ネタバレ考察 > 台詞集 > キュゥべえ

台詞職人さんGJ

第1話

「仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた」
「でも、彼女も覚悟の上だろう」
「諦めたらそれまでだ」
「でも、君なら運命を変えられる」
「避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい」
「そのための力が、君には備わっているんだから」
「もちろんさ。だから僕と契約して、魔法少女になってよ!」
「助けて!」
「助けて! まどか!」
「僕を、助けて」
「助けて・・・」
「助けて・・・」
「助けて・・・」
「ありがとうマミ、助かったよ」
「どうもありがとう。僕の名前はキュゥべえ」
「そうだよ、鹿目まどか、それと美樹さやか」
「僕、君たちにお願いがあって来たんだ」
「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ」

第2話

「僕は、君たちの願いごとをなんでもひとつ叶えてあげる」
「なんだってかまわない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」
「でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム」
「この石を手にしたものは、魔女と戦う使命を課されるんだ」
「願いから産まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから産まれた存在なんだ」
「魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を蒔き散らす」
「しかもその姿は、普通の人間には見えないから性質が悪い」
「不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」
「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を現さないからね」
「さっき君たちが迷い込んだ迷路のような場所がそうだよ」
「おはよう、さやか」
「いやいや、今はまだ僕が間で中継しているだけ。でも内緒話には便利でしょう?」
「どうして?」
「むしろ、学校の方が安全だと思うな。マミもいるし」
「この程度の距離なら、テレパシーの圏内だよ」
「彼女が狙ってたのは僕だよ。新しい魔法少女が産まれることを、阻止しようとしてたんだろうね」
「意外だなあ。大抵の子は二つ返事なんだけど」
「頑張って。もうすぐ結界の最深部だ」
「大丈夫、その状態では安全だよ。むしろ役に立つ貴重なものだ」

第3話

「今のは魔女から分裂した使い魔でしかないからね。グリーフシードは持ってないよ」
「別に契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例も無い訳じゃないし」
「僕としては、早ければ早い程いいんだけど」
「僕の立場で急かすわけにはいかないしね。助言するのもルール違反だし」
「まどかは、力そのものに憧れているのかい?」
「まどかが魔法少女になれば、マミよりずっと強くなれるよ」
「もちろん、どんな願い事で契約するかにもよるけれど」
「まどかが産み出すかもしれないソウルジェムの大きさは、僕には測定しきれない。これだけの資質を持つ子と出会ったのは初めてだ」
「いや」
「グリーフシードだ! 孵化しかかってる!」
「マズいよ、早く逃げないと! もうすぐ結界が出来上がる!」
「無茶だよ! 中の魔女が出てくるまでにはまだ時間があるけど、結界が閉じたら君は外に出られなくなる。マミの助けが間に合うかどうか・・・」
「まどか、先に行ってくれ。さやかには僕が付いてる」
「マミならここまで来れば、テレパシーで僕の位置が分かる」
「ここでさやかと一緒にグリーフシードを見張っていれば、最短距離で結界を抜けられるよう、マミを誘導できるから」
「怖いかい? さやか」
「願い事さえ決めてくれれば、今この場で君を魔法少女にしてあげることも出来るんだけど・・・」
「まだ大丈夫。すぐに孵化する様子はないよ」
「むしろ、迂闊に大きな魔力を使って卵を刺激する方がマズい。急がなくていいから、なるべく静かに来てくれるかい?」
「マミ! グリーフシードが動き始めた! 孵化が始まる、急いで!」
「気をつけて! 出て来るよ!」
「二人とも! 今すぐ僕と契約を!」
「まどか! さやか!」
「願い事を決めるんだ、早く!」
「ハッ」

第4話

「ん?」
「長らくここはマミのテリトリーだったけど、空席になれば他の魔法少女が黙ってないよ」
「すぐにも他の子が魔女狩りのためにやってくる」
「確かにマミみたいなタイプは珍しかった。普通はちゃんと損得を考えるよ」
「誰だって報酬は欲しいさ」
「でも、それを非難できるとしたら、それは同じ魔法少女としての運命を背負った子だけじゃないかな」
「君たちの気持ちは分かった。残念だけど、僕だって無理強いはできない」
「お別れだね。僕はまた、僕との契約を必要としてる子を探しに行かないと」
「こっちこそ。巻き込んで済まなかった」
「短い間だったけど、ありがとう。一緒にいて楽しかったよ、まどか」
「まさか君が来るとはね」
「悪いけど、この土地にはもう新しい魔法少女がいるんだ。ついさっき契約したばかりだけどね」
「どうするつもりだい? 杏子」

