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③誰かが入ってきた

「愛菜、さっきはわるかったな……チハル?」
入ってきたのは隆だった。
隆は薄くなったチハルを見ると、怒った顔になり私とチハルを引き剥がす。

「チハル、何をしてる?」
「愛菜ちゃんがね、おなかがすいて弱っちゃうから、ボクを食べてもらうの」
どこまでも無邪気に、チハルが笑う。
けれど、その身体が小さな子供の姿に変わってしまった。最初に会ったときより更に幼い、5歳くらいの男の子。

「愛菜がお前を食べるって、食べたいって言ったのか?」
「ちがうよ?」
「お前が勝手にやったんだな?」
「うん」
「ばかやろう!」
隆の怒号が響いた。家全体を震わせるくらいに大きな声だった。

「お前が愛菜を悲しませてどうする! 俺はコイツを悲しませるためにお前を動けるようにしたわけじゃないんだぞ!!」
「隆さん、一体……チハル?」
隆の怒声に、春樹がやってくる。そして小さなチハルをみて目を丸くした。
先ほどまでの雰囲気は全く無く、弟としての春樹だ。

「でもボクを食べないと愛菜ちゃんが弱っちゃうよ?」
「あのな精霊は確かに鬼に喰われるさ。鬼にとって精霊は極上の食事だからな。でも、コイツは鬼を喰わないって言ったんだ!」
(隆……?)
怒りにまかせて怒鳴る隆の言葉に、私は違和感を感じる。

「コイツがお前を喰いたくないって泣いてるのに気付かなかったのか? お前はそれでも精霊なのか?
 やるにしてもやり方ってもんがあるだろうが! 全部喰わせてどうする、自分の身を危険に晒さない程度に分け与えろよ。
 俺ほどでないにしても、お前だってそれなりに力のある精霊だろうが!」
(隆、何を言ってるの……?)
「隆、何をいってるの?って愛菜ちゃんが言ってるよ」
隆がなぜ怒っているか分からないらしいチハルは、私の思いを口にする。

(なんで、鬼が精霊を食べるって知ってるの?)
「何で鬼が精霊を食べるって知ってるの、って」
「え? なんでって……あれ? なんでだ?」
(それに、隆は人間でしょ? なんで『俺ほどでもない』っていうの?)
チハルが言葉を伝えると、隆はふっと、不思議そうな顔をする。
あの会話をしたのは、光輝とのはずだった。 そして、力が強い精霊も光輝だったはずだ。隆にそっくりな光輝の……。

①(隆は、光輝の生まれ変わりなの?)
②(やっぱりあの夢を隆も見たの?)
③(隆が光輝なら、守屋さんはまさか……)

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②(やっぱりあの夢を隆も見たの?)

そう問おうとしたところで、隆が壁に掛かった時計を見てるのに気づいた。
急がないと遅刻してしまう時間になっている。

「やべっ。もうこんな時間かよ」
「隆さん……修二先輩のことよろしくお願いします」
「わかってるって。あと、チハル」

隆は自分の髪をガリガリと掻いて、しゃがみ込む。
きちんと同じ目線になってから、チハルに話し出した。

「怒鳴って悪かった。だけどな、お前のやろうとしていたのはいけない事なんだ」
「どうして?」
「お前が居なくなっちまったら、愛菜が悲しむだろ?」
「だって、ボクはサキミタマだから……」
「幸御霊だろうと関係ない。チハルはチハルなんだからな」
「ボクが居なくなったら、みんな悲しいの?」
「そうだ。だから、しちゃいけないことなんだ。わかるな?」
「ウン……。わかった」
「よし。約束だからな」

