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*第1話 「まどか、おそーい」 「お?可愛いリボン」 「相変わらずまどかのママはカッコいいなあ。美人だしバリキャリだし」 「うらやましい悩みだねえ」 「ほーう?まどかもヒトミみたいなモテモテな美少女に変身したいと。そこでまずはリボンからイメチェンですかな?」 「さては、ママからモテる秘訣を教わったな?けしからーん!そんなハレンチな子はー…こうだぁっ!」 「可愛いやつめ!でも男子にモテようなんて許さんぞー!まどかは私の嫁になるのだー!」 「ダメだったか…」 「そっちを後回しかよ!」 「うお、すげー美人!」 「ねえ、まどか。あの子知り合い?何かさっき思いっきりガン飛ばされてなかった?」 「お?」 「ええ!?何それ?文武両道で才色兼備かと思いきや実はサイコな電波さん。くー!どこまでキャラ立てすりゃあ気が済むんだ?あの転校生は!?萌えか?そこが萌えなのかあ!?」 「何それ?非常識なところで心当たりがあると?」 「あははは。すげー、まどかまでキャラが立ち始めたよ」 「あー、もう決まりだ。それ前世の因果だわ。あんた達、時空を超えて巡り合った運命の仲間なんだわぁ!」 「それ出来過ぎてない?どんな偶然よ?」 「今日はピアノ?日本舞踊?」 「あーあ、小市民に生まれて良かったわ」 「あ、まどか、帰りにCD屋に寄ってもいい?」 「へへ。まあね」 「じゃあね」 「ん?」 「まどか、こっち!」 「何よあいつ。今度はコスプレで通り魔かよ!つーか何それ、ぬいぐるみじゃないよね?生き物?」 「あれ?非常口は?どこよここ」 「あーもう、どうなってんのさ!」 「冗談だよね?私、悪い夢でも見てるんだよね?ねえ、まどか!」 「あ、あれ!」 「も、戻った!」 「ふう」 「何で、私たちの名前を?」 *第2話 「うわ…」 「んー、めちゃうまっすよ」 「うんうん、何でも聞いてくれたまえ」 「契約って?」 「え、ホント?」 「金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか?」 「魔女って何なの?魔法少女とは違うの?」 「そんなヤバイ奴らがいるのに、どうして誰も気付かないの?」 「んー、悩むなぁ」 「おはよ…うわっ」 「やっぱそいつ、私達にしか見えないんだ」 「ああ、いや、何でもないから!いこ、いこ!」 (ええ?私達、もう既にそんなマジカルな力が?) (何か変な感じ) 「いや、そりゃねーわ。さすがに」 「バッグ忘れてるよー!」 「どーゆー意味だよ、それは」 (つーかさ、あんた、のこのこ学校までついて来ちゃって良かったの?) (言ったでしょ?昨日のあいつ、このクラスの転校生だって) (あんた命狙われてるんじゃないの?) (なら良いんだけど…) (げ、噂をすれば影) 「あの転校生も、えっとその…魔法少女なの?マミさんと同じ」 「でもそれなら、魔女をやっつける正義の味方なんだよね?それがなんで急にまどかを襲ったりしたわけ?」 「何で?同じ敵と戦っているなら仲間は多い方がいいんじゃないの?」 「つまりアイツは、キュウべえがまどかに声掛けるって最初から目星を付けてて、それで朝からあんなに絡んできたわけ?」 (気にすんなまどか。アイツが何かちょっかい出してきたら、私がぶっ飛ばしてやるからさ。マミさんだってついてるんだし) (ともかくってゆーな!) 「ねえ、まどか。願い事、何か考えた?」 「私も全然。何だかなぁ。いっくらでも思いつくと思ったんだけどなぁ」 「欲しい物もやりたい事もいっぱいあるけどさ、命懸けって所で、やっぱ引っ掛かっちゃうよね。そうまでする程のもんじゃねーよなーって」 「まあきっと、私達がバカなんだよ」 「そう、幸せバカ。別に珍しくなんかないはずだよ?命と引き換えにしてでも、叶えたい望みって。そう言うの抱えている人は、世の中に大勢いるんじゃないのかな」 「だから、それが見付からない私達って、その程度の不幸しか知らないって事じゃん。