第5話

「大丈夫、君の祈りは間違いなく遂げられる」
「じゃあ、いいんだね?」
「さあ、受け取るといい。それが君の運命だ」
「本当に彼女と事を構える気かい?」
「すべて君の思い通りに行くとは限らないよ。この街にはもう一人、魔法少女がいるからね」
「僕にもよく分からない」
「そうとも言えるし、違うとも言える」
「あの子は極めつけのイレギュラーだ。どういう行動に出るか、僕にも予想できない」
「緊張してるのかい?」
「危険は承知の上なんだね?」
「そっか。うん、考えがあっての事ならいいんだ」
(君にも君の考えがあるんだろう? まどか)
(さやかを守りたい君の気持ちは分かる)
(実際、君が隣に居てくれるだけで、最悪の事態に備えた切り札を一つだけ用意できるしね)
(今は何も言わなくていい。さやかもきっと反対するだろうし)
(ただ、もし君が心を決める時が来たら、僕の準備は、いつでも整ってるからね)
「この結界は、多分魔女じゃなくて使い魔のものだね」
「油断は禁物だよ」
「彼女は癒しの祈りを契約にして魔法少女になったからね。ダメージの回復力は人一倍だ」
「まどか、近づいたら危険だ」
「どうしようもない。お互い譲る気なんてまるでないよ」
「僕にはどうしようもない」
「でも、どうしても力づくでも止めたいのなら、方法がないわけじゃないよ」
「この戦いに割り込むには、同じ魔法少女じゃなきゃダメだ」
「でも君にならその資格がある。本当にそれを望むならね」

第6話

「大丈夫、気絶しているだけだ」
「何にせよ、彼女が何かを企んでいるのは確かだ。くれぐれも、気をつけて」
「暁美ほむら。君は、まさか……」
「これでまた暫くは、大丈夫だ」
「もう、危険だね。これ以上の穢れを吸ったら、魔女が孵化するかもしれない」
「大丈夫、貸して」
「これでもう安全だ」
「これもまた、僕の役目の一つだからね」
「でも、また次にソウルジェムを浄化するためには、早く新しいグリーフシードを手に入れないと」
「佐倉杏子は強かっただろう?」
「余分なソウルジェムがあれば、魔法を出し惜しみせずに、無駄使いすることだって出来る。それが杏子の強みだ」
「魔力を使えば使うほど、ソウルジェムには穢れが溜まるんだ」
「さやか、君がグリーフシードを集められない限り、杏子と戦っても、勝ち目は無いと思っていい」
「確かにそれは事実だね」
「こればっかりは仕方ないよ。杏子は素質がある上にベテランだし」
「逆に、全く経験が無くても、才能だけで杏子以上の魔法少女になれる天才だっている」
「鹿目まどかさ」
「ああ、だからもし、どうしても杏子に対抗する戦力が欲しいなら、いっそまどかに頼んでみるのも手だよ。彼女が僕と契約すれば……」
「ダメだ。時間が経ち過ぎている。昨夜(ゆうべ)の使い魔を追う手がかりは無さそうだ」
「僕から言わせて貰えるのは、無謀過ぎるってことだけだ」
「今のさやかじゃ、暁美ほむらにも、佐倉杏子にも、勝ち目はない」
「でもね、さやかは、聞き届けてくれないよ」
(まどか、まどか! 急いで、さやかが危ない! ついてきて!)
「今のはマズかったよ、まどか」
「よりにもよって、友達を放り投げるなんて、どうかしてるよ」
「君たち魔法少女が身体をコントロールできるのは、せいぜい100m圏内が限度だからね」
「普段は当然肌身離さず持ち歩いてるんだから、こういう事故は滅多にあることじゃないんだけど」
「はあ・・・まどか、そっちはさやかじゃなくて、ただの抜け殻なんだって」
「さやかはさっき、君が投げて捨てちゃったじゃないか」
「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ」
「君たち魔法少女にとって、元の身体なんていうのは、外付けのハードウェアでしかないんだ」
「君たちの本体としての魂には、魔力をより効率よく運用できる、コンパクトで、安全な姿が与えられているんだ」
「魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」
「むしろ便利だろう?」
「心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、その身体は魔力で修理すれば、すぐまた動くようになる」
「ソウルジェムさえ砕かれない限り、君たちは無敵だよ」
「弱点だらけの人体よりも、余程戦いでは有利じゃないか」
「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」
「訳が分からないよ。どうして人間はそんなに、魂の在処にこだわるんだい?」

