101 名前:446[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 21:45:44 ID:???
③二人の言い合いを止める

「あ、あの…あのね、ちょっと聞いて」
私は二人の間に割って入ろうと、口を出した。

「愛菜ちゃん。悪いんだけど、大切な話をしてるから少し黙っててくれるかな?」
「で、でも……」
「今度ちゃんと聞くからさ」
言い方こそ穏やかだったけれど、有無を言わせない修二君の口調に思わず口をつぐんでしまった。
そんな私を見て、修二君は再び冬馬先輩に向き直る。

「約束って何なのさ? 組織の犬なんだろ、アンタ」
「違う。約束を果たすために、愛菜を守る。そのために…僕はいる」
「じゃあ、冬馬先輩は『あの人』ってやつの犬なんだ。あいかわらず、自分の意思ってものが希薄なんだね」
「………反論はしない」
冬馬先輩は感情の無い言葉で答える。

「はははっ、素直に認めてるし。本当に昔から人形みたいで気持ち悪いよ」
修二君はつまらなさそうに笑った後、苦々しく冬馬先輩を見据えた。

「『あの人』って人物も組織みたいにアンタの化け物じみた力を利用してるんだけだろうさ。きっと、陰で高笑いしてるよ?」
「あの人はそんなことはしない」
「どうだろうね。もしかしたら、裏切られているかもしれないよ」
「あり得ない」
「すごい執着だね、怖いなぁ」
修二君は両腕を抱え込み、おおげさに震えてみせた。

「…………もしこれ以上あの人を侮辱するなら、容赦はしない」
冬馬先輩にしては珍しく、感情を込めて言い放つ。
「おお、怖い怖い。まあいいさ。犬に文句言っても始まらないし」
「…………」
「冬馬先輩。俺たちは組織に協力するつもりは無いから、それだけ伝えておいて。利用されるのは御免だってね」

そう言うと、修二君は階段を素早く下っていった。
冬馬先輩も私をジッと見つめた後、きびすを返し何も言わずに去っていく。

私は…
①修二君を追う
②冬馬先輩を追う
③考える

102 名前:447[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 23:02:06 ID:???
③考える

(あ……)
呆然としたまま、二人を見送っていた私はふと我に返った。
目の前には冬馬先輩が手伝ってくれたダンボールの井戸。

「作業、終わってたんだよね……」
井戸が描かれたダンボールを抱え教室へとゆっくりと歩いていく。

(冬馬先輩……修二君……)
井戸の絵が私の視界をちらつく度に、冬馬先輩が手伝ってくれたときのことを思い出す。
……そして、その後の二人のやり取りのことも。

(冬馬先輩、大丈夫かな。
……修二君もあそこまで酷く言うことないのに)
終始、冬馬先輩に対し何か異質のものを見るような拒絶的な態度を取っていた修二君。
それは、いつもの私への態度や一郎君への態度、春樹に話をしていたときの態度―――そのどれとも違い、そして私が見てきた中では最も険しく棘のある態度だった。

おそらくだけど……修二君は冬馬先輩の過去のことを知っているのだろう。
もしかしたら、その中にあそこまで否定するに至る何かがあったのかもしれない。

(でも、それでも)
修二君がその事実を全てにして……”今ここにいる”冬馬先輩を否定するかのような態度を取ったことが、私は悲しかった。

―――だってきっと修二君は知らないよね?
今の冬馬先輩のことを。
どんなことを考えているかとか、どんな風に話をするとか、癖とか、たまにわずかに感情が動くこととか。

(私だって、全部知っているわけじゃない。でも)
信じたい。今いる冬馬先輩のことを。
……そして、修二君のことも。



(香織は……)
戻ってきた教室で私は指示を出した親友の姿を探す。
けれど、見渡す限りその姿はどこにも見当たらない。

(あれ?どこいったんだろう?しかたないなぁ……)
私は近くにクラスメイトに井戸の絵が描かれたダンボールを渡し、今日は帰るということを伝える。

「気をつけてねー」
気遣うようなクラスメイトの声を背に、私はその場を後にした。

(さて、これからどうしようかな?)

二人を探したほうがいいのだろうか?
それとも……

①今いる教室棟を回ってみる
②特別教室棟に行ってみる
③校舎外に出てみる

103 名前:448[sage] 投稿日:2007/06/29(金) 13:14:00 ID:???
②特別教室棟に行ってみる

(そういえば放送委員のほうはどうなってるかな…)
先週大まかな打ち合わせは終わったけれど、細かい所をつめる作業が残っている。

(もしかして一郎くん全部一人でやってるんじゃ…?)
なまじ何でも出来てしまうから、一郎くんは一人で抱え込んでしまう。
心配になって、私は放送室へ足を向けた。
放送室のドアノブを回すと、案の定鍵はかかっていなくて、すんなり開く。

「大堂か、どうした?」
「お、愛菜ちゃん」
中を覗くと、一郎くんだけじゃなく修二くんも居た。
きっと修二くんは冬馬先輩のことを一郎くんに話に来たんだろう。
二人そろっているなら、冬馬先輩の事を説明するいい機会だ。

「あのね修二くん…、さっき冬馬先輩が言ってた”あの人”の事なんだけど…」
「ああ、さっきのお人形さんの話?」
「もう、そんな言い方しないで!それに、後でちゃんと話を聞いてくれるって行ったわよね?」
「ん?あー…、確かにいったかな?」
「じゃあ、聞いて。冬馬先輩が言ってたあの人っていうのは、私のお母さんのことよ…お母さんのことあんな風に悪く言わないで……」
「愛菜ちゃんの、お母さん…?」
修二くんは私の言葉にパチパチと瞬きをする。

「どういうことだ?大堂?」
首を傾げる修二くんの疑問を引き継いで一郎くんが尋ねてくる。
私は二人に、10年前に何も言わずに居なくなったお母さんのことをかいつまんで説明した。

「…ということは、昨日俺が会った人は、二人目の母親なのか」
「うん…」
「でもなんで愛菜ちゃんの本当のお母さんは、愛菜ちゃんを残してあの化けもの…じゃない、冬馬先輩の所へ行ったんだろ?」
「わかんない…何も言わずに居なくなっちゃったから…」
お母さんが組織の人間だったのか、それとも組織と対立していたのか…何も分からないのだ。
何も言わずに居なくなったお母さん。冬馬先輩を引き取り、名前をつけて、力の使い方を教えた。

「愛菜ちゃん、ごめんな?」
しんみりした雰囲気になった私に、修二くんが言う。

「え?」
「知らなかったとはいえ、愛菜ちゃんのお母さんのこと、かなり悪くいっちゃたし…」
私は修二くんに首を振って、もう気にしていないことを伝える。

「だが、冬馬先輩が嘘を言っている可能性というのはないのか?」
そのとき一郎くんが、静かに言ってきた。
冬馬先輩が嘘をつく所なんて想像がつかない…。

私は…
①「冬馬先輩は、本当のことしか言わないよ」
②「隠し事はするけど、嘘はつかないよ」
③「…………」

104 名前:449[sage] 投稿日:2007/06/29(金) 23:19:14 ID:???
②「隠し事はするけど、嘘はつかないよ」

「大堂。証拠でも見たのか?」
「ロケットの写真を確認しているし、間違いないと思う」
「ロケット?何、なんのこと?」
修二君は興味深そうに尋ねてくる。

「えっと…いつも冬馬先輩はロケットを肌身離さず持っているんだけど、それを以前見せてもらったの。お母さんと子供の頃の冬馬先輩が写っていたんだ」

確かに、ロケットにはお母さんが写っていた。
見間違えたりするはずは無い。

「では、本当に大堂の母親こそが”あの人”で間違いないということだな」
「そうだと思う。守るように頼まれたから、私と契約してくれたんだよ」
「そうか…」
そう言って、一郎君は考え込んだ。
目を瞑ってひたすら考え込む一郎君を、修二君と私で辛抱強く見守った。

(一郎君は何を考え込んでいるのかな?)

しばらく身動き一つしないで考え込んでいたが、ようやく一郎君はゆっくり口を開いた。

「ところで……修二」
「ん? どうしたの兄貴」
「クラスでの文化祭の準備はちゃんと手伝ってきたのか?」
一郎君はじろりと修二君を睨みつける。
それを見て、修二君はバツが悪そうに鼻の頭を掻いた。

「あー…。えーっと、それは……」
「まさか、また逃げ出してきたんじゃないだろうな」
「逃げ出すって失礼だなぁ。他のクラスの偵察をしてたんだよ」
「お前は委員会の仕事があるわけではない。今は部活動も制限されている。となれば、やる事は一つだろう」
「なんだよ~。今は愛菜ちゃんと大切な話してるのにさ」
「やるべき事をやり終えてから、ゆっくり話せば済むことだ」
「ちぇっ、わーった。わかったよ。行ってくればいいんだろ」

修二君はブツブツと文句を言いながら放送室を出て行った。

「ようやく出て行ったか…。大堂、修二のことで何か聞きたそうな顔をしているように見えるが、俺の気のせいではあるまい」
「え、…うん。よくわかったね」
「俺のわかる範囲でなら、答えよう」
一郎君は改めて私に向き直ると、腕を組みながら言った。

何を聞こうかな?
①修二君と施設について。
②修二君と冬馬先輩の関係について。
③修二君と一郎君のちからについて。

105 名前:450[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 09:14:38 ID:???
②修二君と冬馬先輩の関係について。

「修二くんと冬馬先輩、お互いを知っているみたいだったから、気になって…」
それに、二人とも番号で呼び合っていた…。

「二人の関係か。まあ俺も含めて、簡単に言えば顔見知り、だろうな。今まで直接話しをしたことはない」
一郎くんは言いながら、作業の途中だったらしいノートをまとめ始める。

「顔見知りっていうには、修二くんは敵意むき出しだったんだけど…?」
「それはそうだろうな、君が冬馬先輩と呼ぶ人物は、俺たちから見れば規格外だ」
「規格外?」
「俺たちは力の有無を見分ける力に特化しているが、その俺たちが始めて恐ろしいと感じた人間だ。自然と警戒する」
「そんなに、冬馬先輩って力が強いの…?」
「強い、なんて次元じゃないな。何で彼のような人間が存在できているのか不思議だ。だが…」
ふと、一郎くんはそこで言葉を切り私を見て、再度ノートに視線を落とす。

「君を守る力を見る限り、彼は以前とは変わったようだ。力もうまく押えられるようになったようだし」
私はそこでふと、疑問をおぼえた。

それは…
①一郎くん達が初めて冬馬先輩を見たのはいつか
②一郎くん達は研究所に主流と反主流があることを知っているのか
③研究所はどうして一郎くん達の力を知ったのか

106 名前:451[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 16:10:16 ID:???
①一郎くん達が初めて冬馬先輩を見たのはいつか

「一郎君、冬馬先輩の知り合ったのはいつなの?」
私は頭に浮かんだ疑問をそのまま口に出した。

「まずは……経緯から話さなければならないな。俺達は小学1年から3年生の間、ある施設に入っていた」
「それって、まさか高村の施設のこと?」
「よく知っているな、大堂。俺達は両親の薦めで一時施設に預けられたんだ」

「え?でも、一郎君たちのご両親が…なぜ……」
「普通の人々に見えないものまで見えてしまう俺達の力を両親は恐れていた。
物心ついたときから、人々の気が見えていたからな。人の気というのは、言い換えれば生命力だ。
幼い俺達は、気軽に人の死期を言い当てていた。ゲーム感覚でな」

死期をズバリ言い当ててしまう子供達が居たら……自分の子供でも怖いと思ってしまうかもしれない。
もしも治せるものなら治して、普通になって欲しいと願うだろう。

「人の死期だけじゃない。力そのものも、何も考えずに使っていた。例えば――こんな風に」

そう言うと、両腕を組みゆっくり目を閉じる。
次の瞬間、目の前にあるノートがペラペラと音を立てながら凄い勢いでめくられていった。

「きゃっ!」
「驚かせてすまない」
「ううん……ちょっとびっくりしただけだから、気にしないで」
私の言葉に黙って頷くと、一郎君は話を再開する。

「触れていないのに動かせる、見えないものが見える子供。だから両親は俺達を隠すように育てていた。
そして、小学校入学と同時に、施設へと預けられたんだ」
「そこで冬馬先輩と知り合ったんだ?」
「そうだ。当時、冬馬先輩は隔離棟に入っていた。そこは力を制御できず、危険と判断されたもののみが入れられる場所だった。
最初に彼を見かけた時、蝋人形のように動かなかったのをよく覚えている」
「で、でも……以前先輩は誰にも会うことの無い場所だって言っていたよ」

確か、冬馬先輩は『何も無い、誰も来ない、死なないように管理』する場所と表現していた。

「俺たちは能力を買われ、特別に接触できたんだ。各個人の力の数値化と適正化が施設の目的だったようだ。
施設側は能力の有無に関して、ある程度は確認できるようだったが、大きさや適正までは判断できなかったらしい」
「じゃあ、施設にいる能力者を大勢見てきたってこと?」
「そういうことだ」

新しい事実がわかった。だけど、また新しい謎が出てくる。
次は何を尋ねようか?

①どうやって施設から戻れたの?
②一郎くん達は研究所に主流と反主流があることを知っているのか
③武くんって知ってる?

107 名前:452[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 13:22:20 ID:???
②一郎くん達は研究所に主流と反主流があることを知っているのか

「……大きな組織ほど一枚岩とは言えないだろうな」
一郎くんは私の疑問に、何か考え込むように空を見つめる。
その様子から、主流反主流の情報を知らなかったのだと思う。

「大堂はなぜ主流と反主流の存在を知ったんだ?」
一郎くんの疑問に、私は答えてもいいものかと一瞬迷い、結局話すことにする。

「冬馬先輩が教えてくれたの。冬馬先輩は反主流の人が掛け合ってくれて、研究所からでることができたって。先輩も後で母から聞いた話みたいだけど」
周防さんの名前は出さずに、冬馬先輩から聞いた話をそのまま伝える。

「今、表立って私に接触しようとしてるのは、主流派だっていうのも聞いたわ」
「なるほど…組織の主流ということは、組織の中での大多数ということになるが、反主流も黙ってはいないということか…」
「え?」
何かを納得したような一郎くんのつぶやきに私が疑問の声を上げると、一郎くんは昨日の話をする。

「昨日、公園で男が力場を消そうとしていたと言っただろう。おそらく彼は反主流派だ」
「………」
一郎くんの頭の回転の速さに私は口をつぐむ。

「それに主流派が大堂に接触を試みているというのなら、反主流派も主流派とは別に接触してくる可能性もあるな。いや、もうしているのか?」
そう言って、じっと私を見る一郎くん。

私は…
①「うん、実は……」
②「冬馬先輩は反主流じゃないの?」
③「………そう、なのかな?」

108 名前:453[sage] 投稿日:2007/07/03(火) 01:43:29 ID:???
①「うん、実は……」

「どうした? 大堂」

「実は、その反主流の人と冬馬先輩とで日曜日に会っていたんだよね」
「日曜……まさか、あのショッピングモールの公園か?」
「うん」
「なんて無謀な真似を…」
「せ、接触なんて大げさな感じじゃないんだけどね。もっと気軽っていうか」
「何か聞かれたのか? 何にもされなかったのか?」
一郎君は身を乗り出すようにして尋ねてきた。

「何も考えるなって言われたよ。何かされたといえば…よく頭を触られたかな」
「頭に触れる、か。一体、何が目的なんだろうか……」

反主流派の意図が掴めないという様に、一郎君は考え込んでしまった。

「あー…。一郎君が思っているような接触じゃないから、安心して。ただ気晴らしに連れてってもらったんだ」
私は首をすくめながら、一郎君をに説明する。

「気晴らし? 君のか?」
「うん。ショッピングして昼食をごちそうになったよ」
「意味がわからないな」
「一郎君が考えているような、深い意味は無いと思う。私が疲れた顔をしていたから、心配してくれただけなの」
「心配…? その反主流を名乗る人物が?」
「うん。とてもいい人だよ」
「そうか…。とにかく、大堂に何事もなかったのなら何よりだ」
安心したように座っている椅子の背もたれに深く座りなおし、一郎君は言葉を続けた。

「……今の話で、いくつかわかったことがあるな」
「え? 何がわかったの?」
「主流が力場を作ったのは、君を狙う目的と、反主流への制裁を兼ねている可能性が高いという事だ。
それと、力場を二箇所に分けたのは俺と修二を分けるためではなく、冬馬先輩とその反主流の人物を分断させる必要があったのだろうな。
大きな力場にしなければならない事からも、主流派は冬馬先輩とその反主流の人物の力を相当恐れているようだ」
「さすが一郎くん。冷静な分析だね」
「あくまで仮定だ」
そう言って、一郎君は再び委員会の作業に戻った。

(どうしようかな。一郎くんに周防さんの名前を教えようかな)

①教える
②教えない
③考える

109 名前:454[sage] 投稿日:2007/07/03(火) 11:41:59 ID:???
①教える

(一郎君は敵じゃないみたいだし、話も冷静に聞いてくれてる。
……教えてもいいんじゃないかな?)
そう思い、私は口を開く。

「その人……高村周防さんって言うんだよ。
もしかしたら、一郎君も名前を聞いたことがあるかもしれないね」

「高村、周防……?」
私の言葉に、一郎君が顔を上げる。

「彼が、高村周防、だと?」
一郎君は、反芻するように再び周防さんの名前を呟いた。

表情がだんだんと難しいことを考えているような……何かを訝しむような物に変わっていく。
「大堂」
一郎君が私の肩にゆっくりと手を置いた。

「君が昨日共に出かけ、俺が公園で見かけたその彼……反主流の男が、そう名乗ったのか?」
私をじっと見つめて、確認するように問いかけてくる。

「う、うん」
一郎君の様子に気圧されながらも、首を縦に振って答えを返した。
「……そう、か」
その答えを聞くと、私からわずかに目をそらす。

「あれが、高村周防……?……だが、彼は確か……」
そして何かを思案しているのか、何事かを呟きはじめる。

(……何?一郎君のこの反応は何なの?周防さんに何かあるの?)