恵まれ過ぎてバカになっちゃってるんだよ」 「何で…私達なのかな?不公平だと思わない?こーゆーチャンス、本当に欲しいと思っている人は他にいるはずなのにね」 「昨日の続きかよ」 「あんたにとやかく言われる筋合いはないわよ!」 「仁美、ゴメン。今日は私らちょっと野暮用があって」 「いや、だから違うって、それ」 「準備になってるかどうか分からないけど…持って来ました!何もないよりはマシかと思って」 「まどかは何か、持って来た?」 「うーわー」 「こりゃあ参った。あんたには負けるわ」 「意外と地味ですね」 「光、全然変わらないっすね」 「うん、やっぱりマミさんは正義の味方だ!それに引き換えあの転校生…ホントにムカつくなぁ!」 「ねえ、マミさん。魔女の居そうな場所、せめて目星ぐらいは付けられないの?」 「あ、マミさんあれ!」 「うわ、うわー」 「はい!」 「来るな、来るなー!」 「な、何てことねーって!」 「う…グロい」 「た、卵」 「そう言えば…」 「あ、キレイになった」 「あいつ…」 「くー!やっぱり感じ悪いやつ!」 「一件落着、って感じかな」 *第3話 「…はあ(深呼吸)」 「はい、これ」 「そんな、運がいいだけだよ。きっと」 「う。い、いいのかな?」 「えー…」 「いやー、やっぱマミさんってカッコイイねえ!」 「いえーす!」 「何か、ここんとこずっとハズレだよね」 「んー…まどかは?」 「ねえ、マミさん。願い事って自分の為の事柄でなきゃダメなのかな?例えば、例えばの話なんだけどさ、私なんかより余程困っている人が居て、その人の為に願い事をするのは…」 「た、例え話だって言ってるじゃんか!」 「その言い方は…ちょっと酷いと思う」 「…そうだね。私の考えが甘かった。ゴメン」 「はあ…よう、お待たせ」 「何か今日は都合悪いみたいでさ。わざわざ来てやったのに、失礼しちゃうわよね」 「ん?どうしたの?」 「またあの迷路が?」 「まどか、マミさんの携帯、聞いてる?」 「まずったなぁ。まどか、先行ってマミさんを呼んで来て。あたしはこいつを見張ってる」 「あの迷路が出来上がったら、こいつの居所も分からなくなっちゃうんでしょ?」 「放っておけないよ。こんな場所で」 「ありがとう。キュウべえ」 「そりゃあ、まあ、当然でしょ」 「いざとなったら頼むかも。でも今はやめとく。私にとっても大事な事だから。出来る事なら、いい加減なキモチで決めたくない」 「平気平気。退屈で居眠りしちゃいそう」 「間に合ったぁ」 「やったぁ!」 「返してよ。返せよ。それは…それは…マミさんのものだ!返せって言ってるだろ!マミさんに!」 *第4話 「え、ええ…」 「あ、そうでしたか…。どうも」 (何で恭介なのよ。私の指なんていくら動いてたって何の役にも立たないのに) (何で私じゃなくて、恭介なの?もしも私の願い事で恭介の体が治ったとして、それを恭介はどう思うの?ありがとうって言われてそれだけ?それとも?それ以上のことを言って欲しいの?) 「あたしって…嫌な子だ」 (思えばその時の私は、まだ何も分かっていなかった。奇跡を望む意味も、その代償も) 「でもってー、ユウカったらさー、それだけ言ってもまだ気付かないのよ。『え、何?また私変な事言ったー?』とか半べそになっちゃってー。こっちはもう笑い堪えるのに必死でさー!」 (ゴメン、今はやめよう。また後で) 「そう、そうだよねー。どうかと思うよねー」 「知らないんだよ、誰も。魔女の事、マミさんの事、あたし達は知ってて、他のみんなは何も知らない。それってもう、違う世界で違うものを見て暮らしているようなもんじゃない」 「とっくの昔に変わっちゃってたんだ。もっと早くに気付くべきだったんだよ、私達」 「まどかはさ、今でもまだ魔法少女になりたいって思ってる?」 「…そうだよね。うん、仕方ないよ」 「マミさん、本当に優しい人だったんだ。