ナニワの下着事情あれこれ

~フルスキンスーツの発祥と歴史~
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皆さん御存知の通りナニワは砂漠の地下にある国です。
そもそもナニワ人の祖先は砂漠を横断して東に西に商品を商うキャラバン隊でした。

【伝統的な胸当て。現在でも愛用者が多い】

何かとエキゾチックな、という表現で紹介される事の多いのがナニワの民族衣装です。
当時は日向では日差し避けにマントやヴェールを用い、日陰では肌の露出を多くして涼を取るというのが一般的でした。
そんな彼等にとって最も身近な問題だったのが砂です。
どこまで行ってもつきまとい、知らない間に服に入って何でもじゃりじゃりにしてしまう。
この厄介な相手に随分と長い間苦しめられたようです。
これは平素の着用感の不快さと洗濯の際の苦労という二重の大変さだったようですね。

当時は砂避けのマントやゴーグルというのが主な砂予防策として普及していました。
近代になって立体縫製の技術が確立されるとユニオンスーツを原型とした、
身体にぴったりとフィットする高機能下着が開発されキャラバン隊の商人を中心に使われ始めます。
このタイプの下着は第二の皮膚、という宣伝文句と共にフルスキンスーツと命名されました。
それまで下着の素材として主流だった綿や羊毛、麻などの天然素材に代わって合成素材を用いられています。
首から下、手首足首まですっぽりと覆い、通気性と砂対策を両立して大変に好評を博しました。

更に時代が下り、地下大空洞の整備が進むとナニワ国民の殆どが常に温度と湿度が一定の地下で生活するようになります。
その頃には下着も機能性よりはデザインや着用感のよさを追求した他国同様の物が多く使われるようになました。
商人から一般の人へと広く普及していたフルスキンスーツは一旦消費が下火になったものの、
今度は空洞拡張工事などに従事する地下労働者向けに用途を変えて再び売り上げを伸ばしました。
発祥の経緯をみて解るとおり、粉塵や砂礫の多い環境下で長時間作業するのにもってこいの構造だったわけです。
その後使用者の要望を採り入れて関節部分の伸縮性向上や筋肉の動きに合わせたサポート機能などを採用。
技術の進歩と共に新素材を用いた高性能な商品が次々に誕生しいずれもヒット商品となりました。

【作業着や戦闘服などのアンダースーツ使用例】

そして現在ではこのスーツに冷却用の水循環チューブを織り込みんだタイプも登場。
パイロットやサイボーグ歩兵向けのアンダースーツとして軍事転用もされています。
炎天下や真空、水中、コックピットなど過酷な環境で作戦行動に当たる軍関係者、特にサイボーグにとって放熱は切実な問題です。
その点からこのスーツは伝統的な砂・日差し避けのマントや偵察用ゴーグルと共に重宝されています。
ちなみにサターン藩王のSPが制服に採用したことでも話題になりました。
最近ではこの全身を覆うスタイルと未来的なデザインが若者やオールドSFファンの間で静かなブームになっているようで、
本来は下着であるスーツを露出して街中を歩く人もよく見掛けられます。
その際は下にスラックスやニーハイブーツを履いたりジャケットをはおることが多いようですね。
中には胸や肩、腰に軍用のプロテクーを追加するスタイルも見受けられます。
メーカー側もこうしたニーズに応えてよりファッション性に重点を置いた活動的な新商品の開発に余念がありません。
なんでも、次の目標はナニワの名物である地底怪獣の皮膚の質感を再現することだとか。
近い内に怪獣ルックでナニワを闊歩する若者が見られるかも知れませんね。 

もしあなたがナニワの街で未来的な全身スーツの人を見掛けたら、
そこには砂に悩まされたナニワ人の下着の歴史が詰まっていることも思い起こしてみてください。
きっとこのスーツを試してみたくなりますよ。

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(文章: 久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国)
(絵: 乃亜Ⅰ型@ナニワアームズ商藩国)


最終更新:2008年05月01日 19:58