16 名前:649[sage] 投稿日:2007/12/21(金) 17:20:52 ID:???
②ない

『そんなのあるわけ無いじゃない。血を流し合うなんて……』
「敵がお前を殺そうとしてもか?」
『だからって、私が相手を殺していい理由にはならないよ』
「じゃあ、お前はおとなしく敵に殺されるっていうのか!?」
『そんなこと言ってないじゃない!逃げるに決まってるでしょ?
 なんでおとなしく殺されなきゃいけないのよ』
「逃げ切れそうに無かったらどうするんだ?」
『……なんでこんなことするのか聞いて、説得するよ』
「その説得に相手が応じなかったら?」
(応じなかったら……)
ペンを止めた私を隆はまっすぐに見ている。

(もし説得に応じてくれなかったら?どうするんだろう……)
おとなしく殺されるつもりはもちろんない。
けれど、相手を傷つけてまで自分が助かりたいと思うだろうか?
隆から視線を外し、考え込む。
逃げ切れなくて、相手が説得に応じてくれなかったら……。
相手を傷つけなければ私が生きられなかったら?

(分からない)
「はぁ……」
考え込む私に、隆は大きなため息をついた。
顔を上げるとあきれたような顔で隆が見ている。

「悪かった。今の質問忘れていい。
 だけど、約束しろ。お前が襲われたら俺だけじゃなく春樹もチハルもお前を守ろうとするだろうから、そのときは全力で逃げろよ?
 お前が逃げられるように出来る限りのことはするからな。お前が残ってても足手まといなんだからな?」
ひどい言われようだけれど、隆が心配しているのは分かる。

①『わかったよ』
②『私だけ逃げるなんて嫌だよ』
③『そのときになったら考えるよ』

17 名前:650[sage] 投稿日:2007/12/21(金) 21:42:44 ID:???
①『わかったよ』

私がノートに書くと、隆は安心したように笑う。

「それでいいんだ。今のお前はなんの能力も無いんだからな」
『うん。そうだね』

(だけど……)

香織ちゃんがケーキ屋の冷たい床に倒れたときの事を思い出す。
ぐったりした香織ちゃんの肩を抱きかかえたとき、体が勝手に動いていた。
もし、隆やチハル、そして春樹が敵に傷つけられていたとして、私は逃げることが出来るのだろうか。

(暴力や争いでは、何の解決にもならないと思う。けど、このモヤモヤは何だろう)

『ねえ、隆』
「ん? なんだよ」

私に向き直った隆は、出来る限り守ってくれると言ってくれた。
守るって……一体、何なのだろう。

『どうして私を守ってくれようとするの?』
「うえぇぇっ!!」
隆はびっくりしたように、目を丸くしている。
そして、その顔がみるみる赤くなっていった。

『隆はどうしてそこまでしてくれるの? 守るって何?』
「おっ、おい……いきなりどうした?」
『香織ちゃんが倒れた時、とにかく助けなきゃって必死だった。それが、守るってことなの?』
「愛菜?」
『私、全然わからない。守るって何? 守られるってどういうこと?』
「ちょっ、少し落ち着けって!」
『もし、私を守るために隆が敵に倒されたら……逃げてしまった自分を許せなくなるよ。敵を憎むよ。守られたくなかったって後悔するよ」
「悪かったから、とにかく落ち着けよ」
『それでも、やっぱり守られなきゃいけないの? 春樹だって、私を守る為に家を出て行ったんだよ。けど、寂しくて辛いばかりで、ちっとも嬉しくなんてなかった』
「……愛菜」
『なのに、隆まで守るって……私はどうすればいいの? ただ、逃げ回るしかできないの?』
「わかったから、な?」
『教えてよ! わからない。全然、わからないんだよ!!』

ペンを持つ手が震えて、書くことが出来なくなる。
胸が痛くて、身体が熱い。
気持ちはどんどん溢れてくるけれど、言葉として吐き出すこともできない。

私は思わず……
①混乱してしまい、涙が溢れてきた
②答えを言わない隆の肩を、強く揺すった
③耐え切れず、リビングを出て行った

18 名前:651[sage] 投稿日:2007/12/23(日) 02:33:07 ID:???
①混乱してしまい、涙が溢れてきた

「愛菜! 落ち着けって!!」
その言葉に、私はいやいやと頭を振る。立ち上がって、声にならない気持ちを訴える。
聞きたいのはそんな言葉じゃない。
力が無い私には、何も出来ないのは分かっている。足手まといになるだけだって、理解してる。

守ってくれる人を犠牲にできるのか? 後ろを振り向かず、逃げ切れるのか?
……やっぱり私には無理だと思う。

守られるって――一どうして辛いの?

突然、両腕を力強く掴まれ、我に返る。
さっきまでテーブルを挟んで座っていたはずなのに、目の前には、真剣な隆の顔があった。

「混乱させるようなことを言って、すまなかった。そっか、泣くほど悩んでたんだな。……気がつかなくて、その…悪い」

(私……泣いてるの?)
呆けたまま、私は隆を見つめる。
私の頬を伝う涙を拭うと、隆は言葉を続けた。

「守るって言葉が、重荷だったんだろ?」

(……重荷?)

「その顔、自分でも気付いてないって感じか。突然、力だ、組織だと知らされて。巻き込まれて、恐い思いして。
守るって言葉を背負わされて……そりゃ、重荷に決まってるよな」

そう呟くと、隆は再び私を見つめる。

「じゃあ、こうしよう。敵に襲われてしまったとする。説得も無駄だったとして……俺と一緒だった時は、二人で逃げようぜ。
それでもダメだったら、協力してやっつけるんだ。力なんてなくたって、石でもなげてりゃいいんだしな」

(……いいの?)

「俺の力なんて、他の奴らに比べればたいしたことないだろう。けど、俺はやられるつもりはないぜ。
お前の見てる前で、負けるつもりもない。てか、絶対に勝つ」

言っていることは無茶苦茶だ。
だけど、さっきのでのモヤモヤが晴れていくのがわかる。

「しっかし、昨日は春樹の悩み相談で、今日はお前か。春樹もお前も……世話の焼ける姉弟だよ。ホント、そっくりだ。
同じようなことをウジウジ悩むんだからな」
隆はそう言うと、私の額をピンと弾いた。

(隆……)
この気持ちをノートに書こうとおもったけれど、紙だと残ってしまいそうで照れくさい。
素直じゃないと思いつつ、別の方法を考える。

困ったな、どうやって伝えよう……
①隆の背中に書く
②声がでなくても、話して伝える
③隆の手に書く

19 名前:652[sage] 投稿日:2007/12/25(火) 09:16:18 ID:???
③隆の手に書く

額を弾いた隆の手を、私はギュッと掴んだ。
そして、大きな手のひらに、指で文字をなぞっていく。

「なっ……!」
隆は驚いたのか、とっさに手を引っ込ようとする。
けれど、私は構わずに、文字を書いていった。

「……う…って?…今、『う』って書いたのか?」
私は『うん』と頷いて、また言葉の続きを書き進める。

「……れ、……し、……い」
隆は言い終わると、私を見つめる。
私は出ない声で『一緒だって、言ってくれて』と付け足した。

「確認していいか?……俺と一緒が嬉いって、愛菜はそう言いたいんだよな」
その問いに、私は小さく頷いた。

今、ようやく何を望んでいたのか理解できた気がする。
私の願い――それは、どんなに辛いことでも、大切な人達と一緒に分かち合いたいという事だ。
守ると言われるたび、息苦しさ感じていた。なぜか、辛かった。
だけど、隆が一緒に逃げよう、二人でやっつけようと言ってくれて、私はモヤモヤの正体を見つけることが出来た。

この答えに早く気付いて、ちゃんと伝えていれば、春樹とすれ違うこともなかったと思う。
私の考え方は、都合の良いきれい事だとわかっている。けど、自分の気持ちまで、偽りたくない。

「……ああ、うん。そっか、ハハハ…。俺と一緒がいいんだ……」
隆は照れるように顔を赤くして、目を細めて笑っている。
「とにかく前向きに考えていこうぜ。俺、絶対にがんばるから!」
心強い隆の言葉に、私は大きく頷いて応えた。

結局、隆は私が落ち着くまで、私の側にいてくれた。
十一時を廻ったの確認して、隆はソファーから腰を上げた。

「よし!……もう、寝るか。お前の体調も心配だしな。
美波さんに連絡するのも明日でいいだろう。…じゃ、お前も早く休めよ」

隆はそう言って、リビングを出て行った。
私は片づけを済まして、チハルと一緒に自室に戻った。

未だに動かないチハルと一緒にベッドに潜り込む。


これから、どうしようかな……。
①目を瞑って眠りについた
②今日のことを思い返してみる
③冬馬先輩と話してみる

20 名前:623[sage] 投稿日:2007/12/28(金) 16:34:29 ID:???
③冬馬先輩と話してみる

(そういえば冬馬先輩、美波さんと連絡とって見るって言ってたっけ……)
ふと思い出して私は、冬馬先輩と話しをしてみることにする。
目を閉じて、冬馬先輩に会えるように祈る。
しばらくして眠りの波が訪れ一瞬意識が途切れた後、いつの間にか学校の前に立っている自分に気付いた。

(そういえば、夢で学校にいることがおおいな、私)
そう思いながら、あたりを見回す。

「愛菜」
声に振り返ると冬馬先輩が立っていた。その後には美波さんもいる。

(冬馬先輩、美波さんと一緒だったんだ)
声を出したつもりだったが、夢でもやはり声は出なかった。
そんな私を見て、美波さんが近づいてくる。

「大丈夫ですか?声が出なくなってしまったと聞きました
失礼します、少し診せてください」
そう言ってt近づいてきた美波さんは私の首筋に手を当て、目を閉じた。
最初はひんやりしていた指先が、ほんのりと熱を帯びてくる。

「これは呪いの一種ですね」
(呪い?)
「つかまれた場所が首だったので、声帯がまず影響を受けたようです」
言いながら、美波さんは私の首から手を離す。

「残念ながらこの手の呪いは私では……。物理的に影響を受けたというのなら、治療することが出来るのですが……」
申し訳なさそうに美波さんが言って、言葉を続けた。

「この呪いはファントムをベースに使ったもので、かなり力の強い人がかけたようです。無理やりファントムを引き離すとどのような影響があるか予想がつきません」
(そんな……それじゃ、このままなの?)
「ですがあなたの力なら、この呪いを解くことが出来ます」
(え?私の?)
「まだうまく力を使いこなせていないようですが、使いこなせるようになれば、あなたなら容易に出来ます」
確信を持って言われると困惑する。そんな私の表情に気付いたのか、美波さんは元気付けるように微笑んだ。

「まずは自分の力を信じることからはじめてください。
 あなたは自分に力があることを信じ切れていないでしょう?それでは力を使いこなすことは出来ませんよ」
(そういうものかな……)
力があることは分かっているけれど、予知夢を見るだけの力だとおもっていた。
それ以外の力があるといわれても、半信半疑だ。

(信じることから……)
私は美波さんに頷いてみせる。
すると美波さんはにっこり笑っていった。

「あなたなら自分の力を自覚すれば、すぐに使えるようになりますよ。さあ、そろそろ起きる時間ですよ」
美波さんの声とともに、美波さんと冬馬先輩の姿が薄くなっていく。
意識が浮上していき、目が覚めた。
身を起こしてチハルを見ると、まだピクリとも動かない。

(まず自分の力を信じて……力を使いこなせるようにならないと)
でも、力をつかいこなすってどうすればいいんだろう?
誰かに聞いてみようか?

だれに?
①隆
②一郎
③冬馬先輩

21 名前:624[sage] 投稿日:2007/12/28(金) 22:22:56 ID:???
②一郎

(カードでの訓練を教えてくれたし、力についてかなり詳しそうだよね)

私は学校で一郎くんに聞くことを決めると、さっそく制服に着替えを終え、鞄にチハルを入れる。
一階に降りて、洗面所に向う廊下で「愛ちゃん、おはよう」と声を掛けられた。
お継母さんに条件反射で『おはよう』と挨拶して、ハッと喉を押さえる。

「どうしたの? 愛ちゃん」
私の様子に、お継母さんは心配そうに覗き込んできた。

『風邪』『声出ない』と細い息で説明すると、「風邪で声が出ないの?」と逆に尋ねられる。
私はコクコクとうなずいて肯定する。
「じゃあ、学校はお休みする?」
その問いに今度は、首をブンブン振って否定した。

(うーん。やっぱり、不便だな)

私は『待ってて』と身振りで伝えると、急いで自室に戻り、紙とペンを持って来た。
そして、『熱もないし、平気だよ。それより、春樹のことなんだけど』と書いたところで、今度はお継母さんが首を横に振った。

「知ってるわ……私の携帯にも、昨日、春樹から連絡があったの。愛ちゃん、迷惑かけて本当にごめんなさい」
お継母さんは、春樹の我が侭を代弁するように謝ってくる。
『謝らないで。春樹が単なる我が侭で出て行くような弟じゃないって事、わかってるよ』
「……愛ちゃん」
『必ず戻って来るって約束してくれたし、いつも通り、待っててあげよう?』
「そうね。愛ちゃんの言うとおりだわ」
『じゃ、朝食にしようよ。私、お腹空いたな』
「あっ、急いで用意するわね」
少し元気を取り戻したお継母さんは、いそいそとキッチンへ戻っていった。

(板ばさみで一番辛いのはお継母さんだもん。支えてあげなきゃ)

顔を洗い、ゴシゴシとタオルで拭いて気合を入れる。
なにげなく窓を見ると、強い雨が降っている様だ。

(雨か……。あっ、隆を起こさなきゃ)
客間の扉を開けると、案の定、隆は気持よさそうに寝息を立てていた。
普通に起こしても、寝ぼすけの隆はなかなか起きないだろう。

どうやって起こそうかな…
①布団をひっぺ返す
②口と鼻をつまむ
③耳元で囁く

22 名前:625[sage] 投稿日:2007/12/30(日) 15:06:51 ID:???
①布団をひっぺ返す

私は勢いよく、掛け布団をひっぺがす。
隆はTシャツにスウェットパンツの姿で大の字になって寝ていた。

「うーーーん」
隆は布団を剥ぎ取られて寒いのか、眠ったまま顔をしかめている。

(まったくもう。雨だし、少し早く家を出たいのに……)

雨脚がさらに強くなったのか、室内からでもザーっという音が聞こえてくる。
せっかくの文化祭を前に、こんなに雨が降ってしまって大丈夫なのか本気で心配になってきた。
文化祭まで日にちが無いし、グランドの状態も気がかりだ。

(早く起きてよ、隆)

私は隆の身体を大きく揺すってみる。
それでも隆は目を覚まさない。

(困ったな……。って、アレ?)

大の字で寝たままの隆の身体が一部、大きく変化していることに気付いた。
スウェットパンツの股部分の形状が、昨日の寝る前とは明らかに異なっているのだ。

(こ、これは……!)
びっくりして、目を覆いながら、部屋の端まで一時後退する。
けれど、私も一応高校二年生。初めて見るけど、知識だけはそれなりに持ち合わせていた。

(うわっ……。はじめて見たよ…)
見てはいけないと思いつつ、指の間から、しっかり確認してしまう。
健全な男子なら当然の生理現象らしいけれど、春樹は早起きだし、そういった隙は一切見せなかった。
香織ちゃんからも奥手だとからかわれるけど、確かに反論できない。
慣れないものを見て、私は今、ひどく動揺してしまくっている。

(ど、ど、どうしよう。お、起こしちゃっていいのかな……)

私は……
①起こす
②諦める
③お継母さんに助けを求める

23 名前:626[sage] 投稿日:2007/12/30(日) 22:44:40 ID:???
②諦める

(そ、そうよ。私は何も見なかったことにしよう)

なんとか自分に言い聞かせて、また隆のそばへ戻る。
下手に騒げば、気まずい雰囲気になってしまうかもしれない。
何事もなかったかのように、この部分を布団で隠してしまえば良いだけ――。

「……うぅん、愛菜?」
その時、突然、隆が目を覚ました。
私は掛け布団を両手で持ったまま立ち止まる。
(うっ……)
どうしていいのかわからず、私はその場から動けない。
不運なことに、私の視線は相変わらず、特定の部位に注がれたままだった。
そして、私の注目する部位へ誘導されるように、隆の視線が少しずつ移動していく。

「うわわぁぁぁああ!」
隆は飛び起きると、前かがみにしゃがみ込んだ。
敷布団に中腰でかがみ込んだまま、恨めしそうに私を見る。
「見たのか!?見たんだろ!」

私はおおげさに首を振って否定した。
けれど、私がしっかり見ているのを隆はすでに目撃済なのだ。

「えーっと……あの…こ、これは、朝だからいけないんだ!」
苦し紛れに、隆は言い訳ともつかない説明を始める。
「決してエロい夢をみていたわけじゃないんだぞ。俺だけじゃない。春樹だって、宗像兄弟だって男なら全員なるんだからな!」
動揺している私は『はい』と私は大きな相槌で応える。

「こんなの便所に行けば収まるんだ。ということで、俺は便所に行ってくるから!」
わざわざ報告しながら、隆は不自然な格好で立ちあがる。

「もう一度言うが、ホントにエロい夢とかみてたわけじゃないからな!」
そう言って、隆はふらふらと客間から出て行った。

(き、気まずかった……)
私は泣きたい気持ちを抑え、客間の布団を片付けていく。
重い気分のままキッチンへ行き、並んだ朝食の前に座った。

「愛ちゃん。なんだか客間が騒がしかったけど、隆くんと何かあったの?」
ご飯茶碗を私に手渡しながら、お継母さんが尋ねてきた。

どう答えようかな。
①『大丈夫。なんでもない』
②『色々あったけど、平気』
③『へんなもの見ちゃったんだ』

24 名前:627[sage] 投稿日:2007/12/31(月) 14:58:36 ID:???
①『大丈夫。なんでもない』

(はぁ……。言えるわけないよ)
心の中で溜息を漏らしながら、お継母さんに書いた言葉を見せた。

「そう?少し言い争っているように聞こえたけど、愛ちゃんがそう言うなら、私の気のせいだったみたいね」
お継母さんは私の書いた言葉に納得したのか、それ以上追及してこなかった。

朝食を食べ終え、食器をシンクに置いたところで、キッチンに制服を着た隆が入ってくる。
私をチラリと横目で確認して、席に着くと朝ごはんを食べ始めた。

(うーん。やっぱり、気まずい……)

元々は寝ぼすけな隆が悪い気もするけど、ここは私が謝っておくのが正しい気がする。
早めに解決しないと、気まずいままで後々まで引きずってしまいそうだ。
黙って食事をしている隆のところに、私はおずおずと近寄っていった。

『さっきはゴメンね。私の配慮が足りなくて、嫌な思いさせちゃって』
食器を洗っているお継母さんに見つからないように、私はそっとダイニングテーブルに紙を置いた。
「まぁ、気にしてねぇよ」
と言った後、隆は制服の胸ポケットに入れたままのシャーペンを抜き取る。
そして、『気持ち悪いもん見せちまったな』と私が置いた紙に書いた。

(隆……)
私も恥ずかしかったけど、隆はその何倍も恥ずかしかったと思う。

『びっくりしたけど、気持ち悪いなんて思わなかったよ』
「そうなのか?」
私の言葉を見て、隆は私に目を向ける。
私は『うん』と頷いて、『男の子も色々大変だなって思っただけ』と書いた。
それを見て苦笑した隆が、小声で話しだす。

「なんか、スゲー恥ずかしくなってきた」
『今頃になって?』
「違う意味でな。お前と一緒だと、なぜか空回りばかりでさ。愛菜のことを子供っぽいままだと思っていたけど、…俺も相当なもんだ」

自分自身に呆れているのか、隆の口調は投げやりだ。
私は隆に元気になってもらいたくて、わざとふざけた顔をしながら言葉を書いていく。

『隆は子供の頃からちっとも変わってないよ?』
「ちぇっ、愛菜に言われたくないっての」
『ははっ、ならお互いさまって事だね』
「同等かよ。少なくとも、お前よりは俺の方が大人になってると思うぜ」
『私は隆よりもマシだと思ってたのになぁ』
「随分みくびられたもんだな。じゃあ、今度、大人になってるか試してみるか?」
『え? 何を試すの?』
「……だからお前は子供なんだ、馬鹿が」
そう言って、隆は顔を真っ赤にしながら、残りのご飯を掻き込んでいた。

「あら、二人とも楽しそうね。何を話してたの?デートの相談?」
洗い物を終えたお継母さんが、いつの間にかニコニコ笑いながら私たちを見ていた。

私は……
①否定する
②曖昧に答える
③照れる

25 名前:628[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 11:56:00 ID:???
①否定する

『デート!? 違う違う。全然そんなんじゃないよ。ね、隆?』
私は今まで書いていたページをめくり、新しいページに力強く言葉を書いた。
「……全力で否定するなよ」
隆は複雑な表情を浮かべていた。

