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1 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/05/20(日) 18:41:45 ID:??? ・リレー形式で話を作れ ・話の最後には選択肢をつけること ・選択肢は1つのみ選ぶこと(複数選択不可) ・次に進める人は選択肢を選んだ後それにあった話を作り、1000レス目でED ・途中にキャラ追加、話まとめなどO.K. ・話を続けるときは名前欄に通し番号を入れること ・今回はトゥルーEDを目指すこと。主要人物の死亡(モブはOK)、誰かとくっつけるのは無し ・450KBを超えたら気づいた人が注意を促すこと ・新規で書き込みする方はwikiを一読すること ▼前スレ 選択肢を選んで1000スレ目でエンディング ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/ggirl/1140272497/ ▼まとめwiki  ttp://www22.atwiki.jp/1000ed/ <<現在までの登場人物>> 大堂愛菜:高校二年の主人公 。予知夢を見る(但し起きると内容は忘れている) 大堂春樹:愛菜の義理の弟(高1)。好きな人がいるらしい。 愛菜よりしっかりものなので兄にみられがち。 湯野宮隆:愛菜の幼馴染。ファントム(ミスト)を操る能力がある(事故後能力発祥)。       モノに宿る八百万の神に働きかける能力もある(先天的能力)。 武     :隆の裏人格(クローン)。ファントム(ミスト)を隆とは別に操ることができる。       存在を組織に知られていないが、組織の命令には逆らえないらしい。 宗像一郎:放送委員の委員長。水野を利用している。「見える力」がある 宗像修二:一郎の双子の弟でテニス部エース。一郎と同じく「見える力」をもっている。        他人を見下しているところがあり不誠実とおもわれているが、愛菜にはなぜか協力的。 近藤先生:厳格だが生徒思いの男性教師。春樹の担任。 水野先生:隆とキスしていた音楽教師。組織の一員? 長谷川香織:愛菜の親友。 御門冬馬:感情表現に乏しい。言葉遣いは丁寧。愛奈の従者(?)。 高村周防:高村研究所の反主流に属するもの。明るいお兄さん的存在。 チハル  :愛奈が隆からもらった熊のぬいぐるみ。隆の力で動くようになる。 大堂志穂:愛菜の実の母。冬馬の名付け親。 こよみ  :冬馬と同じ研究所にいた髪の長い少女らしい。 組織のNO.1:高村研究所のトップ。現在は性別年齢すべて不詳。 その他関連事項は>>2-3あたり 2 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/05/20(日) 18:42:50 ID:??? <未実現の夢> ① >>127 私と修二がキスをしている夢 「……なんだ、ありがとう愛菜ちゃん」 やっと聞こえた声、胸が苦しくなるくらい綺麗に微笑む修二くん。 〈忘れてはいけないこと〉 ・主人公と一郎は放送部、文化祭の準備をしている(もうすぐ文化祭がある) ・能力者は陽か陰の力が偏っていて異性が傍にいないと駄目(双子は例外) ・双子はファントム、隆はミストというものは同じ存在 ・ファントムは生気で強くなる ・御門とは前世に関係あり? ・能力者のまじないを他の人に施すことで  相手に加護を与える(相手に触れること条件) <今までのあらすじ> 愛奈は隆と水野のキスを見て以来隆と疎遠になっていた。 ひょんなことから、隆と水野の関係に一郎が何か関わっているらしいことを知る。 水野が組織に関わっていること。狙っているカギには双子の力が必要なこと。 ファントム(ミスト)の力で人の生気を吸うものもいること。 研究所でのクローン研究などいろいろなことを知り愛奈は、それを解決することを決める。 御門冬馬と本契約を交わし、真実に迫ろうとしていた。 ただ、そのことで春樹との関係が疎遠になってしまっている。 3 名前:356[sage] 投稿日:2007/05/20(日) 18:43:54 ID:??? ①まっすぐ駅に向かう 人気のない所を避けるようにして、大通りをまっすぐ駅へと向かう。 平日ほどではないけれど、私と同じ様に駅へと歩く人たちも多かった。 (なんだか、疲れちゃったな……) 歩きながらぼんやりと目を向けたショーウィンドウに映りこむ自分の顔は 随分泣いたせいか、目の充血はそうでもないものの瞼がうっすら腫れあがって お世辞にも可愛いとは言えない、そんな表情だった。 どこか冷静にそう思う自分がおかしくて、自然と小さく笑みがこぼれた。 「……大堂?」 不意に後ろから呼び止められた。反射的に振り返ると、そこには一郎くんの姿があった。 「一郎くん……」 「一人で一体どうしたんだ?弟くんは……」 よほど私の顔に出ていたのだろうか。言いかけて、一郎くんは途中で口をつぐんだ。 気付いてしまった一郎くんの気遣いがなぜだか悔しくて、私は無理矢理笑顔を作って言った。 「私たち、いつも一緒にいる訳じゃないよ?春樹だって春樹の都合もあるしね」 「……そうだな」 一郎くんはそれ以上、何も聞かなかった。 ただ一言『家まで送ろう』、そう言って私の前を歩き出す。 どうしよう? ①一人で帰りたいと断る ②黙って後をついてゆく ③なぜそれ以上聞かないのか尋ねる 4 名前:あぼ~ん[あぼ~ん] 投稿日:あぼ~ん 5 名前:357[sage] 投稿日:2007/05/22(火) 09:39:53 ID:??? ②黙って後をついてゆく 断る気力もなくて、前を歩く一郎くんについていく。 電車が来るまで少し時間があるみたいだった。 並んで電車を待つ間、一郎くんは何も言わずに時々、気遣うように私を見る。 何があったのか聞きたいと思うのに、何も聞かないのが一郎くんらしい。 でも、今の私にはそれがうれしかった。 いろいろなことを詰め込まれて、今何かを聞かれてもうまく答える自信がない。 もう少し自分の中で今聞いたことを頭の中で整理しようとして、ふと御門くんに重要なことを聞いていないことを思い出す。 (お母さん…!) 御門くんはお母さんに育てられたといった。 じゃあ、いまお母さんはどうしているのか? 御門くんはお母さんが死んだとは言っていない。 御門くんは聞いたことには答えてくれるけれど、逆を返せば聞いていないことは言ってくれない。 「大堂、電車が来た」 一郎くんの言葉に、ハッと現実に戻る。 ちょうど電車がホームに入ってくる所だった。 今戻れば、まだ御門くんは公園に居るかもしれない。 そうすれば、すぐにお母さんのことが聞ける。 どうしよう… ①電車に乗る ②すぐに公園に戻る ③一郎くんに説明して一緒についてきてもらう 6 名前:358[sage] 投稿日:2007/05/22(火) 16:33:20 ID:??? ①電車に乗る 今からすぐに公園に戻れば、御門くんに会えるかもしれない。 でも、もしいなかったら? (騒ぎのあった近くに一人で行くのはまずいんじゃないかな。 …一郎くんだって不審に思うかもしれないよね) それに呼べば御門くんは夢の中にも出てくれる。明日だって学校で会えるかもしれないし。 なにより、これ以上話を聞くのが辛かった。 お母さんが元気でいてくれれば私はそれだけで嬉しいけれど、もしもの場合は? ずっとお母さんを待っていたお父さんの気持ちは?お義母さんは? 考えなければならない事から無意識のうちに目を背けていたのかもしれなかった。 「大堂?」 一郎くんの声に我に帰ると、目の前の乗車口がちょうど開くところだった。 「あ、ううん。なんでもない」 首を振って混み合う車内に乗り込んだ。 日曜の夕方だというのに、電車の中は乗客でいっぱいで息苦しい。 「大堂、こっちへ」 走り出した電車が揺れる度によろける私の肩に、一郎くんの大きな手のひらが触れた。 導かれるまま移動したのはてすりのすぐそば。 気付けば一郎くんは他の乗客から私をかばうように立って、流れる車窓に目をむけていた。 一郎くんは、こういう人だ。 態度はそっけないしわかりづらいけれど、いつもさりげなく気にかけてくれる。 私は部活でそんな姿を何度も目にして、一郎くんに憧れたのだから。 「…ん?どうした?」 ぼんやりと見上げていた一郎くんと目があった。 身長差のせいで近くに寄るとどうしても私が一郎くんを見上げるかたちになる。 うつむき加減の一郎くんの顔を流れる街灯の明かりがうっすらと照らし出していた。 何か、言おうかな? ①私をかばうように立っていて辛くないか聞く。 ②どうして駅の近くにいたのか尋ねる。 ③せっかくなので今は何も言わずに一郎くんの隣りにいたい。 7 名前:359[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 10:56:34 ID:??? ②どうして駅の近くにいたのか尋ねる。 「そういえば、一郎くんはどうしてこの駅にいたの?」 何気なくたずねてから、家を出る前に一郎くんから電話が来ていたことを思い出す。 「朝の電話の用事?」 「いや……」 一郎くんは何かを思案するように言葉を切り、さりげなくあたりを伺うように視線を走らせた。 その視線が、一瞬一点で止まり何事もなかったかのように私に戻ってくる。 「一郎くん…?」 同じようにあたりを伺うけれど、私には何も分からない。 御門くんときちんと契約をしたといっても、一郎くんと同じものが見えるわけではないようだ。 (一郎くんと修二くんは「見る力」に特化してるのよね…?) もしかしたら、御門くんや周防さんにも見えないものが見えているのかもしれない。 「俺があそこに居た理由は降りたら話す。ここは人が多すぎる」 「そうよね…」 確かに、こんなに混んだ電車の中でするような話ではないだろう。 最寄の駅に着き、駅舎をでると、一郎くんが尋ねてきた。 「大堂、どうする?」 さっきの話をどこで聞こうか? ①家に帰って聞く ②駅の近くの喫茶店で聞く ③家の近くの公園にで聞く 8 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 21:30:08 ID:??? ③家の近くの公園にで聞く 今日はいろいろあったし、早めに帰宅したかった。 私は家の近所の公園で話そうと提案し、一郎くんは「大堂の好きなところでいい」と言って承諾してくれた。 駅からしばらく歩くと、公園が見えてきた。 「あのブランコ……全然変ってない」 懐かしさのあまり一郎君のことも忘れて、思わずブランコに駆け寄った。 「わぁ。ブランコが小さくなってるよ」 私はブランコに座って、少しだけ揺らしてみる。 軋む鎖の音や、錆びた匂い、すべてが懐かしい。 はしゃぐ私に少し呆れつつも、一郎くんも私の隣のブランコにゆっくり腰掛けた。 「……………」 一郎くんは何も言わず、体に合わないブランコを足だけでゆっくり漕ぎ始めた。 夜の児童公園に来た事は無かったけれど、昼の明るさとは対照的だった。 白熱灯のぼんやりとした明かりのせいで、一郎くんがどういう顔をしているのか判らない。 「大堂。さっきは元気が無かったようだが、大丈夫なのか?」 漕ぐのをやめ、一郎くんはポツリと私に話しかけた。 「うん。さっきはちょっと落ち込んでいたけど……今は大丈夫」 「そうか」 一郎くんは安心したように頷いた。 「そういえば……前も泣き顔を一郎くんに見られてたんだよね。泣き虫の子供みたいで、恥ずかしいよ」 「いや……。こうなる事がわかっていて、泣かせてしまったのは俺の責任だ。 やはり大堂は何も知らなかった方がよかった。知らなければ、泣かせずに済んだんだ」 そう言って、一郎君は白熱灯を見上げた。 私は ①「公園にいた理由を教えて」 ②「一郎くんは何を知っているの?」 ③何も聞かない 9 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 22:16:04 ID:??? ↑360でお願いします 10 名前:361[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 23:04:48 ID:??? ①「公園にいた理由を教えて」 私は白熱灯を見上げたままの一郎君にたずねる。 「ああ、そうだったな」 一郎君は頷いてゆっくりと視線を私に向けた。 その視線に迷うような色が見える。 「一郎君、私すべてを知りたいの。それに、終わらせたい」 一郎君は、しばらく私を見つめて、私の決意が固いと見ると一度目を閉じて、ため息をついた。 次に目を開けたときには、その目から迷いがきえて、まっすぐに私を見返してくる。 「俺があそこに居たのは、異様な力場が見えたからだ」 「力場?」 「そうだ、イメージとしては竜巻を思い浮かべてくれれば近いだろう。普通の人間には見えないがな」 「竜巻…」 「その力場があの公園と、もう一箇所に急に現れた」 「え?もう一箇所?」 一郎君は頷いた。 「もう一箇所には修二が向かった。修二に聞けば詳しい場所がわかるだろう」 そういいながら、一郎君は携帯電話を取り出した。 どうする? ①すぐに修二君と連絡を取ってもらう ②先に公園の力場がどうなったのか聞く ③2箇所に現れた理由を聞いてみる 11 名前:362[sage] 投稿日:2007/05/24(木) 02:49:19 ID:??? ③2箇所に現れた理由を聞いてみる 「その……竜巻?みたいなものはどうして2箇所に現れたのかな」 それにそこへわざわざ一郎くん達が向かったという事は、その必要があったからなのだろう。 その理由も、聞いておきたかった。 「はっきりとしたことはわからないが。……おそらく2箇所のうち、1箇所は俺たちを おびき寄せる為のおとりだったのではないかと思う」 「おとり?」 「そうだ。正確には俺たち二人が二手に分かれて動くのを見越して、俺たちを分断する目的で 仕組んだ、といったところだろう」 「待って。『仕組んだ』って、それって…」 思いついて口にした私に一郎くんは小さく頷いた。 「人為的に生み出されたもの、という事だ。さっき現場で確かめたから間違い無い。後で修二からも同じ報告が聞けると思うが」 「……」 例の『事件』がらみのことだろうか。次第に脈が速くなっていくのを感じた。 聞くのが怖い。けれど、逃げてはいけない。私は知らなくてはならないのだから。 「大堂」 短い沈黙の後、一郎くんは目を伏せて静かに言った。 私の目にそれはまるで私の心中を察しながらも、それをしきりに隠そうとしているような そんな不自然な仕草に映った。 「やはり、この話はここまでにしよう。今日の君は早く家に帰って休んだ方が良い。 顔色が、良くないように見える」 「別に大丈夫だよ、続けて?」 言い募る私に黙ったまま首を振って、一郎くんはブランコから立ち上がった。 さび付いた鎖が夜の公園に小さな音を立てて軋んだ。 一郎くんは促すようにこちらに目を向けて佇んでいる。 どうしよう? ①どうしても今聞きたいと一郎くんに訴える。 ②仕方ないので今日の所は諦めて、また後日話してもらう ③後でこっそり修二くんに教えてもらう。 12 名前:363[sage] 投稿日:2007/05/24(木) 09:19:12 ID:??? ①どうしても今聞きたいと一郎くんに訴える。 「一郎くん私決めたの。それに、今度こそ終わらせるって、約束もした。だからお願い、教えて」 「今度こそ?まさか…思い出したのか!?」 「えっ?な、なに?」 急に、肩を掴まれて痛みに顔をしかめる。 それに、ハッとしたように一郎くんは手を離した。 (思い出す?なにを?私何か忘れてるの?) 「すまない」 一郎くんは、私に謝って何度目かになるため息をついた。 「…力場の話だったな」 一郎くんは、一瞬の激情が嘘だったかのように話し出す。 「おそらく、修二が行ったほうがおとりだろう。俺が居た公園のほうに何かの仕掛けがあったらしいが…」 そこで一郎くんは眉をしかめた。 「どうしたの?」 「いや…、俺が行ったときには、男がその力場を消そうとしていた」 男というのは、きっと周防さんのことだろう。 「ただ、その男には力場の『基』がちゃんと見えていないみたいで、かなり強引な消し方をしていたから、その余波で無関係の人間にまで多少影響を与えていたが…」 そこまで話して、一郎くんは考え込むように目を閉じた。 「もしかしたら、あの力場は俺と修二を分けるためだけのものじゃなかったのかもしれないな…」 「それって…、私が居たからってこと?」 一郎くんは私の言葉に答えなかったが、それ自体が答えのように思える。 私を目標にしていたから、周防さんがその力場というのをなんとかしようとしたのだろう。 それなら、なぜ一郎くんと修二くんを分けなければいけないのか? 二人が何か隠しているのだろうか? それとも、私が何かを忘れていることが事態を悪化させてるのだろうか? どうしよう? ①一郎くんに何か隠していることがあるのか聞く ②私が何を忘れているのか聞く ③余波でどんな被害が出たのか聞く 13 名前:364[sage] 投稿日:2007/05/24(木) 12:43:46 ID:??? ①一郎くんに何か隠していることがあるのか聞く 「ねえ、一郎くん。私になにか隠していることは、ない?」 たまらず問い掛けた私に、一郎くんは少し不思議そうな顔をした。 「隠し事?君に?」 「そう。疑っている訳じゃないんだけど…まだ全てを話してくれた訳ではないよね」 「全て、か。では逆に聞こう。大堂、君は何をどこまで知っている?」  「どこまでって……」 思わぬ質問を投げかけられてどう続けて良いのかわからず、私は一郎くんを見た。 何を、どこまで。 それは私自身、まだよくわかりかねている事だ。 「俺たちも全てを知っている訳ではない。それに君が俺たちに全てを打ち明けられないように 俺たちも君に全てを伝える事はできないし、俺はそうすべきではないと考えている」 「……どういう事?」 「大堂、君は自らの意思で誰かと契約を結んだだろう。巧妙に隠してはいるようだが 君の周りに強い力が取り巻くのを感じる」 「!」 一郎くんの言葉に体全体が強張るのを感じた。二人の間を夜の風が静かに吹き抜けてゆく。 「誤解しないでくれ。俺はそれについて君を責めるつもりはない。 その契約は君に仇なすものから君を守っているようだし。……だからこそ」 そこで言葉を切って一郎くんは私を見た。 もの言いたげな瞳は何故かどこか悲しげな色をしていた。 「君は俺たちと共に動く必要はない。忘れているのなら、思い出さないほうが良い事もある」 (さっきも一郎くん、『思い出したのか』って言ってたな…) どうしよう? ①私が何を忘れているのか聞く ②一郎くん達の目的を聞く ③どうして一郎くんは私に隠したがるのか聞く 14 名前:365[sage] 投稿日:2007/05/24(木) 14:46:42 ID:??? ②一郎くん達の目的を聞く 「ねえ、一郎くん。これだけは教えてほしいの」 「なんだ?」 「一郎くんたちの目的は、何?」 「…目的?」 「水野先生を利用しようとしているのも、何か目的があるからなんでしょ?」 「……」 一郎くんは私の言葉を吟味しているようだった。 「なんで危険だって知ってて、組織のことを調べてるの? 今回だって…おびき寄せる罠だって、分かっていて調べようとしてた」 「目的、か…」 一郎くんは、ちょっと笑う。 「俺たちの目的も、大堂と同じだ。すべてを終わらせる、それだけだ」 「それなら…!」 「だが、俺たちは俺たちのやりかたでやる。大堂は大堂のやりかたで目的を達成させるといい」 協力できるのではないかと、言葉を続けようとした私の言葉をさえぎって、一郎くんが言う。 「どうして…?」 「大堂が思っている『すべて』と、俺たちが言っている『すべて』が同じものとは限らない」 「それは…」 たしかにそうかもしれない。けれど同じ組織を相手にしているのだから協力できることもあるはずなのだ。 