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③守屋さんと話をする

宴の準備を黙って見ていた守屋さんの横顔を、そっと覗き込む。
血を浴び、戦場で敵の命を絶っていた人と同一人物とは思えなかった。

「私、守屋さんってもっと怖い人かと思ってました」
「そうなのか?」
「この陣の雰囲気と一緒で、見た目に騙されてたのかもしれません」
「君には、この陣はどう映ったのかな」
「気のせいかもしれませんけど、守屋さんも兵士の人も……少しだけ楽しそうに見えちゃうんですよね」

守屋さんがすごく怖い人なら、この陣の中がもっと殺伐としているはずだ。
顔をあわせる兵士はみんなは守屋さんに敬意を払っている。
怪我人を診ている時にも、強い絆みたいなものを感じていた事だった。

「楽しそうか。確かに、ここの者達は私についてくる変人ばかりだからな」
「変人ですか?」
「ああ。過酷だった東国への征討の時も、この負け戦にも文句ひとつ漏らさない変わり者ばかりだ。何を考えているのか、さっぱり分からない」
「……守屋さんでも分からないんですか?」
「私を含めて全員、戦場でしか己の居場所を見つけられない無頼漢の集団だからな。常識は通じないのさ」

(戦はよくない事のはずなのに……なんだろう)

文化祭と一緒にするのも変だけど、連帯感みたいなのは似ている気がする。
命を懸けるほどの重い戦いだけど、この陣の雰囲気は辛いものだけじゃないのは分かった。

(こんな考え方、きっと光輝に怒られちゃう。あっ、そういえば……)

「あの、守屋さん」
「何だろうか」
「さっき光輝と一緒いた時、兵の人達の噂を聞いてしまったんですけど……私って守屋さんのお手つきらしいんです」
「なっ……なんだ、それは!」
「あの、お手つきってどういう意味ですか?」

(カルタにしては話の前後が合わないし……)

「君は本当に遊行女婦で間違いないのだろう?」
「まぁ……」

(なんで確認するのかな……)

「君も相当変わった女人だな」
「嬉しくないけど、よく言われます」
「私も若くないのだし……実らぬ想いに整理をつける時期なのかもしれないな」
「守屋さんが言っている人って、出雲の姫様のことですね」
「撫子の君は、心まで見透かす力があるのかな?」
「いいえ。守屋さんの隣で寝言を聞いてしまったので」
「これは……参ったな」

真剣に顔を赤くしている守屋さんを見ていると、少し可笑しくて笑ってしまった。

①光輝を見に行く
②もう少し話をする
③考える

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③考える

けれどのんきに笑っている場合でもない。
まだ宴で何をやるか決めていない。

(うーん、守屋さんは歌や舞って言ってたよね……)
となると、その二つのどちらかをやればいいのだと思うけれど、生憎舞は舞えても、この時代の歌がどういうものか分からないので、歌は歌えない。
そうなると、もう舞を舞うしかないのだけれど……。

(壱与の舞って、宴席で舞っていいような舞なのかな……?)
私が舞える舞は、主に儀式に使うもので宴席で舞うようなものではない。
絶対に舞ってはいけないというものでも無いだろうが、宴席に水を差すことになるのは嫌だ。

(あ……そういえば……)
儀式の舞といえば儀式の舞なのだが、どちらかと言うと祈願する意味合いが強い舞もあった。
平和を願う舞、勝利を祈願する舞などがそれだ。
そういう舞ならば、宴席でも問題ないだろう。

「では、私はすこし片付けなければ行けない仕事があるので失礼する」
「あ、はい」
守屋さんは私を光輝が寝ている部屋の前まで送るとそう言ってまたどこかへ行ってしまった。
室内に入ると、光輝はまだ眠っていた。
相変わらず顔色が悪い。