隆はまたチラリと時計を見て、私の横へやってくる。

「さっきは……その…悪かったな。別に困らせようとか、そういうのじゃないから」
(わかってるよ)
「そっか」

隆は安心したように笑うと、ドアの前に立った。

「力づくでも、宗像弟は連れてくるからな」
(ちゃんとお願いして、普通に来てもらってよ)
「努力はするさ」

そう言って、隆は私の部屋から出て行ってしまった。
部屋に残ったのは、私と春樹とチハル。
どこか息苦しいような、重い空気が部屋を覆っている。

私は……
①春樹を見る
②チハルを見る
③隆について考える

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①春樹を見る

(春樹は学校に行かないの?)
「姉さんを一人にするわけにはいかないからね」
(わたしなら大丈夫だよ)
「そう思ってるのは姉さんだけだよ」
(確かに、うごけないけどさ……)
微妙な空気を振り払うように、春樹は以前と全く変わらない調子で話す。

「それに、今日は午前中に、高村の……周防さんがくるだろう? チハルだけじゃ心もとないしね」
(そう言えば、周防さんがきてくれるんだっけ)
夢の中で周防さんと秋人さんが話していた「闇」について詳しく聞きたかったのだ。

「それに姉さんに協力してくれた人だって聞いたから、お礼も言いたい」
春樹はそう言って、少し微笑んだ。

「あと、俺の従兄らしいからね。 もしかしたら子供の頃に会ってるかも知れないけど、俺は覚えていないし……会って見たいって言うのも理由かな」
(そっか、春樹は周防さんに会うの初めてかもしれないんだ)
そう言われると、春樹と周防さんをあわせてあげたくなる。
春樹は微笑んだまま、時計を見てそれからチハルに視線を移した。
チハルはちょこんと首を傾げる。

「チハルおいで、俺にくっついてれば早く力がもどるかもしれない」
「うん!」
小さなチハルはうれしそうに頷くと、春樹に駆け寄ってその足にぎゅっとしがみついた。
そして、ふと不思議そうな顔をして春樹を見上げる。

「春樹……?」
「ん?」
春樹は返事をしながらチハルを抱き上げる。
チハルは春樹の首に手を回してしがみつきながら、首を捻る。

「……なんか………うーん、なんでもない」
「どうしたんだ?」
「たぶん、きのせい」
「? そうか……? じゃあ姉さん、俺、下に居るからなんかあったらチハルに知らせて」
(わかったよ)
春樹はチハルを抱き上げたまま、部屋を出て行く。
途端静まり返った部屋に、私は内心ため息をついた。

(朝からいろいろありすぎだよね……)
私は目を閉じて……

①夢を見た
②これからのことを考えた
③これまでのことを考えた

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③これまでのことを考えた

動かない身体と、大きくなる不安。
みんなに迷惑と心配をかけるだけでなく、チハルさえも犠牲にするところだった。

改めて、隆が私のことを好きと言ってくれた。
春樹が私に対して、家族以上の感情を抱いているかもしれない事を知った。
修二くんも私を想ってくれていた。

(応えることが出来ないから、せめて強くなりたいのに……)

力を得て、迷ってばかりの私のままじゃ駄目だと悟った。
だけど私は私だから、簡単に生き方なんて変えられない。
不器用な性格だから、私でも出来る事をと探し続けてきた。
多少の無茶も承知で、正しいと思ったことをしてきたはずだったのに。

壱与や冬馬先輩や一郎くんに対して、意見したこともあった。
口で言うのは簡単だけど、実行するのはとても難しい。
けど、みんな少しずつ変わっている。
私だけ迷うこと止められない。いつまでも怖がりな弱虫のままだ。

(今は眠ろう……)

出来ることなら、楽しい夢が見たい。
力とか、鬼とか関係ない笑ってみられる素敵な夢がいいな。

そう思いながら夢の中へ落ちていく。

「いくら大連だったあなたでも、現人神に逆えば天罰が下ろうぞ」
「その帝が大陸の教えを信奉し、国神である自らの存在を否定していることに……矛盾を感じないのか」
「現人神の意思ならば従うまで」
「それが最期の言葉か」

目の前には手足に傷を負った大和の兵士と、血に塗れて立つ守屋さんの姿だった。
守屋さんも兵士も会話をしていて、私の存在に気づいていない。
そして、守屋さんの八握剣がゆっくり振り上げられる。

「見るな! 女のお前が見るものじゃない」

視界が閉ざされ、隆そっくりの声が降り注ぐ。

(光輝……)

