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①守屋さん。はやく元気になってください

祈りながら、少しずつ鬼の力も送る。
すると、熱に反応したのか鬼の力に反応したのか守屋さんは身じろぎすると、私をぎゅっと抱きしめてきた。
守屋さんの冷たい身体に私の体温が奪われ、思わず身震いする。
その目は堅く閉ざされたままだ。

(無意識、なのかな?)
きっと本能がそうさせたんだろう。 
自分で熱を生むことが出来ない身体が、近くにある熱を欲するのは自然のことだ。
私は守屋さんの顔を見る。こころもちさっきより顔色がいいように見えた。

(この場所のおかげでもあるかな?)
さっきまで眉間に刻まれていた皺も、いまは無く呼吸も少し穏やかになっている。
と、守屋さんの瞼がピクリと動いた。
それからゆっくりと目が開いて、守屋さんを見ていた私と視線が合う。
守屋さんは、どこかぼんやりした感じで瞬きをすると少し首をかしげた。

「……ひ、め?」
「え?(ひめ、って姫のことよね……壱与と間違えてる?)」
守屋さんは鬼なのだから、私が知らなくても壱与を知っている可能性はある。
私が鬼の力を分けているから、意識がまだはっきりしていない守屋さんは勘違いしているのかもしれない。

「姫、申し訳、ありません、王をお守り、できず…………生き恥を……さらし……」
やはり私を壱与と間違えているようだ。

「……人間と偽り姫を……お助け……と………鬼の国を………お慕い……」
途切れ途切れにの言葉にが、だんだんと小さくなっていく。
最後の方の言葉はほとんど聞こえず、何を言っているのかわからなかった。
そして開いていた目もまたゆっくりと閉じられる。

(出雲の王様を守っていた人、なのかな?)
光輝の言葉を思い出す。
守屋さんの手は剣を扱う手だと。かなりの使い手であろうとも。
それに、少し気になる言葉を言っていた。

①人間と偽って、って……
②鬼の国を、って……
③お慕い、って……

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①人間と偽って、って……

人間と偽って、鬼の守屋さんは何をしていたというか。
姫がもし壱与なら、やっぱり出雲の人なのだろう。
壱与の記憶には居ない人だけど、人間と偽って壱与を助けようとしていたのかもしれない。

(でも、出雲国王の側近だったら、わかるはずなんだけどな)

目の前の守屋さんは出雲国の王族でもなければ、側近だという覚えもない。
仮に出雲以外の鬼、例えば石見国出身である高村の血筋だとすると助ける動機がわからなくなる。
動機も素性も謎は深まるばかりだ。

ずっと抱きしめ続けていると、守屋さんの足元にある硬い物体に気づいた。
金属のような冷たさがある。

(何だろ……重い……)

引っ張り出してみると、守屋さんが下げていた剣だった。
きっと守屋さんが扱っている剣なのだろう。

(あれ……この剣に見覚えがある……)

青銅の剣に、赤いメノウがはめ込まれていた。
握り拳八個分の長さをもった――。

(これ……八握剣だ!!)

赤い光こそなかったけれど、これは間違いなく八握剣だった。
大きさも形も、春樹の手にあったものと全く同じだ。
十種の神宝を持っているということは、この人は……。

「命を救ってくれた事に感謝する。だが、その剣には触れないで頂きたい……」

私が顔を上げると、目覚めた守屋さんが私を見ている。
まだ顔色は青白く、唇の色も悪い。

「ごめんなさい。すごく立派な剣だったから」

私は急いで、守屋さんに剣を返した。

(混乱する。何がどうなっているの?)