どうしよう? ①協力できる事があったら協力しようと言う ②一郎くんが言う『すべて』はどんなことなのか聞く ③これ以上何も言わない 15 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/05/25(金) 00:15:22 ID:??? ②一郎くんが言う『すべて』はどんなことなのか聞く 「一郎君のすべてって何? 一体、何を終わらせようとしているの?」 私が問いかけた言葉に一郎君は寂しそうな目を向ける。 「終わり……か。本当にあるのかすらわからないがな……」 そういい終えると、一郎くんは自嘲するような笑みを浮かべた。 「はぐらかさないで、ちゃんと教えて」 「さっきも言ったように、現状で大堂と共に動くつもりは無い。 俺は俺が最も良いと思った方法で解決していくだけだ」 (どうして、突き放すような言い方をするの?協力すらできないの?) 「そんな答えじゃ……納得できない」 「納得しないように、すべての真実に触れないようにするのが一番良い方法だと俺は考えている。 だから、協力はできない」 そう言いながら、一郎君は私の手を取った。 「一郎……くん…」 不意に触れられ、思わず心臓が跳ねる。 「真実を見出すはずの鏡が……二つに割れてしまっては使い物にならない。 そういう事だ」 そう呟くと、一郎くんは何も無かったように私の手を離した。 ①「そんな言い方……答えになってないよ」 ②「真実を見出すはずの鏡?」 ③これ以上何も聞かない 16 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/05/25(金) 00:30:16 ID:??? ↑366です 17 名前:367[sage] 投稿日:2007/05/25(金) 01:15:24 ID:??? ②「真実を見出すはずの鏡?」 意味ありげな一郎くんの言葉に首を傾げる。 一郎くんは私の声など聞こえなかったかのように公園の出口に視線を向けた。 「大堂の気が済むような答えが返せなくて済まない。だが残念ながらこの話はこれまでだ。 ……どうやらお迎えも見えたようだし」 その言葉につられるように首をめぐらせるとそこにはお義母さんの姿があった。 私をみつけてほっとしたように笑顔で手を振ってくる。 「愛ちゃん」 お義母さんは公園の敷地を横切りながら一郎くんに気付いたのか小さくお辞儀をした。 一郎くんもそれにならって小さく会釈を返す。 「出先で気分が悪くなったって聞いたけど具合はもう良いの?」 そう言いながらお義母さんは手に持っていた上着を私の肩にかけた。 昼間に比べるとやはり夜の空気はひんやりとしてすこし肌寒い。 「どうしてお義母さんがここに?仕事は?」 「今日は仕事が早めに片付いてね。帰ってからたまにはお母さんもお料理作らなきゃって 支度をしてたんだけど。今さっき春樹から電話があって」 「…春樹から?私が、ここにいるって?」 「そう。学校のお友達が愛ちゃんの様子をみてくれてるけど、自分はちょっとまだ 用事があるからとか言って」 まったく薄情な弟よねえ、と溜息をつきながらお義母さんは一郎くんに向き直った。 「あなたが愛ちゃんのお友達?おかげで助かりました、どうもありがとう」 「いえ、俺は…」 「せっかく二人でいるところを邪魔して申し訳ないけど、今日はこれでね。 愛ちゃんの具合が良くなったら、今度は家にも遊びにいらっしゃいな」 (お義母さんてば…なんだか誤解してる…?) なにやら上機嫌で言いたい事だけ言うと、お義母さんは一郎くんに口を挟む隙を与えずに 会釈をして私の手を引いた。 振り返る私に、一郎くんは少し困った顔で手を振った。 「思ったより元気そうで良かったわ。素敵なお友達にも会えたしね」 斜め前を歩くお義母さんはこころなしか楽しそうだ。 お義母さんに何か話そうかな? ①一郎くんとは想像しているような仲ではないと誤解を訂正する。 ②わざわざ迎えに来てくれたことにお礼を言う。 ③電話での春樹の様子を聞く。 18 名前:368[sage] 投稿日:2007/05/25(金) 11:31:41 ID:??? ①一郎くんとは想像しているような仲ではないと誤解を訂正する。 「お義母さん、なにか誤解してない?私たちお義母さんが想像してるような仲じゃないよ?」 「あら、そう?」 私が否定しても、お義母さんは意味ありげな視線をよこしてきた。 「一郎くんは同じ放送委員の委員長よ」 「ふーん?」 お義母さんは、からかうような笑みを浮かべたままだ。 「でも、なかなか格好いい子だったじゃない?まじめそうだし」 「そこは否定しないけど…、でも違うからね?」 「じゃあ、愛ちゃんはどんな人がタイプなの?」 「え?」 「お義母さんにだけ、こっそり教えてちょうだい」 にこにこと、お義母さんが楽しそうに聞いてくる。 「春樹に聞いたって、答えてくれないじゃない。 男の子ってつまらないわ。私、娘とこういう話をするのが夢だったの」 と、はしゃぎ気味でつづける。 さりげなく答えを強要されている、気がする。 「えーっと…」 どうしよう…。 ①素直に答える ②考えたことがないという ③ごまかして違う話題を振る 19 名前:369[sage] 投稿日:2007/05/25(金) 20:14:17 ID:??? ②考えたことがないという 正直な所、あまりそういう事を意識した事はなかった。 今までもなんとなく好意をもった相手がいなかった訳ではないけれど。 「そういうのってあんまり考えたことなかったよ」 「あら、お義母さんには内緒なの?」 心底残念そうに言うお義母さんに慌てて首を振った。 「違う違う。ほんとにちゃんと意識した事なかったっていうか…」 「そう。じゃあ、さっきのお友達はどんな人?」 「さっきのお友達…一郎くんのこと?」 「ええ。真面目そうでなかなか格好良いけど、普段はどんなかんじなのかしら」 お義母さんは目を輝かせて次々と質問を投げかけてくる。 (香織ちゃんにもこんなに聞かれたことないんじゃ…) お義母さんの『恋の話題』で春樹が手を焼く様子を想像して思わず苦笑がこぼれた。 「えーと、普段も見たとおりとおんなじかんじだよ。真面目で勉強も運動もできるから まわりにはちょっと近寄りがたいって思われてるみたいだけど」 「でも面倒見は良いのよね?お義母さんには優しそうに見えたわよ」 「…そう?」 ちょっと意外な気がして聞き返した私にお義母さんは自信ありげに頷いた。 「それとも愛ちゃんには特別、なのかしらね?」 「お義母さん!」 恥ずかしがって慌てる私を見るのも楽しい、といった様子でお義母さんは嬉しそうに笑った。 (困ったちゃったな…) どうしようかな? ①お義母さんに逆に好きなタイプを聞いてみる ②まったく違う話題をふる ③春樹に聞いたときのことをきく 20 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/05/25(金) 23:41:42 ID:??? ①お義母さんに逆に好きなタイプを聞いてみる 「じゃあ、お義母さんの好きなタイプは誰?……やっぱりお父さん?」 5年以上たった今でも本当にお父さんとお義母さんはとても仲が良い。 お互い仕事で忙しいのに、時間ができると二人でデートに出かけてしまう。 当然、お邪魔にならないように私と春樹は留守番になるという訳だ。 「そうね。お父さんはとっても素敵ですもの」 お義母さんは少しだけ照れるように笑った。 このたまに見せる少女のような微笑みが魅力なのだろう。 「いいなぁ。即答できるなんて羨ましい」 「愛ちゃんにもきっと素敵な人が現れるわ」 「本当?」 「そうよ。もしかしたら、もう運命の人に出会っているかもしれないわよ」 (運命の人……か。一体、誰なんだろう) 同じ空の下にいるはずの運命の人に想いを馳せる。 「あせらなくても大丈夫よ。きっと、待っていてくれているわ」 そう言って、お義母さんは玄関のドアを開けてくれた。 いつの間にか、家に着いていたみたいだ。 私は…… ①自室へ行く ②リビングへ行く ③まじないの話を振る 21 名前:371[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 01:32:00 ID:??? ③まじないの話を振る (そうだ、まじないの事があったんだ。するなら早い方が良いよね) お義母さんの出してくれたスリッパを履きながら尋ねる。 「お義母さん。お義母さんは占いって信じてる?」 「占い?そうね、良い事は信じるけれど悪い事は信じない事にしているわ」 「そっか。じゃあおまじないとかは?」 私の問いかけに、お義母さんは台所でお茶を入れていたその手を止めて何かを思い出しているような仕草を見せた。 「子供の頃はクラスの女の子達とやったと思うわよ。バラの花びらに好きな人の名前を書いてハンカチに包んで肌身離さずに持っていると両思いになれる、とかね」 「へえ、そんなおまじないあったんだ」 「ええ、懐かしいわ。愛ちゃんも恋のおまじないでもするの?」 無邪気にそう問い掛けるお義母さんに違う、と言いかけてふと思いついた。 「…うん、まあ。それでお義母さんにもできれば協力してもらいたいんだけど」 「あら!嬉しいわ、お義母さん愛ちゃんの恋のキューピッドになれるのね?」 テーブルの向こうのお義母さんはまたしても何かを誤解しているみたいだけれど。 (ファントムが憑りつかないようにするまじない、なんて説明できないし…) 諦めてお義母さんの言うことに曖昧に頷いて、まじないをさせてもらうことにした。 「ご飯の支度してるところごめんね、ちょっとだけこっちにきて座ってくれる?」 私がそう言うと、お義母さんはエプロンで手を拭きながらそそくさとリビングに現れた。 不思議なくらい乗り気なお義母さんに苦笑いをこぼしながらソファに座ってもらう。 「目を閉じてゆっくり深呼吸して…そう」 素直に指示に従ってくれるお義母さんの正面に、御門くんから教わったとおり魔方陣のような図形の印を人差し指と中指で一つずつゆっくりと切ってゆく。 (最後に、お義母さんに触れれば良いんだよね) 丁度魔方陣の真ん中辺り、お義母さんの額にそっと触れると触れた指に痺れるような鋭い痛みが走った。 「…っ!」 とっさに手を引いた所で辺りの空気が重量を増したかのように、突如私の体を倦怠感が襲う。 「…愛ちゃん?どうかしたの?」 見ればお義母さんが不思議そうに私を見上げている。 どうしよう? ①なんでもないと取り繕う。 ②お義母さんの気分はどうか尋ねる。 ③やっぱりまだ少し気分が悪くて、と部屋に戻る。 22 名前:372[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 09:14:19 ID:??? ①なんでもないと取り繕う。 「あ、なんでもないよ」 お義母さんに笑って見せる。 「終わったの?」 「うん。ありがとう」 「愛ちゃんの恋が実るといいわね」 それから、うまくいったらちゃんと紹介してね、と台所へ戻っていく。 私はそれを見送って、ソファに倒れこむように座り込む。 (つ、疲れる…) 自分の力で人を守るというのは、こんなにも大変なことなのか。 ただ単に、私が力の使い方がわかっていないからこんなに疲れるのか。 この倦怠感が一時的なものなのか、効果がある限りずっと続くのかすらわからない。 (あとで、御門くんに聞いてみよう…) ソファにずるずると横になり、目を閉じる。 気づいたら庭に立っていた。 (あれ?) そして、すぐに疲れて眠ってしまったのだと気づく。 「愛菜ちゃん!」 呼ばれて振り向くと、男の子が立っていた。 10歳位の黒目がちな瞳が印象的なかわいい男の子。 短パンにシャツ、首に水色のリボン。 男の子は私に駆け寄ってきて、じゃれ付くように腕を絡めてきた。 この動作に、ふと小さな影がだぶる。 「……チハル?」 まさか、と思いつつ口に乗せた名前に、男の子がうれしそうににっこり笑った。 「愛菜ちゃんにお話しがあって、がんばったんだ!」 ほめてほめて、とぎゅっと抱きついてくる。 (チハルって、人の姿しててもやっぱりチハルだわ) 思わず笑ってしまう。 チハルはしばらく私に抱きついたりじゃれてきたり、自分の体を確かめるように眺めたりしていた。 どうやら、ここへ来た目的を忘れてしまっているみたいだ。 どうする? ①私と周防さんを助けてくれたお礼を言う ②話したいことがあったんじゃないかと促す ③どうして人の姿になったのか聞く 23 名前:373[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 10:06:46 ID:??? ①私と周防さんを助けてくれたお礼を言う 「チハル、私と周防さんを助けてくれてありがとう。 あの時、チハルが来てくれなかったらどうなっていたかわからなかったよ」 チハルは満面の笑みを浮かべて、ほめてほめてとまたじゃれ付いてきた。 「えらい、えらい。チハルはいい子」 そう言って、私はチハルの頭を撫でてあげる。 「愛菜ちゃんにほめられた!ボクってすごーい」 チハルは楽しそうに、くるくるとその場で回りだした。 (ぬいぐるみの時と行動がまったく一緒だ) 「そうだ、チハル。私にお話があったのよね?」 私は気を取り直して、チハルに尋ねる。 「あっ……! ボク何しにきたんだっけ?」 「憶えてないの?」 「うん。愛菜ちゃんとお話できたのがうれしくって、忘れちゃった」 「大切なお話があったんじゃないの?」 「忘れちゃうくらいだから、あんまり大切じゃなかったのかもしれない。 でもいいや。こうやって愛菜ちゃんとお話ができるんだもん。ねーねーもっとお話しよう」 (話をしている内に思い出すかもしれないよね) ①「やっぱり、ハチルって男の子だったんだね」 ②「チハルって神様なのよね?」 ③「チハルは歳をとらないの?」 24 名前:374[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 12:37:17 ID:??? ②「チハルって神様なのよね?」 私の言葉に、チハルはきょとんとした顔で見上げてきた。 それから、難しい声で考え込む。 「人はそう呼んだりする、けど…ボクはまだそこまでじゃないよ」 「え?そうなの?」 「うん、ボクは愛菜ちゃんに大事にされてるから、昇格するのも早いと思うけどね」 「神様って、昇格してなるものなの…?」 「ボクたちみたいな、人に作られたものは、大事にされてれば昇格するよ」 にっこりわらって、チハルが言う。 「自然のもの…木なんかは年月を重ねれば神様に昇格するんだ」 「あぁ…そういえば御神木とかってそんな感じよね」 神社にあるような巨大な木を思い出して頷く。 「じゃあ、チハルは今は神様じゃない、とすると何?」 「えーっと…、人間がいう精霊?が近いのかなぁ」 「精霊?」 精霊と聞いて、昔隆がやっていたゲームを思い出す。 隆は面白いといってやっていたけど、私には良くわからない内容だった。 でも、確かそのゲームの中では精霊と契約をして力を借りるみたいな内容だった気がする。 そういうとチハルがぱっと笑った。 「思い出した!」 そういって、首のリボンを指差す。 「愛菜ちゃんに新しいリボンもらったから、こっちのリボンをあげる」 「え?」 「ボクがずっと身につけてたから、御守!」 「目が覚めたら、新しいのと交換してね」 にこにことチハルは言が言う。 私は… ①頷いてお礼を言う ②どういう効果があるのか聞く ③どうやって使うのか聞く 25 名前:375[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 13:47:24 ID:??? ①頷いてお礼を言う 「うん、どうもありがとうね。大事にするから」 屈みこんでチハルの視線にあわせてそう言うと、チハルは満足げにうなずいた。 「愛菜ちゃんがいままでだいじにしてくれたぶんもおかえしするよ。きっとだよ」 「そっか。じゃあチハルのリボンと取替えっこだね」 「とりかえっこだね」 オウム返しにそう言うチハルが可愛くて、手をのばしてつややかで柔らかな髪に触れると まるでぬいぐるみを撫でているような手触りだった。 チハルはくすぐったそうに目を細める。 (精霊っていってもこうしてるとふつうの男の子と変わらないんだなあ) 私も目の前のチハルにつられたように自然と笑みがこぼれた。 「ん、もうじかんみたい。愛菜ちゃんのことよんでるよ」 不意にチハルが上目使いでそう告げた。 「私を?」 「うん。ほんとは愛菜ちゃんともっとおはなししたかったけど…じゃあまたね。 またおはなししようね。りぼんだいじにしてね」 チハルは小さな手で私の手を引き寄せると、小指と小指を絡ませて指切りをした。 次第に明るくなっていくあたりの様子と共に、名残惜しそうなチハルの輪郭は段々うっすらとぼやけてゆく。 大丈夫、またすぐに会えるから チハルにそう言おうとして、視界が白く染まる。 目を覚ますとそこにいたのは…… ①お義母さん ②お父さん ③春樹 26 名前:376[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 14:49:51 ID:??? ②お父さん 「愛菜。大丈夫か?」 お父さんが心配そうに私を覗き込んでくる。 「目が覚めたか……。上で少し休んだらどうだ?」 「平気だよ。ありがとう」 そう言って、私はソファーに座りなおした。 (そうだ。早くおまじないをしなくちゃ……) 「あ、あのね。学校で流行ってるおまじないがあるんだけど……お父さんにもしていい?」 「まじない?」 唐突な私のお願いに、お父さんは眉間に皺をよせた。 「あ……。えー、えっと、このおまじないは両親にしないと効果が無いんだって。さっき、お義母さんにもしたんだよ」 私は取り繕うように説明する。 「そうなのか?」 食事の支度が終わって、リビングに戻ってきたお義母さんにお父さんは尋ねた。 「ええ、そうよ。女の子は占いやおまじないに頼りたくなるものなのよ。協力してあげて」 そう言って、お義母さんは楽しそうに、にこにこと笑った。 「よく判らんが……。一体、どうすればいいんだ?」 「……おまじないしてもいいの?」 「ああ……好きにすればいい」 一番の難関だと思っていたお父さんがすんなりと承諾してくれるとは意外だった。 お父さんにソファに座ってもらう。 「目を閉じてゆっくり深呼吸して……」 さっきの要領で、魔方陣を人差し指と中指で一つずつゆっくりと切っていく。 (最後に、お父さんに触れれば……痛っ) 指に痛みが走り、さっきよりも酷い倦怠感が私を襲った。 「はい! おしまい。ありがとう、お父さん」 私は体の不調を悟られまいと、明るく振舞う。 「………そうか」 お父さんはよく判らないものに付き合わされたという顔をしていた。 私は、 ①休むために自室に行く ②ここで春樹を待つ ③両親に話しかける 27 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 18:10:55 ID:??? ①休むために自室に行く 「私、部屋に戻って休むね」 そういって私は立ち上がった。 本当は春樹が帰ってくるまで待っていようとも思った。 ……だけど今の状態で、きちんとした話ができるかと言われれば分からない。 なら今のうちに少しでも休んでおいて、話をするための障害を少しでも取り除いておいたほうがいいと思った。 「あら……愛ちゃん、大丈夫なの?」 お義母さんが心配そうに声をかけてくる。 「大丈夫だよ、ちょっと疲れただけだから」 私はできるだけ笑顔を作ってそれに答えた。 (そう、少し休めば大丈夫だよね) 何とか不調を悟られないように、ゆっくりと歩き出した。 「お義母さん。春樹が帰ってきたら、起こしてくれる?」 そしてリビングを出て行く前に、お義母さんに一声かけておく。 「ええ、わかったわ」 「ありがと……おやすみなさい」 お母さんの声とお父さんの視線に見送られて、私はリビングを後にした。 