第7話

「僕は魔法少女になってくれって、きちんとお願いしたはずだよ?」
「実際の姿がどういうものか、説明を省略したけれど」
「訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね」
「事実、あのマミでさえ最後まで気づかなかった」
「そもそも君たち人間は、魂の存在なんて、最初から自覚できてないんだろう?」
「そこは神経細胞の集まりでしかないし、そこは、循環器系の中枢があるだけだ」
「そのくせ、生命が維持できなくなると、人間は精神まで消滅してしまう」
「そうならないよう、僕は君たちの魂を実体化し、手に取ってきちんと守れる形にしてあげた」
「少しでも安全に、魔女と戦えるようにね」
「君は戦いという物を甘く考え過ぎだよ」
「例えば、お腹に槍が刺さった場合、肉体の痛覚がどれだけの刺激を受けるかって言うとね」
「これが本来の痛みだよ。ただの一発でも、動けやしないだろう?」
「君が杏子との戦いで最後まで立っていられたのは、強過ぎる苦痛がセーブされていたからさ」
「君の意識が肉体と直結していないからこそ可能なことだ」
「おかげで君は、あの戦闘を生き延びることができた」
「慣れてくれば、完全に痛みを遮断することもできるよ」
「もっとも、それはそれで動きが鈍るから、あまりオススメはしないけど」
「戦いの運命を受け入れてまで、君には叶えたい望みがあったんだろう?」
「それは間違いなく実現したじゃないか」

第8話

「それはぜひ僕からもお願いしたいね。暁美ほむら」
「やれやれ、招かれざる客ってわけかい?」
「今夜は君たちにとって、重要なはずの情報を知らせに来たんだけどね」
「美樹さやかの消耗が予想以上に早い。魔力を使うだけでなく、彼女自身が呪いを生み始めた」
「このままだと、ワルプルギスの夜が来るより先に、厄介なことになるかもしれない」
「注意しておいた方がいいよ」
「僕じゃなくて、彼女に訊いてみたらどうだい?」
「君なら既に知っているんじゃないかな? 暁美ほむら」
「やっぱりね。どこでその知識を手に入れたのか、僕はとても興味深い。君は……」
「君も僕のことを恨んでいるのかな?」
「無理だ。それは僕の力の及ぶことじゃない」
「凄いなんていうのは控えめな表現だ。君は途方もない魔法少女になるよ」
「恐らくこの世界で最強の」
「さやかは彼女の願いを遂げた。その点について、まどかは何の関係もない」
「僕にも分からない」
「はっきり言って君が秘めている潜在能力は、理論的にはあり得ない規模のものだ」
「誰かに説明して欲しいのは、僕だって一緒さ」
「君が力を開放すれば、奇跡を起こすどころか、宇宙の法則をねじ曲げることだって可能だろう」
「なぜ君一人だけが、それほどの素質を備えているのか。理由は未だにわからない」
「現実は随分と違ったね」
「まどか。君は、望むなら、万能の神にだってなれるかもしれないよ」
「というと?」
「その程度、きっと造作もないだろうね」
「その願いは君にとって、魂を差し出すに足る物かい?」
「無駄な事だって知ってるくせに。懲りないんだなあ、君も」
「代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね」
「勿体ないじゃないか」
「君に殺されたのは、これで二度目だけれど、おかげで攻撃の特性も見えてきた」
「時間操作の魔術だろう? さっきのは」
「やっぱりね。何となく察しはついてたけれど、君はこの時間軸の人間じゃないね」
「なるほどね」
「だからこんなにしつこく僕の邪魔をするわけだ」
「そうまでして、鹿目まどかの運命を変えたいのかい?」
「この国では、成長途中の女性のことを、少女って呼ぶんだろう?」
「だったら、やがて魔女になる君たちのことは、魔法少女と呼ぶべきだよね」