「それは冗談としてもね」と微笑んだ後、「愛ちゃんのために、タクシーを呼んでおいたわ」とお継母さんは言葉を続けた。
『タクシーって……』
「これから病院に寄ってから学校へ行くのよ」
『えぇ?』
「だって、愛ちゃんは風邪でしょ? ちゃんと病院に行かなきゃダメよ」

(嘘なんだけどなぁ)
そんなことも言えず、困った私は隆に助けを求める。
だけど、隆は気付いていないのか「大丈夫か?」と余計な心配までしてくれている。
(あ、あれ? 風邪って理由で誤魔化すって話じゃ……)
「病院に行くなら、遅刻するって俺から担任に伝えときますよ」
そう言って、鞄を持って立ち上がると玄関に向かってしまった。
「ありがとう。隆くん」
お継母さんは助かるわと言いながら、お礼を言っていた。

結局、流されるまま、私はタクシーに乗って病院へ向う羽目になってしまった。
今思い返すと、声の出ない理由を風邪にしとけばいいと言ったのは、隆ではなく武くんの案だった。
一晩寝たことで、私はすっかり隆が言ったものだと勘違いしてしまっていた。
あの時、武くんは隆のマネが上手くて、私は騙されていたのだ。
本当に紛らわしい。

(にしても、隆も気付いてくれてもいいのに……)
隆と武くんは身体を共有していても、隆は武くんの行動を知らないのだから仕方が無い。
今更、恨み言を呟いてもしょうがないと思いつつ、タクシーの車窓に目を向けると、相変わらずの雨だった。
(そういえば、春樹は何をしてるんだろう。この雨を見ているのかな……)

車の振動が眠気を誘ったのかもしれない。
とりとめなく考えているうちに、だんだん瞼が重くなってくる。
闇に引き込まれるように、私は夢の中へ落ちていった。

私がみた夢とは……
①春樹の夢
②隆の夢
③武くんの夢

26 名前:659[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 15:36:47 ID:???
①春樹の夢

姉さんに呼ばれた気がして目を覚ますと、あの人の顔があった。
「春樹、目覚めたか」
頭痛を振り払うように頭を振って、上半身だけ身体を起こす。
かるく眩暈を覚えたが、耐えられないほどでもない。
真っ白な病室にはベッドが四床並んでいるが、俺だけしか使っていないせいで、空調は適温を保っているのに酷く寒々しい。
任されている研究室の規模が大幅に縮小され、被験者が減ってしまったせいだと、目の前にいるこの男が教えてくれた。
一部の記憶が混乱しているせいで、その言葉をいつどこで言われたのかまで思い出せなくなっている。

「俺は大丈夫です。もう投与の時間ですか?」
「ああ、そうだ」
男は注射器を用意し、アルコールを含ませた脱脂綿を俺の腕に擦り付けた。
ひんやりとした感覚で、これは幻覚ではないんだとようやく理解する。
「どうしたんですか?」
注射器を持ったまま、なかなか動かない男に声を掛ける。
「春樹。本当にこれでいいのか?」
「何を……ですか」
「このまま薬を投与し続ければ、幻覚や錯乱も多くなるだろう。そして、精神を確実に蝕んでいく。昨日も説明したと思うが、お前の自我が崩壊する可能性もある。いますぐ止めて欲しいと言えば、私から皆に話をしよう」
あれだけ恐れていたはずの人が、心配そう俺を見ていた。
その事がやけに馬鹿馬鹿しくて、なぜか笑いがこみ上げてくる。
「続けてください。あなたも望んでいた事ですよね。力を持つ子供が欲しかったんじゃないんですか?」
母さんを痛めつけてまで望んでいたはずなのに、何を躊躇っているのだろう。
まさか、今更になって、父親面をするつもりなのか。
皮肉を込めて放ったはずの言葉なのに、目の前の男の態度は変わる事は無かった。
「これを投与したからといって、力が手に入るとは限らない。それはお前にも昨日説明したはずだ」
「確かに聞きました。でも、可能性がゼロでは無いとも言ってましたよね。俺は力が欲しい。だから、続けてください」
「……わかった」
腕に針が刺さり、透明な液体が俺の身体に注ぎ込まれていく。
また一時間も経てば、酷い頭痛と眩暈に襲われるだろう。

「あの、少しだけ二人で話をしませんか?」
子供の頃はあれだけ大きくて恐かったはずなのに、目の前にいる男は俺よりも小さくなっていた。
実際には俺が成長したんだろうけど、知れば知るほど平凡な男だったことに拍子抜けしているのかもしれない。
いつも俺を阻みながら大きく立ちはだかっていた壁は、この目の前にいる父親だった……はずだ。
「ああ……いいだろう」
男は白衣の女性に目配せして、人払いをした。
そして、俺に向き直るとベッド脇の椅子に腰を下ろした。

まるで春樹自身になってしまったのように、私は目の前の男性を見た。
春樹の気持ちも胸の痛みも、すべて感じられる。
春樹は今、とても戸惑っている。幼い頃から憎み続けてきた冷酷で非情な父親像と目の前にいる父親が大きく食い違っているからだ。
私自身は、はやくこんな事を止めさせなくちゃと焦っているけれど、存在そのものが希薄なのかそれすら曖昧になっている。

どうしよう……
①恐くなり目を覚ます
②そのまま様子をみる
③春樹に話しかけてみる

27 名前:660[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 18:20:53 ID:???
②そのまま様子をみる

「……かあさんは元気か? 見かけた限りでは良さそうだったが」
最初に話しかけて来たのは、あの人の方だった。
「はい、元気です。いつも忙しそうにしています」
「まだ出版社の方に勤めているのか?」
「ずっと勤め続けていますよ。今は、女性向けの経済誌を手がけてるみたいです」
「そうか」

まさか、この人と他愛ない会話をする日が来るなんて、夢にも思わなかった。
この人と俺の共通の話題なんて、母さんの事しかない。
全く話が通じない相手ではないことは、数日の間でわかっている。
俺は見えない父親の幻想と戦っていただけなのかと、ひどく落胆しているのは間違いない。
だけど、いい加減に冷静にならないと。

俺は深呼吸して、気持を切り替える。
相手を知るいい機会でもあるし、子供の頃から何度も考えていた疑問をこの人に尋ねてみようと思い至った。

「少し質問をしていいですか?」
前置きをして、目の前の男を見る。
「なんだ」
「あの……母さんとは…どういうきっかけで結婚したんですか? どうして別れてしまったんですか?」

物心がついた時には、すでに二人の関係は終わっていた。
この人はいつもイライラと焦っていて、母さんに暴力を振るっていた。

「……そんな事を聞いてどうする?」
「単に興味があるんです。一応、俺にも聞く権利があると思いますし」
「随分、冷めた言い方をするものだな。……まだお前は、十六歳だろう」
「俺の歳、憶えていてくれたんですね」

せっかく家庭を築いたのに、簡単に壊してしまえるものなのか、今の俺にはわからない。
そんなにあっけないものなら、最初から結婚なんてしなければよかったのに、とすら思う。
だから、俺は怯むことなく言葉を続けた。

「あなたにとっては過去の話かもしれない。けど、その結果として生まれてきた俺とっては現在なんです。
今の継父の手前もあって、母さんにはずっと聞けずにいました。
教えてください。別れた理由は子供の俺に能力が無かったから、ただそれだけなんですか?」

言い終えると、部屋に沈黙が落ちた。
そして、雨音に気づいて窓の外を見ると、大粒の雫が遠目からでも見えた。
低い暗雲が空を覆いつくし、遠雷が雲間で光っていた。

(春樹……)
春樹のお父さんにも能力があるはずだけど、私の存在は気づいていないようだ。

どうしよう?
①目を覚ます
②様子をみる
③考える

28 名前:661[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 01:37:29 ID:???
③考える

それにしても、ほんとにこの人が春樹の本当のお父さんなのだろうか?
春樹が思っているように、過去と現在ではまったく違う人のようだ。

(それに、この人がチハルがあんなに恐れていた人なの?)
チハルの怯え方は普通ではなかった。
いま、目の前にしているこの人のどこにチハルは怯えたのだろう。
巧妙に力を隠しているのか、それとも春樹を前にして父の顔になっているのか。

(春樹はこの人を平凡な男だっておもってるけど……)
ほんとうにそうなのだろうか?
考えれば考えるほど、春樹のお父さんの姿がはっきりとしなくなる。
過去にお義母さんに暴力を振るった人。
高村の有力者でチハルが怯える能力者。
いま目の前で不思議と穏やかな表情で春樹と話している人。
そのすべてが春樹のお父さんという一人の評価だというのが腑に落ちない。

(なんだろう、すごく違和感がある)
その違和感がなにか分からず、落ち着かない。
当然春樹はそんな私の思いに気づくことなく窓から視線を戻す。
それを待っていたのか、春樹のお父さんは口を開きかけた。
なんと言うのだろうと意識を向けたとき、ふと体が引っ張られるような感覚があり、急速にその場から離れていった。

『……あ』
「お客さん、病院に着きましたよ。大丈夫ですか?」
気づくと、気のよさそうな運転手さんが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。

(あ、病院にいく途中だっけ……)
私は慌てて、運転手さんに頷いてお金を払うとタクシーを降りた。
タクシーがそのまま病院を出て行くのを確認して、私は病院に入るべきかどうか悩んだ。
風邪というのは嘘だし、それなのに声がでないとなったらいろいろ検査されるかもしれない。

(どうしようかなぁ)

①一応診察を受ける
②とりあえず病院に入る
③別の場所へ行く

29 名前:662[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 10:39:18 ID:???
③別の場所へ行く

検査されても無駄だろうと判断して、私は入り口できびすを返した。
病院に行くのはやめて、街に向って歩き始める。
雨が強くて、傘をさしていても肩が濡れていった。

(わからない。春樹の父親って……本当にあの人なの?)

さっきの夢が気になって仕方がない。
鞄の中を覗いてみても、相変わらずチハルの動く気配はなかった。
周防さんに連絡してみようかと考えたけれど、むやみに動かない方がいいと言われていたのを思い出して携帯を閉じる。

(学校へ行くなら、病院のタクシー乗り場まで戻るのが早いけど……)

そう思いながらも、私の足はどんどん病院から遠ざかっていた。
雨に沈んでしまったような灰色の街並みを、私はゆっくり歩いていく。
そしてふと目に留まったのは、薬局の看板だった。

薬局を出ると、私はビニール袋の中から薬を取り出した。
その箱には『睡眠導入剤』と書いてある。
もう一度、私が眠ることが出来れば、あの続きが見られるかもしれない。
これから家に戻ったら、もう誰も居ないはずだ。
(でも、私に何ができるの? 覗き見をしているだけで何か変わるのかな……)

学校に行けば、近藤先生に三種の神器について隆と聞きに行

30 名前:662続き[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 10:48:07 ID:???
すみません。切れた続きです。

学校に行けば、近藤先生に三種の神器のことを隆と聞きに行く約束もしている。
それに、一郎くんに力の使い方について尋ねたいと思っていた。

やるべきことは他にも沢山ある。
だけど、さっきの夢も気になってしまっていた。

通りかかった空車のタクシーに手を上げ、車が止めた。
私は乗り込み、行き先を紙に書き込んで運転手さんに見せる。

その行き先とは
①学校
②家
③他の場所

31 名前:663[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 15:55:02 ID:???
①学校

いろいろ悩んだけれど、結局学校へ行くことにする。
まず力を使えるようになって、声を出せるようにならないと何をするにも不便だ。

(それに力を使えるようになれば、今の何も出来ないという状況が改善されるかもしれない)
私は学校へ着くと、時計を確認する。
ちょうど一時間目が終わる頃だ。
私はまっすぐに一郎くんのクラスへ向かった。
一郎くんのクラスに着くと同時に授業がおわって先生が出てきた。
私はそれを確認して教室を覗き込む。
一郎くんは授業の道具をしまっているところだった。
近くの人に一郎くんを呼んでもらおうと、ノートを取り出して書こうとした時、不意に一郎くんが振り返って私を見た。

「大堂?」
一郎くんの口が私の名前を呼んだのを見て、私は一郎くんに笑ってみせる。
けれど一郎くんは一気に真っ青になると、普段の一郎くんからは想像がつかない慌てぶりで駆け寄ってくる。
クラスの人たちも何事かと一郎くんを見る。

「大堂、これはどうしたんだ?だれがこんなことをした?」
(あ、一郎くんには見えるんだ)
一郎くんが私の首に触れ眉をしかめた。

「兄貴!緊急ってなんだよ突然……っ、愛菜ちゃん!どうしたのこれ!?」
ばたばたと走ってくる足音と声が聞こえたかと思うと、背後から修二くんも私の首に触れて言った。

「なに……あの子?」
「4組の大堂さんだよね、何かあったのかな?」
(あ……目立っちゃってるっ!)
ざわざわとざわめく教室に、私は慌てて一郎くんと修二くんから離れる。

「愛菜ちゃん!」
けれどすぐに修二くんに腕をつかまれて、動けなくなる。

「大堂」
同じく反対側を一郎くんが掴み、完全に逃げられなくなってしまった。

(二人とも、ここじゃ目立つから移動しようよ)
一生懸命訴えるが、声が出ないため伝えられない。
手にはノートとペンを持ってはいるが、二人に両腕をつかまれているため字を書くことも出来ない。
心底困っていると、少し冷静さを取り戻したのか一郎くんがハッと教室を振り返る。

「修二移動するぞ」
「え?あー、OK」
一郎くんの言葉に、修二くんもハッとした様子で教室を見て頷いた。
一郎くんと修二くんの手が離れ、ホッと息をつく。

(よ、よかった)
「雨が降っているから、放送室か、屋上の踊場か……」
「いまならテニス部の部室も人はいないよ」
「大堂はどこがいい?」

①放送室
②屋上の踊場
③テニス部の部室

32 名前:664[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 19:39:38 ID:???
③テニス部の部室

(どうしようかな)
ジッと考え込んでいると、修二くんが私の顔を覗き込む。

「迷ってるなら、テニス部の部室にしなよ。ね?」
そう言うと、修二くんは私の腕を掴んで、スタスタと歩き出した。
一郎くんは慌てて、修二くんの前に出て止めに入る。
「待て、修二。大堂は何も言っていないだろう」
「だって兄貴……愛菜ちゃんの喉……これじゃ、声でないでしょ? 言いたくても言えないよ」
「言うというのは比喩でな……」
「いいじゃん。とにかく、愛菜ちゃん行こうよ」
一郎くんは呆れるという顔で、溜息をついている。
『あの……別に、私はどこでもいいよ?』
おずおずとノートに文字を書いて、二人に見せた。
「じゃあ、決まりだね。早く早く。休み時間終わっちゃうよ」
修二くんは私を引っ張るように早いペースで歩き、一郎くんは仕方なさそうにその後に続いた。

体育館とグラウンドをつなぐ道沿いに、部室棟が並んでいる。
部室棟の中でも、特別に広く、整備されているのが男子硬式テニス部の部室だ。
今までの輝かしい成績のおかげで、他の部室とは違い、優遇されているのは誰が見ても明らかだった。
その中でもエースである修二くんは、高校生屈指の実力らしい。
天真爛漫な修二くんは、実力を鼻にかける態度も平気でとってしまい、以前の私も含めて良く思っていない生徒も多い。
反面、同級生の女子だけに留まらず、先輩や後輩からもかなりの人気があった。

「二名様ご案内。我が部室へようこそ」
修二くんの掛け声で部室のドアを開けると、少し埃っぽい匂いがした。
室内はロッカーと長椅子が並び、ボールや道具が置かれた簡素なものだ。
男子の部室ということで構えていたけど、きちんと片付けられていて清潔感もある。
「綺麗なもんでしょ? 一年にちゃんと掃除をさせてるからね。あ、でも、この辺のロッカーは開けないでね」
私と一郎くんは修二くんの案内で奥に入っていく。
「本当はここ、女子は入れちゃダメだけど、まぁ……うん…色々使っちゃうよね」
修二くんの言葉に、一郎くんは不快の色を露わにしている。

(一郎君、機嫌が悪いのかな?)
少し一郎君の態度が気になるものの、当の修二くんは気にも留めずに自分のロッカーの場所について話している。
一通りの修二くんの説明も終わり、促されるまま私は長椅子に腰を下ろした。
「じゃあ……本題に入ろうよ。ねぇ、愛菜ちゃんのそれって……ナンバー535にやられたものだよね?」
私の隣に座った修二くんは、少し真面目な顔になって尋ねてきた。
一郎くんは長椅子には座らず、立ったまま黙って私の様子を見ている。

なんて答えようかな……
①『うん。ごめん』
②『ナンバー535?』
③一郎くんを見る

33 名前:665[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 15:39:10 ID:???
②『ナンバー535?』

修二くんに書いた紙をみせてから、そういえば熊谷さんの番号がたしか535だったと思い出す。
私はその下に、『熊谷さんの番号だっけ?』と書き足す。
人を番号で呼ぶなんてない事だし、名前をきちんと聞いていたので熊谷さんの番号が何番だったかちゃんと覚えていない。

「熊谷?」
ノートを見て修二くんが首を傾げた。

「コードナンバー535、熊谷裕也。ファントムを操る術に長ける能力者だ。
それなりに高い能力を持っている」
それを見た一郎くんが、補足するように言う。
「あー、そういう名前だっけ?ヤローの名前なんて覚えてられないよな」
兄貴良く覚えてるなーと修二くんは肩をすくめてみせ、一郎くんに向けていた視線を私に戻して私の答えを促す。

『うん、熊谷さんが香織ちゃんを人質にしてね……』
わたしは昨日あったことを大まかに伝える。

『それでね、声が出るようにするには私が力を使いこなせるようになればいいって、美波さんに教えてもらったの』
そこまで書いてふと目に入った時計に私は驚く。

(あ!もう授業始まってる!)
良く考えれば、授業の合間の休み時間はかなり短い。
けれど、部室にいても聞こえるはずの予鈴にまったく気付かなかった。
突然慌てた私に、一郎くんと修二くんは私の視線をたどり納得したように、まず一郎くんが口を開いた。

「内容が内容だからな、音の洩れない簡単な呪いをしておいた。誰かに聞かれても困るだろう」
「そうそう、ゆっくり誰にもじゃまされないように、人が近づかない呪いもしてるし安心していいよ。
 愛菜ちゃんの話を聞くほうが授業より大事だし!」
続けて修二くんがにこにこと笑いながら言う。
二人の気遣いはうれしいけれど、授業をサボらせてしまっているのは気が引ける……。
それに、一郎君のクラスの人たちは私たちが一緒にいることを知っている。
後で先生に何か言われないだろうか?

