cable_2010_02_10STATE017263

Wikileaks公電文書 10STATE17263


※訳と構成について
原文10STATE017263の特徴として、¶2以降「~と(人)が言った」「~と(人)が答えた」という風な三人称体が続き、元に忠実な訳では読みづらいと感じました。そこで当訳では、[(人)]に続く文は(人)が口語で話している形にしています。無い場合は公電著者の記述です。訳として落とした表現も多々ありますが恐らく文脈は合ってると思います。誤訳等ありましたら修正お願いします。
現在¶36まで訳せておりラストが¶77なので約50%の完成率です。放っておくと忘れそうなのでとりあえず半分投稿させて頂きました。



S E C R E T STATE 017263

SIPDIS

E.O. 12958: DECL: 02/24/2035
TAGS: ETTC IR KN MTCRE PARM RS TSPA

SUBJECT: U.S.-RUSSIA JOINT THREAT ASSESSMENT TALKS -
DECEMBER 2009
米露共同脅威評価(JTA)会談

REF: 09 STATE 082572

Classified By: ISN Acting A/S Vann H. Van Diepen. Reason 1.5 (D)


(U) Summary

要約

米国の省庁間チーム ―ISN(国際安全保障・不拡散局)長官補佐代行 Vann H. Van Diepen氏が座長― は2009年12月22日、共同脅威評価(JTA)の議論の第2ラウンドのために、ロシアの省庁間チーム ―Vladimir Nazarov国家安全保障評議会事務局副幹事が座長― と会合した(以下の76,77項に全参加者リストが示されている)。JTAの第二回の開催は、2009年の米露協議におけるミサイル防衛問題に関する共同声明で合意されていた。

ロシアの代表団は真剣に取り組む用意ができており、プレゼンテーションでイラン・北朝鮮のミサイル計画の評価を行った。プレゼン内容は以下の通り。「様々なミサイル計画によって引き起こされるリスクの評価の概念的枠組み」「パキスタンの情勢不安と核兵器・ミサイル安全保障に関するロシアの懸念」「イラン・北朝鮮の機関のどちらもが核とミサイルの技術・材料をロシアで得ている、もしくはロシアの領土を経由して積み替えていることに対してのロシア連邦保安庁の対応」

ロシアはミサイル計画阻止に関して戦略レベルで協力する議論を準備していたが、その立場は以前と同様だった。すなわち、彼らの分析ではイランと北朝鮮のミサイル計画は十分に発展しておらず、彼らが米・露に対抗してミサイルを使用する意図は存在していないので、彼らのミサイル計画がミサイル防衛の展開を要する「脅威」には当たらないというものである。

議論では活発に質疑応答が交わされ、結論としては次回の共同脅威評価(JTA)が2010年3月にモスクワで開催され我々がそれに招致されることになった。

議論は丸一日続いた。

要約終



(U) Opening remarks

オープニングトーク

¶2.
[Van Diepen氏]
2009年7月の米露共同声明により、アメリカ・ロシアの専門家は協力して弾道ミサイルの脅威を分析する仕事を行っている。アメリカ側は9月の共同脅威評価(JTA)において、イラン・北朝鮮ミサイル計画の分析をすでに提供した。アメリカ側としては、これからイラン・北朝鮮ミサイル計画や意見の相違が見られた分野に関して、ロシアの視点が語られることを楽しみにしている。これら問題の認識の共有を深めることによって、アメリカとロシアによる二国間・多国間でのミサイル脅威への取り組みが、世界に大いに貢献していることが明らかになるだろう。また、共同声明や11月にTauscher次官?がロシアに提供した試案にも一貫することだが、来るミサイル脅威に対する安全保障の具体的な防衛に関して、この会合は多大な貢献をすると思われる。最後に、詳細な議論が行われ、次の段階へのはっきりしたステップを踏み出せることを期待している。

