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④このまま巫女として一生を終える内容

壱与の悲痛な叫び声で、女官や近衛府たちが一斉に舞台上に出てくる。
死を迎えた帝を取り囲むようにして、臣下の皆がその死を悼んだ。

壱与は帝の亡骸にそっと触れると、自分の首にかけていた緋色の勾玉を枕元に置いて呟く。

「私は帝から多く喜びや苦しみを頂きました。この勾玉からも、たくさんの勇気や元気をもらいました。
黄泉路で迷われぬよう、壱与だと思ってこの勾玉をお持ちください」

壱与役の香織ちゃんの演技もあって、場内からすすり泣く声さえ聞こえてきた。

場内全体が静まり返る中、泣いていた壱与は涙を拭いてスッと立ち上がる。
その姿に、すでに亡骸になった帝を取り囲む臣下達が注目した。

「悲しい事ですが、帝が御隠れになられました」

その言葉で、臣下たちは下を向く。

「けれど、嘆いてばかりもいられません。
私が帝から今後の政に際して、伝言を仰せつかっています。
今こそ、この悲しみを糧に皆で前に進みましょう」

香織ちゃんは数歩み出ると、手にした竹簡を開いて読み上げる。

「次の帝は姪御であられる皇女を擁立するようにとご遺言を残されました。
また帝の陵墓への殉死者を一人も出さぬよう配慮せよとの事でした。
これは帝直々の勅命です。異議のあるものは神への謀反と心得なさい」

壱与の有無を言わせぬ言い方に、臣下たちは言葉を無くす。
その中で、一人の臣下が壱与に向かって来ると、ひれ伏しながら言った。

「皇女様が次期帝と申し上げられましたが、壱与様はどうなさるおつもりですか。
大連も居ない今、政を仕切る者は壱与様こそ相応しいと皆思っておるのです」

臣下の者達はみな、壱与の摂政を望んでいる。
しかし、壱与は首を横に振って口を開いた。

「私は巫女です。神の依り代としての役目があります。
次期巫女の娘子と共に伊勢に赴き、帝の御霊を弔って生きていきます。
亡き帝が選ばれた皇女様を皆で盛り上げ、助けてあげてください」

そう言って、香織ちゃんは舞台の裾へと消えていく。
そして舞台は暗転し、私は最後のナレーションを読み上げる。

「壱与が手にしていた帝の遺言であった竹簡、実は全くの白紙でした。
争いの無い国を望んでいた帝の願いを受け、壱与は臣下の皆にはったりを見せたのです。
壱与の一世一代の嘘は、醜い王位争いを避ける結果となります。
そして、のちの帝たちによって、中央政権は確立されていくのです。
壱与は伊勢に赴き、その一生を敵国であった大和の国の為に捧げました。
それは斎宮となって、のちの世にも引き継がれていくことになります。

――さて、これでこの物語は終わりです。
遠い遠い昔の真実は、今となっては誰も知ることは出来ません。
ですが彼女達の生き方は現代の私達にも通じる何かを教えてくれる、そう思えてならないのです」

私はすべてを読み終えて……
①舞台を見る
②客席を見る
③自分の手元を見る

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①舞台を見る

ナレーションの間暗転していた舞台に明かりが戻り、出演者が一列に並んでいっせいにお辞儀をする。
客席からは出演者たちに惜しみない拍手が送られている。

(よかった、大成功だよね)
時計を見ると予定時間より3分ほどオーバーしているが、この後の片付けで取り戻せる範囲内だ。
ほっと息をついていると、客席のざわめきがおおきくなった。
時計から舞台に視線を戻すと、香織ちゃんだけがこちらに向かって歩いてくる。

「あれ? みんなは?」
「なに言ってんの、一番大事な人が挨拶して無いじゃない」
「え? だれ?」
私は周りを見回すが、同じ音響の子が隣にいるだけだ。
香織ちゃんは私の様子に呆れたように肩をすくめると、びしっと私の顔の前に人差し指を突き出してくる。

「もちろん愛菜、あんたよ」
「え!? 私はただのナレーションだよ」
「ばっかねぇ、この舞台の脚本書いたのは誰なの?」
「……あ、で、でも……」
「デモもテロもない、さっさと来なさい」
「ええええ!?」
予定外のことにうろたえる私をの手を香織ちゃんは問答無用とばかりに取ると、舞台の上に引っ張って行こうとする。