(やっぱり、この場所も光輝にはつらいのかな……)
光輝のすぐ横に座って、青白い顔に手を伸ばす。
すると、気配に気付いたのか光輝がうっすらと目を開いた。

「光輝、大丈夫?」
「……あぁ」
半分寝ぼけたような声で、光輝は返事をするともそもそと動く。

「こ、光輝?」
光輝は座っている私の膝に頭を乗せて、片方の腕を私の腰にまわすと再度寝入ってしまった。
その様子は怪我をした守屋さんと同じような仕草だ。

(こ、これもきっと無意識だよね……)
きっと身体が辛いのだろう。
しばらくそのままで居ると、明らかに光輝の顔色がよくなっていく。
足が痺れてそろそろ辛くなってきた頃、大分顔色のよくなった光輝が目を開けた。

「……ん?」
「おはよう、光輝」
一瞬ここがどこだか分からなかったのか、ぱちぱちと瞬きをした光輝は私の声に顔を上げる。

「あー、おはよう」
小さくあくびをした光輝はのっそりと起き上がる。
けれど、私からはなれる気は無いのか私の背後に回ると、以前のようにべったりと抱きついてくる。
まだ、完全に回復はしていないのだろう。
私の肩にあごを乗せると、光輝が聞いてくる。

「そういや、守屋に頼まれて芸を披露するんだろ? なにやるんだ?」
具合が悪そうにぐったりしていたけれど、話はきちんと聞いていたらしい。

えーっと……
①平和を願う舞
②勝利を祈る舞
③それ以外の舞

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③それ以外の舞

(兵のみんなが喜ぶのがいいけど……平和の舞、勝利の舞か。他の舞は無いのかな)

私は困り果てて、うーんと唸った。
その様子を、光輝が不思議そうに見ていた。

「愛菜。もしかして、困ってるのか?」
「みんなが喜ぶような舞を披露したいけど、よくわからなくって。実は私、すごく人前が苦手なんだよね」
「遊行女婦なのに人前が苦手なのかよ。でもさ、たしか以前の説明では巫女だって言ってなかったか?」

肩にあごを載せたまま、光輝は視線を向けてきた。
私は仕方なく、怒られない程度に本当の事を話す事にした。

「本当はね……私は高校生なんだ」
「コウコウセイ? 聞いたことない言葉だな」
「だからね、私はウカレメって旅芸人じゃないから、喜ばれる芸なんて分からないんだよ。
けど、せっかくの宴会に水を差すような真似はしたくないから困ってるんだよね」

小学校の学年演劇や文化祭では、私はいつも裏方の仕事に逃げてしまっていた。
今にして思えば、少しでも舞台慣れしておけばよかったと思う。

そういえば、春樹は五年生の時にも白雪姫の王子様役をしていたっけ。
演技も他の子より堂に入っていて、あの後に春樹はラブレターとか結構もらっていた。
何をしても地味な私には、舞台の上での春樹が本当に眩しく見えた。
そんな立派な弟を持てた事が誇らしかったと同時に、少しだけ寂しい気持ちになったのを思い出す。

(舞の話から、春樹のことに考えが変わってるし……)

春樹から逃げるようにして眠ったのに、私は何をやっているのだろう。
家族になった五年前から、春樹について考えている事が多かった。
それなのに、春樹が私を異性として好きかもしれないと、そう考えるだけですごく怖くなってしまう。
どこまでも逃げ出したくなる。

(私って、わがままなのかな……)

自分がズルイような、情けない人間に思えて、大きなため息が漏れた。
大体、精霊とはいえ光輝に抱きしめられている今の状態で、春樹のことを考えるなんてどうかしている。
溜息の意味を勘違いしたのか、光輝は私を覗き込んできた。