¶3.
[Nazarov氏]
Van Diepen氏のおかげで今回のJTAに取り組む上での背景を皆が復習できた。Van Diepen氏に感謝する。7月6日の共同声明の取り決めでは、両国の専門家が21世紀の脅威を分析し、それに取り組む上での政治的外交的手段の提言を作成するのが我々の今回の仕事である。もちろんロシアは真剣に仕事に取り組むつもりである。それゆえ、メドヴェージェフ大統領はこの仕事に最も高い優先度をおくと共に、ロシア連邦安全保障会議の下でJTAの調整を行う指示をだしている。つまり、ロシア代表団はミサイル脅威の調査・対応全ての関連のある機関の代表によって構成されている。今会合では、まず最初にイランと北朝鮮に焦点を当ててロシア側のプレゼンテーションを行う計画である。アメリカとロシアの長期的な軍事的関心は大部分が一致しているが、イランや北朝鮮その他の核敷居国が核・ミサイルを手にすることを防ぐことが第一である。その次に、先7月のJTA会合時のアメリカのプレゼンテーションに対するコメントを行う予定だ。我々は前回のプレゼンテーションについて詳細な調査を行った結果、いくつかのコメントと疑問が生まれたのでそれについてお聞きしたい。

¶4.
[Nazarov氏]
生産的な議論が行われ、JTA共同声明の草案の作成、早ければ決定案の作成まで行けたら良いと思う。最後に、両サイドの専門家の間でクリエイティブな対話が行われ、しっかりした意見交換ができることを期待している。


(U) Russian Presentations on Iran and North Korea

ロシアによるイラン・北朝鮮に関するプレゼンテーション

Iran:
イラン:

¶5.
ロシア国防省のEvgeny Zudin氏によって、イラン・北朝鮮ミサイル計画に対するロシアの評価に関して詳細なプレゼンテーションが行われた。それによると、ロシアが考えているイラン・北朝鮮ミサイル計画の度合いはミサイル防衛を必要とする程の脅威を含んでいた。
ロシアの最終結論としては、実質的にミサイル計画は現在もしくは近い将来にわたって脅威を持たないというものであった。
注意:ロシアはどのプレゼンテーションにおいてもアメリカ代表団に資料のコピーを配らなかった。:注意終


¶6.
イランに関して、Zudin氏はスカッドミサイルに関連する次の主張を行った:

[Zudin氏]
イランは地域的背景からチャレンジングで複雑な立場にある。それを考慮すると、イランの指導者はミサイル戦力を既存の脅威に対する抑止力のために獲得しようとしている。
そのために彼らは一貫してミサイル計画の達成度を誇張している。
ミサイル計画の中心は、1960年代ソビエトで培われたスカッド技術に基づいた液体推進燃料ミサイルの飛躍的な進歩にある。
テヘランは1980年代、多数の国々からスカッドBシステムを調達している。
スカッドBシステムはイランではShahab-1と呼ばれ、射程300kmと再突入体を持つ。
その後イランはスカッドB・スカッドCどちらもの製造が可能となったが、これは北朝鮮の技術的支援によるものである。
スカッドCはイランではShahab-2と呼ばれ、700kg弾頭と射程550km持っている。
さらにイランは準中距離弾道ミサイル(MRBM)も開発・委託しており、これはShahab-3と呼ばれている。Shahab-3は北朝鮮のNo Dong-1を基盤として、スカッドに応用したものである。
Shahab-3は700kg弾頭で1500kmの射程を持っている。
イランはこのシステムの精度と射程を改良する研究に努め、Shahab-3Mを作り出した。Shahab-3Mは射程2000kmとイランは主張しているが、確認されている射程は1600~1700kmである。
ロシアの分析によると、再突入体の重量を250kgまで減らし改良型エンジンを使うことにより射程2000kmが達成できることが示されている。
この分析から、Shahab-3の射程の延長もしくは改良型のスカッド基盤ミサイル技術開発されることはほぼ無いと考えている。

¶7.
スカッド基盤の技術から話題を変えて、Zudin氏はイランの2000km射程固体推進燃料システムの開発に関わる主張を行った:

[Zudin氏]
イランは2000年から、より高い運用性を持つ準中距離/中距離固体推進燃料弾道ミサイル(MRBM/IRBM)を開発している。
現在、2段式IRBM(射程2000km)の開発が確認されている。
これに関して2007年11月に行われた1回目のテストは失敗に終わっている。
次に2008年11月12日に2回目のテストが行われた際は、ミサイルのuplift stage?を無事に達成した。
2009年5月の3度目のミサイルテストの後、イランは発射が成功したことを発表し、このミサイルの連続生産をはじめることを公表した。
このシステムは2009年12月に再びテストが行われ、その際にもテストが成功だったと主張されている。
イランは楽観的な発言をしているが、実質的に試作品がテストで成功を納めたということは事実であり、ミサイル1段目の実用可と分離段階の開発が可能になったというのがロシアの評価である。
ただ、完全なミサイルを作るにはあと2,3年のテストが必要であるとロシアは考えている。
さらに、この5,6年間にそれらが実際に軍事配備されることもないと考えている。