戦う為にどういう覚悟がいるのか、私達に思い知らせる為に…あの人は…」 「ねえキュウべえ、この町、どうなっちゃうのかな?マミさんの代わりに、これから誰がみんなを魔女から守ってくれるんだろう」 「でもそれってグリーフシードだけが目当てな奴なんでしょ?あの転校生みたいに」 「じゃあ…」 「何を聴いてるの?」 「ああ、ドビュッシー?素敵な曲だよね」 「あ、あたしってほら、こんなだからさ、クラシックなんて聴く柄じゃないだろってみんなが思うみたいでさ。たまに曲名とか言い当てたら、すごい驚かれるんだよね。意外すぎて尊敬されたりしてさ。恭介が教えてくれたから、でなきゃ私、こういう音楽ちゃんと聴こうと思うきっかけなんて、多分一生なかったと思うし」 「なーに?」 「え?」 「だって恭介、音楽好きだから…」 「大丈夫だよ。きっと何とかなるよ。諦めなければきっと、いつか…」 「あるよ」 「奇跡も、魔法も、あるんだよ」 「これでとどめだぁ!!」 「いやーゴメンゴメン。危機一髪ってとこだったね」 「ん?あー、んーまあ何、心境の変化って言うのかな?」 「ん?あ、大丈夫だって!初めてにしちゃあ、上手くやったでしょ?私」 「ふん、遅かったじゃない。転校生」 *第5話 「本当に、どんな願いでも叶うんだね?」 「うん、やって」 「うっ…」 「どうしたのよ仁美。寝不足?」 「えー、何かあったの?」 「はは、何それ?」 「そんな事なら、学校休んじゃえばいいのに」 「さっすが優等生!偉いわー」 「久々に気分良いわー。爽快爽快」 「ん?そりゃあちょっとは怖いけど…昨日の奴にはあっさり勝てたし。もしかしたらまどかと仁美、友達二人も同時に亡くしてかもしれないって。そっちの方がよっぽど怖いよね」 「だーかーら、何つーかな。自信?安心感?ちょっと自分を褒めちゃいたい気分っつーかね」 「まー、舞い上がっちゃってますね、私。これからのミタキハラ市の平和はこの魔法少女さやかちゃんが、ガンガン守りまくっちゃいますからねー!」 「そうねー。後悔って言えば、迷ってたことが後悔かな。どうせだったらもうちょっと早く心を決めるべきだったなって。あのときの魔女、私と二人がかりで戦ってたら、マミさんも死なないで済んだかもしれない」 「さーてーは、何か変な事考えてるなー?」 「なっちゃった後だから言えるの、こういう事は。どうせならって言うのがミソなのよ。私はさ、成るべくして魔法少女になったわけ」 「願い事、見つけたんだもの。命懸けで戦うハメになったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎたって言うのがちょっと悔しいだけでさ。だから引け目なんて感じなくていいんだよ。まどかは魔法少女にならずに済んだって言う、ただそれだけの事なんだから」 「さてと、じゃあ私はそろそろ行かないと」 「まあ、ちょっとね」 「そっか、退院はまだなんだ」 「あ。恭介自信はどうなの?どっか身体におかしなとこ、ある?」 「ん?どうしたの?」 「変な事思い出さなくていいの。今の恭介は大喜びして当然なんだから。そんな顔しちゃだめだよ」 「まあ、無理もないよね。あ、そろそろかな?」 「恭介、ちょっと外の空気吸いに行こう」 「いいからいいから」 「本当のお祝いは退院してからなんだけど、足より先に手が治っちゃったしね」 (マミさん、あたしの願い、叶ったよ) (後悔なんて、あるわけない) (あたし、今最高に幸せだよ) 「まあね。一つ間違えたらお陀仏なわけだし」 「まどか?」 「そ、悪い魔女を探してパトロール。これも正義の味方の勤めだからね」 「平気平気。マミさんだってそうして来たんだし。後輩として、それぐらいはね」 「頑張り過ぎじゃない?」 「ううん。すっごく嬉しい」 「ねえ分かる?手が震えちゃってさ。さっきから止まらないの。情けないよね。 もう魔法少女だってのに、一人だと心細いなんてさ。邪魔なんかじゃない。すごく嬉しい。誰かが一緒にいてくれるだけで、すっごく心強いよ。それこそ百人力って感じ」 「必ず守るよ。