「お前、守屋より鬼の力が強いんだから、あいつの言うことなんて聞く必要ないだろ。
困ってるのなら、いっそ宴会に出る必要ないんじゃないのか?」

さっきよりも私を抱きしめる力を強くして、甘えの混じった口調で言葉を続けた。

「ここは負の気が多くて気分が悪いしさ。俺と一緒に森へ戻ろうぜ」

どうしよう……
①ここに居る
②森へ行く
③夢から醒める

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①ここに居る

「駄目。守屋さんと約束したんだから」

私は光輝の手を振り解いて言った。
だけど、光輝は相変わらず腑に落ちないという顔をしていた。

「宴会のことにしたって、守屋が一方的に決めた事じゃないか」
「たしかにそうなんだけど……」
「俺も守屋のことはそんなに嫌いじゃないが、やっている事は許せないんだ。
それなのに、お前がほいほい言いなりになってるのが余計に腹立つんだよ」
「言いなりになんて……なってないもん」
「さっき言いなりになって、死にそうな兵士の治癒をしていただろうが」

(光輝、寝てると思ってたのに気づいてたんだ)

「この戦で、俺の森は穢されたんだ。そんな奴らの味方なんて止めちまえって」
「でも……怪我をした人を放っておけないよ」

たしかに、光輝にとってここの兵士は森を穢す悪い人達だろう。
けれど私は、苦しんでいる人がいるなら、少しでも何かしてあげたいと思っている。
仲間を一人でも多く助けたいと思って、守屋さんも私を頼ったはずだ。
その結果で、光輝の森がもっと穢されてしまうかもしれない。

(わからない。どうすればいいんだろう……)

「悩むなよ」

光輝はまた私をギュッと抱きしめてきた。

「悩むよ。だって、わからないから……」
「大体、どんな理由があろうと戦なんてくだらない事だろ。お前の鬼の力でこの陣を壊しちまおうぜ」
「本気で言ってるの?」
「もちろんだ。俺は分かってるんだからな。お前は誰よりも強い。本気を出せば、この陣だって壊せるはずだ」
「壊す力は……使わないようにしてきたからよく分からないよ」

『程度を超えた力は災いしか生みません』
『その力をどうか、破壊する力ではなく、生かす力として使ってください』
(以前、冬馬先輩が言っていたこと……)

黙った私を覗き込むと、光輝は真面目な顔をする。
そして、ポツリと告白するように話し出した。

「正直に言うとさ。守屋と一緒にいれば、またお前に会える気がしていたんだ。俺は……お前を待っていたんだよ」
「光輝……」
「今の俺じゃどうする事も出来ない。けど、お前には変える力があるんだ」
「でも……」
「胸に手を当ててよく考えてみろよ。お前自身はどうしたいんだ? 戦なんて終わらせて、俺と森に帰ろうぜ」

(私は……どうしたいのかな)

私は……
①考える
②壊す
③壊さない

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③壊さない

「壊さない。」
私の言葉は決まっている。
「なぜだ……。」
光輝に聞き返されようがこれはできない。
未来にいるはずの私が過去の世界を変えるわけにはいかない。
今思えば、ここの人たちを回復させることですら未来が変わっているのかもしれない。
きっとここを潰してしまえば未来は大きく変わる、そんな気がした。
「何を言われてもできないわ……。」

歯がゆそうに光輝の顔が強張る。
「偽善だと思ってる?それは違うよ、光輝に大切な物があるように私にも大切な物があるの。」
「……大切な物。」
「私の世界。ここを潰したら私の世界がなくなっちゃう。
光輝の世界が森であるように私の世界もあるの。」
「俺にはわからない、お前は俺と一緒にいて、俺の世界の住人になればいいじゃないか。」
「ごめんね、それはできない。私は自己中だよね、私の為に光輝の世界を犠牲にしてる。」
私の大事な帰る場所、春樹やお父さん、お義母さんの待つ家、香織ちゃん達と学ぶ学校。

きっと私はあの場所を守る為ならどんな力でも使う。

「私が壊す力を使うとしたら、あの場所を壊そうとするモノ。
きっと私はその為なら躊躇いなく自分の力使えると思う。ほんと、私って自分の為ばっかり……。」
「……。」
光輝の悲しそうな顔を見て私はもう一度ゴメンと頭を下げた。