¶8.
Zudin氏はイランのミサイル計画の成功度のもう一つの指針としてSafir衛星打ち上げロケット(SLV)計画について語った:

[Zudin氏]
2009年2月2日に行われたロケットSafirの打ち上げにより、人工衛星Omit(26kg)は衛星軌道に乗ることに成功したということだ。
しかし、イランは2008年8月17日、軌道への人工衛星の打ち上げの最初の試みを失敗している。
ロシアの評価としては、イランは打ち上げ成功を達成させるために、液体推進燃料の技術を最大限に利用したというところだ(Safirのロケットの1段目はShahab-3と同じものである)。
衛星打ち上げロケット(SLV)に基づいた長距離戦闘/攻撃ミサイルの開発に関しては、理論上では可能ではないかと考えている。
ただし軍事技術の観点から見ると、システムの投射重量の低さのせいで実際開発は不可能であると思われる。
加えて、SLV技術に基づく長距離ミサイルの開発には、さらなる研究と開発、イランの領土外でのテストの実施、ミサイルの投射重量と精度の改良が必要となる。
このことから、人工衛星の打ち上げを成功したはいいが、それに基づく長距離弾道ミサイル戦力が軍事的に使えるかどうかとなるとまだ時期尚早である。

¶9.
Zudin氏は以下のように言及し、イランに関するプレゼンテーションのまとめとした:

[Zudin氏]
未確認の情報によるところもあるが、過去4年間でイランは26キログラムの人工衛星を軌道上に打ち上げることに成功し、いくつかの固体推進燃料式MRBMの発射にも成功している。
しかしながら実質的に「成功」といえるのはShahab-3クラスの液体推進燃料ミサイルだけである。これは数キロメートルの精度を持つが、中東や南東ヨーロッパまでしか届かず、通常弾頭では実質的なダメージは与えられないと考えられる。
2015年以降好条件に恵まれれば、イランが3000~5000kmといった射程をもつ弾道ミサイル開発を計画しないとも限らないが、我々はイランがその方向に進むとは考えていない。
どちらかといえば、近い範囲の地域問題に対して実効力のあるミサイルを開発する方向に進むだろうというのが結論である。

North Korea:
北朝鮮:

¶10.
朝鮮民主主義人民共和国のミサイル計画に関しては、Zudin氏は次のような主張を行った:

[Zudin氏]
過去20年間、北朝鮮は弾道ミサイルとSLVの開発・製造に多大な興味をよせてきた。
北朝鮮は主に液体推進燃料ミサイルの製造を委任しており、スカッドBs・Cs(北朝鮮ではHwasong 5・6と呼ばれる)、No Dong I、短距離KN-02、Luna-M戦略ミサイル、また固体推進燃料式戦場・戦略ロケットが挙げられる。
北朝鮮のミサイル戦力の中心は、1960年代からの古いミサイル技術である。
No Dong-1は射程1000~1300kmと1トンの再突入体を持ち、前時代的であるが北朝鮮軍が委託する中では最も進んだミサイルである。
射程100km以下のKN-02はその中でも比較的新しいといえる。
1990年代前半からゆっくりとしたペースで開発されてきたのがテポドン級のミサイルである。
テポドン1は射程が2000~2500km、2段階式ロケット、液体推進燃料式の試作型ミサイルである。
これは1段目ロケットではNo Dong-1のエンジンを使い、2段目ではスカッドのエンジンを使っている。
1998年8月31日にテポドン1の飛行テストのみが行われ、その際ミサイルの分離段階が実践されたと思われる。
北朝鮮はこのテストが衛星打ち上げロケットの発射だったと宣言している。
またMRBMテポドン2は、射程3500~6000km、2段階式ロケット、液体推進燃料式のミサイルだが、その射程は弾頭の重量に依存する。
2006年7月5日テポドン2の発射テストが行われたが、飛行に入って40秒でミサイルが爆発し失敗に終わっている。
また2009年4月5日、SLV打ち上げと同時にテポドン2の諸要素がテストされていたと思われる。
100トンの推進力をもつ第1段階エンジンを作ることで、北朝鮮のミサイル分野の進展をデモンストレーションしていたのではないかというのがロシアの考えである。
さらに2006年10月9日と2009年5月26日、北朝鮮は原子力装置のテストを実施している。
しかしながら北朝鮮が弾道ミサイルに搭載できるサイズ・重量の核弾頭を作ることができるのかどうか未だ明らかではない。


