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①一郎くんを見る

少し呆れつつどうすようかと一郎くんを見ると、視線に気付いたのか一郎くんは私に顔を向けた。

「すまないな大堂。コレは俺の従兄弟なんだが……」
「あ、うん、さっき聞いたよ」
「そうか……」
「コレとか、ひどくない? ちょーっと先に生まれたからって、年上面してさっ。たった二週間よ、二週間!」
「二週間だろうが、一日だろうが、一時間だろうが先に生まれた事に変わりはない」
「うっわー、おとなげないっ」
「うるさい、早くそこから退くんだ」
一郎くんらしくない言い合いに、目が点になる。
仲が悪いと思ったけれど、どうやらそうでもないらしい。
心を許しあっている同士の気軽さがそこにはある。

「ねぇちゃん? なにしてんの?」
思わずにこにこして見ていると、聞きなれた声がした。

「千春? あんた学校は?」
「部活だったけど、引き上げてきた」
「サボリ?」
「自主休業」
「それをサボリって言うんでしょ?」
「そうともいう。 ……てか、また引っ掛けてるのかよ」
「は?」
「二股ならぬ、四股? いや、僕が知らない所でまだまだありそうだよなぁ」
「なにバカな事言ってるの、あ、ごめんね。 これ、弟の千春」
「どうも、こんにちはと、はじめまして。ねぇちゃんがいつもおせわになってます」
千春は一郎くんにこんにちは、修くんに始めまして、と挨拶してペコリと頭を下げる。

「こんにちは、大堂の弟さんか……そういえば一度、家で会ってるな。」
「へぇー、君の弟? 結構年が離れてるんだね」
一郎くんと修くんは千春を見る。
二人の視線にも動じず、千春は修くんをじっと見る。
それから私を見てわざとらしくため息を突いた。

「メンクイ……」
「ちーはーるー! そんなことないって言ってるでしょ!」
「くっ、ぷぷぷ。 俺の顔が良いってほめてくれるんだ」
楽しそうに、修くんは笑うが私は恥ずかしいだけだ。
私は慌てて別の話題を探す。

「ところで千春、なんでこんなに早く来たの? 予定の時間より1時間も早いじゃない」
「僕が隆かミケの人案内する予定だから、下見してどこに何があるか把握しとくの当然だろ?」
「え? 二人とも私が案内するって言ってるのに」
「予定が変わるかもしれないだろ? じゃ、そういうことで。時間になったら又ここに来るよ」
千春は言いたい事だけ言うと、一郎くんと修くんにペコリと頭を下げて校内へ行ってしまった。

「なんか、しっかりしてる弟さんだね」
まだ笑いながら、修くんが言う。

私は……
①「ただマセてるだけだよ」
②「……ところで、いつまでここに居るの?」
③「あれでもいろいろ心配してくれてるみたい」

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③「あれでもいろいろ心配してくれてるみたい」

一郎くんは「そうか」と頷いて、今度は修くんを見た。
「いい加減そこから離れるんだ。他の人に迷惑だろう」
「大丈夫だよ~。そうそう呼び出しなんて来ない……」
「あ、あの……」

修くんが言いかけたそのとき、控えめな声がかけられた。
見ると、とてもきれいな女の人が申し訳なさそうに立っている。
「あ、お呼び出しですか?」
「はい、あの、おねがいします」
「修……」
「はいはい」

利用者が現れた途端、一郎くんの言葉に修くんはおとなしく従った。
「では、呼びだす方のお名前と、呼びし場所を教えていただけますか?」
「あ、はい。呼びだすのは高村周防。えっと、場所はここでも良いですか?」
「はい。かまいませんよ。いま呼び出します」

女の人はホッとしたように微笑んで、ペコリと頭を下げた。
どこか不安げに周囲を見回している。
私はチャイムのボタンを押して、マニュアルどおりに呼び出しをかける。
「お呼び出しを致します。高村周防さま、高村周防さま、お連れ様がお待ちです。
 至急校門脇、呼び出しセンターまでお越し下さい」