「………」 自分の部屋に帰り着き、声もなくベッドに倒れこむ。 うつぶせに倒れこんでしまったので少し息苦しかったけれど、今は体を動かすことがなんとなく面倒だった。 『あなたに少しばかり負担を強いることになる。正直、僕はあまり気が進みません』 御門君の言葉を思い出す。 (確かにこれは……負担が、くる……) それでも意識だけは何故か妙にさえていて、なかなか眠気がやってこない。 (……今日も結局、力と関わっちゃったな……) 眠れない間、ふとそんなことを思った。 そしてまず私が考えたのは…… ①御門君や一郎君の言った気になる言葉について ②周防さんの行方について ③春樹の行方について 28 名前:↑377[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 18:11:43 ID:??? すみません、通し番号付け忘れました。 上記は377でお願いします。 29 名前:378[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 18:43:25 ID:??? ②周防さんの行方について (……周防さん……) 私は夢を最後に会えないでいるその人のことを思った。 (無事なのはわかってる。けど) 私はおもむろに今日所持していたバッグに手を伸ばした。 そして、中から周防さんに渡しそびれたプレゼントを取り出す。 (周防さん……今、どこでどうしてるんですか) その袋を抱きしめながら、私の意識は深く沈んでいった。 せめて、夢でまたあえたら。そんな風に思って。 そこは、見慣れた学校の校庭。 見慣れない光景であるのは、今が夜だからか。 ―――それとも景色の半分近くを、オレンジのような何かが照らしているからか。 そして、私の腕の中で―――私とそう年の変わらない男の子が傷だらけで横たわっている。 「泣か、ないで」 途切れ途切れに言葉をつむぎだす男の子。 私を心配させないためなのか、一生懸命に笑おうとしている。 その声に、その顔には覚えがあった。 でもそれがいつのどこの誰のものなのか、答えが浮上してこない。 「これは、きっと、罰、だから。だから、いい、んだ」 男の子は私に手を伸ばし、そっと髪に触れてくる。 そして、その手をぎこちなくゆっくり動かしながらようやく笑みと呼べるものをその顔に浮かべた。 「信じる、って言葉、嬉し、かった。ありがと。ごめ、ん」 それから、その男の子の口が僅かに動く。 『        』   ぱたり。 手が力なく地に落ちて―――それが、最後だった。 それきり。 「い……いやああああああああ!!!」 私は叫びながら目を覚ます。 「はぁっ……はぁっ……」 息を整えてながら体を起こし、辺りを見回す。 そこはいつもの私の部屋だった。 その事実に強く安堵する。 (何なんだろ、今の夢……) だんだんと落ち着いてきたのか、そんなことを考える余裕が出てくる。 今の夢、少し気になる。 どこが一番気になるかと言うと――― ①夢の内容を覚えていると言う事実 ②夢の中に出てきた男の子に既視感があったこと ③夢の場所が夜の校庭であったこと 30 名前:379[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 21:34:50 ID:??? ②夢の中に出てきた男の子に既視感があったこと 声にも顔にも私は覚えがあると感じていた。 そして、その場所は私達の学校だった。 (一体、誰だったの……?) 『罰、だから。だから、いい、んだ』 『信じる、って言葉、嬉し、かった』 その一つ一つが私の頭の中から離れない。 言葉としては、あまりに悲しい響きだ。 そして、最後の言葉も知ることは出来なかった。 私の腕の中で徐々に力を失っていく、男の子の体の重みまで感じられた。 今でも、その男の子を抱きしめている感覚が残っている。 胸が裂けそうなほど、寂しくて、苦しかった。 (だめ、考えてはだめよ) 私の能力が予知夢だと決まったわけではない。 それに、武くんは『予知夢だと思い込んでしまったから』と言っていた。 (私が強く思う事で、本当の事になってしまう可能性だってあるんだ) 悪夢を消し去るように、私は頭を振る。 (絶対にこんな未来にはさせない) そして私は…… ①これからの事を考える ②リビングに下りていく ③窓の外を見る 31 名前:380[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 17:36:26 ID:??? ①これからの事を考える (まず、春樹が戻ってきたらおまじないをして…) 夢を追い払うように、私はこれからのことを考える。 (あ、そういえば…) リビングで眠っていたときの夢を思い出して、チハルをかばんから出す。 チハルはすっかり忘れられていたからか、ぱしぱしと私の手を叩いた。 「ごめんね、ちょっと疲れちゃって」 謝ると、チハルは首をかしげた。 「大丈夫だよ」 チハルに笑って見せて、買ってきたリボンを取り出す。 「新しいリボンに変えるね」 古いリボンを解き、新しいリボンをつけてあげる。 チハルは新しいリボンをつけてあげると、くるくると回りだした。 私は古いリボンをどうするか一瞬悩んで、とりあえず枕元に置いた。 時計を確認すると、まだそんなに時間は経っていない。 (また明日から学校か…) あんまり休んだ気がしない上に、疲れは休む前より溜まっている。 「あ!忘れてた!」 文化祭でやるお化け屋敷に使うモノを各自分担でもって行くことになっていたのを思い出す。 私が持っていくのは ①釣竿 ②黒い布 ③ハンドライト 32 名前:381[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 21:24:32 ID:??? ③ハンドライト (古典的な方法だけど……みんな怖がってくれるのかな) 下からライトを当てて顔だけ浮き上がらせる――なんて小学生でも失笑するような方法で大丈夫なのだろうか。 不安に思いながらも、とりあえず私は自室にあるはずの災害用ハンドライトを探す。 (確か、この辺に置いておいたはずだけど) 「見つけた」 引き出しの中からハンドライトを取り出した。 電池がまだあるか確認するために、スイッチを入れる。 「あれ?……ライト点いてるのかな?」 電池の残りが少ないのか、点いているのかよくわからない。 私は自室の明かりを消して、再度ハンドライトのスイッチを入れた。 「うん。大丈夫みたい」 その時、ドアをノックする音が聞こえた。 「姉さん、俺だけど」 「春樹?」 「今、……戻ったんだ。入っていい?」 ①「うん、いいよ」 ②「ちょっと待って」 ③ためしに驚かせてみる 33 名前:382[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 02:31:02 ID:??? ①「うん、いいよ」 「電気もつけないで……もしかして、蛍光灯が切れた?」 「違うのよ。文化祭で使うからコレの確認をしていただけ」 そう言って、私は手元にあるライトのスイッチをつけたり消したりしてみせる。 「そうか……。姉さんのところはお化け屋敷だったね」 春樹は部屋の明かりをつけると、言いにくそうに口を開きかけてまたつぐんでしまった。 「春樹?」 「あの、さ。公園では取り乱してごめん」 「私こそ、あの時は冷静じゃなかったから。気にしないで」 私の言葉に、春樹はようやく小さく頷く。 「春樹、もう夕食よね? お父さんとお義母さんが待ってるよ」 沈んでいる春樹に私は笑いかけて言った。 「そうだね。降りようか」 二人で廊下まで出たところで、不意に何かを思い出したように春樹が呟いた。 「そうだ。さっき父さんが言っていたけど……隆さんをうちで預かるみたいだよ」 「うちに? どうして?」 突然の話に、私は思わず聞き返す。 「なんでも、隆さんの両親が海外旅行に行くらしいんだ」 「隆は家事が一切できないうえに、お姉さんの美由紀さんも大学の寮に入ってるしね。 それにしても……隆ったら、昨日言ってくれてもいいのに」 「昨日はいろいろあったしさ。それどころじゃなかったのかもしれないよ」 (隆のご両親が海外旅行……か) 私が小さい頃、父の帰りが遅くなると隆の家で夕食をご馳走になっていた事を思い出す。 子供同然にして接してくれた隆のご両親への恩は父も私も忘れる事は無い。 私は…… ①滞在する日程を尋ねる ②小さい頃の事をさらに思い出す ③一階に降りる 34 名前:383[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 11:10:40 ID:??? ①滞在する日程を尋ねる 「いつからだって?」 「明日から金曜日までだって。土曜日の夜に戻ってくるって言ってたよ」 「それじゃ、日曜日の文化祭に間に合うように戻ってくるのね」 「そうだね」 隆の両親は欠かさず学校の行事に顔を出す。 今回も、それにあわせて日程を組んだのだろう。 「どこに旅行にいくのかな?」 「そこまでは…、義父さんに聞けば分かるんじゃないかな?」 「そっか、じゃあ聞いてみよう」 二人で階段をおりながら、そういえば、と春樹が笑う。 「家族そろって食事なんて久しぶりだね」 「確かにそうね、最近お父さんもお義母さんも忙しいみたいだったし」 「うん、二人とも仕事人間だよね。体を壊さないといいけど」 「お義母さんは、すごく元気だったよ」 あの調子のお義母さんと春樹の会話を想像するだけで、笑ってしまう。 「なんかあった?」 「ん~、ちょっと、ね」 不思議そうな顔の春樹と、笑っている私がキッチンに入るとお父さんとお義母さんがこちらを見た。 「あら、どうしたの?」 「母さん、姉さんを迎えに行った時なにかあったの?」 春樹は私が素直に答えないと見ると、あっさりとお義母さんに矛先を変える。 「あぁ、さっきね…」 お義母さんは目を輝かせる。 私は… ①お義母さんの好きにさせる ②お義母さんの話を止める ③お父さんに隆の両親の旅行先を聞いて話をそらす 35 名前:384[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 22:23:39 ID:??? ①お義母さんの好きにさせる 私と春樹はそれぞれの椅子に腰を下ろした。 今日のメインはお義母さん手作りのとんかつだ。 「愛ちゃんと好みの異性のタイプについてお話していたのよ、ね?」 私は相槌を求められ、思わず頷いてしまった。 「あ……うん。お義母さんの好みのタイプはお父さんだって言ってたよ」 お父さんに視線を移すと、決まりが悪そうに咳払いをしていた。 「じゃあ……姉さんはどんなタイプが好みなのさ?」 「それがね、春樹。愛ちゃんはまだ考えたことがなかったんですって」 「本当? 姉さん」 「う、うん……」 私は槍玉に挙げられて、小さくなりながら答える。 「でも、恋のおまじないをしたからもうバッチリよね?」 「そ、そうだね。もうバッチリだよね。ハハハ……」 私は誤魔化すように、笑ってみせた。 (完全に恋のおまじないになってるんだ……) ①「春樹は一体どんな異性が好みなの?」 ②「お父さん、助けて」 ③「そういえば、隆がしばらくうちに泊まるの?」 36 名前:385[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 00:01:53 ID:??? ①「春樹は一体どんな異性が好みなの?」 お義母さんの『恋のおまじない』という単語に怪訝な顔を見せる春樹に先手を打つように問い掛ける。それに私一人が一家団欒の席でネタにされてしまうのは姉として少々悔しい。 「……!」 春樹は想像もしていなかったのか、箸を手にしたまま盛大に咳き込んだ。 「あらあら、春樹。大丈夫?」 心配するよりむしろ楽しそうなお義母さんに春樹は涙目になりながら非難の視線を向ける。 「…だい、じょうぶじゃないよ…っ。変なこと、きくのは…母さんだけでも充分なのにっ…」 「変なことだなんて。春樹は大事な家族ですもの、愛ちゃんだって気になるわよねえ」 「そうそう。せっかくだから、白状しちゃいなさい」 お義母さんと結託してここぞとばかりに問い詰めると、春樹はだんまりを決め込んだのかひたすら食事を口に運んで一言も口をきこうとしない。 お父さんはというと話を振られたくないのか食事も終らないのに新聞を拡げだした。 「人には聞くくせに自分の話はしないなんてずるいんじゃないの?」 不満げにそう漏らすと春樹は「じゃあ俺もそんなこと考えた事ないよ」となげやりに返す。 (…春樹ってば、ずるい) 頬を膨らませてお義母さんに目で訴えると、お義母さんは承知したとばかりにウインクをした。 「そうなの?じゃあさっきの電話の子は?ずいぶん仲良しみたいじゃない?」 「さっきの子?」 「母さん!」 意味ありげなお義母さんの発言に春樹が声を荒らげた。春樹はこういう話はのらりくらりとかわすのが常なのに。 どうしよう? ①このままお義母さんにその話を詳しく聞く ②春樹が嫌がっているようなので聞かない ③後でお義母さんにそっと聞いてみる 37 名前:386[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 10:50:37 ID:??? ①このままお義母さんにその話を詳しく聞く 「電話って?」 「春樹が愛ちゃんの部屋に行く前に電話が来たのよ、女の子から」 にこにことお義母さんが続ける。 「それはっ!一昨日のお礼で…」 そこまで続けて、春樹がハッと口を閉ざす。 私はそれでピンときた。 (一昨日って…、春樹が脳震盪で早退してきた日だ…。女の子をかばったって香織ちゃんが言ってたっけ) 「あら、金曜日何かあったの?」 「なにも…」 春樹は、話はここまでというようにご飯を口に入れる。 きっとお義母さんたちに余計な心配をかけたくないんだろう。 私は春樹に助け舟を出してやる。 「なるほどね」 私が納得したように頷いて笑うと、お義母さんがすねたように口を尖らせる。 「あら、二人だけわかっててずるいわ」 「だめ、これは春樹と二人だけの秘密だもん、ね?」 春樹は何も言わずに頷いた。 「だから、この話はおしまい!」 私は強引に話を打ち切る。 お義母さんはまだ不満そうだったけれど、しぶしぶと引き下がる。 みんなご飯を食べ終わっていたけれど、久しぶりに家族そろったためかなんとなく席を立たずに座っている。 さて、どうしよう。 ①隆の両親の旅行先を聞く ②お茶を入れる ③部屋に戻る 38 名前:387[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 19:36:56 ID:??? ①隆の両親の旅行先を聞く 「お父さん。さっき春樹から聞いたんだけど、隆のおじさんとおばさんって海外旅行に行くんだよね?」 お父さんは話の流れが変わったのを見計らっていたのか、新聞を畳みながら頷いた。 「オーストラリアに行くそうだ」 「あら、そう。いいわね」 お義母さんはお茶を注いぎながら、うらやましそうに呟く。 「それで、隆君をうちで預かることになったんだが……本人は乗り気じゃないようなんだ」 「乗り気じゃないって?」 「湯野宮さんは大変心配されているんだが、隆君は子供じゃないんだからと言ってごねているらしい」 「俺、隆さんの気持ちは分かるよ。放っておいて欲しいんだと思うな」 春樹はそう言って、湯のみを置いた。 (確かに、気持ちはわからないでもないけど……) 「うちとしては湯野宮さんに頼まれた手前もある。そこでだ、愛菜。お前に隆君を説得してもらいたい」 「え? ……私?」 「明日でいいから、せめてうちで食事を摂るように言って欲しいんだ」 ①「うん。わかった」 ②「えー、嫌だよ」 ③「じゃあ、私がご飯を作ってあげるよ」 39 名前:388[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 05:45:10 ID:??? ③「じゃあ、私がご飯を作ってあげるよ」 「……え」 私の発言に、一瞬キッチンの中になんともいえない雰囲気が漂った。 (……?なんなの、この沈黙は?) 「隆が放っておいてほしいっていうのもわかる気がするし、おじさん達が心配するのも当然だと思うし。それなら私が隆のところでご飯作ってあげれば良いんじゃない?」 「あー…愛菜は、文化祭だか学園祭だかで忙しいんじゃなかったのか?」 「そ、そうね。さっきも愛ちゃん、なんだか疲れてたみたいだったし」 「?別に大丈夫だよ。最近は夕食の支度だって春樹に任せっぱなしだったんだし、たまには腕を揮わないとね」 「いや、しかしな…」 さらに言い募るお父さん達に首を傾げていると春樹が小さく溜息をついて言った。 「じゃあ、こうしよう。姉さんはまだ怪我も心配だから今週は俺が食事の支度をするよ。その時に隆さんの分も用意するから食べに来るなり持っていくなりすれば良い」 「そうね!それが良いわ」 春樹の発言にお父さんもお義母さんもほっとしたような笑顔を見せた。わざわざ反対するのも妙な気がして春樹の提案を受け入れる事にしたけれど。 (弟の方が何でもできるって、なんだか複雑な気分…) ぼんやりとそんなことを考えていると春樹が席を立った。 「あら、もう行っちゃうの?…お母さんが好きな女の子のこと聞いたから?」 お義母さんが叱られた子供みたいに悲しそうな顔で声をかけると、春樹は小さく苦笑いをして言った。 「まさか。そんなことでヘソ曲げるわけないだろ、小学生の子供じゃないんだから。これから文化祭の打ち合わせでクラスメイトと電話しなきゃいけないんだ。うちのクラス、予定から少し遅れてるみたいだから」 ちょっと約束の時間も過ぎちゃったし、と呟いて春樹は時計を見上げた。 時計の針は午後八時を少しまわったところ。明日からまた学校が始まると思うと全身を包むけだるさも手伝ってなんとなく気が重くなる。 無意識に一つ溜息をもらしたところで春樹と目があった。 (……春樹?) 一瞬ぶつかった何か言いたげな瞳は、それでも何も言うことなく私からそらされる。 春樹は笑顔でお義母さんにご馳走様、とだけ伝えてキッチンを出て行ってしまった。 さて、どうしよう? ①久しぶりなのでゆっくり両親と文化祭の話をする ②自室で春樹の電話が終るのを待つ ③明日に備えて早めに休む 40 名前:389[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 10:35:17 ID:??? ②自室で春樹の電話が終るのを待つ 「それじゃ私も部屋に戻るね。明日の準備もしないといけないし」 「そうね、愛ちゃんはちょっと顔色が悪いし早めに休むのよ」 「うん、わかった。おやすみなさい」 「おやすみ」 お父さんとお義母さんにあいさつをして、階段を上る。 自室に入る前に春樹の部屋を伺うと、中から話し声が聞こえる。 さっき言っていた文化祭の打合せをしているのだろう。 (あ、でも春樹にもおまじないしないといけないから、終わったら部屋に来てもらわないと) 思い出して、春樹の部屋をノックをして少しだけ戸を開けると、春樹がこちらを見た。 「…ごめんちょっとまって、どうしたの?姉さん」 「ごめんね、終わったら私の部屋に来て欲しいんだけど」 「わかった」 「うん、邪魔してごめんね」 春樹の部屋の戸を閉め、自分の部屋に戻るとチハルが歩いてきた。 「ただいまチハル」 チハルを抱き上げて頭をなでると、小さな手を持ち上げて私の指を掴もうとする。 その仕草がさっきの男の子がじゃれ付く姿と重なって思わず笑ってしまう。 私が笑ったためか、チハルが首をかしげて私を見た。どうしたの?と言っているようだ。 「なんでもないよ。ふふ、チハルといつでもお話できると良いのにね」 半ば本気でチハルに言った直後、ポンと軽い音がして目の前に夢で見た少年が手の上に乗っていた。 「え?」 「あれ?」 きょとんとした顔のチハルが不思議そうに私を見つめている。 