私はここに関わりすぎてるのかもしれない、
もしかしてこのままだと本当に未来が変わるかも。
でも……彼らの行く末も気になる。

①これまで通り彼らと付き合っていく
②守屋さんとの約束が終わったらもう会わない
③守屋さんとの約束が終わったら遠くから見守る

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②守屋さんとの約束が終わったらもう会わない

(未来に影響を及ぼしてしまう可能性……)

私の夢でタイムパラドックスが起きるのか、全くわからない。
まず、ここが本当に過去なのかも曖昧なのままだ。
夢ということ以外、わからないことだらけの過去かもしれない世界。

(でも可能性があるなら、やっぱり出来ない)

私は現実から逃げ出してきた。
それは、春樹や隆、決別したままの修二くんのことから目を背けてきた結果だ。
すべて解決しなければいけないことばかりだ。
そのためにも、早く自分の居場所に帰らなくてはいけない。

「お前の世界か。……たしか未来から来たって言っていたな」
「光輝、私の言うことをやっと信じてくれたんだ?」
「いや、全然信じてない」

(あらら……)

光輝は、頭をカリカリと掻きながら口を開いた。

「陣は壊さないのか。まぁ、お前が嫌なら仕方がないよな」
「ごめん」

私は光輝を覗き込むと、視線がぶつかった。
その視線は、いろんな感情が入り混じっているようだった。

「愛菜の出した答えなら、謝る必要は無いさ。たとえ森が滅びても、天命だったってことだ」
「光輝……」
「守屋も自陣が陥落するのは分かってるんだ。ずっと凌いできたみたいだったけど、大和が新たな軍を送り込んできたらしいしさ」
「どうして光輝がそんなことを知っているの?」
「守屋自身が言っていた事だし、みんな知ってるよ。ただ、簡単にやられてくれりゃいいのに、踏ん張るから森がよけいに穢されてんだ。
兵力の違いは明らかだし、この戦はじきに終わるだろう。お前が手を下してたら、すぐに早く終わっただろうけどな」
「投降は? そうすれば森もこれ以上穢されず、守屋さん達が生き残る可能性だって……」
「それは無いだろうな」

私からゆっくり身体を離すと、光輝はよろけながら立ち上がった。

「俺は森に帰るぜ。これ以上、空気の悪いところに居られない」

私は……
①光輝を送る
②守屋さんに会いに行く
③夢から覚める

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①光輝を送る

私は出て行く光輝を陣の入口まで見送ることにする。

「じゃあ、そこまで送るよ」
「……好きにすればいいさ」
光輝は私をチラリと見ると先に立って歩き出した。

(もう光輝には会えない気がする……)
ここで分かれたらきっとこの予感は当る。
光輝は立ち上りこそふらついたものの、思ったよりもしっかりした足取りで陣を横切っていく。

「……じゃあ、な」
「うん……」
光輝は『またな』とは言わない。きっと光輝も何か感じているのかもしれない。
光輝は二、三歩進んで、ふと思い出したように振り返った。

「なぁお前、何の舞を舞うか悩んでるって言ってたよな」
「え……、うん」
「じゃあさ、再生の舞を舞ってくれないか?」
「再生の、舞?」
私は壱与の記憶をたどる。確かにそんな舞はあった。

「ダメ、か?」
「ダメじゃないけど……」
「安心しろ、再生の舞はめでたい舞だ。宴席で舞って嫌がられることはないぞ」
「そうなんだ?」
「ああ、頼んだぜ?」
光輝は私の返事も聞かずにさっさと歩いて行ってしまった。