どうしよう……
①授業に戻るように伝える
②二人にお礼を言う
③早く用件を終わらせる

34 名前:666[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 00:21:40 ID:???
①授業に戻るように伝える

『やっぱり授業に戻ろう? 二人に迷惑を掛けるわけにはいかないよ』
書きながら立ち上がろうとすると、修二くんは「平気だって」と言って私の肩を掴んで止めた。
「修二の言う通り、今は大堂の事が優先だ。このままでは、君自身も不便だろう」
『まぁ、確かに不便だけど……』

「正直、この一件に関しては、俺達の手落ちだった。
だから、気を遣う必要は無いんだ。出来るだけ大堂の力になりたいと思っている。
わかってくれるだろうか…。上手く説明できないが……」
なんだか複雑な顔をして、一郎くんは口をつぐんでしまった。

「兄貴はホント堅物だなぁ。愛菜ちゃんが心配だって素直にいえばいいのに……」
修二くんは呆れたように一郎くんを見た。
一郎くんは図星を指されて、大きな咳払いをしている。

「とにかくね。俺も兄貴も、愛菜ちゃんの声が聞けなくて寂しいなーって思ってるんだ。
だから、さっさと取り戻しちゃおうよ、ね?」
(一郎君……修二君……)
『ありがとう。私、がんばって声を取り戻すよ』
私は二人に向かって笑って見せた。

「……まず、声を取り戻すためには、呪いを解く必要がある。その事は分かるな?」
ようやく気を取り直した一郎くんは、いつもの冷静な口調で尋ねてきた
『うん。私が自分の力を信じて、自覚すれば治るって美波さんは言ってたよ』
「でも愛菜ちゃんはどうやっていいのかわかんない…。そうなんだよね?」
修二くんの言葉に私は『うん』と頷いて答えた。

「ESP訓練やミクロPK訓練で地道に能力を上げていく時間も無い……か」
一郎くんは考え込むように呟いている。
(ミクロPKって何? なんだか難しいこと言ってるよ……)
「大堂がよほど強く願えば力の発動もあるだろうが、状況が揃っていない以上、これも厳しいな」
「じゃあ、兄貴。どうすればいいんだよ。愛菜ちゃん、困ってるじゃん」
「焦るな、修二。今、考えている」
さすがの一郎くんもすぐには答えが出ないようだ。
「でもさー、愛菜ちゃんって本来の能力はめちゃくちゃ高いじゃん。本当だったらこんなに困る必要ないはずなんだよね」
『どういうこと?』
修二くんの言葉の意味がわからず、私は首を傾げる。
「俺達もそうだったんだけど……すごく力の強い奴って、大体物心つく前からスキルがあるんだよ」
『そうなの?』
私が修二君に尋ねたところで、一郎君がようやく口を開いた。
「ヒプノセラピーを試してみるか……」
『ヒプノセラピー?』
聞きなれない言葉に、私はおうむ返しで問いかける。
「催眠療法のことだよ。トランス状態にさせて暗示をかけるんだけど……でも、それっていいの?
過去に退行させたりしたら、兄貴だけが憶えてた、愛菜ちゃんのあれがバレちゃうかもよ」
修二くんは妙に意味深な言葉を呟いている。

①『一郎くんだけが憶えてた…私のあれって?何?』
②『過去に退行……』
③『なんだか、怖いな』

35 名前:667[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 18:54:32 ID:???
①『一郎くんだけが憶えてた…私のあれって?何?』

一郎くんは私の問いに私から視線を逸らせ、考え込むように目を閉じた。
けれどすぐに目を開けていった。

「それならば、思い出す時期だったということだろう。
 それに、俺は別に大堂に思い出してほしくないわけじゃない……。
 ただ、時期が早いんじゃないかと思っていただけだ」
「ふーん?まぁ、催眠療法でそのこと思い出すとも限らないしね」
修二くんは一郎くんの言葉に、意味ありげに言う。
けれど、一郎くんも修二くんも『あれ』については答えてくれる気はないようだ。

(思い出せるなら、今無理に聞くこともないかな……)
私はそれ以上追及することをやめた。

『ところで、そのヒプノセラピー?催眠療法ってどうするの?』
「大堂が特にすることはない。そうだな、楽にしてその長椅子に横になってもらえるか?」
私は頷いて長椅子に横になろうとすると、修二くんが私を止めた。

「あ、ちょっとまって……はい良いよ~♪」
修二くんは長椅子の端に座り、ぽんぽんと自分の腿を叩く。

(え?それって……)
「……なんのつもりだ修二?」
「なにって、決まってるでしょ?ひ・ざ・ま・く・ら。
 こんな硬い椅子にそのまま横になったら頭痛いでしょ?」
それはそうかもしれないけれど、だからといって膝枕は遠慮したい。

「大堂が困ってるだろう」
ため息混じりに一郎くんが言う。

「それじゃ兄貴がする?膝枕」
「なっ!?」
「愛菜ちゃんはどっちがいい?」
修二くんは、引く気はないようだ。

(ど、どうしよう……)
①あきらめて修二の膝枕
②どうせなら一郎の膝枕
③どっちも断固拒否

36 名前:668[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 22:09:17 ID:???
③どっちも断固拒否

二人に膝枕をされている自分の姿を考えただけで、心臓がドキドキして、顔が火照っていくのがわかる。
『無理だよ! ひ、膝まくらなんて…』
「えぇ! そんなのつまんないじゃん」
修二君は私の答えに不満を漏らしている。
(私って、男子に対して耐性の無さすぎる……恥ずかしいな……)
そう思っていると、隣の一郎君が口を開いた。

「修二。これから、大堂をリラックスさせなくてはいけないのに、興奮させてどうする」
「まぁ、たしかに……」
一郎君に諭されて、修二君が大人しくなる。
「しかし、この長椅子では少し寝辛そうだな。どうするか」
「ちぇっ、しょうがないなぁ。……これは俺のスポーツタオルだけどさ、貸してあげる。愛菜ちゃん、どーぞ」
自分のロッカーを開けて、修二君は何枚かのタオルを出しくれる。
私はそれを長椅子に敷いていった。

「では、長椅子に仰向けになって寝てもらえるか?」
私は一郎君に頷くと、長椅子に寝そべる。敷いたタオルから、少しだけ石鹸の匂いがした。
「心配することはない、大堂。人は一日に何度も催眠状態に入るものだ。寝起きや、ぼんやりと考え事をしている時などがそうだ」
「じゃあ、愛菜ちゃんは普通の人よりも催眠状態が多いかもね。ぼーっとしてるしね」
修二君が楽しそうに横やりを入れてくる。私は笑ってそれに応えた。
「次は目を瞑って、深呼吸だ。心を落ち着けて……そうだな。そしてそのまま、しばらく雨の音を聴いてもらえるだろうか」

さっきまで無音だった部室内に再び雨の音が聞こえ出した。
音が洩れないようにしていたのを、二人の力でどうにかしたのかもしれない。
サーッという一定のリズムが心を穏やかにしていく。

「肩の力を抜いて……、そう、そうだ。眠る前の自分をイメージすればいい」
一郎君の落ち着いた声が、優しく響く。
「両腕が次第に重くなっていくはずだ。そして、徐々に身体全体が沈みこむような感覚になっていくだろう」
体全体が、ゆっくり穏やかな闇の中へ沈みこんでいく感覚。とても、安らかな気分だ。

「20から順にカウントダウンしていく。すべてカウントが終わった時、君の声は自然と出ているはずだ。いいか?」
私が頷くと、一郎君はカウントダウンを始めた。
19、18、17……一郎君のカウントダウンが続く。闇の中の私の身体は軽く、どこまでも心地いい。
「3、2、1」
「ゼロ」という声と共に、私は「ぁ…」と、か細い声を出していた。
(声が出た……)
「よし。まだ完全ではないが声が出たな。では、このまま君の力への偏見を取り除いていこう。呪いの根は深い。
元から治していくという強い意志が必要だ。だが、君は心にブレーキをかけ、自ら力を封印しているように見える。
解決するには、その心因的な拘束を取り除く必要がある。遠い過去……心に思い浮かぶもの……少しずつ何かが見えてきただろうか」

①「……お母さんが見えるよ」
②「……知らない女性が見えるよ」
③「……知らない男性が見えるよ」

37 名前:669[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 15:11:02 ID:???
①「……お母さんが見えるよ」

(なんでそんなに悲しそうなの?)
そう思っていると、はらはらとお母さんの頬に涙が伝う。

(なんで泣くの……?)
「ごめんね愛菜」
(なんで謝るの?)
「普通に産んであげられなくてごめんね」
(それって、どういうこと……?)
お母さんは私の問いには答えず、そっと私を抱きしめた。
それで、私がいつの間にか小さな子供になっていることに気づく。

「おかあさん」
自分は話していないのに声がする。

(そうか、これが私の過去?)
「なかないで、おかあさん。だいじょうぶだよ」
子供の頃の自分が手を伸ばしてお母さんを抱きしめる。

「おかあさんがいやなら、もうすてる。いらないから」
「愛菜……あなたは優しい子ね」
「でも、おかあさんいなくなるの」
「愛菜?」
「おかあさん、あいなをおいていっちゃうの。いっちゃやだよ、おかあさん」
「そう……わたしは愛菜を置いていくのね?」
「いやだ、おいていかないで」
泣き出した私をなだめるようにお母さんは私を抱き上げる。

「大丈夫よ、愛菜。おいて行ったりしないわ。……まだね」
「ほんどう?」
「ええ、本当よ。ねぇ愛菜、私はいつあなたをおいていくの?」
お母さんの言葉に、小さな私は首を傾げる。

「わかんない……、たかしにくまさんもらうの。そのあと……」
「そうなの……。ね、愛菜はまだ隆くんにくまさんをもらっていないでしょう?」
「うん」
こっくりと頷いた私に、お母さんは微笑んだ。

「だから、おいていったりしないわよ」
(そうか、お母さんが出て行ったのは私がそういったからなんだ)
いままでなぜお母さんが出て行ったのか分からなかった。けれど、小さな頃の自分は最初から知っていた。
きっとこの会話がある前にも、お母さんと私は先のことについていろいろ話したのだろう。

「それじゃあ、愛菜約束よ。もう、先のことを見ないこと。もし見てしまっても忘れること」
「うん。わかった!」
「愛菜は良い子ね、それじゃあもう忘れてしまいましょう、愛菜」
優しく背中を撫でるお母さんに小さな私はすぐにうとうとと眠り始める。
きっと、この後から私は未来を見ても忘れてしまうようになったのだ。

「そうか、お母さんと約束したんだ。もう先のことを見ないって、見ても忘れるって」
「原因の一つが分かったな。力の枷が緩んだようだ。
 だが、まだ根本に根付いているものがあるみたいだな。もっと別の場所、何か見えないか?」
「別の……」
一郎くんの声に導かれるように、別の何かが見えてくる。

それは……
①「……剣と鏡?」
②「……女の人?」
③「……男の人?」

38 名前:670[sage] 投稿日:2008/01/12(土) 00:37:18 ID:???
②「……女の人?」

私は掠れた声を絞り出して、一郎くんに伝える。
意識の向こうから浮かんできたシルエットが女の人のものだった。
(ううん、ちょっと違う。これは女の子だ……。私より少し年下くらいの……)

「それは、どこだか分かるか? 見えたという女性の特徴も教えて欲しい」
一郎君の声が頭上から降り注いだ。

(どこだろう……日本だと思うけど)
まるでピントの合っていない写真のように、すべてがはっきりしない。
だけど、この場所がそんなに遠く離れた場所でないことは、直感で分かった。

「日本、かな。でも、全然わからない。よく見えないよ」
ぼやけた映像がスライドショーのように、途切れ途切れに切り替わっていく。
時にはフィルムの擦り切れた映画のように観えることもあった。
でもやっぱり、どれが映し出されても、かろうじて輪郭がわかる程度のものばかりだった。

「最初から前世退行させたのは、さすがに無理があったようだな。今日はもういいだろう。俺が次に指を鳴らすと同時に……」
「ちょっと待って、何か……聞こえる……」
一郎くんの言葉をさえぎって、私は意識を集中させる。
最初は曖昧だった言葉が、少しずつはっきりと聞こえだした。

「――草薙剣、八咫鏡を賜ひし我が霊代を以って、天に明かり照らし御神に仕え奉らくと申す」

(神様に祈ってる? そっか……これ祝詞だ)

なぜだろう。私はこの祝詞をよく知っていた。
まるで身体に染み付いた言葉のように懐かしくすら感じる。
聞き覚えの無い女の子の声で奉読しているけれど、とても他人とは思えなかった。

(だけど……)

心に小さな引っかかりを覚えた。
大切な何かを忘れているような気がする。
思い出さなきゃいけないのに出てこないような、ザラッとした違和感がある。

それって何だろう……
①八尺瓊勾玉の存在
②敵の存在
③好きな人の存在

39 名前:671[sage] 投稿日:2008/01/13(日) 13:39:48 ID:???
①八尺瓊勾玉の存在

なぜか八尺瓊勾玉だけを聞き取ることが出来なかった。
でも、私の知っている祝詞は三種の神器がすべて揃っていたはずだった。

(幼い私が力を捨ててしまった時のように……勾玉も心の枷になってるという事?)

剣と鏡と勾玉はご神体だった。
私は巫女として祝詞を奉読したり、神楽を舞ったりしていたのだ。
そして、神託を帝に……。

「私は……巫女として…神様の声を…神託を告げる役目だったよ」

声に出して認めた瞬間、ぼやけた映像が鮮明に変わっていった。
まばゆい光に包まれて、意識が吸い込まれる感覚に襲われた。

――ずっとずっと昔、人々がまだ八百万の神々だけを信じ、祈りを捧げていた時代。
日本がようやく一つの国として成り立ち始めた頃、私は生まれた。
でも、混乱した時代はまだ続いていた。内乱は収まらず、国の存在もまだ強固なものではなかったのだ。

先代の巫女から選ばれ、帝の元で私は託宣の巫女として生きていくことになった。
豪族の娘だった私は故郷を離れ、神殿に幽閉され、日々を泣いて過ごしていた。
まだ子供で、巫女としても未熟だった私には、味方になってくれる者がだれも居なかったからだ。
そんな時、一人の少年と出会ったのだった。

ガタッという物音を聞き、私は身をすくめた。
「こんな遅くに……だれ?」
怖くなった私は女官を呼ぼうとして闇に目をこらす。すると、一人の少年が立っていた。
「君こそだれ? ここはだれも入っちゃいけないはずだよ」
少年は質問を質問で返してくると、私の傍まで歩いて来た。
「……まだ童だね。この神殿にいるっていうことは、君は巫女かな」
闇の中、ジッと探るような視線で見られている事に、沸々と怒りが湧いてくる。
「あのねぇ……あなたもまだ童でしょ。それに、女性の寝所に入ってくるなんて、失礼よ」
「あっ、ごめんっ」
ようやく気付いたとばかりに驚くと、少年は膝を折り、丁寧に頭を下げてから再び口を開いた。
「数々の非礼をお許しください、姫君」
少年はうやうやしく詫びてきた。
その仕草から、この男の子は下賎の者ではない、と思う。
「じゃあ、ここからすぐに出て頂けるかしら」
私は突き放すように少年に向って言った。
「わかったよ。だけど、一つだけ質問していいかな?」
「いいよ。何?」
「君……泣いてたよね。何か辛い事でもあったの?」

辛い事って
①寂しいのかもしれない
②悔しいのかもしれない
③考える

40 名前:672[sage] 投稿日:2008/01/14(月) 13:27:34 ID:???
①寂しいのかもしれない

「辛いというより、少し寂しいのかも。だけど……こんな名誉な事は無いって父様も母様も喜んでくれたのよ。
私のような者でも、お仕えさせて頂くことができるんだもの」

大役を任されたからには、精一杯尽くさなくてはいけない。

「君って偉いね。感心しちゃったな」
「そ、そんな事ないよ」
私は恥ずかしくなって、俯いてしまう。
「あのさ、もう一つだけ質問。君の名前……聞いてもいいかな?」
少年は照れたような笑顔を向け、私に尋ねてきた。
人さらいや賊の類ではなさそうだと安心し、私は口を開く。
「私の名前は壱与。壱与って呼んでくれていいわ。あなたのお名前も教えて?」
「君が…出雲の大豪族からの人質……」
「どうしたの??」
「……あぁ! そういえば、君に出て行くように言われてたよね。ごめん、すっかり忘れてたよ」
そう言って少年は立ち上がろうとする。
私はそれを慌てて止めた。
「ま、待って」
「どうしたの?」
「私ね。もう少しだけ、あなたとお話ししていたい……」
「いいの? 泣き声が聞こえてきて迷い込んだだけだし、僕が居たら迷惑じゃない?」
「とっても故郷が懐かしくなっちゃったんだ。お願いだよ、もう少しだけ……」
「わかったよ、壱与。君の故郷の話、たくさん聞かせて?」
「うん。あのね……」

少年は私の語る故郷の話を楽しそうに、興味深く聞いてくれた。
久しぶりの楽しい会話に、心が弾む。

「でね、手習いも沢山あって。難しくって、すごく苦手だったんだよ」
「僕も手習いは嫌いだな。やっぱり僕たちって、似てるね」
二人とも顔を見合わせて笑い合う。
クスクスと声を抑えて、口うるさい大人に見つからない様にするのがとっても楽しい。

「……僕、そろそろ戻らなきゃ」
「そっか、もう遅いもんね。また来てくれるかな……えっと」
まだ名前を聞いていない事を思い出す。
少年は胸元をゴソゴソと探り、首にかけていた翡翠の勾玉を取り出した。
「これは僕の宝物なんだ。次に会う時まで預かってて」
私の手に、深緑の宝石が握られる。
月光を浴びてキラキラと光って、綺麗で、この勾玉は少年みたいだな、と思った。
「じゃあね、壱与。さよなら」

私は少年の背中を見送り、寝床に戻る。
(いい子だったな。でも、名前は教えてくれなかったよね…)
上手くはぐらかされてしまった気がする。
少し残念だったけど、宝物を預けてくれたということはまた会えるということだ。
私は翡翠の勾玉を握り締め、目を閉じた。

①現在へ戻る
②続きを見る
③考える

41 名前:673[sage] 投稿日:2008/01/15(火) 14:40:12 ID:???
壱与ってなんて読むんだろ?いよ?

②続きを見る

(そうだ……でもあの子には結局しばらく会えなくて……)
私の手元には少年が残した勾玉だけがあった。
それだけが、あの夜のことが現実にあったことだと教えてくれる唯一のものだった。
私は少年に預った勾玉をいつも懐に忍ばせていた。
首にかければ大人に見つかって取り上げられるかもしれなかったからだ。
それでもこの地へきて唯一楽しかった記憶は、私に少しの強さをくれた。
次に少年に会ったときに笑顔でいたいという思いが、泣き暮らしていた私から涙を消し去った。

「壱与は最近明るくなったわね、よかったわ」
先代の巫女は優しい人で、私の母のようでも姉のようでもあった。
私と同じように前の巫女に選ばれ、神殿へ入った人だ。
私と違うのは帝の血縁者ということくらい。
先代の巫女の下、いろいろな儀式や占い、舞を覚えていく日々。

「壱与は本当に力が強いわね。私なんか足元にも及ばないわ」
「そんなことは……」
「ふふ、謙遜ししないの。あなたを選んだ私の目に狂いはなかったってことでもあるのだから」
「……はい」
「それに、これなら私もなにも思い残すことなく安心して巫女を降りられるわ」
「え!?」
唐突な言葉に、私は驚く。

「驚くことではないでしょう?代替わりの為に次の巫女を選ぶのだから」
「そう……ですよね」
「これからはあなたが帝の為に、神託をうけるのよ。あなたなら大丈夫」
「はい……」
それから、ほどなくして巫女の代替わりの儀式の日取りが決められた。

そして儀式の前夜、私は眠れずぼんやりと勾玉を見つめていた。

「壱与」
唐突に名前を呼ばれハッと顔を上げると、勾玉をくれた少年がたっていた。
あの日からほぼ一年近い時が流れていたけれど、私が彼を間違えるはずが無かった。
それくらい、少年の印象は色あせることなく私に残っていたのだ。

「あなた……!」
「久しぶりだね壱与。元気にしていた?」
驚く私に少年は微笑んだ。

もう会えないかと思っていた私は…
①うれしくて微笑み返した
②なぜ今まで会いにこなかったのかと怒った
③感極まって泣いた

42 名前:674[sage] 投稿日:2008/01/15(火) 20:54:16 ID:???
「いよ」でOKだと思う 

②なぜ今まで会いにこなかったのかと怒った

「なぜ今まで会いに来てくれなかったの? ずっと待ってたんだよ!」

何度も思い描いた出会いの光景なのに、想像のように可愛く振舞えなかった。
会ったら笑って迎えようと思っていたのに、不意に出たのが恨み言だなんて子供過ぎる。

「あの……違うの、これは、えっと……」

どうにか取り繕おうとする私の傍らに、少年は微笑んだまま腰を下ろした。
その横顔は記憶していた少年より、幾分大人びている印象だった。
一年の間に、背も伸びて、体つきも男の子らしくなっていた。

「待たせて、ごめん。少し大和から離れていたから、会えなかったんだ」
「離れてたって……」
「これは僕からのお祝いだよ。壱与にとっての宝物になったら嬉しいけど……」
そう言って手渡してくれたのは、メノウの勾玉だった。

(このメノウ……もしかして……)

「出雲のメノウだよ。これで壱与が元気になってくれたらいいな」
「ど、どうして! 出雲だと知って……」
「故郷の話をしてくれた時に、もしかしてと思っていたからね。
壱与が一番喜んでくれる物は何かなって、これでも、随分考えたんだよ」

私は受け取ったメノウの勾玉をギュッと握り締める。
王国だった故郷も、この大和王権に下って十数年。今はただの一豪族に過ぎない。
メノウは王国として栄えていた故郷の誇りと、懐かしい潮の香り、なにより父と母の笑顔を運んでくれた気がした。

「ありがとう……。ずっと、ずっと大切にするから!」
「そう言ってもらえて、僕も嬉しいよ。貸して、つけてあげるから」
手が首元にまわされ、紐が結ばれる。くすぐったくて、思わず肩をすくめた。
「ごめん。嫌だった?」
「ち、違うの。続けて」
つけ終わったのを確認して、私はずっと預かっていた少年の勾玉を返した。
少し寂しいけれど、私には少年から貰った新しい宝物がある。

それから、私たちは自然とお互いの出来事を話し始める。
一年間を埋めるように、夜通し語り合った。

「あっ! 僕、もう行かなきゃ……。もっと壱与と話していたかったな」
「私も。でも、もう私は……」
(託宣の巫女になったら、簡単には会えないよね)
「そんな顔しないで。すぐにまた会えるから。それじゃ」

(あっ、行っちゃった。そういえば、また名前を聞けなかったな)

①すぐに会えると言った意味を考える
②少しでも休む
③メノウの勾玉を見る

43 名前:675[sage] 投稿日:2008/01/21(月) 11:43:44 ID:???
③メノウの勾玉を見る

メノウにはたくさんの色があるけれど、青メノウは出雲でしか産出しない。だから、青メノウは出雲石ともよばれている。
けれど出雲の民は青メノウのほかに大事にしている色があった。
それは、彼が持ってきた赤いメノウだった。
通常より大きなつくりの勾玉は、昔、玉祖命が出雲のメノウを使って作った八尺瓊勾玉を模したものだろう。