呼び出しをかけて、マイクのスイッチを切る。
「ありがとうございます」
「いいえ、すぐに……」

来ると良いですね、と言いかけて、ものすごい勢いで走ってくる人影を見つけた。
女の人も気付いたのかパッと表情が明るくなる。きっと呼びだした高村さんなのだろう。
「綾!」
「周防」
「お前はまた、少し目を話すとすぐはぐれる」
「ごめんなさい」

しゅんと小さくなる綾さんを軽く小突いて、迎えに来た高村さんはこちらににっこり笑いかけてきた。
「手間をかけさせて悪かったな、ありがとう」
「いいえ、仕事ですから」
「ありがとうございました」

再度お礼を言った綾さんに、高村さんは手を差し出す。
「ほら、今度は迷子になるなよ」
「はい」
「じゃあな」

高村さんはしっかりと綾さんの手を握って、私たちに反対の手をヒョイと上げて挨拶すると校舎のほうへと歩いて行った。
「あんなにきれいな恋人じゃ、気苦労たえないだろうねー」

修くんが二人を見送りながら、独り言のように呟いた。
そんな呟きに一郎くんが小さくため息をつく。
「俺は放送室に戻る。修、お前もいい加減イベントを見に行くなり帰るなりしたらどうだ」
「はいはい」
「じゃあ大堂、ここはよろしく頼む」
「はい」

一郎くんはそう言って戻って行った。私と修くんがそこに残される。
①修くんは無視して仕事に専念
②修くんに話しかける
③修くんに面白そうなイベントを案内する

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②修くんに話しかける

一郎くんが去って、修くんはようやく開放されたとばかりに「うーん」と伸びをした。
そんな様子を見て、私は修くんに話しかける。

「修くん。一郎くんが苦手なんですか?」
「まぁね。それより、ためぐち」
「ためぐち?」
「愛菜ちゃん。同級生なのに堅苦しいよ」

修くんは私の言い方が気に入らなかったのだろうか。
敬語は使うなといいたげな言葉だ。

「敬語はやめた方がいいって事ですか?」
「もちろん。堅物は一郎だけで十分だよ」
「そっか……同級生だもんね。わかったよ、これでいいかな?」
「そうそう。そっちの方が可愛いもん」

(か、可愛いって……!)
社交辞令なのか、素で言っているのか。
慣れない言葉に戸惑う私を面白そうに見ながら、修くんは椅子から立ち上がった。

「ところで愛菜ちゃん。この学校の事務所ってどこかな?」
「えっと、事務室のことかな。だったら西校舎の一階だけど……どうしたの?」
「うん。編入手続きの願書もらいに行こうと思って」
「編入の願書……?」
「そうだよ。さっき俺が言ったじゃん。今日からここの生徒になるって」

学校の編入っていうのは、俗に言う転校の事だろう。
(そういえば……ここに座る時に言っていたような)
だけどあれは言葉のあやというか、その場の軽い冗談のはずだ。

「そんな、いきなり編入なんて! 冗談だよね!?」
「どうして冗談なんて言わなくちゃいけないのさ。俺は本気だよ」
「今通ってる学校だってあるんでしょ!?」
「どうにかなるって。この学校の方がなんだか面白そうだし、色々気に入っちゃったんだよね」
「そんなの駄目だよ! 絶対に考え直した方がいいと思う!!」

私の大声に、いつの間にか戻ってきていた放送委員の女子が驚いている。

「どうしたの、大堂さん」
「いきなり転校なんて……この学校には編入試験だってあるんだよ! ねぇ、あなたも止めてあげて」
「転校?」

状況が飲み込めないのか、放送委員の子は首をかしげている。
その隙に、修くんは校舎のほうへ走り出した。
10メートルほど先でくるっと私に向き直ると、ぶんぶんと手を振り出す。

「じゃあ、俺行ってくるから。愛菜ちゃん、またね♪」
「ちょっと、待って! ……あぁ行っちゃった……」

どうしよう……
①諦める
②一郎くんに連絡する
③修くんを追いかける

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①諦める

何かスポーツをやっているだけはある。その姿はすぐに見えなくなった。
編入っていったって、親の了承とか必要だしきっと無理だろう。きっと…。
思わずため息をついて、椅子によりかかる。