¶11.
[Zudin氏]
北朝鮮のミサイル分野での成果は広く宣伝されているが、ロシアの見方としてはこれを疑わしく思っている。
特に、射程2400~4000kmが可能なソビエトR-27(注:SS-N-6:注終)潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を基盤とした新型ミサイルを北朝鮮が所持しているとの主張があるが、このミサイル―BM-25として知られている―に関する多くの報道は信頼できるソースからの情報を一つも含んでいない。
さらに、イラン・北朝鮮のどちらに関してもこのミサイルのテストが成功した事実はなく、ロシアがこのミサイルを確認できたことは一度もない。
2005年にこのミサイル19機がイランに輸送されたとの主張があるが、それを証明するものは一つもなく、そのような運搬を隠蔽することは不可能だろう。

¶12.
[Zudinsi氏]
我々が考えている北朝鮮の実質的なミサイル戦力をまとめると、射程1300kmに収まる前時代的なミサイルという印象であり、それが脅威となるのは北朝鮮が敵だとみなしている国に対してだけだ。
ただ、数年の間に北朝鮮はSLVの改良・完成に努めるようになる可能性がある。
これには、東倉里(Tongchang-Dong)村近くの発射施設が利用されるだろう(注:アメリカではYunsong施設として知られている:注終)。
北朝鮮がSLVに基づく長距離弾道ミサイルを開発することは原理的には可能だが、完成には数年を要すると考えている。
それらの開発過程から先頭指揮システムが開発されうるが、発射準備を秘密裏に行うことは不可能であり長い準備期間も要するので、この可能性は低いと見込まれる。

¶13.
[Zudin氏]
要約として、イランと北朝鮮のミサイル計画は次のように特徴付けられる。―実質的な成功としては射程1300kmの液体推進燃料式IRBMだけであり、両国共に射程とシステムのさらなる改良に関して技術的困難に直面している。



(U) Discussion on Iranian and North Korean Missiles

イラン・北朝鮮のミサイルに関する議論

¶14.
[Van Diepen氏]
ロシア代表団のプレゼンテーションに感謝を申し上げる。いくらかは両サイドで意見の一致するところであるが、ある部分では少し異なった解釈をしているし、ある部分では同意できないこともあるようだ。
今は相違点を明らかにしその原因を調べる良い機会であり、系統立てて議論を行うことが急務である。
これからの議論として、最初に一般的なイラン・北朝鮮の事柄から初めて、次に短距離・中距離・長距離ミサイルといった特定のカテゴリーに移ることを提案したい。
両サイド共にイランの短距離ミサイルの技術レベルに対して同様な評価を持っていると思われる。
中距離ミサイルに関しては、両サイド共に新たなNo Dong ―より長い射程をもった改良型No Dong― が存在することに同意している。ただし、射程の延長達成のためにどのような改良がなされたかについては、アメリカとロシアは異なった意見をもっているようだ。
また両サイド共、イランが2段階式固定推進燃料ミサイルを開発していることについても意見は一致しているようだ。
これらを前提にした上で、諸問題に対するロシアの評価を述べていきたいと思う。

¶15.
ロシアのプレゼンテーションに対してアメリカ代表団はいくつかの質問を提示した。
ロシア代表団も同様に、今回のアメリカのコメントと、9月の共同脅威評価会合におけるイラン・北朝鮮のプレゼンテーションについて質問を行った。
挙がった議題とそれに続く議論は以下のような物であった。

¶16.
Shahab-3の再突入体重量:

[アメリカ側]
こちらのモデルに基づくと、改良型Shahab-3は射程2000kmで600kgの再突入体を持つと評価されるが、ロシア側の再突入体重量250kgは何に基づくのか。
また、それらのミサイルが軍事兵器としてどの程度有用か。