「ちょ、ちょっと、香織ちゃん!」
なんとか足を踏ん張ってこらえようとする。
すると今度は武士くんもやってきた。

「大堂さん、早くこないと次ぎのプログラムの人に迷惑がかかるよ?」
ちょっと困った顔だけれど、内容は早く舞台に上がれと言っているようなものだ。

「ほらほら、観念して挨拶しなさい」
「そ、そんなぁ……」

どうしよう
①舞台に上がる
②断固拒否
③いっそ裏方全員道連れ

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①舞台に上がる

香織ちゃんに引きずられるようにして舞台に上がっていく。

「わ、私……絶対に無理だから」
「駄目よ。ほら、しっかり歩いて」
「本当に無理なんだよ」
「つべこべ言わない。一度壇上に上がってしまえば、なんとかなるものなんだから!」
「止めて、止めてって」
「ほら、マイク。観客のみなさんにしっかり挨拶するのよ」

舞台の中央まで連れて行かれ、マイクを渡された。
足は震え、なかなか最初の言葉が出てこない。
私は生唾をゴクリと飲み込んで、恐る恐る顔を上げ大勢の観客席を見た。

(あ……)

客席からは暖かい拍手が送られていた。
私達にとっては大成功だったけど、限られた期間で作った学生の素人劇でもある。
それでも、その拍手から大勢の人が認めてくれたと感じることができた。

(どうしてだろう。体の震えが収まっていく)

マイクをしっかりと握り締めて、私は壇上の中央に立った。

「最後まで私達の劇を観ていただき、ありがとうございます。
私はこの脚本を書かせて頂いた、大堂愛菜といいます。
ここに居る出演者だけでなく、照明、大道具、小道具、衣装、音響とクラスのみんなで完成させてきました。
クラス全員が作り上げたこの劇が、皆さんの心に少しでも残れば嬉しいです。
本当に……本当にありがとうございました」

私は深々と客席に向かって頭を下げる。
香織ちゃん、武志くんや藻部くん、他の出演者全員が礼をする。
こうして私達で作り上げてきた演劇が幕を閉じた。


余韻に浸る間もなく、片付けを大急ぎで済ませる。
なんとか次の舞台には間に合い、私たちはホッとひと息ついた。
クラスのみんなも一段落ついたのか、思い思いの行動をとり始めている。

私は……
①後片付けに専念する
②香織ちゃんを探す
③千春たちに会いに行く

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②香織ちゃんを探す

舞台上を片付けている間に着替えを済ませた香織ちゃんが、こちらに歩いて来るのが見えた。

「香織ちゃん、お疲れ様!」
「愛菜もお疲れ様、あー、無事終わって良かったわ。セリフど忘れしたらどうしようかと思ったけど」
「香織ちゃんなら大丈夫だって言ったでしょ?」
「ふふ、そうね。うーん、あの衣装肩が凝るのよね」
そう言いながら伸びをして、降ろしかけた片腕を私の肩に回す。
そうして、内緒話するように私の耳元に口を寄せた。

「ね、このまま片付けサボっちゃお」
「え!? ダメだよ、皆に迷惑かかっちゃう」
「大丈夫よ、本格的な片付けは明日だからあとは隅っこに寄せて置くだけだし、人が多すぎても邪魔になるだけだって。ね、ほら行こう」
肩に腕を回されたまま、香織ちゃんが歩き出したので引きずられるようにして、客席へ出る。
すると、すぐ声をかけられた。

「ねぇちゃん」
「あ、千春」
「千春くん、来てたんだね。こんにちは」
「香織お姉さんこんにちは、主役の巫女さん役すごくきれいでした」
「ふふ、ありがとう」
千春の言葉に香織ちゃんは少しだけ照れたように笑う。
そしてふと千春の後に視線を投げて、驚いたように目を丸くした。