「あの人……どこかで見た事あるなって思ってたんだけど、北附属の宗像修じゃないの?」
「え? 知ってるの?」
戻ってきた子が修くんの後姿を見送って、思い出したように口を開いた。

「知ってるも何も、北附属の宗像修っていったらテニスで有名じゃない」
「テニス……」
修くんがやっているスポーツはテニスなのだと、思いがけない所で知った。

「大堂さん、宗像修と知り合いなの?」
「私の知り合いていうか……委員長の従兄弟なんだって」
「え? そうなの!?」
その子も驚き、けれどそう言えば少し似ているという話しをしていると、いつの間にか交代の時間になっていた。

(もうすぐ千春もどってくるかな?)
校舎のほうを気にしていると、反対側から声をかけられた。

「愛菜、こんにちは」
振り向くと、春樹くんが立っていた。
顔に貼り付けた絆創膏と、手の包帯がまだ痛々しい。

「春樹くんごめん、もうちょっとまってて。もう少しで交代の時間だから」
「ごめん、ちょっと早かったみたいだね」
「平気、交代の時間なんだけど、まだ次の担当の人が来てないだけだから」
「隆さんと千春くんは……あ」
春樹くんは当りを見回し、校門の方向で視線を止めた。
同じ方向を見ると、隆がこちらへ向かってくる所だった。

「隆! こっち」
手を振って合図をすると、気付いた隆がこっちに向かってくる。

「悪い遅れたか?」
「大丈夫、時間ぴったり。千春もそろそろ戻ってくると……」
「ねぇちゃん!」
「愛菜ちゃん♪」
校舎に視線を送ると、千春と修くんが並んでこちらへ向かってきていた。

「え? 修くん?」
「そこで弟くんに会ってね。いまから愛菜ちゃんが案内してくれるって言うからついてきちゃった」
「だれだ?」
「修……って、修二先輩のことか……?面影はあるけど……」
隆が素直に首を傾げる横で、春樹くんが昨日のように考え込んでいる。

「ねぇちゃんどうするんだよ。こんなイケメン連れて歩いてたら目立つぞ?」
「う……、でも、修くんはともかく隆と春樹くんは私が誘ったんだし……」
「ま、どうするかはねぇちゃんが決めれば良いけどさ」
千春こっそりと言われて周りを見ると、確かに視線、特に女子の視線が集まっている気がする。

どうしよう…
①皆で回る
②隆と回る
③春樹くんと回る
④修くんと回る

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①皆で回る

「せっかく集まったんだもん。みんな一緒に回ろうよ」

私の提案に、お互いが顔を見合している。
ほとんど面識の無い人たちが集まっているから、なんだか妙な感じだ。

「ねぇちゃん、こんな団体様ご一行じゃ目立つって」
「確かに目立つけど……せっかく集まったんだし、仲良くなれるチャンスでしょ?」

私の言葉が気に入らないのか、修くんは手をヒラヒラとさせる。

「ダメダメ。愛菜ちゃんと一緒に回るのは俺なんだから」
「ていうか……こいつ何なんだ」

隆は修くんを見ながら、眉をひそめる。

「さっき知り合った宗像修くんだよ」
「さっき? それにしては随分と馴れ馴れしいな……」
「へー。アンタ変わった松葉杖してんだね」

修くんは隆が腕に通しているロフトランド式の松葉杖を指差してジロジロと見ている。
普通ならあえて避ける話題だろうが、修くんはお構いなしのようだ。

「隆は少し足が悪いんだ。だけど、前よりずっと沢山歩けるようになったんだよ、ね?」
「………」

修くんの不躾な視線を、隆は居心地悪そうに受け止めている。
昔の隆なら相手に突っかかっていただろうけど、少し見ない間に大人になったみたいだ。

千春はこんなんで大丈夫なの? という顔で見てくるし、集団としてのまとまり最悪だ。
そんな中、さっきから黙って私達の様子を見ていた春樹くんがようやく重い口を開いた。

