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801
②隆

「愛菜、起きてるか? ……って、わかんねーなこれじゃ」
近づいてくる気配がして、隆の手が頬に触れた。
つんつんとつつく指がむずがゆいが身体は動かない。

「でも、起きてる気はするんだよな」
隆は言いながら頬をつつくのを止めない。

(なにしてんのよ隆?)
「……夢を見たんだ」
ふと、隆が低く呟く。ぎりぎり聞き取れるかどうかの呟きだ。

「お前が消える夢だ。 ただの夢だって分かってるけど……」
言葉と共に頬をつつく指が止まり、しばらくして手が額に当てられる。

「……ふと思ったんだけどさ、お前っていま人形と同じような状況じゃないか?」
(なにいってるの?)
「だから、試しに力をつかって見ることにする。人相手になんて使ったことないけどさ」
(ちょっと、それって危なくないの!?)
「ま、ダメ元ってやつだよな」
そう言って隆が沈黙する。

(隆!?)
額に当てられた隆の手がだんだんと熱くなっていく気がする。

(愛菜、お願いだから、元に戻ってくれよ!)
その熱に比例するように、隆の想いが流れ込んでくる。

(このままなんて許さないからな! 目を覚ませ!)
(隆……)
(お願いだ! 目を、開けてくれっ!)
隆の絶叫が頭に響く。

(愛菜っ!)
ふっと、視界が明るくなる。
私は驚いて瞬きした。

(あれ? 目開いてる?)
確かに自分の部屋の天井が見える。そして隆の腕。
けれど瞼は動くが、眼球を動かすことが出来ない。身体もやはり動かなかった。

「愛菜?」
隆の声が聞こえてそちらを見ようとするが、やはり動かせるのは瞼だけだった。
そんな私に気付いたのか、隆が覗きこんでくる。

「見えてるか?」
(うん)
私は返事をするように瞬きする。

「目だけ……ってか瞼だけかよ……まあ、起きてるのか寝てるのか分からない状況よりはましか?」
隆が苦笑する。
確かに瞼が動くだけで、全く動けないよりはマシだ。意思表示も多少はできるだろう。

①(でも、これじゃチハルを通すのとかわらないよ……)
②(ちょっと、もっと動けるようにならないの!?)
③(隆には感謝しないとね)

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③(隆には感謝しないとね)

私は隆にお礼を言うように、瞬きをした。

「喜んでんのかな。まぁ、いいか。
そういえば、喉渇いてないか? 水でも持ってきてやろうか?」

(うん。お願い)

「ちょっと待ってろよ」

そう言って、隆は私の部屋から出て行った。
時計を見ると、七時を少し過ぎていた。
眩しい朝日に、小鳥のさえずりも聞こえる。

(ということは、朝か……)

しばらくして、隆がコップに水を汲んで戻ってきた。
手にはタオルも持っている。

「春樹のやつ、朝飯つくってたぞ。お前も食えるといいのにな」

隆はベッドに座ると、背後から私をひょいと抱き上げ、自分の膝の上に座らせた。
私は力なく、隆に身を預ける形になった。

「なんだか、さっきの夢の続きみたいだな。
お前の身体が動かないから、暴れる心配はないけどさ」

(隆は……私と同じ夢をみていたの?)

「ほら、飲めるか?」

私は顎をつかまれ、くっと顔を持ち上げられる。
タオルで顔を支えられたまま、口許にグラスが近づく。

「口をあけ……るわけないか。突然、噛んだりするなよ」

顎を支えていた隆の指が、私の歯列をこじ開けた。
そして、口の端から、少しずつ水が注ぎ込まれる。

私は……
①水を飲むことができた
②水を飲むことが出来ない
③隆を睨む

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②水を飲むことが出来ない

水は口に入ってくるが、それを飲み込む動作が出来ない。
結局水は口の端から流れ落ちてしまう。

「ダメか……」
隆はタオルで口元をふいてくれる。。
私はだんだん情けなくなってきた。自分では身体一つ動かせず、意思を伝えることもほとんど出来ない。
皆に迷惑をかけてばかりいる……そう思ったら、視界が歪んだ。