①「一郎君、大丈夫?どうかしたの?」
②「周防さんに何かおかしいことでもあるの?」
③「高村の施設で会ったり見かけたりしたことはないの?」

110 名前:455[sage] 投稿日:2007/07/03(火) 13:39:29 ID:???
①「一郎君、大丈夫?どうかしたの?」

私の声に、一郎君は弾かれたように肩から手を離した。視線がぶつかって一瞬目を見開くと、一郎君はそのまま目を伏せる。

「一郎君?」
「いや、すまない。気にしないでくれ……たいした事じゃない」
短くそう言って、一郎君は窓辺に立った。見るともなしにどこか、遠い所を眺めているように見えた。

(一郎君はたいした事じゃないって言ってるけど……)
私に向けられた背中を見ながら思う。きっと一郎君は私がまだ知らない周防さんの何かに思い当たったのだ。けれど。たいした事じゃないと口をつぐむところをみると、それを私に話すつもりはないということなのだろう。

「……わかったよ。聞かない方が良いんだね?」
質問というよりは確認するようにそう声をかけると、一郎君は肯定も否定もせずに室内の方へ向き直った。
「今日はどうしたんだ、大堂。何か用事があって来たんだろう」

なんて答えよう?

①「何って、一郎君の手伝いに来たんだよ。何か手伝うことない?」
②「文化祭の準備の様子を見に来たの。後ちょっと、頑張ってね」
③「特に用事って訳じゃあないんだけど……」

111 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/07/03(火) 13:59:29 ID:???
①「何って、一郎君の手伝いに来たんだよ。何か手伝うことない?」

「そうか、だがもう今日やろうと思っていたことはもう終わるから遅くならないうちに…」
一郎くんはふと、そこで言葉をとめる。

「いや、これに目を通してもらってもいいか?」
そう言って、さっきまで書いていたノートを渡される。

「一応前回の文化祭を参考に細かい所をまとめたんだが、気がついたことがあれば何でも言ってくれ」
「うん……って、これ一人で全部…?」
ノートを開くと、前回の委員会で決まった大まかな進行のほかに、体育館で行われるイベントの細かい進行方法までまとめられている。

「まだ放送器具の細かいセッティングなんかは決まっていないからそんなに大変じゃない。文化祭前日が一番忙しくなるだろう」
一郎くんはなんでもないことのように言うが、やっぱりすごい。

「うん、だいたい大丈夫だと思うよ。でも、ここ、体育館の吹奏楽部の演奏、時間もう少し余裕見たほうが良いんじゃないかな?吹奏楽部は人数多いし…」
「そうか、確かに人数が多くなればその分、舞台のセッティングが遅れ気味になるかもしれないか…」
「吹奏楽部も毎年のことだから、大丈夫だとは思うけど一応ね」
「だが、大堂の言うとおり万が一ということもある。君の言う通り少し余裕をもたせよう」
そう言って、一郎くんは手早くノートを修正する。

「さて、今日の所はもう良いだろう。大堂送っていこう」
「え?」
「もう外も大分暗くなってきたし、君は一人で行動しないほうがいい」

一郎くんの言葉に私は…
①「うん、ありがとう」
②「一人で大丈夫だよ」
③「でも、一郎くん遠回りになるんじゃない?」

112 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/07/03(火) 14:00:11 ID:???
↑456です、スマソorz

113 名前:457[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 21:51:24 ID:???
②「一人で大丈夫だよ」

私は鞄を持ちながら、立ち上がった。

「本当に一人で大丈夫なのか?」
「うん、平気。ありがとう」

帰ろうとして放送室を出て行く私に、突然「大堂」と一郎君に呼び止められた。
私は、扉の前で修二君に向き直る。

「どうしたの?」
「……最後に、少し尋ねてもいいだろうか」
一郎君の発する声色にどこか迷いが混じっているように聞こえた。

「うん。どうしたの?」
「その…修二の事なんだが」
「修二君がどうかしたのかな。私の知っていることなら答えるけど…」
「正直、尋ね辛いことなのだが、気分を害さず聞いてもらえると嬉しい」

一郎君にしては珍しく、遠まわしな言い方に違和感を覚えた。

「うん。何、どうしたの?」
「君は……その、なんだ。それは…」
一郎君は、しどろもどろになりながら話し出す。

「??」
「……君の気に修二の気が少量だが、混在しているのが見えるんだ」
「気?」
「その、…。それは……君も同意の上だったのか?」
「私の同意? 何の?」
意味がわからなくて、私は思わず首をかしげてしまう。

「あ……いや、やはり何でもない」
一郎君は我に返るように呟くと、私から視線を外した。

(一郎君どうしたんだろう?)

①そのまま一人で帰る
②一郎君を問い詰める
③やっぱり一緒に帰ってもらう

114 名前:458[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 10:43:04 ID:???
②一郎君を問い詰める

いつもの一郎くんらしくない。

「どうしたの?なんかすごく中途半端で逆に気になるんだけど…?」
「あー……」
一郎くんが迷うように視線をさまよわせる。
やっぱり一郎くんらしくない。
とりあえず、疑問点を質問することにする。

「ところで、気ってなに?」
「え?ああ…、この世のすべてのエネルギーのことだ。今回俺が言ってるのは生体エネルギーのことで…オーラと呼ぶ人も居るな」
「生体エネルギー?オーラ?」
「血液みたいなものだ。普通の人には見えないが」
「それじゃあ、誰にでもあるものなのね」
「そうだ。テレビなんかで気孔治療という言葉を聴いたことがないか?あれは滞った生体エネルギーを正常にする為の治療だ」
一郎君の説明に、以前そういう特集番組を見たことを思い出す。

「あー、見たことあるかも……で、その私の気に、修二くんの気がまじっ…て………る?」
確認するように言葉にして、ふと午前中の出来事を思い出し、思わず口に手を当てる。きっと顔は真っ赤になっているだろう。

(一郎くんがいってた合意って、もしかして…キ、キスに合意があったのかってこと、よね……)
うろたえまくる私に、一郎くんが少し顔をしかめる。

「合意はなかったのか…?」
「あ、あの、合意というか…」
不安定になっている力を正常にしてあげるといわれて頷いた。ある意味、合意したとも言える。

「方法は聞かなかったけど…」
しどろもどろになる私に、一郎くんはだんだん怖い顔になっていく。

「修二、あいつ…!」
ガタンと椅子を鳴らして勢いよく立上り、今にも飛び出していきそうな勢いだ。

私は…
①一郎くんを止める
②一郎くんを止めない
③一緒についていく

115 名前:459[sage] 投稿日:2007/07/06(金) 00:05:19 ID:???
①一郎くんを止める

「ちょ、ちょっと待ってよ。一郎君」
出て行こうとする一郎君の前に私は立ちふさがった。

「あいつに一言いわなければならない。止めるな大堂」
私に向けられた視線は驚くほど鋭かった。
扉の前で私達は向き合う。

「と、止めるよ! だって、修二君は何も悪くないんだよ」
「だが、常識的に考えれば、相手に確認を求めるのは道理だろう。それでも修二は悪くないと言うのか?!」

確かに、不意のキスで本当に驚いた。
でも悪意や下心があったとはどうしても思えなかった。

「驚いたけど…。すごくびっくりしたけど…修二君はとても優しかったよ!」

私の言葉で一郎君が息を呑んだ。

「大堂……」
「お願い、修二君には何も言わないで」
「君は修二の無神経さに腹が立たないのか?」
「たたないよ。私のためにしてくれたんだから」
「納得できないな……なぜそこまで修二をかばう」
「かばっているわけじゃないよ。一体、どうすれば納得してもらえるの?」

一郎君は不機嫌な顔で私の前に立ちはだかる。
そして、ガタッと背中越しの扉が揺れると同時に、一郎君の両手が私の逃げ道を奪った。

(い、一郎……くん?)

「くそっ! なぜ、こんなにも腹立たしいんだ」
吐き捨てるように一郎君は呟くと、私をじっと見据えた。

私は……
①逃げる
②見守る
③触れる

116 名前:460[sage] 投稿日:2007/07/06(金) 13:23:50 ID:???
②見守る

一郎くんの顔は不機嫌なものから苦しいものへと変わっていく。
私はそんな一郎くんにかける言葉が見つからず、ただじっと一郎くんを見た。

「…俺は」
ポツリと一郎くんが言葉を発したが次の言葉は続かない。
一郎くんは苦悩する顔のまま上体を倒してきた。
さらりと一郎くんの髪が頬をかすめ、コトンと私の肩に一郎君の頭の重みがかかる。

「俺は修二のように強くなれない。弱くて臆病者だ」
顔は見えないが、苦々しい口調で一郎くんがポツリとつぶやく。

「修二は光だ。みんな修二に惹かれずには居られない。君だってそうだろう?それに比べて俺は…」
確かに明るい修二くんは皆の人気者で、つい目を奪われるような華がある。
でも、だからと言って一郎くんにそういう部分がまったくないかといえば、そんな事はない。

「…一郎くんも強いよ?優しいし」
少なくとも私はいい意味で、一郎くんと修二くんは対だとおもう。
自分の思うがままに前に進む修二君。
それは確かに皆を引っ張っていく力になるけれど、時に強引すぎて回りの意向を無視したものになる。
逆に皆の意思を尊重してまとめていく一郎君。
秘密主義で廻りから認められ難く、前に進むのには時間がかかるかもしれないけれど、いざというときには力を発揮する。
強さの方向は違うけれど、一郎くんが弱いとは思えない。
現に、修二くんのほうは素直に一郎くんのことを認めているように思えるし、自分にないものを埋める存在として何かと頼りにしているようでもあった。

私は…
①一郎くんのいいところを言う
②修二くんも一郎くんを頼りにしていると言う
③何も言わない

117 名前:461[sage] 投稿日:2007/07/06(金) 23:08:17 ID:???
①一郎くんのいいところを言う

肩越しに、一郎君くんの息遣いまで聞こえてくる。
これほどの至近距離なのに、なぜかとても冷静な自分がいることに気付く。

「臆病の何が悪いの? 人の痛みを知っているから、臆病になってしまうんだよ。
一郎くんは人の話を真剣に聞いて、ちゃんと汲み取ってくれる優しさがあるじゃない。
あまり感情を表に出さないから誤解されてしまう事もあるけど、一郎くんの優しさをわかっている人だってちゃんといるよ。
それは、決して弱さなんかじゃないよ」

私の言葉を聞いて、一郎くんがゆっくり顔を上げる。
その瞳はまるで迷子のように寂しそうだった。

「大堂……」
「実は私もね、最初は一郎くんが完璧すぎて少し怖かったんだ。
でも放送委員で一緒にやっていく内に、一郎くんのさりげない気遣いや思いやりに気付けたんだよ。
私でも気付けたのに、一番身近にいる修二くんが気付いていないはず無いよ」

「やめてくれ。君は……俺を買いかぶり過ぎている」

一郎くんは扉につけたままの手をギュッと握り締め、拳を固めた。

「どうして自分自身を嫌うの? そんなの駄目だよ」
「修二に比べると、やはり俺は弱い。君が言う気遣いも、相手から嫌われないための処世術に過ぎない。
俺は絶えず何かに怯えている。見捨てられないように……」
一郎くんはとても苦しそうに顔をしかめた。

「見捨てる? 誰も一郎くんを見捨てたりしないよ」
「わかっている…。わかっているが、どうしようもなく孤独に苛まれてしまう時があるんだ。
気丈に振舞ってみても……自分の弱さを抑えられなくなる」
さっきと同じ、迷子の瞳が私に向けられる。

(もしかしたら……、一郎くんは……昔の私?)

お母さんが居なくなってから、ずっと私も怯えていた。
私のことが嫌いになったから、お母さんは出て行ったんだと自分を責め続けていた。
一郎君も力のせいで、幼い頃に施設に預けられていた。
親に見捨てられたと思い込んでしまうことで、トラウマとして今も一郎くんを苦しめているのかもしれない。

私は…
①私も同じだと言う
②黙って微笑む
③抱きしめる

118 名前:462[sage] 投稿日:2007/07/07(土) 13:14:38 ID:???
②黙って微笑む

けれどこれは自分で乗り越えるしかないことだ。
理性で孤独ではないとわかっていても、感情が暴走する事だって確かにある。
私が心の底から、自分は孤独じゃないって実感できたように、一郎君だってそうできるはずだ。
私には、幼馴染の隆がそばに居て、その後は弟になった春樹がどうしようもない不安を取り除いてくれた。

一郎君にもずっとそばに修二君がいたのだ。
いや、もしかしたら修二君ではダメなのかもしれない。
一郎君は自分と修二君を比べて劣等感を抱いているから。

「それじゃあ、孤独でどうしようもなくなったら、私に連絡頂戴?」
「大堂…?」
「私だって一郎君の話を聞く位はできるんだよ。あ、あんまり高尚な話だと理解できないけどさ」
不思議そうな顔になった一郎君に、説明する。

「ほら、会話って相手が居ないとできないでしょ?相手が居るって事は孤独じゃないって事だし…ね?」
私の言葉に一郎君は驚いた顔になり、それから泣きそうな顔でわらった。

「大堂はすごいな」
一郎君は目を伏せ、次に目を開けたときにはいつもの一郎君だった。
ゆっくりと体を起こし私を解放する。

「すまなかった、ありがとう」
一郎君は少し恥ずかしそうにうつむいて笑うと、くるりと私に背をむけ今まで作業していた机を片付け始める。

私は…
①先に帰る
②このまま一郎君を待つ
③何か話す

119 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 17:50:00 ID:???
③何か話す

「「あの……」」

ほぼ同時に私たちは声を掛け合ってしまった。
その後、なんとも言えない沈黙が私たちの間に流れる。

「な、何かな…一郎くん」
「大堂こそ、俺に何か言おうとしていただろう…」

「あー…、べつにたいした事じゃないの。「また明日」って言おうとしただけだから」

(私、一郎君にすごく偉そうなこと言っちゃったような気がするよ……)
なぜか今頃になって気恥ずかしさが、こみ上げてくる。
一郎君の姿をまともに見ることが出来ない。

「一郎君はどうしたの? 私に言いたいことがあるんだよね」
誤魔化すように、一郎君に向かって尋ねた。

「俺もたいした事じゃない。ただ……さっきの話はその…修二には秘密にして欲しいんだ」

私に背を向けたまま片付けを続けているせいで、一郎君がどんな顔をしているのか判らない。
ただ口調から気まずいのは一郎君も同じなのかな、と感じた。

「どうして?」
「修二に劣等感を抱いている事を知られたくないんだ」
「いいけど……。修二君に素直な気持ちを言った方がすっきりするんじゃない?」
「駄目だ。君には分らないかもしれないが、男兄弟というのは自分の弱みはみせたくないものなんだ」

一郎君は鞄を持って、私の方に向き直った。
一見、いつもどおりに見えるけど、一郎君の顔が少し顔が赤いような気もする。

「そういうものなの?」
「そういうものだ」

有無を言わせない口調で一郎君は言い切った。

私は…
①「でも、それならどうして私には言ってくれたの?」
②「うん、わかったよ」
③「じゃあ、春樹も私に弱みをみせたくないのかな…」

120 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 17:50:43 ID:???
↑463です

121 名前:464[sage] 投稿日:2007/07/09(月) 04:23:56 ID:???
②「うん、わかったよ」

私が素直に頷くと、一郎君はほっとしたような表情を見せた。
「ありがとう、そうしてくれると助かる」
一郎君は空いている方の手に放送室の鍵を持って扉を開けた。促されるように私も廊下へ出る。
(なりゆきだけど一緒になっちゃったし、先に帰っちゃうのもヘンだよね)
結局、戸締りをした後鍵を返しに職員室に向かう一郎君についてゆくことにした。

「兄弟がいるって、どんなかんじ?」
放課後の廊下を並んで歩きながら、ふと思いついた事を一郎くんに尋ねてみる。
「……どうした、急に。大堂にも弟くんがいるだろう」
「うん、そうなんだけどね。えっと、春樹は男の子でしょ?それに私よりも大人だしあんまり兄弟ってかんじじゃないから」
「歳の近い姉か妹が欲しかった、と。そういう事か?」
そう言って一郎君はほんの少し表情を崩した。

「あ、一郎くん今子供っぽいって思ったでしょう」
「いや。……そうだな。数回話しただけだが、弟くんは君よりも大分大人びた印象を受ける」
「春樹の方がしっかりしてるって、みんなそう言うよ……」
うなだれる私の隣りでなんでもないように一郎君が言った。
「彼がそうありたいと努めてるんだろう、おそらく」

一郎君の言葉は意外だった。春樹は出会った当時からしっかり者だったし、今までもそんな春樹の性格は生来のものだと思い込んでいたけれど。
「努める?春樹が?」
「ああ。無理をしているとまでは言わないが、君の前では特に」
「そう……なのかな、でも最近なんだかケンカばっかりなんだよね。もしかして、それが原因なのかな。春樹、私の世話で疲れちゃったってこと?」
「俺は弟くんではないから、これはあくまで推測の域を出ないが……」

一郎君は横目で眉間に皺が寄った私の顔を見やると、小さく笑って言った。
「彼が君の世話を焼くのは彼が好きでやっていることだろう。君が気に病む事じゃない」
「……どうしてそう思うの?男同士、何か通じるものでもあったり?」
「さあ、どうだろうな」
私の問いかけを軽くはぐらかすと、私を一人廊下に残して一郎君は辿り着いた職員室の中に入っていってしまった。

(さっきは一郎君を少し身近に感じた気がしたけど、やっぱりよくわからないや……)
一郎君を待ちながら、ぼんやりとそんな事を思った。

さて、どうしよう?