「隆、隆じゃないの。もう身体はいいの?」
「おー、この通りだ」
「よかったじゃない。文化祭見に来られて。この香織様の名演技を拝めたんだから」
「なにいってんだ、お前の演技なんかどうでもいいに決まってるだろ」
「ま、そうよね。アンタの目的は別だろうし」
「おい!」
なぜか慌てたような隆に、香織ちゃんは意味ありげに笑ってみせる。

「あの子、巫女の壱与の役やった子だよね。愛菜ちゃんと仲良いんだ?」
不意に後から話しかけられて、振り返ると修くんが立っていた。
その隣には春樹くんもいる。

「香織ちゃん? 香織ちゃんは私の親友だよ」
「へぇ、舞台だとおとなしそうな感じだったけど、実際は気が強そうだなあ」
その声が聞こえたのか、振り返った香織ちゃんが私の横に立つ修くんを見てひょいと眉を上げた。

「害虫発見、愛菜こっちにきなさい」
「え?」
手を引っ張られて香織ちゃんにぎゅっと抱き締められる。

「愛菜と付き合う人は、私のお眼鏡にかなうヤツじゃないとダメよ!十把一絡げの男になんて可愛い愛菜を渡せないわ!」
「もう香織ちゃんたら、修くんが私なんて……そんなわけ無いじゃない」
「ねぇちゃん…たぶん修さんも、香織お姉さんも本気だから……」
千春がなにか呟いているが、騒がしい体育館の中では良く聞き取れなかった。

「あの、立ち話もなんだし、移動しませんか?」
「そうだね、校内も案内するって約束だったし」
「そうなの?じゃあ私も付き合うわ」
このまま何時までも続きそうな会話に、春樹くんが提案してくる。
私が頷くと、香織ちゃんもは当然のように言った。

えっと……
①みんなに行きたい所を聞いてみる
②順番に回る
③そういえば、周防さんたちは……?

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①みんなに行きたい所を聞いてみる

私は放送委員で配られた、模擬出店やイベントの書かれた用紙をポケットから取り出した。
各クラスや文化部の出し物に対してのPRまで書かれている。
出店案内の為に作成されたものだったけど、一覧表になって見やすいのは一郎くんが作ったからだろう。

とりあえず中庭のベンチに座ると、私はその紙をみんなに見せる。

「これ参考になるかなと思って。沢山あるけどみんなはどこを回りたい?」
「おっ! 結構いろんな展示もあるんだな」
「まぁね。うちの学校は盛大にやるんだよ」
「へぇ、自由な校風ってヤツか。俺もこの学校にお前の後輩として入っても面白そうだな」
「いいよ。私が先輩として厳しーく教えてあげるから」

隆と話している内に、みんな行きたい所が決まってきたようだ。
紙を覗き込みながら、各自があちこち指差し始める。

「手芸部がぬいぐるみ展示してるって。ねぇ、愛菜。これ見に行こうよ」
かわいい物に目が無い香織ちゃんは私の腕を掴みながら言った。

「ここ、バザーって書いてある。もしかしてゲームソフトも売ってるのかな……」
千春は携帯ゲーム機のソフト目当てに、バザーを回ってみたいらしい。

「俺はお化け屋敷ってのに行くよ。もちろん愛菜ちゃんとペア組んでだけどね」
修くんはお化け屋敷に行ってみたいようだ。

「このクッキング部の手作りクッキー体験って、すごく興味があります」
春樹くんはクッキーを焼いてみたいと言っている。

「よし。俺はこの科学部のオモシロ実験ってのがいいぜ」
最後に隆が科学部に行きたいと言った。

全部回るのは時間的に無理だ。
さて、どれにしようかな……

①ぬいぐるみ展示
②バザー
③お化け屋敷
④手作りクッキー体験
⑤科学オモシロ実験

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②バザー

「うーん、じゃあ、まずバザーに行こうか」
「え、ねぇちゃんいいの?」
千春は私の言葉にちょっと驚いたように顔を上げた。
まさか自分の案が採用されるとは思ってなかったようだ。

「うん、だってバザーは早く行かないとほしいのが無くなっちゃうじゃない」
他の所は展示だから後から行っても無くなったりはしない。
手作りクッキー体験は焼く時間の関係か開始時間が決まっていて、次の回までにまだ余裕がある。

