、秋人さんに対するイメージに隔たりがあるようだ。

とりあえず、高村を名乗っているという事は、秋人さんは力のある能力者ということだろう。
先輩に聞いてみると、頷く気配がする。

(彼はとても力の強い能力者です、三年前から急に力が伸び始めました)
(そんな事ってあるんだ……)
(その為か、それとも他に理由があるのか分かりませんが、三年前に博信は研究所の実権を秋人に一任しています)
(え? じゃあ、今は秋人さんが研究所の所長なんですか?)
(研究所の所長は、名ばかりですが今も博信です)
実権を握っているのが秋人なら、私を狙っているのはあの優しかったお兄さんなのだろうか?
けれど春樹を連れて行ったのは父親の博信だ。
結局、組織の誰が何を目的に私を狙っているのかわからないから対策を打つ事ができないのだ。
ため息をついて時計を見ると、いつも寝る時間をすぎている。

①私を狙っているのは誰なのか聞く
②私を狙う目的を聞く
③時間が時間なので今日はもう寝る

597
②私を狙う目的を聞く

とにかく、どうして私を狙うのかその目的がはっきりさせないことにはいけない。
使えない予知夢が必要なのだろうか。
それともまた別の目的があるのだろうか。

(最後に教えて。春樹のお父さんやお兄さんが私を狙っている目的は何?)
(………)
(知ってるのなら教えて)
(組織の目的はあなたの力です。ですかそれもまた、時によって形を変えます)
(時よって……変わっていく?)
(ですから僕がお伝えできるのは、今迄起こった出来事とその経緯のみです)
(その言葉、契約の時にも言っていたよね)
(……はい)
(力って言われても私なんて予知夢だけで、冬馬先輩や周防さんたちに比べたら全然力が無いじゃない)
(それは……あなたの思い込みです)
(……思い込み? それ、前にも言われた事があるよ。ねぇ、私の思い込みってどういう事?)
(……………)
(教えて、私は一体何を思い込んでいるの?)
(……………)
(お願い、答えてよ)
(……………)
(冬馬先輩も一郎くんみたいに、肝心な話になると何も教えてくれないんだね)
(……………)

私に力が無かったら、春樹は出て行かなかったかもしれない。
この前の周防さんだって危ない目に会わせずに済んだかもしれない。
予知夢という使えない力があるばっかりに、たくさんの人たちが危険にさらされていく。

カーテンをめくりながら外を見ると、まだ人影が立っている。
きっと、組織が監視用に送り込んだ誰かかもしれない。
それだけ、私のこの力が魅力的である証拠だ。
私にとって迷惑なものでも、組織にとっては喉から手が出るほど欲しいものなのだろう。

(そんなに私の力が欲しいなら、勝手に持って行けばいいよ……)
(………)
(取り合いでも奪い合いでも、好きにすればいいじゃない)
(…………)
(もう私、疲れたよ)
(…………愛菜)

冬馬先輩にしては珍しく、焦りや不安や悲しみの感情が心の交信を通して直接伝わってきた。

私は……
①(だから、ハッキリさせたいんだ)
②(なんてね。冗談だよ、本気にしないで)
③(私、もう寝るから)

598
①(だから、ハッキリさせたいんだ)

(申し訳ありません、僕はその答えを伝える事ができません)
(どうして!?)
(愛菜のお母様との約束です)
(お母さん……?)
唐突に出てきたお母さんという言葉に困惑する。

(けれど、これはそのままヒントでもあります。あとは愛菜、あなたが自分で思い出してください)
(思い出す……? お母さんに関係するなにか……?)
(…………)
(これも答えられないんだ)
けれど、答えがない事が答えなのだろう。
10年前に出て行ったお母さん。
お母さんと過ごした記憶はもうあいまいで、はっきり覚えているものは少ない。
美波さんの話では、私を守るために冬馬先輩を助ける手伝いをしたという。
そのお母さんが、冬馬先輩に口止めしている。

(……ヒントがもらえただけでも一歩前進なのかも)
今までなんの手がかりもなかった。それに比べたら小さなヒントがあるだけでもマシというものだ。
それが望んだ答えとはかけ離れていても。

(……冬馬先輩ヒント、ありがとうございました)
(……いいえ)
(今日はもう寝ますね。おやすみなさい)
通信を終えようとすると、愛菜、と冬馬先輩がかすかに引き止める声がした。