だから安心して私の後についてきて。今まで見たいに、一緒に魔女をやっつけよう」 「あたしバカだから、一人だと無茶なでたらめやらかしかねないし。まどかもいるんだって肝に銘じてれば、それだけ慎重になれると思う」 「ここだ」 「楽に越した事ないよ。こちとらまだ初心者なんだし」 「分かってる」 「あれが」 「任せて!」 「だって、あれほっといたら誰かが殺されるのよ?」 「な…。魔女に襲われる人たちを…あんた、見殺しにするって言うの?」 「あんたは」 「だったら、何だって言うのよ!」 「誰が…あんたなんかに。あんたみたいな奴がいるから、マミさんは…!!」 「黙れえええ!!!」 「負けない」 「負けるもんかあ!」 *第6話 「え?」 「くっ!邪魔するな!」 「あー、真っ黒」 「食べちゃったの?」 「これをキレイにしておくのって、そんなにも大切な事なの?」 「だからって、GSの為に他の人を犠牲にするなんて」 「はあ…何だかなぁ」 「マミさんだって十分なGSを持ってた訳じゃないんでしょ?でも、ちゃんと戦えてたよね?やっぱあれ?才能の違いとかあるの?」 「ずるーい!不公平だー!」 「え?誰よそれ」 「まどかが?それホント?」 「ううん。ダメ!これは…私の戦いなんだ。あの子を巻き込むわけにはいかない」 「そう…」 「まあ、当然そうなるだろうね」 「喧嘩ねえ。夕べのあれが、まどかにはただの喧嘩に見えたの?」 「あれはねえ、正真正銘、殺し合いだったよ。お互いナメてかかってたのは最初だけ。途中からは、アイツも私も本気で相手を終わらせようとしてた」 「だから話し合えって?バカ言わないで。相手はGSの為に人間をえさにしようって奴なんだよ?どうやって折り合いつけろって言うの?」 「そんなわけない!まどかだって見てたでしょ?あの時あいつはマミさんがやられるのを待ってから魔女を倒しに来た。あいつはGS欲しさにマミさんを見殺しにしたんだ!」 「あの転校生も、昨日の杏子って奴と同類なんだ。自分の都合しか考えてない!今なら分かるよ。マミさんだけが特別だったんだ。他の魔法少女なんて、あんな奴らばっかりなんだよ」 「夕べ逃した使い魔は小物だったけど、それでも人を殺すんだよ?次にあいつが狙うのは、まどかのパパやママかもしれない。たっくんかもしれないんだよ?それでもまどかは平気なの?ほっとこうとする奴を許せるの?」 「私はね、ただ魔女と戦うだけじゃなくて、大切な人を守るためにこの力を望んだの。だから、もし魔女より悪い人間がいれば、私は戦うよ。例えそれが、魔法少女でも」 「そ、そうなんですか…」 「お前は」 「お前なんかに何が分かる!」 「何?」 「絶対に…お前だけは絶対に許さない。今度こそ必ず…!」 「まどか。邪魔しないで!そもそもまどかは関係ないんだから!」 「ナメるんじゃないわよ!」 「まどか!あんたなんて事を!」 「何?何なの?」 *第7話 「騙してたのね。私達を」 「何で教えてくれなかったのよ!」 「大きなお世話よ!そんな余計な事!」 「ぐっ…」 「何でよ。どうして私達をこんな目に…!」 「こんな身体になっちゃって…私、どんな顔して恭介に会えばいいのかな」 「あんたは自業自得なだけでしょ」 「こんな所まで連れて来て、何の用なの?」 「何でそんな話を私に…?」 「それって変じゃない?あんたは自分のことだけ考えて生きてるはずなのに、私の心配なんかしてくれるわけ?」 「あんたみたいに?」 「あんたの事、色々と誤解してた。その事はごめん。謝るよ」 「でもね、私は人の為に祈った事を後悔してない。そのキモチを嘘にしない為に、後悔だけはしないって決めたの。これからも」 「私はね、高すぎるものを支払ったなんて思ってない。この力は、使い方次第でいくらでもすばらしいモノに出来るはずだから」 「それからさ、あんた。そのリンゴはどうやって手に入れたの?お店で払ったお金はどうしたの?」 「言えないんだね。なら、私、そのリンゴは食べられない。