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No.153 葉崎京夜@詩歌藩国様からのご依頼品



S・TAGAMIは、強情を絵に描いたような人だと誰かが言った。

 彼女がしゃべらないのは嘘を言う必要がないからだと。

 葉崎はしみじみとそれを実感する、彼女がいつも同じ服なのもきっとそういう理由だろ。


 教室の影の中にTAGAMIはいつも通りのかっこうでたっていた。

 黒い服はいかにも学校の中で異質で、何とも居心地が悪い。

 長いブロンドの髪も、澄んだ瞳も、まるでその場を拒むよう、浮いた鞄と帽子は旅支度。

 どこへいってもTAGAMIは同じような空気をまとっている、いつも何処かに行く途中だと言いたげなその瞳に、葉崎は少し胸にくる。

「これで、最後だって、以前いいましたよね。それを覆してみました」
 腰をまげて頭を下げてみる、まっすぐな瞳に、少し射抜かれるような気持ちがする
「まあ、私が、何かしたわけではないんですけど」
(ええ、ユーリの言うとおりですね)
 すこしへこむ、別に嘘を付いたわけではないけど、見栄を張ったことが、少し恥ずかしい。
 ユーリ、どんな人なんだろう、TAGAMIはその人の言葉をとても大切にしている、きっといつも完璧に覚えているのだろう。
 名前をきくたびに、その遠さを少し感じられる、自分はなれるだろうか、この人の記憶に残る人に
「それでも、もう一度あえて、うれしいです」

 TAGAMIは表情をかえない、伝えたいことは、言葉にならないからだろう。
 やばい、なんだか、距離が開いていく、現実的な距離どころか、このままどこかにいってしまう気がする
「今日、およしたのは、勉強会っていう名目だったんですけど。その、ただ会いたかっただけなんです」
(ええ)
 困ったようなTAGAMI
 言ってから舌をかむ、照れ隠しに頭をかいてみるが、それでも自分のいったことを考えるとあんまりだ、これじゃあ、告白とかわらないじゃないか。

 目の前が真っ白になるような気がした、そうならかったのは、みたこともないものをみたからだ。

 いつも通りのTAGAMIに、いつもと違うところに見える、いつものTAGAMIに長くふれる、葉崎だから気づいたのかもしれない。

(今のは、まね。上手くできなかったら、ごめんなさい)

「いや、そんな事はないですよ」

 葉崎の口が優しく広がる、うれしそうだ。


 恥ずかしさもはじけ飛んで、砕けてちる

「あなたがそうしてくれて、今は嬉しいです」

(ありがとう)

TAGAMIの顔は変わらない、もういつも通りの冷たい美しい顔だ

ただ、さっきみたものがあるからわから、きっと今は、暖かい、優しいそんな気分なんだろう。

「状況は今も厳しいですが、貴女と話しているとそれが苦ではなくなります」


 あぁ、何言ってるのか、さっきから次から次へと、さっきの失敗を遠くにやるどころか増やしてる

(ええ。もう少し戦ってみようと。思います)
 TAGAMIの言葉に、あるものが浮かんだ。敵が今遠くから迫っている。

 それ以外にもなにかいるのか
「あなたは、誰と闘ってるんですか?」

 英雄に敵が多い、葉崎のしっているACEだけでも闘う相手は多様だ
かのものや、人の産んだ悲しみや憎しみ、アイドレスではオーマ、知りうるだけでそれなのに

(私が闘うのは、そうですね、かのものです)

 まるで気負いがないそれが、少しだけつらそうにみえる、辛いと言うより悲壮だ。

「かのものの情報はかのものを呼び寄せる。詳しくは聞けないのが残念です。」
 一緒に闘いたいとはまだ言えなかった、それは好意とは別の約束だ。


 TAGAMIはさざめくように笑っている。声が聞こえていないのに、優しげな笑いが届く

「貴女が戦う相手は私にとっても戦う相手ですから、ね。」

 これぐらいはいいだろう、たまたま闘う相手が同じなことぐらいはある
 そういって笑う葉崎をみてTAGAMIの空気がかわる、優しく悲しい雰囲気だ
(全ての生き物が、戦う相手になるでしょう。限りなく石に近い私においても、同じ)

「たとえアナタがそういう存在になっても、私の想いが変わるわけもないですしね」

 TAGAMIは困った、どうも誤解があるらしい。
 石化するというのは観念的なことだ、ただそれを言葉で伝えるのは難しそうだ、なにやら恥ずかしそうでもあるし。

 TAGAMIは目をつぶった、葉崎のめに少し自分の目を足すような感じでイメージを流す

 草原に立つ人々が見える、姿形は多様で、年齢なども一定していない、ただ一応に皮膚に、複合的に描かれた線がかかれ、また、一様に空をみてとまっている。

止まっている、周りの全てに息づく命の力を感じるのに、それにはもはや時間の流れすらも届かない。

「これが、強くなればなるほど、停止していくACE達のなれの果て、石になるとはこういうことですか」 

(強くなれば、みんなこうなります)

「人の枠をはずれること、それがこれだと」

 葉崎の言葉に、TAGAMIの意識が歌うように広がる

(私が声をなくしたのは、声が必要なくなったから)

(私が息を忘れたのは、呼吸が必要なくなったから)

(私は次は、人への思いをなくすのでしょう)

そういって、TAGAMIは窓から空を見た

「理解は出来ても、納得は難しそうですね」

 叫びたい気持ちを抑える、血の出るほど奥歯をかみしめて、TAGAMIの見る、窓の外の空をおう

 風が強いことが、雲の速度で分かる、快晴と言っていい明るさだ、外はきっと気持ちいい風が吹いているだろう

TAGAMIは目を伏せた。それだけが、彼女の動きだった

もう、目の使い方もわすれたと、言われて葉崎の口から言葉がもれた。

「私が強ければ……もっと…もっと……。」
 手から血が出ている、ツメがくいこんでいるだろう。

 TAGAMIは何も言わず、目を開くこともなく、ただ言葉だけが届いてくる

(そして、貴方も止まる)
「えぇ、私が貴女よりも強ければ…そうすれば、貴女が動きを止める時間を先送りに出来る。」

 涙があふれるような気がする、だがそうはならなかった、ただ乾いていく、痛みのある場所、胸以外はどこまでも乾いていく。
TGAMIの目が開く、その光はとても冷たく、まるで泉の水のように、乾いた葉崎の意志にしみこんでくる。
 ただ、TAGAMIは短く伝えた
(私はそれを望んでいない)
今までのあったなかで、一番優しい言葉だ、そう感じられた。
 冷たく、冷え切った言葉が、体から熱を抜いていく、そういう言葉だった。



TAGAMIは昔からそうだ。どんな時にも、動くことはあまりない。

これが石ということだと、言われた気がした。

 それが私だと、葉崎は言われたような気がした


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最終更新:1970年01月01日 09:00