(偶然かもしれないけれど、もしそうならうれしいな)
出雲の民にとって、出雲で産出したメノウが大伸に献上されたことは誇りだ。

(あれ?)
そう思って首にかけられた勾玉をぎゅっと握ると、懐かしい故郷の波動とは違う、けれど不思議と安らぐ波動が感じられた。
巫女としての修行を積んできた私だから感じられる波動。
巫女に選ばれる前の私なら気付かなかっただろう。
どこまでも穏やかで、静かな……そう、月のような。

(本当に八尺瓊勾玉を忠実に再現したのかな……?)
八尺瓊勾玉は陰、つまり月をあらわしているといわれている。
まだ正式な巫女ではない私は本物の八尺瓊勾玉を見たことはないけれど、きっとこの勾玉に近いのではないだろうか?
私はそっと勾玉から手を離し、床につく。

(あしたは大事な儀式だもの、ちゃんとやすまなくちゃ)
目を閉じてしばらくすると、ふと身体が浮き上がるような感覚に襲われる。

(あ、また……?)
(そうだ、私はずっと前から夢を見ることが多かった)
巫女に選ばれる前から、不思議な夢を見続けていた。
巫女に選ばれ、修行をするにつれはっきりとした夢を見るようになった。

(今度はどんな夢だろう……)
(この夢は……だめ、見てはいけない……!)
過去の私と現在の私の意識が交じり合う。

この時私が見た夢は……
①過去の夢
②近い未来の夢
③遠い未来の夢

44 名前:676[sage] 投稿日:2008/01/22(火) 04:11:00 ID:???
②近い未来の夢

(この夢は……駄目……!)
それは私が封印しておきたい、最も思い出したくない過去だった。
月の波動に導かれるまま、押し込めていたはずの記憶が再生されていった。

八咫鏡には、変わり果てた故郷の様子が映し出されている。
「な、なんで……こんな事に……出雲が…」
身体が震えて、涙が溢れてくる。
真実を見通す鏡が映し出したのは、大和の兵が出雲の村々を焼き払っているところだった。
収穫間近の稲田も、家もすべて炎に包まれている。
たくさんの人々は戦火に逃げ惑い、無残に殺されていた。

「壱与。とうとう視てしまったんだね」
振り向くと、そこには冷たい表情をした少年が立っていた。
私は立ち上がり、少年に掴みかかると叫ぶ。
「帝……あなたがやったの!!」
少年は観念したように肩をすくめると、溜息を漏らした。
「そうだよ。八尺瓊勾玉を模して作ったものでも、君の力を抑えることはできなかったんだね。
できれば何も知らないまま済ませたかったんだけど……巫女としての才がこれほど秀でているのは誤算だったな」
帝は悲しげな顔をすると、私から視線を逸らすように胸元にある赤い勾玉を見た。
そして、さらに言葉を続ける。
「出雲は元々は根の国だ。民草でさえ怪しげな鬼の力を使いこなす。
とくに王族は君も含め、優秀な鬼道の使い手ばかりだ。
今は大和に支配されていても、その強い力は必ず仇となる。だから、滅ぼすんだ。この国を守るためにね」

(そんな……)
父は争いを避け、無血で王の座を退いた。
託宣の巫女も、名ばかりの人質に過ぎなかった事だと最近の夢見で知った。
それでもここで暮らした日々や、先代の巫女、何より帝を信じていたかった。
すべて無駄だったというなら、いっそ大和国と戦って散った方がマシだったとさえ思う。

「……父様、母様も殺したの? もう私の故郷は無いというの?」
密かに抱いていた恋心や尊敬の念は吹き飛んで、憎悪だけが心を埋め尽くしていく。
どす黒い感情のせいで、ひどく吐き気がした。

「僕に話してくれた沢山の出雲での出来事、兵をさし向けるのにとても役に立ったよ。
残念だけど、君の親や親戚の鬼はすべて殺した。だけど、壱与だけは僕の大切な宝物だ。
この翡翠よりずっと美しい鬼の姫君。伊勢に宮を用意させてあるんだ。そちらで……」

ドンッ

「触らないで!」
抱きしめようとする帝を突き飛ばすと、奉ってある神器の一つ、八咫鏡を地面に思い切り叩きつける。
青銅の鏡は真っ二つに割れて、転がった。
(信じるものすべて、無意味だった……嘘で塗り固められていた……)
そして、草薙剣を手に取る。

①帝を刺す
②自分を刺す
③思いとどまる


45 名前:677[sage] 投稿日:2008/01/22(火) 16:36:11 ID:???
③思いとどまる

ずしりとした剣の重さと、柄のひやりとした冷たさに私は我に返る。

(私は、今何を……)
剣先を帝に向けたまま呆然と立ち尽くす。
そんな私を帝は静かに見ていた。
それから再度私にゆっくり近づいてくる。

「壱与、君に人を傷つけることは出来ない……。君は僕とは違う。優しい人だから」
「……父様だって優しい方だったわ」
「……壱与の親なら、優しい人だっただろうね」
「そうよ、争いを好まない優しい人だった……」
「そうだね……だけど、君の父上が亡くなったら?他の王族は反旗を翻さないと言い切れるかい?」
言われて私は言葉に詰まる。

(言い切れない……)
私は父様の弟を思い出す。
父様と違い、大和と徹底的に争う姿勢を示していた。
手から力が抜け、剣が足元に落ちる。

「僕には大和の民を、大地を守る義務がある」
(私はこの地と民を守ることが役目だ)
帝の言葉と父様の言葉が重なる。
私にだって分かっているのだ、国を治めるためには時に非情にならなければならないことを。
胸の内の憎悪が見る見るしぼんでいく。

「壱与、僕とおいで。君だけは僕が守るから」
私は差し出された手をぼんやりとみつめる。


「……っ!」
「大堂!?」
「愛菜ちゃん!?」
二人の声に意識が現実に戻っていることに気付く。
そしてすべてを思い出したわけではないけれど、分かった事もある。

「私が……私が……神器の力を解放してしまった……」
「大堂落ち着くんだ」
「愛菜ちゃん、神器ってなに?」
「修二、今は黙っていろ」
「なんだよ、兄貴は何か知ってるのか……?」

もしかして……
①「一郎くんには記憶が残っているの?」
②「修二くんは何も覚えていないんだね?」
③「私は、償うために生まれてきたの?」

46 名前:678[sage] 投稿日:2008/01/22(火) 23:07:25 ID:???
③「私は、償うために生まれてきたの?」

「……償う必要は無い。神器の力の解放は必然だったのだろう。鏡が二つに割れたのも、また必然だ」
「でも……私が神器のバランスを崩したから……」

鏡を壊したせいで、神器の力は開放され、人の魂に取り付いたのだ。
一時の激情に流されて、私は取り返しのつかない事をしてしまった。

「俺は……過去の過ちを責めるつもりで催眠療法をしたのではない。
ただ、始まりを知っておくべきだと判断したからだ。
俺達の能力は神々の呪いだ。決して歓迎すべきものではないと……それを知っていて欲しかったんだ」
「……兄貴」
言葉を選んで話す一郎君の様子に、修二君も黙り込んだ。
雨音を含んだ沈黙が部室に落ちる。
その沈黙を破ったのは意外にも一郎君だった。

「このままでは、君の力の開放は不完全なままだったな。
美波という人物が言っていたように、君自身が望まなければ力は得られない。
過去での出来事、今までの経験から君の意見を今一度問いたい。いいだろうか?」
「うん」
私は頷くと、一郎君を見た。
「声は完全に戻っていると思う。だが、それ以上の能力が欲しいのか尋ねたい。
忌わしい力だが、正しく使えば大堂の助けにもなるだろう。
もちろん誰かを傷つけることもある。時には非常さも必要だ。それでも、君は力を望むのか?」

(力……)

昨夜、隆も言っていた事だ。
使えない予知夢では誰も傷つくことはなかった。
隆は一緒に逃げようと言ってくれていたけれど、その場になったらやっばり身を挺して守ってくれると思う。

冬馬先輩は母との約束を守り、何度も私を助けてくれた。
周防さんには、命を脅かすほどの危険な目に遭わせてしまった。
チハルは今も動かないままだ。
春樹だって、私を守る力を得るために家を出て行った。

もし私が能力を得れば、頼ってばかりじゃなく、一緒に戦える。

(一郎君が言う、正しい使い方が私に出来るのかな)
(修二君はこの力の事、どう思っているんだろう)
(そういえば、幼い冬馬先輩は力を制御できず、たくさん辛い思いをしたんだっけ。私もそうなるのかな)

考えが浮かんでは消える。

①力を望む
②望まない
③修二君に話しかける

47 名前:679[sage] 投稿日:2008/01/23(水) 16:57:35 ID:???
①力を望む

もう、守られているだけなのは耐えられない。
「それでも私は、力がほしい。自分で身を守れるようになれば……っ!?」
力がほしいと明確に口に出した瞬間、ぐらりと視界がゆがんだ。

「な、なに……、これっ?」
激しいめまいを感じて、ぎゅっと目を瞑る。
それと同時に身体の中の何かが作り変えられていくような、不思議な感覚に襲われた。
目を瞑っていても視界が回る気がする、それと同時に激しい吐き気が襲ってくる。

「大堂、落ち着け」
「愛菜ちゃん、ゆっくり呼吸をして」
一郎くんと修二くんの声が聞こえるけれど、その言葉の意味を理解する前に今度は身体の内から何かがあふれる感覚が来る。

「大堂!」
「愛菜ちゃん!」
「修二!」
「わかってる」
私の意識の外で、一郎くんと修二くんの声が聞こえる。

(なに?どうなってるの……?これが力?……押えられないっ)
本能がこのまま力を解放してはいけないと警告する。
けれど、押える術が分からない。

(ちがう……知ってる。知ってるはず……)
昔から自然と押えてきたはずなのだ。
何とかその方法を思い出そうとするが、内からあふれてくる力に思考を奪われうまく思い出すことが出来ない。

(?)
懐かしい何かが、私の身体を包む。それと同時にあふれ出て行く力が止まる。

「大丈夫か?」
「大丈夫?」
顔を上げると、私を挟むようにして立った一郎くんと修二くんが私を囲うように両手をつないでいた。
私は二人が作った輪の中にいる。
その輪の内に力が満ちている。

「鏡の力……」
「大堂、力を制御することはできるか?」
「え?あ……、うん、もう大丈夫」
私はさっきどうしても思い出せなかった力の制御方法を、思い出す。
私の言葉を聴いて、二人は手を離した。

「ありがとう」
「力が戻ったみたいだな」
「うん」
「気分は悪くない?」
「もう大丈夫だよ」
私は二人に笑ってみせる。
身体の中の内に、力が満ちているのが分かる。
過去に帝が鬼の力と呼んだ力と、巫女としての力だ。
そして、力がもどってふと疑問に思ったことを聞いてみる。

それは……
①剣の力をもつ人が誰か
②勾玉の力の行方
③二人に前世の記憶があるのかどうか

48 名前:680[sage] 投稿日:2008/01/23(水) 19:23:30 ID:???
①剣の力をもつ人が誰か

(そうだ。武君は二人が剣を見つけていたって言ってたよね)

「あの……ちょっと聞いてもいいかな?」
「ん? なに、愛菜ちゃん」
「なんだ、大堂」
二人がほぼ同時に私を見てきた。
その視線を感じながら、言葉を続ける。

「鏡は一郎君と修二君だよね。……剣って誰なの?」
(教えてくれるのかな……) 
不安の入り混じった視線を二人に向ける。
けれど私の事なんて眼中にないように、二人は顔を見合わせていた。

「早っ、もう来てるよ。あーあ、アイツのこと嫌いなんだよなぁ」
「力の解放で俺達の結界が弱まったからな」
「ちょっ……二人とも何を話しているの? 力が戻った私にも判らないこと?」
私の問いかけで、修二君がようやく私に気づいたみたいだ。

「ああ、ゴメン。なんだったっけ」
「剣が誰なのか教えて欲しいんだけど……」
「その剣さん、部室の前まで来てるよ。直接きいてみたら?」

(部室の前? 直接きく?)
「ストーカーみたいに付き纏って……いいかげんにしろっての」
ぶつぶつと文句を言いながら、修二君は部室のドアまで歩いていく。
そして、ドアを勢いよく開けた。

―ゴンッ

大きな鈍い音がして、ドアが途中で止る。
「あのさー。これ外開きだから、そこに居たら危ないよ」
「…………」
「と、冬馬先輩!?」
冬馬先輩がぼんやりと立っていた。
鮮血が額からツーッと伝い落ちているのに、相変わらずの無表情だった。

私は……
①冬馬先輩に駆け寄る
②修二君を怒る
③一郎君を見る

49 名前:681[] 投稿日:2008/01/24(木) 04:46:47 ID:hY0TUzCa
①冬馬先輩に駆け寄る

「冬馬先輩、血が出てるよ……ちょっと待って」
血が滴っていることを除けばいつもの通りの冬馬先輩の前で、私は慌ててポケットに手を突っ込んでハンカチを取り出す。
冬馬先輩は傷口に当てようとしたハンカチを私の手ごと遮って、言った。

「ハンカチが汚れます、愛菜」
「ハンカチって……そんなことより今は冬馬先輩の怪我の方が大事でしょう!」
思わず声を荒らげた私にも冬馬先輩は顔色ひとつ変えず、空いている方の手の甲で無造作に額の傷を拭った。
「この程度の怪我なら放っておいても何ら問題はありません」
絶句する私の後ろで修二君がこれ見よがしに大きなため息をついた。

「はー、やれやれ。お人形さんに間違って血が通っても、お人形さんはお人形さんだね。所詮まがいものだから、心配されたってわからない」
「……修二」
戒めるようにそう声をかける一郎君に、修二君は「だってホントの事でしょ」と付け加えた。
(修二君、どうして、そんな言い方……)

修二君の悪態にも相変わらず無表情の冬馬先輩の額から、新たな赤い雫が伝い落ちた。見るに見かねて再びハンカチを傷口へ向けようとする私の手はまたしても冬馬先輩に阻まれた。
「お願い冬馬先輩、手をどけて」
「愛菜こそ、手を下ろしてください」
努めて冷静に話し掛けたのに、少しも聞き入れてくれる様子のない冬馬先輩に次第に苛立ちが募る。
「ねえ冬馬先輩、私先輩の怪我が心配なの」
「先ほども言いました。この程度の怪我は僕にとってなんでもありません」
「……」
「ただ、流血が不快なのでしたら謝ります」

「……冬馬先輩の、ばかっ!」
冬馬先輩の言葉に、気がついたらそう叫んでいた。目の前の冬馬先輩の目がいつもよりほんの少し見開かれているような気もしたけれど、血が上った私にはどうでも良いことだった。
「そんな事、言ってないじゃない! 冬馬先輩、怪我して血が出てるんだよ? 問題ないなんて、そんな訳ないじゃない!」
「まあまあ愛菜ちゃん、落ち着きなよ」
私の剣幕に驚きながらも、すかさず修二君が間に割って入るとなだめるように私の手をとった。
「センパイがヘーキって言うんだからヘーキなんでしょ。愛菜ちゃんがそんなに気にすることないって、ね?」
「……№711の言うとおりです、愛菜。今ここで流れているのは、あなたの血ではないのですから」

あんまりな物言いの修二君の手を見もしないで振り払って、私は冬馬先輩に詰め寄った。
「どうして、どうしてわからないの? たいしたことないって言ったって血を流したら、怪我をしたら痛いでしょう? 冬馬先輩が私の目の前で痛い思いをしてるのに、なんでもないとか、平気とか……そんな訳、ないよ」
思いつくままに冬馬先輩に言葉をぶつけながら、次第に視界がにじんでゆくのを感じた。ぼんやり見える冬馬先輩はなぜか悲しげに私を見ている。
「愛菜」
「先輩のばか。……どうしてもっと先輩自身のこと、大事にしないの」
「愛菜。……どうか、泣かないで」
「…冬馬せんぱいの……ばか」
「……すみません」
泣きじゃくりながら子供みたいに何度も何度も繰り返し責める私に、冬馬先輩は腹を立てるでもなくその度丁寧に謝った。
そんな意味のない問答を繰り返す私たちの横で、修二君が小さくつぶやくのが聞こえた。
「愛菜ちゃんの言うとおり、ほんとセンパイって馬鹿だよねー。……でもさっきのオレはそんなセンパイよりさらに馬鹿、かな」

(……? 修二君…?)

さて、どうしよう?
①冬馬先輩に自分を大事にするよう約束してもらう
②意味深な修二君の発言が気になる
③とりあえず一郎君に剣が誰なのか尋ねる

50 名前:681です[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 04:48:23 ID:???
↑あげちゃった、ごめんなさいー!!!

51 名前:682[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 11:27:53 ID:???
①冬馬先輩に自分を大事にするよう約束してもらう

「冬馬先輩、約束して? 自分を大切にするって」
「はい。あなたの命令ならば善処します」

(命令って……)

「どうしてわかってくれないの? 命令とかじゃなくて、ただ冬馬先輩が心配なんだよ。
冬馬先輩が傷つけば、私だって痛いんだよ。平気じゃないから、涙が出たんだよ!」
「痛い? なぜ……どこが痛むんですか?」

冬馬先輩は、心配そうな顔で私を覗き込む。
私は涙を拭って、自分の胸元をギッと押さえた。

「ここが痛くなるよ。すごく」

冬馬先輩の指先が導かれるように、私の胸に触れる。
一瞬、身体がビクッと強張ったけれど、私は自分の心臓にその手をおいた。

「なっ、アイツ……」
何か言いかけている修二君の前に、一郎君が割り込んでくる。
そして、修二君に向って黙ったまま首を振った。
「……兄貴、わかってるって」
修二君はそう言うと、諦めたような溜息を吐きながら長椅子に乱暴に座った。

「愛菜の鼓動が伝わってきます……」
冬馬先輩は確認するように、小さく呟く。
「冬馬先輩が自分自身を粗末にするたびに、私の心臓がズキッズキッて痛くなる。まるで自分が傷ついてしまったようにね」
「……今も痛みますか?」
「うん。先輩の額が痛むように、私のここもまだ痛いよ」

裂かれた額の皮膚から赤い血が滲み出ている。
痛々しくて思わず目を逸らしたくなるけれど、私はハンカチで溢れる血を拭っていく。

「大堂。その傷口に直接触れてみろ。今なら出来るだろう」
さっきまで黙ったままの一郎君が、突然話しかけてきた。

「自分自身を信じてみるんだ。君こそ、自分を粗末にするな」

どうしよう……
①「一体、何が出来るの?」
②触れてみる
③ためらう

52 名前:683[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 16:43:53 ID:???
②触れてみる

私は言われるままに、そっと冬馬先輩の傷口に触れる。

(あ……、そうか)
そして次に何をすればいいのか、悟った。
癒しの力を指先に集めて傷が治るようにと念じる。
すると触れた場所から、みるみるうちに薄皮が再生され傷口がふさがっていく。
同時に流れていた血も止まった。

「よかった……」
「ありがとうございます」
いいながら無表情のまま右手を私の頭の上に乗せると、不器用に撫でる。

「おい、なにやってるんだよ」
途端、修二くんが冬馬先輩につっかかる。

「修二……」
それをあきれたように一郎くんがたしなめている。

「どうして修二くんはそんなに冬馬先輩につっかかるの?」
たしかに修二くんは他人を見下すような所があるし、結構自分勝手に行動することも多い。
けれど、ここまであからさまな行動をするのは冬馬先輩にだけのような気がする。

「どうしてって……、うーん。なんか分からないけど無性にムカつくんだよね」
「理由が分からないの……?」
「そうそう、相性なんじゃない?」
「そういうもの……?それじゃあ一郎くんも?」
「いや、俺は……理由はわかっている」
「?」
「……大堂はすべてを思い出していないようだが、遠からずすべての記憶が戻るだろう。
 今言っても大差は無い」
「う、うん?」
「その剣」
そういいながら、一郎くんは冬馬先輩を見た。

「先輩が剣……」
そういえば、部屋の前まで来ていると言っていた。

「剣は過去、大堂の……いや壱与の一族を滅ぼすために使われた」
「え?」
「神器である剣の力は強大だ。鬼の一族であろうと抵抗することは難しい。
 鏡はすべてを見ていた。剣の力が振るわれるのも、それを悲しむ壱与のことも。
 だから鏡である俺たちは、壱与を泣かせた剣を快くは思っていない」
「なるほどー、兄貴って何か隠してるとおもってたけど……前世の記憶が残ってるのか」
「……」
冬馬先輩は一郎くんの言葉に反論することもなく、立っている。
不意に訪れた沈黙に、耐え切れなくなる。