[ロシア側]
その評価にはいくらか不確定要素があり、250kgというのはロシアの評価における最低値である。
ただし、Shahab-3は低重量の弾頭を用いる限りは軍事兵器として役に立たない。
弾頭を軽くすることによってより長い射程が可能となるが、そのようなミサイルも役に立たない。
加えて、アメリカの600kgという評価は元のShahab-3の弾頭重量700kgと近いようだが、その弾頭を使用したシステムでは射程は2000kmではなく、1300kmと思われる。
もし弾頭重量を50kgまで落としたとすれば、やっと2000kmの射程に達することができるという評価だ。

¶17.
アルミニウム製の機体:

[アメリカ側]
先の評価におけるShahab-3の射程2000kmは、機体材料をスチールからアルミニウムに代え、エンジンの推進力を上昇させることで達成できる。

[ロシア側]
Shahab-3の機体材料についてスチールよりもアルミニウムが優れているという評価は推測・事実どちらに基づくものか。

[アメリカ側]
評価はイランが多量のアルミニウム合金を求めていることに関連する情報による。
詳しく言うと、ミサイル技術管理レジーム(MCTR)総会での情報交換において、いくつかのプレゼンテーション―アメリカ・フランスによるものが含まれる―によってShahab-3がアルミニウム製の機体を持つという評価や、数人のイラン人がこの目的のためにアルミニウムの調達を試みているという発表がなされている。
この理由からMCTRにおいて、イランが求めているアルミニウムの種類をMTCR附属書に書き加えるべきという提案もあった。

¶18.
Safirの機体:

[アメリカ側]
Safirの1段目ロケットはShahab-3のものだと思われるが、ロシアの考えではSafirはスチール製の機体で衛星軌道まで到達は可能か。

[ロシア側]
Safirがとても少ない重量でもって衛星を軌道まで飛ばしたことは事実だ。
これに使用された技術は可能なかぎり開発され尽くされたと思われる。
人工衛星Omidのサイズはイランが軌道に送ることができるサイズの上限である。

[アメリカ側]
Safirが軌道に送れるのは重量が非常に小さい衛星だけである事は認めるが、そのような小さな衛星の軌道周回が可能になるのはアルミニウムの機体を使用したときに限られる。
スチール製の機体を使用したアメリカの発射モデルでは、Safirは軌道上に何も送ることはできなかった。

¶19.
[ロシア側]
アメリカ・ロシアで機体の材料について意見一致がとれなくとも、両サイド共にこのミサイルの性能が軌道への衛星打ち上げのために最大限使用されたことには同意ができるはずだ。
もしこの点で同意できるならば、このシステムの兵器としての使用は無意味であると両サイドで意見一致が得られるべきだ。

[アメリカ側]
必ずしも無意味とは言えない。ロケットがどのように使われるかによる。
Safirの発射は技術的なデモンストレーションだったかもしれない。
もしShahabがクラスタ化や多重積載されたら、それが長距離システムとして使われるかもしれない。
単体のShahabを1段目ロケットとして使用するならば限界があるが、それだけが選択肢ではない。

¶20.
クラスタエンジンの利用:

[ロシア側]
モスクワでのJTAにおいて、アメリカはクラスタ構想に関するイラクの動向について主張をした。
それに対するロシアの主張は、クラスタ構想のミサイルが製造されても軍事目的として自力での戦力は無くなっているという点である。

[アメリカ側]
クラスタ構想はシステムの可動性を減少させるが、より長いダウンレンジを持つミサイルの開発可能性を持つ。
ただしそれは、アメリカの基本的な考えはSafirが上段ミサイルの中継・分離・点火・制御の技術的デモンストレーションだったとするものを変えるものではない。

[ロシア側]
我々はSafir発射を成功だと認めそれを明言している。
加えて、クラスタエンジンを含め投射重量を増やす方法があることは認めるが、ロシアのイランミサイル戦力に対するレビューの目的は、その計画によってある程度の規格の実戦可能なミサイルを作れるかどうかの調査である。
ロシアの見方ではそれは不可能であり、長距離戦闘ミサイルとしてShahab-3を考えるとしても、非現実的だといえる。

¶21.
[アメリカ側]
移動可のミサイルは現実的ではないと認めるが、サイロや地下での運用は現実的だと考えている。

[ロシア側]
そのようなミサイルには固定発射台が必要だ。
50年前ならば国内深くにある固定発射台が生き残っていただろうが、現在では現実的ではない。

[アメリカ側]
ロシアもアメリカもそのような発射場を今なお数百持っている。

[ロシア側]
それは別の場の議題であってJTAですることではない。

¶22.
イランはより長い射程のミサイルを製造できないことについて:

[ロシア側]
肝心なことは、イランには長い射程のシステムに必要な、たとえば高品質アルミニウムなどの構造材料が不足している。
イランは試作機は作ることができるが、アメリカやロシアの脅威となるためには大量にミサイルを製造する必要があり、安全保障上の脅威となるに足るほどの大量生産をするには材料が不足している。
その上、より長い射程のミサイルに必要な技術は最新のものであり、習得するのは難しい。
例えば、イランが使っている細長い形の機体は弾道飛行軌道の圧力に耐えられないだろうし、そのミサイル(Shahab-3)の誘導システムは前時代的であり精確な誘導は不可能である。
ロシアの計算によると、もし2000kmの範囲でその制御システムが使われたとするとターゲットから6~7km程度逸れると考えられる。5000kmでは精度は50~60kmに落ちるだろう。
加えて、イランが使っている液体推進燃料は低効率である。
イランはエンジンの性能を改良しより効率の良い燃料を開発しようとしている。
しかしそれに関して重大な課題に直面しているようだ。
またイランは打ち上げの準備期間に対しても問題を抱えているが、それに関しては最近改善があったようだ。

¶23.
サイロからの発射:

[ロシア側]
Shahab-3に基づくシステムはサイロからの発射はできない。
SLV用の地下発射施設は軍事目的としての発射には適しておらず、側面ベントエンジンやクラスタエンジンを持つミサイルはサイロでの発射はできない。

[アメリカ側]
その点がアメリカとロシアで評価が異なるところだ。
例えば、アメリカはテポドン2をサイロもしくは地下発射台から発射可能なクラスタミサイルと考えており、イラン・北朝鮮のミサイルがそれに追従して技術的欠陥を補うというシナリオもある。

¶24.
イランの固体推進燃料式MRBM:

[アメリカ側]
我々はイランの固体推進燃料式MRBMを技術的デモンストレーションとは考えていない。
このシステムは過去2年間で4回テストが行われ、ロシアが予測したように5~6年以下の時間枠で配備の用意ができるだろう。

[ロシア側]
このシステムの用意がどのくらいで為されると考えているか。

[アメリカ側]
2000kmまでの射程を持つ2段階ロケットシステムが、少なくとも限定数だと過程しても、1年の間で配備されても驚くことではない。
全ての国がアメリカ・ロシアと同様に同じテストの手順を辿るわけではない。
北朝鮮が極端な例であるが、イランはアメリカとロシアのどちらとも異なる指針を持っているようだ。

¶25.
イランにおける長距離ミサイル開発の方法:

[アメリカ側]
イランの長距離ミサイル開発で最もありそうな手段は、現在あるシステムを構成要素とする方法だ。
例えば、クラスタエンジンもしくは多重積載エンジンを搭載したShahab-3というのが1つの方法だろう。
別の方法としては、いわゆるBM-25ミサイルというものがある。アメリカはそれが北朝鮮からイランへ売られたことがあるとみている。
3つめの方法としては、より高性能なモーターを積んだ固体推進燃料式MRBMの開発である。

[ロシア側]
Shahab-3に関するアメリカの見方はすでに議論済みだ。
それ以外のアメリカが確認した2つの方法についていくつか質問がある。
また、イラン・北朝鮮の意図がミサイルの開発もしくは改良を進めるものであるか考察することも大変重要だ。
このことは、それらの国(イラン・北朝鮮)がミサイル技術を得るために―調達方法も含めて―何を行うか、それを監視するために両サイド(アメリカ・ロシア)が何を行うかに影響するだろう。
また、イラン・北朝鮮が現在もしくは未来に必要とする主要技術を定義することと、それらの技術を守るための方法を模索することは議論の役に立つだろう。

¶26.
BM-25

[ロシア側]
モスクワでのプレゼンテーションとコメントの際、また少し前の議論の中でもあったが、アメリカはBM-25が現存していると主張していた。
その想定は何に基づくのか。その存在を示す発射や写真等の証拠を見せてもらいたい。
ロシアにとってBM-25はミステリアスなミサイルだ。
このミサイルのテストを一度も行っていないにもかかわらず、アメリカは北朝鮮がこの19機をイランへ移送したと言っている。
我々はこのロジックに賛同し難い。
このミサイルの開発・テストの証拠が全く確認できないので、イランが未実験のシステムを買ったことが想像できないでいる。
我々は未実験のミサイルの扱いがどのようなものか理解できないでいる。
ミサイル存在の論及は政治文学よりも科学的事実の領域である。
簡潔に言うと、ロシアはこのシステムの存在に懐疑的である。