夢で見たときと同じサイズの子供の姿で手の上に乗っているけれど、重さはぬいぐるみのときとまったく変わらず軽い。 私は思わず… ①悲鳴を上げた ②チハルを落とした ③呆然と見つめた 41 名前:390[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 13:15:08 ID:??? ②チハルを落とした 「いたっ!」 床にお尻を打ったチハルは小さく悲鳴をあげた。その声に我にかえってしゃがみ込むチハルを抱き起こす。 やっぱり、軽い。 手に伝わる重みは小さな子供ではなく、どうしたってぬいぐるみのそれだ。 「愛菜ちゃん、ひどいよ……」 見上げるチハルの目は今にも泣き出しそうで、私は慌てて子供をあやすように抱き上げた。 「ごめんごめん、チハルが急に人の姿になったからちょっとびっくりしちゃったの。でも、チハルとまたお話できて嬉しいよ?」 「…ほんと?」 「うん、ほんと。またお話したいなって思ってたから」 つとめて嬉しそうにそう言うと、チハルは機嫌が直ったのかようやく笑顔を見せた。 (でもどうしてまたチハルが人の姿になったんだろう…?) 腕の中の当の本人(?)は特に気にした様子もなく、足をぶらぶらさせたり辺りを見回したりしている。 どうしようかな? ①自分で原因を考える ②チハルに理由を聞いてみる ③後で隆(もしくは御門くん・周防さん)に尋ねる 42 名前:391[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 14:46:27 ID:??? ②チハルに理由を聞いてみる 「ところでチハル、どうして急に人の姿になったの?」 私の問いに、チハルはにっこり笑う。 「愛菜ちゃんがボクを大事にしてくれるからだよ」 「?」 チハルの答えではさっぱり解らない。 「夢の中でも言ったとおり、人に作られたボクたちは人に大事にされればされるほど力をつけることが出来るんだ」 「うん」 「愛菜ちゃんはもともとボクを大事にしてくれていたし、ボクが動けるようになってからはもっと大事にしてくれた」 いっぱい話しかけてくれてリボンも新しくしてくれたしと、チハルはうれしそうに首のリボンをなでる。 「だから、急に力がつき始めたなー、って思ってたんだ」 「要するに、人の姿になることが出来るくらい力がついたってこと?」 「うん、そう」 うれしそうに笑うチハルを抱き上げたまま、私はベッドに腰掛ける。 チハルをひざに乗せるように座ると、チハルはギュっと抱きついてきた。 「それに、愛菜ちゃんはトクベツだよ」 「え?」 抱きついた体を少しだけ離して、私を覗き込むようにチハルは視線を合わせてきた。 「ボクと同じくらいかわいがられてる人形ってこの世の中にはたくさんいるよ」 確かにそうだと私は頷く。 「でも、10年くらいじゃ普通は人の姿になることは出来ないよ。愛菜ちゃんだから、だよ」 そう言ってまたぎゅっと抱きついてくる。 私がその言葉に疑問を抱いたその時、ノックの音がして部屋の戸が開いた。 「姉さん、なん…」 不自然に言葉を途切れさせ、春樹が目を丸くしている。 見ず知らずの男の子が部屋にいて、私に抱きついているのだから当然といえば当然だろう。 私は… ①チハルを紹介する ②とりあえずおまじないの話をする ③あわててチハルを引き剥がす 43 名前:392[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 20:00:02 ID:??? ①チハルを紹介する (春樹だったら話しても大丈夫よね) ドアノブに手をおいたまま固まっている春樹に手招きをする。春樹は神妙な顔でドアを閉めると黙って私たちの正面に立った。 「……で。この子は誰だい?まさか姉さんの子供、とか言わないだろうね」 チハルから視線をそらさずに春樹が言う。こんな時でも春樹は比較的冷静だ。見つかったのが春樹で良かったとそう思う。自分で言うのもおかしいけれど、お父さんやお義母さんにこの状況を上手く説明できるとは到底思えない。 「この水色のリボンに見覚えない?」 手を伸ばして枕もとにおいた揮いリボンを指差す。その間もチハルは私にしがみついたまま首をめぐらせて春樹を見上げている。 「古い…リボン?ずいぶん焼けてるみたいだけど。……まさか」 「さすが春樹。察しが良いね」 春樹はどうやら古いリボンが示す何かに思い当たったようだ。それなのに、春樹はチハルを凝視したまま言葉にしようとしない。しばらく待ってはみたものの、チハルと春樹の間に流れる微妙な空気に耐え切れず私から声をかけた。 「この子は隆がくれたくまのぬいぐるみだよ。動けるようになったのは春樹も見たでしょ?」 「それは、確かに見たよ。でも俺にはこの子の姿はどう見ても人間、に見えるんだけど」 春樹は控えめに、それでもはっきりと私の説明に納得がいかないと訴えている。 (それもそうか、そう簡単には信じられないよね…) どうしよう? ①チハルの口から説明してもらう ②論より証拠、春樹にチハルを抱き上げてもらう ③とりあえず先にまじないの話をする 44 名前:393[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 23:41:06 ID:??? ①チハルの口から説明してもらう 私自身、突然の事で上手く説明できる自信が無い。 (ここはチハルに説明してもらった方が早そうね) 「チハルから春樹に説明してもらってもいい?」 私の言葉に、チハルは「うん!」と大きな返事をすると、元気よく話し出す。 「えーっとね。愛菜ちゃんとリボンのことでお話がしたくて……夢に入ったんだよ。 それで、愛菜ちゃんがボクと会えてうれしいって言ってくれたんだ。 指きりしてお別れしたんだけど、またお話したくなってきちゃったから、 ボクがへんしーんって思ったらまた愛菜ちゃんとお話できたの。すごいでしょ」 「……………」 説明に納得がいくはずもなく、春樹は黙ったまま何も言えなくなっていた。 逆にチハルの方は、ちゃんと説明できたと思い込んでいるのか春樹の言葉をじっと待っている。 「その説明では、ちょっと分かりにくい……かな?」 なんとも言えない沈黙に耐えかねて私が口を挟むと、チハルは頬を膨らまして反抗する。 「えーっ、ボクが悪いんじゃないよ。春樹がバカだからわからないんだよ」 それだけ言うと、チハルは私の影に隠れてべーっと舌を出した。 (ちょ、ちょっとチハル……) 「こんな子供に呼び捨てにされて、更に馬鹿と言われるなんてね……」 春樹は顔を引きつらせながら、チハルを見下ろしている。 ①「春樹、子供に怒っても仕方ないでしょ」 ②「チハル、馬鹿なんていっちゃダメよ」 ③笑ってごまかす。 45 名前:394[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 09:40:13 ID:??? ②「チハル、馬鹿なんていっちゃダメよ」 諭すようにそう言うと、チハルは下を向いてむっつりと黙り込んだ。それでも私にしがみついた手は放さない。 「春樹は怒らなかったけど、馬鹿なんて言われたらチハルだって嫌な気分になるでしょう?それに、春樹はチハルよりお兄さんなんだから」 「……ぼくのほうがずっとまえから愛菜ちゃんといっしょにいたもん」 チハルは小さな声でそう漏らした。 (チハル……) チハルの声は春樹には届かなかったのか。春樹は諦めたように溜息をついて、私を見た。 「姉さんが言いたくないならそれでも良いさ。ただその子の親御さんが心配しないように家に帰してあげなよ」 「春樹!だから…」 「で、さっきは何の用事だったの?」 春樹はまったくチハルの話を信じていないみたいだ。腕を組んで私の次の言葉を待っている。 (こんなかんじじゃ春樹に今まじないをかけるのは難しいんじゃないのかな。チハルもご機嫌斜めになっちゃったし…) どうしよう? ①とりあえずチハルをあやす ②まずは春樹にチハルの言うことを信じてもらう ③チハルの件はひとまずおいておいてまじないを試す 46 名前:395[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 11:03:25 ID:??? ②まずは春樹にチハルの言うことを信じてもらう (喧嘩とはいえないけど、しこりが残ったままおまじないしても効果がないかもしれないし…) 御門くんの言葉を思い出す。 「ちゃんと説明するわよ、でも私もあんまり良く分かってないから…」 「確かに今の説明じゃね…」 私の言葉に、春樹が苦笑する。 それに、チハルがムッとしたように春樹の前に出た。 「なんだよ、愛菜ちゃんのいうこと信じないのか!?」 どうやらチハルは自分の説明が悪かったことよりも、私がぬいぐるみのチハルだといったことを春樹が信じないことに怒っているみたいだ。 「信じないとは言っていないだろう」 その言葉に、春樹もムッとして言い返す。 「でも、しんじてないじゃないか!」 「ちょ、ちょっと二人とも」 にらみ合う二人に私はあわてる。 「愛菜ちゃんが言ったこと正しいってしょうめいするんだから!」 言うや否や、ちはるは軽い音をたててぬいぐるみの姿に戻る。 「…」 「…」 ぬいぐるみにもどったチハルは、勝ち誇ったように腰に手をあてて春樹を見上げている。 (そうよね、最初からこうすれば早かったんだわ…) 思わず脱力た途端、ぐらりと視界が揺れた。 「姉さん!?」 (あれ?) 何が起こったのかわからないまま、ベッドの上に倒れる。 体が鉛のように重い。 「愛菜ちゃん!だめだよむりしたら!今日は力をつかいすぎてるんだから」 「力…?」 ぬいぐるみから人の姿に戻ったチハルがあわてたように言った言葉に、春樹が眉をしかめる。 どうしよう… ①説明する ②何も言わない ③大丈夫だといっておまじないをする 47 名前:396[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 22:57:44 ID:??? ①説明する 「おまじないをお父さんとお義母さんにしたら、疲れちゃったみたい」 倒れた体を上半身だけでも起こそうとするのに、うまく力が入らない。 「愛菜ちゃん。だいじょうぶ?」 チハルは私を覗き込むようにして尋ねてくる。 「心配かけてごめんね、チハル。今日はもう無理しないから安心して」 「うん……」 チハルはぎゅっと私にしがみついたまま、離れようとはしなかった。 私とチハルの会話を黙って聞いていた春樹も、段々事態が飲み込めてきたのか顔つきが神妙なものに変わってくる。 「さっき母さんが言っていたまじないって……まさか」 「本当はファントムを取り付かせないためのおまじないを施していたの。 御門君は私に負担がかかるから教えたくなさそうだったけど、お願いして強引に教えてもらってね。 思ったよりも大変だったから……ちょっとだけ後悔してるところ」 そう言って、私は笑ってみせる。 「姉さん……。なんて無茶するんだ」 春樹はふらつく私を支えると、そのままゆっくりベッドに寝かせてくれる。 「ごめん、春樹。おまじないは明日以降になっちゃうみたい」 「構わないよ。それより、ゆっくり休まなきゃ。……チハルも邪魔にならないようにこっちへ来るんだ」 大人しく春樹の言葉に素直に従って、私からチハルが離れる。 「愛菜ちゃん、早く元気になってまたお話しようね」 「ありがとう、チハル」 ①もう少し話をする ②目を閉じる ③ふたりに「おやすみ」と言う 48 名前:397[sage] 投稿日:2007/06/01(金) 01:48:23 ID:??? ②目を閉じる 視界を閉ざした事で急速に意識が現実から遠ざかるのを感じる。 (もう少し、春樹にちゃんと説明しておかないと…) どうにか踏み留まろうと抵抗を試みたものの、体全体を沈み込むような睡魔に捕らわれた。 「…姉さんに、これ以上無理はさせない。……絶対だ」 (春樹…?) 意識を手放す寸前、遠くに春樹の声が聞こえた気がした。 体が重く、冷たい。なんだか自分の体じゃないみたいだ。 ふと気がつくと何もない闇一色の空間に、一人私は立っていた 「やはり、僕が想像していたとおりになったようです。…愛菜、あなたはまた無茶をしましたね」 心細さを感じていたところに、突如頭上から聞き覚えのある声が降ってきた。 振り仰いで見ても広がっているのは吸い込まれそうな暗闇だけ。たまらず声の主に大きな声で呼びかけた。 「御門くん?私また夢を見てるの?」 「ええ、そうです。あなたの肉体の方が休息を欲したのでしょう、半強制的に眠りに落ちたようです。いきなりあれだけのことをすれば、無理もない」 相変わらず姿の見えない御門くんの声は、私の耳にはこころなしか呆れているように聞こえた。 「ねえ、どうして今日は御門くんの姿が見えないの?」 叱られているような、いたたまれない気分になったので、それとなく話題を変えることにする。 御門くんは少し間をおいていつもの声で答えた。 「僕の姿が見えないのはあなたが疲弊しているからでしょう。こうしてあなたと話ができるのは、互いの精神世界の波動が合っている為…いわばラジオのチューニングが合っている状態だからです」 「チューニング?それって私もしてるの?」 「はい。僕は意識して行いますが、あなたは常日頃無意識のうちに行っているようですね。本来のあなたならばそのチューニングも難なくこなせるはずなのですが、それだけ今のあなたは消耗が激しい、という事です」 うまくかわしたつもりがまた同じ話題に戻ってきてしまったようだ。表情が見えない分、余計にきまずい。 「えーと…でも、今日はお父さんとお義母さんだけで、春樹にはまじないかけてないよ?」 ごにょごにょと口元だけで言い訳を言うと、御門くんから意外な言葉が返ってきた。 「そのようですね。ですがおかげで明日以降、春樹さんにまじないをかけるのは難しくなったようです」 (『おかげで』?春樹にまじないをかけづらくなった?) 一体どういうことだろう? ①どうして春樹にまじないをかけづらくなったのか尋ねる ②いつならまじないをかけられるのか尋ねる ③まじないの他に方法はないのか尋ねる 49 名前:398[sage] 投稿日:2007/06/01(金) 09:22:37 ID:??? ③まじないの他に方法はないのか尋ねる 御門くんの言葉に、眠りに落ちる寸前の春樹の声を思い出す。 『…姉さんに、これ以上無理はさせない。……絶対だ』 きっと春樹は私に負担をかけない為に、おまじないをしようとするのを止めるだろう。 「他に方法はないの…?」 「あなたに負担をかけない方法がひとつあります」 「それは?」 御門くんの言葉に、私は飛びつく。 「あなたのそばに居る精霊」 「精霊…?チハルのこと?」 「はい、昼間見せてもらいました」 そういえば、食事の時に御門くんと周防さんに見せたんだった。 「あの精霊は力を急速につけ始めています。ファントム程度なら消滅させることが出来るでしょう」 「消滅?退治できるってこと?」 「はい」 チハル自身力が強くなってきたといっていたが、そこまでの力を持っているとは思わなかった。 そういうと、御門くんの頷く気配がした。 「僕も驚いています。昼間とは段違いに強くなっている。あの精霊がそれを望んだのでしょうが、あなたに大切にされていることも関係していると思います」 御門くんにしてはめずらしく、自分の思っていることを言葉にする。 「これほど力がつくと分かっていれば、あなたにおまじないを教えず、最初から精霊に力を借りることを提案したのですが」 御門くんは私におまじないを教えたことを後悔しているみたいだった。 でもチハルにお願いするとして、チハルが素直に頷いてくれるだろうか? 私のためなら喜んで何でもしてくれそうだが、春樹を守るためといったら嫌だといいそうだ。 さっきの春樹とチハルの言い合いを思い出して、思わずため息をつく。 いろいろ考えていると、御門くんが言った。 「さあ、もうちゃんと休んだほうが良いでしょう」 御門くんの言葉と同時に、気配が遠くなっていく。 私は… ①御門くんを呼び止める ②チハルを説得する方法を考える ③なんとか春樹におまじないをする方法を考える 50 名前:399[sage] 投稿日:2007/06/01(金) 21:17:30 ID:??? ①御門くんを呼び止める 「御門君、ちょっと待って」 離れていく気配を追うように、私は言った。 「………なんでしょうか?」 再び、私に意識が向けられるのを感じる。 「御門君ってすごいんだね」 両親におまじないを施しただけで私は倒れてしまった。 御門君が易々とこなしているから気付かなかったけれど、実は大変なことだった。 どうして簡単に力を制御できるんだろう。 「……僕がですか?」 「うん。夢に現れたり、契約したり、意のままに力を操れるのがすごいと思って」 今回のおまじないも私にもっと力があったら、効率よく事を運べるはずだった。 そんな自分をどうしてももどかしく感じてしまう。 「御門君がうらやましいな」 「……………」 私の言葉に、御門君は急に黙り込んでしまった。 表情で読み取ることが出来ない分、不安が増していく。 「御門君。聞こえてる?」 「……程度を超えた力は災いしか生みません。あなたは…それでも望みますか?」 降り注ぐ声に少しだけ溜息が混じった。 (御門君……) ①「軽はずみな言い方だったよ。ごめんね」 ②「力を操れるようになったのは御門君が努力したからなんだね」 ③「それでも私は力が欲しいよ」 51 名前:400[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 12:17:41 ID:??? ③「それでも私は力が欲しいよ」 終わらせると決めた以上、迷っている暇は無い。 もし、力を手に入れる方法があるのならどうしても知りたかった。 「焦る気持ちはわかります。ですが……あなたは何もわかっていません」 どこか呆れたような、諭すような、含みのある口調で御門君は言った。 「私が? 私はただすべてを終わらせたいだけなの」 私は降り注ぐ声に向かって、叫ぶ。 「闇雲に力を求めても、その先にあるのは破滅だけです」 破滅。淡々と語る御門君だからこそ、その言葉に息を呑んだ。 「半端な覚悟では、自分自身の力に潰されてしまうでしょう。 僕や周防は、あなたが思っているよりもずっと残酷なのです」 「でも……!」 御門君も一郎君もなぜか肝心なところで私を突き放す。 私の考え方のどこがいけないんだろう。 「破壊する力もあれば、生かす力もある。 僕が必ずあなたを守ります。 その上で、あなたにとって何が相応しいのか――よく、考えてください」 その言葉を最後に、気配が途切れる。 意識が浮上し、私は目覚めた。 「すー、すー」 すぐ隣では、チハルが人間の姿のままで寝息を立てていた。 ずっと私のそばを離れなかったんだろう。 時計を見るとまだ朝の五時過ぎだった。 ①チハルを起こす ②もう一眠りする ③考える 52 名前:401[sage] 投稿日:2007/06/02(土) 19:57:59 ID:??? ③考える 体は重たいのに、目をつぶってみても眠気が再び訪れる気配はない。チハルは隣で気持ち良さそうに眠っているし、仕方なく一人で御門くんの言葉を思い出す。 (何が相応しいのか、か…。そう言われても私の力自体、よくわからないんだけどな) 御門くんは過ぎた力は、半端な覚悟では、身を滅ぼすのだとそう言っていた。覚悟はしているつもりだった。大事な人たちを守る為、迷いはないと思っていた。けれど。 「私がそう思ってただけだったのかな……」 思わず口にした自分の声は充分すぎるほどに不安を色濃く映し出していた。 (これじゃ、御門くんがよく考えろって言うのも無理ないか) 口元に自然と苦笑いが浮かぶ。 「ん……」 私の声に眠りが浅くなったのか、チハルが横で小さく身じろぎをした。チハルが目を覚まさないようにベッドから起き上がると、私はそっと部屋を抜け出してキッチンへ向かった。昨晩よりは幾分疲れはとれているものの、全快には程遠い。 