なにか話さないと……
①「先輩は剣の記憶があるんですか?」
②「でも、私は壱与じゃないですから……」
③「えっと…、鏡と剣は揃ったけど、勾玉は?」

53 名前:684[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 20:31:57 ID:???
①「先輩は剣の記憶があるんですか?」

冬馬先輩は頷くと、私を見る。
「はい。……はっきりと思い出せるものは少ないですが、他の転生の記憶もあります」
「てか、理由なんて今更どーでもいいよ。この人がムカつくのに変わりは無いしさ。
それよりも……兄貴が俺にまで隠し事をするから、話がややこしくなるんだよ」

一郎君を非難する姿を見て、私はふと疑問になった事を口に出してみた。
「修二君。前世のこと、全然記憶に無いの?」
「全然ないよ。組織の一部が俺たちを鏡、この人を剣だと呼んでるって話は知ってたけどね。
ヘンな通称つけられてんなぁって思ってたけどさ」
「あれっ…だけど、剣だと組織に教えたのは二人じゃないの?」
「よく知っているな、大堂。それは、俺が言った事だ。記憶を持たない修二には知らされていないし、憶えてもいないだろう」
間を置かず、一郎君が答える。
そして、修二君をジロッと睨みながら、言葉を続けた。

「文句を言っているようだが、修二。お前、俺が説明しようとしても逃げていたじゃないか」
「そうだっけ?」
「組織の事だって、俺だけが動いて、ほとんど何もしていなかっただろう」
「でもさぁ」
「だいたい、お前が大堂に力の事を勝手に話してしまったせいで……」
「あぁ。もう、わかったよ」
一郎君と修二君のやり取りがすべてを語っているような気がする。

「じゃあ、修二君は神器のことも知らないんだね」
「神器? そういえば、さっきも愛菜ちゃんが言ってたっけ」
「うん。壱与って私の過去世が奉ってたのが三種の神器、つまり剣と鏡と勾玉なんだ。
それで、壱与が鏡を壊しちゃったから、神器の力が開放されてしまったんだよ。
元を辿れば、この能力は神様の力なんだよね」
「そうだ。俺たちはその力を最も強く受け継いだ魂だということだ」
一郎君は補足するように、言葉を付け加えた。

(壱与がしたことだけど、私のせいみたいで罪悪感あるなぁ)
ふと、冬馬先輩を見ると、黙って話しを聞いていた。

①勾玉のことを一郎君に聞いてみる
②冬馬先輩に他の転生の事について尋ねる
③時計を見る

54 名前:685[sage] 投稿日:2008/01/25(金) 11:19:44 ID:???
①勾玉のことを一郎君に聞いてみる

「一郎くん、そういえば勾玉の力は見つかってるの?」
「いや……残念ながら勾玉には会っていない」
「そっか……」
「だが、剣のように力の制御を覚え隠していれば、近くにいたり会っていても気付かない可能性もある」
「あ、そうだよね……」
「勾玉が見つかれば……」
ふと、一郎くんが口を噤む。

「どうしたの?」
「……壱与は三種の神器と最後に契約を交わした者だ」
「そうだね」
鏡が割れその力が失われてしまったため、私の後の巫女は儀式を行っても抜け殻の神器を使った形式的なものだった。
つまり一郎くんが言うように、正式な儀式を行い神器の力を使うことを許されている巫女は壱与ということ。

「だから、壱与……いや大堂との契約は切れていない」
「え……?」
「だが神器の力は強大で、3つ揃わなければ過去の契約は履行されない」
「えっと……、つまり勾玉がみつかれば、私は3種の神器の力を使うことができるっていうこと、だよね?」
「あぁ、そうだ。まだその辺の記憶は戻っていないか?」
「う、うん……」
(あれ?でも……冬馬先輩とまた契約したんだよね……)
私が内心首を傾げると、修二くんが顔を顰めていった。

「てことはセンパイは抜け駆けして、過去の契約とは別に愛菜ちゃんと契約したってことだよね?」
「……」
修二くんの言葉に、冬馬先輩は無言のままだ。

「まただんまりか……」
修二くんは肩をすくめると、私に向き直った。

「じゃあさ、愛菜ちゃん。俺とも契約しない?」
「え!?」
「修二何を言っている」
「あ、兄貴にもしろっていってるわけじゃないよ。俺が個人的にしたいだけ。
 まあ、そこの剣みたいに力を分け与えるっていう契約は出来ないけど……」
すっと手を取られ、距離が近くなる。

「愛菜ちゃんを守る契約だよ。一生ね」
にっこり笑ってさらりと言われたけれど、すごいことを聞いた気がする……。

①「えっと、それって……」
②「遠慮しとくよ」
③「じゃ、お願いしようかな?」

55 名前:686[sage] 投稿日:2008/01/26(土) 00:08:18 ID:???
①「えっと、それって……」

「そ。愛菜ちゃんをお嫁さんにして、ずーっと守ってあげる」
腰に手がまわされ、更に修二君の顔が近づく。
身をよじってみても、逃げ出すことが出来なかった。
(じょ、冗談よね……)

「あ、あの……まだ早いよ。お互い高校生だし」
「別に早くてもいいじゃん。俺が一生守ってあげるって言ってるんだから」
「今はそういうの、考えられないっていうか…」
「じゃあ、今から考えてみて」
(困ったな。どうしよう……)

「修二。大堂が嫌がっているだろう」
半ば呆れたように、一郎君が呟く。
その言葉が耳に入らなかったのか、修二君の左腕に力がこもった。

「なんで逃げようとするのさ? 愛菜ちゃんは俺のこと、嫌い?」
「嫌いじゃないけど……」
「けど、何? 俺のことが嫌いなら、はっきり言ってよ。諦めるから」
「修二君のことは、本当に嫌いじゃないよ。でも、冗談もほどほどに……ね」
「俺はいつも本気なんだけどな。最初から付き合いたいって言ってたじゃん」
「そういうの、本当に困るっていうか……」
「困るってどういう事? この剣の方がいいの? それとも兄貴がいいの?」
「どっちがいいとかじゃなくてね」
「神器や過去じゃなく、俺は愛菜ちゃんがいいんだよ? どうしていつもはぐらかすのさ」
「……もう少し修二君も真面目に考えようよ」
「俺はいつでも真面目だよ」
困り果てて、私は修二君から視線を逸らす。
度を越した冗談に、笑えなくなってしまったからだ。
いつもの過剰なスキンシップにしては、強引すぎる。

一郎君もさすがにやり過ぎだろうと判断したのか、修二君の肩に手をかけた。
「おい、修二。いいかげんにしろ!」
「兄貴は黙っててくれよ。俺は今、愛菜ちゃんとしゃべってるんだから。
この前、俺の事を信じてるって言ってくれたよね。なら、逃げないで俺を見てよ」
強引に顎を鷲掴みにされる。
向き合った修二君の眼差しに、思わず息を飲んだ。
「し、修二君っ離して……!」
怖い、と私が感じた瞬間、身体にまわされていた手がパッと離れた。

「ごめん、愛菜ちゃん。どうかしてた、俺……」
修二君は素直に謝ると、ドアまで歩いていった。
「センパイ、そんな怖い顔しないでさ。俺たち仲間らしいし、許してよ。あと兄貴、部室のカギ返しておいて」
一方的に言うと、修二君は部室を出て行ってしまった。

(修二君の目……氷みたいに冷たかった)
力尽きるように、私は長椅子に座った。

①考える
②一郎君を見る
③冬馬先輩を見る


56 名前:687[sage] 投稿日:2008/01/26(土) 03:32:30 ID:???
①考える

(修二くん、ほんとうにどうしちゃったんだろう……)
修二くんは冬馬先輩のこととなると、普段の飄々としたところがなくなって不可解なくらいに敵意を剥き出しにしているような気がする。
冬馬先輩に向けられる悪意の塊みたいな言葉の数々は、横で聞いている私も胸が痛くなるほどだ。

ふとあることを思いついて、修二くんが去っていったドアに目をやったままの一郎くんに呼び掛けた。
「…ねえ、一郎くん」
声をかけられた一郎くんもまた何か考え事をしていたのか、弾かれたように私を見た。
「! ああ、大堂。…すまない。修二のやつがまた、君に迷惑をかけた」
「ううん、大丈夫だよ。それに、一郎くんのせいじゃないんだから」
「だが…」
なおも言い募る一郎くんに、なんとか笑顔をむける。もしかしたら、うまく笑えていないかもしれないけれど、少しでも一郎くんの気が楽になればと、そう思った。
「本当に気にしないで、ね? それより一郎くんにちょっと確認したいことがあるんだ。一郎くんと修二くんはもともとは、その、ひとつの鏡……だったんだよね?」
「ああ。それが、どうかしたのか?」
次の言葉を続けようとして、無意識のうちに冬馬先輩に目を向けていた。本人を目の前にして口にするのは少しためらわれる内容だったものの、聞かなければいけないような気がして、思い切って続ける。
「一郎くんは冬馬先輩のこと、快く思ってないって言ってたけど、理由もちゃんと説明してくれたしそれはそういうものなのかなってなんとなくはわかったよ」
「それなら、良かった」
「ただね、修二くんは前世の記憶がないって言ってたでしょう? それなのに冬馬先輩に対するあの対応ってちょっと不自然だと思うんだ。さすがに相性ってこともないだろうし……」
「……それは…」
珍しく言いよどむ一郎くんが何かを言おうとしたその時、冬馬先輩が静かに言った。

「彼の無意識が、そうさせるのでしょう。彼と僕は非常に近い存在ですから」
「修二くんと、冬馬先輩が…近い?」
冬馬先輩の言葉の意味が分からずに反復する私に、先輩は小さく頷いた。
「そうです。彼はよく僕のことをこう呼んでいます、『お人形』と。すなわち、それはそのまま」
「待て」
一郎くんの鋭い声が言いかけた冬馬先輩の声を遮った。
「剣よ、大堂に何を言う気だ。憶測でものをいうのはやめてもらおうか」
「…憶測ではないのは君が一番よく知っているはずだろう、コードno.702。僕の話がただの憶測にすぎないのなら双子のはずの君たちはなぜコード番号が続きの数ではないのか、なぜ片方だけ転生の記憶が一切抜け落ちているのか」
淡々とそう話す冬馬先輩を正面から見据える一郎くんは、何故か顔面が蒼白だ。

どうしよう?
①冬馬先輩にそのまま続きを話してもらう
②一郎くんの様子が心配、話は中断して声をかける
③直接修二くんに聞いてみたい

57 名前:688[sage] 投稿日:2008/01/26(土) 14:35:38 ID:???
②一郎くんの様子が心配、話は中断して声をかける

「顔が真っ青だよ。大丈夫?」

私は一郎くんに駆け寄り、声をかけた。
「ああ、心配ない」と私に一言呟き、また冬馬先輩に向き直った。

「剣……いや、冬馬先輩。このことは二度と言わないで欲しい。
もし万一、修二の前で言ったのなら、俺は全力であなたを倒すつもりだ」
「…………わかった」

(何、なんなの……)

「一郎くん、何がどうなって……」
「大堂。言葉にした瞬間、すべてが壊れてしまう事もある。
修二に残酷な真実を背負わせ、苦しめる必要は無い。たとえ、薄々気づいていたとしてもだ。
君にしても、力や組織の事を知ってしまったから、こんなにも辛い思いをしているのだろう。
俺のやり方が逃げだと思うのなら、それでも構わない。
だが頼む……これ以上、何も聞かないでくれ」

(一郎くん……)

一郎君の言いたいことは、正直わからない。
だけど、真剣に、誠実に言っていることだけは伝わる。

「うん。よく分からないけど、この話はおしまいにしよう。冬馬先輩もいいよね」
冬馬先輩は黙って頷く。
一郎くんは私たちの様子を見て、安心したように大きく息を吐いた。
「勝手を言って、すまない」

その時、長椅子に置いてあった私の鞄がモゾモゾと動いて地面に落ちた。
冬馬先輩は無表情のまま鞄を拾い上げ、私に手渡してくれる。
「愛菜の覚醒で、精霊が目覚めたようです」
「精霊って……チハル!」

私は鞄を受け取り、急いで開けた。
すると、ぬいぐるみのチハルがピョンと飛び出してきた。

私は……
①チハルを抱きしめる
②チハルを撫でる
③チハルに話しかける


58 名前:689[sage] 投稿日:2008/01/28(月) 16:43:36 ID:???
①チハルを抱きしめる

「よかった、チハル。もう動かなくなるかと思ったよ……」
ポンッと音がしたので慌てて手を離すと、大きな姿のチハルが目の間にいた。

「愛菜ちゃん、ごめんなさい」
悲しそうな顔でチハルがぎゅっと私を抱きしめる。

「どうしてチハルが謝るの?」
「ボク愛菜ちゃんをまもれなかった……。
 力がなくて、ずっとうごけなかったけど知ってるよ、愛菜ちゃんの声が出なくなったこと」
「謝るのは私のほうだよ。チハルに無理させちゃったもの、ごめんね」
「愛菜ちゃんはわるくないよ! ボクのちからがたりなかったから……。
 でも、ボクもっと強くなったよ。今度はぜったいにまもってあげる」
「ありがとうチハル。でも無理はしないで。
 私も力を使えるようになったし、チハルがまた動かなくなったら嫌だよ」
首を捻ってチハルを見上げると、黒目がちな瞳がくるりと動いた。

「でも愛菜ちゃんのお願いはなんでもきいてあげたいよ?」
「ありがとう、でも、無理だと思ったらそう言ってね? もし無理なら、別の方法を考えよう?」
「そのほうがいいの?」
「うん、チハルが動かなくなると寂しいよ」
「わかった!」
ぎゅーっと抱きつかれる。

「チ、チハル苦し……」
あまり力の加減がうまく出来ていないチハルの腕を慌てて軽く叩いて、離すように促す。

「あ、ごめんなさい……」
とたん、しゅんとうなだれるチハルの頭を撫でてあげる。

「大堂」
ひと段落着いたところで一郎くんが声をかけてきた。

「今日はもう帰ったほうが良い」
「え? どうして?」
「おそらく徐々に過去世の記憶が戻ってくると思うが、場合によっては放心状態に陥ることがある。
 そんな状態で授業を受けても、まわりが心配するだけだろう」

確かに急にぼーっとしてたら皆心配するかもしれない……
①でも、授業に出る
②家に帰る
③しばらくここにいる

59 名前:690[sage] 投稿日:2008/01/28(月) 22:12:05 ID:???
①でも、授業に出る

「やっぱり授業に出るよ。せっかく学校まで来たしね」

私は鞄を閉めて、一郎君を見た。
みんなに心配されるかもしれないけど、授業についていけなくなるのはもっと困る。
ただ、今は文化祭の準備期間で宿題がないのだけマシなのだけど。

「駄目だ。前世後退でやはり無理をさせすぎたようだな」
「でも……」
「君だけではない。その周りの学友にも迷惑がかかると言っているんだ」
「うーん。それも、わかるんだけど」
「ボクも今日は帰ったほうがいいと思うよ。急に大きくなったもやもやがグニャってなってるもん。
それのせいで胸のところがフラフラだし」

その言葉に、一郎君はチハルをジッと見つめた。
チハルは目をパチパチさせて、首をかしげている。
「君は……大堂の魂が不安定な事まで見えるのか」
「少し見えるし、触ってもわかるよ。けどね、ボクはキミじゃないよ。チハルって名前だもん。愛菜ちゃんにつけてもらったんだ」
「そうか。では精霊よ、頼みがある。大堂を家まで連れてってくれないか。俺は委員会の雑務が残っていて、どうしても抜けることが出来ないんだ」
「いいよ。でもね、ボクは精霊よりも、チハルって名前で呼ばれたいな」
「助かる。頼んだぞ」
「たのんだぞじゃないよー。チハルだよ」
チハルは頬を膨らませながら訴えている。
けれど一郎君は何も言わず、うろたえながら咳払いをしていた。

(結局、強制なのね。それにしても……)
私が考えている間にも、チハルはめげることなく、今度は冬馬先輩の制服を掴んで「ねぇねぇ」と話しかけている。

「ボクはチハルだよ。ボクのことチハルって呼んでみて」
「……チハル」
冬馬先輩はボソッと頼まれるままに呟いた。
「うん。ありがとう」
チハルはお礼を言って、また私のところまで戻ってきた。
「あのね、愛菜ちゃん。なんであの人だけボクの名前を呼んでくれないの?」

なんて答えよう
①「照れてるんじゃないかな」
②「チハルが大人の姿だと、気安く名前が言えないのかも」
③「一郎君に聞いてみたら?」

60 名前:691[sage] 投稿日:2008/01/29(火) 20:23:20 ID:???
①「照れてるんじゃないかな」

「そうなんだ……わかった! 僕のカッコがみんなと違うから照れちゃうんだね」
チハルはポンッと音をさせて、男子の制服姿になった。
「この姿なら、みんなと一緒だよ。これならいいかな?」
「きっと言ってくれると思うよ。ねぇ、一郎くん」
そう言いながら、私は一郎くんに目配せをした。
一郎くんも観念したのか、諦めたような溜息を吐いている。

チハルはクルクルとまわりながら、一郎くんの元へ駆け寄っていった。
「変身したよ。だから、チハルって言ってよぉ」
「…………チハル。これで、いいのか?」
「うん。やったー! 愛菜ちゃん、言ってくれたよ」
また私のところに駆け寄って、抱きついてくる。
一方の一郎くんは、どっと疲れたような顔をしていた。

キーンコーン

三時間目の予鈴が鳴った。
私たちは部室を出て、一郎くんがドアのカギをかけている。

「大堂は気をつけて帰るように。君が帰ったことは俺から先生に伝えておこう」
「やっぱり、帰らなきゃ駄目?」
「当たり前だ」
「はぁ……、仕方ないけど、わかったよ。あとね、隆にも言っておいて欲しいんだ」
「ああ、了解した。後は頼んだぞ、精霊」
「精霊じゃなくって、チハルだよ!」
「……チハル。頼んだぞ」
「うん。任せて!」
どこかやりにくそうな顔をしながら、一郎くんは去っていった。

「あれ? 冬馬先輩は授業に戻らなくてもいいの?」
私は残ったままの冬馬先輩に話しかける。
「はい。僕も愛菜を家まで送ります」
「でも……授業があるでしょ?」
「……大丈夫です。さあ、行きましょう」
「本当にいいの?」
「はい。送ります」

冬馬先輩は送るのが当たり前のような口ぶりだ。

どうしようかな?
①授業にでるように言う
②送ってもらう
③理由を聞く

61 名前:692[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 19:02:48 ID:???
②送ってもらう

「それじゃあ、お願いしようかな……」
私は立ち上がって、部室の戸を開けふと動きを止める。

「先輩傘もってきてますか?」
朝から降っていたのだからもってきていて当然だと思うけれど、相手は冬馬先輩だ。

「……」
冬馬先輩は無言で私を見つめ返した。
どこか不思議そうな顔をしているように見えるのは気のせいだろうか?