「俺、お腹が空きました。とりあえず皆で昼食にしませんか」

春樹くんの言葉で、そういえばお昼間近だった事を思い出す。
さっきから不穏な雰囲気だった二人も、そういえばという顔をしていた。
声には出さないけれど、ここに居るみんなの同意を得たようだ。

私は……
①校庭の出店をまわる
②校舎内の店を探す
③春樹くんが紙袋を持っているのに気づく

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②校舎内の店を探す

私も午後の演劇が始まるまでに、昼食を済ませておかなくてはいけない。
隆の足を考えると食べ歩きになる外よりも、ゆっくり座って食べられる中の方が良いだろう。

「じゃ、中入ろうか。飲食店は1階に集中してるから、一通り見てどこにするか決めようよ」
「そうだな」
「そうしましょう」
「愛菜ちゃんが言うならしかたないなぁ」
「おっけー」
私の言葉にとりあえず四人とも頷いてくれる。
1階を一回りして「出前食堂」とかかれた教室に入る。
他のクラスがやっている飲食店のメニューを買ってきてくれる、という食堂だ。
三年の有志が企画したもので、ここなら外のメニューも中のメニューも両方頼めるということで、皆の意見が一致する。

「なるほど~、時間が余りとれない三年生だから許される企画だよね」
修くんが楽しそうに笑いながら、教室に入る。

「そうですね」
春樹くんも続いて中に入る。他の皆も次々と入り、空いている席を探してぐるりと教室を眺めると。

「「「「あ」」」」
偶然四人の声が重なった。
千春以外の視線が一ヶ所に集まる。

「さっきの呼び出しの人だ」
修くんが呟く。

「周防さんに兄さん?」
春樹くんが驚いたように動きを止める。

「大宮先生?」
隆が見慣れた姿に首を傾げている。
それぞれが、それぞれの呟きを聞いて顔を見合わせる。
入口で立ち止まっていると、気配に気付いたのか綾さんが顔を上げた。

「あら」
私を見つけて綾さんが会釈をしてくる。
それに同じテーブルについていた人たちもこちらを向いた。

「あ、さっきの放送の人、……と、春樹?」
高村さんが私を見つけてにこっと笑い、その横に居る春樹くんを見て首を傾げた。
私が唯一顔を知らない眼鏡をかけた男の人も、驚いたようにこちらを見ていた。
どうやらあのテーブルにはそれぞれ見知った顔が集まっているらしい。

「すみません、中入るか、外出るかしてください。通れませんよ」
立ち止まった私たちに、後から声がかけられる。

「あ!すみません」

私は慌てて…
①空いているテーブルに移動する
②綾さんたちのテーブルに移動する
③教室の外に出る

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②綾さんたちのテーブルに移動する

「すいません。同席してもいいですか?」

周りは昼時ということもあって込み合い始めていた。
ミナミセンセじゃなくて……大宮先生たちに私は同席を願い出る。

「オッケーオッケー。大人数の方が楽しいじゃないか」

同席していた放送の人はノリがいいのか、大げさなほど歓迎してくれた。
その言葉に促されるように、私たちはそれぞれの席に着く。
かなりの大人数になった席を、私は改めて見渡す。
すると私の左隣に座った隆が、担当医だった大宮先生と話し始めていた。

「隆くん。久しぶりのお家はいかがですか?」
「やっぱり病院よりメシはうまいよ。やっぱり病院食は味気ないからさ」
「こっちの男は高村周防先生。精神科の先生だけど……顔くらいは見たことあるんじゃないですか?」
「あぁ。話したことは無いけど、院内で見かけたことならあるよ」
「その隣は私の妹の綾です。この周防に騙されて、彼の婚約者になってしまいました」