①せっかく職員室まで来たので、近藤先生に改めてお礼を言う
②一郎君の言葉からなんとなく春樹の事を考えてみる
③さっき聞いた一郎君と修二君の関係について思い返す

122 名前:465[sage] 投稿日:2007/07/09(月) 10:22:58 ID:???
①せっかく職員室まで来たので、近藤先生に改めてお礼を言う

(近藤先生居るかな…?)
職員室を覗き、近藤先生がいるか確認する。

(あれ…いないや)
けれど良く考えれば、近藤先生だって自分のクラスや部活動の監督があるはずだ。

「大堂さんじゃないか」
その時、後から声をかけられた。振り向くと今まさに考えていた近藤先生が立っている。

「あ、近藤先生」
「こんなに遅くまで残ってどうしたんだ?今日は具合がわるいんだろう?早く帰りなさい」
近藤先生は眉をしかめて私を見下ろしている。
お礼を言いたいけれど、とてもそんな雰囲気ではない。早く帰りなさいという無言の威圧感がある。

(確かに具合が悪かった人がこんな時間まで残ってたら、逆に心配かけちゃうよね…)
言葉はきついが、それが近藤先生の優しさだと分かっていても、竦んでしまう。

「大堂すまない、待たせた」
そのとき、職員室から出てきた一郎くんに声をかけられた。
私へ向けられた意識が、一郎くんへと移り思わずホッと息をつく。

「ん?……ああ、宗像くんか」
「近藤先生。どうかしたんですか?」
「いや、たいした事ではない。大堂さんを送っていくのか?」
「はい、そのつもりですが」
「そうか、なら安心だな。気をつけて帰りなさい」
「はい。さようなら」
「…今日はいろいろありがとうございました。さようなら」
一郎くんと二人で先生にあいさつをして歩き出す。

「近藤先生となんかあったのか?」
「なんかあったっていうか…」

①朝の話をする。
②威圧感がすごいと言う。
③口ごもる。

123 名前:466[sage] 投稿日:2007/07/10(火) 23:42:02 ID:???
③口ごもる。

「あー。えっと…」

朝の話をしようとして、また修二君とのキスの話に戻ってしまう事に気付いた。
(また、気まずい雰囲気になりたくないし…やめておこう)

「な、なんでもないよ。帰ろうか、一郎君」
「ああ」
口ごもってしまった私を察したのか、一郎君はそれ以上は詮索してこなかった。

校舎を出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
一郎君と校門を出て、見慣れた街なみをゆっくり歩く。
きっと、私の歩くペースにあわせてくれているのだろう。

しばらく歩くと、道が十字路になっていた。
私は歩みをとめて、一郎君を見た。
一郎君も二、三歩先を歩いたところで、私の方を向き直る。

「どうした? 大堂」
「遠回りになるから、ここまででいいよ」
「俺が好きで送っていくと言ったんだ。気にする事はない、君の家まで送ろう」
「でも……」
「構わない。ここで立ち話をしていたら余計に遅くなってしまう」

一郎君は私が歩き出すのを待っている。
「さあ、行こう」
「あ…うん」

結局、家の前まで送ってもらってしまった。

「一郎君、ありがとう」
「いや…それより、さっきは取り乱してしまって済まなかった。君に不快な思いをさせてしまったな」
一郎君は少し困った顔をしながら言った。
「そんなことないよ」
「ならば、よかった…」
安心したように、一郎君は少しだけ笑顔をみせた。
「じゃあ、一郎君。気をつけて帰ってね」
一郎くんは私の言葉に、小さく手を振って返してくれた。

(少し遅くなったから、春樹が心配してるかも)
「ただいまー」
玄関のドアを開けると、誰かが私を待つように立っている。

立っていたのは…

①春樹
②隆
③チハル

124 名前:467[sage] 投稿日:2007/07/11(水) 03:12:29 ID:???
③チハル

「おかえりなさい!愛菜ちゃん!!」
チハルはそう言うやいなやまだ玄関の扉も閉めきらない私に、まるでじゃれる子猫が飛びつくみたいに
勢いよく抱きついてきた。突然のことによろけながらもなんとか体勢を立て直して扉を閉める。

「ただいま、チハル。遅くなっちゃってごめんね」
覗き込みながら声をかけると、チハルは抱きついたまま不満そうな声をあげた。
「ほんとだよ!はるきのそばにいなきゃだめっていわれたからがまんしてたけど、ぼく愛菜ちゃんのことうんとしんぱいしたんだからね」
「そっか、我慢してお留守番もしてくれてたんだね。ありがとう、チハル」
そう言いながらチハルの髪をゆっくりなでる。チハルはしがみついたまま小さく首をかしげた。
「……愛菜ちゃん、うれしい?」
「うん、とっても嬉しいよ。チハルはいい子ね」
チハルはいつも聞きたがる褒め言葉を聞けたことに満足したらしく、顔をあげると本当に嬉しそうに笑った。
(チハルを見てると、なんだか元気が出るかんじがするなあ)
私もはしゃぐチハルにつられたように、自然と顔がほころんだ。

「おかえり、姉さん。……そんなところでどうしたの?」
私とチハルの話し声が聞こえたのだろうか、春樹がリビングから顔を出した。
春樹の言葉に玄関先で靴も脱がずにチハルとくっついている今の状況を思い出して、チハルをなだめて退いてもらいなんとかスリッパに履き替える。
「ただいま春樹。ごめんね、クラスの準備の後で委員会の方に顔出してたらこんな時間になっちゃった」
「近藤先生に具合が悪いって聞いたんだけど……その様子だと大丈夫そうだね」
「え、うん……まあ今は元気だけど」
てっきり恒例のお小言が待っているものと覚悟していたのに、妙にあっさりした春樹に軽い違和感を覚える。
「……どうかした? ちょうど今夕飯が出来た所なんだ、着替えたらテーブルで待ってて。俺隆さんを呼んでくるよ」
「じゃあ、お願いするね」
春樹はわかった、と返事をしたもののこちらを見もしないで脇をすり抜けて玄関を出て行った。

(どうしたんだろう、怒られなかったのは良かったけど……。それほど心配しなかったのかな)
もやもやとした疑問を抱える私の手をひいて、チハルがもどかしそうに言った。
「愛菜ちゃん、どうしたの?おへやにいかないの?」

どうしようかな?
①おとなしくチハルと一緒に自分の部屋へ行く
②気になるのでそれとなくチハルに今日の春樹の様子を尋ねる
③先に帰った事を香織ちゃんにメールで謝る

125 名前:468[sage] 投稿日:2007/07/11(水) 11:49:17 ID:???
②気になるのでそれとなくチハルに今日の春樹の様子を尋ねる

私は階段を上りながらチハルに話を振る。

「ねえチハル。なんか今日の春樹おかしくない?」
私の言葉にチハルは首を傾げうーんと唸る。

「ボクわかんないよ。愛菜ちゃんのことは良く知ってるけど春樹のことなんて知らないし」
確かに隆に動けるようにしてもらうまでのチハルはずっと私の部屋に置かれていて、通常の春樹の様子を知りようがない。
部屋に入って着替えながら、ちょっと考えてチハルにたずねる。

「それじゃ今日は一日どんな感じだった?」
「うーん、ずっと机にすわってて前に立ってる人の話を聞いてた」
チハルが言っているのはたぶん授業のことだろう。

「他には?」
「あ!おっきい男の人が、愛菜ちゃんが具合悪いって言いに来た」
「おっきい男の人…ああ、近藤先生ね」
「あとは……あ、ときどきぼーっとしてため息ついてた」
「ぼーっとしてため息?」
春樹がぼーっとしているなんて、珍しい。しかもため息までついて?

「…おかしい」
「?」
きょとんとした顔で首を傾げるチハルの頭を撫でながら、原因を考える。

①昨日のことをまだ引きずっている?
②朝、最近夢見がわるいって言ってたのが原因?
③もっとほかの事?

126 名前:469[sage] 投稿日:2007/07/12(木) 11:06:55 ID:???
②朝、最近夢見がわるいって言ってたのが原因?

(そういえば春樹、最近夢見が悪いみたいな事言ってたよね……)

「ねえねえ愛菜ちゃん、どうしたの?しんぱいごと?」
上の空な私の様子が気になったのか、チハルは髪を撫でる私の手を止めた。チハルなりに心配してくれたようで、小さく眉根を寄せている。
「ごめんごめん。春樹があんまりよく眠れないって言ってたから、そのせいかなって思って」

「……またはるきのこと?」
チハルはむっつりとそう言うと隠そうともせずに不満の色を露にした。あまりにわかりやすいチハルに対し、苦笑いは漏れるもののどこかで仕方なく思うような自分がいる。
「またって……春樹は私の弟だから。私にはチハルの事とおんなじくらいに気になるんだよ」
「ボクのこととおんなじくらい?」
「そう。チハルが夜眠れないって言ったら心配するし、それとおんなじように春樹も心配なの」
「ボク、よるねむれないなんていわないよ。愛菜ちゃんといっしょだもん」
「うんまあ、そうなんだけどね」

なぜか得意げなチハルが可愛らしくて、ほんの少し笑ってしまう。チハルはそれが面白くなかったのか、ぷうっと頬を膨らませた。
「もー、ボクはいっつも愛菜ちゃんのことかんがえてるのにどうしてはるきのしんぱいなんてするの。はるきなんか……」
「?どうしたの?」
「そうだ!はるきなんか、うしろにすわってたおんなのこにおかしもらってた!なんとかじっしゅうとかいうのでつくったのよって。ほかのひとにはないしょねって!」

(お菓子?……ああ、調理実習の事かな?私も去年、クッキー作ったんだよね)
「良いじゃない、私も学校でお菓子作ったらお友達にあげたりするよ?」
「でもはるき、にこってしてありがとうっていってた。愛菜ちゃんといっしょのときはいっつもぷんぷんしてるのにね。あのおんなのこのほうがはるき、やさしいよ。だから、愛菜ちゃんもはるきなんかきにしなくていいよ」
力説するチハルにどう答えたものかと思案していると、着替え終わった私にチハルはぎゅっと抱きついてきた。
「ボクは愛菜ちゃんのこといちばんかんがえてるし、いちばんしんぱいしてるよ。ボク愛菜ちゃんがいちばんすき」
そう言って見上げるチハルの目には少しの迷いもない。チハルの澄んだ目に映る自分の顔を不思議な気持ちで眺めた。

私の今の気持ちは……
①チハルの好意が素直に嬉しい
②春樹の話がショック
③どうしてチハルがそんなに春樹を嫌がるのか不思議

127 名前:470[sage] 投稿日:2007/07/12(木) 15:00:35 ID:???
①チハルの好意が素直に嬉しい

「ありがとうチハル」
まっすぐに私に向けられる好意がくすぐったくて、うれしい。
ぎゅっとチハルを抱きしめて頬ずりする。

「愛菜ちゃんくすぐったいよー」
チハルが笑いながらじたばたと身をよじる。
すっぽりと腕の中に納まるチハルを抱きしめていると、ホッとする。
元はぬいぐるみのはずなのに、その体は私たちと変わらず暖かい。

「はー、なんかチハルをぎゅーってしてると落ち着くな」
小さい頃からずっと一緒で、子供の頃はそれこそぬいぐるみのチハルを抱きしめていた。

「愛菜ちゃんいつもボクをぎゅーってしてたよね」
にこにこ笑いながらチハルが私を見上げてくる。
そうだね、と頷いて笑い返すとふとチハルが何かを思いついたかのように声を上げた。

「あ!」
「どうしたの?チハル」
「いつも愛菜ちゃんがぎゅーってしてくれるから、今度はボクがぎゅーってしてあげる!」
「え?」
チハルは言うないなや私の腕をすり抜けて、私の体を抱きしめる。
今までのじゃれて抱きついてくるのとは違う。抱きしめる動作。

「むー」
「どうしたの?」
おとなしくチハルのされるがままになっていると、チハルが不満そうに声を上げた。

「ボクちいさくて愛菜ちゃんの背中に手がまわらない」
「チハルは小さいから」
不満そうなチハルの言葉に、思わず笑ってしまう。

「そっか、ボクが大きくなればいいんだ」
チハルはそういうと、ポンと軽い音を立てた。
それがチハルが変身するときの音だと分かっていたけれど、急に目の前に現れた男の子とチハルが私の中でつながらない。

「愛菜ちゃん、これでぎゅーってできるね」
にっこり笑って目の前の男の子が私をぎゅっと抱きしめる。

「ち、チハル!?」
「うん、どうしたの?愛菜ちゃん?」
私はあわてて大きくなったチハルを見上げる。
見下ろしてくる目は、確かに以前のチハルと変わらない。
顔もたしかに子供のチハルの面影がある。
けれどその声はさっきより低いし、目の前に居るチハルは私とほぼ変わらない年齢に見える。

「おーい、愛菜、晩飯食わないのか?」
その時、階段を上がってくる音と、隆の声が近づいてきた。
春樹が呼びに行ってから結構時間が経っていたようだ。
でも今の状態はやばいのではないだろうか…?

どうしよう
①チハルはチハルだしこのまま気にしないことにする。
②チハルに子供の姿に戻るように言う。
③隆に部屋の戸をあけないように言う。

128 名前:472[sage] 投稿日:2007/07/12(木) 21:57:08 ID:???
③隆に部屋の戸をあけないように言う。

「ちょっと待って!あ…開けない…で…」

と言いかけたところで、無情にもガチャリと扉が開かれた。

「………………」
「………………」
隆はドアの取っ手を握り締めたまま、固まっている。
私もチハルに抱かれたまま、絶句してしまった。

「なななな、何だよこれは……」
「えええ…えっと……」
説明しようとするものの、動揺でうまく頭がまわらない。

「あっ、隆。ねえ、知ってる? 愛菜ちゃんってすごくいい匂いがするんだよ」
チハルは私を抱きしめたまま、隆に笑いかける。
その言葉でようやく正気を取り戻した隆は、大股で私とチハルに割り込み、無理やり引き剥がした。

「いくら隆だって、邪魔しちゃ駄目だよ」
チハルはぷーっと頬を膨らませると、隆から私を奪い返す。
けれど、また無言の隆によってグイッと引き剥がされてしまった。

「隆のいじわるー! これならじゃまできないよ……えいっ」
「きゃっ」
チハルに手を掴まれたかと思うと、ふわりと体が浮く。
そして胸の中にすっぽりと納まっている自分に気付く。
どうやら私はチハルにお姫様抱っこをされてしまったようだ。

「どう? もう邪魔されないよ?」
チハルは得意げに私を見つめ、にっこり笑った。

私は……
①「チ、チハル…。下ろして」
②「た、隆。あのね、この子はチハルよ」
③黙って様子を見る

129 名前:472[sage なんか連番1つとんでる?] 投稿日:2007/07/12(木) 22:46:23 ID:???
①「チ、チハル…。下ろして」

昨日の夜も似たようなことがあったなと思いつつ、私は慌ててチハルに言う。
隆はかすかに眉をしかめて私たちを見ている。

「えー、ボクまだ愛菜ちゃんをぎゅーってしてたい」
「そ、それじゃあご飯食べてからね?ほら、私おなかすいたな」
「そっか、ニンゲンはご飯食べないと弱っちゃうんだった。わかった!愛菜ちゃんがご飯食べるまでまってる!」
チハルはそういって、私を下ろしてくれる。
ほっとため息をつくと、隆が不機嫌丸出しの声で言った。

「で?どういうことだ?」
「えーっと…。この子チハルなんだけど…」
「…は?チハル?」
隆は私の後ろに立っているチハルをまじまじと見る。

「お前本当にチハルか?またなんでそんなにデカくなってるんだ?」
「なにいってるのさ隆。ボクはボクだよ。ちっちゃいと愛菜ちゃんをぎゅーってできないからおっきくなったんだ」
隆に対してはそれなりに愛想のいいチハルは、にっこり笑いながら言った。
けれど言っていることの意味は、はっきり言って隆にはちんぷんかんぷんだろう。

「本当にチハルなんだな…。てか、ガタイばかりでかくなって中身かわってねぇし」
それでも隆は苦笑いしながら隆はチハルに手を伸ばすと、少し高い位置にある頭をわしゃわしゃと撫でる。

「にしても、でかくなったなぁ…」
「へへっ、隆よりおっきいよ」
言いながら、チハルは私にしたように隆にぎゅーっと抱きつく。

「うわっ、なにすんだ!?」
慌てた隆がチハルから飛びのく。

「ん~、やっぱり愛菜ちゃんのほうがいいや。やわらかくって、いいにおいできもちいい」
「あのなぁ…そんな当たり前のこと俺で試すな!」
隆はため息をつく。
なんだかんだ言っても隆は面倒見が良い。呆れたように言いつつも笑っている。

「姉さん!隆さん!?ご飯食べないの!?」
そのとき、下から春樹の声が聞こえた。

「あ、行かないと」
「だな。俺も腹減った」
私と隆が部屋を出ようとすると、そのままチハルもついてくる。

チハルがこの姿だと春樹びっくりしちゃうな…どうしよう。

①このまましたいようにさせておく。
②子供の姿に戻るように言う。
③部屋で待つように言う。

130 名前:473[連番間違えたゴメンsage] 投稿日:2007/07/14(土) 09:15:55 ID:???
①このまましたいようにさせておく。

(説明すればわかってもらえるだろうし、このままでいいかな)

「それじゃ、チハルも行こうか」
私がそう言うと、嬉しそうに「うん」と頷いた。

一階に降りると、すでに春樹がテーブルに夕食を並べていた。

「あっ、姉さんに隆さん。もうすぐ………」
テーブルにサラダを置き顔を上げた春樹が目を丸くした。

「あの……隆さんの友達ですか? もしよかったら夕食を一緒にどうですか」
「ボクのこと?」
チハルは自分を指さしながら尋ねた。
「ええ。少し多めに作ったので」
「うん! みんなと一緒に食べたい」
チハルは楽しそうに、その場でくるくると回った。
大きくなったせいで、いつもの行動もかわいいというより少しアブナイ人に見えてしまう。

「あはは…喜んでもらえて嬉しいです…」
対応に困ってしまったのか、春樹も苦笑している。

「もう一膳用意しますから、ちょっと待ってて下さい」
そう言うと、隆はキッチンに消えていった。

「おい、愛菜。春樹のやつ完全に勘違いしているぞ」
春樹に聞こえないように、小声で隆が話しかけてきた。
「タイミングを逃しちゃって……」
「ていうか、チハルって飯食えるのか?」
「し、知らないよ」
「とにかく…春樹に説明しないとな。もし言いにくいなら、俺から言ってやろうか?」

どうしようかな

①春樹に説明しに行く
②隆に説明してもらう
③チハルに食事できるのか尋ねる

131 名前:474[sage] 投稿日:2007/07/14(土) 10:03:48 ID:???
①春樹に説明しに行く

「ううん、自分で説明してくる。隆は座ってて」
「そうか?」
隆は私の言葉に頷いて、椅子に座る。
私はそれを目の端で見ながら、春樹に続いてキッチンへ向かう。

「春樹?」
「何?姉さん」
「あのね、さっきの人なんだけど…チハルだから、そんなに気を使わなくても良いよ?」
「……え?」
春樹が動きを止める。

「説明しようと思ったんだけど、さっきタイミング逃しちゃってさ、ははは…」
「ねえねえ、愛菜ちゃん、ボク愛菜ちゃんの隣にすわってもいい?」
そのとき、チハルがキッチンへ顔をのぞかせる。

「あ!春樹それボクのご飯?」
にこにことチハルが春樹が手に持った茶碗を指差す。
どうやら春樹がご飯をくれるといったことで、チハルの中で春樹の好感度があがったらしい。

(…餌付け?)
ふと脳裏に浮かんだ言葉に笑いが漏れる。
私の笑いに春樹は気づいたが、チハルは気づかなかったらしい。
春樹のそばに軽いステップを踏みながら近づくと、いきなりぎゅーっと抱きついた。

