アポロ@玄霧藩国様からのご依頼品


アポロの夜 ~英吏人形、説教されるの巻~

作:1100230 玄霧弦耶


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玄霧藩国の夜は早い。
と言うのも、都市部まで殆ど森なので暗くなるのが速いので相対的に黄昏時が短く、夜は長い。
その都市部のどこか。
中々豪勢な一軒家からなにやら音が聞こえる。

近くまで来ると、家屋になっている樹木の青い葉がひらり、ひらり、と落葉樹でもないのに落ちている。
そして耳を澄ませば。
ぬおー、という声や何かを壁にぶつけてる音がなんとなく、可愛らしい。

アポロの家だった。


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アポロは怒っていた。
ここ暫く、英吏をどうするべきかを考えたりしてよく眠れなかったのもあるが・・・
ありていに言って英吏の行動に、である。

「そのデートチケットをなぜ私にわたさなーい!!」

ってなもんである。手に持ってる枕が何度も壁にぶつけられてすこしボロボロになっている。
ただ、少し考えた後で

「か、買ってくれたのは嬉しいんだけどね・・・」

と息を切らせながら人形に向かって言うあたり、だいぶ英吏が好きである。
アポロの脳裏に今日の思い出が次々と浮かぶ。

待ち合わせ場所に来た瞬間固まる英吏。
日にちを間違えたといって帰ろうとする英吏。
さらっと「かわいい」とかいう英吏。
いつでも優しい英吏。
荷物持ちの報酬で可愛い女と話をするのは上出来、とかいう英吏。
自慢できないのが残念だと言いながら別のところで嬉しそうに言う英吏。
怒らせた礼だ、とデートチケットで人形を買う英吏。
そして、英吏の人形にキスしてみせたのに変な納得をする英吏。

正直、周りの人間がどう見ても一目瞭然なのに気づかない英吏はだいぶ酷いと思われる。
人形を渡したときの知恵者の表情がなんとなく手に取るように判るのは筆者だけではあるまい。

閑話休題。

一通りの怒りとノロケを壁と枕にぶつけた後、アポロは汗を流しにシャワーを浴びに行くことにした。
シャワールームに入って、服を脱いだ後で少し思案し、着なおして英吏人形をシャワールームの近くまで持ってくる。
なんとなく、近くに居たかったのである。胸のボタンを外したときに再度思い至り、壁の方向を向けた。
複雑な乙女心であった。


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藩国の技術も日々進み、理力の転用と少々の機械技術の導入により屋内にシャワールームや浴室も設置できるようになって久しい。
樹木の中で湿気を多量に含ませるのは非常に悪いので、今までは共通浴場などがメインだった。
あぁ、大神殿を建てるときに家にお風呂があってよかったなぁ。と、思いながら汗を流す。
何度も扉の向こうの人形が気になりなんとなくちらりちらりと見てしまう。

「大丈夫。見えてない。壁の方向向けたし・・・というか人形だしー!」

複雑な乙女以下略。

そして。
なんとなく念入りに体を洗い、
なんとなくいつもは少ししかつけないトリートメントを少し多めにつけ、
なんとなくすぐに流さずに説明通りに時間を計り、
なんとなくいつもはつけないものを身につけ、
なんとなく可愛い寝間着を選ぶ。

複雑な以下略。

このまま戦場(デート会場)に出ても可笑しくない気合でシャワールームから出てくる。
出てきたアポロの胸元には人形が押し付けられている。
もとい、人形から本物が出てこないように優しく胸元に抱えられている。

「つついちゃダメ・・・つついちゃダメ・・・」

つつけば出てくる、という知恵者の言葉を反芻する。
暫く会えないので今すぐつつきたいような、ソレでいてこのままずっと置いておきたいような。

複以下略。


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なにやら色々考えつつ、寝室に戻る。
ボロボロになった枕の上に英吏人形を置き、其の前に正座する。

「とにかくですね。英吏さんは女性の気持ちをわかってません!」

英吏人形は、答えない。

「こ、こっちはうれしいですけど、女の子にあんなことを言っちゃいけません!」
と言いながら、正座したままベットをパンパンと叩くアポロ。

※この後の別の人のゲームにて登場した英吏は、落ち込んでいる工藤に「今日俺はいいことがあった。女と出かけただけだが」と嬉しそうに言って励ましていた

英吏人形は、答えない。

「あと、いくらなんでも気づいて下さい!」

英吏人形、少ししょぼくれたように見えた。

「判ればいいんです。判れば・・・」

アポロ、納得したらしい。
他人には理解できないが、アポロには英吏人形の表情が判るらしい。


数分後。


なにやら満足した表情のアポロがいる。
あの後、説教したのを人形に暫く謝ったあと、人形が微笑んだ気がして嬉しくなったようだ。
案外、単純なのかもしれない。

何かと乱れたベットを整え、ボロボロになった枕を本来の仕事場に着かせ、枕元に英吏人形を置く。
今度は、アポロの方向を向いている。

結局のところ、アポロにとって今日のデートは楽しかったのである。
ソレを心で反芻するたびになんとなく嬉しくなるのでなんとなく英吏にあたってみるのである。
まったく、乙女心は複雑である。

ちょっと考えた後、デコピンをする。
どれくらいでつつくと出てくるのか判らないので、当たらないようにはしている。
ベットの中に入り、明かりを消して、暫くもぞもぞする。
10分ほど経った後。
枕元の明かりだけつけて、英吏人形を引き寄せる。
さっきデコピン(NOT命中)をしたあたりに、軽く唇を寄せる。
今日からは、なんだかよく眠れる気がした。


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其の頃。どこか知れない場所。
英吏は殴られた頬(by同日、他のゲーム)が予想以上に張れたのを気にしつつ、風呂から上がり、寝室にいた。
なんだか、今日はいい夢が見れる気がした。




アポロさんとはソコソコに長い付き合いなので、行動を予測しながら書いて見ました。
書いてる最中に妙に可愛くなったのはデフォですよねー。


コレで行動予測が外れてたら恥ずかしいなぁ・・・


作品への一言コメント

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  • その、こんなに実際は可愛くないんですがやることは大体見事に予想されていて、見られてはいけないものを見られている感じで自分が大変です。やあ、可愛く書いてくださってありがとうございました!流石ですはんおー……暫く恥ずか死してていいですか……=□○_ -- アポロ@玄霧藩国 (2008-01-02 15:26:23)
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最終更新:2008年01月02日 15:26