(再生の舞、か……)
穢れてしまったと言う光輝の森の再生を願ってほしいと言うことが一番なのだろう。

「撫子の君?」
「あ、守屋さん……」
ぼんやりしているといつの間にか守屋さんが背後に立っていた。

「光輝が出て行ったようだな」
「はい、ここは空気が良くないから森に戻るって……」
「……光輝についていかなくて良かったのか?」
「舞を舞う約束をしたから……」
「そうだったな……」
守屋さんは、少し笑うと私を促して歩き出す。

「宴の用意ができたので、呼びに来たのだった。
 皆、あなたの芸を楽しみにしている。ところで何の芸をみせてくれるのだ?」

私は……
①平和の舞
②勝利の舞
③再生の舞

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③再生の舞

(光輝のお願いでもあるし、これしかないよね)

「再生の舞にしようかと思います」
「そうか。今から楽しみだ」
「期待しないでください。出来ないかもしれませんし」
「そうなのか?」
「私、まったく舞台慣れしていないんです」
「確認の為にもう一度問いたいが、撫子の君はほんとうに遊行女婦なのか?」
「それは……」

守屋さんはまたしても私に尋ねるように言った。
何度も尋ねられると、嘘が余計に心苦しくなってくる。

「大和の密偵などでは無いと信じたいんだ。君は……私の命の恩人たからね」
「密偵? ち、違いますよ」

私は慌てて否定する。
守屋さんは私を密偵かもしれないと疑っていたようだ。

「では、ただの遊行女婦で間違いないのだな」
「あの……」

(光輝は信じてくれなかったけど……)

「あの、私が出雲の姫様の生まれ変わった姿だと言ったら、信じてくれますか?」
「どういうことだい?」
「壱与が転生して私になったんです。私は未来から来ました」
「生まれ変わり? 輪廻転生のことか……大陸の教えだな」

篝火で明るく照らされた陣の広場に着き、私は守屋さんの隣に腰を下ろす。
もう宴会は始まってていて、酒も入りみんな上機嫌だった。
私は目の前にある葡萄のジュースを一口二口飲む。
横顔の守屋さんを伺い見ると、少し浮かない顔をしていた。

「浮かない顔ですけど、どうかしたんですか?」
「誰から吹き込まれたのかは知らないが、大陸の教えを信じるのは止めなさい」
「大陸の教え?」
「輪廻転生のことだ。人は死ぬと、敵、味方と関係なく黄泉へ行く。そして、祭祀で穢れを浄化しながら、祖霊となる。
別の人間に生まれ変わりはしないのだよ」
「でも……私は不思議な夢を何度もみてきました」

私は今までの予知夢を守屋さんに聞いてもらった。
最初は盃を持ったまま考え込んでいたけれど、ようやく口を開いた。

「黄泉は夜見(ヨミ)、すなわち夢を指すこともある。
夢を見ることは霊魂の放浪と言われているから……黄泉と縁の深い鬼の力をもってすれば過去や未来を覗き見ることも可能かもしれない」

そう言って、守屋さんは濁ったお酒の入った盃を一気に飲み干していた。

(……予知夢も鬼の力だったって事?)

私は……
①もっと尋ねる
②話題を変える
③考える

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①もっと尋ねる

「黄泉と縁の深い鬼の力ってどういうことですか?」
「鬼なのに、君は何も知らないのだな」

守屋さんは少しだけ笑うと、話を続けた。

「元々、鬼は地下の世界である黄泉に住んでいる者達だったのだ。
太古に黄泉から逃げ出した神を追ってそのまま中津国、いわゆる人間の住む地上世界に居ついた。
それが我らの祖先だと言われているのだよ」
「じゃあ、私の予知夢は鬼の力の影響かもしれないということですか?」
「出雲の鬼道師には予知に秀でた者もいたという話だからな」

(使えない予知夢は鬼の力だったんだね)