①守屋さんに素性を尋ねる
②守屋さんに寝ているように言う
③考えを整理する

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②守屋さんに寝ているように言う

「まだ無理をしないで寝ていてください」
「いや、私は行かなくては……」
「だめです」
起き上がろうとする守屋さんを、私は抱きつくことで阻止する。

「離していただけませんか」
「嫌です。このまま行かせたら駄目って気がします」
私は守屋さんに返した八握剣を見る。
この剣は確かに八握剣だった。そう、過去形だ。
この剣はすでに抜け殻。力のない、ただの剣だ。
神器が開放されたときに、神宝の力も解放されているのを私は知っている。
八握剣に力が残っているなら、守屋さんに出会ったときに私が気付いていただろう。

「この剣がなにか?」
私の視線が剣に向いていることに気付いた守屋さんが、剣を私の視界から消すように隠す。

「守屋さんはその剣が何か知っていて持っているんですか?」
「なぜそんなことを聞く……」
守屋さんの声が一段低くなる。

「私はその剣を知っています」
「……まさか」
守屋さんはいま始めて気付いたというように、私を見る。

「はい、私も鬼です」
私はとりあえず頷き、止めていた鬼の力を守屋さんへ送る。
基本的に鬼と人を外見で見分ける方法はない。
力を隠し生活していれば、鬼と気付かれることもほとんどない。
鬼はその性質上人間よりも容姿が優れていることが多い。
だが、それだって王族以外の鬼は人より少し整っているという程度だ。
人間に紛れ込むのもそう難しいことではない。

「一族以外にまだ生き残りがいたとは……剣を知っていると言う事は出雲の出身だろうか?」
私はそれにあいまいに頷く。
壱与の生まれ変わりなのだから、出雲の出身の鬼というのは嘘にはならないだろう。

「そうか、ならば私が剣を持っているのを不思議に思うのも道理だ」
守屋さんは置きあがろうとするのをとりあえず止めてくれた。
身体の力を抜いて、私を見る。

(守屋さんは、王以外神宝のことを良く知らないって、知らないんだ……)
「だが、出雲の鬼は姫以外……ああ、すまない」
「いえ……」
「だが、姫以外にも生き残りがいたことは喜ぶべきこと」
守屋さんは素直に喜んでいるようだ。

えっと……
①「あの、どうして剣を持っているんですか?」
②「守屋さんはどこの一族なんですか?」
③「帝と何があったんですか?」

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①「あの、どうして剣を持っているんですか?」

「託されたのだ。だから私は……。
しかし、あの方の墓前で勝利を誓ったにもかかわらず、敗走を強いられている。
すべて私が至らなかった結果だ」

守屋さんは私の質問に答えると、辛そうに息を吐く。
その様子から、戦況がかなり不利に動いているのだろうと想像できた。

(あの方って……)

「あの方というのは、出雲国王のことですか?」
「君は出雲の生き残りだったな。そうだ。私は亡き出雲国王に神宝を託された。
いや、託されたというより返還されたと言うべきかもしれない」

(返還ってことはやっぱり……)

「あなたは石見国の出身ですね」
「……君は一体、何者だ」

守屋さんの顔が険しくなった。
私は何も言えず黙っていると、ふと額に手が置かれた。

「済まない。君は命の恩人だったな。無礼を許して欲しい」
「いいえ……」

(そうだ。なぜ守屋さんは戦っているのだろう)

「守屋さんはなぜ戦をしているんですか?」
「表向きは大和における国家祭祀の対立による戦ということになっている」
「表向き?」

私は意味が分からないまま、おうむ返しで尋ねる。

「私のような鬼が人間と偽り、大連にまで上りつめ、謀反を起こそうとしていたのだ。
それが他国に知られては、統一国家への妨げになるだろうからな」

(よく分からないけど、守屋さんは大和の偉い人なのかな)
私が考えていると、守屋さんは言葉を続ける。

「私は……この八握剣で大和に抗うことが、
無念のまま亡くなっていった同属達への弔いとなる考えているのだよ」

守屋さんは剣に触れ、一瞬、苦渋に耐えるような顔をしていた。

(守屋さん……)

私は……
①考えをまとめる
②守屋さんを見る
③声が聞こえた

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③声が聞こえた

「……!」
名前を呼ばれた気がして、耳を澄ます。
すると、とんとんと軽い音が下の方からだんだんとこちらに近づいて来る。

(まさか、光輝?)
怒ってどこかへ行ってしまったと思っていたが、戻ってきたらしい。
そうおもって私は我にかえる。
私はあわてて枯れ草の上にかけてあったブラウスを取ると、急いで身に付ける。
最後のボタンをあわてて止めたところに、光輝がひょっこりと顔をのぞかせた。