「!?」
突然のことに春樹が固まる。

「チ、チハル!?」
私も驚いて思わず声を上げる。

「どうした?」
私の声に隆もやってきて、春樹に抱きついたチハルをみると一瞬目を丸くし、それから大笑いする。

「はっ、ははははっ、お、お前、みんなに抱きついてるのかよ?ぷっ、ふ、はははは」
隆は何とか笑いをおさめようとするが、なかなかうまくいかないらしい。

「?」
そんな中チハルは抱きついた春樹を不思議そうに見て体を離し、それから自分の手を見て首をかしげ、再度春樹に抱きつく。
今までにない行動に、私はチハルにたずねた。

「チハル?どうしたの?」
「春樹、変。愛菜ちゃんと違うのに、愛菜ちゃんと同じくらいきもちいい」
そこでようやくショックから立ち直ったらしい春樹が、チハルから飛びのくように離れる。

「なにするんだ!」
「?」
「ははは、くっ、ははっ」
春樹は、赤くなったり青くなったりしながら怒っている。
チハルは不思議そうな顔で、春樹と自分の手を交互に見ている。
隆は何とか笑いをおさめようとがんばっている。
とにかくそんなに広くないキッチンに4人もいては狭いことこの上ない。

さてどうしよう。
①とりあえず、ご飯にしようという。
②チハルになにが変なのか聞く。
③春樹と隆に落ち着けという。

132 名前:475[sage] 投稿日:2007/07/14(土) 23:14:01 ID:???
①とりあえず、ご飯にしようという。

「私、お腹ペコペコだよ。とりあえず、ご飯にしよう」
私は大げさにお腹を押さえて、訴えた。
「そうだな。俺も背中と腹がくっつきそうだ」
隆も私の意見に乗ってきた。

「……後は俺がやるから、姉さん達は座ってて」
多少、納得いっていないように見えたけれど、春樹はいつもの冷静さを取り戻したようだ。

(なにが変なのか気になるけど、食事中、チハルに聞けばいいか)

私達はそれぞれのテーブルにつく。
隆は私の向かい側の席、チハルは私の隣に腰を下ろした。

しばらくして用意を済ませた春樹も席に座り、私たちはようやく食べ始めた。

「やっぱり、すごいな。うちの母親より美味いぜ、この肉じゃが」
隆は春樹の作った肉じゃがを頬張りながら、感嘆の声をあげた。
「うちのははおやより美味いぜ、このにくじゃが」
オウム返しで、チハルも肉じゃがを頬張りながら真似をする。
その姿に思わず笑ってしまう。

「そう言えば…家に来ることを嫌がっているって聞いてたんだけど、よかったの?」
不意に気になって、私は隆に話題を振った。
「そ、それは…気が変わったんですよね、隆さん」
なぜか春樹が隆に同意を求めるように、話に割り込んできた。

「ああ、その話か。うちの両親から愛菜の料理を食わされるって聞いてたんだ。
俺はまだ死にたくないから、コンビニで済ませるって言っただけさ」
(しれっとした顔で、今ヒドイ事を言われたような…)
「ちょっと! どうして私の料理で隆が死ぬのよ」
「死なないにしても、腹は壊すだろうな」
大きな口でサラダを食べながら、隆は平然と答えた。
「春樹には敵わなくても、お腹を壊すような料理をつくった覚えはないんだけど!」
ムカついた私は隆に食ってかかる。

「覚えは無くても、お前の料理は破壊的なんだって」と憎まれ口をたたいた後「……少しは自覚してもらわないと…俺が困るんだよ…」と聞こえないような小声で呟いた。

①「どうして隆が困るのよ」
②「えっ? 今、何か言った?」
③何も言わない。

133 名前:476[sage] 投稿日:2007/07/15(日) 11:16:52 ID:???
②「えっ? 今、何か言った?」

何かつぶやいた隆に尋ね返すと、隆はなんでもないと首を振る。

「なによ…、言いたいことがあるならはっきり言いなさいってば」
「『すこしはジカクしてもらわないと、おれが困るんだよ』」
そのとき、チハルがにこにこと笑いながら言った。

「え?」
「…バッ…!」
(隆の真似…?)
さっきも肉じゃがを食べながら、隆のまねをしていたチハルを思い出す。

「チハル、さっき隆がそう言ったの?」
「うわーーーーーー」
「ちょっと、隆うるさい!」
「隆さん、それじゃあ肯定してるのと同じですよ…」
「……ぐ」
春樹の言葉に、隆が真っ赤になって口をつぐむ。

(そこで口をつぐむってことは、私の料理が破壊的だっていってるようなものじゃない!)
私の怒りに気づいたのか、隆と春樹が話題を変えようと急に話し出す。

「そ、そんなことより、チハル!お前ご飯食べて平気なのか?」
隆がチハルに話を振る。

「そうだ、そういえばさっき、俺が変とかなんとか…どういう意味?」
春樹もチハルに尋ねた。

二人同時にたずねられてチハルが困ったように私を見た。

①隆の質問に答えてもらう。
②春樹の質問に答えてもらう。
③そんな話題変換にだまされない。

134 名前:477[sage] 投稿日:2007/07/15(日) 12:54:31 ID:???
③そんな話題変換にだまされない。

チハルに向かって黙ってうなずくと、私は口を開いた。
「ちょっと、隆。話をはぐらかさないでよ」
「まぁ、姉さん…落ち着いて」
なだめようとする春樹に鋭い視線を向け、私は言葉を続けた。

「私の料理が破壊的だっていってるようなものじゃない!」
「ひねくれてんなぁ。どうして素直に認めないんだよ、お前は」
隆は呆れたように呟いた。

「ひどーい。ねえ、春樹。私の料理が普通だって隆に言ってよ」
「……………」
春樹は聞こえなかったフリをして、お味噌汁を飲んでいる。
(春樹まで……!)
味方の引き入れに失敗した私は、苦し紛れにさっき隆が言葉に詰まっていた話を蒸し返す。

「仮に私の料理が下手だとして…どうして隆が困るのよ」
「……ぐっ」
動揺したのか、隆はご飯を喉に詰まらせている。
それを見ていたチハルが不思議そうな顔をしながら、口を開いた。

「だってぇ、隆は愛菜ちゃんがまだ大好きで、あきらめられないんだもん。
今は一緒にいられるだけでいいから、元気付けてほしいって…ボクを起こすお願いで言ってたよ。
そうだよね、隆?」
チハルは無邪気に笑いながら、隆の方を見た。

ドンガラガッシャーン

隆は椅子から盛大に転げ落ち、真っ赤になりながら立ち上がる。
「てめーは余計なこと言うなっての!!」
チハルに向かって叫んだ後、「嘘だから!コイツに言った願いは全部嘘だからな!」と言いつつ、乱暴に座りなおした。

私は
①動揺する
②隆のお願いが嘘かチハルに確認する
③別の話題を振る

135 名前:478[sage] 投稿日:2007/07/15(日) 18:17:26 ID:???
③別の話題を振る

「……あっそう」
私はため息をついて味噌汁をすする。
私の料理に対する隆の評価は気に喰わないが、それならそれでこっちにも考えがある。

「まあいいわ。私隆にはもう絶対にご飯つくってあげないから!この先、春樹より料理がうまくなっても隆にだけはぜーーーーったいに食べさせない!」
「お、おい愛菜…」
隆が情けない顔をしているけれど、私は隆を無視してチハルに話しかける。

「ねえ、チハル。チハルって食事しても平気なの?」
「いま食べてるよ?」
「えーっと…うん、そうだね。でももともとチハルってテディベアでしょ?食事の必要はないじゃない?」
「うん。でも今はニンゲンだから食べられるよ?」
「それは、今は完全に人になってるってこと?」
「完全にニンゲンにはなれないけど、すごく近くなってるとおもうよ」
チハルは言いながら味噌汁を飲む。
その仕草が、春樹にそっくりだ。
もしかしたらみんなの真似をしているのかもしれない。

「それならもし鳥になったとしたら、空もとべる?」
春樹の問いに、チハルはちょっと考えて頷く。

「やったことないけど、たぶん飛べるよ」
「へえ…便利なんだな」
隆も気を取り直したのか興味津々とチハルを見る。

「ボクもともと人形だけど、チカラが強くなったからブッシツのシガラミからカイホウされるんだって」
「どういうこと?」
「ん~、よくわからないけど、いろんなものになれることかな?」
チハルも良くわかっていないみたいだ。

(っていうか、誰かに聞いたみたいな話方よね?)

どうする?
①さらに詳しくたずねる
②春樹が変だと言っていたことを聞く。
③もう話は終わりにする。

136 名前:479[sage] 投稿日:2007/07/15(日) 20:25:19 ID:???
①さらに詳しくたずねる

「チハル。まるで誰かから聞いたみたいな話し方よね?」
「うん。えらい神様がいってた」
「えらい神様?」
チハルは口に入ったものをゴクンと飲み込み、私に説明し始めた。

「ボクはまだ精霊だけど、しょーかくすればいつか神様になれるって前に話したのおぼえてる?」
「うん。聞いたような気がするよ」
「精霊にも、神様にもランクがあるんだ。ボクは愛菜ちゃんの力のおかげで、精霊の中ではえらい方になったの」
チハルはエッヘンと胸を張って言った。
「チハルってすごいんだね」
私が言うと、チハルはもっと褒めてとせがんできた。
小さい時のように頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細めた。

「でもね、力があってもボクはまだ生まれて時間がたってないから、神様にはなれないんだ。
ネンコージョレツって言うのかな。これからはジツリョクシュギのジダイなのにね」

(チハルって意外に難しい言葉を知ってるのね…)

「じゃあ、お前に色々教えてくれたのは上司ってことか?」
興味深く話に聞き入っていた隆が口を挟んだ。
「ニンゲンの世界におきかえればそうだよ。ボクにメイレイしたりするしさぁ…」
頬を膨らませて話すところを見ると、その上司のことを好きではないのかもしれない。

「神様の世界も縦社会だったなんて、皮肉みたいだ…」
春樹も苦笑するしかないという顔をしている。
「確かに、夢も希望も無いよなぁ」
隆も春樹の意見に賛成するように、頷いた。

「でも、コウリツ的にセカイのチツジョをたもつためにはしかたがないんだって」
チハルは他人事のように言うと、食事を再開した。

あと話すことは…
①春樹が変だと言っていたことを聞く。
②「セカイのチツジョ?」
③食事を終える

137 名前:480[sage] 投稿日:2007/07/15(日) 21:51:05 ID:???
①春樹が変だと言っていたことを聞く。

「そういえば、さっき春樹が変だっていってたのあれはなんだったの?」
私が訪ねると、春樹もチハルをじっと見た。

「んーとね、愛菜ちゃんは当たり前なんだけど、春樹も愛菜ちゃんと違うのにぎゅーってすると気持ち良いの」
「私は当たり前なの?」
「うん。愛菜ちゃんはトクベツなの。だからぎゅーってしても気持ちいのが当たり前なんだよ?」
「そ、そうなんだ?」
チハルはにこにこと答えてくれるけれど、言っていることはさっぱりわからない。

「ちなみに隆は気持ちよくなかったのよね?」
「うん」
「それじゃあ、気持ち良いってどういうふうに気持ち良いの?」
「えーっとね、ほわほわで、じわじわで、ぬくぬくなんだよ!」
「「「………」」」
思わず春樹と隆と顔を見合わせてしまう。
二人もなんとも言いがたい顔で、視線を交し合う。

「そ、それは、私も春樹も同じなの?」
「うん、同じだよ?」
ますますわからない。

「ねぇ、どういうことだと思う…?」
私はお手上げ状態で春樹と隆に聞く。

「俺に聞くなよ…」
隆もさっぱりわからないというように肩をすくめる。

「………チハル、気持ち良いと何か良いことがある?」
少し考えていた春樹がチハルに尋ねる。

「良いこと?んーと、ボクのチカラが強くなる!」
「「「え!?」」」
「だから春樹、変。春樹はフツーなのに、きもちいい。隆はフツーじゃないのに気持ちよくない」
「要するに、私か春樹にくっついてると、チハルは力が強くなるって言うこと?」
「うん!」
「隆じゃだめなのね?」
「隆はきもちよくないもん」
「……わるかったな」

それってどういうことだろう…?

①チハルと春樹の相性が良い?
②実は春樹にもなにか力が?
③私にはお手上げ、他の二人に聞く

138 名前:481[sage] 投稿日:2007/07/16(月) 00:07:50 ID:???
②実は春樹にもなにか力が?

「もしかしたら…春樹にもなにか力があるって事?」
私は思った事をそのまま口に出した。

「それがね、よくわからないんだ。愛菜ちゃんと隆にはゆらゆらしたのが出てるのに、春樹には無いよ。
だから、フツーの人なんだけど…ぎゅってすると気持ちいいの」

何か感じ取っているチハルすらもお手上げのようだ。
春樹は下を向き考え込んでいたが、不意に顔を上げた。

「………ゆらゆらって言うのは、おそらく力のことだと思う。
一郎さんと修二さんの力で姉さんを見た時、体の中心に炎があって、体全体が蒼白いゆらゆらと流れるものに覆われていた。
見た人全員に炎はあったけど、蒼白く流れるものはなかったんだ」

「宗像兄弟はそんな力を持っているのか。あいつら一体、何者なんだ?」
隆が双子の話を聞いて、眉をひそめながら呟く。
「うーん。私にもはっきり教えてくれないからわからないよ」
私は首を振り、肩をすくめた。

「ボクら精霊は自然が作るゆらゆらを普段は吸ってるけど、愛菜ちゃんはすごくキレイなゆらゆらでトクベツ気持ちいいの。
ほわほわで、じわじわで、ぬくぬくでチカラが強くなるよ」
「じゃあ、ハチル。どうして隆さんは気持ちよくないか詳しく教えてくれないか?」
春樹は顎に手を当てながら、チハルを見た。
「うーん。なんだか、ゆらゆらにザラザラ黒いのが混ざってて気持ちよくないんだ。
それに……隆の中にもう一つ別のゆらゆらがあるし、不味そうなんだもん」

「不味そうで、悪かったな…」
隆は小声で文句を言っている。

①黒いのってファントムの事かな?
②もう一つのゆらゆらってまさか…武君?
③黙って成り行きを見守る

139 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/07/16(月) 04:29:26 ID:???
一郎さんと修二さん×
一郎先輩と修二先輩○
呼び名を間違えたので訂正です

140 名前:482[sage] 投稿日:2007/07/17(火) 11:17:56 ID:???
③黙って成り行きを見守る

「黒いザラザラってミストか?で、もうひとつのゆらゆらってのは、前愛菜に手紙を出した武ってやつ…って考えるのが妥当か?」
隆が首を傾げながら言う。

「たぶんそうだと思います」
春樹も同意する。私もそれ以外に考えられない。

「それじゃあさ、チハル今日の朝あった二人はどう見えた?」
「朝?……同じ顔した人?」
「…そうそう」
「んーとね…」
チハルは朝のことを思い出そうとするように、首を傾げる。

「あのヒトたちは変なの。二人だけどヒトツでね、でも二人だからヒトツになれないの。だから、ゆらゆらがごちゃごちゃなの」
「ゆらゆらがごちゃごちゃ?」
隆がわけが分からないというように腕を組む。
私も首を傾げたけれど、ふと以前修二くんが言っていた言葉を思い出す。

「修二くんが前に一郎くんと二人でいると力が上がるって言ってた。双子だから相乗効果があるのか、もともと一つのちからが二つに分かれたのか分からないけど…って」
「へぇ…」
隆が面白そうに私を見る。

「チハルの話を聞くと、双子だから相乗効果があるわけじゃなく、もともと一つのものが二つに分かれた、と言うことかな」
春樹の言葉に私はもう一つ思い出す。

「そういえば、一郎くんは、真実を見出すはずの鏡が二つに割れてしまっては使い物にならないって…」
「真実を見出す鏡?……よくわかないけど、割れたってことはやっぱり一つのものが二つに分かれたんだろうな」
「そうでしょうね、でも修二先輩がどっちか分からないって言ってたのに、一郎先輩は分かれたってなんで知ってるんでしょう?」
隆の言葉に、春樹が頷きそれから不思議そうに首を傾げる。
春樹の言葉に、私と隆も同じように首を傾げるしかない。

「……カガミ、かがみ」
その時、チハルがぶつぶつと何かを思い出すようにつぶやいているのが聞こえた。

「どうしたのチハル?」
「カガミのことで、前にだれかにきいたきがするの」
うーんとうなりながら、チハルが頭を押えている。

何か手がかりがあるのかな?
①すぐに思い出してもらう
②思い出したら教えてという
③春樹のことに話を戻す

141 名前:名無しって呼んでいいか?[age] 投稿日:2007/07/17(火) 18:55:20 ID:???
age

142 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/07/17(火) 22:06:32 ID:???
①すぐに思い出してもらう

「何か思い出せそう?」
うーんうーんと唸りながら、頭を抱えているチハルに向かって話しかけた。
「だめ…。ぜんぜんおもいだせないよ」
チハルは悲しそうに肩を落とした。

「そっか。なにかヒントになればと思ったんだけど、仕方ないね」
(少しは真実に近づけるかもしれないと思ったのにな…)
「ごめんね。愛菜ちゃん」
チハルが上目使いで私を見る。
「ありがとう、チハル。無理させてゴメンね」
チハルに向かって、私は優しく笑いかけた。

そんな私達を見かねたように、隆を口を開く。
「ていうか、宗像兄に直接聞けばいいだろ。愛菜は同じ委員会だし、聞きやすいんじゃないのか?」
「それが…ね」
私は児童公園での出来事を思い出しながら話を続ける。
「以前、真実を教えて欲しいって言ったら拒まれたの」
「拒む? 宗像兄が?」
「うん。協力できないって言われたんだ」
「協力できない…か。一郎先輩にとって何か都合の悪いことでもあるのかな?」
私たちの話に聞き入っていた春樹も話に加わる。
「一郎くんにとって都合が悪いというよりは、私にとって良くない事のような言い方だったかもしれない」
「どういうこと?」
春樹は首をかしげながら、尋ねてきた。
「思い出さないほうが良い事もあるとか、真実に触れないのが一番良い方法だとか…とにかく、そんな言い方よ。
まるで、私を気遣っているように聞こえたんだ」
そう言って、春樹と隆を交互に見つめた。

「姉さんはお人よし過ぎるよ…」
そう漏らして、春樹は小さくため息を漏らす。
「俺から見れば、一郎先輩と修二先輩は勝手だよ。姉さんに力の話を告げておいて、今更、協力できないなんてね」
「そうだぜ。俺だって何度も愛菜にミストの事を言おうとして止めたんだ。
テレビの見すぎだろうとバカにされるのが嫌だったのもあるが、余計な心配を掛けさせたくなかったからな」

私は
①双子に不信感を持った
②なんだか複雑な事情がありそうだったと擁護する
③一郎君と修二君の考え方が違のかなと考えた

143 名前:484[sage] 投稿日:2007/07/17(火) 23:00:14 ID:???
②なんだか複雑な事情がありそうだったと擁護する

「でも、何か事情がありそうだった…、っていうかやっぱり私を気遣ってくれてたんだと思う…」
「姉さんは、どうしてそう思うのさ?」
「あのね…私、一郎君に今度こそ終わらせるために、すべて教えて欲しいってってお願いしたの…そしたら、一郎君『まさか、思い出したのか?』って…わたし、何か忘れてることがあるのかな?」
「愛菜がわすれてること?そこまで言うって事は、思い出して欲しくないことなんだよな?」
隆が首をかしげる。
あの時の一郎君は、少し我を忘れている感じだった。

(必死っていうか…とにかくいつもの一郎君らしくなかったよね)
そこまで、一郎君が私に思い出して欲しくないこととはどんなことなのだろうか。
それに何故私はその『思い出して欲しくない事』を忘れているんだろう。
一郎君の様子からすると、かなり重要な出来事のはずなのに。

「……ところで姉さんはなんで一郎先輩に『今度こそ』っていったの?」
「それは冬馬先輩…あ、御門くんのことね、その、冬馬先輩がそういったから…、今度こそ終わらせましょうって。いずれ時が来れば自身でもわかるようになるって…」
「冬馬先輩ってだれだよ?」
冬馬先輩の名前を出すと、今度は隆は少し顔をしかめて聞いてくる。

(そういえば…隆に冬馬先輩のこと話したのは初めてだっけ?)