「それに目当てのものが無ければすぐに次に行けるでしょ?」
「そりゃそうだけど……」
千春は伺うように他の人たちを見ている。
その視線に気付いたのか、春樹くんが少し笑って言った。

「チハル…くん、そんなに俺たちの事を気にしなくても良いよ。少なくとも俺の行きたいクッキー体験はまだ次まで時間があるし」
「そうそう、そんなに気にしなくても良いのよ?バザーなら、可愛いアクセとかあるかも」
「ま、ここで話してる時間が惜しいな。さっさとバザーに行こうぜ」
春樹くんに続いて香織ちゃんが千春に言いながら目を輝かせ、隆は歩き出す。
修くんは何も言わないが、気を使う千春を見て笑っている所を見ると、異議はないらしい。

「ところで、こっちで良いんだよな?」
「あ、うん。そこの廊下曲がって……階段だけど、隆大丈夫?」
「余裕」
わいわい言いながらみんなでバザーをやっている教室までやってくると、それなりに人が居てにぎわっている。

「あ、ゲームコーナー発見!」
千春はいち早く目当てのコーナーを見つけてそちらへ向かった。
まわりのの商品を見ながらついて行こうとして、すれ違いざまに人にぶつかってしまう。

「あ、すみません」
慌てて謝って顔をあげた私は思わず青くなった。
私がぶつかったのは体つきの良い短髪の男の人で、やけに派手なシャツとだぼっとしたズボンをはいていた。
どう見ても普通の一般人には見えない。
ぶつかった男の人は内心慌てる私を見て、ニッと笑って見せた。
そうすると最初の怖いイメージが一転し、気さくなお兄さんに変わる。

「おう、気を付けろよ」
「熊谷、なにをしてる?」
男の人の声に重なるように、もう一つの声がかけられる。

それは……
①周防さん
②大和先輩
③近藤先生

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①周防さん

「あっ、周防さん」

声の方を見ると、周防さんと綾さんがバザーの教室に来ていた。
周防さんはさっきの派手なシャツを着た男の人をドンと突き飛ばしながら、私達に近づいてきた。

「愛菜ちゃんと……巫女役の子だね。演劇、すごく良かったよ。感動した」
「あ、ありがとうございます」

私と香織ちゃんは観てくれた周防さんに照れながらお礼を言った。
すると、周防さんの後ろからさっきの柄シャツの人が怒った顔でやってくる。

「おい、周防! 俺を突き飛ばすとはどういう事だ」
「相変わらず、お前はうるさい奴だな」
「うるさいとは何だ! テメーは何様のつもりだっての」
「えっと、俺様?」
「ふざけてんのか。シメるぞ、コラ」

周防さんと柄シャツの人の喧嘩を知りながら、隣でニコニコと笑っている綾さんに私は声を掛ける。

「綾さん。あの熊谷って人と周防さんって仲が悪いんですか?」
「違うわよ。二人はとっても仲良しなの」
「仲良し……私には喧嘩しているように聞こえますけど」
「喧嘩友達って感じかしら。あの二人は遠い親戚同士で、ああやっていつもふざけ合っているのよ」

隣の綾さんが笑っているし、きっと平気なんだろう。
安心した私とは対照的に、香織ちゃんはこの場を離れたがっているようだ。
私の腕をぐいぐいと引っ張りながら、耳打ちをしてくる。

「あのチンピラは愛菜の知り合い? 駄目よ、知り合いは選ばなくちゃ」
「私も初対面だけど……周防さんの親戚らしいし、大丈夫だよ」
「全く……。だからアンタは放っておけないの。さぁ、ここを離れるわよ」

私は香織ちゃんに引っ張られながら、綾さんに挨拶をする。
そして、またバザー会場の入り口まで戻ってきた。
香織ちゃんは気を取り直すように、かわいいアクセサリーを探し始めたようだ。

私は……
①千春を探す
②隆を探す
③春樹くんを探す
④修くんを探す

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①千春を探す

さっきゲームコーナーへ向かっていたけれど、欲しいゲームはあったのだろうか?
ゲームコーナーへ行くと千春が品物を物色していた。

「千春、欲しいゲームはあったの?」
「あ、ねぇちゃん。うん、あったんだけどどっちにするか悩んでるんだ」
千春の手元を覗いて見ると同じ金額の値札がついている。
悩む千春の後ろで所在無く教室内を眺めていると、ふと同じように教室を眺めていた男の子と目が合う。
お昼に食堂で会った大和先輩だ。