「おい、愛菜!」
ぶっきらぼうに、名前を呼ばれる。
そういえば、光輝に名前を呼ばれるのはこれが初めてかもしれないと思いつつ私は平静を装って、返事をする。
緊急事態だったとはいえ、男の人と寝ていたことを知られるのは恥ずかしい。

「な、なに?」
「………」
光輝は無言でずかずかと近づいてきた。
その手には、藁のような物を抱えている。

「この声は助けて…………だが……精霊……?」
「あ、あの………」
「なんだ、鬼、目が覚めたのか」
光輝は守屋さん見て、その上に乗せられた枯れ草に一瞬眉をひょいと上げる。
それからふんっと、鼻をならすと無造作に守屋さんの上に持ってきた藁をかけた。
守屋さんはというと、信じられないと言うように光輝を見ている。

「光輝……、わざわざ探してきてくれたの?」
「……なんだよ」
「ありがとう!」
私はうれしくなってお礼を言う。光輝は心持赤くなりながら、少しだけ視線を逸らし言う。

「礼を言われる筋合いは無いな! これは交換条件だ」
「交換条件?」
「そうだ。 今日一日お前は俺の言う事をきけよ」
「え?」
言うや否や私の後にどさりとすわると、背後から私をひょいと抱き上げ、自分の膝の上に座らせた。
そして後から抱き締める様に手を回すと、仕上げとばかりに私の肩にアゴをのせる。

「え? ちょっ?」
「やっぱりお前は気持ち良いな、今日一日はこうしてるからな」
「精霊が……鬼を……?」
光輝が満足そうに息をつく。光輝の息が顔に当ってくすぐったい。
守屋さんは、半ば起き掛けの姿勢で信じられないものを見たと言う顔で、私たちを見ている。

①「ちょっと光輝!?」
②「守屋さん、どうかしましたか?」
③あきらめてため息をつく

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①「ちょっと光輝!?」

私は光輝の腕から逃れようともがく。
だけど、光輝はがっちりと私に手を回しているのか体が動かない。

「逃げんな」
「で、でも……」
「交換条件だろ。大人しくしてろって」
「交換条件って……そんな約束した憶えはないよ」
「これでも妥協してんだぞ。お前がずっと一緒にはいられないっていうから、
今日一日だけで我慢してやったんだからな」
「ちょっと、光輝……離して」

(チハルだと平気なのに……)

やっぱり、隆に似すぎているというのがいけない。
チハルというより、やっぱり隆に思えてしまう。

「精霊よ。命を助けてくれたことには感謝する。
だが、嫌がっている女性を無理やりというのは良くない。
離してあげるべきだろう」

守屋さんは光輝に向って、はっきりと言った。

「邪魔すんな。死にかけの鬼は黙ってろ」

光輝は私の体を抱いたまま、凄む。
私にまわされた腕の力が、より強くなった。

「怪我をしていても、鬼の私が精霊ごときに討たれはしない。
その娘は我が身を捧げるように私を温めてくれたのだ……」

腕で体を支えながらなんとか中腰になると、守屋さんはただの剣になった八握剣を持つ。
そして、言葉を続けた。

「その可憐に咲く撫子の花を無理に手折るのであれば、黙って見過ごすわけにはいかない」

ちょ、ちょっと……
①守屋さんを止める
②光輝を説得する
③ナデシコの花って……まさか私のこと?

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③ナデシコの花って……まさか私のこと?