①「隆には言ってなかったっけ?」
②「先輩の話は後で」
③「私を守ってくれてる人だよ」

144 名前:485[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 02:02:54 ID:???
①「隆には言ってなかったっけ?」

「聞いてねーよ」
不機嫌そうに、隆は言った。

「俺が知っている限りだと、その冬馬先輩は姉さんの実の母親によって育てられたそうです。
その恩を少しでも返したいと言っていました」
春樹は少し複雑な表情を浮かべながら、隆に説明をしている。
私がショッピングモールで気を失っている時に少し話しを聞いたのかもしれない。

「マジ? そんな、冗談だろ?」
隆はにわかには信じられないといった様子だ。

「私のお母さんと写っているロケットを冬馬先輩は肌身離さず持っているの。
あの写真に写っていたのは、確かにお母さんだったよ」
「でもさ。言いたくはないけれど、写真なんていくらでも合成できるよね」
そう言いながら、春樹は私の方を見た。
春樹自身、未だに半信半疑だと思っているようだ。

「そうかもしれないけど…」
「お前、騙されてるかもしれないぜ」
「でも…やっぱり、冬馬先輩は嘘をつけるような人には思えないよ」
私の言葉を聞いて、隆の顔はますます不機嫌になっていった。
「ふーん。愛菜はえらくその冬馬先輩ってヤツの肩をもつんだな」
「何、その言い方」
「これが俺の言い方だ。悪かったな」

睨みあっている私たちを見て、春樹が再びため息を漏らした。
「まあ、2人ともそれくらいにしてよ。
その冬馬先輩が『今度こそ終わらせましょう』って言うくらいだから、少しは姉さんと面識があるって事だよ。
問題は何を終わらせるのかって所だけど、これは本人に尋ねるしかないし。
一郎先輩の事もやっぱり本人に尋ねるしか確認しようが無いよ」
「まあ、春樹の意見に大筋で同意だな」
隆も便乗するように頷いた。

私は
①契約について話す
②さっきから黙っているチハルを見る
③食事を終える

145 名前:486[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 09:30:52 ID:???
③食事を終える

切りのいいところで話が途切れ、皆の食事も終わったため私は食器を持って立つ。

「ご飯は春樹が作ったから、私が食器片付けるよ」
「そう?ありがとう姉さん。それじゃ俺はお風呂の用意でもしてくるよ。隆さんはどうします?泊まっていきますか?」
「うーん…、どうすっかな、着替えとか持ってきてないし」
「泊まるならもって来ればいいじゃない?すぐそこなんだから」
「まあな……んじゃちょっくら着替え取りに帰るわ」
「それじゃ、客間の用意しておきますね」
「おう、悪いなよろしく頼む」
隆は一瞬躊躇した様子だったが、頷くと席を立って出て行った。
すぐに玄関が開いて閉まる音がする。
隆なら走れば往復でも10分かからないだろう。

「さて、と。片付けますか!」
「かたづけますか!」
今まで私たちの会話をおとなしく聞いていたチハルが、私のまねをして食器を持つ。

「お手伝いしてくれるの?チハル?」
「うん!」
にこにこと笑うチハルに、笑いかけて一緒にキッチンへ行く。

「チハル、私が洗った食器を、こっちのカゴにきれいに並べて入れてね」
「わかった!」
チハルは少しまじめな顔をして頷くと私の隣に立った。
私は洗った食器をチハルに渡す。チハルはそれを水切用のカゴに並べていく。
最初は割ってしまったりしないかと少し心配だったが、チハルは案外器用に食器を並べる。
最後の一つを洗い終わりチハルに手渡して私は手を拭いた。

「おわりー」
チハルも最後の食器をカゴに入れて、にっこり笑う。

「ありがとうチハル。助かったよ」
私がチハルの頭を撫でてあげると、チハルはうれしそうに私に抱きついてきた。

「わっ…!」
元はテディベアだと分かっていても、今の姿のチハルに抱きつかれるのは少し抵抗がある。

「…お前、軽々しく愛菜に抱きつくんじゃない」
その時、丁度戻ってきたらしい隆があきれたようにため息をついた。
チハルが隆に何かを言おうと口を開く前に、今度は春樹が顔を覗かせた。

「姉さん、先にお風呂はいっちゃって、隆さん少し話があるんですけどいいですか?」
「え?あ、うん」
「わかった」
春樹の言葉に、私と隆は頷く。

「おふろ?ボクも愛菜ちゃんといっしょにはいるー」
「え!?」
「だめ?」
驚く私たちに、チハルが悲しそうに尋ねてくる。

①「だ、だめよ!」
②「小さいチハルだったら…」
③「………」

146 名前:487[sage] 投稿日:2007/07/18(水) 21:11:33 ID:???
②「小さいチハルだったら…」

(小さいチハルとは一緒に寝ていたくらいだし、平気よね)

「いいの? 愛菜ちゃん」
チハルは首を傾け、私を覗き込むようにして尋ねてきた。

「片付けも手伝ってくれたしね。
だけど、絶対に入っている間は大きくならないって約束してくれる?」
「うん。やくそくするー!」
そう言って、チハルはまた私に抱きついてきた。

「くっ、くるしいよ…チハル」
大きくなったチハルは力も強くなっているのか、勢いよく抱きつかれるとかなり苦しい。
さらに長い腕で束縛され、身動きひとつ取れなくなってしまう。

そんな私達の姿を眺めながら、隆と春樹は顔を見合わせると黙って頷き合った。
「やっぱり駄目だろ」
「そうですね、駄目ですね」

申し合わせたような素早い動きで、チハルと私を引き剥がした。
普段は全く違う二人なのに、こういう時だけはみごとな連携を見せるようだ。

「お前は後だ。わかったな」
チハルの前に隆が立ちふさがった。
「えぇー! 愛菜ちゃんは一緒でもいいって言ったもん」
「姉さんが良いって言っても、俺達が許さないから」
春樹も腕を組みながら、チハルの前に立つ。
「いじわるぅ。隆と春樹のいじわるぅ」
チハルは頬を膨らませながら、いやいやと首を振った。

私は…
①一人でお風呂に入る
②やっぱりチハルと入る
③チハルに謝る

147 名前:488[sage] 投稿日:2007/07/19(木) 10:22:25 ID:???
③チハルに謝る

「ごめんねチハル、二人ともダメって言うし…」
二人の剣幕に私は太刀打ちできない。

「えー…ちゃんと小さくなるよ?だめなの?」
しょんぼりと肩を落とすチハルに胸が痛む。

「駄目」
春樹の言葉に隆も頷いて、言葉を続ける。

「愛菜と一緒に入れない代わりに春樹にくっついてろ。風呂も春樹と一緒に入ればいい」
「ちょっと、なに言ってるんですか隆さん!?」
この言葉には春樹があわてる。

「ん?愛菜の代わりならお前しかいないだろ。こいつ、愛菜と同じくお前も”きもちいい”らしいからな」
「それと、これとは…」
「春樹にくっついてていいの?」
春樹が反論する前に、期待を込めた目でチハルが春樹を見る。

「愛菜にべったりよりはいいだろ。ってことでチハル、春樹ならおっけーだ」
「わーい!」
チハルは隆の言葉に、私とお風呂に入れないことを忘れたのか、うれしそうに春樹に抱きつこうとする。

「ちょ、ちょっと待って…!」
あわてて春樹がそれを止めた。

「なんだよ、お前が我慢すれば愛菜が助かるんだぞ?」
「……わかってます。でもせめて小さくなってから…」
「小さいといいの?」
ため息をつきながら言った春樹に、チハルはちょこんと首を傾げてポンと小さくなる。
それから、伺うように春樹を見上げる。

「……はぁ、もう好きにしていいよ」
「やったー!!」
あきらめたように言った春樹の腰にチハルは歓声を上げて抱きつく。

私は…
①風呂に行く
②そんなにくっついてると気持ちいいのか聞く
③なんとなく面白くない気持ちになる

148 名前:489[sage] 投稿日:2007/07/19(木) 21:58:48 ID:???
③なんとなく面白くない気持ちになる

(せっかく春樹と仲良くなってくれたのに、なぜかもやもやする)

「じゃあ、私はお風呂に入ってくるから」
少し寂しい気分を味わいながら、私はお風呂場へ向かった。

「うーーーん。気持ちいい」
湯船に浸かりながら、私は思い切っきり伸びをした。
今日の入浴剤はミルクティの香りだ。
大好きな紅茶の中に浸かっているみたいで、なんだか嬉しくなってしまう。
入浴剤の入っていた袋を見ると、『優雅な気分をお楽しみください』と書いてあった。

「優雅な気分か…。最近慌しくて、ホント大変だったからなぁ」

乳白色の水面を揺らしながら、今までの出来事に思いを馳せる。
隆と水野先生のキスを目撃してから約一週間、本当にたくさんの事があった。
辛いことも多かったけれど、冬馬先輩や周防さんと知り合うこともできた。
(周防さん…大丈夫かなぁ)

怪我は無いという話だけど、早く元気な姿を見たい。
(早く周防さんが元気になりますように)
私は両手を胸の前に組んで、目を閉じて祈る。
気休めかもしれないけれど、少しでもこの思いが届けばいいと思う。

目をゆっくり開け、私はふぅと深呼吸をした。
「そういえば…お風呂で何か気になっている事があったような気がしたけど…」

(何だったっけ……)
カレー専門店にしようと言った時、おとといカレーを食べた事について指摘されたのを思い出す。
その時、冬馬先輩は『繋がっているからわかります』と言っていた。
それ以上の話をしようとして、周防さんに止められたのだった。

繋がっているからわかる、繋がっているからわかる…私は呪文のように呟いてみる。
そして不意に思い出す。私はあの時、お風呂やトイレまで筒抜けだったら困ると思ったのだった。

(まさか、今もその『繋がった』状態だったら…絶対に困るよ!!)

私は…
①冬馬先輩に聞いてみる
②考える
③気にしない

149 名前:490[sage] 投稿日:2007/07/20(金) 10:36:27 ID:???
②考える

(冬馬先輩に聞いてみようか?)
でも、もしそれで筒抜けだと言われてしまったらどうすればいいのか?
契約がなければ私はファントムを見ることが出来なくなるし、それは困るから契約解消はしたくない。

(聞かないほうがいいかな…)
聞かなければ、真相は分からないけれど、筒抜けだとはっきり言われるよりはマシかもしれない。
自分で筒抜けじゃないと思い込めば何とかなる。たぶん。自信はないけど…。

(でもちゃんと聞けば筒抜けにならない方法があるかも…?)
ぐるぐると考えてしまう。

(っていうか、今は湯船に浸かってるから見えないけど、もし筒抜けだったら…)
脱衣所で服を脱いだ段階で遅いだろうけど、そう考えると湯船から上がるのも…。

(ど、どうしよう…)

①とりあえず急いで風呂から上がる
②気にしないことにする
③さらに考える

150 名前:491[sage] 投稿日:2007/07/21(土) 10:02:21 ID:???
②気にしないことにする

(うん。筒抜けじゃないと思い込もう)

そう思うものの、一度気になりだしたら見られているような気になってしまう。
髪や体を洗う時、つい周りを確認してしまった。

(駄目だ…。気になってしょうがないよ)

こんな状態ではトイレひとつ入るのにも緊張してしまうだろう。
やっぱり、一度冬馬先輩に確認するしかなさそうだ。
(でも、どうやって確認しようか…)

呼べば来てくれるのだろうけど、緊急の事態ではないし気が引ける。
以前冬馬先輩が話していたように、チューニングが合えば私から話を出来るかもしれない。
だけど、このままでは自分から裸を晒しに行くようなものだ。
私は急いでお風呂を出ると、パジャマに着替え、髪を乾かして脱衣所を出た。

「お風呂でたよ…って、あれ?」
リビングには春樹と隆の姿はなかった。
(さっき話しがあると言っていたし、春樹の部屋に二人とも居るのかな)
大事な話かもしれないし、もう少し後から呼びに行くことに決めた。

(まず、冬馬先輩に確認しなきゃ。確か…相手の意識に同調させると言っていたよね)
私はソファーに座ると、さっそくチューニングを開始させた。
瞼を閉じ、冬馬先輩を思い描きながら意識を集中させる。
(先輩、冬馬先輩……どこにいるの?)
やっぱり私では無理だったと諦めかけたその時、白い霧がかかったような映像が頭の中に浮かんだ。
それが、徐々に鮮明になっていく。
(ここは……どこ?)
鏡が見えた。その次は蛇口。

「愛菜……どうしましたか?」
シャワーヘッドを確認した所で、真後ろで聞き覚えのある声がした。
私はゆっくりと振り向く。
すると、そこにはタオルを持った冬馬先輩がぼんやりと立っていた。
私は強張ったまま、視線をゆっくり下に移していく。

(は、は、はだか!!しかも全裸!!)
「ごごご、ごめんなさい!!!」

びっくりして目を開けると、いつもの見慣れたリビングだった。
(まだドキドキしてる……。ああ、私が覗いてどうするのよー、バカバカ!)

①気を取り直して隆と春樹を呼びに行く
②落ち込む
③謝りに行く

151 名前:492[sage] 投稿日:2007/07/21(土) 10:29:36 ID:???
②落ち込む

(ど、どうしよう……)
とにかく謝らなければとおもうけれど、冬馬先輩は入浴中だった。
今すぐには無理だろう。

(逆に私が覗くことになっちゃうなんて…)
すごく恥ずかしい上に、すごく泣きたい気分だ。
ずんずんと気分が落ち込んでいこうとしたそのとき…。

(……!地震!?)
がたがたと、家全体が激しく揺れる。

「きゃっ」
あまりのゆれに私は動けず、ソファにしがみつく。

(…お、おかしいよ)
しばらくすればとまると思っていた揺れは、まったく止まる様子がない。
しかも、さらに激しくなっている気がする。

「愛菜ちゃん!」
激しい揺れに立ち上がることもできず、途方にくれているとチハルが飛び込んできた。

「チハル!」
「愛菜ちゃん大丈夫!?」
小さなチハルは座り込んだ私に駆け寄ると私に抱きつく。
不思議なことに、チハルはこの揺れを気にすることなく普通に走ってきた。

「チ、チハル、なにがどうなってるの!?」
「ボクにもよくわからないけど、でも、そとからすごくおっきい力が家をつつんでるの」
「おおきい力…?」
「愛菜ちゃん、とりあえずみんなのところにいこう」
そういって、チハルはポンと大きくなると、動けない私を抱き上げる。
チハルに抱き上げられると、今までの揺れが嘘のようだ。

「愛菜!無事か?」
「姉さん!大丈夫だった?」
チハルに春樹の部屋に運ばれると、激しい揺れのために動けない隆と春樹がほっとしたように私に声をかけてきた。

私は…
①「二人とも大丈夫?」
②「チハルありがとう」
③「なにが、どうなってるの!?」

152 名前:493[sage] 投稿日:2007/07/21(土) 16:28:07 ID:???
③「なにが、どうなってるの!?」

「愛菜。無事ですか?」
その時、頭の中で冬馬先輩の呼び声が聞こえた。

「僕はこれから術者の元に向かいます。あなたは決して精霊から離れないでください」
頭の中で響く声は冷静そのものだった。
「冬馬先輩!」
「………相手は複数人いるようです。絶対にそこから動かないでください」

その声を最後に繋がっている感覚が遮断された。
(どうか…無事でいて)

「さん…姉さん、姉さん!」
春樹の叫び声で私はようやく我に返った。
「ご、ごめん」

「チハルに確認したところ、この揺れは三人の力によるものらしいんだ。多分、その三人は敵とみて間違いないよ」
意外に冷静な春樹が私に状況を説明してくれる。
「あ! 今、一人増えたよ。だけど……この感覚は愛菜ちゃんを守ってる人だ」
チハルは今起こっている状況をすべて把握しているみたいだ。

「それは…冬馬先輩だよ」
私はチハルを見て、次に隆と春樹に視線を向けて言った。
「とにかく俺達がここでじっとしていても状況は悪くなる一方だと思う。何か対策を考えなくちゃ」
「だけど、どうするつもりだよ。この揺れだぜ」
隆はお手上げだという顔で愚痴をこぼす。
「隆さん。ファントム…じゃないミストは何体まで出せますか?」
不意に、春樹がファントムの話を隆に尋ねた。
「えっ。多分、二体が限界だと思うが…」
隆は面食らいながらも、春樹の問いに答えた。

「冬馬先輩だけでは、多勢に無勢です。チハルに正確な相手の位置を特定さえしてもらえば、ミストで奇襲をしかけられるかもしれません」
「なるほど。よし!やってやるぜ」

チハルの話では、北側、南側、西側にそれぞれ敵が配置されているようだ。
南側は冬馬先輩が応戦している。
「北側と西側にミストを送るぜ。冬馬先輩ってヤツに憑いたらシャレにならないからな」

そう言って、隆は背中からゾワリと二体の黒い影を出した。
その二体は北側と西側にそれぞれ勢いよく這っていった。

私は
①春樹に感心する
②隆に感心する
③チハルに感心する

153 名前:494[sage] 投稿日:2007/07/21(土) 17:02:17 ID:???
①春樹に感心する

(春樹、すごい!)
こんな状況の中で、的確に指示を出す春樹に私は驚く。
いつも色々考えて行動しているとは思っていたけれど、こんなにすばやく対処することができるなんて思っても見なかった。