おぼつかない足取りでなんとか辿り着いたキッチンに、思わぬ先客をみつけた。 「あれ?……春樹?」 「……姉さん?」 流しに手をついて振り向いた春樹の目はなぜか大きく見開かれていた。 「そんなに驚かなくても良いじゃない。……おはよう、随分早いね?」 「え…ああ、ごめん。姉さんこそどうしたの、こんな時間に」 「なんとなく目が覚めちゃったんだ。喉渇いたから水飲みにきたの」 そう言って冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出す。春樹に差し出すと首を振った。 「春樹って早起きだとは思ってたけど、いつもこんな時間に起きてるの?」 「まさか。最近ちょっと、夢見が悪くてね」 春樹は目を伏せて小さく笑った。そういえば、こころなしか顔色が優れないように見える。 「…よく眠れてないの?」 「大丈夫だよ、もともとそんなに熟睡する方でもないし。姉さんこそまだ早いんだしもう一眠りしたら?」 春樹は笑顔でそう言って私の背中を押す。 (春樹は大丈夫って言ってるけど…) どうしよう? ①心配なので、どんな夢を見るのか聞く ②眠れるようにホットミルクを入れてあげる ③和ませる為「添い寝してあげようか」と冗談を言う 53 名前:402[sage] 投稿日:2007/06/03(日) 00:55:44 ID:??? ③和ませる為「添い寝してあげようか」と冗談を言う 「春樹、私が添い寝してあげようか?」 私の言葉に反応するように、私の背中に添えられた手がパッと離れる。 「あ、朝から何を言っているんだよ!」 むきになりながら、叫ぶ春樹の顔が紅潮して見えるのは気のせいだろうか。 (私、顔を赤くするほど怒ること言った?) 「冗談よ。なに怒っているの?」 「そんなことくらいわかってるよ。だけど、不意打ちだったから少し焦っただけさ」 言い訳するように、春樹は呟く。 「ほら。眠れない子供に添い寝しながら子守唄を歌ってあげると眠るって言うでしょ?」 「それは、子供の話だろ? 姉さんは俺を一体なんだと思っているんだよ」 (春樹の事は……複雑な感情も少しあるのだけど、言えるわけ無いもん) 女の子かばって怪我したと聞かされたときの胸の痛みを思い出す。 あの感情は確かに嫉妬だった。 「大切な弟よ。うーんやっぱり、自慢の弟かな? 出来のいい弟でもあるし……」 「あっそ。それは光栄の極みだよ」 「なんだか棘のある言い方よね?」 「姉さんにとって、いい弟であるようにこれからも努力させていただくって言っているのさ」 「ほんと、かわいくないわね」 「じゃあ、かわいい弟になるように努力させてもらうよ」 (あれ……和ませるつもりが言い争いになってる) ①「夢見の悪かった春樹を和ませるつもりだったけど、ヘンな事になっちゃったね。ごめん」 ②「何が気に入らないのか言ってくれなきゃ分からないじゃない」 ③黙って去る 54 名前:403[sage] 投稿日:2007/06/03(日) 05:12:41 ID:??? ②「何が気に入らないのか言ってくれなきゃ分からないじゃない」 春樹はちらりと私の顔を見て、ふいと目をそらす。 「……別に、何も。気に入らないなんて、言ってないだろ」 「嘘。春樹はいつも思ってること口にしないで肝心な事はしまいこんじゃうじゃない。 なんでも一人でどうにかしようとするし。そりゃ春樹に比べたら全然頼りないかもしれないけど、 私だって春樹のお姉ちゃんなんだよ。春樹だってたまには、言いたい事言って良いのに」 言いながら、改めて思う。ほんの少しの差ではあるけれど、私の方が春樹より年長だというのに 春樹の方がよっぽど『兄さん』らしい。 春樹は昔から世話焼きで、優しくて、優等生で。わがままを言って両親を困らせたことも、 反抗期で苛立って私に八つ当たりをすることも無かった。本当に出来すぎるくらいに出来た弟で、 私はそんな春樹を誇らしく思う反面、その都度血が繋がっていないということを強く意識させられたものだ。 「私だって、春樹の力になりたいんだよ」 「……それなら」 私が素直に気持ちを伝えると、春樹は顔をそむけたまま目を閉じた。吐き出した言葉は、まるで溜息のようだった。 「俺にずっと『良い弟』で、いさせて」 「良い…弟?……今でも充分、春樹は良い弟でしょ?」 春樹の不可解な言葉に、知らず眉間に皺が寄る。それとは対照的に、向き直った春樹は私の眉間に刻まれた皺を見つけておかしそうに笑った。 「…そう言ってもらえるなら一安心かな。姉さんも、もっと『良い姉さん』になってくれると嬉しいんだけどね」 「なんなの、それ」 軽口に頬を膨らませると春樹は「別に」とだけ答えて、私を再びキッチンから追い出しにかかる。 どうしよう? ①最近春樹はどんな夢を見るのか聞く ②仕方ないのでおとなしく部屋に戻る ③後で御門くんに安眠のまじないがないか尋ねる 55 名前:404[sage] 投稿日:2007/06/03(日) 12:44:13 ID:??? ③後で御門くんに安眠のまじないがないか尋ねる 「春樹が眠れないんだったら、今度御門くんに安眠のおまじないを聞いておくよ」 「いいって、別に」 御門くんの名前を私が言うと同時に、春樹の表情が少し曇った。 (春樹は御門くんの事が苦手なのかな?) 「遠慮しなくてもいいじゃない。御門くんならきっと教えてくれると思うし」 「本当にいいからさ。さあ、俺の心配より姉さんこそ昨日倒れたんだから、少しでも休んでおく!」 ぐいぐいと背中を押され、強制的にキッチンから追い出される。 「ちょっ、春樹」 仕方がないので、私は階段を上り自室に戻った。 「…愛菜ちゃん」 部屋に入ると同時に、ハチルが私に向かって突進してきた。 眠い目を擦りながら、私にぎゅっと抱きついてくる。 「チハル……どうしたの?」 「ボクがおきたら、愛菜ちゃんがいなくなってたんだもん」 「キッチンでお水を飲んでいたの。まだチハルは寝ていいんだよ」 「いやだ。愛菜ちゃんが起きたなら、ボクも起きてる」 「じゃあ、私も寝るから一緒に寝よう」 「……うん」 チハルと再び、ベッドへと入る。 チハルは満足そうに、私にしがみ付きながら顔を埋めてきた。 (かわいいなぁ……) ①御門くんを呼ぶ ②チハルともう少し話をする ③春樹の事を考える 56 名前:405[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 09:02:00 ID:??? ②チハルともう少し話をする (そういえば、チハルならあの影を退治できるのよね…) 甘えてくるチハルを見てふと思い出す。 10歳という外見年齢以上に、幼い感じのあるチハルだが本当に力は強いのだろう。 (ためしに頼んでみよう…) 「ねえ、チハル?」 「なあに?」 「チハルは隆が作れる影…隆はミストっていってるけど、あれを退治できるくらい強いのよね?」 「うん!」 眠そうだったチハルが、私の言葉にパッチリと目を開けてにっこり笑う。 「それでね、お願いなんだけど」 「愛菜ちゃんのお願いならがんばるよ」 「ありがとう、でね、お父さんとお義母さんにはおまじないをしたんだけど、春樹にはまだしていないの」 春樹の名前が出た途端、チハルの顔が少し曇る。 「春樹は私に負担をかけないように、おまじないをさせてくれないと思うのよ。だから、代わりにチハルが春樹を守ってくれない?」 私の言葉に、チハルは少し考えたようだったが、すぐに頷く。 「それが愛菜ちゃんのおねがいなら、ボクが春樹を守るよ。きのう春樹ともいっぱい約束したし」 「え?」 チハルが思った以上にあっさりと頷いたのにも驚いたが、チハルが春樹と約束をしているというのにも驚く。 (昨日ってことは、私が寝た後よね…) 一体二人はどんな約束をしたんだろう?しかも、いっぱいって…。 ①どんな約束をしたのか聞く ②気にせずに寝る ③考える 57 名前:406[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 18:50:51 ID:??? ①どんな約束をしたのか聞く 「どんな約束をしたのか、私に教えてもらってもいい?」 「えーっとね、わがままは言わないとか、愛菜ちゃんが困る事はしないとか。 あとね、春樹が困っていたら助けてあげるのも約束したよ」 得意げに語るチハルを見ながら、ふと疑問が浮かぶ。 (あれ? 私が寝る前は春樹の事を嫌がっていたみたいだけど……) 「チハル。あれから春樹と仲良しになったの?」 「ちがうよ、仲良しってわけじゃないよ。ボクは春樹の事がキライだもん。 ボクの後から入ってきたのに、愛菜ちゃんとすごく仲良くするしさぁ。 だけどね、愛菜ちゃんと春樹は家族だから、春樹がいなくなっちゃうと愛菜ちゃんが悲しむって教えてもらったの」 「それは、春樹が言ってたの?」 「うん。たくさん約束したから覚えるの、すっごく大変だったんだよ」 (ということは……春樹に上手く言いくるめられたんだ) 黙っている私を見て不安に感じたのか、チハルは私を覗き込んだ。 「春樹の言うことを全部守ったら、愛菜ちゃんは喜ぶって言ってたけど……、 愛菜ちゃんはほんとうにうれしい?」 「え?」 「ねーねー。うれしいの? 教えて」 私の腕をぐいぐい引っ張りながらチハルが尋ねてくる。 ①「うん、とってもうれしいよ」 ②「一番うれしいのは、チハルが春樹と仲良くすることかな」 ③「チハルは軽くだまされてるよ」 58 名前:407[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 10:15:39 ID:??? ②「一番うれしいのは、チハルが春樹と仲良くすることかな」 ちょっとずるいかなとも思ったけれど、これは私の本心だ。 私がそういうと、チハルがちょっと首をかしげる。 「どうして?」 「チハルも春樹も大好きだから、大好きな二人が仲良しだとうれしいよ。逆に喧嘩したら悲しくなっちゃう」 私の言葉に、チハルは少し考えて小さく頷くとにっこり笑った。 「わかった!春樹とも仲良くする」 「チハルはいい子ね」 チハルの頭をなでてあげると眠かったのを思い出したのか、チハルが小さくあくびをする。 「寝なおそうか」 「うん…」 毛布をかけなおしてチハルを引き寄せる。 柔らかい髪が頬にあたってとても気持ちがいい。 チハルは少しの間もぞもぞと動いていたけれど、落ち着く場所を見つけたのかすぐにおとなしくなって寝息を立て始めた。 私も目を閉じるとゆっくり意識が薄れていった。 (あ、夢か…) 御門君がいうところのチューニングをして誰かに同調するのとは違う。 目の前では穏やかな日常が優しく流れている。 その夢は… ①お母さんの居る夢 ②知らない男の子の夢 ③みんなでピクニックに行く夢 59 名前:408[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 19:48:04 ID:??? ②知らない男の子の夢 病院のような施設の中庭に私とその男の子は座っている。 その庭を見渡してみると、ピンクや白のツツジの花が満開を迎えていた。 季節は、五月か六月くらいだろうか。 「せっかく外に連れ出してやったんだ、感謝しろよ」 そう呟きながら、十二、三歳の勝気そうな目をした男の子は、突然上を指差しながら私を見る。 「おい、あれは何か答えてみろよ」 指の示す方を目で追ってみるけれど、何も思い出すことは出来ない。 少しだけ悲しい気分になりながら、私は首を横に振る。 「ばっか。この前教えたばかりだろ、あれは空」 「ソ、ラ」 「そうだ。あの大きくて青いのが空。フワフワ浮かんでる白いのが雲」 「ク、モ」 「じゃあ、俺の名前は覚えてるか?」 「ス、オ、ウ」 「なんだ、お前もやれば憶えられるんじゃん」 男の子はなんだか少し照れくさそうだ。 だけど、今の私にはなぜ照れくさそうにしているのかが分からない。 「お前の名前は?」 そう尋ねる男の子の瞳にすこしだけ、影が落ちる。 なぜ、そんな複雑な顔をするんだろう。 「コードNO.543」 私は無機質な口調で答える。 「ちがうって。俺と一緒のときだけはコードナンバーで言わないって決めただろう。 ていうか、俺が一方的に決めただけだどさ…。もう一度聞くからな、お前の名前は?」 「こよみ」 そう。私はこよみとこの少年に名づけられた。 男の子は満足そうに、微笑みながら私を見つめる。 さわやかな初夏の風が二人の間を吹き抜けていた。 半分は私の意識で、半分は別の誰かの意識に支配されている。 私は傍観者でもあり、当事者でもあった。 大堂愛菜として残る私自身の意識がこれは周防さんの少年時代だろうかと考えている。 私は… ①もう少し続きをみる ②起きる ③考える 60 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 00:32:50 ID:??? ③考える (あれ、この男の子……どこかで、見覚えが……) 不意に『大堂愛菜』の……私の意識がそんな疑問を提示してきた。 「………」 「………」 少年と『こよみ』のやり取りは止まることなく続いていく。 私はそれを意識の隅に留めつつ考え始めた。 (そう、確かに私はこの少年に見覚えがある。……でも、どこなの?) 考える。 自分の持ちうる限りの意識と記憶を使って、情報を手繰り寄せ取捨選択していく。 (今じゃない……今見ている光景じゃない。でも、どこか近くのような気がする。 ……いつ、どこで、私はあなたを知ったの?) 『罰、だから。だから、いい、んだ』 『信じる、って言葉、嬉し、かった』 (!!!……そうだ!) やがて、思い浮かんだのは……春樹が帰ってくる前に見た夢の光景だった。 あの時に私の腕の中で横たわっていた少年。 今、目の前にいる少年よりは若干成長していた気もするけれど……でも、間違いないと思う。 (でも……) 私がさらに考えを進めようとしたその時。 「そうだっ。今日はお前にいいものやろうと思ってさっ」 目の前の少年が、そう言いながらポケットを探り始めた。 (あ……) 気を取られたせいなのか、再び『大堂愛菜』としての意識が曖昧になっていく。 そしてその代わりに目の前の光景がだんだんと鮮明になりはじめた。 それに気がついた私は…… ①夢と割り切り、二人のやり取りに意識を戻した ②怖くなって、目を覚ましたいと願った ③更に考えることで意識を保とうとする 61 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 00:33:38 ID:??? すみません、ミスです。 上は409でお願いします。 62 名前:410[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 02:36:06 ID:??? ②怖くなって、目を覚ましたいと願った このまま夢を見ていて良いのだろうか。ただの夢かもしれない、けれど私であって私ではない、誰かの記憶の奥を覗き込んでいるような、そんな不思議な感覚に囚われる。 目の前の少年の無邪気な様子をぼんやりと眺めているうちに、鮮明になったはずの景色が少しずつ色を無くしてモノクロの世界へと変化してゆく。 (……やめて、これ以上は――いけない) なぜかそう思ったのは私なのか、それとも『こよみ』の方だったのか。全ては瞬く間に暗転した。 「……ちゃん、愛ちゃん」 誰かが私の肩を揺すっている。ゆるやかな振動が心地よくて、再びうとうととまどろんでいると声の主が柔らかな声で告げた。 「もう八時になるわよ、遅刻しちゃうわよ」 「ん……はち、じ……?っ、八時?」 瞬時に覚醒して飛び起きると、目の前にはフライ返しを片手にお義母さんが朝に相応しい爽やかな笑顔で立っていた。 「おはよう、愛ちゃん。朝ごはんできてるわよ」 「朝ごはんていうか、八時じゃ、ほんと遅刻しちゃう!」 あたふたと支度を始めた私の横でお義母さんはおっとりと言った。 「大丈夫よ、まだ七時前だから」 「……え」 「前に、お父さんに教わったの。愛ちゃんが起きなかったら遅刻しそうな時間を言えばすぐに起きるぞって。気持ち良さそうに寝てるから、起こしたら可哀想かとも思ったんだけど……」 (お父さんてば……) 拍子抜けしてベッドに座り込むと、お義母さんはだましてごめんなさいね、と申し訳なさそうに続けた。 「ううん、起こしてくれてありがとう。いつも時間ギリギリじゃさすがにマズイし」 「そう?それなら良かったわ」 意識して笑顔で答えると、お義母さんはほっとしたような笑顔を見せた。そのお義母さんを前に、チラリと目をやってベッドの上のチハルがぬいぐるみの姿なのを確認する。 (お義母さんにもチハルの話をするんじゃ収集つかなくなっちゃうよね……) 内心ほっと胸を撫で下ろして、不自然にならないように当り障りのない会話を探す。 「春樹はいつも時間ギリギリに声かけるから、朝はすごく忙しいんだ。今日はゆっくりできそうかも」 「あらそうなの。朝もたまにはゆっくりしなくちゃね。……そういえば春樹は今日はもう学校に行ったわよ」 何気なくそう言ったお義母さんの言葉を受けて、私は目覚まし時計に目をやった。時刻はもうすぐ七時になるところ。 (春樹、昨日は何も言ってなかったけど…何か用でもあったのかな?) どうしよう? ①お義母さんに理由を聞いていないか聞く ②どうせ文化祭の用意だろうから気にしない ③メールで春樹に勝手に早く行った事について文句を言う 63 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:42:33 ID:??? ②どうせ文化祭の用意だろうから気にしない 一瞬疑問が浮かんだが、すぐに文化祭の準備があるのだろうと納得する。 (準備が遅れてるって言ってたもんね…) きっと昨日の電話で早く出てその分の遅れを取り戻そうという話になったんだろう。 「文化祭の準備かな、昨日遅れてるって言ってたもんね」 「そうね。愛ちゃんのクラスは大丈夫なの?」 「うん、うちのクラスは平気。放送委員の仕事のほうが忙しいくらい」 「あら、放送委員ってそんなに忙しいの?」 お義母さんが不思議そうに首をかしげる。 「忙しいわ。体育館での催し物の案内でしょ、落し物の放送に、迷子の放送、呼び出し放送…それから」 指折り数えていく私に、お義母さんが苦笑する。 「確かに忙しそうね。でもせっかく早く起きたんですもの、ゆっくりご飯食べたいわよね、ご飯食べながらお話しましょう」 「あ!」 確かにせっかく早く起きたのに、このままではいつもと変わらなくなってしまう。 「準備ができたら降りていらっしゃい」 お義母さんは微笑みながら、部屋を出て行った。 それを確認してから、ベッドから出る。 まだ少しだるいが動けないほどではない。 (さて、と) 心の中で気合いをいれて、何からやろうかと考える。 ①チハルを起こす ②着替える ③顔を洗いに行く 64 名前:412[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:37:51 ID:??? ②着替える (チハルは眠っているし…起こすのもかわいそうかな) 私はなるべく物音を立てないように、制服に着替える。 胸のリボンを結び、ジャケットに袖を通す。 (……行ってくるねチハル) ゆっくりとドアを閉め、階段を下りるとトーストの焼けるいい匂いがしていた。 顔を洗い、髪をセットしてキッチンへ向かった。 「愛ちゃん、目玉焼きと玉子焼きどっちがいい?」 私の姿を見つけると、お義母さんが尋ねてくる。 「目玉焼きがいいな」 「わかったわ。ちょっと待っててね」 「あれ…お父さんはもう出たの?」 「ええ、今日から出張だから早く出ていったわ」 「月曜日から大変だね。体を壊さなければいいけど」 「そうね。海外出張だからお腹を壊さないか心配だわ」 他にも文化祭の話題など、とりとめの無い話をしながらお義母さんと二人でゆっくり朝食をとった。 ピンポーン。 食べ終わって、席を立ったところで玄関のチャイムが鳴った。 