その会話が耳に入ったのか、綾さんと話していた周防さんが大宮先生の方をジロッと見る。

「騙されたとは何だ! 俺達はちゃんと愛し合って婚約してるんだぞ!」
「綾も趣味が悪い。もう少しマシなのを選べばいいのに」
「お、お兄ちゃん!」

大宮先生とは隆のお見舞いの時に挨拶を交わす程度だったけど、実はかなりの毒舌のようだ。
千春に目を向けると、修くんと何やらコソコソと話をしている。

「弟くん。君のお姉さんって今フリーなのかな?」
「うーん。よくわからないけど、少なくとも三股はしてると思うよ」
「三股……? それは落としがいがありそうだ」
「修さん。もしかしてねぇちゃん狙ってるの?」
「まぁね。不思議なんだけど初めて会った気がしないんだよなー」
「その言葉、ナンパの常套手段じゃん」
「弟くん……君って難しい言葉知ってるんだね」

言っている事は聞き捨てなら無いが、この二人は意外と気が合うのかもしれない。

私は……
①メガネの人と春樹くんの会話を聞く
②オーダーを取りに来た先輩に気づく
③話しかける

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①メガネの人と春樹くんの会話を聞く

「兄さんがこういう場所に来るなんて珍しいね」
「学校の脇を歩いてたら、周防が呼びだされてる放送を聞いてね。
ちょっと顔を見ようかと思ったら、先に周防に見つかって現在に至るって感じかな」
春樹くんが兄さんと呼んでいる人を見ると、顔はそれほどでもないが雰囲気が似ている。

(私を「姉さん」って呼んでたけど、そうなると春樹くんの記憶の中では私はあの人の妹だったのかな?)
そんなことを思っていると、そのお兄さんと目があった。
慌てる私ににこりと微笑んできた春樹くんのお兄さんはとても優しそうだ。

「あ、ねえさ……いや、愛菜。この人は俺の兄で……」
「高村秋人です」
「あ、大堂愛菜です……」
「俺と兄さんは周防さんの従兄弟なんだ」
言われて、周防さんと春樹くんが同じ苗字だったことに気付く。

「俺の従兄弟とは違って、みんな仲よさそうだね」
「なんだ、アンタは従兄弟と仲悪いのか?」
私たちの会話を聞いていた修くんの言葉に、隆が疑問をぶつける。

「悪いもなにも、出来る事なら一生会いたくない……」
「ほぅ? そう言うならさっさと帰ったらどうだ、修?」
「げ……」
「? コイツがお前の従兄弟?」
「い、一郎くん……。今度はどうしたの?」
「昼食の時間だから、少しだけ抜けてきたんだ。ここで注文して放送室に届けてもらおうとしたら、コレを見つけたからな」
冷たい視線で修くんを見下ろす一郎くんに、そ知らぬ顔でメニューを眺める修くん。

「……なんとなく顔は似てるけど、性格正反対って感じだな」
一郎くんと修くんを交互に見て、隆が苦笑する。
そこへ焼きそばとお好み焼きのいい匂いをさせて、一人の男子生徒がやってきた。

「おまたせしました。ご注文のお好み焼きと焼きそばです」
そう言って手際よくパックに入ったお好み焼きと焼きそばを置いていく。綾さんたちが頼んだ分が届いたらしい。

「あ、こっちも注文お願いします」
修くんの言葉に男子生徒は頷き、その場にとどまる。

「えっと、俺は焼きそばとおでん、それからカレーライスね。愛菜ちゃんは?」
「あ、私は……、たまごサンドと、紅茶、ホットで。ほら、千春も選んで」
「僕はホットケーキにイチゴパフェにコーラ。隆は?」
「うーん、俺も焼きそば……と、野菜サンドと、コーヒー」
「俺はお好み焼きとミックスサンドとコーヒー」
「ついでに頼んで良いだろうか、野菜サンドとコーヒーを放送室まで届けてほしいんだが」
一郎くんの言葉に男子生徒は頷き、一通り聞き終わると復唱する。

「ご注文は、焼きそばが2つ、おでん1つ、カレーライス1つ……
……内、野菜サンドとコーヒ1つずつは放送室へ配達ですね?」
メモを取っていた様子もないのに、すらすらと答えたその人は私たちに確認の視線を投げてくる。

「え、えっと……良いんだっけ?」
「うん、おっけー」
私の視線に、指折り数えていた修くんが頷く。
修くんが頷くと、男子生徒は小さく「おまちください」と言って教室を出て行った。
すごく記憶力の良い人らしい