貰っても嬉しくない」 「私は私のやり方で戦い続けるよ。それがあんたの邪魔になるなら、前みたいに殺しに来ればいい。私は負けないし、もう、恨んだりもしないよ」 「あ、ああ。おはよう」 「ああ、ちょっとばかり風邪っぽくてね」 (大丈夫だよ。もう平気。心配いらないから) 「さーて、今日も張り切って…」 「うん」 「私は…いいよ」 「それで…話って何?」 「え?」 「そ、そうなんだ」 「あはは…まさか仁美がねえ…。あ、なーんだ、恭介の奴、隅に置けないなあ」 「あーまあ、その。腐れ縁って言うか何て言うか」 「な、何の話をしてるのさ」 「仁美…」 「あ、あたしは…」 「まどか…」 「あんた、何で?何でそんなに優しいかな?あたしにはそんな価値なんてないのに」 「あたしね、今日後悔しそうになっちゃった。あの時、仁美を助けなければって。ほんの一瞬だけ思っちゃった。正義の味方失格だよ…。マミさんに顔向け出来ない」 「仁美に恭介を取られちゃうよ…。でも私、何も出来ない。だって私、もう死んでるもん。ゾンビだもん。こんな身体で抱き締めてなんて言えない。キスしてなんて言えないよ…」 「ありがと。ごめんね」 「もう大丈夫。スッキリしたから」 「さあ、行こう。今夜も魔女をやっつけないと」 「邪魔しないで。一人でやれるわ」 「あははは、ホントだ。その気になれば痛みなんて…あはは。完全に消しちゃえるんだ」 *第8話 「やり方さえ分かっちゃえば簡単なもんだね。これなら負ける気がしないわ」 「あげるよ。そいつが目当てなんでしょ?」 「あんたに借りは作らないから。これでチャラ。いいわね」 「さ、帰ろう。まどか」 「あ、ゴメン。ちょっと疲れちゃった」 「…ああでもしなきゃ勝てないんだよ。あたし才能ないからさ」 「あたしの為にって何よ」 「こんな姿にされた後で、何が私の為になるって言うの?」 「今の私はね、魔女を殺す、ただそれしかだけ意味がない石ころなのよ。死んだ身体を動かして生きてるフリをしてるだけ。そんな私の為に、誰が何をしてくれるって言うの?考えるだけ無意味じゃん」 「だったらあんたが戦ってよ」 「キュウべえから聞いたわよ。あんた誰よりも才能あるんでしょ?私みたいな苦労をしなくても簡単に魔女をやっつけられるんでしょ?」 「私の為に何かしようって言うんなら、まず私と同じ立場になってみなさいよ。無理でしょ。当然だよね。ただの同情で人間やめられるわけないもんね?」 「何でも出来るくせに何もしないあんたの代わりに、あたしがこんな目に遭ってるの。それを棚に上げて、知ったような事言わないで」 「ついて来ないで…!」 「バカだよ私。何て事言ってんのよ…。もう救いようがないよ…」 「うるさい、大きなお世話よ」 「今度は何を企んでるのさ」 「あんた達とは違う魔法少女になる。私はそう決めたんだ。誰かを見捨てるのも、利用するのも、そんな事をする奴らとつるむのも嫌だ。見返りなんていらない。私だけは絶対に自分の為に魔法を使ったりしない」 「あたしが死ぬとしたら、それは魔女を殺せなくなった時だけだよ。それってつまり用済みって事じゃん。ならいいんだよ。魔女に勝てないあたしなんてこの世界にはいらないよ」 「どうしてかな。ただ何となく分かっちゃうんだよね。あんたが嘘つきだって事」 「あんた、何もかも諦めた目をしてる。いつも空っぽな言葉を喋ってる。今だってそう。あたしの為とか言いながら、ホントは全然別な事を考えてるんでしょ?ごまかし切れるもんじゃないよ、そういうの」 「まどかは関係ないでしょ」 「ねえ、その人のこと、聞かせてよ」 「今あんた達が話してた女の人のこと、もっとよく聞かせてよ」 「その人、あんたの事が大事で、喜ばせたくて頑張ってたんでしょ?あんたにもそれが分かってたんでしょ?なのに犬と同じなの?ありがとうって言わないの?役に立たなきゃ捨てちゃうの?」 「ねえ、この世界って守る価値あるの?あたし何の為に戦ってたの?教えてよ。今すぐあんたが教えてよ。でないとあたし…」 「悪いね、手間かけさせちゃって」 「うん。