¶27.
[アメリカ側]
イランと北朝鮮は、アメリカ・ロシアを含む多くの国々とは異なったミサイル開発の基準を持っている。
北朝鮮はたった1回の飛行テストの後にNo Dongを輸出しており、未実験のシステムの輸出が始められたり求められたりしても想像に難くない。
北朝鮮は強い流通を必要としているので特に有り得そうである。
むしろ我々の見方からすると、なぜイランは未実験のミサイルを買ったのかということがより興味深い疑問である。
1つのありうる答えとして、BM-25の推進力の技術がShahab-3の能力に優っており、そのような技術の獲得が非常に魅力的だと認識されたのかもしれない。
イランはより良いエネルギー燃料が使用可能なエンジンを欲しており、数機のBM-25ミサイルを買うことでリバースエンジニアリングに十分なセットを揃えることができた。
Safir衛星打ち上げロケットの2段目ロケットがBM-25ミサイルの誘導部エンジンを利用していたことは、この評価と一致すると考えられる。

¶28.
SafirとBM-25

[アメリカ側]
インターネットで確認できるSafir2段目ロケットの写真との比較から、Safirの誘導部(バーニア)エンジンはR-27のものと同等だと評価できる。
Safirの推進剤と酸化物の比率がスカッドの推進剤のものとは異なっており、どちらかというとR-27に使われる非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素とのそれ一致することが、Safir2段目ロケットの溶接線とタンク容量によって分かる。
どうしてイランがBM-25の飛行テストを行わないかに関しては、全く情報を持っていない。
恐らくそれはミサイル組み立ての困難によると思われるが、誘導部(バーニア)エンジンを搭載したBM-25の動作確認は最低限できているようである。

[ロシア側]
BM-25ミサイルが存在するケースというのは、Safirの単一要素がR-27ミサイルの誘導部エンジンと似ているということを言っているのか。

¶29.
[アメリカ側]
それはケースのたった一部にしか過ぎない。
メディアにおいて、またもっと重要なのはMTCRの情報交換において、BM-25が北朝鮮からイランへ移送された直接的証拠を各国が提供したことだ。

[ロシア側]
イランでのミサイルの写真をアメリカは所持しているのか。

[アメリカ側]
持っていない。そのかわり北朝鮮は平壌の街道でミサイルを見せびらかしていた。

[ロシア側]
それは違う。
それは北朝鮮の軍事パレードのビデオであり北朝鮮は別のミサイルを見せたという結論に達している。
ロシアはBM-25の存在を信じていない。
そのミサイルは作り話と思われているが、それがロシアのミサイルに基づくと言う人もいる。
しかしながら、だれもそれを見たことはなく、我々はその痕跡を見つけられない。