(あ、泣くことは出来るんだ……)
「うわ、泣くなよ……」
あわてた隆が、とっさにタオルで涙をぬぐってくれる。
けれど涙はなかなか止まらない。

(ごめん隆、すぐ止めるから)
私はこれ以上涙が流れないように目を瞑る。
ふっとタオルの感触が消えたと思ったら、今度は隆の手が涙をぬぐう。
もう片方の手が、私を支えながらあやすようにぽんぽんとリズムを刻んでいる。

「そうだよな、不安だよな。声も出せなくて自分の意思じゃ身体が動かないんだもんな」
隆の言葉に、私はものすごく不安だったのを自覚する。
そう思ったら余計に涙が止まらなくなった。
修二くんと契約を終えれば、元に戻る。
けれど、その修二くんと契約できるかどうかは分からない。
昨日あんな別れ方をしてしまったから、不安は大きくなるばかりだ。

「大丈夫、元に戻るさ。何があっても宗像弟をつれてくる」
さすが幼馴染といったところか。私と修二くんの間に何があったのか知らないだろうけれど、何かを感じ取ったのかもしれない。

(結構鈍感なのに、変な所で鋭いよね隆って)
そう思うと可笑しくなった。そのおかげか、涙がひいていく。
目を開けると、少し心配そうな隆の顔があった。
私が目を開けたのを見ると、隆は少し真面目な顔になる。

「もしお前がずっとこのままでも……」
隆はまだ少し濡れている私の頬を撫でる。
そして、隆が口を開こうとしたその時、ノックの音と共に部屋の戸が開く音がした。

「っ!」
驚いたように、隆が顔をそちらへ向ける。
その顔がかすかに赤い。

入ってきたのは……
①春樹
②チハル
③周防
④香織

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①春樹

「姉さん……入るよ……」

そう言いながら入ってきた春樹が一瞬、私たちを見て固まった。
ドアを閉めると目を見開いて、口を開く。

「何を……やってるんです…か…」

呆然と立ち尽くす春樹に、隆は何も答えなかった。
ただ、入ってきた春樹をジッと見つめている。

「動くことのできない姉さんに……一体、何を…して…」

春樹は信じられないという顔で、ゆっくり私たちに近づく。

(ちょっと待って、春樹。隆はお水を飲ませてくれていたんだよ)

春樹は何か勘違いをしているみたいだ。
ベッドの上で密着している今の状況を見たら、驚くのも無理はないだろう。
ましてや私が動くことが出来ないのなら、なお更だ。

(お願い、隆。春樹は勘違いをしているんだよ! ちゃんと説明してあげて)
けれど、隆は黙ったまま春樹を見据えているだけだった。

「……教えてください。姉さんに何をしようとしていたんですか…」

春樹は低い声で尋ねながら、隆を睨みつけている。
今にも掴みかかりそうな、張り詰めた緊張感が漂っていた。

「なんでお前に一々説明しなくちゃいけないんだ。出て行けよ…」

隆は私のベッドに座ったまま、春樹を見上げる。
まるで宣戦布告するようも聞こえた。

「まさか姉さんを……」
「春樹。愛菜に対するその執着は何だ。……弟なら、わきまえろよ」
「……なっ」
「愛菜、聞こえているか。俺は決めたぞ。お前がずっとこのままでも一緒に居てやる。
色々あったけど、お前を諦めることなんて出来そうにない。
特に、家族だと言いながら姉貴に依存するような奴だけには……絶対に渡したくないってな」

私は……
①隆を見る
②春樹を見る
③考える

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①隆を見る

(え?)
隆を見ると何かをたくらむような顔をしていた。付き合いの長い私にしか分からないような変化だ。
隆との付き合いが5年の春樹は、頭に血が上っている事もあって気付いていない。

「隆さん……それが本心ですか?」
春樹の声が一段低くなる。

「姉さんを泣かせて、傷つけて、悩ませて……それなのに……」
「その怒りは弟としてか?」
(当たり前じゃない、何言ってるの隆……?)
「…………」
当然肯定すると思っていた春樹は、沈黙する。