①一郎くんにさっきの生徒の事を聞いてみる
②「すごいね……」と呟く
③午後の予定を打ち合わせる

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②「すごいね……」と呟く

「すごいけど、えらく無愛想だな」

私の呟きが聞こえたのか、男子生徒の後姿が見えなくなってから隆が言った。
そういえばオーダーの時も、運んできた時も笑顔一つみせなかった。

「確かに、ぜんぜん愛想はよくなかったよね」
「こういう接客って、笑顔が基本だろ」
「まぁね。三年生の有志でやってるお店だから、先輩なんだろうけど……」
「ここに座る時、サービス料として金も取られてるんだぜ」
「一人たった50円だけどね」
「50円だろうと金は払ったんだから、俺達は客だ。あのウエイターが戻ってきたら、言ってやろうかな」
「だけど先輩ってことは、年上だよ」
「俺はここの生徒って訳じゃないし、平気だって」

オーダーは的確だし、対応も早い。
それはいいんだけど、やっぱりもう少し愛想よくしてくれた方がお互い気持ち良いだろう。

「じゃあ、私が言ってみるよ」
「え!? お前がか?」
「うん。やってみる」

一郎くんは仕事があると言って放送室に戻り、私達はそれぞれの席で話し込んでいた。
しばらくすると、無愛想な男子生徒がすべてのメニューを持って教室に入ってきた。
そして手際よくそれぞれの席に注文どおりの品を置いていく。
たまごサンドと紅茶が目の前に置かれたとき、私は意を決して声を掛けた。

「す、すいません」
「……はい」
「追加注文……いいですか?」
「……お伺いします」

ボソッとした小声で無愛想な男子生徒は言った。

「メ、メニューには載っていないんですけど……え、笑顔を一つください」
「………………」

意味が通じなかったのか、男子生徒は黙って私を見下ろしている。
面白いことを言おうとしてスベった時のような、居心地の悪さがこの場を包む。

(ど、どうしよう~~)

私は……
①もう一度言う
②冗談と言ってごまかす
③様子をみる

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③様子をみる

私を見下ろしたまま動かないその人は、しばらくしてパチパチと瞬きをした。
それから、フッっと吹きだすように笑う。

(うわ、笑うとすごく軟らかい雰囲気になる人だなぁ)
びっくりして思わず見入っていると、くすくすと笑いながら口を開いた。
とりあえず、不快にさせなかったようでホッとする。

「面白い人ですね。……ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「え、あ、はい」
頷くと、今度ははっきりとにっこり笑って私の頭にポンと手を置いた。

「え?」
慌てる私の頭をまるで子供にするように撫でた後、お辞儀をすると「失礼します」といって離れて行った。
その男子生徒に別の生徒が「おーい、大和、こっちもよろしく」と声をかけている。
苗字か名前か分からないが、どうやら大和という名前らしい。
その大和先輩はさっきの事を思い出すのか、別の注文を受けながら笑いをこらえるように口に手を当てている。

「な、なんだ……ちゃんと笑えるんじゃない」
なんとなく言い訳するように呟くと、千春がため息を付くのが聞こえた。

「ねえちゃんがどうやって男を引っ掛けてるか、ちょっと分かった気がする……」
聞き捨てならないと、軽く千春をにらむとホットケーキに集中するふりをして私を無視する。

「確かに今は笑って接客してるけど、アレじゃちょっとちがうだろ……」
呆れたように隆が肩をすくめ、焼きそばを食べ始める。

「愛菜さんは面白い人ですね、今までの春樹の友達には居なかったタイプだ」
私たちのやり取りをみていた秋人さんが、からかうように春樹くんを見ながら言う。

「それを言うなら、兄さんの友達にも居ないタイプなんじゃないの?
 そもそも、ねえ……愛菜みたいなタイプがめったに、居ないと思うよ」
「それは言えるな」
和やかに話して居るが、その内容に思わず顔をしかめる。

①「それってどういう意味ですか?」
②「私はいたって普通です!」
③「………」
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