(愛菜、僕は先を知る事が出来ません。ですからあなたがどんな答えを出し、どんな力を得るのか答える事が出来ません。
ですがどんな事があっても、僕があなたをまもります。お母様との約束や、契約のためだけではなく、僕がそうしたいと思うから……。
引き止めてすみませんでした。……おやすみなさい)
そういうと、冬馬先輩との通信が途切れた。
私はため息をついて、チハルを起こさないようにベッドに入る。

「お母さん、か」
目を閉じるとすぐに睡魔がやってきた。




いつの間にか濃い霧の中を歩いていた。

(夢、かな?)
しばらく歩くが、どこにもたどり着かない。
だんだん不安になってきて少し早足であるく。
どれくらい歩いたか、唐突に目の前に人の影が見えた。

「あ、あの! すみません」
声をかけると、その人は振り返ったようだ。
慌てて駆け寄ってみると、その人は……。

①お母さん
②眼鏡の男の人
③初老の男性

599
①お母さん

(なんでそんなに悲しそうなの?)
そう思っていると、はらはらとお母さんの頬に涙が伝う。

(なんで泣くの……?)
「ごめんね愛菜」
(なんで謝るの?)
「普通に産んであげられなくてごめんね」
(それって、どういうこと……?)
お母さんは私の問いには答えず、そっと私を抱きしめた。
それで、私がいつの間にか小さな子供になっていることに気づく。

「おかあさん」
自分は話していないのに声がする。

(もしかしてこれは……私の過去?)
「なかないで、おかあさん。だいじょうぶだよ」
子供の頃の自分が手を伸ばしてお母さんを抱きしめる。

「おかあさんがいやなら、もうすてる。いらないから」
「愛菜……あなたは優しい子ね」
「でも、おかあさんいなくなるの」
「愛菜?」
「おかあさん、あいなをおいていっちゃうの。いっちゃやだよ、おかあさん」
「そう……わたしは愛菜を置いていくのね?」
「いやだ、おいていかないで」
泣き出した私をなだめるようにお母さんは私を抱き上げる。

「大丈夫よ、愛菜。おいて行ったりしないわ。……まだね」
「ほんとう?」
「ええ、本当よ。ねぇ愛菜、私はいつあなたをおいていくの?」
お母さんの言葉に、小さな私は首を傾げる。

「わかんない……、たかしにくまさんもらうの。そのあと……」
「そうなの……。ね、愛菜はまだ隆くんにくまさんをもらっていないでしょう?」
「うん」
こっくりと頷いた私に、お母さんは微笑んだ。

「だから、おいていったりしないわよ」
(そうか、お母さんが出て行ったのは私がそういったからなんだ)

「それじゃあ、愛菜約束よ。もう、先のことを見ないこと。もし見てしまっても忘れること」
「うん。わかった!」
「愛菜は良い子ね、それじゃあもう忘れてしまいましょう、愛菜」

優しく背中を撫でるお母さんに小さな私はすぐにうとうとと眠り始める。

私は……
①目覚める
②先を見る
③考える

600
②先を見る

私が眠ってしまうと、元の私は少し離れた位置で二人を見守り始める。

お母さんは眠った私をベッドに寝かせると、ベッドの端に腰掛けて静かに私の頭をなでている。
私が寝入った頃、お母さんが口を開いた。

「愛菜、私はあなたを置いてどこへ行くの?」
最初独り言かと思ったが、眠っている私が口を開く。

「けんきゅうじょ」
「研究所……? そこで何をするの?」
「とうませんぱいを助けるの」
「とうま先輩?」
「あいなをまもってくれるひと」
「その人が愛菜を守るのね?」
「うん」
「そう、そうなの」
お母さんは静かに頷いて、立ち上がる。

「まず、研究所について調べなくてはね」
強い意思をもった顔で、お母さんは歩き出す。
私が見た事のないとても強い顔。
厳しい所もあったけれど、いつも穏やかで優しかったお母さんとは全く違う。
いつの間にかまた周りは霧に囲まれている。
私は立ちつくしたまま、今見た事を反芻すた。

(お母さんが出て行ったのは、私がそう言ったから?
研究所へ行ったのも、冬馬先輩を助けたのも私がそういったから……?)
そしてそれを忘れていたのは、私がお母さんとそう約束したから。
思い出してくださいと言った冬馬先輩の言葉が蘇る。

(夢の事は私が自分で思い出さないようにしていた……)
少なくとも小さい頃は夢で先を見る力があったのだ。

(ううん、今もあるんだよね)
ただそれを忘れているだけ。
もしかしたら今も目が覚めたらこの事を忘れているかもしれない。
そうならないためにはどうしたらいいだろう……?

①冬馬先輩に相談する
②ここに鍵になりそうなものがないか探す
③忘れないかもしれないから起きてみる

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