「……記憶」
しばらくしてポツリと先輩が呟く。

「記憶……?」
記憶といえばおそらく過去の記憶のことだろう。
それと傘とどう関係があるのか首を傾げる。

「剣の力は龍の力」
静かに先輩が言う。
その言葉に、ふっと記憶がよみがえった。

(あ、そっか……)
草薙の剣、それは蛇の剣。
蛇は龍に通じる。
そして龍とは水神をあらわすことが多い。
剣の力自体はそれだけではないが、水を操る力に長けているのも事実だった。

(ということは……、まさかあの雨の中傘も差さずに学校に来たとか……?)
冬馬先輩ならありえそうだ。
かといって、見る限り制服が湿っているとかそういうわけでもない。

「ねえねえ、愛菜ちゃんかえらないの?」
いつまでたっても動かない私にじれたのか、チハルが軽く私の袖を引っ張る。

「あ、ごめん帰るよ」
とりあえずチハルにはストラップになってもらう。
いくら学校の制服を着ていても、先生に見つかったら生徒ではないことがばれてしまう。

さて、どうしよう?
①徒歩で帰る
②タクシーを呼ぶ
③雨がやむまで待つ

62 名前:693[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 22:20:14 ID:???
①徒歩で帰る

(身体はなんともないし、徒歩でいいかな)

「傘が無いなら、私のでよければどうぞ」
校舎を出たところで、私は声をかけた。

「……僕は大丈夫です」
先に雨の中に飛び出した冬馬先輩は、少し歩いて立ち止まった。
普通だったらずぶ濡れなるはずなのに、冬馬先輩の制服は全く濡れていなかった。

(やっぱり、水を操って……)

「冬馬先輩。やっぱり、一緒に傘に入って行こう。それじゃ、目立っちゃうよ」
私は冬馬先輩に傘を差し出した。
だけど冬馬先輩はそれを避けてしまう。
「愛菜が……濡れてしまいます」
「それより、私は冬馬先輩がヘンな目で見られる方が嫌だよ。いくら濡れなくても、傘をさすべきだと思うよ」

この前、香織ちゃんが冬馬先輩に良くない噂が立っていると言っていた。
雨の日に傘をささずに佇む冬馬先輩は、やっぱり変わった人に見えてしまう。
私が知らないだけで、他にもたくさんの奇異の目に晒されてきているのかもしれない。

「お願い。一緒に入ろう?」
私の言葉で、冬馬先輩はようやく傘に納まってくれた。
強い雨の中、私が傘を持ちながら、ゆっくり歩き出す。
校門を出たところで、珍しく冬馬先輩から私に話しかけてきた。

「……昔、周防にも同じ事を言われました。愛菜も周防も……どうして傘をさすべきだと思うんですか?」
「周防さんが言ったの?」
「はい。周防に言われて、仕方なく傘をさすようにしていました。けれど、今日は忘れてしまったのです」

(周防さんも冬馬先輩が心配なんだね……)

「あのね。この前、私が学校は大切な場所って言ったこと、憶えてるかな」
「はい」
「学校って、とっても大切で素敵な場所なんだけど、集団生活だから目立ち過ぎるのは良くないんだよ。
特に力の存在なんてみんなに言えるわけないから、誤解されちゃう事も多いと思うんだ」
「でも愛菜は、分かってくれています」

冬馬先輩にしては即答で、しかも、はっきりとした口調だった。
その言葉は素直に嬉しいけれど、同時に胸が痛くなる。

「私だけが冬馬先輩の事を理解していても駄目なんだよ。それじゃ、寂しすぎるよね。
冬馬先輩の周りには、クラスのみんなや、先生もいるでしょ?」
「はい」
「無理してすべてを合わせる事は無いけど、もう少し能力者じゃない普通の人にも目を向けて欲しいんだ。
そうすれば学校が大切な場所だって事、もっと分かるはずだよ」

私の言葉が理解できないのか、冬馬先輩は何も答えない。
ただ窮屈そうに、私の傘に入って歩いていた。

どうしようか……
①「冬馬先輩は寂しいと感じたことは無いの?」
②「私の親友の香織ちゃんは普通の人だよ」
③「冬馬先輩はもっと自分に関心を持たなきゃ駄目だよ」

63 名前:693[sage] 投稿日:2008/01/30(水) 22:22:49 ID:???
×「傘が無いなら、私のでよければどうぞ」
○「傘が無いなら、私のでよければ一緒にどうぞ」

64 名前:694[sage] 投稿日:2008/02/01(金) 02:52:12 ID:???
①「冬馬先輩は寂しいと感じたことは無いの?」

少し見上げ、心配に思いながら冬馬先輩の横顔を伺う。
いつも通りの乏しい表情のせいで、何を考えているのかわからない。

「寂しいと感じてはいけないと、そう思っています」
「え…?」

不意に発せられた冬馬先輩の言葉に、思わず私は聞き返してしまった。

「寂しいと感じてはいけない……僕はいつも自分に言い聞かせています」
「寂しいなら我慢する必要なんてないんだよ?」
「我慢ではありません」
「じゃあ、何? 感情を押し殺すなんてよくないよ。嬉しいのなら喜んだ方がいいし、悲しいなら泣いてもいいって……私はそう思うな」
「僕は喜んではいけないし、泣いてもいけないのです」
「さっきの怪我でも感じたけど、先輩は自分を粗末にし過ぎているんじゃないかな」
「僕のような者は、そうなって然るべきです」
「なぜ……どうして、そう思うの?」

頑なな冬馬先輩に、言い知れぬ不安を感じた。
私は立ち止まって、冬馬先輩に向き直る。

冬馬先輩は自分の手のひらをじっと見つめ、やがてそれを握り締めた。
そして、ようやく重い口を開いた。

「日曜日に公園で言ったと思いますが、僕が引き起こした能力の暴走により、多くの犠牲が払われました。
幼いために制御が出来なかったとはいえ、僕はこの両手でかけがえのないものを沢山奪ってしまったのです。
この大罪が消えることは、決してありません。
むしろ、穏やかで明るい世界に居るほど……この罪の意識は強くなっていくのです」

穏やかで明るい世界は、きっと学校での生活も含まれているのだろう。
私は今まで、冬馬先輩は単純に感情の起伏が少ない人だと思っていた。
でも、本当は違う。
深く暗い闇の中で、冬馬先輩は今も苦しんでいるのかもしれない。

「僕は剣です。行く手を阻む草があれば薙いで道を作る、そういう役目を負っています。
愛菜は過去の力を得て、強くなりました。
その力をどうか、破壊する力ではなく、生かす力として使ってください。
僕には出来ない事でも、あなたになら出来るはずです」

冬馬先輩は、契約の時のように私の手を取った。
そして、あの時と同じ言葉を口にする。

「あなたが望む道を切り開くために、僕は戦い続ます。
……この身が朽ち果てるまで」

なんて答えよう……
①「わかったよ。一緒に頑張ろう」
②「『この身が朽ち果てるまで』なんて言わないで?」
③「……同じことを契約でも言っていたね」

65 名前:695[sage] 投稿日:2008/02/03(日) 02:12:11 ID:???
③「……同じことを契約でも言っていたね」

あの時には分からなかった言葉の意味も、今なら分かる。
同じ言葉でも、まるで違って聞こえた。

「はい。言いました」
先輩が握る私の手には、今も契約のアザがはっきりと刻まれている。

(そういえば、冬馬先輩を年下だと勘違いしていて御門くんって呼んでたっけ)

「あの時はまだ、冬馬先輩って『心』が欠けているんだと思ってた。
ほとんど自分の意見は口にしないし、人の言葉に従うことが多いし。でも、違ったんだよね。
ちゃんと持ってるのに、どうして気づけなかったんだろう」

そう言って、私は冬馬先輩を見ながら「ちょっと失礼だったかな」と付け加えた。
冬馬先輩はそれに「いいえ」と答えて、首を振っていた。

「最初から、行くべき道を教えてくれていたのにね。ここまで来るのに、時間がかかっちゃった」

言葉が足りなくて、誤解ばかりされてしまう冬馬先輩。
私も冬馬先輩の考えている事が判らなくて、随分もどかしい思いもした。

けど、さっきの告白で先輩の心が見えてきた。
先輩は人形でもないし、化け物でもない。
不器用で、純粋で、頑固で、自分に厳しくて、少しだけ常識を知らない……そんな人だ。

「…………」
冬馬先輩は手を取ったまま、ただ黙って私を見ている。

「正直、どこまで出来るか分からないけど……、先輩の期待に応えられる様にがんばるよ。
だから、今度は自分を大切にする事で、冬馬先輩の勇気を示して欲しいな。
そうすれば、先輩の周りから誤解や偏見が消えて、好転していくと思う。
そして、もうこんな事を終わらせよう。それが私たちの出来る、一番の償いだよ」

「愛菜の望みなら、僕の全霊をかけて叶えます」
「うん。けど。自分を大切にね」
「はい。……誓います」

そう言って、冬馬先輩はもう片方の手で、私の手を包み込んだ。
冷えた私の手に、冬馬先輩の体温が伝わる。
秋雨は相変わらず降り続けているのに、傘を共有している私の肩は濡れていない。
(これも冬馬先輩の力、だよね)

「……体温が下がっています。寒いですか?」
「少し、ね。雨が降ってるし」
「わかりました」
冬馬先輩は制服を脱いで、私の肩にふわりと大きなブレザーを掛けてくれた。

私は……
①「ありがとう」
②「冬馬先輩は寒くない?」
③「優しいね」

66 名前:宇[] 投稿日:2008/02/03(日) 18:01:39 ID:jGiRqnKp
179日目 6203円

67 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2008/02/03(日) 18:02:30 ID:???
ミスったorz

68 名前:696[sage] 投稿日:2008/02/05(火) 00:07:59 ID:???
②「冬馬先輩は寒くない?」

私が訊くと、冬馬先輩は黙ったまま首を横に振った。
「それじゃ、これ借りてるね」
「…………」
「どうしたの? 返した方がよかった?」
「……傘、持ちます」
そう言って、冬馬先輩は私から傘を奪ってしまった。
「あ、ありがと……」
「いいえ。さあ、行きましょう」

私たちは、家に向って再び歩き出した。

(にしても、冬馬先輩に大きな事言っちゃったなぁ)
つい勢いで『期待に応えられる様にがんばる』なんて言ってしまったけど、本当は自信が無い。
だけど、組織のやり方を絶対に許すことは出来ない。
高村の組織のせいでみんな辛い思いをしているし、なにより春樹の身が心配だ。

現時点での組織の狙いは、三種の神器と託宣の巫女の確保だろう。
目的は多分、三種の神器の力を私に宿らせること。
いわゆる、神おろしだ。
神器を使って、何を叶えようとしているのだろうか。

(組織から春樹を助けるなら、神おろしの時がチャンスだろうけど……)

神おろしを私の力で制御できればいいけど、成功する保証は無い。
もし主流の思惑通りになってしまったら、一郎くんたちや周防さんたちが今まで組織に抵抗した事が水の泡になってしまう。

(とにかく、勾玉を見つけなきゃ……)
勾玉が揃っていないために、主流も動く事ができないはずだ。
それを主流より先に探し出すことが最優先なのだろうけど、見える一郎くんと修二くんも見つけられていない。

(うーん。どうしよう……)

「――菜。愛菜」
「はい?」
「家に着きました」

考えているうちに、いつの間にか家についていたようだ。

どうしようかな?
①家に入ってもらう
②礼を言って別れる
③冬馬先輩に尋ねてみる

69 名前:697[sage] 投稿日:2008/02/05(火) 15:58:02 ID:???
①家に入ってもらう

「先輩、寄っていきませんか? せめてもう少し雨が弱くなるまで」
雨は先ほどより強くなっている気がする。
水を操れる先輩なら、どんなに雨が降っていようと関係ないのだろうけれど、それはそれ、気持ちの問題だ。
先輩はしばらく思案しているようだったけれど、頷いた。

「…………あなたが望むなら」
先輩の答えに、なんとなくがっかりとかなしさの入り混じった気持ちになる。
けれどそれに対してどう反応すればいいのか分からず、あいまいに微笑んで家の鍵を開けた。

「どうぞ、座っててください。私、先に着替えてきます」
リビングに先輩を通し、冬馬先輩が頷いたのを確認してから、私は部屋で着替えを済ませた。
それからキッチンに寄り、手早くインスタントのコーヒーを入れリビングに戻ると、先輩はぼんやりと外を見ていた。
外は相変わらず激しい雨が降っている。

「先輩、コーヒーですどうぞ」
私の言葉に冬馬先輩の視線が外から私へ移る。

「ありがとうございます」
カップを受け取って、先輩はコーヒーを一口飲んでじっと私を見た。

「先輩?」
「……なにか聞きたいことがあるのではないですか?」
「え?」
「まだあなたの記憶は完全に戻っていません。僕は記憶を戻す呼び水です」
(呼び水……)
そういえば、さっきも『剣の力は龍の力』という言葉を聴いただけで、先輩の力を思い出した。
きっかけがあれば、過去の記憶がスムーズによみがえるのだ。

「僕の知る範囲でお答えします」
先輩はいつに無く口数が多い。

えっと……
①勾玉のこと
②高村一族のこと
③冬馬のこと

70 名前:698[sage] 投稿日:2008/02/05(火) 21:28:44 ID:???
②高村一族のこと

(そういえば……高村一族ってどうなんだろう)

私の知っている事は、春樹が昔は高村春樹だったこと。周防さんと春樹が従兄弟だということ。
周防さんは直系ではないけれど才能をがあるために研究所にいて、今は亡くなったことになっている。
高村の一族は能力者で、権力もあるらしいこと――そんな今までの断片的な情報を冬馬先輩に話した。

「もっと高村一族のことを教えてくれる?」
「……高村一族だけでは、お話しするのは難しいです。もっと内容を絞っていただけませんか?」
冬馬先輩はいつも通りの抑揚の無い言い方で、私を見る。

(内容を絞って……か)

「やっぱり春樹の父親について一番知りたい、かな。でもこれじゃ、記憶の呼び水にはならないよね」

(今朝の夢、春樹が話してくれた性格とはかけ離れてて、すごく違和感があったけど……)
冬馬先輩はしばらく黙っていたけれど、ゆっくり口を開いた。

「わかりました。春樹さんの父親、高村博信についてお話します。
周防から聞いた話ですので、知らない事もあると思いますがよろしいですか?」
「うん。構わないよ」
私は姿勢を正して、冬馬先輩に向き直った。

「高村博信……高村研究所の所長をしている男です。
三年前までは、この近くの総合病院で院長を兼任していましたが、研究に専念したいという理由で退いたようです。
現在、妻はいません。子供は二人、秋人とあなたの弟の春樹さんです」
「秋人……?」
「夢の中で一度会っているので、あなたは知っていると思います」

(夢の中……そうだ、あの謎掛けをしてきた人かな)
「春樹の夢の中で会った人?」
「そうです。秋人は妾との間にできた子供ですので、春樹さんとは腹違いですが」
(春樹にお兄さんが居たんだ……でも腹違いって……)

「腹違いって……どういうこと?」

「元々、あなたの継母の前に博信には妻がいたのですが、子供には恵まれなかったようです。
その時に妾との間に出来た子が秋人です。それから前妻と死別し、あなたの継母と再婚したのです」

「でも待って。春樹は力が無かったから、お継母さんは暴力を受けていたのよね。秋人さんが居るなら最初から……」

「秋人は妾との子供ですので、博信にとっては認知していても、気持ちとしては実際の子供と認めたくなかったようです。
あなたの継母との離婚が成立しても、秋人に対する態度は変わらなかったと聞きました。
能力のある秋人ですが、父親から認められることなかったようです。
しかし、三年前に状況が一変しました。施設の移転と同時に、独裁者のように振舞っていた博信が突然……高村研究所の実権を秋人に一任したのです」

「ちょ……ちょっと待って」

え……?
①考える
②三年前に秋人さんに何かあったって事?
③三年前に春樹の父親に何かあったって事?

71 名前:699[sage] 投稿日:2008/02/08(金) 14:12:33 ID:???
③三年前に春樹の父親に何かあったって事?

私の問いに冬馬先輩は答えなかった。
ぱっと考えれば、研究に専念したいと病院をやめた人が、せっかく研究に専念できる土台が出来上がった途端、その研究所の実権を別の人に譲るなんておかしい。
実権を別の人に譲るということは、研究が自由に出来なくなる可能性だってあるということだ。
自由に実験をしたいのならば、自分がトップにいて好きにしたほうが都合がいいのではないだろうか?

(そうでもないのかな……?)
上に立つということは研究所を経営(?)するという手間もあるといえばある。

「理由はわかりませんが、博信の性格は急変しました」
「え……? 性格が変わったの?」
ふと今朝の夢を思い出す。
父親の変貌ぶりに困惑する春樹。

「僕も博信には数回しか会ったことがありませんが、覇気がまったくなくなっていました」
「覇気……?」
「人の上にたつのに必要なものだと、周防は言いました」
その言葉にふと、過去の記憶がよみがえる。
自分の父と、自分の国を滅ぼした少年。
すべてを包み込み守る包容力を持つ父と、すべてを引っ張って進んでいく力強さを持っていた少年。
タイプはまったく違うけれど、確かに二人には共通する覇気があった。
それが上に立つものの資質といわれれば確かにそうなのだろう。

「当時、同じく性格が急変したといわれる人物がいます」
「……え?だれ?」
過去を思い出していた私は、冬馬先輩の言葉を理解するのに一瞬の間があく。
冬馬先輩はそんな私をじっと見つめて、言葉を続けた。

「秋人です」
「ええ!?」
「僕は性格が変わった後の秋人しかしりません」
「ということは、その噂が本当か冬馬先輩は分からないってこと?」
「はい」
おなじ時期に性格が急変した二人、関連がまったくないとは考えにくい。

①「秋人さんは元々どんな性格だったか聞いてる?」
②「春樹のお父さんの性格が変わったのは一回だけ?」
③「高村の一族ではよくあることなのかな?」

72 名前:700[700ゲットsage] 投稿日:2008/02/08(金) 22:34:46 ID:???
③「高村の一族ではよくあることなのかな?」

「よく、は無いと思います」
「よくは無いってことは、少しはあるって事?」
「はい」
「そうなんだ。それって、いつあったかわかる?」
「五百年ほど前に、一度だけ同じような状況を見たことがあります」
「五百年前って、冬馬先輩になる前の記憶ってことだよね?」
「はい」
「五百年前の前世で先輩は何を見たの?」

なんとなく胸騒ぎを覚えて、私は冬馬先輩に尋ねた。

「……あなたは十種の神宝を憶えていますか?」
「十種の神宝……」

また冬馬先輩の言葉が呼び水になって、記憶が蘇ってきた。
十種の神宝。それは出雲に伝わる宝具だった。
鏡が二種、剣が一種、玉が四種、比礼が三種からなる宝で、出雲国の王位継承にも使われていた。

大和国の三種の神器に対して、出雲国の十種の神宝。
その力は死者をも甦生させるという、禁忌の秘術に使われていた。
出雲の民は皆、この十種の神宝を信仰していたのだ。

「出雲の宝……」
「そうです。その十種の神宝の一つ、死返玉(まかるがえしのたま) の力を持つ者が五百年ほど前に、
死者を傀儡のように操るのを見たことがあるのです。
僕が見た覇気の無い博信は、まるであの時の傀儡のようでした」
「それって……春樹のお父さんが亡くなっているってこと……?」

夢で見た春樹のお父さんはちゃんと生きていた。
私には、とても死人には見えなかった。
けど、死返玉の力なら……と納得している自分自身もいて、落ち着かない。
死返玉は死者を蘇らせる力を持つけれど、他の神宝がなければ完全な甦生は出来ない。
死者を傀儡として操る事なら、死返玉なら可能だろう。
春樹の父親を見たチハルが言っていた、精霊と反対の力とは死返玉が宿す鬼の力を指しているのだろうか。

「博信が死んでいるかは、僕には判断できません」
「わからないんだったら……」
「ですが、まるで気配が変わってしまう理由が他に見つかりません」
「ファントムで操られてる可能性は無いの?」
「ファントムはあり得ません。博信は優秀な能力者ですから」
「でも……冬馬先輩には判断できないんだよね?」
「五百年前に見たのは、鏡が僕に見える力を付与した為でした。剣の僕に、見る力はありません。
見る力に特化した鏡でないと、真実はわからないのです」

(力の付与……そういえば、一郎くんと修二くんが病院で春樹に力を見せていた事があったような)

①五百年前の話を詳しくきく
②なぜ秋人さんの性格が豹変したのかきく
②十種の神宝について思い出す

73 名前:701[sage] 投稿日:2008/02/11(月) 01:56:09 ID:???
③十種の神宝について思い出す

(十種の神宝か……)

私は十種の神宝について、詳しく思い出してみることにした。

澳津鏡(おきつのかがみ)、辺津鏡(へつのかがみ)、八握剣(やつかのつるぎ)、
生玉(いくたま)、足玉(たるたま)、道返玉(ちがえしのたま)、死返玉(まかるがえしのたま) 、
蛇比礼(おろちのひれ)、蜂比礼(はちのひれ)、品物比礼(くさぐさのもののひれ)
が、十種の神宝と呼ばれていた。
それぞれの神宝にはすべて意味があり、その意味に沿った強い鬼の力を宿していた。

大和の民は出雲の持つ神宝の力を、黄泉の祟りとして恐れを抱いている者も多かった。
出雲は根の国と呼ばれ、死者の世界に通じている恐ろしい場所だと思われていたためだ。
死者甦生という禁忌も行える神宝が、死者の世界に通じているという誤解を生んでいたようだった。
また、出雲もそういった誤解をあえて解こうとはしなかった。
それは鬼の力を持ち、大和の民よりも優れているという慢心があったからだ。

けれど神宝が宿す力は、決して悪い力というわけでは無い。
強い力というのは、使う側で正義にも悪にもなる。それは十種の神宝も三種の神器も変わりは無い。
そういった、民族同士の偏見や誤解から無益な争いを生む結果になってしまった。

(十種の神宝の一つ、死返玉の力を使った者……)

「冬馬先輩。五百年前に見た死返玉の力を持つ者って、高村の一族だったんだよね?」
「はい」
「じゃあ、もしも冬馬先輩の言うように、春樹のお父さんが亡くなったまま操られていたとして……
操っている人も高村の一族の誰かだと思ってる?」
「はい。ですが先ほども言ったように、鏡でないと確認はできません」

もし操っている人がいるのなら、同じ一族だと冬馬先輩は思っている。
(高村一族か……)

強い力を持つ家系で、財力も権力もある。
そういえば、華族だったと美波さんが言っていた。
少なくとも五百年前から姓氏を名乗っているようだし、由緒正しいのは間違いなさそうだ。
もしかしたら、十種の神宝に関係している可能性だってある。
武くんや熊谷さんが言っていた、高村の伝承とも関わっているのだろうか。

