”ら・みゅーじっくおぶらぶふぇすた”の観光物産の部


お祭りを楽しむ、にぎやかな雑踏の中、賑わいに負けじと力強い客寄せの声が聞こえてくる。

「さあさあ、よってらっしゃい、見てらっしゃい。ナニワ名物、たこ焼きだよ!」
ピンポン玉くらいの大きさの半球状の窪みが幾つも並ぶ鉄板の上に刷毛で油を引いていく。
「お子さんのオヤツからビールのあてまで何でもござれ。是非一度ご賞味あれ」
紅ショウガ、細切れのタコに万能ネギが入ったクリーム色の生地を豪快に鉄板に流し込むとジュージューと景気の良い音と共に湯気が立ち上る。
「たっぷりのソースとお好みでマヨネーズもいけるよ」
屋台の周囲に生地が焼ける香ばしい香りが広がる。頃合いを見計らってアイスピックのような金具を半球の窪みに差し込み、クルリと回す。
するとたこ焼きが次々と引っ繰り返されて狐色に焼けた生地が顔を出す。
注文を受けると慣れた手付きでひょいひょいと発泡スチロールの容器に取り分けると刷毛でたっぷりとソースを塗り、青のりと鰹節をパラリ。
湯気で鰹節が踊り、爪楊枝を添えてイッチョ上がり!!
「へい、まいどあり。あ、お嬢ちゃん、中の生地はあつあつなんで火傷に気を付けて食べなよ」
「さあさあ、焼き立てのあつあつだよ~。一口食べれば寒い冬でもほっこり温まるよ~」
「あ、そこのおにーちゃん。お酒のツマミにもやしの酢漬けはどうだい?結構いけるよ」
「へい、まいどあり。今後も是非ご贔屓に!」
力一杯に客寄せをやっていると

『みんなー!楽しんでるー?』

”ワーーーーーーーーーーー!!”


ステージの方からアイドルの元気溌剌とした声と観客の賑やかな歓声が屋台まで聞こえてくる。

『今日は素敵なイベントに参加させて頂きありがとうございます。微力ながらも歌とダンスで頑張らせて頂きます!!皆さん是非楽しんで行って下さい!』

ナニワの民らしき声「「「マ・リ・アちゃぁぁぁぁぁぁん!」」」


くう、あいつら楽しそうだなあ。あのときグーじゃなく、チョキを出していれば・・・
今頃他のやつに店番任せて俺もあそこでマリアちゃんの応援に参加できたのになあ。
と心の中で思わずぼやく屋台のオヤジ。

”ワーーーーーーーーーーー!!”

『それでは一曲目、”春風と・・・』


リズミカルなメロディラインにのって弾むような歌声が流れてくる。

まあ過ぎた事はしゃあないか。こうなったら、みんなの分まで頑張ってビシバシ売りまくるぞー!

「お土産には日持ちする怪獣バターや怪獣チーズがお勧めだよ。そしてお祭り気分を満喫したい、そこのにーちゃん!」

「着心地バッチシ、ちょっとした防寒にもなるナニワ特製の法被に、ライブ会場には付き物のペンライトもあるよー。」

「更に今日はめでたい祭りの日!出血大サービスで今ならたこ焼き4人前を買ってくれたお客さんには法被かペンライトのどちらか1つを無料サービスだよ!!」


ステージに負けない元気な声で屋台のオヤジの声が辺りに響き渡る。
最終更新:2011年12月11日 22:38