「はーい」 パタパタとお義母さんが玄関へ向かう。 「お迎えに来てくれたの? ちょっと呼んでくるから待ってて」 玄関の方から、そんなお義母さんの声が聞こえてくる。 「どうしたの?」 「ふふ。愛ちゃんにお迎えよ」 「わかった。今、出るね」 鞄を持ち、玄関へ向かう。 私を迎えに来たのは… ①一郎くん ②修二くん ③隆 65 名前:413[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 00:08:21 ID:??? ②修二くん 「おっはよう、愛菜ちゃん」 私を見るなり修二くんは白い歯を見せて笑った。 朝の新鮮な空気と眩しい日差しは爽やかに笑う修二くんに良く似合う。ぼんやりとそんなことを思いながらお義母さんに挨拶をして玄関を出た。 「おはよう、修二くん。……っていうか、朝からどうしたの?」 「どうしたのって……つれないなあ。一緒に学校に行こうと思って迎えに来たんだよ」 昨日は会えなかったしね、と付け足して修二くんは並んで歩きながらさりげなくウィンクをした。 「……えーと。別に昨日は修二くんと特に何か約束はなかった、と思うんだけど」 「好きな子とはいつだって一緒にいたいもの、でしょ?」 「へえ、知らなかったよー」 「愛菜ちゃーん……」 修二くんおなじみの口説き文句を右から左に軽く聞き流しながら朝の通学路を学校へと向かう。 時折笑顔を見せながら私の歩幅に合わせて隣りを歩く修二くんの外見は、確かに華やかで人の目を惹きつける。好意を抱く女の子の数が両手ではとても足りないという話もまんざら嘘ではないのだろう。 だからこそ、思う。修二くんの言葉は心から出たもののはずはないと。何の取り柄もなく特に美人という訳でもなく、ごくごく普通の私は残念ながら修二くんに思いを寄せられるような覚えはない。 「そんなことばっかり言ってると、ほんとに好きな人が出来た時に信じてもらえなくなっちゃうよ」 「心外だなー、俺はいつでも本気だよ?」 「はいはい。……それで?今日はどうしたの?」 「はー、……愛菜ちゃん、あいかわらずガード固いなー…。」 修二くんは私の質問には答えずに、独り言のようにそう呟いた。 (ほんとに修二くん、何の用で来たんだろう?) どうしよう? ①重ねて何の用事で来たのか尋ねる ②昨日の事件の話について尋ねる ③一郎くんが教えてくれなかった事をきいてみる 66 名前:414[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 11:44:54 ID:??? ②昨日の事件の話について尋ねる 「そういえば…」 ふと昨日の一郎くんとの会話を思い出す。 「ん?」 「昨日ショッピングセンターの駅で一郎くんに会って…」 「ああ、聞いたよ。兄貴が行ったほうがメインだったみたいだな」 「一郎くんもそう言ってた。修二くんのほうは大丈夫だったの?」 私の急な話題変更も、修二くんにとっては予想の範囲だったのか軽く頷く。 「俺の行ったほうは本当におとりでさ。俺が調べようとした途端に消えちまったんだよ」 「そうなんだ…、修二くんが怪我しなくてよかったよ」 「あれ?心配してくれるんだ」 「当たり前でしょ?」 もし、修二くんが行ったほうがメインだったとしたら、どうなっていたんだろう? 二手に分かれて行動するのは二人にとってとても危険なことではないのだろうか? 「二人で行動したほうが安全なんじゃないの?」 思ったことをそのまま尋ねると、修二くんは苦笑する。 「そりゃそうなんだけどね…でも今回みたいに二箇所に異変があったら俺たちは二手に分かれるよ」 「どうして?」 私の疑問に修二くんはちょっと考えて続ける。 「たとえば、二人でひとつのほうに行ったとする」 「うん」 「で、そっちはオトリで特に何もなかった。それじゃあと、もうひとつのほうに行ってみる。でも、そのときにはすでにメインの方は目的を達成させてしまった後だった、って事になるかもしれないだろ?」 「それはそうかもしれないけど…」 修二くんの言いたいことは分かる、でも分かれて行動することで危険は増すのだ。割り切れるものじゃない。 私は… ①「でも、二人に何かあったらいやだよ」 ②「……二人が決めたことならしかたないか」 ③「…………」 67 名前:415[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 19:42:22 ID:??? ①「でも、二人に何かあったらいやだよ」 「おっ、本気で心配してくれるって事は…脈アリ?」 修二くんは楽しそうに私を覗き込んだ。 「もうっ。茶化さないで」 「そっかー。心配してくれるのはうれしいんだけど…兄貴込みってのが気に入らないなぁ。出来れば、この俺だけ心配してよ」 修二くんは自分自身を指差して、「俺、俺」とアピールしている。 「ダメ。修二くんも一郎くんも大切なお友達だもん」 「空耳かなぁ…。今、友達って聞こえたんだけど」 「空耳じゃありません」 私はキッパリと言い切る。 すると、修二君は軽く舌打ちを漏らしながら、「どーせお友達ですよ」と拗ねてしまった。 学校が近づくにつれて、登校する生徒の数も多くなってきている。 すれ違う女子生徒の視線が突き刺さるのは気のせいだろうか。 そんな事などお構いなしに、修二くんは大きな声で私に話しかける。 「じゃあ、百歩譲ってお友達の俺からお願いがあるんだけど?」 「え、どうしたの」 「友達脱却の為にも、デートしよ♪ そうすれば、きっと俺のこと好きになるって」 「一郎くんと事件の調査はしなくていいの?」 「あんなの、兄貴に付き合って仕方なくしてるだけ。俺的には愛菜ちゃんが最優先だよ」 「でも……」 「そんな堅苦しく考えなくていいから、ね。放課後に待ってるからさ」 私は… ①「わかった、いいよ」 ②「今日はやめておくよ」 ③「そんな暇があるの?」 68 名前:416[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 23:31:18 ID:??? ③「そんな暇があるの?」 一郎君と事件の調査はともかく、文化祭が近くて忙しいことは間違いない。私は不思議に思って聞いてみる。 「今週末文化祭だし、準備忙しくない?うちのクラスは順調だけど…」 「あー……」 修二君は、一瞬何かを思い出したように視線をさまよわせたけれどすぐににっこり笑って頷いた。 「平気平気!何とかなるって♪」 「なんかすごく怪しいんだけど…」 修二君の物言いからすると、とても大丈夫とは思えない。 修二君のクラスの人たちに迷惑がかかるなら大変だ。 「ほんとに平気だって今日くらい。だからデートしてよ」 修二君は再度誘ってくる。 でも、さっきの態度から何かクラスですることがあるのではないかと思ってしまう。 どうしよう… ①デートに行く ②修二君のクラスの人に何か予定があるのではないかと聞いてから答える。 ③行かない 69 名前:417[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 23:38:44 ID:??? ②修二君のクラスの人に何か予定があるのではないかと聞いてから答える。 (修二くん、ちっとも大丈夫じゃなさそうだよ…) そう考えていたところに、修二くんに気軽に挨拶している人を発見する。 たしか、あの男の子は修二くんと同じクラスだったはずだ。 「あの、……おはよう。ちょっといい?」 「僕のこと?」 「うん。えーっと名前は…」 「隣のクラスの大堂さんだっけ。僕は藻部だけど?」 「藻部くん。今、あなたのクラスの文化祭の準備は進んでいるの?」 「藻部! もちろん俺たちのクラスの準備はバッチリだよな?」 修二くんは懸命に目配せをしているみたいだけれど、当の藻部くんはまるで気付いていない。 「それが、スケジュール厳しくて。うちは焼きそば屋をやるつもりなんだけど、機材の調達先も決まってない有様だよ」 藻部くんは真剣に困っているようだ。 「やっぱり……」 私はじろりと修二くんを睨みつける。 「そういうのはクラス全員が動くことないし…一日くらい俺がいなくても…」 「まさか修二。お前、またサボるつもりだったのか?」 (またって……修二くん、前科もちなんだ) 「今日はどうしても都合が悪い。だから藻部、頼んだ」 修二くんは藻部くんの肩をポンと叩き、ニコッと白い歯をみせる。 「あと一週間も無いんだしダメ、無理」 修二くんお得意の爽やか笑顔も、藻部くんの前にあえなく撃沈していた。 ①私のクラスは順調だし一日修二君を手伝う。 ②やっぱり、断る。 ③それでも行く。 70 名前:名無しって呼んでいいか?[sage 藻部くん…ワロスwww] 投稿日:2007/06/11(月) 09:58:55 ID:??? ②やっぱり、断る。 藻部君の様子からかなり切羽詰っているように思える。 「修二くんダメよ。ちゃんと文化祭の準備しなきゃ」 「愛菜ちゃ~ん」 「そんな声出してもだめですっ!」 ため息を吐きつつ、しつこくデートしてと連呼する修二くんを置いて歩き出す。 「あ、まってよ愛菜ちゃん!」 足の長さが違うのだから当たり前だけれど、私が早足で歩いてもすぐに追いつかれてしまう。 「お前は…、何をやっているんだ修二」 その時、前を歩いていた人が振り向いた。一郎くんがあきれたような顔で立っている。 「げっ、兄貴…」 「あ、一郎くんおはよう」 「おはよう大堂。修二、クラスに迷惑をかけるんじゃない」 「あー、うー…はい」 一郎くんの静かな、けれど強い言葉に修二くんがバツが悪そうに頷く。 自分に非があることを多少は自覚していたのか、妙に素直だ。 「おーい、愛菜!」 そこへ、後から声をかけられる。 「あ、隆、おはよ…え?」 聞きなじんだ声に振り向きながらあいさつしようとして、ぐいっと腕を引かれた。 「おい、何してるんだ?宗像兄弟…」 修二くんが私をかばうように腕を引く。同じように、一郎くんも隆に立ちふさがるように、一歩前に出た。 隆はそれに不快げに眉をしかめる。 (あ…、そういえば二人とも隆が敵だとおもいこんでるんだっけ) 二人には、まだ隆が敵ではなかった事を話していない。 ①すぐに説明する。 ②とりあえず大丈夫だといって後で説明する。 ③成り行きに任せる。 71 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 09:59:35 ID:??? ↑418ですスマソ 72 名前:419[sage] 投稿日:2007/06/12(火) 00:51:03 ID:??? ③成り行きに任せる。 ピリピリと張り詰める空気に圧倒され、私は何も言えないでいた。 そんな中、最初に口を開いたのは一郎君だった。 「湯野宮に接触させるわけにはいかない」 「愛菜を離せ」 「それは聞けない」 「そうか。じゃあ、俺も言わせてもらう。お前ら何者だ?」 双子を睨みつけ、隆が一歩前に出る。 「なんの話だ?」 「しらばっくれるなよ。お前らも俺と同類だろうが」 「へぇー。湯野宮って俺たちの事、わかるんだ?」 感心するように修二君は口を挟んだ。 (隆にも二人のことを説明してなかったんだ。どうしよう、お互いが敵だと勘違いしているのかな) なんとか話をしようと、私は前に出た。 けれど一郎君にぐいっと手を引かれ、再び引き戻されてしまう。 「ミストを使って愛菜を操るつもりなのかよ」 「ミスト?」 一郎君が眉をひそめる。 「黒い影のことだ」 「ファントムのことか。それは湯野宮が持っている能力じゃないのか?」 かまをかけるように、一郎君は逆に問いただした。 「確かにそうだよ。だけど、最近になって頻繁に愛菜を狙っているミストの存在。そして……力を感じるのは宗像兄弟、お前らだけだ」 そう言うと同時に、隆は背中からゾワリと黒い影を出す。 「愛菜をどうするつもりだ?」 「それはこっちのセリフだってのに……。言い訳もここまでくれば上等だね。どうする兄貴、ここでやっちゃっていい?」 修二君も一歩前に出て臨戦態勢に入った。 ただならない雰囲気に身が強張る。 私は…… ①割って入る ②叫ぶ ③成り行きに任せる 73 名前:420[sage] 投稿日:2007/06/12(火) 09:39:40 ID:??? ③成り行きに任せる ピリピリとした空気に気持ちばかりが急くが、三人の雰囲気に声をかける隙が見つからない。 (どうしよう、誤解を解かないと…) 私がおろおろしていると、ふいに修二くんが眉をしかめた。 「なんだ…?」 それに気づいた一郎くんも視線をさまよわせる。 「これは…昨日大堂の近くにいた…」 「え?」 一郎くんが何か思い出したかのようにつぶやいたとき…。 「愛菜ちゃぁぁぁん」 ばたばたとものすごい勢いで走ってくる小さな影。 「チハル!?」 チハルはそのまま突進してきて、私の腰にしがみつく。一郎くんや修二くんもあっけにとられて、チハルを止める事が出来なかった。 「ひどいよ愛菜ちゃん!ボクが寝てる間に出かけちゃうなんて」 大きな瞳いっぱいに涙を浮かべて、チハルが私を見上げてくる。 そういえば修二くんが突然迎えに来たから、チハルに出かけると言わずに出てきてしまっていた。 目が覚めたら私が居なくて、チハルは慌てたのだろう。 「お、おい、愛菜そいつ誰だよ…」 隆がチハルの勢いに押され気味のまま尋ねてくる。 一郎くんと修二くんも視線だけだったが、同じことを思っているようだ。 隆の声に、チハルが反応して首だけで振り向く。 隆の姿をみとめた途端、チハルは私から離れて今度は隆に抱きついた。 「隆!ボク隆にお礼が言いたかったんだ!」 「うわ!な、なんだよお前っ」 あわてた隆がチハルを引き離そうともがくが、チハルは気にする様子もなくしっかりと抱きついている。 春樹の時とはまったく反応が違う。 「隆がボクにお願いしてくれたから、動けるようになったし、こうやって話せるようにもなったんだよ!」 「は?なに言ってるんだよ」 「だから!隆が大好きな愛菜ちゃんが喜んでくれるように、ボクにお願いしたんじゃないか!忘れちゃったの!?」 「ちょ、おまっ、なに言って……って、お前あのぬいぐるみか!?」 チハルの発言に真っ赤になった隆が、チハルの存在に思い当たったのか、驚きの声を上げる。 「どういうことだよ?」 「この気配は昨日大堂のそばに居た精霊だな?」 すっかり蚊帳の外となってしまった一郎くんと修二くんが私に尋ねてくる。 えーっと… ①「とにかく隆は敵じゃないの」 ②「隆は私を助けてくれてたの」 ③「チハルは私のぬいぐるみなの」 74 名前:421[sage] 投稿日:2007/06/12(火) 22:58:41 ID:??? ③「チハルは私のぬいぐるみなの」 私が説明をしようとすると、チハルは一郎君と修二君の前に出た。 そして二人を指差しながら、驚いたように目を見開く。 「おんなじ顔がふたつ! ねえ、ねえ見てよ。ヘンだよ愛菜ちゃん」 「チハル、そんなこと言っちゃ駄目よ。あはは、ご、ごめんね……」 「………」 「俺の方がイケてるって!」 一郎君と修二君はそれぞれ別の反応をみせる。 チハルの登場で、その場の張り詰めた緊張感はどこかへいってしまったようだ。 (とりあえずチハルのおかげで場が和んだみたい。……助かったよ) 隆は物珍しそうに、チハルを上から下まで眺めている。 「ていうか、なんで人の姿になってんだ? あの熊のぬいぐるみなんだろ? お前」 「お話できるし、こっちの方がいいでしょ」 チハルはその場でクルクルまわりながら答えた。 「いいとか、悪いとかじゃないって。ぬいぐるみが人になるなんておかしいだろ?」 「でも、隆の大好きな愛菜ちゃんも喜んでくれたよ」 「だーっ。わ、わかったから…お前はもう何もしゃべるな!」 顔を真っ赤にさせながら、隆はチハルの口を手で押さえた。 (誤解を解くためにも、隆が敵じゃない事とチハルの事を説明しなきゃ) 私はおとといの出来事と、チハルが人の姿になった経緯を簡単に話した。 「興味深いな。その精霊は力をつけ始めているのか」 一郎君はチハルを見ながら腕を組んだ。 「湯野宮が敵じゃないのかよ……」 修二君は「だまされたー」と叫んでいる。 キーンコーンカーンコーン。 学校中にHR開始のチャイムが鳴り響く。 冷静になって周囲を見回すと、すでに私達だけになっていた。 どうしよう? ①このまま話を続ける ②走って教室に行く ③今度また話の続きがしたいと提案する 75 名前:422[sage] 投稿日:2007/06/13(水) 10:51:41 ID:??? ③今度また話の続きがしたいと提案する 「あ!もう遅刻じゃない…、この話はまた後にしよう?」 「そうだな…、湯野宮にはもう少し聞きたいこともあるし」 「それはこっちにもあるさ。まあ、愛菜急ごうぜ」 「あ、うん」 隆に促され、急いで学校に向かおうとしたその時、腰に回った腕に踏み出しかけた足を止める。 「愛菜ちゃん…ボクはどうすればいいの?」 「チハル…えっと、家でお留守番していてくれる?」 「ええええ!?愛菜ちゃんと一緒がいい!!」 「でもね、チハル、学校には関係ない人が行っちゃいけないのよ」 「ボク、人じゃないもん!」 「それはそうだけど…」 「それに、春樹を守るって愛菜ちゃんと約束した!春樹もいるんでしょ?」 確かにチハルと約束した。けれど、学校には連れて行けないのだ。 「こら、お前愛菜を困らせるんじゃない。てか、ぬいぐるみが人になれるんだから他のもんにもなれるんじゃないのか?」 隆が見かねて助け舟を出してくれる。 「人とかぬいぐるみじゃ学校に行けないけど、他のもんになっておとなしくしてるなら別に連れていったって害はないだろ」 「え?」 思わず隆を見つめる。 「ほら、腕時計とか携帯ストラップとか…、そういうのになれるなら愛菜と一緒だし心配ないだろ?」 「そうだな。この精霊はかなり力が強い。大堂をそばで守るのにふさわしいといえる」 最後に「性格は難だが」と小声で付け加えて、一郎くんも隆の言葉に頷く。 「でも、コイツが一日おとなしくしていられるか?」 そんな一郎くんの言葉に、修二くんが「無理だろ」といいながら肩をすくめた。 「チハルは、他のものになれるの…?」 私がたずねるとチハルはうーんと考えて、頷いた。 「たぶん、大丈夫」 「それじゃ早く決めちゃえよ、授業に遅れるぜ」 それじゃあ… ①腕時計になってもらう ②携帯ストラップになってもらう ③やっぱり家に帰ってもらう。 76 名前:423[sage] 投稿日:2007/06/13(水) 22:15:29 ID:??? ②携帯ストラップになってもらう 「じゃあ、携帯ストラップになってもらっていい?」 「うん。いいよ」 言うが早いか、チハルは『ポン』と軽い音を立てて消える。 次の瞬間、私の手の平にはテディベアの携帯ストラップが乗っていた。 「おおおっ!!」 三人は同時に感嘆の声をあげる。 「マジでストラップになってるし……」 「これで先ほどの話が真実だと証明されたということか」 「また熊のぬいぐるみかよ」 修二君、一郎君、隆がそれぞれのリアクションをとっていた。 「大人しく、いい子でいてね」 私は小さなテディベアをギュっと握り締める。 テディベアになったチハルは手の中で苦しそうにジタバタと手足を動かした。 「い、痛かった? ごめんね」 「ははっ。携帯ストラップになっても性格は変わらないんだな」 隆は私の手の平の携帯ストラップをひょいと奪い取ると、チハルをつついた。 チハルは手足を懸命に動かして、隆の指から逃げようとしている。 「……遊んでいる暇は無い。早くしないと授業が開始していまう」 一郎君は腕時計をチラリと眺めて、ため息を吐いた。 「真面目な兄貴が遅刻だなんて、クラスの奴らきっと驚くよな」 「……うるさいぞ、修二」 一郎君はジロリと睨みつける。 「おお、怖い怖い。それじゃ、別れは惜しいけど愛菜ちゃん、バイバイ」 「大堂。また今度、詳しい話をきかせて欲しい」 私達よりも一足先に一郎君と修二君は教室へ向かった。 「愛菜。俺たちも早く行こうぜ」 隆に促され、私は走り出す。 あれ? 私、何か忘れているような気がするけど……。 