「あっ…」
家の揺れが弱まる。

「成功したの……きゃっ」
一瞬揺れが弱まったかと思ったが、すぐにまたゆれ始めた。

「くそっ、向こうのヤツにミストを消されちまった」
隆が舌打ちする。

「向こうも能力者だから、ミストへの対策はできてるって事か…」
「ど、どうするの!?」
春樹が悔しそうにつぶやく。

「ねえねえ隆!」
そのとき、チハルが隆に話しかける。

「なんだよ?」
「隆、僕にしたみたいに、家の精霊にお願いしてよ」
「は……?あ!そうか!」
チハルの言葉に、一瞬ポカンとした隆は、すぐに意味を汲み取ったのか、両手を床について、なにやら念じ始める。

「……どうだ!?」
しばらく念じていた隆が、汗をぬぐいながら周りを見る。

(な、なに…?)
ファントムの黒い靄とはちがう、白い靄のようなものが、家を包んでいるのが見える。

「た、隆!これ、なに!?」
「?姉さんどうしたの?」
「愛菜ちゃん大丈夫。これはこの家の精霊の力だから」
「成功、したみたいだな」
隆もほっと息をつく。
徐々に家の揺れが落ち着いていく。

「隆、何したの?」
「チハルを起こしたみたいに、家の精霊に、この家の住人を守ってくれってお願いしたんだよ」
「それじゃあ、いまこの家の精霊が私たちを守ってくれてるって事?」
「ああ、言うこと聞いてくれるか不安だったけど、何とか聞いてくれてるみたいだ」
そういっている間に、揺れはぴたりと収まった。

「ボクより長生きで、ボクには全然及ばないけど力もそれなりにあるはずだし、自分の身を守るためでもあるから絶対に助けてくれるっておもったんだ」
チハルは得意げに言う。

「おい、揺れは止まったけどどうするよ?」
隆が聞いてくる。

①おとなしくここに居る
②外に出る
③冬馬先輩との通信を試みる

154 名前:495[sage] 投稿日:2007/07/21(土) 18:04:11 ID:???
②外に出る

「落ち着いたし、外に出ようよ」
私がそう言って立ち上がろうとすると、春樹がその手を掴んだ。
「姉さん。それでは敵の思う壺だよ」
「そうだぜ、愛菜。奴らの狙いはお前だからな」

私はペタンとその場に座り込む。
(……私をあぶり出す目的で家を揺らしたんだ)

また私のために、みんなが危険な目に遭ってしまっている。
そのことに胸が痛んだ。

「愛菜ちゃん、大丈夫?」
チハルが心配そうに覗き込んできた。
「うん。ありがとうね」
私は今できる精一杯の笑顔で応える。

「ねえ、チハル。冬馬先輩がどうなっているか判る?」
今も戦っているだろう冬馬先輩が気がかりで、私はチハルに尋ねた。
「うーんとね。あっ…敵の人達が逃げていくよ……」
「本当?」
「うん。…それでね、愛菜ちゃんを守っている人がこっちに来るみたい」

私は立ち上がると、急いで玄関に走り出す。
裸足のまま、玄関の扉を開けた。
「先輩!」
家の前で立ち尽くしている、先輩を見つけて私は叫んだ。
「よかった。あなたが無事で……」
「それはこっちの台詞だよ」

ショッピングモールで買った緑のシャツが裏返しのまま羽織られている。
お風呂の途中でゆっくり着る暇もなく、私のために駆けつけてくれたのだろう。
「あなたが……また、驚くといけないので…ちゃんと着てきました」
ジーンズとシャツに視線を向けながら、冬馬先輩がポツリと呟いた。

私は……
①お礼を言う
②きちんと服を着せてあげる
③家に上がるように言う

155 名前:496[sage] 投稿日:2007/07/21(土) 19:33:53 ID:???
①お礼を言う

「冬馬先輩ありがとうございます。お風呂の途中だったのに急いできてくれたんですよね…」
良く見ると、髪も濡れたままだ。

「立ち話もなんだし入ってもらったら?姉さんもパジャマのままだし」
春樹後ろから声をかけてくる。

「そうよね!冬馬先輩入ってください」
冬馬先輩は無言で頷く。

「春樹!タオル持ってきて」
「わかった」
冬馬先輩の濡れたままの髪をみて、春樹が洗面所へ向かう。

「そいつが、冬馬先輩か?」
そこへ、二階から降りてきた隆が冬馬先輩を見るてたずねてくる。

「あ、うん。こちら御門冬馬先輩。先輩、私の幼馴染の…」
「湯野宮隆だ」
冬馬先輩はいつものようにじっと隆を見ている。

「……なんだよ?」
無言でじっと見られて居心地悪そうに隆が、顔をしかめる。

「姉さん、タオルもってきたよ。先輩使ってください」
春樹が差し出したタオルを冬馬先輩はじっと見ている。
なぜタオルが差し出されたのかわからないといった感じだ。

「先輩、お風呂の途中だったから髪ぬれたままだよ。ちゃんと拭かないと風邪ひくから」
私の言葉に、冬馬先輩は自分の髪に触れ、納得したのか春樹からタオルを受け取った。

「……何で風呂途中だったって、愛菜がしってるんだよ?」
「え!?」
不思議そうに隆いった隆の言葉に、私の顔に血がのぼる。

①「そ、それは…」
②「そ、それより中に入ろう!」
③「どうでも良いじゃないそんなこと!」

156 名前:497[sage] 投稿日:2007/07/21(土) 22:03:17 ID:???
③「どうでも良いじゃないそんなこと!」

ついムキになって言い返してしまった。
「……何、赤くなってキレてんだ? 愛菜」
隆は私の剣幕に怯みながら、困ったように呟いた。

「隆がヘンなこと言うからでしょ?」
勢いの止らない私は、またも隆に絡んでしまう。
「俺がいつヘンな事を言ったんだ。ヘンなのはお前だろう」
「………姉さん。どうしたのさ、一体」
春樹も呆れたように、私を見る。
「だって……」
(言えるわけないよ……お風呂を覗いたなんて)
悪いのは私だって、十分わかっている。
だけど、やましいからこそ思わずムキになってしまったのだ。
(悪いのは私だ。ちゃんと隆に謝らなくちゃ)

「隆、言いすぎたよ。ごめ…」
隆に謝ろうと言葉を紡いだところで、春樹の声が覆い被さってきた。
「あれ? 冬馬先輩が居ないよ!」
不意に発せられた春樹の言葉に、私たちは辺りを見回す。
暗がりの中、三人で目をこらしても冬馬先輩は見つからなかった。
ただ、使ったタオルだけが玄関の門に掛けられていた。

「本当だな。いつのまにか居なくなってやがる」
「冬馬先輩……」
「姉さん。もう遅いしとりあえず家に戻ろう。冬馬先輩には後日お礼を言えばいいよ」
春樹に背中を押され、私は家の中に戻った。

「俺、風呂入ってくる」
隆は不機嫌そうに言うと、風呂場へと向かってしまった。
「姉さんはきっと疲れているんだよ。今日はもう休んだら?」
春樹が労わるように、私に話しかけてきた。

私は……
①自室に戻る
②隆に謝るためにリビングで待つ
③冬馬先輩との通信を試みる

157 名前:498[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 13:21:00 ID:???
②隆に謝るためにリビングで待つ

「まだ寝るには早いし、隆もすぐにあがってくると思うから、冷たい飲み物でも用意しとくよ」
隆に謝りたいからというのも恥ずかしく、私は春樹にそういって、台所へ向かう。

「寝る前にアイスコーヒーじゃ、寝られなくなるかな…?ま、いっか」
私はアイスコーヒーを4つ用意して、リビングに戻る。

「あれ?チハル寝ちゃったの?」
そういえばさっきからおとなしいと思っていたチハルがソファを一つ占領して眠ってしまっている。

「さっきの事で少し疲れたみたいだよ。あれだけ揺れたのに、物が倒れたり壊れたりしなかったのは、チハルのおかげみたいだ」
「え?そうなの?」
言われてみれば、家の中はまったく乱れていない。
家の中を守ってくれて、さらに外の敵の状況まで探ってくれていたのだ。
私はお盆をテーブルに置いて、チハルの横に膝をついて頭をなでる。

「そっか、チハルがんばってくれたんだ。ありがとうね」
チハルは眠りが深いのか私が頭をなでても目を覚ます様子はなかった。

「おい、次風呂良いぞ、春樹」
「あ、はい」
そのとき、タオルで髪を拭きながら隆が戻ってきた。相変わらずカラスの行水だ。
入れ替わって春樹が立ち上がる。

「俺、上がってから飲むから、そのまま置いておいて」
春樹はそういって、リビングを出て行く。

「お、コーヒーか」
隆はテーブルにおかれたコーヒーを手にとり一気に飲み干す。
さっきの不機嫌な様子はすでにない。
けれど、ちゃんと謝っておかないと…。

「隆、さっきは言い過ぎてごめんね」
「ん?ああ、いや。ところで、あの冬馬先輩ってこの近くに住んでるのか?」
「え…?」
「揺れ起きてからここに到着するまで、やけに早かったろ?」
そういわれてみればそうだ。
揺れが起きてから、私に通信をして、着替えて、私の家まで到着するのに、多分15分くらいしかかかっていない。

①「マンションに住んでるって聞いたけど…」
②「どこに住んでるかは知らないよ」
③「そういわれればそうだね。近いのかな?」

158 名前:499[sage] 投稿日:2007/07/23(月) 11:35:29 ID:???
①「マンションに住んでるって聞いたけど…」

私は困って続ける。

「はっきりどこに住んでるかは知らないよ…」
「マンションか…、ここから近い場所だと、学校の近くに最近出来たところか、だいぶ前からある駅前のヤツか…」
この近辺は昔からある住宅街で、マンションもそう数は多くない。
さらに、私の家から15分かからずに来られる場所となると、確かにその2箇所に絞られる。
といっても、学校の近くに出来たのはマンションも一つではなく3棟同時に建設されたし、駅前は更に数が多く10棟近くはある。
でも、隆はそんな事聞いてどうするのだろう?
隆に聞いてみようかと口を開きかけた所で、チャイムが鳴った。

 ピンポーン

「あれ誰か来た…、こんな時間に誰だろう?」
時計を見るとそろそろ21時になろうとしている。
チャイムを鳴らすということは、お父さんやお義母さんではない。
私が立ち上がると、隆が、私の手を掴んだ。

「俺も行く。こんな時間に来るなんて怪しいだろ」
「え?でも、組織ならわざわざチャイム鳴らさないんじゃないかな?」
「そうかもな、でもお前、押し売りとかだったらどうするんだ?お前のことだから、何か買わされるんじゃないか?」
にやっと笑って言う隆に、私はむっとする。

(た、確かに押しには弱いけど…)
反論できなくて、私は隆の手を振りほどきムッとしたまま玄関へ向かう。
隆は、肩をすくめて私の後をついてくる。
私は覗き穴から外の様子を伺う。

そこには…
①一郎くんと修二くん
②冬馬先輩
③知らない人

159 名前:500[500ゲットsage] 投稿日:2007/07/24(火) 21:37:36 ID:???
③知らない人

見知らぬ女の子がドアの向こうに立っていた。
(誰だろう?)

「おい。誰だったんだ?」
「それが、わからないのよね」
「ちょっと変われって。俺が確認してやるから」
そう言うと隆は、私を押しのけるようにしながら覗き穴を見た。

「お…若い女だな。愛菜の友達か?」
「違うよ」
私は首を振って答える。
「女の子が外に立ちっぱなしじゃかわいそうだ。よし、開けてやろう」
「ちょっ、ちょっと私パジャマ…」

言うが早いか、隆はドアの鍵を開けてしまった。
とてもかわいい女の子が申し訳なさそうに立ち尽くしていた。

「あの……夜分にすみません。春樹くんは居ますか?」
俯いたまま、小声でその女の子は尋ねてきた。
清楚な白いワンピースを着ていて、同姓の私でもその姿に思わず見入ってしまった。

「今、お風呂に入っているの。ところで……何か春樹に用だった? もしよかったら、中で待ってる?」
私は隆の前に出て、女の子に話しかけた。
「いいえ、すぐ帰りますので。あの、この間……体育の時に助けていただいてありがとうございました。
一度、ご家族の方にもお詫びをしなければと思っていて…お伺いしました」
そう言って、女の子はおずおずと紙袋を差し出してきた。
私はそれを受け取る。
「へー、春樹もやるなぁ。こんなかわいい子を助けるなんてさ」
隆は私の後ろから覗き込むように女の子を見ると、面白そうに言った。
隆の言葉を聞いて、女の子の顔がみるみる赤くなっていく。

「ちょっと、隆! ごめんね。わざわざありがとう」
「い、いいえ…。私のせいで春樹くんが倒れてしまって……、本当にすみませんでした。
そ、それでは私はこれで失礼します」
「夜道だけど平気?」
「危ないぜ。俺が送っていくけど、どうする?」
隆が身を乗り出すようにして、女の子に尋ねている。その姿がどこかうれしそうに見えるのは気のせいだろうか。
「ち、近くなので、大丈夫です。夜分に失礼しましたっ」

女の子は会釈をすると、足早に夜道を歩いていった。
私達はその姿を見送って、玄関のドアを閉める。

①隆に話しかける
②リビングに戻る
③考える

160 名前:501[sage 折り返しキターw ってか、さがってないwww] 投稿日:2007/07/24(火) 22:53:38 ID:???
①隆に話しかける

「かわいい子だったね」
「だな、春樹も隅に置けないな」
隆はなにか面白がっている風に見える。

「なんか、うれしそうね?」
「ん?そりゃな、あの春樹をからかえる大チャンスじゃないか」
私は呆れて隆を見た。
さっきやけにうれしそうだったのは春樹をからかえる絶好の機会を得たからなのだろう。
こういうことに関して今まで隙をみせなかった春樹だから、隆にはうれしいのかもしれない。

(隆らしいといえば隆らしいけど…)
少し春樹をかわいそうに思いながら、女の子から受け取った紙袋を覗き込む。
重さはそれほどでもないから、お菓子か何かだろうと入っている包みを取り出す。

「なんだ?お菓子か?」
隆もそう思ったのか私の手から包みをとるとひっくり返してみる。

「ん?包装紙にも、包んであるシールにもメーカー書いてないな」
「え?」
言われて良く見れば、確かに無地の包みには店の名前は書いていない。
お菓子ならば包装紙にそれらしい記述があるはずだし、それ以外でも普通は包装紙をとめてあるシールに社名くらいは入っているものだろう。

「手作り…?」
「か?」
私と隆は顔を見合わせる。
なんとなく釈然としないものを感じる。

(それに、挨拶に来るにしてもこんな時間に女の子一人でくるもの?普通大人の人とくるんじゃないかな…?)
けれど、女の子の態度になんら不信な点はなかった。
私にはそれが逆に、不自然なものに感じられる。

私は…
①包みを開けてみる
②リビングに戻る
③隆に意見を求める

161 名前:502[sage @半分かがんばろう!] 投稿日:2007/07/25(水) 13:46:47 ID:???
③隆に意見を求める

「ねえ…、なんか変じゃない?」
「変って?」
「だって、女の子がこんな時間に一人でくるなんてさ。
 学校終わってからならもっと早くに来られたはずだし、それに昨日は日曜日だったんだよ?昨日来ればよかったじゃない」
「うーん、そうかぁ?単に、塾とか行っててこの時間にしか来られなかったとか」
「時間に関してはそうかもしれないけど、この包みも変だとおもわない?」
「まぁ、これは少し変だとおもうけど…、でもさっきの子べつにミストに操られてたわけじゃないし、大丈夫じゃないか?」
隆はそう言って包みをもったまま、リビングに向かう。
私も隆を追って一緒にリビングに入る。
隆は包みをそのままテーブルの上に置きソファに座った。

「ま、春樹が来たら開けてみようぜ」
「うん」
私は包みが入っていた紙袋をたたむと、包みの横に置く。
改めてみれば、紙袋も無地の白いものだ。

(なんか徹底してるっていうか…)
私はやはり釈然としないものを感じつつ、チハルが一つソファを占領しているので隆の横に座る。

(でも、隆が言うようにミストに操られてるんじゃなかったら気にしすぎなのかな?)
包みを見ながら考え込んでいると、ふと視線を感じて視線を向ける。
当然のように隆と目が合った。

「なに?」
「…なんでそんなに気にするのかと思ってさ」
隆はそういって、ちらりとテーブルの上を見る。

「純粋にコレが気になるのか?それとも…」
隆は視線を私に戻して口を開く。

「春樹が女の子を助けたことが気になるのか?」
探るような声音。

①「包みが気になるだけよ?」
②「何でそんな事聞くの?」
③「春樹のことも気になるけど…」

162 名前:503[sage] 投稿日:2007/07/25(水) 21:36:42 ID:???
③「春樹のことも気になるけど…」

と、私が言いかけたところで春樹がリビングに戻ってきた。

「おっ、ウワサの的の登場だな」
隆はやけにニヤニヤと笑いながら、春樹を目で追った。
私もリビングを移動する春樹の行動をつぶさに観察してしまった。

「……一体、どうしたのさ。二人とも……」
春樹は訝しげな表情のまま、ソファーに座った。
「いやぁ。春樹君も隅に置けないなぁ、と思ってさ」

隆は嬉しそうに言いながら、紙袋を春樹に手渡した。
タオルで髪を拭いていた春樹はその手を止めて、紙袋を受け取った。

「かわいい女の子からのプレゼントだ。春樹君もやるねぇ」
中身を確認しようとする春樹に向かって、隆は冷やかすように言った。
そんな隆に対して、春樹は苦笑で応えている。

「ちょっと隆ってば、嘘を言わないでよ。この前、春樹が体育の時間に助けてあげた子がみなさんで食べてくださいって持ってきたのよ。ちゃんとお礼に来てくれるなんて、いい子だね」
「そうか…桐原さんが。わざわざ、いいのに……」
春樹は無地の包装をゆっくりと開けていった。

(名前を聞くのを忘れていたけど、桐原さんっていうのね)

包装紙を解くと、中から白い箱が出てきた。
「甘い美味しそうな香りがするよ」
私は香ばしいような、甘酸っぱいような香りを吸い込んだ。
「多分、お菓子だ。桐原さん、お菓子作りが趣味だって言っていたし…」
春樹にしては、さっきから言葉の歯切れが悪い。まるで、対応に困っているようにも聞こえる。
「いいから、早く開けようぜ」