「あ」
向こうも私に気づいたようでこちらに近づいて来る。

「食堂はもう終わりですか?」
「いえ、丁度休憩時間なんです」
近づいてきた大和先輩に会釈をしながら聞くと、小さく首を振って答える。
そしてゲームを持って悩んでいる千春に気づき、私と同じように覗きこんだ。
そして千春が左手に持っているゲームを指差して言う。

「こっちのゲームを買ったほうが良いですよ」
「え?」
急に話しかけられた千春は驚いたように、大和先輩を振り仰ぐ。

「あ、食堂の兄ちゃん」
「はい」
「……どうしてこっち?」
「もう一つの方は、中古でもっと安く買えます。こっちはなかなか出回らないようなので、中古屋だともっと高いですよ」
「へぇ、そうなんだ。じゃこっちにしよう。兄ちゃんありがとう」
千春は大和先輩の言葉に一つを元に戻して、レジへ向かう。

「先輩、ゲーム好きなんですか?」
「いいえ」
「そうなんですか?でも、詳しいですね」
「ああ、たまたま家の近くに中古屋があるんです。毎日前を歩くので買取価格とか張り出してあるのを見ますから」
つまりゲームはやらないが、毎日見てるから覚えている、と言うことだろうか?
記憶力のいい先輩だから、何気なく見ているものも覚えてしまっているのかもしれない。

「愛菜ー、どう?いい物あった……って、三上先輩?」
香織ちゃんが私の所までやってきて、隣に立つ大和先輩に気づいたようだ。

「香織ちゃん、先輩の事知ってるの?」
「知ってるも何も、いつも学年トップの秀才じゃないの。愛菜、三上先輩と知り合いだったの?」
こそこそと香織ちゃんが聞いてくる。どうやら、先輩は三上大和という名前らしい。

「ううん、今日お昼にちょっと……」
「そうなの……こんにちは先輩」
「こんにちは……すみません、そろそろ戻る時間なので失礼します」
先輩は挨拶すると、そう言って私達に会釈して、教室から出て行ってしまった。
それと入れ違いになるように、他のみんなもこちらに集まってくる。
千春が戻ってくるのを待って香織ちゃんが口を開く。

「千春くんの買い物終わったみたいだし次に行こうか?」

時間的に回れるのは後二箇所位かな?
①ぬいぐるみ展示
②お化け屋敷
③手作りクッキー体験
④科学オモシロ実験

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③手作りクッキー体験

甘い物が食べたくなって私は皆に手作りクッキー体験に行きたいと伝えた。
しかし、その中にクッキー体験に行きたいと言っていた春樹くんがいないことに気がついた。
少し気になって皆に少し待っていてと伝えて私は教室を出る。
すると廊下の壁に寄りかかりでぼんやりと一点を見つめる春樹くんが立っていた。
春樹くんが見つめる先には王子の扮装をした男の子とお姫様の扮装をした女の子が
看板を持って呼び込みをしている。
看板には『ロイヤル喫茶』と書かれている。

「俺の……ところは、変わってなかったんだ。
 きっと……姉さんと隆さんが遊びに来て、からかわれて……。
 あれだけ見て欲しくなかったのにちょっと寂しいな……。」
私がいるのに気づいていないのか、春樹くんは寂しそうに呟いた。
ロイヤルパーティ、そういえば一年のどこかのクラスのはずだ。
「からかわないよ。むしろ私がその姉さんだったらカッコよくて言葉失うと思うよ。」
「……っ!!」
ようやく私の存在に気がついたのか、春樹くんは真っ赤になり後ずさった。
「王子様な春樹くんはきっと喫茶店の目玉だっただろうね。」
「……そ、そんなことない。」
「春樹くんの記憶だと、この学校に通って王子様してたのか、ちょっと残念。
 見たかったな、それ。そしてきっと嫉妬してた。
 春樹、素敵だね。恋人できちゃうかなって姉心としては心配になったと思うよ。」
春樹くんは私の顔を覗き込み、息を呑む。
そしてゆっくり微笑むと一言
「そうかな。そうだと嬉しい。」
そう言った。
「春樹くん?」
「愛奈がそういうならきっとそうだから。」
照れたように春樹くんは笑う。私も釣られて笑ってしまった。
なんだかこう話していると本当に姉弟みたいな気持ちになってくる。
「ねぇ、春樹くんのこと春樹って呼んでいい?」
「えっ!?」
「なんだかそう呼びたくなったの、春樹って年下だしいいよね。」
春樹くんの口元がゆるむ。今までで一番の笑顔で彼は答えた。
「もちろんだよ、愛奈。」