私は… ①今日から隆がうちに来る事を思い出す。 ②とりあえず教室へ急ぐ ③春樹にチハルを預けにいく事を思い出す。 77 名前:424[sage] 投稿日:2007/06/13(水) 22:55:23 ID:??? ③春樹にチハルを預けにいく事を思い出す。 「隆!先に行ってて、春樹にチハルを預けてくるから!」 「おい、授業に遅れるぞ?」 「適当に言い訳しといて!」 「言い訳って…」 「じゃ、よろしくね!」 言いおいて、一年生の教室へ向かう。 (いまなら、まだギリギリ授業前だから、先生は教室についてはいはず…) 春樹の教室まで走り、後ろのドアから中をのぞく。 まだ、教室内はざわめいていて先生が居ないことがわかる。 私はそっと後ろの戸を開けると、一番近くの席の子に春樹を呼んでもらう。 「おーい、春樹!おまえご指名」 「え?」 その声に、いっせいに教室内の視線が私に集まる。 (うわ…、恥ずかしいかも…) 「姉さん?どうしたのさ」 春樹は私をみて走りよってくる。 教室内の視線を避けるように、廊下に出て、春樹は後ろ手に戸をしめる。 「あのね、これ…春樹もってて」 「何…?これって…」 強引に渡された携帯ストラップをみて春樹は複雑そうな視線を向けてきた。 「うん、チハルなんだけどね、学校に居る間は春樹がもってて。それじゃ私教室戻るね。授業おくれちゃう」 「ちょっと、姉さん!」 春樹の声が追いかけてきたが、私は気にせずに教室へと小走りで向かう。 (春樹頑固だから、これくらい強引じゃないと絶対受け取ってくれないわ) そう思いながら、門を曲がったとたん誰かにぶつかった。 「きゃ…」 反動でよろけると、がっしりした手が私を支えた。 「大丈夫か?廊下は走るんじゃない」 「あ…、近藤先生……すみません」 近藤先生は今の時間授業がないのか、手ぶらで何ももっていなかった。 「ん?……君は確か……」 ①「春樹の姉です」 ②「すみませんぶつかるの2度目ですね」 ③「授業に遅れてしまうので、失礼します」 78 名前:77[sage] 投稿日:2007/06/13(水) 22:57:34 ID:??? そう思いながら、門を曲がったとたん誰かにぶつかった。 ↓ そう思いながら、角を曲がったとたん誰かにぶつかった。 ですorz 79 名前:425[sage] 投稿日:2007/06/15(金) 14:39:51 ID:??? ①「春樹の姉です」 「ああ、大堂君の。ところで授業がもう始まるのだが……」 近藤先生はそこまで言って、ふと私の顔を凝視した。 「あ、あの…?」 「顔色が悪いな。あぁ、保健室へいく途中だったのか」 近藤先生は、ふと自分が歩いてきた方向を見て言った。 (わたし、そんなに顔色良くない?) 確かに昨日からいろいろあって、疲れはあまり取れていないけれど、昨日の夜よりはだいぶマシになっていた。 朝、一郎くんたちや隆、チハルも特にそういうことは言っていなかったけれど…。  キーンコーン 「あ…」 そこで、始業のベルが鳴った。 「だが、今日は保健室は開いていない。先生が研修で居ないからな」 「そうなんですか…」 近藤先生は少し考えるように眼鏡を人差し指で持ち上げる。 「少し休むにしても職員室、だと気疲れするか…ああ、茶道室、あそこなら畳だし茶道部が放課後につかうくらいだから、今なら横になっていても大丈夫だ」 近藤先生はすっかり私が具合が悪くて保健室へ行こうとしていたと思い込んでいる。 「茶道室の鍵を持ってくるから、先に行っていなさい」 近藤先生が職員室へ向かって歩いていこうとする。 どうしよう… ①「はい、わかりました」 ②「いえ、教室へ戻ります」 ③「具合が悪いわけではないので…」 80 名前:426[sage] 投稿日:2007/06/15(金) 22:27:12 ID:??? ①「はい、わかりました」 近藤先生の言うことを素直に聞いて、私は茶道室に向かって歩き出す。 (思っていた以上に疲れがたまっていたのかな) 茶道室の前でそんな事をぼんやり考えていると、近藤先生がやって来た。 その手には誰かの持ち物なのか、花柄のブランケットを抱えている。 「待たせたな」 近藤先生は鍵穴に鍵を差込み、引き戸を開けてくれた。 「……失礼します」 慣れない場所で、少し緊張しつつ靴を脱ぐ。中に入ると、ほんのりといぐさの香りがした。 「大丈夫か? もし、辛いようなら帰宅を進めるが」 近藤先生は戸口の前に立ったまま、話しかけてきた。 ひとつ高い段差にいるはずなのに、まだ先生を見上げなければならない。 「少し休めば大丈夫だと思います」 「そうか。では私は行くが、気分が優れないときは職員室に来るように」 「はい」 「あと、君のクラスの担任教師には私の方から伝えておくが…何年何組だ?」 私はクラスと自分の担任の名を伝えた。 「了解した。あとこれは……少し小さいかもしれないが寝るときに使いなさい」 近藤先生はそう言って、私にブランケットを手渡してくれた。 そのブランケットを受け取り、「ありがとうございます」と言って会釈をした。 「気分が良くなったら、鍵を閉めて毛布と共に職員室に返しておいてくれればいい。 後で大堂君にも顔を出すように言っておく」 「すみません、お願いします」 それだけ言うと、近藤先生は去っていった。 (親切でいい先生かもしれないな) 私はフーっと息を吐きながら畳みに座り込み、ブランケットを膝にかけた。 (ひざ掛けとして使っていたのかな。誰の物だろう? まさか近藤先生の物じゃないよね) そう思っているとタグに名前が書いてあるのを見つけた。そこには『水野』と書いてある。 私は ①使うのをためらう ②考える ③とりあえず横になる 81 名前:427[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 07:07:10 ID:??? ③とりあえず横になる (いくら水野先生の持ち物だからってブランケットが何かするってことは、ないよね) 一瞬不安が過ぎったけれど、思い直して膝にかけたままその場に横になる。 すこしひんやりとする畳の感触を背中に感じながら、目を閉じると全身がけだるさに包まれた。やはり自分が思っているほど回復していなかったようだ。 (近藤先生、恐るべし、かも) そんなことを考えて、一人笑った。 瞼は閉じたまま、それでも眠りが訪れる訳でもなく静かに時は過ぎてゆく。何かを考えるのも億劫で、まるで壊れたぜんまい仕掛けの人形のように横たわっていた。 時間の感覚もないまま、どの位そうしていたのだろうか。 一人きりの茶道室に不意に入口の戸をノックする音が響いた。 (誰だろう……?) 返事をしようとしたのに空気が漏れるばかりで何故か声が出ない。起き上がろうにも体は重く固まってしまったように動かない。 やっとのことで重い瞼を開けると、音も無く滑るように入口の戸が開いた。 そこに立っていたのは…… ①近藤先生 ②春樹 ③御門くん 82 名前:428[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 10:47:54 ID:??? ①近藤先生 私が目を開けているのを見て近藤先生は少し片眉をあげる。 「返事がないから眠っているのかと思った、具合はどうだ?」 言いながら近寄ってくる近藤先生を目線で追う。 「すみません、ちょと動けそうにないです…」 声を出すのも一苦労で、ちゃんと先生に聞こえているかすらわからない。 近藤先生は、さらに顔をしかめ私の額に手を置く。 「熱はないようだが…」 そんな近藤先生をぼんやりと見ていると、ふと先生の背後の天井にくろい靄が見えた。 (あれは…ファントム!?) 慌てて起き上がろうとするが、体は言うことをきかず腕が少し動いただけだった。 けれど、ファントムは何かするでもなくそのまま消えていく。  キーンコーン そのとき、授業終了のチャイムがなった。 「ああ、授業が終わったが…、君は帰ったほうが良いんじゃないか?」 確かにこの調子では勉強どころではない。 私が頷くと、近藤先生も頷いて立ち上がる。 「私は車だから送っていこう。お家の方にも連絡してくるから」 「あ、あの!家には誰も…」 もう両親とも仕事に出てしまっている。 先生が私の言葉に、難しい顔をして何か口にしようとしたとき、急に廊下が騒がしくなる。 バタバタと誰かが走ってくる足音が複数。 あいたままの戸から姿を見せたのは、隆と修二君だった。 「愛菜!」 「愛菜ちゃん!」 二人は私の顔を見てほっとしたようにため息をつく。 「心配させるなよ…、すぐ戻ってくるって言いながら全然戻ってこないから…っと、近藤先生」 隆が文句をいいながら私に近づこうとして、隣に近藤先生が居ることに気づく。 (あ、さっきの影は隆が私を心配して…探してくれたんだ) あれ、じゃあ修二君はどうやって私の場所がわかったんだろう? 隆は同じクラスだけど、修二くんは別のクラスだから私が授業に出なかったことは知らないはずなのに…。 「愛菜ちゃん大丈夫?今日の朝微妙に体調が悪そうだったから心配してたんだよ?……愛菜ちゃんの力が教室じゃないところにあるから心配しちゃったよ」 私の隣までやってきた修二君が、心配そうな顔をしたまま言う。最後のほうは近藤先生に聞こえないように小声だ。 「二人とも静かにしなさい、大堂さん、家に誰も居ないなら学校で休んでいるか?誰も居ない家よりは、まだ人が居る学校のほうが良いかもしれない」 近藤先生の言葉に少し考える。 どうしよう… ①家に戻る ②このままここで休む ③がんばって授業に戻る 83 名前:429[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 20:14:45 ID:??? ③がんばって授業に戻る (この間も学校を休んでいるし、授業を受けないと遅れちゃうよ) 勉強どころではないほど疲弊しているけれど、無理は承知の上だった。 先週は怪我や力の騒動でほとんど授業に出ていないのに、文化祭が終わったらすぐに中間テストが待っている。 優秀な春樹や双子の二人とは違って私の場合、それなりに頑張らないとすぐ成績が下がってしまう。 「授業に戻ります。そうしないと……ついていけなくなってしまいますから」 両手をついて立ち上がろうと力を入れるけれど、腕に力が入らない。 「だ、大丈夫? 愛菜ちゃん」 隣にいる修二君がすかさず私を支えてくれる。 「まだ顔色が悪い。無理をして授業に出たとしても、その状態では身につかないだろう」 「そうだぜ、愛菜。お前の分までしっかりノートとってきてやるから、大人しく寝てろ」 (隆の字って特徴ありすぎて、ノートを見せてもらっても多分読めないよ) そんな私の心の声など届くはずもなく、近藤先生と隆は当然のように反対してきた。 けれど、修二君だけは反対せず、ゆっくり私を立ち上がらせてくれる。 「愛菜ちゃんが授業に戻るって言っているし、行かせてあげなよ」 隆に向かってそう言うと、今度は先生に向き直る。 「先生はご存知無いかもしれませんが、大堂さんは先週怪我をしてしまって休んでいます。行かせてあげてください」 (え? てっきり修二君にも反対されると思ってたのに) 私は修二君の顔をじっと見つめる。 すると、私に向かってウインクしながら、小声で「俺に任せて」と話しかけてきた。 (修二君?) 「お願いします。次の授業に行かせてください。隆もいいよね?」 私は改めて、先生と隆ににお願いする。 二人とも仕方がなさそうに、なんとか納得してくれた。 キーンコーン 「ヤバイ、授業が始まった! 愛菜。早く戻ろうぜ」 チャイムと同時に隆に促される。 「ごめん、隆。先に行ってて。私、ここの鍵を返してくるよ。修二君もありがとう。近藤先生、ご心配をおかけしました」 全員にペコリと頭を下げる。 「無理だと感じたらすぐ誰かに言いなさい」 「愛菜。早く戻ってこいよ」 そう言いながら、二人は廊下へ出ていった。 「修二君。もう授業が始まったよ?」 私は茶道室に残ったままの修二君に話しかける。 けれど、修二君は何も言わずに後ろ手で扉を閉めてしまった。 「え……。修二君?」 「……愛菜ちゃん。さっき、俺に任せてって言ったよね?」 そう言いながら、修二君はじりじりと私に向かって近づいてくる。 私は…… ①何か考えがあるのか尋ねる ②二人きりが怖くなって逃げる ③黙っている 84 名前:430[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 21:53:29 ID:??? ①何か考えがあるのか尋ねる 「何か、いい考えでもあるの…?」 じりじりと近づいてくる修二君を見上げながらたずねる。 修二君はにっこり笑うと頷いた。 「もちろん。愛菜ちゃんの今の状態は慣れない力の使いすぎによるもの。わかってるよね?」 修二君の言葉に、私は頷く。 「で、使い方がうまくないから、余計な力をつかっちゃって今とっても不安定になってるんだ。ここまでオッケ?」 私は再度頷く。 「不安定になってるから、心と体がうまくつながっていなくて、体がだるく感じたりうまく動かせなくなってるんだよね」 「なるほど…」 修二君の説明はわかりやすい。 「だから、今の状況を打開するには、不安定になっている力を正常に戻してやればいい」 「そっか…、でどうするの?」 「方法は二種類。自分で意識的に不安定になっている力を元に戻す方法。でも愛菜ちゃんは力の使い方がうまくできてないみたいだから、今回はもう一つの方法になる」 「それは?」 「外部から働きかけて正常に戻す方法」 「要するに、修二君が外から私に働きかける、ってこと?」 「そういうこと!いいかい、俺を信じて拒まないで流れを感じるんだ」 「わかった」 「それじゃあ、目を閉じて、深呼吸をして」 私は言われたとおり目を閉じて深呼吸をする。 「心を落ち着かせて…ゆっくり息を吸って、吐いて、吸って…」 修二君の言葉にあわせるようにゆっくりと呼吸をする。 声にあわせて息を吸ったとたん、やわらかいものが口に触れた。 そこから、なにかが流れ込んでくる。 驚いて目を開けると驚くほど至近距離に修二君の顔。 (キス…してる!?) そう思ったときには、修二君が離れていった。 「どう?今のでだいぶ良くなったはずだけど」 突然のことに呆然としている私に、修二君が尋ねてくる。 言われれば、確かにかなりすっきりしている。 「もしかして初めて?」 修二君がちょっと笑って言う。確かに初めてだ。けれど何も言えずに黙っていると、修二君が立ち上がる。 「そっか……俺が初めてなんだ、ありがとう愛菜ちゃん」 (何がありがとうなのかさっぱりわからないよ、それに何でそんな顔するの…?) 混乱気味の私に、修二君は胸が苦しくなるくらい綺麗に微笑んで、私に背を向けると部屋を出て行く。 (あ…これって…夢で……) フラッシュバックする夢の記憶に慌てて追いかけようと足を踏み出しかけ、小さな金属音に足を止める。 (ここの鍵…) 落としてしまった鍵を拾い上げる。 どうしよう… ①修二君を追いかける ②職員室に鍵を返しに行く ③鍵はあとにして教室に戻る 85 名前:431[sage] 投稿日:2007/06/17(日) 23:57:17 ID:??? ①修二君を追いかける 軽くなった体で部屋の扉を開けると、廊下にはすでに誰もいなかった。 「修二君……」 (どうして胸の締め付けられるような微笑み方をしたの?) 口説き文句か軽口で冗談と本気の区別がつかない修二君が、あんな顔するなんて思いもしなかった。 私が今まで思っていた修二君とはあまりにかけ離れていた。 (私……修二君を誤解していた?) 軽薄でたくさんの女の子のファーストキスを奪っても何も思わないような人だと決め付けていた。 だから私がファーストキスだって事も、言い出せなかった。 もちろん驚いて何も言えなかったのもある。 でも、それだけじゃない。 恋愛に疎いと思われるのが恥ずかしかったし、逆に『ラッキー』と幸運がられるのも悲くなるだけだからだ。 だけど、あの微笑はもっと複雑で優しさに満ちていた。 それに「ありがとう」の言葉も――まるで修二君を信じ、疑わなかった事へのお礼みたいにも聞こえた。 私は自分の唇にそっと触れてみる。 力の安定化が目的だったとはいえ、キスしてしまった事実に変わりは無い。 (修二君とキスしてしまったんだ……) 予知夢通りに起こった出来事。 けれど夢ではなく、これは現実に起こった事だとようやく実感が湧いてくる。 次に会うときは、普通に接することが出来るだろうか。 まして口説き文句に対して今まで通りに軽く流せる自信もない。 (困ったな……。とても冷静ではいられないよ) 私は… ①鍵を職員室に返しに行く。 ②鍵はあとにして教室に戻る。 ③頭を冷やしにいく。 86 名前:432[sage] 投稿日:2007/06/19(火) 21:37:04 ID:??? ①鍵を職員室に返しに行く。 職員室に入ると、鍵と水野先生のブランケットを事務員の人に渡す。 (ほっ。水野先生がいなくてよかったかも) 教室に戻り、担当教科の先生に一言伝えて席に戻った。 「愛菜っ。愛菜」 つんつんと背中をつつかれ後ろを向くと、小声で香織ちゃんが話しかけてくる。 「愛菜ってばっ!」 「どうしたの? 香織ちゃん」 「あんた大丈夫なの?」 (そっか。きっと、隆から聞いたんだよね) 「うん。少し体調が悪かったけど、もう平気だよ」 そう答えながらもさっきの出来事が頭をかすめ、私はフルフルと首を振った。 (あれは治療みたいなものよ。治療、治療……) 自分に言い聞かせるように、ブツブツと呟く。 「本当に平気なの? そう見えないから心配しているんだけど。自分の顔、ちゃんと見た?」 「え?」 私は持っている手鏡で自分の顔をそっと覗き見る。 (私、顔が真っ赤だ……。) 「そこの二人、何をやっている! 私語を慎みなさい」 先生の厳しい一言に、私達は話をやめて授業に戻った。 その後もいつも通りの時間割をこなし、あっという間に放課後になった。 さて、これからどうしようかな? ①文化祭の準備をする。 ②春樹とチハルが心配なので一年の教室へ向かう。 ③修二君にお礼を言いに行く。 87 名前:433[sage] 投稿日:2007/06/20(水) 09:58:20 ID:??? ①文化祭の準備をする。 先週末も怪我で二日も準備を休んでいる。 今日こそ手伝わないとクラスのみんなに申し訳なさ過ぎる。 「香織ちゃん、今日は準備何するの?」 「愛菜、無理しなくて良いから帰ったら?」 「大丈夫、もうすっかり良いし」 私は香織ちゃんに笑ってみせる。 実際、朝とはぜんぜん違いすっきりしている。 「そう?それなら良いけど…えっと文化祭の準備、今日はこれ!」 「ダンボールに色塗ればいいのね?」 「そうそう、井戸らしくしてね?」 「井戸ね…」 ダンボールを受け取って廻りを見渡す。 みんな机や椅子を寄せてダンボールを広げて色を塗ったり、変装用の衣装を縫ったりしている。 (ていうか、場所がないんだけど…) 所狭しと広げられたダンボールで、スペースがない。 廊下も覗いてみるが、廊下にも人はあふれている。 どうしよう… ①どこか別の場所を探す ②先に他の人を手伝う ③誰かが終わるまで待つ 88 名前:434[sage] 投稿日:2007/06/20(水) 23:28:53 ID:??? ①どこか別の場所を探す (そうだ。階段の踊り場だったら空いているかもしれない) 廊下を抜けた先にある階段に目を向けると、やはり誰も作業している人はいなかった。 (邪魔にならない程度のスペースを借りてもいいよね) 私はダンボールと絵の具を持って踊り場の端に陣取る。 そして、黙々と色を塗り始めた。 もともと単純な作業は嫌いじゃなかったし、なによりクラスで一つのことをするのは楽しい。 そんな事をぼんやり考えながら、手を動かし作業を進めていく。 (よし、少しは石の井戸に見えるかな?) 半分ほど塗り終えたところで、壁に立てかけて出来栄えをチェックする。 (うん、上出来かも。総プロデューサーの香織ちゃんに一度見てもらおっと) 「………それは、大きな豆腐ですか?」 