あまりの言葉に思考が停止する。
自分はごくごく平凡で、花にたとえられるほど美人でも可愛くもない自覚がある。

「なに言ってるんだ、おまえバカだろう? コイツは花なんかじゃない」
心底バカにしたような光輝の言葉に、私は内心一緒に頷づく。

(そ、そうだよ、私がナデシコだなんて……)
「コイツは俺にとっては太陽に等しい」
「え!?」
光輝の爆弾発言に、思わず顔を光輝に向ける。
光輝は驚いて振り向いた私にうれしそうに頬ずりしてくる。

(な、な、なにいってるの? 光輝っ!?)
「本当は誰にも渡したくないけど、こいつは太陽だからな。
 俺だけの物に出来ないんだ。だから今日一日だけで我慢する」
少し前に俺の女になれと言った事を棚に上げて、光輝は言う。

「一日も何も、嫌がっているのだから放せと言っている」
「断る。それに鬼、アンタじゃ俺を倒せないぜ? 俺との力の差を見切れないようじゃまだまだ甘いな」
光輝は、余裕たっぷりに言うと。気持ちよさそうに目を細める。

(光輝って本当に強い精霊なんだ……)
とりあえず、守屋さんや光輝の問題発言は意図的に頭から追い出す。
そうでもしないと恥ずかしすぎていたたまれない。

「それに鬼、お前よりも断然こっちの女の方が力が強いんだぜ? お前分かってないみたいだけどな」
楽しそうに光輝が言うと、守屋さんはまじまじと私を見てそれから悔しそうに顔を顰めた。
私はだんだん守屋さんが可愛そうになってきた。
守屋さんは、石見国では力の強い鬼なのかもしれないが、それでも出雲の鬼の子供よりも弱い力しか持ち合わせていないのが分かる。

(石見国の鬼の力は本当に弱くなっていってるんだ……それにしても)
「光輝、あまりひどいこと言わないで。 怪我人なんだからもっと優しく……」
「あのなあ、お前ほんっっっっっっとうに、変わった奴だな」
「な、何よ、そんなに力いっぱい言わなくても……」
「鬼は精霊の天敵なんだぜ? 鬼は精霊を喰うもんなんだ」
「え?」
私は思わず、守屋さんを見る。 守屋さんは私の視線にその通りだと言うように頷いた。

「だから、精霊が鬼に優しくしてやるなんてありえねーんだよ。 お前の願いだから叶えてやったんじゃないか」
ありがたく思え、と光輝はえらそうに言う。

①「でも、壱与は精霊なんて食べたこと無いよ」
②「私は精霊なんて食べたこと無いよ」
③「……私が光輝を食べるとはおもわないの?」

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③「……私が光輝を食べるとはおもわないの?」

「どうだろ。考えて無かったな」
「でも、私は天敵なんでしょ?」
「そうだなー。もしも、愛菜に喰われそうになったら……とりあえず逃げてみるかな。捕まったら、殴るけど」
「私を?」
「そうだ。お前は太陽みたいだけど、俺もまだ死にたくないからな」
「考えただけで痛そうだね……」
「だから、俺を喰おうなんて思うなよ」

鬼の私は天敵のはずなのに、光輝は相変わらずぴったりとくっついてくる。
自分の強さに自信があるのだろうか。

「じゃあ、守屋さんは精霊を食べちゃうんですか?」
「もちろんだ」
「そ、そうなんですか」

(あっさり肯定されちゃった……)

光輝も守屋さんも、ワイルドというか野性的な人達だ。
自分が飼いならされた現代人だと痛感させられる。
よく考えてみたら、電気も通っていないし、水も汲んでこなければ飲めないのだ。

守屋さんは荒く息を吐き、剣を下ろしていた。
少し無理をしたのか、また顔色が悪くなっている。

「守屋さん。すごく顔色が悪いですよ」
「だが、この精霊が君に悪さをしようとしている。放っては置けない」
「そんなに俺は低俗な精霊じゃないぞ」
「信じられん。撫子の君を離せ」
「ヤダ。コイツは今日一日俺のものなんだ」

(よく聞くとおもちゃを取り合う子供の喧嘩みたい……)

私は……
①面倒なので夢から覚める
②光輝の味方をする
③守屋さんの味方をする

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①面倒なので夢から覚める

「なんか面倒になってきちゃった……戻ろうかな……?」
ぽつりと呟くと、私にべったりくっついていた光輝が反応した。

「おいダメだぞ、今日一日はお前は俺のもんだからな」
「でも、もう帰らないと、みんな心配してるかも……」
現実に一体どれくらいの時間が過ぎているのか分からないけれど、いつもより夢を見ている時間が長い気がする。