「確かに俺は愛菜を泣かせたさ、これからも絶対に泣かさないって約束は出来ないな」
「なっ!」
(隆……?)
「当たり前だろ? 俺たちは違う人間なんだ。知らず知らずの内に傷つけてる事だってある。だから、絶対に泣かさないって約束は出来ない」
きっぱりと隆は言って、それから私を見た。

「だけどずっと一緒にいてやる。きっとこの先、泣かせたり怒らせたりいろいろあるだろうけど、俺はおまえと一緒に進みたい」
「なにを、勝手な、ことを……」
途切れ途切れの春樹の声が震えている。

「勝手? そうかもな。だけど俺はちゃんと愛菜に自分の気持ちを伝えたぞ。お前はどうなんだ?」
「なにを……」
「お前は何も言っていないだろう。そのお前が何かを言う権利なんて無いんだよ」
「……!」
(!?)
隆はそう言い切るとそっと私に顔を近づけて来た。そして春樹に見えないようにそっと目配せする。

(なに……一体?)
「隆さん!」
春樹の怒声が聞こえ、ぐいっと身体が引っ張られたと思うと、私は春樹の腕の中にいた。

「俺の姉さんに触らないでください!」
「『お前の』愛菜じゃないだろう?」
「……っ!俺は……っ」
「いい加減素直に言っちまえ。じゃないとこいつは一生気付かない」
「なにを……」
「まだとぼけるつもりか? お前はコイツを信じてないんだな」
「そんなことは……」
「じゃあ、何でそんなにかたくなに隠すんだ? 俺はお前の挑戦も受けて立つぜ?」
なぜ二人がこんな喧嘩を始めるのか分からない。
春樹の腕が震えているのが伝わってくる。

①チハルに助けを求める
②このまま見守る
③怒る

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②このまま見守る

「だけど……俺は……っ」

春樹は次の言葉が出てこないのか、唇をかみ締めている。

「だけど何だよ? このままじゃ、本当に俺が奪っちまうぞ。コイツと俺はずっと一緒に居たんだからな」

隆は不敵に笑うと、春樹を見据える。
ごくたまに見せる、隆の本気の目だ。

「そんな簡単な問題じゃないんだ……。もしも……俺が……」
「怖気づいたか。お前はやっぱりその程度ってことだな」
「認められない……俺だけ満足……周りが……きっと不幸にさせる……」

春樹の言葉は途切れ途切れで、よく聞き取れない。
ただ、私を包む腕が痛いくらいに強くなっていく。

「そうやって一生悩んでればいいさ。姉弟ってつながりに、すがって怯えてろ。
何かを壊さなきゃ、得られないものもあるんだ」
「そんなこと……言われなくても…分かってる」
「壊す勇気も無いんだろ。それなら、分かっていないのと一緒のことだ」

隆が完全に春樹を言い負かしていた。
春樹は隆の言葉に、胸を貫かれ、打ちのめされている。

「春樹。俺はそんなにお人よしでもなければ、善人でもない。
だが、お前が居ない時にコイツに告白するのは公平じゃないと思っただけだ」
「隆、さん……」
「俺の気持ちに嘘は無い。俺は愛菜が好きだ」

(隆……)

「さあ、はっきりさせろ。お前はどうなんだ、春樹」

私の頬に、一つまた一つと雫が落ちる。
春樹は身体を震わせて、涙を流していた。

「やっと手に入れたんだ……。穏やかで……満ち足りた……。
あの日から守ってみせると誓ったんだ……家族を……。
だけど……なんで……こんな気持ち……間違ってる……押し殺すしか無いんです……」

「言いたいことはそれだけか」

隆の言葉に、春樹はようやく顔を上げる。
その目には、涙は消えていた。

「後ろ指を刺されるような幸せは、本当の幸せなんかじゃない。
人格を否定されるほど虐げられた事の無い隆さんには、分からない感情かもしれない。
たとえお互いの気持ちが通じ合ったとしても……きっと周りがそれを許さないと思います。
周りから認められない苦しみで、一番大切な人を壊すわけにはいかないんです。
だから、どれだけ苦しくても……俺は……家族として見守ることを選びます」