隆に促されるようにして、ゆっくりと箱を開けると中からパイが出てきた。
見た目も美しくて、まるでケーキ屋で売られているような出来だった。
「うわぁ! 本格的なパイね」
「多分……アップルパイだよ。まさかこんな夜に持ってくるなんて思わなかったな」
春樹は嬉しそうというよりは、どこか浮かない顔をしながら呟いた。

①「どうして、アップルパイを持ってくるって知っているの?」
②「桐原さんと仲がいいのね」
③「もっと嬉しそうな顔をしたら?」

163 名前:504[sage] 投稿日:2007/07/26(木) 03:48:10 ID:???
③「もっと嬉しそうな顔をしたら?」

府に落ちない春樹の態度に、思わずそう口にした。
「え……ああ、そうだね。ごめん」
春樹は私の言葉に小さく苦笑いを浮かべ、再び手元のアップルパイに視線を落とした。

こんがりと焼きあがったパイ生地の周りには抜き型で抜かれた木の葉の形のパイ生地がところどころあしらわれ、格子状に被せられた生地の隙間から覗くフィリングは綺麗なはちみつ色をしている。
箱の底には箱や包み・紙袋と同じく真っ白なレースのペーパーが敷かれていて、素人目に見ても相当な手間と時間がかかっている事が伺える。

(もし私が誰かにこんな贈り物もらったら、きっとすごく感激すると思うんだけどな)
春樹も甘いものは嫌いじゃないはずなのに。
そう思って見るからか、箱に触れる春樹の何気ない仕草も私の目にはこころなしかぎこちなく映った。

「別に私に謝らなくても良いけどさ。だって、1ホール手作りでしょ?きっと桐原さんも大変だったんじゃないかな。もっと喜んであげたって良いのに」
「しかも売り物みたいによくできてるしな、コレ」
春樹の横から覗き込んだ隆は、先ほどひっくり返して裏側を確認した際に崩れたと思われるパイの小さな破片を制止する間もなくひょいと口に運んだ。

「ちょっと!春樹より先に食べることないでしょ!」
「だいじょーぶだろ、彼女もそれくらいで怒りゃしないって……ん」
もごもごと口を動かしながら、隆はまるで料理人が料理の味見をしているかのように斜め上に視線を彷徨わせた。

「どう?」
「んまい!ひょっとしたら駅前のケーキ屋のより旨いんじゃないか?」
私の問いにそう答えてさらに手を伸ばそうとする隆の手をはたいて、隆の手の届かない所に箱ごとパイを移動させる。
春樹は隆の感想に特別驚いた様子もなく、なぜか少し困った顔で言った。
「そうかもしれません、去年も彼女の彼氏がクラス中にそんなような事を吹聴してましたし」
「彼氏?なんだよ、桐原さんてお前の彼女じゃないのか?」
冗談めかして春樹の肩に手を廻しながら隆が言った。言いながら隆は意味ありげな視線をこちらに寄越してきた。私は気付かないふりでやりすごす。
春樹は私たちのそんなやりとりには気付かなかったようで、顔をしかめたまま呟いた。
「違いますよ、俺はただの同級生で彼女にはれっきとした彼氏がいます。ただ……」

そう言いかけて、春樹は考え込むように口を閉ざしてしまった。その表情は相変わらず曇ったままだ。
(なんだろう、さっぱり話が読めないや……)

春樹に何て尋ねよう?
①「わざわざ持ってきてくれたのに、春樹は嬉しくないの?」
②「去年って、桐原さんとは中学生の頃から知り合いなの?」
③「桐原さんの彼氏がどうかしたの?」

164 名前:505[sage] 投稿日:2007/07/26(木) 10:32:39 ID:???
③「桐原さんの彼氏がどうかしたの?」

春樹の態度がすっきりしないのは桐原さんではなく彼氏のほうに原因があるのだろうか?
去年からということは中学時代からの知り合いということになる。
私の言葉に、春樹は深いため息をついた。言っていいものか迷っているようにも見える。

「なんだよ、さっさと吐いてすっきりしろ」
そんな春樹を、隆が肩に回した手に力を入れて、軽くゆする。
春樹は少し苦笑して、やんわりとそれを止めると言いにくそうに言葉を続ける。

「あいつ、俺が桐原さんを好きなんじゃないかって、勘ぐってるみたいで…」
「へぇ~?」
隆はそれを聞いてにやにやしながら、春樹の顔を覗き込む。

「で?実際はどうなんだ?桐原さんのこと好きなのか?」
「そんなわけないじゃないですか。もちろん友達としては好きですけど、恋愛感情じゃありません」
きっぱりと春樹は言い切ってため息をつく。

「だから彼女がお礼のためにわざわざ手作りのお菓子を持ってきたって、あいつに知れたら…しかも、こんな時間に」
「あ~、なるほどなぁ」
隆は同情するように言う。
確かにそれならば、素直に喜ぶことも出来ないだろう。

「でも、それならはっきり言えばいいじゃない?」
「言ったよ…」
春樹が疲れたように言った。
ということは、それも信じてもらえなかったということだろう。
私も春樹に同情しかけて、ふと思いつく

①「春樹、前に好きな人が居るって言ってたわよね?」
②「私が誤解を解いてあげようか?」
③「チハルに女の子に変身してもらって、春樹の彼女ってことにすれば?」

165 名前:506[sage] 投稿日:2007/07/26(木) 20:32:27 ID:???
③「チハルに女の子に変身してもらって、春樹の彼女ってことにすれば?」

私はなんとなく閃いた事を口に出していた。

「すぐにベタベタとひっつくし、彼女役にはもってこいだ」
隆は二個目のアップルパイを頬張りながら、賛成した。

「だけど…チハルがいいって言うかな」
春樹はあまり乗り気ではないのか、言葉を濁すように呟く。
「愛菜が頼めば、嫌だとは言わないはずだぜ」
隆はそういった後、「心配すんなって」と付け足しながら、春樹の肩を勢いよく叩いた。

(彼氏の方はそれで解決するとしても…)

「で、春樹は…桐原さんの気持ちを直接聞いたことあるの?」
女の勘というわけではないけれど、桐原さんの気持ちは春樹に傾いているような気がしてならない。
(この勘が外れていてくれればいいんだけど…)

「そりゃ、彼氏がいるんだったら春樹のことはただの友達だろうさ」
当たり前だろうという口調で、隆は口を挟んだ。
「わからないよ。彼氏がいても心変わりすることだってあるでしょ?」

春樹を見ると、まったくアップルパイに手をつけていなかった。

①「春樹も食べなよ。このパイすごく美味しいよ」
②「どうしたの? 春樹」
③「隆。ひとりで食べすぎよ」

166 名前:507[sage] 投稿日:2007/07/26(木) 21:51:53 ID:???
②「どうしたの? 春樹」

私の問いかけに春樹が何度目かになるため息をつく。

「姉さん、桐原さんに気持ちを直接聞いてどうするのさ?
 もし、心変わりして俺が好きだと言われても、俺はそれに応えることはできないんだよ?」
「それは…そうかもしれないけど」
「それなら、最初から聞かないほうが良いと思う。
 桐原さんが直接言ってきたとしても、俺は断るし」
春樹はきっぱりという。
その言い方に、ふと私は思う。

(もしかしたら、春樹は桐原さんの心変わりに気づいてる?)
ということは、桐原さんの彼氏だって気づいている可能性が高い。

「じゃあやっぱりチハルに女装させる作戦で春樹に彼女がいるって、桐原さんとその彼氏に見せ付けてやれば良いだろ。
 もし、桐原さんが春樹を好きでも彼女が居るってわかればあきらめるだろ」
隆がチハルのために用意してあったアイスコーヒーを飲みながら言う。

「そう…ですね。あ、隆さんこれも食べて良いですよ」
「ん?良いのか?」
「ええ、かまいません。俺は食べないほうがいい。桐原さんに少しでも期待させるようなことはできません」
そういって、春樹は立ち上がる。

「じゃあ俺、先に部屋に戻るから」
「あ、うん」
「おう、おやすみ」
春樹はそういってリビングから出て行った。

「春樹も大変だな」
春樹が手をつけなかったアップルパイをほおばりながら、隆が苦笑する。

「そうね…」
「さて、それじゃ俺らどうするよ?愛菜はもう寝るか?」
アップルパイを飲み込んで、隆が尋ねてくる。

私は…
①寝る
②もう少しリビングにいる
③チハルを起こして今の話をする

167 名前:508[sage] 投稿日:2007/07/27(金) 11:09:26 ID:???
③チハルを起こして今の話をする

「とりあえずチハルを起こして、今の話をしてみようか」
「おう、そうだな。おい、チハル起きろ」
私の言葉に隆は頷いて、チハルをゆする。

「…ん?」
「チハル起こしてごめんね、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「…おねがい?なぁに?」
まだ目が覚め切っていないのか、しきりに目をこすりながらチハルが体を起こす。

「チハル、私の年くらいの女の子に変身してみてくれる?」
「愛菜ちゃんくらいの女の子?うん、わかった」
言うないなや、ぽんっとチハルの姿が変わる。

「うそっ、かわいい!」
「お?コレならいけるだろ」
姿の変わったチハルに思わず私は歓声をあげ、隆は目を丸くする。
顔はやはりチハルの面影を残しているが、男の子だったときより顔のつくりが丸っこくなっている。
髪も少し長くなり、セミロングで、ふわふわと軟らかいウェーブがかかっている。

「これでいい?」
「うんうん、完璧よ」
「えへへ」
ちょこんと小首を傾げる仕草が、女の子の姿だととてもかわいらしい。
ほめてあげると、うれしそうににっこり笑う。その姿さえ魅力的に見える。

「よし!それじゃ簡単な打ち合わせをするぞ!」
隆の言葉に私が頷き、チハルはきょとんとする。

30分後

「それじゃ、おやすみ隆」
「おう」
簡単な打合せをすませ、私は女の子の格好のままのチハルを連れて部屋にもどって布団に入る。
チハルももぞもぞと、私の布団にもぐりこんでくる。
こうしていると、友達とお泊り会をしているようだ。

「それじゃあおやすみチハル、さっきの話よろしくね」
「うん、まかせて、愛菜ちゃん」
そういって、擦り寄ってくるチハルをぎゅっと抱きしめて目を閉じる。
すぐに、心地よい眠りにさらわれて、私は久しぶりに夢を見ずに眠った。


ふっと、意識が浮かび上がり、私は目を開ける。
時計を見ると丁度起きる時間だ。

(夢を見ないで寝るって久しぶり、さてと今日は…)

①朝から昨日の作戦を実行
②放課後昨日の作戦を実行
③作戦実行は文化祭、今日から作戦準備

168 名前:509[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 18:53:06 ID:???
①朝から昨日の作戦を実行

(よし!やるぞ!)
私は起き上がって、心の中で気合を入れる。

「ん……愛菜ちゃん?」
「あ、おはようチハル」
私が起き上がったときに目が覚めたのか、ごしごしと目をこすりながらチハルも起き上がる。
昨日とは違い、寝ている間にテディベアに戻らなかったようだ。

(これも力が強くなってきてるってことなのかな?)
「おはよう、愛菜ちゃん」
にこっと笑うチハルに、思わず抱きついてほお擦りする。

(か、かわいい~~~~)
妹が居たらきっとこんな感じかもしれない。

「愛菜ちゃん、どうしたの?」
急に抱きつかれたチハルが不思議そうに、でもうれしそうにたずねてくる。

「んーん、なんでもないよ。今日はがんばろうね!」
「うん!」
私が笑いかけると、うれしそうに笑い返してくれる。

「さて、それじゃあ着替えて、朝ごはんにしようね」
「ボクも?」
「あ、チハルは……」

①そのままで
②制服姿に変身
3かわいい私服に変身

169 名前:510[sage] 投稿日:2007/07/28(土) 21:16:08 ID:???
②制服姿に変身

「計画どおり制服姿になってもらっていい?」
チハル素直に頷くと、ポンと軽い音を立てて制服姿に変身した。

「どう? 愛菜ちゃん」
ブレザーにネクタイ、そしてズボンの少女がその場でくるくると回っていた。

「えっと……ちょっと違うかな」
「どうして?」
軟らかいウェーブを揺らしながら、チハルが覗き込んだ。
「ほら、今のチハルは女の子に変身しているでしょ。だから、私がいつも着ている制服じゃないとね」

「あ! そうだった」
私に指摘されて、ようやく気付いたようだ。
(大丈夫かな…)

「昨日、愛菜ちゃんと隆とで決めた作戦通りにすればいいんだよね」
「そうよ。チハルの演技力で決まるんだから、頑張ってね」
私はチハルの頭を撫でた。
美少女になっても、目を細めて気持ちよさそうにする仕草はやっぱりチハルのままだ。
「うん。ボクがんばる!」
「そのボクも、今日一日はワタシで通すのよ」

再び変身したチハルは胸にはリボン、紺のブレザー、チェックのプリーツスカート。どう見てもうちの女子生徒そのものになった。
隆と打ち合せしたとおりの言葉を、チハルは目を泳がせながら、ゆっくりと話し出した。
「うんと…。ワタシは…春樹の恋人のチハルです。はじめまして」
(かわいい~~。これなら、作戦も成功しそうね)

確かな手ごたえを感じながら服を着替えて髪を整え、チハルと共に階段を下りた。

①春樹にチハルを見せて驚かせる
②隆と最終の打ち合せをする
③チハルと朝ごはんを食べる

170 名前:511[sage] 投稿日:2007/07/29(日) 08:09:14 ID:???
②隆と最終の打ち合せをする

「おはよう、隆」
「おはよう。お、チハル準備万端だな」
「おはよう隆!」
リビングに入ると隆がテレビを見ながらコーヒーを飲んでいた。
かってしったるなんとやら、だ。

「隆、最終打ち合わせなんだけど」
「ああ」
「まず、桐原さんね」
桐原さんは昨日近くに住んでいるようなことを言っていた。
もし桐原さんが春樹を好きなら、きっと偶然を装って同じ時間に登校するはずだ。
本当は彼氏のほうを先に何とかしたかったが、彼氏の情報がまったくないため桐原さんからということになったのだ。

「よし、それじゃあチハル、何年何組って聞かれたらなんて答えるんだ?」
「えっと、同じがっこうじゃないよ。今日はソウリツキネンビで休みだから、愛菜ちゃんにセイフク借りたの。いっかい一緒にトウコウしてみたかったから、お願いしてワガママ言っちゃった」
いえたことに安心したのか、にこっとわらうチハル。
チハルの役どころは他校の彼女。家族公認で春樹の姉の私とも仲が良いというもの。
下手に何年何組か嘘をついて、後で教室に乗り込まれたら困るので考えた設定だ。

「よし!完璧だな!細かいところは春樹がフォローするだろ」
「そうね、後はチハルいつも通りにしてて良いからね」
「うん、わかった!」
「ちゃんと私たちも後ろからついていくし、なんかあったらフォローするから」
私たちがリビングで話をしていると、春樹が顔を覗かせた。

「姉さん、隆さん朝ごはんできましたよ……」
「あ、春樹!ボク…じゃないワタシの分は?」
「…チハル?」
「うん、ボ…ワタシ、チハル!」
ぴょこんと、立ち上がって春樹に突進するチハル。

「ねえねえ、ワタシの分は?」
がしっと腰にしがみついて、チハルが春樹を見上げる。
春樹は疲れたように額に手を当てると頷いた。

「ちゃんとあるよ……」
「わーい、春樹大好き!」
私たちが何をしようとしているか気づいていながら、春樹はとりあえず止めるきはないらしい。
それくらい、桐原さんとその彼氏のことで悩んでいるのかもしれない。

「この調子なら大丈夫だろ」
「そうね」
私と隆は頷きあってテーブルに座る。

さて…
①春樹に設定を説明する。
②隆とフォローの仕方を話し合う。
③チハルともっと打ち合わせをする。

171 名前:512[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 00:23:48 ID:???
③チハルともっと打ち合わせをする。

(チハルの打ち合せを春樹にも聞かせれば、計画の説明が省けそうね)

「ねえ、チハル。それじゃあ、春樹の恋人のチハルちゃんの設定を説明をしてくれる?」
私は確認をかねて、チハルに役柄の説明をお願いした。
春樹も朝食の用意が終わったのか、席に座ってチハルに注目する。

「えーっとねぇ…。ボ…ワタシは春樹の恋人のチハルなんだけど……春樹とは違うガッコウに通ってるんだ。
今日はソウリツキネンビでお休みだから、愛菜ちゃんにセイフクを借りて、一緒にトウコウするの。
春樹とは家族同士コウニンのナカで、すっごくラブラブなんだよ。…って、キリハラさんって人に言えばいいんだよね」

「そうだ。チハルお前、賢いな」
隆は自分自身の考えた細かい設定に満足しながら、チハルを褒めた。
チハルは嬉しそうに笑って、それに応えている。

「ずいぶん強引な気もするけれど…」
春樹は朝食のパンにバターを塗りながら、隆に向かって複雑な顔を向けた。

「チハルで対処しきれないときは、お前がフォローすればいいんだよ」
「俺がフォローですか……」

今朝になっても言葉を濁したままの春樹に、煮え切らないものを感じてしまう。
(もしかして、春樹はこの計画に反対なのかな)

「春樹。この計画に反対なの?」
「そういうわけでは無いけど……桐原さんをだますみたいで、やっぱり心苦しいよ」

春樹の放った一言に、隆が眉をひそめる。
「そうやって優しくするから、その桐原さんって子も勘違いしたんじゃないか?
好意に応えることが出来ないのならせめて態度にして伝えないと、逆にその子が可哀想だぜ」

私は…
①隆に賛成する
②春樹に同情する
③時間がないので食事を終える

172 名前:513[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 11:41:20 ID:???
②春樹に同情する

「春樹の性格上どうしようもないかもしれないけど、このままっていうわけにもいかないじゃない?」
春樹は面倒見が良くて優しいから、勘違いする女の子だって居るだろう。
今までこういう話がなかったほうが不思議だ。
それにフリーの女の子だったら私たちだってこんなおせっかいはしない。
けれど桐原さんにはちゃんと彼氏が居るということだし、それに…。

「それに桐原さんの彼氏と気まずくなってるのも、嫌なんでしょ?」
「…うん、あいつ、最近笑わなくなってきたから」
春樹がそういって悲しそうにため息をつく。
桐原さんの彼氏と春樹はきっと仲が良かったのだろう。