「あの……話を戻しますけど、守屋さんは生まれ変わりを信じていないんですよね?」
「無論だ」
「即答ですか……」
「ここに集う者達が信じるのは国神だけだ。国神に背いて大陸の他神を敬うなど、たとえ帝であっても許せるものではない」
「帝、ですか?」
「そうだ。帝は大陸の政や文化、宗教をこの国に取り入れようとしている」
「それが許せないんですか?」
「もちろんだ。この国そのものが失われてしまうかもしれない大変な事態だ」
「でも未来では、そうでもないですよ?」
「……一体、どういうことかな」
「私たちの世界では、一年の終わりにお寺に行って、一年の始まりに神社に行ったりします」
「な、なんだそれは……」

守屋さんは信じられないという顔で、私を見る。
お酒を飲んでいるせいか、どことなく頬が赤い。

「何かヘンですか?」
「それで神々はお怒りにならないのか」
「多分……」

守屋さんは黙り込むと、焼いた川魚に齧り付いて、またお酒を飲んでいた。
私は空になった盃に、お酒を注いだ。
そして、酒が入って上機嫌の兵士の人達を見ながら小さく呟くように言った。

「君の話が本当だったとしても……。今更、これだけの人々を巻き込んだ戦を止める訳にはいかないだろうな」
「それは、大和と戦い続けるということですか?」
「鬼の血族を根絶やしにし、愚弄した帝は……やはり倒すべき相手なのだ。
たとえ私を慕い、ついてきてくれるこの者達を利用しても果たさなければならない」

決意の言葉とは裏腹に、守屋さんの横顔は暗く沈んでいる。
私はその顔を覗き見ながら、葡萄のジュースをまた一口、二口飲む。
なんだか身体が少し熱くなってきたような気がする。

①話の続きをする
②飲み物について尋ねる
③舞の話を振る

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①話の続きをする

(もしかして、守屋さんは……)

「私の勘違いかもしれないんですけど、守屋さんは後悔してませんか?」
「後悔か……」

そう言いながら、守屋さんは私の空になった器にジュースを入れてくれた。
癖のある飲み物だけど、意外と美味しい。
私はお礼を言って、また飲みはじめる。

「撫子の君の言うように、私は後悔しているのかもな」
「やっぱり……戦をしてしまったことですか?」
「私怨を廃仏という大義名分にすり替え、大和国に内乱を起こしたが……そのことに後悔はない。
森を荒らして、光輝には随分嫌われてしまったがな」
「じゃあ、何に後悔しているんですか?」
「何も知らずに付いて来てくれる者達を、騙して利用してしまったことに後悔しているのだろう。
ここに集う人間も含め、大和の民はすべて、同属を滅ぼした悪しき民族のはずなのにな」

(詳しくはわからないけど……)

「鬼を滅ぼした民族でも……守屋さんは後悔しているんですよね。
それって……ここにいる人達が守屋さんにとって大切な仲間だからじゃないですか?」

守屋さんは相変わらず、宴会の様子を眺めている。
広場の中央では誰かが楽しそうに踊っていた。
そして、宴会の喧騒にも聞き入っているようだった。

「ここに集う者達は私の仲間か……」
「そうだと思います」
「尾張、駿河、甲斐、信濃……。確かに東征の時も、長い時間を一緒に戦ってきたな。
共に戦場を駆けている時が、生きている実感を一番得られた気もする。
だが、私は鬼で彼らは人間。相容れない存在だ」
「ずっと一緒だった仲間なのに?」
「ああ。人間はみな鬼を恐れてきたし、鬼は人間を蔑んでいた。
出雲国王も和平を望んだのに、大和がそれを裏切った。やはり相容れなかった証拠だよ」
「でも……」
「鬼だと知ったら、ここに集う者達もきっと私の元から離れてしまうさ。
今は何も知らずに共に戦ってくれているがな」

私は……
①「もう鬼にこだわる必要なんてない気がします」
②「でも、帝と壱与はわかりあっていましたよ」
③「じゃあ、守屋さんも人間になってみますか?」
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