「離して。あの大和の兵士さんが酷い怪我を……早く行ってあげなくちゃ」
「……駄目だ」
「けど間に合わなくなるよ!」
「行くな。もう遅い」
「どういうこと……?」
「あの鬼は戦いに魅入られちまってるのさ」

光輝は私の目を塞いだまま、吐き捨てるように言った。

①光輝に話しかける
②光輝から逃げる
③守屋さんに話しかける

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①光輝に話しかける

「は、離してよ。光輝!」
「もう遅いって。あの兵士は守屋が殺しちまったからな」
「そんな……」
「殺しあうのは当たり前だろ。あいつら、戦してんだから」
「あの兵士さんは負傷していたんだよ。もう戦えなかったのに……」
「確かに死にかけてたな。だからこそアイツは、楽に死なせてやったんだろ」

光輝はまるで守屋さんを庇うような発言をした。

「楽に死なせるって何? 守屋さんは酷いことをしたのに……」
「酷いのは守屋の軍も大和の軍もみんな一緒だ。感じないか、この空気」
「空気?」
「そうだよ。すっげー生臭い死の匂いさ」

目が塞がれていて、何も見えない。
すぐ傍で感じる光輝の呼吸を真似るように、深く息を吸い込んでみた。

(何も見えないけど……わかる)

鬼になってしまって、嗅覚が敏感になったのか沢山の生臭い匂いを感じる。
辺りに充満していたのは、死臭だ。
この場所だけでも、何十という死の匂いがしていた。

(気持ち、悪い……)

「……酷い匂い」
「だろ? 守屋だけじゃない。みんな戦に魅入られてんのさ」

光輝は目を塞いだまま、私を抱き上げると「守屋」と名前を叫んだ。
足音がして、守屋さんが近づいているのがわかる。

「あなたは……撫子の君」
「陽も沈むし、俺は愛菜を連れてねぐらへ戻るぜ」
「待て。私が陣を構える稲城へ連れて行こう。お前も来るか光輝」
「イナギ?」

聞きなれない言葉に、おうむ返しで私は尋ねる。

「稲城っていったら、稲を積み上げて作った城とか、敵の矢や石を防ぐ防壁とかだろ。
お前、本当に未来から来たみたいに何にも知らないんだな」

光輝はそう言って、楽しそうに笑った。
こんな酷い場所でも、光輝も守屋さんも平然と話しをしている。

どうしよう……
①稲城に行く
②ねぐらに行く
③考える

816
③考える

私は当りに漂う死の匂いに眉を顰めながら迷う。

(それにしても……光輝と守屋さんが一緒に居る理由って何……?)
光輝はあの森を守護する立場に居ると言っていたのに……。
こちらへ来た途端に戦で、周りの風景をきちんと確認していないけれど、ここは森ではない。
守護する場を離れてなぜここに居るのか?
それにこんなに負の感情があふれる場所に居ることは、精霊である光輝にはつらい事のはずだ。

「大丈夫か、愛菜? おい、とりあえずここから離れるぞ。ここは死の匂いがきつすぎる」
「……わかった」
考え込んで返事をしない私を具合が悪くなったと勘違いしたのか、光輝が私を抱えたまま歩き出すのを感じる。
その後を守屋さんの足音がついてくる。
しばらくすると、空気が変わったのを感じた。
耳に入ってくるのは木々の葉が風に揺れる音だけだ。

「ここまで来ればだいぶいいだろ」
その声とともに、視界が明るくなる。夕焼けの赤い光がまぶしくて何度も瞬きして、視界が戻るのを待った。
視界が回復して、私は辺りを見回す。
どうやら、さっきの場所は森のすぐ側だったらしい。
木々がまばらになっていてここが森の外に近い場所なのだと分かる。
そのとき、ふうっと、光輝がため息をついた。
どこかホッとしたようなそのため息は、やはりあの場所は光輝にとってつらい場所だったのだと知るのに充分の重さをもっていた。
そして私はふとまだ光輝に抱き上げられたままなのに気付いてあわてる。