第9話

「入っていいかい? 話があるんだ」
「訂正するほど間違ってはいないね」
「勘違いしないで欲しいんだが、僕らは何も、人類に対して悪意を持っている訳じゃない」
「全ては、この宇宙の寿命を伸ばすためなんだ」
「まどか、君はエントロピーっていう言葉を知ってるかい?」
「簡単に例えると、焚き火で得られる熱エネルギーは、木を育てる労力と釣り合わないってことさ」
「エネルギーは形を変換する毎にロスが生じる」
「宇宙全体のエネルギーは、目減りしていく一方なんだ」
「だから僕たちは、熱力学の法則に縛られないエネルギーを探し求めて来た」
「そうして見つけたのが、魔法少女の魔力だよ」
「僕たちの文明は、知的生命体の感情を、エネルギーに変換するテクノロジーを発明した」
「ところが生憎、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった」
「そこで、この宇宙の様々な異種族を調査し、君たち人類を見出したんだ」
「人類の個体数と繁殖力を鑑みれば、一人の人間が生み出す感情エネルギーは、その個体が誕生し、成長するまでに要したエネルギーを凌駕する」
「君たちの魂は、エントロピーを覆す、エネルギー源たりうるんだよ」
「とりわけ最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女の、希望と絶望の相転移だ」
「ソウルジェムになった君たちの魂は、燃え尽きてグリーフシードへと変わるその瞬間に、膨大なエネルギーを発生させる」
「それを回収するのが、僕たち、インキュベーターの役割だ」
「この宇宙にどれだけの文明がひしめき合い、一瞬ごとにどれ程のエネルギーを消耗しているのか分かるかい?」
「君たち人類だって、いずれはこの星を離れて、僕たちの仲間入りをするだろう」
「その時になって、枯れ果てた宇宙を引き渡されても困るよね?」
「長い目で見れば、これは君たちにとっても、得になる取引のはずだよ?」
「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ?」
「それだけでも充分に良心的なはずなんだが」
「騙すという行為自体、僕たちには理解できない」
「認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は、他者を憎悪するんだよね」
「君たち人類の価値基準こそ、僕らは理解に苦しむなあ」
「今現在で69億人、しかも、4秒に10人づつ増え続けている君たちが、どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?」
「これでも弁解に来たつもりだったんだよ?」
「君たちの犠牲が、どれだけ素晴らしい物をもたらすか、理解して貰いたかったんだが、どうやら無理みたいだね」
「まどか。いつか君は、最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう」
「その時僕らは、かつて無い程大量のエネルギーを手に入れるはずだ」
「この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて。待ってるからね」
「そうまでして死体の鮮度を保って、一体どうするつもりだい?」
「僕の知る限りでは、無いね」
「魔法少女は条理を覆す存在だ。君たちがどれ程の不条理を成し遂げたとしても、驚くには値しない」
「前例はないね。だから僕にも方法は分からない」
「生憎だが、助言のしようがないよ」
「まさか、そんなの不可能に決まってるじゃないか」
「もちろん、無駄な犠牲だったら止めただろうさ」
「でも今回、彼女の脱落には、大きな意味があったからね」
「これでもうワルプルギスの夜に立ち向かえる魔法少女は、君だけしか居なくなった」
「もちろん、一人では勝ち目なんてない」
「この街を守るためには、まどかが魔法少女になるしかない訳だ」

第10話

「彼女たちは、魔法少女。魔女を狩る者たちさ」
「その言葉は本当かい?暁美ほむら。君のその祈りの為に、魂を賭けられるかい?
 戦いの定めを受け入れてまで、叶えたい望みがあるなら、僕が力になってあげられるよ」
「そうとも。君にはその資格がありそうだ。教えてごらん。君はどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるのかい?」
「契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した。さあ、解き放ってごらん。その新しい力を!」
「仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた」
「諦めたらそれまでだ。でも、君なら運命を変えられる。避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。
 その為の力が、君には備わっているんだから」
「もちろんさ。だから、僕と契約して、魔法少女になってよ!」
「本当にもの凄かったね、変身したまどかは。彼女なら、最強の魔法少女になるだろうと予測していたけれど…。
 まさかあのワルプルギスの夜を、一撃で倒すとはね」
「遅かれ早かれ、結末は一緒だよ。彼女は最強の魔法少女として、最大の敵を倒してしまったんだ。
 もちろん後は、最悪の魔女になるしかない。今のまどかなら、おそらく十日かそこいらで、この星を壊滅させてしまうんじゃないかな?
 ま、後は君たち人類の問題だ。僕らのエネルギー回収ノルマは、おおむね達成できたしね」
「あ……戦わないのかい?」
「暁美ほむら…君は…」
「ひっ」