私は……
①チハルに助けを求める
②このまま見守る
③怒る

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②このまま見守る

隆は春樹の言葉に一つため息を付いた。

「まったく、お前も強情だな。まあ、一つ教えておいてやるよ。今のお前を見たら確信した。
決定的な打撃を喰らわないためにちゃんと調べられなかったんだろうが……」
隆は、一歩春樹に近づく。

「お前達は本当の姉弟じゃない。戸籍上どうなっていようと、血のつながりが無いのは確かだ。だから…」
そういって、隆は春樹の耳元に何かをささやく。
私には何を言っているか聞こえなかったが、隆のささやきに春樹が大きく動揺したのが分かった。

「ってことでな、後ろ指刺されるようなことにはならないんだよ。
 だいたい、周りってなんだ? お前の両親か? そんなわけ無いよな。 
 なら友達か? お前が知り合った奴らってのは、そんなに信用できない奴らばっかりだったのか?」
隆は春樹をまっすぐに見つめて問う。
けれど、すぐに苦笑した。

「まったく、俺はなにやってるんだろうなぁ? 敵に塩をおくりまくりだぜ」
「隆、さん……」
「さあ、これを聞いてもお前はさっきと同じ言葉を言うのか?」
春樹の腕が一瞬大きく揺れた。

「俺は……」
「ねぇ、春樹、ご飯まだ?」
と、そのとき扉が開く音とともにのんきなチハルの声が乱入してきた。
張り詰めた空気が、一瞬にして瓦解する。

私は……
①春樹の言葉の続きを知りたい
②春樹の言葉の続きを知りたくない
③自分の考えを伝えたい

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②春樹の言葉の続きを知りたくない

(春樹は『いい弟』でいたいって言ってたよね)
(本当は、ずっと私の事を異性として見ていたの?)

春樹に対して、私は恋にも近い感情や、恋人に持つような嫉妬も抱いていた。
異性として意識することも多かった。
けど……

けど、それで春樹の恋人になれるのかと問われれば分からなくなる。
頭がすごく混乱する。

ケーキ屋で香織ちゃんも言っていたけど、姉弟だからと言って後ろ指をさされる関係では無いと言っていた。
戸籍上の血縁関係が無いから大丈夫というけれど、実際は単純でもないような気がする。

姉弟である私たちを知っている人は沢山の居る。仮に、どちらかが戸籍から抜けたとしてもそれは付き纏う。
隆や香織ちゃんみたいな考えの人ばかりではない。倫理的に構える人もいるはずだ。

(弟と姉……春樹と私……)

「俺は……」

春樹の声がする。
この答えを聞いてしまった瞬間、私たちが築き上げてきた関係が崩れてしまう気がする。

(怖い……。聞きたくない……)

「俺は、姉さんのことが――」
「こわい。ききたくないって愛菜ちゃんがお話ししてるよ」

気持ちを読んだのか、チハルが私の心を代弁する。

「愛菜。お前まで怖がるのか?」

隆は困ったように、私を見つめる。

(すごく怖いよ。もうこの話は二度としないで……)

「姉さん……」

春樹の腕の中にいるのも怖い。
安心だったはずの場所なのに、今はそんな風に思えない。

(チハル。二人に出て行くように言って)

私たちの関係を見かねて、隆は白黒はっきりつけさせてやりたいと思ったのだろう。
隆なりの優しさだというのも、理解できる。
けど、春樹に対して抱く感情はもっとずっと複雑なのだ。