「皆? 皆とは、まさかまだ鬼の生き残りが!?」
光輝に続き、守屋さんも私の言葉に反応して必死の形相で私を見る。

「いいえ……、私以外に鬼の生き残りはいません」
高村の一族も鬼としての力は無く、能力者と呼ばれる人たちもすべて人間だ。

「では、貴女はどちらへ戻られると言うのですか?」
「……私を待ってる人の所へ」
未来といっても、さっきの光輝のように信じてくれないような気がした。

「おまえ……!」
不意に光輝の驚く声が聞こえた。

(あ……)
光輝を振り向こうとして、身体が自由になっていることに気付く。
私の身体は確かにそこに存在しているのに、光輝の腕は私を捉えることが出来ない。
私は立ち上がる。

(そういえば、最初に光輝にあった時も……)
あのときも、光輝は私に触れることが出来なかった。

「撫子の君!」
守屋さんも顔を顰めながら私に手を伸ばすが、やはりその手は私を捕まえることが出来なかった。

「まてよ!」
「お待ちくださいっ!」
二人の声が耳に届く。けれど私の身体は目が覚めるときと同じように何かに引っ張られるように、上昇する。
二人の驚く顔を見ながら、私はふと浮かんだ心配事を口にする。

「あ、そうだ。守屋さん、光輝を食べないでくださいね。
 光輝も、守屋さんの傷が治るまでここに置いてあげて」
引っ張られるごとに視界は靄のようなものに阻まれて、周りが全く見えなくなる。

「愛菜!」
最後に光輝の叫びだけが耳に届き、ふっと身体に感覚が戻ってくる。

(あ、私の布団かな)
相変わらず身体は動かず、目を開けることも出来ないけれど自分を包むこの感触は間違いなく自分のベッドだ。
誰かいるかと気配を探ってみるけれど、近くには誰もいないようだ。
チハルの気配もない。

どうしよう?
①チハルを呼ぶ
②さっきのことを思い返す
③目を開ける努力をしてみる

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②さっきのことを思い返す

(いつも夢には何か意味があったよね……)

まずは壱与と帝の会話だった。
なんだか大陸だとか宗教だとかの話をしていた。
疫病とか天災とか言っていたし、壱与と帝はとても疲れていたみたいだった。

その後、光輝に出会った。
光輝は精霊で、あの森を守護する者だって言ってた。
あんまり隆に似すぎていて、びっくりしたな。
その後、すぐに怪我をした守屋さんを見つけたんだ。

十種の神宝の所有者で、石見国の鬼の守屋さん。
ということは、やっぱり高村の祖先ってことになるのだと思う。

そういえば守屋さんのうわ言で「人間と偽り姫を……お助け……と………鬼の国を………お慕い……」
と言っていた。

大和の人質になった壱与のために、守屋さんは人間と偽って助けようとしていたのだろうか。
お慕いというのが壱与に向けられたものだったら、余計に救いたかったに違いない。
けど、鬼は滅び、出雲国も無くなってしまった。

「大連にまで上りつめ、謀反を起こそうとしていた」とも教えてくれたっけ。

結局、守屋さんは大和の偉い人になったんだろう。
そして、謀反。帝を亡きものにしようという目的が知られて今は追われる身になったという感じだろうか。

十種の神宝はすでに抜け殻だし、壱与の心は帝のものだ。
壱与を救い出す必要はなくなっているし、鬼の国も無い。
けれど守屋さんは八握剣を持って、大和に抗うと言っていた。

(そういえば……)

最初に会った時、「おやめください…帝…」とも呟いていた。
殺したいほど憎い帝に対して、夢の中であんな言い方をするのだろうか。

(守屋さんの考えが全然分からない)

他には……光輝には太陽、守屋さんにはナデシコとか、むず痒いことを言われたな。
慣れていないし、考えてみるとかなり寒い。
(やめて欲しいな……思い出すだけで背筋が……)

すべてが憶測だし、断片的過ぎてはっきりしない。
とりとめなく考え込んでいると、誰かが部屋に入ってくる気配がした。

その人は……
①春樹
②隆
③周防

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