どうしようかな?
①操っている人が誰なのか尋ねてみる
②高村一族の歴史を尋ねる
③高村の伝承を尋ねる

74 名前:702[sage] 投稿日:2008/02/12(火) 14:54:24 ID:???
②高村一族の歴史を尋ねる

「冬馬先輩は、高村一族の歴史を知っている?」
「いいえ、残念ながら転生していた時代のことしか分かりません」
「そっか……」
高村一族のことを聞けば、何か分かると思ったけれど……。
そのときぽんっと音がした。
振り向くと、鞄から這い出したらしいチハルが制服姿で立っている。

「愛菜ちゃんひどいよー。ボクのコトわすれてたでしょう?」
ぷーっと頬を膨らませてチハルがすねている。

「ご、ごめんね」
事実なので慌ててチハルに謝ると、すぐに機嫌を直したのか跳ねるように私に近づいてくると、首に腕を巻きつけるようにぺったりとくっつく。

「愛菜ちゃん、春樹をつれていった人のケイフをしりたいの?」
「え?けいふ?……あ、系譜ね、うん知りたいけど……」
「それならボクが聞いてあげるよ。神様に聞けばおしえてくれるよ」
「え? 本当?」
「うん、まかせて!」
そういいながら、チハルは軽く目を伏せた。

「石見国そこがはじまり」
「石見国って……出雲の隣……」
ふと、記憶がよみがえる。

「十種の神宝は昔、出雲のものではなかった。大和の平定を助けた一族がもっていたもの」
ふと、チハルの様子が変わっているのに気付く。
 
(チハルの口をかりて別の人が話してる?)
きっとチハルがいうところの神様なのだろう。

「だが一族の力が弱くなり、神宝を守る力が弱くなったため、力ある一族へとその神宝を託した。それが出雲の鬼と呼ばれる人々」
「そっか、神宝はもともと別の一族のものだったんだね」
きっと神宝が託されたのは壱与が生まれるずっと前のことなのだろう。

「いかにも。そして十種の神宝を持っていた一族の傍系が、高村の一族の先祖。十種の神宝の伝承を正しく伝えるのがその一族の勤め」
「え?伝承?」
私の疑問の声を気にする風も無く、声は続ける。

「鬼の一族へ神宝が託された後も、高村の一族の先祖は出雲へは移らず石見国で伝承を伝え続けた。出雲が大和に破れ、神宝の行方が分からなくなってもそれは変わらなかったようだ」
そこまで話して声が沈黙する。

どんどんと新しい事実が語られ、混乱する。
えっと……

①「神宝の行方は神様でも分からないの?」
②「高村の伝承って、十種の神宝のことなの?」
③「行方不明の神宝の一つをなぜ高村一族がもってるの?」

75 名前:703[sage] 投稿日:2008/02/13(水) 00:30:07 ID:???
①「神宝の行方は神様でも分からないの?」

「行方は分かっている。神宝は長い年月をかけ、石見国の主の元へ戻った」
「石見国の主って、もしかして高村一族の事ですか?」
「いかにも」

(十種の神宝の持ち主が高村だったなんて……)

「じゃあ、高村は十種の神宝を持っているんですよね?」
「持ってはいない。十種の神宝の力もまた、開放されている」
「十種の神宝の力も開放されたんですか?」
「無論。十種の神宝は三種の神器の対として天照大神から賜った宝具。
三種の神器が陽の気で作られ、十種の神宝は陰の気で作られた。陰陽は表裏一体。
三種の神器が開放されてしまったことで、十種神宝の力も開放されたのだ」

「まさか十種の神宝も開放され、人の魂に取り付いたってことですか?」
「いかにも。高村一族、もしくはそれに連なる血筋の特殊能力は、神宝の力。その力を以って伝承を伝えるのがその者らの勤め」
「伝承……。その高村の伝承って何ですか?」
「そなたらが行う事象そのものが伝承となる」
(……事象そのもの)

チハルの身体をかりた神様は、冬馬先輩の方にゆっくり向き直った。
「剣よ、巫女が進む道を示すがいい」
冬馬先輩はその声に黙って頷いた。

「託宣の巫女よ。三種の神器と十種の神宝を鎮めることができるのは、巫女の力と鬼の力を持つそなただけだ。
八尺瓊勾玉はそなたを支える者。迷わず進むがいい」
「勾玉は一体、誰? 鎮めるってどうすればいいんですか。教えてください!」
私は思わず、チハルの腕を掴んだ。
「………………」
私の問いに、チハルの身体をかりた神様は黙ったままだ。

(あれ……神様?)
心配になってチハルを覗き込むと、突然話し出した。
「愛菜ちゃん。お話しは終わったの?」
話し方がいつものチハルに戻っている。
「あ、うん。終わったよ」
どうやら神様は、言いたい事だけ言うと去ってしまったようだ。

(八尺瓊勾玉が誰なのか聞けなかったよ……)

①考えを整理するために思い返す
②冬馬先輩にどう思ったか尋ねる
③チハルに今の神様について尋ねる

76 名前:704[sage] 投稿日:2008/02/13(水) 14:06:24 ID:???
①考えを整理するために思い返す

(えっと、まず十種の神宝は元々鬼のものではなくて……)
過去の記憶を探っても、このことに関しては初耳だった。
きっと鬼の一族が神宝を守るようになって長い年月が過ぎ、真実が伝わらなかったのだろう。

(それにあの神宝の力は、鬼の力にとても似てたよね)
陰の気の強い鬼の力。そして、陰の性質を持つ十種の神宝。似ていて当然かもしれない。
いつしか神宝が強い鬼の力が宿っているといわれるほどに近い力。
そして、三種の神器。あちらは陽の力で出来ているといった。
陽の力は、私が託宣の巫女として使う力に近い。

(壱与って陰陽どちらの力も使えたんだよね、って今の私もか)
それに三種の神器が陽、十種の神宝が陰と大まかに分けられているけれど、その中で三種の神器は鏡と剣が陽、勾玉が陰とさらに分かれている。
十種の神宝については詳しくは知らないが、おそらく神宝も陰のなかでもさらに陰と陽が分かれているのだろう。

(十種の神宝は王になる人が守ることになってたから、それ以外の人は詳しくわからないんだよね)
いくら王の娘だったからといって神宝に直接触れることはなかったし、ましてやその力を振るうこともなかった。

(思い返してみれば、鬼の一族の物とされていた神宝よりも、大和の宝だった神器のほうが身近だったな)
託宣の巫女として壱与は直接神器に触れ、そしてその力を行使していたから、そう感じるのも当然だけれど。

(それにしても、勾玉は一体誰に?)
思考があちこちに飛ぶ。
神様は私を支える人と言っていた。迷わず進めとも。

(私を支えてくれる人といえば……、冬馬先輩、一郎くん、修二くん、それから隆に、春樹、チハル、それから周防さんに美波さん?)
順番に思い返えす。
冬馬先輩と、一郎くん、修二くんはそれぞれ、剣と鏡だから除外する。
隆と美波さんを思い返すけれど、今思い返しても力を使っているときに勾玉の気配を感じたことはない。
チハルは精霊だから違うだろう。
春樹と周防さんは高村の一族だから、力があるとすれば神器の勾玉ではなく、神宝の力を持っていると考えるほうが妥当だ。

(神宝っていえば周防さんはそれっぽいよね……? 
 春樹は普通の人と変わらないみたいだったけど……あ、でもチハルが以前、春樹にくっついてれば気持ちいいって言ってたな)
考えれば考えるだけ思いつくことが多く、こんがらがっていく。
思考があちこちに飛んで脱線していくのが分かるが、気になるととめられない。

(高村の血を引いていて、能力が高い人といえば……)
すぐに思いつくのは3人。
周防さん、春樹のお父さんの博信、そして春樹の腹違いの兄秋人。
この三人に神宝の力が宿っている可能性は高い。
誰がどんな力を持っているのか気になる。

特に……
①周防
②博信
③秋人

77 名前:705[sage] 投稿日:2008/02/13(水) 22:20:37 ID:???
③秋人

(秋人……春樹の異母兄弟)
この人のことはまだ何もわかっていない。
背格好やパッと見た感じは周防さんと似ていたから、歳は二十代だと思う。
会ったのは一度きりだし、夢の中だったせいか現実よりも曖昧だった。

(だけど……)
『君は今、幸せかい?』と尋ねた秋人さんはちっとも幸せそうには見えなかった。
眼鏡の奥の瞳は、暗く沈んでいたように思う。
神経質そうに笑う口許は、不自然そのものだった。

秋人さんの力が神宝だとすると、さっき冬馬先輩が言っていた死返玉の力である可能性も出てくる。
けれど、自分の父親を傀儡のように操ることなんて出来るだろうか。
もし私が同じ立場なら、死んだお父さんを自由に操るなんて、とても出来そうに無い。
それに春樹のお父さんが死んでいるのかすら、まだ確認できていないのだ。

「冬馬先輩。春樹のお父さんの能力も、秋人さんの能力も知らないんだよね」
「はい。僕には見えませんから」

(あっ……そういえば)

「チハル。少し聞いてもいいかな?」
「うん。何?」
「思い出すのが怖いかもしれないけど……春樹が家から出て行ったときの様子を聞きたいんだ。
確か、チハルは春樹のお父さんを見たんだよね?」
チハルは少し怯えた顔になったけれど、「うん。いいよ」と言って話し出した。

「……あの日はずっと春樹の胸ポケットに居たんだ。
夕方になって春樹がお家に帰ると、もうママさんが帰ってきてたんだ。
だから、ボクは変身するのを止めといたんだよ」

(そっか。たしかストラップになって春樹を守ってたんだっけ)

「それでどうしたの?」
「春樹が携帯電話で誰かとお話ししてて……少し経ったら、ピンポンって鳴ったんだ。
玄関に春樹が出て行ったら、ママさんがすごくドロドロしたおじさんとケンカみたいに話してたの。
おじさんが『春樹、行くぞ』って言ったら、ママさんが止めるのも聞かずに、春樹はその人と一緒に外に出ちゃったんだ。だけどね……」
「だけど、どうしたの?」
「家の前に、もう一人怖い男の人が立ってたんだ。その怖い人が春樹に『その精霊は置いていけ』って言ったの。
それで春樹はポケットの中にいたボクを門に置くと、三人は黒い車に乗って行っちゃったんだ」

(春樹を連れて行ったのは……二人)

①お継母さんと話していた男の人についてチハルにきく
②家の前に居た男の人についてチハルにきく
③冬馬先輩を見る

78 名前:706[sage] 投稿日:2008/02/16(土) 14:16:12 ID:???
③冬馬先輩を見る

「先輩、先輩には見える力がないって言っていましたけど、まったく見えないんですか?」
「まったく見えないわけではありません。
 ファントム程度は見えますし、人と精霊の違い位はわかります」
「それじゃあ、胸ポケットに入っているストラップが精霊だっていうのも分かるんですか?」
「状況にもよりますが、分かると思います」
「そっか……」
直接見えないものが精霊だと分かるのなら、もしかしたら神宝の鏡なのかもしれないと思ったけれど、状況にもよるというのなら鏡と断定も出来ない。
そもそも『見える力』というのはどういうものだったか……。
過去を振り返る。

(鏡の力は……映す力、見る力、反射する力)
神器と神宝の鏡が同じ力を持つかは不明だが、鏡というからにはこの3つの力はおそらくどちらにも共通にあるものではないだろうか。

映す力は遠くでの出来事を映すのに使うことが多い。過去や未来の出来事を映すこともあった。
見る力は正確には『内を見る力』。心や魂を見る力と言っても良いだろう。内に宿る真実を見る力。自分でも見失いがちな想いを映す。
反射する力は、自分に向かってくるものを、相手にそのまま返す力。呪詛などをそのまま相手に返すこともできた。

(ん……あれ………?)
ふと心に引っかかるものがあった。
初めて会った時の周防さん。

(まるで私の心を読んでいるようだった……よね?)
でもあれは、私の表情が分かりやすいからだといっていた。
たしかにその自覚はある。

(それに……、ショッピングセンターでの事件で一郎くんが言ってたよね、力を消そうとしている男がいたけれど、力の基が見えていないみたいだったって……)
鏡ならば基が見えたはずだ。神宝の力と神器の力が同じならば、という仮定での話しだけれど……。
それに、神器では鏡は一つ、神宝では二つというのも気になる。
なんにせよもっと神宝の情報がほしいところだ。

詳しそうなのは……
①チハルにまた神様と話せるようにお願いしようかな?
②周防さんに直接連絡してみようかな?
③近藤先生なら歴史の先生だし知ってるかも?

79 名前:707[sage] 投稿日:2008/02/17(日) 14:08:10 ID:???
②周防さんに直接連絡してみようかな?

(周防さんに聞くのが一番早いよね)
私は携帯を取り出すと、アドレスから周防さんを探し出す。
探しているところで、チハルが携帯の画面を覗き込んできた。

「どうしたの? チハル」
「ねぇ、だれに電話するの? ボク、かけてみたい」
「携帯を使ってみたいの?」
「うん。愛菜ちゃんも隆も春樹もみんな持っているのに、ボクだけ持ってないんだもん」
「そっか。でも、私の携帯でチハルがいきなり話し始めたら、きっと周防さんがビックリしちゃうよ」
「そうなの?」
「ごめんね、チハル。また今度ね」

「……周防に連絡を取りたいのですか?」
私とチハルの会話を黙って聞いていた冬馬先輩が、突然話しかけてきた。

「うん。周防さんに神宝のことを尋ねようと思ったんだ」
「それは周防の能力を知りたいということですか?」
「まあ……そうだね。周防さんって神宝の鏡かもしれないって、フッとそんな気がしたから」

「……………」
「?」
「……………」
「先輩?」
なぜか急に黙り込んでしまった冬馬先輩を、私は促すように尋ねた。
「………だれか、こちらに来ています」
「どうしてわかるの?」
「気配が……この感覚…」
「気配?」

力を手にしても、私には何も感じない。
見えないと言っていた冬馬先輩だけど、何か感じ取っているようだ。
今までもそうだったし、能力者を知覚するカンが特に鋭いのかもしれない。

それにしても、誰だろう……
①周防さんかな?
②熊谷さん?
③隆かな?

80 名前:708[sage] 投稿日:2008/02/18(月) 16:52:59 ID:???
①周防さんかな?

周防さんの話をしていたため、真っ先に周防さんが脳裏に浮かぶ。
冬馬先輩は無言で立ち上がると、チハルへ声をかけた。

「愛菜を守っていてください」
「うん!」
冬馬先輩は相変わらず静かな声で言うとそのままリビングから、庭へ出る戸を開け、雨の中へ出て行く。

「せ、先輩!?」
私は慌てて、先輩の後を追おうとしたが、やんわりとチハルにとめられる。

「ダメだよ愛菜ちゃん。あぶないよ、なんかねこわいのが来るよ」
「こわいの……?」
「うん、だから愛菜ちゃんはうごいちゃだめだよ」
そう言ってチハルは私の正面に回ってくると、ぎゅっと私を抱きしめた。

「こうしてればだいじょうぶだよ。ボクがまもるからね」
「でもチハル、先輩が……」
「……そのセンパイとやらは、しばらくここに来られないだろうよ」
「……!」
先輩が出て行った庭先に熊谷さんが立っている。

「センパイは、アイツが相手してるからな」
「熊谷さん……」
冬馬先輩と違い、ずぶぬれの熊谷さんは、楽しそうに笑ってリビングに近づいてくる。

「きちゃだめだよ」
ぎゅっと私を抱きしめて、チハルが冷たい声で言う。
こんなチハルの声は初めてで思わずチハルを見上げてしまった。

「なんだ? オマエ、ケガしたくなけりゃそこをどけよ」
「オマエじゃないよ、チハルだよ! それにクマガイは怖くないよ」
チハルはキッっと熊谷さんをにらんでいる。。
言ってる内容はチハルらしいけど、頼もしいことは確かだ。

「ふーん、やる気か? オレは楽しけりゃどっちでもいいぜ?」
「……そうかそうか、でもねぇ、愛菜ちゃんに手を出すのは許せないなぁ?」
「……! 周防さんっ」
「やっほー、愛菜ちゃん」
聞きなれた声がして、周防さんが庭の死角から歩いてくる。

(あ……周防さんもぜんぜん濡れてない……?)
冬馬先輩と同じく、水を操ることが出来るのだろうか?

いろいろと疑問は尽きない。

①「熊谷さんはどうしてここに?」
②「周防さんぜんぜん濡れてませんけど……?」
③「冬馬先輩が相手しているのは誰?」

81 名前:709[sage] 投稿日:2008/02/18(月) 22:28:09 ID:???
①「熊谷さんはどうしてここに?」

私の質問に熊谷さんは「はぁ?」と呆れた顔をする。

「そりゃ、決まってんだろ小娘。オマエを連れ去るためだよ。
器の封印が解かれたのを感じて、ここまで追ってきたのさ」

熊谷さんが一歩近づいてくるたびに、チハルは一歩後退する。

「愛菜ちゃんは、ボクがまもるんだからね」
「チハル…」

リビングに入ってこようとする熊谷さんを、周防さんは肩を掴んで止める。
二人は対峙するように、顔を見合わせていた。

「愛菜ちゃんを奪うのは、まず俺を倒してからにしてもらおうかな?」
「周防……やっぱり生きてやがったのか」

苦々しく顔を歪めた熊谷さんだったけれど、反対に周防さんは至っていつも通りだ。

「あのさ、熊谷。一言いっていいか?」
「なんだぁ?」
「その派手なシャツは無いな。まるでチンピラじゃないか」
「……うるせぇな」
「そのだぼたぼのズボンも下品だ。相変わらず、趣味悪いよなぁ」
「放っとけ」

周防さんは冷ややかな目で熊谷さんを見ている。
言われた熊谷さんは少しムキになりながら、反論していた。

「オレが何を着ようと、テメェにゃ関係ないだろ」
「関係あるさ。一応、親戚なんだし」
「一族の裏切り者がよく言うぜ」

ぶん、と熊谷さんが手を振ると、周防さんの頬に赤い筋がついた。
その筋から、血が滴り落ちる。

「アタタ……かまいたちか。不意打ちとは卑怯だぞ」
「……フン。ショッピングモールで今度こそ殺ったと思ったのによ」
「俺は往生際が悪いんだ。お前と一緒でな」
「チッ、死に損ないが……」
「決着をつけたいなら、ここでは止めろ。愛菜ちゃんが怪我をするといけない」
「オマエに指図されたくねぇな」

(熊谷さんも親戚なんだ……。ていうか周防さん、熊谷さんに対して言いたい放題のような)

「あの……」
私は二人の会話を遮るように、声をかけた。
「はぁ? 邪魔すんな」
「どうしたのかな、愛菜ちゃん」

えっと……
①「熊谷さんも高村の血筋なんですか?」
②「周防さんぜんぜん濡れてませんけど……?」
③「冬馬先輩が相手しているのは誰?」

82 名前:710[sage] 投稿日:2008/02/19(火) 14:42:14 ID:???
①「熊谷さんも高村の血筋なんですか?」

「いや、違う違う。俺の母が高村なんだけどさ、コイツはうちの父方の親戚。高村とは関係ないよ。
 能力者を多く出す血筋ではあるけどね。
 それに高村の一族なら、コードナンバーはつかない。
 まあ高村は嫌いだけど、コイツと同じ苗字を名乗るよりはマシだよね」
「オマエいいたい放題だな……」
周防さんがため息をつきつつ言うと、さすがに脱力したのか熊谷さんもがっくりと肩を落とした。

(周防さんって、案外毒舌なんだ……)
「いやいや、だってさこんな趣味悪いのと血縁ってだけで、同類にされたら嫌じゃない?」
そういわれて、つい熊谷さんを上から下まで眺めて頷いた。

「確かに……、でも周防さんは着こなし抜群だと思います。シンプルだけど趣味がいいと思いますよ」
「……お前ら言いたい放題だな、おい」
こめかみに青筋をたて、地を這うような声で熊谷さんがにらむ。

「事実だからね、と、まあそんな話はどうでもいいんだけど、で、俺とやりあうつもり?」
「邪魔する奴は排除していいっていわれてるなぁ」
青筋を立てたまま、熊谷さんが器用に口の端をクイッと持ち上げる。

「ふーん? で、俺に勝てるとおもってる?」
「やってみないとわからないな」
「なるほどね、確かに本気でやりあったことはないかな」
「日曜日に死にそうになってた奴がよく言うぜ」
「あの時は、愛菜ちゃんとの契約があったからね。力の制約があったんだよ」
「……へぇ、それじゃまるで制約がなければ余裕だったとでも?」
「じゃ、聞くけどさ、俺がアンタに勝てなかったことってあったっけ?」
「…………」
沈黙した熊谷さんに周防さんはにっこり笑った。

(す、周防さん笑ってるのに……なんか、笑顔がこわいよ……)
「愛菜ちゃん、愛菜ちゃん」
熊谷さんと周防さんの会話を、内心ひやひやして聞いていると、小声でチハルが私を呼んだ。

「どうしたの?チハル」
「周防がね、今のうちに逃げてって」
「え?」
「今のうちににげなさいっていってるよ」
周防さんは相変わらず熊谷さんと、向き合って立っている。

(テレパシーみたいなもの……?)
どうしよう……

①逃げる
②逃げない
③もっと詳しくチハルに聞く

83 名前:711[sage] 投稿日:2008/02/20(水) 00:09:34 ID:???
②逃げない

一緒に戦うために、力を手に入れた。
だから……

「周防さん。私、逃げたくありません。一緒に戦い――」
「駄目だ!!」

周防さんの大声で、私はビクッと動きを止めた。

「ごめんな、驚かせて。だけど駄目なんだ、愛菜ちゃん」
「どうして……」
「力の解放はさせるべきじゃなかった。だって、愛菜ちゃんが力を使ったら……」

せっかく力を手にしたのに、使っては駄目だってどういう事だろう。
私はただ呆然と立ちすくむことしか出来なかった。

そんな私の姿を見て、熊谷さんが痺れを切らしたように口を開いた。

「しっかし、この前といい興を削ぐのが好きな小娘だな。
力を使ってみたけれりゃ、使ってみるといいぜ。ただ、無事に済みゃいいがな」

(無事では済まないということ?)