別にもう、どうでも良くなっちゃったからね」 「結局私は、一体何が大切で何を守ろうとしてたのか、もう何もかも、わけ分かんなくなっちゃった」 「希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって、いつだったかあんた言ってたよね。今ならそれ、よく分かるよ」 「確かに私は何人か救いもしたけどさ、だけどその分、心には恨みや妬みが溜まって。一番大切な友達さえ傷付けて」 「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。私達魔法少女って、そう言う仕組みだったんだね」 「あたしって、ほんとバカ」 *第9話 「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。私達魔法少女って、そう言う仕組みだったんだね」 「あたしって、ホントばか」 ※冒頭の回想シーンのみ *第10話 「あのさあ、キュウべえがそんな嘘ついて、一体何の得があるわけ?私達に妙な事吹き込んで仲間割れでもさせたいの?」 「まさかあんた、ホントはあの杏子とか言う奴とグルなんじゃないでしょうね?」 「はあ、どっちにしろ私この子とチーム組むの反対だわ。まどかやマミさんは飛び道具だから平気だろうけど、いきなり目の前で爆発とか、ちょっと勘弁して欲しいんだよね。何度巻き込まれそうになった事か」 *第12話 「…何か、手間かけさせちゃったね」 「…うん。これでいいよ」 「そうだよ。私はただ、もう一度、アイツの演奏が聴きたかっただけなんだ。あのヴァイオリンを、もっともっと大勢の人に聴いてほしかった」 「それを思い出せただけで、十分だよ。もう何の後悔もない」 「まあ、そりゃ…ちょっぴり悔しいけどさ。仁美じゃ仕方ないや。恭介にはもったいないくらいいい子だし…幸せになって…くれるよね」 「うん」 *叛逆の物語 「ビンゴだよ、まどか」 「ゆうべも、お疲れ!」 「あれから、ちゃんと眠れた?」 「こら!そういうズルにまどかを巻き込むんじゃないの!」 「帰ってすぐ一緒にやろうって言ったのに、テレビなんか見てるあんたが悪いんでしょ!」 「まず遊ぼうって発想がおかしいんだっつうの!」 「こらっ、待ちなさいって!」 「ん?」 「<ええ~!>」 「ええ!?じゃあマミさんは知ってたんですか?」 「へえ、でも頼もしいじゃん。ここんとこ、ナイトメアも大物ばっかり出てきて、てこずらされてたし」 「仁美も大変だよね~。あんな無神経なヤツを彼氏にしたりするからさぁ」 「えへへ。まあ、何?人生経験ってやつですか」 「なっ!?」 「うわっ!」 「は~い」 「2人とも遅い!」 「はい!」 「ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテット!」 「気持ちは分かるけど、落ち着きなよ、仁美!」 「ゴメイサマ、リリアン!杏子!」 「ケーキ、ケーキ、丸いケーキ」 「丸いケーキは、だあれ?」 「違う。私はラズベリー。丸いケーキは赤い。ケーキは杏子?」 「今夜のお夢は苦い夢」 「お皿の上には猫の夢」 「まるまる太って、召し上がれ~!」 「まあ、あたしたちが力を合わせりゃ、チョロいもんよね」 「アハハ…」 「おい、こら、杏子!いいこと言ってんじゃないわよ!」 「は~い!」 「ハハハ、杏子の味覚はお子ちゃまだな」 「ったく、絶好調のマミさん相手に、真っ向からケンカ売るなんて、自信過剰なんだか、バカなんだか」 「べべ…でしょ?あの子が昔、魔女だったってだけで標的にするなんて、先走るにも程があるよ」 「それがあたしの役目だからね」 「だいたいさ、変だと思わなかったの?見滝原市丸ごと再現するほどでかい結界を張った魔女が、他の人間を襲って殺したりもせず、ただあたしたちを閉じ込めただけで、あとは何もしないなんて、あんたが覚えてるお菓子の魔女は、そんな奇妙なことやるヤツじゃなかったでしょ?」 