チハルと二人だけになった部屋で、私はベッドに寝かされる。

どうしよう……
①春樹のことを考える
②隆のことを考える
③チハルに話しかける

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③チハルに話しかける

(ごめんねチハル)
「なんで謝るの?」
私を運ぶために大きな姿のチハルが、私を覗きこんでくる。
何も疑うことを知らないような綺麗な目が私を見返す。

(……うん、なんとなく、ね)
本当に謝りたい相手はチハルではないと自分でも分かっているけれど、誰かに謝りたかったのだ。

「変な愛菜ちゃん」
チハルは不思議そうな顔をして、それからにっこり笑う。

「あ、そうだ。愛菜ちゃんおなかすいてない?」
(え……まぁ、すいてるけど……)
結局昨日の夜も何も食べていないが、食べることが出来ないのだから仕方がない。

「それじゃあ……」
チハルは私を座らせると、私を支えたまま私の正面に座った。

(チハル?)
「んとね、神様に聞いたんだ」
(なにを?)
「今愛菜ちゃんは、人の食事が出来なくてだんだん弱って来てるって。このままじゃ、ダメなんだって」
確かに、このままだと餓死してしまうかもしれない。
病院へいけば、生命維持に必要な処置は取れるだろうけれど……。

「それでね愛菜ちゃんが弱っちゃうのはイヤだって言ったら、ボクだったら愛菜ちゃんが弱らないように出来るって教えてくれたの」
(え……?)
「んとね、愛菜ちゃんはオニになったから、精霊を食べられるんだよ?」
にっこりとチハルが爆弾発言をする。
そう言えば夢のなかで、守屋さんと光輝がそんなことを言っていた。

(ちょ、ちょっとまって! 食べるって、私がチハルを食べるわけ無いじゃない!)
「でもね、ボクを食べないと愛菜ちゃんが弱っちゃうんだ」
(だからって、食べるなんて出来ないよ。チハルはどうなっちゃうの?)
「ボク? ボクは大丈夫だよ。だって愛菜ちゃんが側にいるもん」
チハルは、そう言って私の顔を不器用に撫でる。
すると、自分の意思では動かすことの出来なかった口がわずかに開く。

(!)
驚く私に、チハルは私を抱き締めるように身を寄せてきた。私の口は丁度チハルの首筋に当る。

(……あ)
一瞬何が起こったのか分からなかった。
口はチハルの首筋に当ったまま、動いてはいない。
けれど確実にチハルから何かを吸い取っていた。それが身体の中を巡っていくと、空腹が満たされるのを感じる。
そしてそれを感じた瞬間、私は思った以上に空腹だったのだと自覚した。
鬼の本能がもっとそれをほしがり、人間としての理性が止めてと叫ぶ。

①(もっとほしいな)
②(チハル離れて!)

810
②(チハル離れて!)

チハルに向って叫ぶ。けれど、心とは裏腹に空腹が満たされていくのを感じた。
心を読んでいるはずなのに、チハルは更に身を寄せてくる。

(駄目よ! 私から離れて!)

「愛菜ちゃん。ボクね、すごーくうれしかったんだよ。
みんなといっしょにご飯をたべたり、おはなしするのってたのしいんだもん」

無邪気に微笑む様子は、大きな身体でも小さい時と全く変わり無い。
ものまねの上手なチハルは、私と同じ仕草でゆっくり前髪を撫でてくれる。

(早く離れて……)

「隆はボクを起こしてくれたから、おとうさんみたいにおもってたよ。
春樹は愛菜ちゃんとすごく仲良しできらいだったけど、ご飯くれるからすきになったよ。
パパさんもママさんもみんなだいすき……」

チハルの身体が徐々に薄くなっている。
私を撫でる大きな手が、透けて見えた。
これ以上はいけないと心は叫んでいるのに、チハルから離れることが出来ない。

(私……どうすれば……いいの……)

「いつも泣いていた小さな愛菜ちゃんは、もうこんなに大きいよ。だから、大丈夫」

(大丈夫じゃないよ。チハルが支えてくれたから、お母さんが居なくなっても頑張れたのに……)

「ボクはまた「くまちゃん」に戻るだけだもん。
大きな愛菜ちゃんは、もうぬいぐるみのボクに頼らなくても平気だよね」

(だめ……行かないで……)

①自力で離れる
②チハルを見る
③誰かが入ってきた
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