「熊谷の言うとおり、俺も今の愛菜ちゃんが力を使ったら無事では済まないと思う」
「なぜ、そう思うんですか?」

私の質問には答えず、諭すように周防さんは私を見る。

「逃げるのも戦略のうちだよ。どうみてもチンピラだが、紳士的なところもある。熊谷なら抵抗さえしなければ、俺を倒すまで手出ししないだろう」
「周防のは一言余計だがな……いいぜ、逃げたきゃ行けよ。オレは周防と戦えりゃいいからな」
「ほら、熊谷の気が変わらない内にその精霊と……」
「待ってください。せっかくの力を使っちゃいけないなんて、どうしてですか!? 教えてください。周防さん!」

たくさん悩んで、決めたことだったのに。
(まだ、私には何か足りないというっていうの?)

「小さな力だったら使ってもいいんだ、気も回復するからね。だけど、無理に大きな力を使ってしまった時は……。
多分、こよみ……綾と同じことになる」

瀕死の重傷だった周防さんを、すべての力を使って救った綾さん。
綾さんは生命力そのものを削って、それを力に変えて命を落とした。

(綾さんと、同じ……)

「伝承どおりなら、今の君は太極でいうところの陰陽両儀だ。均衡がとれ過ぎていて、気を集めて力とする事ができない。
かといって、伝承の壱与のように、巫女としての修行を積んだわけではないんだ。
神器か神宝を完全に得なければ、愛菜ちゃんは生命力を削るしかないんだよ」

周防さんは何を言っているの…
①「それも高村の伝承ですか?」
②「陰陽両儀?」
③「一郎君たちはそんな事、何も言っていなかった」

84 名前:711[sage] 投稿日:2008/02/20(水) 00:10:13 ID:???
②逃げない

一緒に戦うために、力を手に入れた。
だから……

「周防さん。私、逃げたくありません。一緒に戦い――」
「駄目だ!!」

周防さんの大声で、私はビクッと動きを止めた。

「ごめんな、驚かせて。だけど駄目なんだ、愛菜ちゃん」
「どうして……」
「力の解放はさせるべきじゃなかった。だって、愛菜ちゃんが力を使ったら……」

せっかく力を手にしたのに、使っては駄目だってどういう事だろう。
私はただ呆然と立ちすくむことしか出来なかった。

そんな私の姿を見て、熊谷さんが痺れを切らしたように口を開いた。

「しっかし、この前といい興を削ぐのが好きな小娘だな。
力を使ってみたけれりゃ、使ってみるといいぜ。ただ、無事に済みゃいいがな」

(無事では済まないということ?)

「熊谷の言うとおり、俺も今の愛菜ちゃんが力を使ったら無事では済まないと思う」
「なぜ、そう思うんですか?」

私の質問には答えず、諭すように周防さんは私を見る。

「逃げるのも戦略のうちだよ。どうみてもチンピラだが、紳士的なところもある。熊谷なら抵抗さえしなければ、俺を倒すまで手出ししないだろう」
「周防のは一言余計だがな……いいぜ、逃げたきゃ行けよ。オレは周防と戦えりゃいいからな」
「ほら、熊谷の気が変わらない内にその精霊と……」
「待ってください。せっかくの力を使っちゃいけないなんて、どうしてですか!? 教えてください。周防さん!」

たくさん悩んで、決めたことだったのに。
(まだ、私には何か足りないというっていうの?)

「小さな力だったら使ってもいいんだ、気も回復するからね。だけど、無理に大きな力を使ってしまった時は……。
多分、こよみ……綾と同じことになる」

瀕死の重傷だった周防さんを、すべての力を使って救った綾さん。
綾さんは生命力そのものを削って、それを力に変えて命を落とした。

(綾さんと、同じ……)

「伝承どおりなら、今の君は太極でいうところの陰陽両儀だ。均衡がとれ過ぎていて、気を集めて力とする事ができない。
かといって、伝承の壱与のように、巫女としての修行を積んだわけではないんだ。
神器か神宝を完全に得なければ、愛菜ちゃんは生命力を削るしかないんだよ」

周防さんは何を言っているの…
①「それも高村の伝承ですか?」
②「陰陽両儀?」
③「一郎君たちはそんな事、何も言っていなかった」

85 名前:712[sage] 投稿日:2008/02/20(水) 15:30:00 ID:???
③「一郎君たちはそんな事、何も言っていなかった」

周防さんの言葉を疑うわけではないけれど、そんな大事なことを一郎くん達が言わないはずはない。
それどころか、冬馬先輩の傷を治す方法を思い出す手伝いまでしてくれた。

(周防さんたちしか知らないことがあるの……?)
でも、それだって神器である一郎くんたちが知らないことなんて、無いのではないだろうか?鏡には過去や未来をみる力だってある。

声が出なくなってしまったから力を解放するのが必要だったとしても、その後のことまで総合的に考えるのが一郎くんなのだ。
そして問題がないと判断したからこそ、力の解放を手伝ってくれたと思っている。

(一郎くんがなにも考えないわけないよ)
その点は一郎くんを疑う予知はない。いつでも、先を考えて行動する。

「もし力の解放でまったく力が使えなくなる状況になるって分かってたら、一郎くんは力の解放なんてしなかったと思う。
 もし、そうなっても何か別の方法で力は使えるはずだよ」
「愛菜ちゃんは、その一郎くんを信じてるんだ?」
「……はい」
いつもの周防さんと違う、どこか寂しげな目に私は気おされつつ頷いた。
けれど周防さんはすぐにいつもの表情に戻ると言った。

「愛菜ちゃんが信頼するくらいだから、きっといい奴なんだろうけどそいつがすべてを知ってると思うのは危険だよ」
「確かにそうかもしれませんけど……」
周防さんの言うことも最もだ。

「そいつが全部知っていようがいまいがどうでもいいだろ? いい加減いつまでまたせんだ」
「きゃっ」
イライラとした熊谷さんの声と共に、私の近くで空気が弾けるような音がした。

「だいじょうぶだよ愛菜ちゃん」
「おいおい、女の子をいじめるなんて、男らしくないなあ」
「ふん、なんとでも言え。いつまでもぐだぐだ話してるからだぜ?」
熊谷さんが言葉を続けるたびに、パンパンと私の近くの空気が弾ける。
直接何かするわけではないし、ただの威嚇だと分かっているから怖くは無いけれど、熊谷さんは気が長いほうではないのが伺える。

「さっさと逃げろよ? 話しなんて後でいくらでもきけるだろ」
「そうそう、さくっと熊谷をやっつけちゃうからさ」
「ふん、簡単にいくかな?」
「さあ? まあ、愛菜ちゃんはとりあえず逃げてくれるとお兄さんうれしいな? 
 あ、そうそうそれに、別に殺したりするわけじゃないから安心してね?」
再度周防さんが私を促す。私は、仕方なく頷いてチハルを見上げた。
チハルは私の視線を感じたのか小さく頷く。
抱きしめられていた腕を解かれ、私はリビングを出た。

でも、逃げるっていってもどこへ……?
携帯を取り出して、時間を見る。
丁度学校は休み時間。

①学校に戻る
②電話する
③駅へいく

86 名前:713[sage] 投稿日:2008/02/20(水) 21:18:11 ID:???
①学校に戻る

携帯をポケットに入れ、とりあえず傘を持って玄関を飛び出した。
一緒に出てきたチハルに傘を渡して、私も急いで傘をさす。
「どこにいくの?」
「……一郎くん達もいるし、学校へ行こうか」
「うん。行こう愛菜ちゃん」
私とチハルは思いつくまま、学校に向って走りだした。

ハァ、ハァ、ハァ…

私は息を切らせて、走り続ける。
最初は私がチハルを引っ張っていたけれど、いつの間にかチハルに引っ張られるように走っていた。
走っているせいで、足元どころか制服もずぶ濡れになってしまった。

(にしても、周防さんの言っていたことって……本当なのかな)
わからない。けど、せっかく得た力を使ってはいけないなら、きっと一郎くんなら最初から言ってくれるはずだ。

目の前に学校が迫ったところで、私は人影を発見する。
校門前で傘をさし、立っている影には見覚えがあった。
「修二くん!!」
「……愛菜、ちゃん?」
「大変なの。冬馬先輩や周防さんが襲われて!」
「うん。わかってる」
修二くんはこの状況もわかっているのか、驚いた様子も無い。見ることのできる鏡は、さすが心強い。

「一郎くんと一緒に助けてあげて。私が力を使っちゃ駄目だって周防さんがいうの。逃げろって……」
「………」
「一郎くんはどこ? どうすればいいか聞かなきゃ」
「………………」
私の言うことは聞こえているはずなのに、修二くんは何も言わない。
その時、チハルが私の前に庇うように立った。

「この人、よくないかんじがするよ」
「どうしたの? 修二くんとは何度も会っているじゃない」
「なんだか、ドロってする」
「……ハハハッ。やっぱり兄貴に頼るんだね、愛菜ちゃんは」
傘が邪魔して顔までわからなかったけれど、笑っていても口調は暗く沈んでいた。非難するような、棘すら感じる。

「修二くん。どうしたの?」
「鏡だって、偽物より本物の方がいいに決まってるよね……」
「偽物って、なんのこと?」
「愛菜ちゃん、この人にちかづいちゃダメだよ!」
「この精霊……うるさいな。邪魔だから、黙っててよ」

修二くんがチハルの腕に触った瞬間、大きかったチハルが小さなぬいぐるみに戻ってしまった。
「チハル?」
呆然と、地面に落ちた濡れたチハルを抱き上げる。
突然の出来事に、頭が混乱する。

①「修二くん、一体どうしたの?」
②「修二くん! なぜこんなことをするの!?」
③「修二……くん?」

87 名前:714[sage] 投稿日:2008/02/21(木) 14:26:02 ID:???
③「修二……くん?」

「ねえ、愛菜ちゃん? 俺はね過去なんてどうでもよかったんだ」
「……?」
チハルが居なくなった分、さらに一歩ちかづいた修二くんがささやくような声で言う。

「兄貴と俺は同じようでまったく違う」
「……当たり前でしょ?」
なぜそんな事をいうのか。双子だって別の人間だ同じわけがない。
修二くんはさしていた傘から手を離す。さらに近づいてほとんど密着状態になった。
修二くんは怒っているような、泣いているような、いらだっているような、複雑な表情で私を見ていた。
傘を捨てた修二くんがあっという間に濡れていく。
私はあわてて、修二くんも入れるように傘をかざした。

「そうじゃない、そういう意味じゃないんだ。 兄貴には過去の記憶がある。俺にはない」
「そう言ってたね」
修二くんの腕が伸びてきて私をそっと抱きしめた。
普通なら逃げるところだけれど、修二くんのただならぬ様子に動けない。

「力も違う。現在を見る力は同じみたいだけど、兄貴には未来を見る力がある。俺には過去を見る力が」
(過去なんてどうでも良いって言ったことと関係あるのかな?)
「二人でいればどういう原理かどちらの力も使えるけど、一人のときは俺は未来を見ることができない」
「…………」
修二くんは未来を見る力がほしかったのだろうか?

「過去なんてどうでもいい、大事なのは先のことだ。だから俺は過去を見る力を使った事がなかったんだ」
「……そう」
「でもね、愛菜ちゃんに会ってから見える世界が変わった。その理由を知りたいと思った」
修二くんは私の肩に頭を預けるようにして言葉を続ける。

「兄貴といるとき愛菜ちゃんの未来を見たんだ、愛菜ちゃんがなにか大変な事に巻き込まれるのを知った。
 でも、未来は確定じゃない、刻々と変わるものだ。見た未来で愛菜ちゃんが巻き込まれる原因を見つけられなかった
 だから、過去になんかあるんだろうって思ったんだ。そのとき自分の力を始めて使おうと思った」
「え……でも………」
「うん、使わなかった。いや、正確には怖くて使えなかった」
「怖い……?」
「何で過去を知るのが怖いのか、もしかして今まで過去はどうでも良いと思っていたのも潜在的に怖がってたからじゃないか……って思うようになったよ。
 そして予感は当たった。俺は自分の過去を知るのが怖かったんだ」
「え……?」
「さっき力を使ったんだ。過去を見る力を……」
修二くんの腕の力が強くなる。私は修二くんが震えているのに気づいた。
そのまま修二くんは沈黙してしまった。

どうしよう……
①「何が見えたの?」
②「無理して言わなくても良いよ」
③修二くんが話し出すまで待つ

88 名前:715[sage] 投稿日:2008/02/22(金) 00:43:49 ID:???
①「何が見えたの?」

私は間近にある修二くんの顔を、そっと覗きこむ。

「教えたくない。だって、俺にとって肝心なのは過去じゃなく、未来だから」

震えは治まったけれど、修二くんの様子はやっぱり普通じゃない。
いつもの余裕や軽い態度が、まるで影を潜めてしまっている。

「本当にくだらない事で、面白く無い話なんだ」
「ねぇ、本当にくだらない事なの? なんだか、苦しそうだよ」
「苦しい? まさか」
修二くんは低く笑うと、私の耳元に唇を寄せた。

「……つまらない話題より、もっと楽しいことを教えてあげるよ」
耳元で、吐息ともつかない言葉を囁かれる。
その甘い囁きに身体の力が抜けて、次の言葉が出てこない。
濡れた制服から、修二くんの体温がジワリと伝わってきた。

「や……」
「怖がらないで。髪までこんなに濡れて……可哀想に」
「…やめ……て」
「この前とは違う、ちゃんとしたキスをしてあげるから」
「…じ、冗談はやめて……」

私の声を聞いて、修二くんの腕がフッと解ける。

「……また冗談で済ませるつもり?」
「し、修二くん?」
「愛菜ちゃんは……また、はぐらかすつもりなんだ」

修二くんは頭を起こして、私を見据える。その顔はいつになく苦しそうに、歪んでいた。

「はぐらかすなんて、そんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どんなつもりなのか教えてよ。やっぱり、兄貴がいい? それとも俺が嫌いなのかな?」
「違うよ」
「だったら……! なんでいつも逃げるのさ」
「修二くんは、私の中の壱与が気になっているだけなんだよ」
「前世なんて関係ないじゃん。愛菜ちゃんは俺を信じてくれるって言ったのに、どうして否定ばかりするんだ」
「否定なんて……」
「否定してるじゃないか。一体、何を考えているんだよ」
「私、ずっと不思議だった。なぜ修二くんが私にこだわるんだろうって。でも気づいたんだ。修二くんは……鏡として壱与に惹かれているんだよ」
「……どうしてそうなるんだ。愛菜ちゃんだからいいって、ずっと言ってたのに」

修二くんは呻くように呟き、再び私を見る。

「……わかった。しつこいのは嫌だし、もうこれで最後にしよう。
俺の気持ちに応えてくれる? もし駄目でも、素直な愛菜ちゃんの気持ちを教えて」

どうしよう……
①「……やっぱり無理だよ。ごめん」
②「ちょっと待って」
③考える

89 名前:716[sage] 投稿日:2008/02/22(金) 17:20:27 ID:???
③考える

(私の気持ち?)
思わず考え込んでしまう。
以前は修二くんの事を軽薄な人だと思っていたけど、ちゃんと優しいところもあることを今は知っている。

(いつも自分の気持ちに正直に生きてるんだよね……え?)
そう考えて、ふと思考がとまる。
自分の気持ちに正直に生きてる、ということは私のことを好きだといったのも冗談でもなんでもなく素直な気持ちなのかもしれない。
そう思ったら急に心臓がドキドキと鳴り出した。

(え? え? もしかして本当に……?)
顔が熱い、きっといま私は真っ赤だ。

「愛菜、ちゃん?」
急に真っ赤になった私に、修二くんが少し驚いたような顔で覗き込んでくる。

「ち、ちがっ……あの……そうじゃなくてっ」
あわてて、修二くんに顔が見えないようにうつむく。
途端、修二君がクスクスと笑いはじめた。

「愛菜ちゃんホントかわいいなぁ。ね、いいの? そんな反応見せられたら期待しちゃうよ?」
「あ、あの、そうじゃなくって……だから……」
あわてればあわてるほど何を言えばいいのか分からなくなる。
けれど、修二くんと付き合うとかそういうことは今考えられない。
それ以上に不安があるから。
とりあえずこれだけは伝えないといけないと思った。

「あの、あのね? 修二くんが嫌いとかそういうのじゃないんだけど……」
修二くんの顔は見れなくて、うつむいたまま話す。

「今は誰かと付き合うとか考えられなくて……、それは修二くんだけじゃなくて、一郎くんも隆も同じなんだよ」
「どうして?」
「だって、高村一族が私を狙ってるし、春樹も行っちゃったし、お母さんは泣くし……それどころじゃないの、だから……」
我ながら支離滅裂な事をいっていると思う。

①「ごめんね」
②「全部終わるまで返事はまって」
③「……わかってくれない?」

90 名前:717[sage] 投稿日:2008/02/23(土) 02:15:01 ID:???
③「……わかってくれない?」

「もちろんわかるよ。ちゃんと、すべてが終わるまで待つつもりだし。
けど、愛菜ちゃんの気持ちはどうなのかな? 少しも俺と一緒の未来を想像できない?」

修二くんは私の手を握りながら、問いかけてくる。長くしっかりした指が、私の指に絡みついてきた。
その仕草があまりに自然で、逆に戸惑ってしまう。

(修二くんと付き合う……)

取り巻きに囲まれて、平気で何人もの女の子と同時に付き合うような修二くん。
多分、たくさんの女の子を泣かせているはずだ。
だから私は、そんな修二くんを冷ややかな目で見ていた。
でも同時に、その自由奔放な姿が気になって、目を逸らすことが出来なかった。

「あの……あのね、一つ教えて」
「ん? どうしたの」
「もし私が修二くんの彼女になるって言ったら、今まで修二くんが仲良くしていた女の子達はどうするの?」
「へぇ、妬いてくれてるんだ? 脈アリってことかな」
「そういうつものじゃ……」
「本当? ずいぶん顔が赤いけど」
わざと意地悪に囁いて、修二くんは私を覗き込んできた。
心臓が高鳴って、顔をあげることがてきない。

「愛菜ちゃんは、俺を取り巻くあの娘たちをどうして欲しい?」
「わ、わからないよ」
「俺に特定の恋人ができたとなれば、あの娘たち、きっと泣いちゃうだろうな~」
「…………」
私は否定も肯定もできず、黙り込むことしかできない。
「愛菜ちゃんから尋ねてきたんだよ。どうして欲しいのか、ちゃんと言ってみて」
「……そんな事言われても」
「俺は愛菜ちゃんが望むようにするよ」

修二くんは俯く私の顔を、そっと指で持ち上げる。
顔をあげた視線の先には、真剣な修二くんの顔があった。

「お願いだから、俺を受け入れてよ。そしたら、すぐにあの娘たちは捨てるから」
「捨てるって……そんな簡単な問題じゃないよ」
「じゃあ、あの娘たちが居てもいいって言うんだ?」
「そ、そういう訳じゃないけど」
「俺はね。愛菜ちゃんさえ居れば、他は要らない。どうせ今までも、ただの戯れだったんだ。もうあの娘達には、何の価値もないよ」
「恋人だった女の子達でしょ。そんな言い方、酷い」
「酷いって、何? 便利だから、利用しただけ。欲しがったから、与えただけ。それだけのことじゃない。泣いてすがってくる女の子もいたけど、ウザいだけたったし。俺は人間じゃないって、罵られたこともあったけど、否定なんてしなかった。本当のことだから」
「修二くん?」
「俺は人形だ。だけど、もう兄貴の横で、道化を演じるのは沢山なんだよ」
「人形って何? 言ってくれなきゃ分からない」
「教えたくないよ。それよりも……優しい愛菜ちゃんでも、俺を道具だと……鏡としての利用価値しかないって思うのかな?」

①思う
②思わない
③考える

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