[アメリカ側]
次回の会合でBM-25の存在に関するさらなる情報提供に努める。この議題での意見の一致がイラン・北朝鮮ミサイル戦力の共同声明に影響を与えるだろう。

¶30.
Safirの燃料

[ロシア側]
タンク容量と、燃料・酸化物の比率を評価しうるSafirのクリアな画像をアメリカは所持しているか。

[アメリカ側]
イランがインターネットに載せた画像に2段目ロケットの溶接線がクリアに写っている。この情報から我々の専門家は大変良い計算ができた。

[ロシア側]
画像では精確な距離測量ができない。

[アメリカ側]
次回会合でこの点に関してより多くの情報の提供を約束する。

¶31.
[アメリカ側]
ロシアの評価ではSafir2段目ロケットの推進剤の種類はどうなっているか。

[ロシア側]
ヒドラジンの使用が考えられる。

[アメリカ側]
非対称ジメチルヒドラジンの含有は考えられるか。

[ロシア側]
認められない。
燃料と酸化物の異なる合成が考えられるが、ベースはヒドラジンである。

¶32.
推進燃料に関する追加議論

[アメリカ側]
イランはスカッドの推進燃料よりも技術的に高い水準へ向かっていると評価できるか。

[ロシア側]
イランはその方向へ向かおうと試みている。というのも40~50tの重量を飛ばすことが可能なずっと高性能なロケットを欲しているからだ。
より大きなエンジンによって、イランはミサイルの射程を延長できる。
そのために、イランはより良い燃料を得ようとしており、非対称ジメチルヒドラジンや四酸化二窒素を製造しようと試みている。
しかしながら、イランはこの仕事を約10年間続けているが、重大な成果は確認されていない。
さらに、テヘランMalik Ashtar大学において燃料合成の研究が続けられているが、成功は見られないようだ。
イランがこの技術を外国から獲得しようと尽力していることから、この分野でイラン成功が納めていない事実は明らかである。

¶33.
[アメリカ側]
両サイドでどの程度の進展があるか意見の相違があっても、アメリカ・ロシア両国がイランがより良い推進燃料を求めていると評価をしていることは重要である。

[ロシア側]
それはイランが依然ミサイル射程を伸ばせないでいる事実による。
2000kmの飛行が可能といってもそれが実証されているミサイルは、イランのどのテスト・宣言でも確認されていない。
確認できた最大射程は1700kmであり、これは投射重量を減らすことによってのみ実現される。
もしアメリカがこれ以上の共有できるデータをもっているなら我々は興味がある。

[アメリカ側]
この問題について調査し、次回のJTA会合でさらに詳しく述べると約束をする。

¶34.
[アメリカ側]
しかしながら、我々のモデルによると射程の延長は可能である。
オペレーションで機能が発揮されなかっただけでは、それが不可能であるという意味にはならない。
1度計画が1500kmまで達すると、そこから数100km伸ばすのはそう難しくはない。
1700から2000kmに伸ばすのはそれほど大きな技術的進歩ではない。

[ロシア側]
それに対しては我々は否定的だ。というのはより長い飛行では、ミサイルの様々な部品が熔解してしまい、ミサイルはバラバラになるかコースから逸れるてしまう。
よって最大射程でテストする必要がある。

[アメリカ側]
先に議論したように、"より高性能なエンジンによる推進力"、"わずかに減らした弾頭"、"鉄の代わりにアルミニウムの使用"の組み合わせによって、イランはより長い射程を達成できる。

¶35.
[ロシア側]
イランが固体推進燃料エンジンの製造技術を買うことができるという評価について我々は同意できない。
イランは推進燃料の合成技術の仕事を継続するだろう。
それは大変困難な過程である。
固体燃料は非常に均一に混合されないと適切に働かない。
その燃料はモーターケースに入れられ、その後の凝固が開始されて、最終的に一様でなければならない。
加えて、燃料の積込みは大きなエンジンではさらに複雑になっており、イランはこれを習得できていない。
イランは燃料の合成実験によって、どれだけの時間燃料は保たれるか、また温度がどのように混合に影響するか分析を行っているかもしれない。
エンジンと機体の接合によって熔解がおきるために、エンジンを機体部から熱的に隔離する問題を解決する必要があるが、我々ははイランには無理だと考えている。
また、推進力の方向制御や気体誘導技術の課題も解決することは無いだろう。
古い技術には信頼性がなく、イランは外国から部品を得ることに苦労している。
加えて、イランは高品質球状アルミニウム粉の生産ができず、これが無ければ信頼性のある固体燃料を製造できない。
イスラエルでさえ過塩素酸アンモニウムを外国から調達する必要がある。
イランはそれを自国で生産しようとしているが、成功を示す情報は得られていない。
イランはエンジン開発について重大な問題をかかえているといえる。

¶36.
Ashra計画:

[ロシア側]
2008年6月国務省からの情報によって、Ashra計画の枠組みの中でイランはGhadr-110と呼ばれる3段階式ミサイルを製造していることが分かった。

[アメリカ側]
このミサイルはパキスタンのShaheen-IIと非常に類似しており、投射重量1トンで2000kmの射程を持つ。

[ロシア側]
Ghadr-110のテストが2008年に開始されており、我々はこのシステムの詳細情報が必要である。

[アメリカ側]
いくらか情報に混乱があるが、Ashraは2段階式の固体推進燃料式ミサイルであり2000kmの射程を持つ。またGhadr-110はFateh-110であり1段階式の短距離弾道ミサイルであるというのが我々の情報だ。

¶37
以降未訳
最終更新:2010年12月11日 11:48
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