第11話

「時間遡行者・暁美ほむら」
「過去の可能性を切り替えることで、幾多の並行世界を横断し、君が望む結末を求めて、この一ヶ月間を繰り返してきたんだね」
「君の存在が、一つの疑問に答えを出してくれた――『何故、鹿目まどかが、魔法少女として、あれほど破格の素質を備えていたのか』」
「今なら納得いく仮説が立てられる」
「魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる」
「一国の女王や救世主なら兎も角、ごく平凡な人生だけを与えられてきたまどかに、どうしてあれほど膨大な因果の糸が集中してしまったのか不可解だった」
「だが――ねえ、ほむら」
「ひょっとしてまどかは、君が同じ時間を繰り返す毎に、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい」
「やっぱりね」
「原因は君にあったんだ」
「正しくは、君の魔法の副作用――と言うべきかな」
「君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ――鹿目まどかの安否だ」
「同じ理由と目的で、何度も時間を遡るうちに、君は幾つもの並行世界を、螺旋状に束ねてしまったんだろう――鹿目まどかの存在を中心軸にしてね」
「その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら、彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく」
「君が繰り返してきた時間――その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだ」
「あらゆる出来事の元凶としてね」
「お手柄だよ、ほむら」
「君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

「意外な展開ではないよ」
「予兆は随分前からあった」
「はあ」
「例えば君は、家畜に対して引け目を感じたりするかい?」
「彼らがどういうプロセスで、君たちの食卓に並ぶのか」

「その反応は理不尽だ」
「この光景を残酷と思うなら、君には本質が全く見えていない」
「彼らは人間の糧になることを前提に、生存競争から保護され、淘汰されることなく繁殖している」
「牛も豚も鶏(とり)も、他の野生動物に比べれば、種としての繁殖ぶりは圧倒的だ」
「君たちは皆(みな)、理想的な共栄関係にあるじゃないか」
「寧ろ僕らは、人類が家畜を扱うよりも、ずっと君たちに対して譲歩しているよ?」
「曲がりなりにも、知的生命体と認めた上で交渉しているんだしね」
「信じられないのかい?」
「それなら、見せてあげようか――インキュベーターと人類が、共に歩んできた歴史を」

「僕たちはね、有史以前から君たちの文明に干渉してきた」
「数え切れないほど大勢の少女が、インキュベーターと契約し、希望を叶え、そして絶望に身を委ねていった」
「祈りから始まり、呪いで終わる――これまで、数多の魔法少女たちが繰り返してきたサイクルだ」
「中には、歴史に転機をもたらし、社会を新しいステージへと導いた娘(こ)もいた」
「彼女たちを裏切ったのは僕たちではなく、寧ろ自分自身の祈りだよ」
「どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを生み出すことになる」
「やがてそこから災厄が生じるのは当然の節理だ」
「そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも、願い事なんてすること自体が間違いなのさ」
「でも、愚かとは言わないよ」
「彼女たちの犠牲によって、人の歴史が紡がれてきたことも、また事実だし」

「そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、今の君たちの暮らしは成り立っているんだよ」
「それを正しく認識するなら、どうして今更、たかだか数人の運命だけを特別視できるんだい?」
「それが僕たちに理解できたなら、わざわざこんな惑星(ほし)まで来なくても済んだんだけどね」
「僕たちの文明では、感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかなかった」
「だから君たち人類を発見した時は驚いたよ」
「全ての個体が、別個に感情を持ちながら共存している世界なんて、想像だにしなかったからね」
「君たちは今でも、裸で洞穴(ほらあな)に住んでたんじゃないかな」

「それを否定したとして、君は僕の言葉を信じるかい?」
「今更言葉にして説くまでもない」
「その目で見届けてあげるといい――『ワルプルギス』を前にして、暁美ほむらがどこまでやれるか」
「彼女がまだ、希望を求めているからさ」
「いざとなれば、この時間軸もまた無為にして、ほむらは戦い続けるだろう」
「何度でも性懲りもなく、この無意味な連鎖を繰り返すんだろうね」
「最早今の彼女にとって、立ち止まることと、諦めることは同義だ」
「何もかもが無駄だった、と――決してまどかの運命を変えられないと確信したその瞬間に、暁美ほむらは絶望に負けて、グリーフシードへと変わるだろう」
「彼女自身も分かってるんだ」
「だから選択肢なんてない」
「勝ち目のあるなしにかかわらず、ほむらは戦うしかないんだよ」
「そうさ」
「過去の全ての魔法少女たちと同じだよ」
「まどか、君だって一緒に視(み)ただろう?」


