奥羽りんく@悪童同盟様からのご依頼品


お金で買えないもの

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金で買えないものなどないと言われる世界だが
金で買えないものがある事を教えてくれた
心暖まる二人のカップルの物語
『お金で買えないもの』
彼の想いはキミに届くのだろうか…

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ある日の朝、朝食を食べている時に一言
「これから、出かけないか?」
と照れながら言う彼を愛おしいと思いながら頷くと
「じゃあ、支度してくれ…。車とって来るから」
と子供のようにはしゃいでドアを開けて出て行った。
キミは彼のそんな一面をみて嬉しそうに支度に取り掛かった。

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ここは宰相府の公園の一つ『秋の園』
朝方、彼はニコニコとしながらキミと一緒に歩いていた。キミは少し肌寒いかなと思いながら
「秋の園ははじめてきましたね。って…どうしてそんなにニコニコしてるんですか?」
と不思議そうに顔を見上げると彼は微笑みながら
「いや、二人でいるから…。それじゃ駄目か?」
と少し恥かしそうに答える彼に少し甘えた声で
「駄目じゃないですよ。私も嬉しいですし。でも手をつないでくれたらもっと嬉しいと思いますけど」
と彼の方を見ると、少し照れたようにこっそりとキミの手を握ろうとしていた。キミは彼の手をしっかり握ると彼も嬉しそうに
「いこうか。りんく」
「はい、恭兵さん」
といつものやりとりをしながら秋の園を歩いていた。彼は無精ひげを触りながら
「実は面白い物が見えるという話でな」
「面白いものですか? うーん、なんだろう?」
とワクワクした顔をしていたら
「まあ、見てからのお楽しみだ」 
「楽しみにしてますね」
「あっと、こっちの道だな」
と手を繋ぎながら山登りのルートに入っていた。参道は舗装されていないが一般人でも比較的に登りやすくなっていた。ふと気がつくと彼はカメラに使う三脚を手に持って歩いていた。気になったキミは
「その三脚はなにに使うんですか?」
「なんとなくな」
と嬉しそうに笑った。キミは彼が何かをしっているけど故意に教えようとしないようにしているのが分かったので
「なんとなくですか。本当に楽しみですね」
と期待するように一緒に笑った。

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静かな参道を独占して歩いていると上空に何か飛んでいるのが見えた。
見上げるとそこには青い空に一匹の白鷺が舞っていた。思わず足を止めて
「あ、白鷺…!」
キミが立ち止まったのに合わせて彼が
「どこかに水田でもあるのかな?」
と少し考えているとキミが
「確か神社もあるみたいですし、神田とかもあるのかもしれませんね」
と空を舞う白鷺に感激して飛び去っていくまで見上げていた。ふと、視線を感じてそちらの方を見るとキミの横顔を見ていた彼と視線がぶつかった。先にキミが顔を赤くして俯き
「な、なんかおかしな顔してましたか?」
「いや。好きだなと思っただけさ」
と彼も盛大に照れ始めた。それをごまかす為に
「いこうか」
というと同様に照れていたキミは
「好きって言ってもらえて嬉しいです」
と言ってふと顔をあげると彼は少し早足で参道を歩き始めていた。
「あ、待ってください…!」
と頑張って彼に追いつこうするキミをみて彼は歩く速度を落としてキミに手を差し出してきた。キミは嬉しそうに手をとると思わず
「えへへ。なんか、幸せですね」
と彼の顔を見ながら言うと彼も笑いながら
「実は俺もそう思ってる」
と言ったあとに恥かしくなったのか視線を外して腕時計をみた。キミは白鷺をみて遅れたかのかと思い
「あ、時間そろそろまずいですか? なら、急いでいかなくちゃ…」
と慌てて先を急ごうとするキミを止めて
「いや、逆だ。少し早く着きそうだな。現地で休むか、途中で休むか」
キミは少し考えて
「じゃあ、途中でお休みしていきましょう。楽しみは最後にとっておくほうが、きっと楽しいですよ」
と言った。

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「こんなところに休憩所があるんですね~。座りましょうか、恭兵さん」
とキミが座るとすぐ傍に彼も座った。流石にこの時間帯の休憩所には誰も一息入れておらず彼とキミの二人きりだった。
キミは誰もいないのを何度もきょろきょろとみえてから彼に優しく甘えると彼の方からキミをぎゅっと抱きしめてきた。キミがそれに合わせて抱き返すと彼はキミの髪を優しく触れ嬉しそうにしていたと思う。
キミの視線が上にあがると彼がキミをずっと見つめていた。お互い見つめ合っていたら彼の顔が近づいてきた。キミは静かに瞳を閉じるとそのまま優しくキスされた。
「中々慣れないもんだ」
と照れながら言う彼に
「な、慣れるものでもないと思います。でも、幸せだからいいんじゃないでしょうか」
と彼の頬にキミがキスをすると彼の嬉しそうに笑っていたがふと目にした時計をみて顔が青くなった。
「あー。いかん! 時間がまずい!」
「え! それは大変急ぎましょう!」
といってさっきのムードはふっとんで彼はキミの手をとり駆け始めた。
「今日しかないのに!」
「今日しかない…?」
と息が途切れそうになりながらキミが聞くと
「ああ」
と答えて、先を急いだ!
キミ達の努力の結果でギリギリに到着した。着いた場所は山の上で辺りが一望できた。しかし、良く見えるのは山よりも高い塔が聳えていた。
キミが息を整えながら
「うわー…塔が、みえ、ますね」
というとその塔から何かが毀れ始めて、暫くすると水の勢いが強くなり放水が始まった。その水しぶきを受けて塔の周辺に大きな虹がかかった。
二人でその光景を眺めていると彼がぼそっと
「今日がはじめてらしくな」
「うわぁ…! すごい、すごいです…!」
と興奮と感動が入り混じった声でキミが虹に目を奪われていると、彼は手早く三脚を設置してカメラのタイマーをセットしてキミの隣に並んだ。

『カシャ!!』

とシャッターが落ちた。
「これがやりたかったんだ。飾りたくてな」
「このためだったんですね」
とびっくりした顔と笑顔が半分の顔をして聞き直すと彼は一言
「いや、やりたいことは喜ばせたかっただけ」
と彼は優しく笑いながら答えるとキミは何か心の奥からこみ上げてくる何かに嬉しくてそのまま彼に飛びつき
「すごく、喜びました。ありがとう、恭兵さん」
と言って虹を二人占めしながら長い間キスをした。

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作品への一言コメント

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  • 素敵なSSをありがとうございます! 悪童屋さんの書かれるSSは、いつも読んでいる途中で私を照れさせる不思議な力があるようです(笑) -- 奥羽りんく (2008-06-02 00:47:01)
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最終更新:2008年06月02日 00:47