突然、私の真後ろで誰かかぼそりと呟いた。振り向くと、ボーっと御門君が立っている。 「び、びっくりした。御門君、どうしたの?」 私が驚いているのを見て、御門君は「すみません」と謝った。 「これは豆腐じゃなくて、一応、石で出来た井戸を描いたつもりなんだけどな」 私は目の前の作品を指さして、説明する。 豆腐だと思われたままでは、今まで頑張った苦労が報われない。 「石……。井戸……。なるほど、説明されれば…そんな気がしてきます」 「そんな気がするだけ?」 「いえ、描いたあなたが言うのであれば、これは間違いなく井戸です」 御門君は心の目で見るように、私の絵を見据えていた。 「だけど、豆腐なんて失礼しちゃうな。一時間以上かけた私の力作なのに」 「前衛的で良いと思います……」 「それ、本当に褒めてくれているのかな?」 「はい。精一杯褒めているつもりです」 (うーん。一応気を使ってくれているみたいだけど…あまりに正直すぎて逆に身も蓋もないなぁ) せっかくだし、何か聞こうかな? ①どこのクラスか尋ねる ②文化祭では何をするのか尋ねる ③私に何か用事があるのか尋ねる 89 名前:435[sage] 投稿日:2007/06/21(木) 10:42:57 ID:??? ①どこのクラスか尋ねる 「そういえば御門くんって何年何組なの?」 思いついて尋ねる。 御門くんは胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、私に見せてくれた。 そこには3年2組と書かれている。 (御門くんて年上だったんだ…) そういえば、ショッピングモールで周防さんもそれらしきことを言っていた。 御門くんに手帳を返して、塗りかけのダンボールを見る。 (豆腐……) そういわれてみると、豆腐にしか見えなくなってくる。 けれどだからと言ってどうすれば井戸になるのか、といわれるとこれ以上どうしようもない気がする。 「………」 「あ…?」 ダンボールを見て悩んでいると、御門くんが私の手から絵の具を奪っていく。 「…手伝います」 「でも…御門くん、自分のクラスのほうはいいの?…って、先輩なんだから、御門先輩って呼ばなきゃだめか」 私の言葉に、御門くんはじっと私をみて不意に首を振る。 「冬馬」 「…え?」 言われた単語に、意味を図りかねて問い返す。 「あなたは、僕以外名前で呼びます」 御門くんに言われて、思い返す。 隆は幼馴染で香織ちゃんは親友だからずっとそう呼んでいた。 春樹は弟だから、当然名前。 一郎くんと修二くんは双子で苗字が同じだから自然と名前で呼んでいる。 周防さんは、苗字じゃなく名前で呼んで欲しいと最初に言われた。 (確かに言われてみれば、そうね…) 要するに、御門くんも名前で呼んで欲しいということなんだろうけど…。 どうしよう…。 ①やっぱり御門くん ②冬馬くん ③冬馬先輩 90 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/06/21(木) 22:54:25 ID:??? ③冬馬先輩  (うーん…) せっかくの申し出なんだし、『御門くん』で通し続ける必要はない。 だからって、年上だと言う事実を知った今……『冬馬』とか『冬馬くん』って言うのは失礼な気がする。 でも『冬馬さん』って言うのは、今まで『御門くん』と読んでいたせいかかなりおかしさを感じる。 「えーと、じゃあ…………冬馬先輩、とか?」 考えた末、私はおそるおそるその呼び名を口に出してみた。 「…………」 御門くんは相変わらず無表情のまま、何も言わずに私をじっと見つめている。 (だ、ダメなのかな……) 「あの、ど、どうかな?」 不安になりながらも、再度聞き返す。 すると、御門くんが緩慢な動きで私の方へ手を伸ばす。 そしてそれは、ぽん…と私の頭の上にそっと乗せられた。 「え……」 「ありがとう、ございます」 呟くように御門くんは言う。 だけど、その表情も口調もいつもとは少し違っていた。 (……困ってる……?ううん、ちょっと違う) 本当に気をつけていなければわからない、僅かな変化。 でも、私にはなんとなく伝わってくるような気がした。 (もしかして……御門くん、照れてる、のかも?) そんな御門くんを見て、私は… ①「もしかして、照れてる?」と聞いてみることにした ②ほほえましくなって、小さく笑ってしまった ③敬語を使ったほうがいいのかな、とふと考えてしまった 91 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/06/22(金) 23:50:13 ID:??? 今になって気が付いた。 上は436でお願いします。 92 名前:437[sage] 投稿日:2007/06/23(土) 01:57:29 ID:??? ②ほほえましくなって、小さく笑ってしまった 「…………」 なぜ笑っているのかわからないのか、御門君は私を見つめながら首をかしげていた。 「……改めて冬馬先輩。これからもよろしくお願いします」 私は目の前の冬馬先輩に向かって、笑いかける。 冬馬先輩は満足そうに頷くと、頭に乗せている手をゆっくり離した。 「ところで…これからは敬語を使ったほうがいいのかな?」 後輩の私がタメ口で先輩が敬語なんてなんだかあべこべだ。 だけど冬馬先輩は首を横に振って、私の提案を否定した。 「従者に対して敬語を使う必要はありません」 「え…。従者?」 「はい。僕はあなたの剣なのです」 (あ。そうだった……) 公園で冬馬先輩は私のことを『我が主と定めた人』と言って契約していた。 契約上では主従関係が成立しているのは確かだ。だけど、私としては主の自覚なんて全く無いから困ってしまう。 「そう言われても、自覚無いよ」 「契約によって定められた以上、この事実が覆ることはありません」 「私を守るために契約してもらったのに…。なんだか悪いよ」 「……悪くないです」 「でも……」 「……でもじゃないです」 「先輩と知ってしまったわけだし…」 「では忘れてください。それよりも……まずはこの井戸を一緒に仕上げましょう」 そう言いながら冬馬先輩は絵の前に立って、再び筆を持った。 (先輩が許してくれないんじゃ、仕方ないか) 相変わらず目の前には豆腐にしか見えない井戸が塗りかけのままになっている。 (冬馬先輩の言う通り、目の前の難題をどうにかしないと) ①「この豆腐、どうにかなりそう?」 ②「冬馬先輩のクラスは手伝わなくて平気なの?」 ③「一から作り直す?」 93 名前:438[sage] 投稿日:2007/06/23(土) 12:02:12 ID:??? ②「冬馬先輩のクラスは手伝わなくて平気なの?」 私が問いかけると、冬馬先輩は絵からこちらへと視線を戻す。 「はい。問題はありません」 そして頷きながらそう答えた。 「あれ?そうなの?」 あまりにあっさり肯定の言葉が返ってきたので、私は少しあっけに取られてしまう。 「はい。 3年生は、文化祭の準備・参加ともに生徒の自由ということになっていますから」 冬馬先輩の口から出た事実は、初めて聞くものだった。 私は(去年もそうだったんだっけ?)と疑問に思いつつも、質問を続ける。 「三年生は自由って、どうして?」 「この時期になると、受験や就職などで忙しい人も出てくるからそのための配慮である…とのことです」 「え?ああ、なるほど……」 その答えを聞いて、私は納得した。 (それにしても) 冬馬先輩のいつもの話し方は、まるでそれが『自分には関係していない事実』を語っているかのように聞こえた。 (冬馬先輩だって当事者のはずなんだけどなぁ……) 内心苦笑いしつつそんなことを思った。 「ですが、中には有志を募って何かの企画を実行しようという動きがいくつか出ているのも聞いています」 そこまで言い終えると冬馬先輩は再び絵に視線を戻し、やがてその絵のほうにおもむろに近づいていった。 「へぇ……そうなんだ」 私は冬馬先輩についていって、その後ろから絵を覗き込む。 「ところで、冬馬先輩は…… ①その有志の企画には参加しないの?」 ②受験とか就職とかは大丈夫なの?」 ③これからこの絵をどうするつもりなの?」 94 名前:439[sage] 投稿日:2007/06/23(土) 22:38:39 ID:??? ①その有志の企画には参加しないの?」 他人事のように話す冬馬先輩がどうしても気になってしまう。 友達と文化祭で盛り上がる冬馬先輩の姿を想像しようとしても、すぐには思い浮かばない。 「…………」 「先輩、聞いてる?」 何も言わない冬馬先輩の背中に向かって話しかける。 「それは……僕に参加して欲しいという事ですか?」 ようやく私に向かって口を開いた先輩は、やっぱり他人事のようだった。 「そういうわけじゃないけど…。せっかくだから、文化祭を楽しんで欲しいなと思って」 「楽しむ……」 考え込むように、冬馬先輩は呟いた。 「うん。受験とか就職も大変だと思うけど、クラスのみんなで騒げるのって今しか出来ない事だしね。 私はそういう時間を大切にしたいなって思うんだ」 「…………」 「あー…。そんなに大げさじゃないんだよ。単なるお祭り好きなだけ」 そう言って、私はぺロッと舌を出しておどけてみせた。 「…………」 「とにかく! 今はこの絵を仕上げなきゃね」 冬馬先輩は相変わらず考え込むようにして、黙ったまま私を見つめ続けている。 私は座り込み、豆腐にしか見えない絵に向かって再び筆を動かし始めた。 だけど、冬馬先輩は私を見つめたまま動こうとはしない。 どれくらいの時間が経過したのかわからない。 ずっと立ち尽くしたままの冬馬先輩が私の隣に座ると、静かに話しかけてきた。 「愛菜。あなたにとって……学校とは何なのですか?」 「え?」 突然の質問に面食らってしまった。 「愛菜。答えてください……」 そう尋ねてくる冬馬先輩の顔はなぜか真剣そのものだった。 (冬馬先輩は真剣なんだ。私も真剣に答えなきゃ……) ①大切な場所 ②楽しい場所 ③わからない 95 名前:440[sage] 投稿日:2007/06/23(土) 23:16:19 ID:??? ①大切な場所 「改めて聞かれると…でも、大切な場所、かな?」 「……」 私の答えに、冬馬先輩は無言のまま私を見つめ続ける。 「ほら、学校って色々勉強できるじゃない?  まあ、勉強はあんまり好きじゃないけど、学校って自分がやりたいことを見つける場所だって、お父さんが言ってたんだ」 昔、私が勉強なんて面倒だなんでやらないといけないのかと言ったとき、お父さんがそういったのだ。 「いろいろなことを勉強して、自分がしたい事、できることを見つける場所なんだって。  それはほとんどの場合、学校に通ってる間に見つかるものだって」 そのときのことを思い出しながら、私は続ける。 「それから、すてきな出会いを見つける場所でもあるって。  私はこっちのほうが実感あるな。  将来のことってまだ漠然としてるけど、大切な友達はたくさんできたし。  ほら、冬馬先輩にもあえたじゃない?うん、やっぱり大切な場所だよ」 「大切な、場所……」 「冬馬先輩はそうおもわない?」 ポツリとつぶやいた冬馬先輩に、私は尋ねる。 「……そうですね、僕も愛菜に会えました」 冬馬先輩は私に頷いて……… 「!!!!!」 「どうかしましたか?」 「い、今……」 「……?」 (笑った、ちょっとだけど絶対に笑った!) ものすごく珍しいものを見た。 もう元の無表情にもどっているけれど、どことなく不思議がっている雰囲気が伝わってくる。 なんて言おう… ①「なんでもない」 ②「今、笑ったよね?」 ③「私に会えたことがそんなにうれしいの?」 96 名前:441[sage] 投稿日:2007/06/24(日) 02:36:55 ID:??? ②「今、笑ったよね?」 思わず冬馬先輩本人に確認してしまう。 「………?」 だけど冬馬先輩は私が驚いている理由について、まるでわかっていないみたいだった。 (自覚なしか…。ちょっと残念) 「でも、冬馬先輩。どうしてこんな事きくの?」 「…………」 「学校について知りたかった?」 先輩は小さく頷いた。 「そっか。実は私も学校が大切な場所って自覚できたのは最近なんだ」 「………どういう事、ですか?」 冬馬先輩は私を見つめながら尋ねてきた。 「失うかもしれないと思って、初めて気付いたんだよ」 「…………」 「本当は、今でもここに居ていいのかずっと悩んでるの。もし何か事件があれば、それは私のせいかもしれない。 友達も、勉強も、出会いも、将来の自分探しも、突然目の前から無くなってしまうかもしれないんだよ」 冬馬先輩は黙って私の話に耳を傾け続けている。 ただ頷くだけだったけれど、それが今は心強い。 「大切な友達を巻き込む可能性だってあるのは知ってる。わがままなのもわかってる。 だけど……ここが私の居場所だもん」 「…………」 「豆腐みたいな井戸しか描けないけど、これから先もここに居ていいよね?」 「……はい」 「みんなと思い出作りしても……いいんだよね?」 「……はい」 ずっと言えなかった、漠然とした不安。 それを吐き出した時、私は…… ①泣いていた ②すっきりした ③自然と笑顔になれた 97 名前:442[sage] 投稿日:2007/06/25(月) 11:33:53 ID:??? ③自然と笑顔になれた 「…よかった」 冬馬先輩が頷いてくれたことに、ホッとする。 このことについて、かなり不安だったけれど大丈夫だと肯定されたことにとても救われた。 「さて、それじゃあこれを何とかしないとね!」 私はすがすがしい気持ちで、ダンボールに向き直る。 気合いを入れなおして絵の具をダンボールに塗る。 冬馬先輩も頷いてダンボールに色を塗り始める。 「こんなもん?」 しばらくして完成した井戸は、冬馬先輩の助けもありさっきよりずっと井戸らしくなった。 (変な所で非常識なのに、こういうセンスはあるのね…) 「冬馬先輩、手伝ってくれてありがとうございます」 私がお礼を言うと、冬馬先輩は小さく首を振りふと階段を見上げる。 つられて階段に視線を移すが誰も居ない。 不思議に思っていると、足音が聞こえた。 誰かが降りてくるようだ。 なんとなく、冬馬先輩と階段を見上げたまま下りてくる人物を待つ。 降りてきたのは… ①修二 ②近藤先生 ③香織 98 名前:443[sage] 投稿日:2007/06/26(火) 23:19:05 ID:??? ①修二 「あ、愛菜ちゃん……と?」 修二君は私を見てにっこり笑い、それから隣の冬馬先輩に気づいて記憶を探るように首をかしげた。 心の準備もないまま修二君に会ってしまって、私は顔が赤くなるのを自覚する。 けれど修二君はそんな私の様子に気づかないまま、じっと冬馬先輩を見ている。 その顔だ段々を険しくなっていくのを見て、私は慌てる。 私が冬馬先輩を紹介しようと 「愛菜」 そんな修二君の様子を気にしているのか居ないのか、冬馬先輩は私の名前を呼ぶ。 「え?あ…なに?」 修二君を気にしながら返事をすると、冬馬先輩は持っていた筆を私に返してきた。 それからゆっくりと手を持ち上げる。 その手を視線で追うと、ぺたりと私の額に当てられとまる。 「?」 「おい!」 不思議に思う私と、鋭い修二君の声。 「愛菜、今日はちゃんと休んでください」 「え?」 「今日は夢を見ずに眠れるように、おまじないをしておきました」 「あ…」 「愛菜ちゃんから離れろ!」 私が冬馬先輩にお礼を言おうと口を開きかけたところに、階段を駆け下りて来た修二くんに腕を引かれてたたらを踏む。 驚いて振り向くと鋭い視線で冬馬先輩をにらむ修二君。 その視線を受ける冬馬先輩は相変わらずの無表情で少しの間修二君を見ていたが、すぐに興味を失ったように背を向けて修二君が来た方向とは逆に階段を居り始める。 「あ、冬馬先輩!」 とっさに呼び止めると、冬馬先輩は足を止めて振り返った。 どうしよう… ①再度手伝ってくれた御礼を言う。 ②修二君を紹介する ③やっぱりなんでもない 99 名前:444[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 00:44:53 ID:??? ①再度手伝ってくれた御礼を言う。 「あの、手伝ってくれてありがとう。今日はゆっくり眠るよ」 私の言葉を聞き終えると、冬馬先輩は静かに頷く。 「ちょっと待てよ。そこのお前!」 修二君は鋭く言い放ち、私の手を離すと冬馬先輩に向かって歩き始めた。 「しゅ、修二君」 (冬馬先輩を敵視している?) 冬馬先輩は無表情のまま、階段の中ほどに立ちどまり修二君を見ていた。 「お前……やっぱり」 そう言いながら、修二君は険しい表情で冬馬先輩の前に立つ。 対峙する二人を私はただ見ていることしか出来なかった。 「やっぱり、お前はあの施設にいた化け物だよね」 「……………」 冬馬先輩は何も答えず、ただ修二君の言葉を聞いている。 「愛菜ちゃんの印を見た時からまさかとは思っていたけど……生きていたんだ」 「……………」 「巧妙に隠しても俺の目は誤魔化せないよ。どうして愛菜ちゃんと契約しているのさ?」 「……………」 冬馬先輩の表情からは何も読み取ることはできない。 いつも通り、感情の乏しい視線を向けるだけだった。 「化け物だから話もできないの?」 「……………」 「冬馬、なんて立派な名前があるんだね。驚いたよ」 「……………」 「話せるならちゃんと答えなよ、コードNO.673。いや…今は冬馬先輩といった方がよかったのかな?」 修二君は挑発するように、冷たく笑った。 冬馬先輩は表情を変えず修二君に向き直ると、ゆっくりと口を開く。 「ではこちらからも問おう、コードNO.711。君こそ何が目的なんだ」 (二人の関係は、一体、なに? それにコードNO.711って…まさか修二君のこと?) 私は… ①黙って様子を見る ②修二君に尋ねる ③冬馬先輩に尋ねる 100 名前:445[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 10:05:03 ID:??? ①黙って様子を見る 「そんな番号で呼ばないでくれる?俺には修二って名前があるんだよ」 修二くんは心底不快だというように、思い切り顔をしかめる。 「それに俺は…俺たちはアンタと違う。  最初から番号で呼ばれてたアンタと、名前があるのにあいつらに勝手に番号つけられた俺たちじゃ最初から相容れない存在だよ」 フンと、鼻で嗤い修二くんはヒラヒラと手を振る。 「俺の目的?そんなの決まってる。平穏な日常。これが俺が望むことさ。  組織のちょっかいのおかげですっかり平穏から遠い生活送らせてもらってるからねえ?」 修二くんは、あーいやだいやだ、と再度顔をしかめた。 それでもだんだん、修二くんはいつもの軽い雰囲気に戻っていく。 「出来れば組織の目的、教えてくれるとうれしいんだけどね?冬馬先輩。  まったく、人のこと利用しようとするだけして、なーんにも教えてくれないんだもんねぇ。  そんな奴らに俺たちが協力できるとでも思ってるの?」 まあ簡単に教えてくれるならこっちも苦労しないけどね、と修二くんはそのことについては答えをまったく期待していないようで肩をすくめる。 「で?俺の目的は言ったよ?今度はアンタが答える番だよ。冬馬先輩?」 「………」 「俺だけに言わせるだけ言って、自分はだんまりなわけ?」 「…約束をした」 「は?」 「あの人と約束をした」 「…それじゃ訳解らないよ?あの人って誰よ?ふざけてるの?」 修二くんの表情が再度険しくなっていく。 (あぁ、修二くん…冬馬先輩はそういう人なんだってば…) 必要最低限のことしか答えないのは、誰にでも同じことだ。 けれど修二くんには、冬馬先輩が答えをはぐらかしているように聞こえるのだろう。 どうしよう…? ①成り行きを見守る ②修二くんにお母さんのことを説明する ③二人の言い合いを止める

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