「こ、光輝もう降ろしてくれる?」
「いやだ。少しこうさせろ」
そう言う光輝の顔色は、ものすごく悪い。
思わず光輝の顔に手を当てる。

「大丈夫? すごい具合が悪そう……光輝、精霊なんだからあんな場所に居たらつらいのに……」
「しかたないさ、このバカ共が戦を止めない限りこの森も危険なんだ」
光輝は憎憎しげに守屋さんをにらむ。
守屋さんはその視線をただ受け止める。
光輝は再度ため息をつくと、私の顔をのぞきこんできた。

「とりあえず俺はつかれた。ねぐらにもどる。お前も一緒に行くよな?」

わたしは……
①光輝と行く
②守屋さんと行く
③壱与の元へ行く

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②守屋さんと行く

「私、守屋さんと行くよ。戦をする理由を詳しく聞いてみたいんだ」
「一緒に来ないのか。じゃあ勝手にしろ」
「あ……」
「ん? なんだよ」
「な、なんでもないよ」

隆そっくりの光輝は、ぶっきら棒だけど頼れる存在だった。
出来れば一緒に行動して欲しいけど、顔色を見たら無理は言えない。

(仕方ないか……)

「そんな顔するなって。やっぱり、俺についてきて欲しいんだろ?」
「無理くていいよ。ねぐらでゆっくり休んでね」
「お前がどうしてもって言うなら考えてやってもいいぞ」
「辛そうだし、本当にいいよ」
「だからさ。お前がどうしても付いて来て欲しいってんなら、行ってやるって」
「別に無理しなくてもいいって言ってるのに」
「一緒に来て欲しいんだろ。ハッキリ言えよ。可愛くないな」

私と光輝の会話を黙って聞いていた守屋さんが、痺れを切らしたように話し出す。

「では……私の陣まで案内しようか。光輝はどうする?」
「ちぇっ、仕方ない。コイツのために俺も行ってやるかな」
「本当にいいの?」
「平気だ。さっきの所よりはマシだろうからな」

(光輝、ありがと)

「陣まで少し歩いてもらうが構わないだろうか」
「はい、大丈夫です」
「早くいこうぜ」

太陽はほぼ沈んで、薄暗い中を私たちは歩いていた。
時期が夏だというせいもあるのか、ひぐらしが鳴いている。
森を沿うように進むと丘陵があり、稲を高く積んだ防壁の中に陣があった。

「あの樫の木の奥だ」

守屋さんに案内されたのは、思ったよりも立派な陣屋だった。
土間のような室内に入り、藁の座布団に私たちは腰を下ろした。

どうしよう……
①守屋さんに話しかける
②光輝に話しかける
③辺りを見る

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②光輝に話しかける

「ところで、光輝。身体は平気?」
「ん……ああ」

私にぺったりとくっつくと、光輝は小さく頷く。
話すことすら億劫なのか、私に抱きついたまま目を閉じてしまった。
未だに抱きつかれるのは慣れないけれど、光輝の体力が少しでも回復するのなら仕方がないと諦める。

「あの……守屋さん」
「わかっている。戦について知りたいからここまで来たのだろう?」
「はい」

守屋さんは黙ったまま、あぐらをかき直して私を見る。
上から下まで、私をじっくり観察でもしているようだった。

「な、なんですか。そんなに見られると恥ずかしいんですけど」
「改めて見ると……君は変わった格好をしているな」
「これは制服っていうんです」
「セイフクか。出雲の生き残りにしても、やはり得体が知れないな。
鬼の力がいくら強くても、音も無く消えたり、深手の傷を一瞬で癒すなんて聞いた事が無い。
命の恩人を悪くいうつもりは無いが、まず君の素性を教えてくれないか」

(どうしよう。未来から来たなんて信じてくれないよね)

私は何も言えなくなってしまった。
未来から来たなんて言ったら、光輝みたいに怒ってしまうかもしれない。

「素性は言えないのか。不躾で申し訳ないが、君は遊行女婦なのか?」
「ウカレメ?」
「旅をしながら歌や舞で宴席に興を添える女だ。不可思議な芸といい、おかしな格好といい……遊行女婦ならば合点がいく」