第12話

「数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みだろうと、叶えられるだろう」
「さあ、鹿目まどか――その魂を代価にして、君は何を願う?」
「――!」
「その祈りは――そんな祈りが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない!」
「因果律そのものに対する反逆だ!」
「はっ」
「――君は、本当に神になるつもりかい?」

「まどかがもたらした新しい法則に基づいて、宇宙が再編されているんだよ」
「そうか――君もまた、時間を越える魔法の使い手だったね」
「じゃあ一緒に見届けようか――鹿目まどかという、存在の結末を」

「あれが、彼女の祈りがもたらしたソウルジェムだ」
「その壮大過ぎる祈りを叶えた対価に、まどかが背負うことになる呪いの量が分かるかい?」
「一つの宇宙を作り出すに等しい希望が遂げられた」
「それは即ち、一つの宇宙を終わらせるほどの絶望をもたらすことを意味する」
「当然だよね?」

「まどか」
「これで君の人生は――始まりも、終わりもなくなった」
「この世界に生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない」
「君という存在は、一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった」
「もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない」
「君はこの宇宙の一員では、なくなった」

「ふうん――なるほどね」
「確かに君の話は、一つの仮説としては成り立つね」
「だとしても、証明しようがないよ」
「君が言うように、宇宙のルールが書き換えられてしまったのだとすれば、今の僕らにそれを確かめる手段なんてない訳だし」
「君だけがその記憶を持ち越しているのだとしても――それは、君の頭の中にしかない夢物語と区別がつかない」
「まあ確かに、浄化しきれなくなったソウルジェムが、何故消滅してしまうのか――その原理は僕たちでも解明できてない」
「その点、君の話にあった『魔女』の概念は、中々興味深くはある」
「人間の感情エネルギーを収集する方法としては、確かに魅力的だ」
「そんな上手い方法があるなら、僕たちインキュベイターの戦略も、もっと違ったものになっただろうね」
「君が言う、『魔女』のいた世界では、今僕らが戦っているような魔獣なんて、存在しなかったんだろう?」
「呪いを集める方法としては、余程手っ取り早いじゃないか」
「ふうん――」
「やっぱり理解できないなあ、人間の価値観は」