「それじゃ、早く誤解を解いたほうがいいだろ?」
「そうだね…」
春樹はそう言って迷いを振り切るように頷いた。

「よし、それじゃそろそろ出ようぜ」
「そうね」
時間を見るとそろそろいつもの時間だ。

「じゃ春樹、先に出て。桐原さんを見かけたら合流するから」
「分かった」
最初からチハルと一緒だと、桐原さんが近づいてこない可能性もある。
春樹が出て行った後、外をうかがうと桐原さんが角から歩いてくるのが見えた。

「思ったとおり、春樹の通学時間に合わせてきたわね」
「だな。よし!作戦実行だ!」
桐原さんが家の前を通り過ぎるのを確認して、私と隆、そしてチハルの3人で玄関を出る。
前を歩く桐原さんが、春樹に気付いたのか小走りになった。

「よし!チハル今だ!おもいきり春樹にくっついて来い!」
「わかった!」
隆の言葉にチハルは元気に頷くと、勢い良く春樹に突進する。

「はーるーきーーーーー」
春樹はチハルの声に振り返り、驚いたような顔になる。突進してくるチハルに素で驚いているらしい。
同じく、春樹の後を歩いていた桐原さんもチハルの声に振り返った。
振り返って立ち止まった春樹にすぐにチハルは追いついて、朝のように腰に手を回してしがみつく。
今は通学時間帯。当然まわりの生徒も何事かと春樹とチハルに注目する。

(うわ、ちょっと…てか、かなり恥ずかしいかも…)
「チハル!?」
案の定、春樹も周りの視線を一身に浴び恥ずかしいのか赤くなる。
けれどそれが逆に、他校の彼女が目の前に居ることに驚いている演技(?)に見えないこともない。
あわてる春樹が視線をさまよわせて、ふと桐原さんに気付く。

「あ…、桐原さんおはよう。……こらチハル離れろって」
「お、おはよう、春樹くん…」
赤い顔のままあわててチハルを離そうとする春樹、困惑したような桐原さん。
そのまま、黙り込んでしまった桐原さんは、チハルをチラチラと見ながら春樹に疑問の視線を投げている。
けれど「誰?」とは聞かないため、チハルは言うべきセリフを言わず、春樹にしがみついたままだ。

①フォローに出る
②成り行きを見守る
③チハルに通信を試みる

173 名前:514[sage] 投稿日:2007/07/31(火) 02:08:00 ID:???
②成り行きを見守る

「チハル、頑張れ。」
小さな声でエールを送る。
ここで私が下手にフォローすると変だからチハルを見守ることにした。
想いが通じたのかチハルが動き出す。
「会いたくてきちゃった、はるきだ~いすき。」
甘い声で春樹に擦り寄るチハル。
「春樹君の恋人?」
チハルの態度に春樹の表情が一瞬険しくなってバレルかと焦ったが、
見事に桐原さんは引っかかってくれたようだ。
「うん、ワタシは春樹の恋人のチハルなんだけど……春樹とは違うガッコウに通ってるんだ。
今日はソウリツキネンビでお休みだから、愛菜ちゃんにセイフクを借りて、一緒にトウコウするの。
春樹とは家族同士コウニンのナカで、すっごくラブラブなんだよ。ね、春樹。」
「あ、ああ。」
嘘がつけないのか春樹の方がボロがでそうでハラハラする。
「そうなの。」
桐原さんは二人を見て目を細めてどうでもいいとでもいうように一言呟いた。
「桐原さん、昨日はおかしありがとう。
で、でも俺にもこいついるし誤解されたくないから今後は……ね。」
何とか振り絞った春樹の言葉も桐原さんにとっては効果がないように見えた。
桐原さんはチハルを一瞥すると飛び切りの笑顔を向けた。
「初めまして、チハルさん。」
「う、うん。」
チハルの表情が曇る。先ほどまでとは違って怯えて春樹にしがみついているという感じだ。
「でも、親公認というのは私も一緒なのチハルさん。」
「えっ。」
桐原さんの言葉に私だけでなく春樹も隆も驚きの声を上げた。
「だって春樹君とは親公認の許婚なんですもの、ねぇ高村春樹君。」

高村春樹

その言葉に春樹の表情が一転する。
「俺の親は高村じゃない。あんな男の息子じゃない。」
春樹の今の表情『お前らなんか必要ない!』と言い放ったときと同じ表情だ。
今にも食いかかりそうな春樹の感情を抑えなきゃ!!
その為に私は、

①「春樹、落ち着いて」と春樹にしがみつく
②「ちょっと許婚って何よ、桐原さんには恋人いるんでしょ。」と話題をそらす
③チハルにキスして場の雰囲気を壊す

174 名前:515[sage] 投稿日:2007/07/31(火) 10:19:22 ID:???
①「春樹、落ち着いて」と春樹にしがみつく

「ね、姉さん…」
私の声に、春樹がハッとしたように動きを止める。

「愛菜ちゃん、あのヒト怖いよ…すごくどろどろしてきもちわるい」
同じように春樹にしがみついているチハルが泣きそうな顔で私に言う。
心なしか、顔色も悪い気がする。
私は春樹から離れるとチハルを覗き込む。

「チハル?」
チハルの言葉に、私と春樹は視線を交わす。
力のある精霊のチハルがこんなにも嫌がるなんて普通じゃない。
春樹もそう思ったみたいだ。すっとチハルを桐原さんからかばうように立つ。

「チハル、大丈夫か?どうしたんだ?」
春樹もチハルを覗き込む。そんな春樹の態度に桐原さんはギッと眉を吊り上げた。

「きもちわるい、あのヒト、どろどろする、ボクここにいたくない」
すっかりもとの口調に戻っているチハルが、必死に春樹に言う。

「桐原さんだっけ?昨日はアップルパイありがとさん」
そのとき、隆が気をそらすためか桐原さんに話しかける。桐原さんは、ハッとしたように微笑んだ。
桐原さんの意識がチハルから離れたためか、チハルが少しホッとしたように息をついた。

「………いえ」
桐原さんは春樹とチハルを気にしながらも先輩である隆を無碍にも出来ないのだろう。隆に向き直る。

「ところで、春樹が桐原さんの許婚ってのはどういうこと?」
興味津々といった感じで隆が桐原さんに聞く。こういうことを遠慮なく聞ける隆はすごい。

「そのままの意味です。私の父と、高村のおじ様が決めたと…」
「でも、春樹は知らなかったみたいだぜ?なあ?」
春樹は隆の言葉に頷く。

「ってことはだ、許婚って言っても親が勝手に決めたことであって、本人の意思はまったく反映されてないってことだ。今の時代そんなのに効力があるとも思えないね」
たまには隆もいい事を言う。桐原さんは、隆の言葉に唇をかみ締める。

「それに、今の春樹は高村じゃない。大堂だ。高村春樹って人間はもうどこにも居ない」
隆は春樹が家に来た頃のことを知っている。春樹が荒れていた理由も当然知っていた。

「よしんば高村だったとしても、20になったら親の許可なく結婚できる。
 親の意思なんて関係ないさ。春樹は結婚したいヤツと結婚する。で、それは絶対にアンタじゃない」
隆の言葉がだんだんときつくなっていく。なぜか隆は怒っているみたいだ。

①隆を止める
②とりあえず春樹とチハルをこの場から離す
③成り行きを見守る

175 名前:516[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 00:39:41 ID:???
③成り行きを見守る

「おじ様は立派な学者でたいへんな権力者なんです。そのおじ様が決めた事ですもの、絶対だわ」

「高村だか高原だか知らないがな、大堂春樹はここにいるんだ。許婚なんて古いしきたりに縛られるなんてホント馬鹿げてるぜ」

お互い一歩も譲らず、隆と桐原さんは言い争いを続けていた。

(高村…?春樹があの高村だったなんて……)
隆と桐原さんのやりとりを聞きながら、私はずっとそのことばかり考えていた。

出会ったころの春樹は母方の姓を名乗っていて、すでに高村春樹という名前ではなかった。
だから今まで、私は全く知らずに過ごしていたのだ。

春樹は過去の話を極端に嫌っていたから、私から尋ねることも出来ないでいた。
たまに昔話になったとしても、お義母さんに対して暴力を振るっていた父親を今も決して許していなかったし、同じ血がながれていることにすら嫌悪しているほどだった。
そういった経緯で、春樹の父親のことは禁句になっていたのだ。

とはいえ、桐原さんの口から真実を聞くことになってショックも大きい。

隆はあいかわらず、桐原さんに向かって何か話している。
隆自身、まだ高村の存在を知らないみたいだけど、武くんのことに高村が関わっていると知ればどう思うだろう。
春樹の親族から人体実験まがいのことをされたと知っても、今みたいに春樹をかばってくれるのだろうか。

春樹を見ると、チハルを守るようにして隆と桐原さんの様子を見ている。
いつも傍らにいたはずなのに、まるで知らない人を見ているような錯覚に囚われる。

(春樹は…すべて知っていて黙っていたの?)

私は…
①春樹に話しかける
②とりあえず、この場を収める
③考える

176 名前:517[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 10:16:53 ID:???
③考える

少し悲しくなって春樹を見ると、春樹は私の視線に気付いたのか心配げな顔をした。
その顔に演技や嘘は感じられない。

(そうよ、春樹が何か知ってるわけない)
春樹が何か知っていたら一郎くんや修二くんのことも、力のことも知っていたはずだ。
知らなかったから、いろいろ驚いたり苛立ったりしてたんだ。
それに、知っていて黙っていたとしても、それは当たり前。
人体実験をしている組織があるといわれても、何も知らなかった頃の私なら映画か何かの話かと思ったかもしれない。
大体、組織に関しては春樹はまったく関係ない。
力もないし、組織に属しているわけでもない。
春樹の父親がどんなに非道なことをしていようと、春樹自身にはまったく関係ないことだ。
自分に言い聞かせるように、いろいろ考えていると隆の声が耳に飛び込んできた。

「大体、アンタ親が言ったからって、すべてを受け入れて生きていくわけかよ?」
「……そうよ」
「バカだな。親が言ったからだって?ハッ、要するに自分で考えられないお人形ちゃんてわけだ?」
隆は心底馬鹿にしたように言う。隆の両親はそのあたりの教育徹底している。
何でも自分で考えて行動させた上、子供が自ら考えて行動した事柄についてはきちんと責任を取る。
だから隆は、自分で考えず言われたまま行動する人を嫌う傾向がある。

「バカにしないで、私だって考えて行動してるわ」
「考えて行動した結果がコレか?春樹たちを不快にさせて、あんたのカレシとやらを悲しませ…」
「そこまで」
隆の言葉をさえぎるように、声が割ってはいる。

声のほうを見ると…
①一郎くんと修二くん
②近藤先生
③水野先生

177 名前:518[sage] 投稿日:2007/08/01(水) 23:14:16 ID:???
①一郎くんと修二くん

「はいはい! お二人さんそこまでね~。ほら、向こうで愛菜ちゃんが困っているよ」
修二君がいつもの軽いノリで割って入ってきた。
隆と桐原さんの間に割り込んで、強引に引き離している。

「なんの騒ぎだ。こんなところで口論していては、通行の邪魔だ」
一郎君は隆と桐原さんを一瞥し、私の前に立った。

「えっと…これは」
一郎君から問いただされ答えに窮していると、春樹がこちら側にやって来る。
「なんでもありません。朝からお騒がせしてすみませんでした」
そう言うと、春樹は私に向き直りながらチハルを私に預けてきた。
私はチハルを受け取りながら、そっと春樹の顔を伺い見る。すると、困っているような、悲しそうな複雑な表情を浮かべていた。
きっと、私が困惑している事もわかっているのだろう。
眼を伏せ、どういった言葉で話せばいいのかわからないといった様子だった。

「姉さん…」
私と目を合わせることなく、春樹は独り言のように小声で呟く。
そして、きびすを返すと今度は桐原さんの前に立った。

「俺には好きな人がいるんだ。父が桐原さんに何て言ったのかは知らない。だけど…
たとえ許婚だったとしても、それに応えることは出来ない」

桐原さんは春樹の言葉を悔しそうに下唇を噛み締めてながら聞いていた。
そしてすべての話を聞き終えると私の方を睨みつけ、そのまま走り去ってしまった。

チハルは桐原さんが居なくなってようやく安心したのか、ギュッとしがみ付いていた手を解いた。
隆は憮然とした表情のまま、桐原さんの走り去った方向を眺めている。

「もしかして、修羅場の最中だったとか?」
修二君はバツが悪そうに、誰ともなしに話しかけてくる。
一郎君はそんな修二君を見ながら、小さく溜息を吐いた。

私は…
①修二君の言葉に頷く
②黙っている
③学校へ急ぐ

178 名前:519[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 11:21:41 ID:???
②黙っている

私は言っていいものか悩む。
迷っていると、ふとチハルが私からはなれ春樹に近づいていった。
それから、立ち尽くしたままの春樹にぎゅっと抱きつく。

「チハル、もうお芝居は終わりだ。くっつかなくていいんだぞ」
隆が憮然とした顔のままチハルに言う。
けれどチハルはぶんぶんと首を振って、さらに春樹にしがみつく。

「コイツ昨日の精霊だよな。またずいぶんかわいらしい姿になって」
修二くんが面白そうにチハルを見る。
けれどチハルはそれが聞こえていないのか、それとも他に気になることがあるのか春樹にしがみついたままだ。
チハルの行動にそれぞれが困惑しているとチハルが春樹に言った。

「春樹だめだよ。愛菜ちゃんがかなしむよ」
「…!」
「チハル…?」
チハルの言葉に春樹ははっとしたように、チハルを凝視する。
けれど私にはチハルの言葉の意味が分からない。

「さっきの桐原さんっていう人はすごくこわいけど、愛菜ちゃんがかなしむからボク春樹を守るよ」
「…一郎くん修二くん、さっきの女の子、力のある人なの?」
「いや、いたって普通だったな」
「特別何も感じなかったが…」
チハルが春樹を守るというから、特殊な力の持ち主かとおもったがそうでもないらしい。

「チハルは精霊だからな、人の感情を受信しやすいんだよ」
そういったのは、隆だ。
成功率は低いとはいえ、もともと精霊に影響を及ぼすことの出来る隆はこの中の誰よりも精霊に詳しいのかもしれない。

「どういうこと?」
「ん~、人間の感情を感じてしまう、もしくは読みとるってことさ」
「え…じゃあ…」

①「チハルが桐原さんをきもちわるいって言ったのは?」
②「チハルが春樹から離れないのは…」
③「チハルには私達の考えが筒抜けってこと?」

179 名前:520[sage] 投稿日:2007/08/02(木) 21:19:16 ID:???
①「チハルが桐原さんをきもちわるいって言ったのは?」

「嫉妬だろうな。良くない感情を感じ取って、気持ち悪く見えたんだろ」

隆はチハルの頭をワシャワシャと撫でながら「よくがんばったな」と言った。
チハルは上目遣いで、隆を見つめている。

「弟くんはモテモテだね。まあ、俺には及ばないけどさ」
さりげなく自分の自慢を入れているところが修二君らしい。
一郎君も私と同じように思ったのか、間髪入れず「自慢することじゃない」と言って呆れている。

そんな中、春樹だけはそんな会話に加わることなく桐原さんの去った方向を見つめていた。

チハルではなく、なぜか私の方を睨むようにして走り去っていった桐原さん。
その目には確かに涙が溢れていた。
春樹もそんな桐原さんの様子が気になっているのかもしれない。

「春樹。ごめんね」
私たちが悪戯半分で作戦を立てたばかりに、こんな結果になってしまった。
もっとよく考えていれば、いい解決方法があったはずだ。
桐原さんに睨まれて当然のことをしてしまったと、私は深く反省する。

「どちらにしろはっきりさせなきゃならなかったんだ」
春樹は私を気遣うように言った。
「でも……」
「許婚のことは知らなかったとはいえ、期待を持たせるような態度をとっていた俺のせいだよ。
本当は、俺と桐原さんとで解決しなくちゃいけない事だったのに」
「春樹…」
春樹はゆっくりと空を見上げる。つられて私も視線を空に向けると秋特有の抜けるような青空が広がっていた。
視線を元に戻すと、春樹が私をじっとみていた。
その顔には、さっきまでの迷いは無くなっている。

「桐原さんにはチハルが彼女じゃないことも話をするよ。誠実に話せばきっと伝わると思う。
きちんと謝って、納得してもらうまで俺は逃げない。もう高村春樹だった頃のような子供じゃないんだからね」

私は……
①黙って頷く
②私も桐原さんに謝りたいと言う
③学校へ急ぐ

180 名前:521[sage] 投稿日:2007/08/03(金) 10:37:14 ID:???
①黙って頷く

「ちょっとまった、いま高村って言わなかったか!?」
私が頷くのと同時に、修二くんが春樹に聞く。

「…ええ、それが?」
「それがって……」
「修二落ち着け。高村なんて珍しい苗字でもないだろう。それより、このままだと遅刻だ」
「そうだな、さすがに二日続けて遅刻ってのは勘弁。歩きながら話そうぜ」
春樹の言葉に修二くんがなんと言っていいかわからない顔をし、一郎くんがそんな修二くんをたしなめ、隆が一郎くんに同意する。
言われて廻りを見ると、すっかり人通りがなくなっている。

「チハル、またストラップになって春樹と一緒にいてくれる?」
「うん!」
春樹にしがみついたままだったチハルは、ポンと軽い音を立てて春樹の手に納まる。春樹はチハルを胸ポケットに入れた。
それを確認して、私たちは歩き出す。

(一郎くんは私たちの会話をちゃんと聞いていなかったからああ言ってたけど…桐原さんは、はっきり高村のおじ様は研究者だって言ってた)
研究者の高村といったら、高村研究所に関係があるとしか思えない。
日曜日に冬馬先輩が言っていた言葉を思い出す。

『優秀な能力者であり、研究者であり、権力者でもある……それが高村の名を持つ者なのです』

あの言葉からいけば、能力者ではない春樹は高村になれなかったということ。
逆を返せば、高村を名乗っている春樹の本当のお父さんは、能力者でもあるということだ。

(なんか、おもわぬ方向から研究所のことが少し分かったかな…)
「愛菜ちゃん?」
いろいろ考えながら歩いていたら、皆から大分遅れてしまっていた。
修二くんの言葉に皆が振り向く。
修二くんはその間に開いてしまった距離を戻ってきて、私の手をとった。

「ほら、急いで」
「あ、うん」
私に手を引かれながら小走りで皆に追いつく。

「ご、ごめん」
皆の足を止めてしまったことを謝ると、修二くん以外複雑そうな視線を投げてくる。
修二くんだけ妙に楽しそうだ。

①「どうしたの?」
②「遅刻しちゃうよ、行こう」
③「……?……!修二くん、手!」

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最終更新:2009年04月02日 09:54