(よくわからないけど、舞は出来るよね……)

「はぁ……」
私はあいまいに返事をして、守屋さんの様子を伺う。
やっと納得したのか、表情の硬さが和らいだ。

「そうか。では今宵は宴を催そう。君の芸を皆の前でみせてもらうぞ」
「えぇ!?」
「士気も上がるというものだ」
「ちょ、ちょっと……」
「では、楽しみにしているぞ」

そう言って、守屋さんは建物から出て行ってしまった。
いつの間にか、私の背中にくっついる光輝は寝息を立てている。

私は……
①守屋さんを追いかける
②光輝を起こす
③考える

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③考える

(なんだか、変なことになっちゃった)

多分、ウカレメっていうのは旅をする芸人みたいなものだろう。
突然現れる私を旅の芸人だと勘違いしたのかもしれない。

(でも……)

光輝に無理をさせてまでここまできたのに、逃げ出すわけにはいかない。
私は眠った光輝を見つめる。

(光輝、しんどそうだったもんね)

今夜の宴は自分でなんとかしないといけない。
確か、守屋さんは舞とか歌とか言っていた。

(歌っていわれても……困った)

ポップスとか、ロックとか、童謡とか歌えばいいんだろうか。
昔だし、和歌とか難しいのを言えっていわれてもわからない。

外からは、兵士が噂する言葉まで聞こえてくる。

「守屋様が遊行女婦を連れてきた。今宵は宴があるらしい」
「ところで、遊行女婦は美人なのか?」
「見たところ、そうでもなかったぞ」
「なんだつまらんな」
「お前では無理だろう。守屋様のお手つきだろうさ」
「しかし、女気のない守屋様が……遊行女婦とは意外なことだな」
「明日は弓が降るかもしれん」
「……それは、冗談にならんぞ」

(なんだか噂されてるし。くじけそうだよ……)

その時、私を呼ぶ声が聞こえた。

①守屋さん
②春樹
③隆

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①守屋さん

「済まないな。少しいいだろうか」

守屋さんは私を手まねきして呼び寄せる。

「なんですか?」
「今宵の宴には参加できない怪我人を診てくれないか。勝手な願いとは思ったのだが、やはり君の手を借りたい」
「怪我をした人を祈祷すればいいですか?」
「ああ。協力してもらえるだろうか」
「わかりました」

(今の私の出来ることって、これくらいだしね)

案内された場所は、怪我人ばかりが集まる簡素な藁ぶきの建物だった。
その中に、数十人という傷ついた兵士が横たわっている。

(これは……)

治る見込みのある人は半分といったところだった。
もう半分の人は衛生的とは言いがたいところに居るせいで、私ではどうしようもないほどになっている。
この場所にも、死の匂いが満ちていた。

「あの……」
「言わなくてもいい。治る見込みのある者だけでいいんだ」
「わかりました」
「……ちょっと待ってくれないか」
「何ですか?」
「治らない者も真似だけでいい。せめて安らぎを与えてやって欲しい」
「痛みを取ることは出来ませんけど、どうしますか?」
「では、眠りを……。一時の安らかな眠りを与えることは出来るか」
「……やってみます」

私は守屋さんに言われるまま、一人ずつに力を使っていく。
たった六、七人を治したところで、私もフラフラになってしまった。

「無理をさせて済まなかった」
「……いいえ。もう少し頑張れるかなと思ったんですけど」
「いや、本当にありがとう。宴までの間、少し休んでくれ」
「やっぱり宴に出なきゃ駄目ですか?」
「宴の後、戦をする理由について語ることを約束しよう。
君が……素性の言えない様な遊行女婦だろうと、撫子の花ように美しく可憐な女人に変わりは無いからな」

そう言って、守屋さんは優しく私の手を取る。
(真顔でまた恥ずかしい言葉を……すごく痒いよ……)

守屋さんと一緒に建物に戻る時、今晩の宴の準備の様子を目にした。
この陣も戦場なんだけど、思ったよりも雰囲気は明るくて、少しだけ安心する。

①戻って休む
②陣の様子を見たいという
③守屋さんと話をする

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