「今夜はつくづく瘴気が濃いね」
「魔獣どもも、次から次へと湧いてくる――幾ら倒してもキリがない」



叛逆の物語


「きゅ?きゅ~」
「きゅ~きゅ、きゅ」

「きゅ~、きゅ~」

「きゅ、きゅ~!」
「きゅ~!」

「きゅ~」

「真実なんて知りたくもないはずなのに、それでも追い求めずにはいられないなんて、つくづく人間の好奇心というものは、理不尽だね」
「まあ、君ならいずれはきっと、答えにたどり着くだろうとは思っていたよ、暁美ほむら」
「残る疑問は、君の命と魂が、今どこにあるのかだよね?その答えは、僕が教えてあげる」
「これがこの偽物の見滝原市の外側、現実世界の君の姿だよ」
「僕たちの作り出した干渉遮断フィールドが、君のソウルジェムを包んでいる。すでに限界まで濁りきっていたソウルジェムを、外からの影響力が一切及ばない環境に閉じ込めた時、何が起こるのか」
「魔法少女を浄化し、消滅させる力。君たちが“円環の理”と呼んでいる現象から隔離された時、ソウルジェムはどうなるのか?確かに興味深い結果を観察させてもらったよ。独自の法則に支配された閉鎖空間の形成と、外部の犠牲者の誘導、捕獲。これこそまさしく、いつか君が説明してくれた、魔女とやらの能力、そのものだよね」
「遮断フィールドに保護されたソウルジェムが、まだ砕けていない以上、君は完全な形で、魔女に変化できたわけでもない。卵を割ることができなかったヒナが、殻の中で成長してしまったようなものだね。だから君は、自らの内側に結界を作り出すことになった。まさか、街1つを丸ごと模倣して再現できるとは、驚きだ。ここはね、君のソウルジェムの中にある世界なんだよ」
「そこは僕たちが、(キュゥべえたち)調整してるのさ」
「フィールドの遮断力は、あくまで一方通行だ、外からの干渉ははじくけれど、内側からの誘導で、犠牲者を連れ込むことはできる。魔女としての君が、無意識のうちに求めた標的だけが、この世界に入り込めるんだ。ここまで条件を限定したうえで、なおも“円環の理”なる存在が、あくまで暁美ほむらに接触しようとするならば、その時は、君の結界に招き入れられた、犠牲者という形で、この世界に具現化するしかない。そうなれば、僕たちインキュベーターは、これまで謎だった、魔法少女消滅の原因を、ようやく特定し、観測することができる。実際、君が作った結界には、現実世界にはすでに存在しないキャラクターが、奇妙な形で参加している。とりわけ興味深いのは、過去の記憶にも、未来の可能性にも存在しない、1人の少女だ。この宇宙と一切の因果関系がない存在なのに、彼女は何の違和感もなく君の世界に紛れ込んできた。まあ、そもそも最初から捜す必要さえなかったんだ。手間を省いてくれたのは、君自身なんだよ、暁美ほむら。君は以前から“円環の理”のことを“鹿目まどか”という名前で呼んでいたからね」
「唯一やっかいだったのは…鹿目まどかが、未知の力を発揮するそぶりをまったく見せなかったことだ。結界の主である君の記憶操作は、まどかに対しても作用してしまったみたいだね。彼女は君を救済するという目的だけでなく、自分自身の力と正体さえ見失っていたようだ。これでは手の出しようがない」
「鹿目まどかは、神であることを忘れ、暁美ほむらは、魔女であることを忘れ、おかげで僕らは、こんな無意味な堂々巡りにつきあわされることになった。まあ、気長に待つつもりでいたけれど、君が真相にたどり着いたことで、ようやく均衡も崩れるだろう。さあ、暁美ほむら。まどかに助けを求めるといい。それで彼女も思い出す。自分が何者なのか、何のためにここに来たのかを」
「もちろん、今まで仮説にすぎなかった“円環の理”を、この目で見届けることだよ」
「最終的な目標については否定しないよ。まあ道のりは困難だろう。この現象は、僕たちにとってまったくの謎だった。存在すら確認できないものは、手の出しようがないからね」
「そうだね。観測さえできれば干渉できる。干渉できるなら、制御もできる。いずれ僕たちの研究は“円環の理”を完全に克服するだろう。そうなれば、魔法少女は魔女となり、さらなるエネルギーの回収が期待できるようになる。希望と絶望の相転移、その感情から変換されるエネルギーの総量は、予想以上のものだったよ。やっぱり魔法少女は、無限の可能性を秘めている。君たちは、魔女へと変化することで、その存在を全うするべきだ」
「なぜ怒るんだい?君にはもう関わりのない話だ。暁美ほむらの存在は完結した。君は過酷だった運命の果てに、待ち望んでいた存在と、再会の約束を果たす。これは、幸福なことなんだろう?」
「そんな…自ら呪いを募らせるなんて、何を考えているんだ?浄化が間に合わなくなるよ!」
「君はそんな理由で救済を拒むのかい?このまま、永遠の時を、呪いと共に過ごすつもりなのか?」
「バカな…この遮断フィールドの内側で死ぬことが何を意味するのか分かっているのかい?殻を破ることすら拒んで、卵の中で魔女として完成してしまったら…。君は“円環の理”に感知されることすらなく破滅する。もう誰も、君の魂を絶望から救えない。君は再び、鹿目まどかと巡り会うチャンスを永久に失うんだよ?」
「君にとっても最悪の結末だろうに。まったく、どうして人間の思考は、こうも理不尽なんだい?」

「待ってくれ!あれは暁美ほむらなんだ。君たちは仲間と戦う気かい?」
「まどか、君ならほむらを救えるはずだ。君が持っている本当の力に気づきさえすれば」

「(キュゥべえたち)訳が分からないよ」

「世界が書き換えられていく…この宇宙に、新しい概念が誕生したというのか?」
「何が起きているんだ?暁美ほむら、君は何に干渉しているんだ?何を改ざんしてしまったんだ?」
「信じられない…呪いに染まったソウルジェムが、消え去るはずの君の魂が…なぜ?」
「それじゃあ、いったい…」
「君はいったい、何者なんだ?魔法少女でも魔女でもなく、いったい、どこにたどり着こうとしてるんだ?」
「これではっきりした。君たち人類の感情は、利用するには危険すぎる。こんな途方も無い結末は、僕たちでは制御しきれない」
「うわっ!」