「ちょっと考えれば分かったはずだよ。この魔女の結界は、エサ集めのためのワナじゃない。結界をコントロールしてる魔女の目的は、現状を維持すること。つまり、今、起こってる出来事が誰にとって好都合なのか、そこから推理していけば…」 「また自分だけの時間に逃げ込むつもり?あんたの悪いクセよね。その魔法に頼りすぎるところ」 「不思議がるほどの話じゃないでしょ?現にマミさんだって、さっきそう言ってたじゃない。今が一番幸せだって。どう?マミさんが魔女だと思う?」 「あんたらしい答えよね。それならそれで、もう1つ聞かせて。この結界を作った魔女を突き止めて、それであんたはどうするつもり?」 「始末するの?ただ魔女だからって理由で?」 「ねぇ、これってそんなに悪いことなの?誰とも争わず、みんなで力を合わせて生きていく。それを祈った心は、裁かれなきゃならないほど、罪深いものなの?」 「あたしたちが行き着く果ての姿だもの。同情だってしたくなるわよ」 「そっか、あんたは覚えてるんだっけね」 「ご挨拶だね。あたしはあんたが知ってるとおりのあたしだよ。転校生」 「あんただって、あたしの質問に答えてないよ。この見滝原を壊して、本当に構わないのか、じっくりと考えてから決めるんだね、悔いを残さないように」 「ねぇ、これってそんなに悪いことなの?」 「怖がらないでやって。ああ見えて、一番つらいのはあいつ自身なんだ」 「そいつは、ほっときな、まどか。大丈夫、さっきあたしが教えた通りにやればいい」 「慌てなさんな。あんたを外に出そうってわけじゃ、ない!」 「そして今は、円環に導かれ、この世の因果を外れた者たち」 「こうすれば、あんたの目を盗んで立ち回れると思ったのさ、インキュベーター。まどかだけに狙いを絞って、まんまと引っ掛かってくれたわね」 「まあ、要するに、かばん持ちみたいなもんですわ。まどかが置いていった記憶と力を、誰かが運んであげなきゃならなかったからね」 「ほむら1人を迎えに行くのに、3人がかりなんてね。ずいぶんと手間かけさせてくれたもんだけど。まあ、あいつのためならしかたないか。ここまで頑張ってきたヤツには、それなりのご褒美があってもいいもんね」 「だ~か~ら、1人で背負い込もうと、するなってぇの!」 「おっと…。サンキュ!」 「夢っていうほど、悲しいものじゃないよ、これ。何の未練もないつもりでいたけど。それでも、結局、こんな役目を引き受けて戻ってきちゃったなんて。やっぱりあたし…。心残りだったんだろうね。あんたを、置き去りにしちゃったことが…」 「うぇ…。おい、こら!空気読めっての!」 「あれを壊せば、あんたは自由になれるんだ、ほむら。インキュベーターの干渉を受けないまま、外の世界で、本当のまどかに会える!」 「まあ、よけいな邪魔が入ったからね。ちょっとした、回り道になっちゃったかな」 「何なの、あれ?欲望?執念?いや、違う…。暁美ほむら、あんたいったい…」 「あっ…」 「あんたは、何をしたか分かってるの?」 「あんたは“円環の理”の一部をもぎ取っていったんだ!魔法少女の希望だった救済の力を…」 「いったい何の権利があって、こんなまねを!」 「あんたは、この宇宙を、壊すつもりなの?」 「うっ…」 「あたしは、確かに、もっと大きな存在の一部だった。この世界の外側の力とつながっていたのに…。今はもう、あの感覚を取り戻せない」 「ここじゃない、どこかに、いたはずなのに…」 「だとしても、これだけは忘れない…。暁美ほむら、あんたが、悪魔だってことは!」 「ああ、うん…。えっと…おはよう。うん、おはよう、2人とも」 「えへへ…。いや、何だかね、恭介や仁美に、また“おはよう”って言えるなんて…それだけで、どんなに幸せか、あたし、想像もしてなかったんだってね」 「そうだよ、いつだってあたしは不思議ちゃんさ。えへへ…。フフフ…ハハ…」
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