「君、そんなに気になるなら私のクラスの出し物参加してみるかい。」
と声をかけられる。振り向くと近藤先生が立っていた。
厳格で有名な近藤先生のクラスの出し物だったのかと思うとそのギャップに私は唖然としてしまった。

しかし、時間も時間だし他を見たいって言ってる人がいる。
春樹くんの王子様姿もみてみたいかも?
どうしようかな?
①せっかくだから参加
②やっぱりクッキー体験
③やっぱりぬいぐるみ展示にしようかな
④やっぱりお化け屋敷にしようかな
⑤やっぱり科学オモシロ実験にしようかな

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①せっかくだから参加

甘い物が食べたかったので、ここの喫茶店でケーキを頼むのも良いかもしれない。
「せっかくだから、参加してきたら? あ、でもクッキー体験の時間すぎちゃうかな」
「愛菜は俺の王子さま姿みたいの?」
「そうだね、見てみたいかも」
「おーい、愛菜ちゃん何してるの?」
「あ、修くん」
私達の帰りが遅いので、みんなもこちらにやってきた。

「なんなら、皆で参加するかい?」
「ん?ロイヤル喫茶? へー、王子様とお姫様か」
近藤先生の言葉に、修くんは教室を覗きこんでいる。

「俺はパス。この足だから着替えとか大変だし」
「僕もパス。ってか僕のサイズの服なんてないよね」
隆と千春はそう言って首を振る。

「愛菜が見たいっていうから、俺は参加しようかな」
「え?愛菜ちゃん王子さま姿見たいの?なら俺も参加しようかな」
春樹と修くんがそう言うのを聞いて、近藤先生が口を開いた。

「それじゃあ二人はこっちへ。君達は中に座ってなさい」
「はい」
「じゃ、ちょっと着替えて来るね」
春樹と修くんは近藤先生に連れられて行ってしまった。

「修のヤツはともかく、春樹がこういうのに参加するとは思わなかったな」
「確かにそうね、宗像修はともかく」
隆と香織ちゃんが言いあっている。

「そうかな?ねぇちゃんが見たいって言ったからだろ?それなら不思議でもなんでもないと思うけど」
「あー、そう言われるとそうかも」
それに千春が口を挟んで、香織ちゃんが頷き隆が顔をしかめる。

「え?私が来たときにはずっとここ見てたし、最初から興味はあったと思うよ」
記憶ではこのクラスの催し物に参加していたはずの春樹。
すっかり蚊帳の外で寂しかったのだとおもう。でもそう言うのは恥ずかしいから、私の言葉をダシにしたのだろう。

「わかってないなぁ……て来たんじゃない?」
千春は呆れたようにため息をついたところで、急に今日室内のざわめきが大きくなる。
入口を振り返って、私は思わず固まった。

「これはこれは、二人とも予想以上に出来の良い王子様になってるわね」
「これだけ似合うと嫌味だよなー」
「俺は参加しなくて正解だな。あの二人と並びたくない」
皆が口々に感想を言う。
春樹と修くんはまっすぐにこちらに向かってきた。

「愛菜ちゃん愛菜ちゃん、どう?似合う?王子様っぽい?」
「着てみたけどやっぱり恥ずかしいね、顔の絆創膏もミスマッチだし」
修くんは楽しそうに、春樹は少し恥ずかしそうに言う。

私は…
①二人ともすごく似合うと言う
②修くんさすがだねと言う
③春樹は絆創膏付きでもかっこいいと言う
④驚きすぎて言葉が出ない

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