エアコンのDIY

1.エアコンの工事と資格

コンセントなどの屋内配線、アース工事は電気工事士の資格が必要です。それ以外の作業については自分で自分のエアコンの作業を行う場合なら、何の資格もいりません。手間ひまかけて丁寧に自分のエアコン工事をしようと思う人なら、すべての人に自分のエアコン工事をする資格があります。

2.エアコン工事のDIY

エアコン工事をDIYでやるにはその先にもまだハードルがあります。
一つは費用の問題。二つ目は技術の問題。

まず、費用について
例えば安い量販店なら22型エアコン取り付け込みで6~7万。
自分でやるなら本体を通販で買うなどすれば送料入れても4万ぐらいであるだろう。
しかし、自分で取り付けるには最低でも本体代以上の道具代がかかると思う。この時点で量販店の方が安い。
さらに取り付けをミスって、ガスが漏れたりすればどうする?どうにかしてよと業者を呼ぶのか?
プロは素人の尻拭いを極端に嫌がる。そんなことなら最初から頼んでくれと言われる。
やりたくない仕事だから高く言われるに決まっている。
空気が混じってるかもしれないから冷媒を全部回収して真空引きして入れ直し、フレア加工もやり直し、出張料、1日仕事だから日当、何だかんだで4万とか言われても不思議じゃない。
それならもう1台本体が買える。だから、失敗してプロに尻拭いしてもらうようなことを考えてはいけない。

「自分で失敗したら、後始末も自分でやれ!」

これが僕のDIYにおけるモットーである。自己責任。自己完結。これにつきる。あとは自己満足。
じゃあ、どうするか。ガスの入れ替えまで自分でやるか、もうこれ以上無理と思ったら、その本体はガス保証なしでオークションに出品し、もう1台新品を買うかだ。
その覚悟がなければ自分でやろうと思ってはいけない。
大幅な出費というリスクを覚悟した上で、自己責任、自己完結でやるなら良い。

次に、技術について
同じ人間がやるんだからできないことはないはず。
特に知識についてはネット上にもたくさんの情報があり、その気になれば必要な知識は身につけられる。
ただし、やり方だけを調べるのでなく「なぜこうするのか」というところを押えないと無理。
想定外のことが起こったとき、パニックになってどうしようもなくなる。
しかし、技能については知識だけでなく経験的な部分も大きい。
3分管のフレアナットの締め方一つとっても初めてやったら普通の人は普通に失敗すると思う。
トルクはもちろんだがどう締めれば良いかを知っていなければいけない。腕力も必要。こつも必要。
何が正しいかという知識があれば、それを実現するために惜しみなく時間を割くことが必要。
極端な話、ナットを締める腕力がないと思ったら筋トレから始めるべき。
例えば新冷媒の銅管のフレア加工ならピカピカのきれいなフレアができるまで何回でも練習をやるべき。
逆に言えばDIYの強みはそこにある。

「時間だけはいくらでもかける。」

プロは趣味でやっているわけではない。一定時間内の生産性を追求しなければ生活が成り立たない。悠長なことは言ってられない。
素人はそんなのカンケーネー。いくらでも時間をかけることができる。それにかける時間そのものが趣味の時間であり、楽しみだ。
素人のくせに、時間をかけられないのならやめた方がいい。


3.エアコンの原理

ポンプダウンや真空引きやガスチャージなどの作業をする場合、エアコンの基本的な仕組みを理解していないと操作をまる覚えしたところで絶対にミスる。逆に、これを理解していれば細かいことまで覚えていなくても、どうすればよいのかが自然にわかる。

【冷凍サイクルについて】

冷房運転

 コンプレッサー → 凝縮器 (室外機)

    ↑太(低圧)  ↓細(高圧)

    蒸   発   器  (室内機)

暖房運転

 コンプレッサー ← 蒸発器 (室外機)

    ↓太(高圧)  ↑細(低圧)

    凝   縮   器  (室内機)

コンプレッサーってのはポンプであって、引く力もある。冷媒を引いて圧縮して吐き出す。
引く方の管が低圧側。吐き出す方の管が高圧側になる。
凝縮機はコンプレッサーで加圧された冷媒が来るので熱い。
蒸発器は冷媒が気化し、気化熱により冷える。(ボイル・シャルルの法則だな)
冷房と暖房は配管内の冷媒の流れが逆になり、室外機と室内機の役割も逆になる。
流れが逆になるのはコンプレッサーの回転を逆にするのではなく、四方弁(電気で言えば2回路2接点の切り替えスイッチみたいなもん)で制御する。
冷房運転時の細い配管は高圧、太い配管は低圧で理にかなっているが、暖房の時は細い配管は低圧で太い配管が高圧となっている。いいのかな。
昨今は冷房暖房を1台でやるわけなので、配管の太さは同じでもいいと思うけどね。
間違ってたらすみません。

エアコンのポンプダウンやガスチャージは、原則冷房運転で行なうので冷房運転の冷凍サイクルだけはきっちり押えておく。暖房の方は忘れた方がいい。ややこしなる。

【ポンプダウン(室外機に冷媒を回収すること)について】
移設や、撤去の時にこれをやります。
冷凍サイクルを回っている冷凍機油もちゃんと回収するには、冷凍機油がよく流れるようにするためとりあえず強制冷房運転を30分やる。まあ、暖機運転みたいなもんだな。
仕事でやってる人はそんな悠長なことはやってられないし、せいぜい10分ぐらいでしょうけど。
30分ほどたったら、もちろん強制冷房運転を継続しながら、まず、上流の高圧バルブを閉めにかかる。
すぐに完全に閉めずにある程度絞った状態でしばらく放置。絞り方にもよるが5分ぐらいかな。
これは、石油ファンヒーターの修理でも書いたが、通り道を狭くして流速を上げ、できるだけ冷凍機油が配管内に残らないようにしようという意思の現れ。あるいはまじない。
経験則によるところだが、すぐ閉めるより効果はあると思う。ただし、室内機も通るわけだし、それを過ぎれば太い低圧配管となり流速がどこまで維持されるのか定かではない。
ぎりぎりまで絞ってしつこくやっているとコンプレッサーに負担がかかりそう。
気休め程度にちょっとやればいいんじゃないかな。
その後、きっちり高圧バルブを閉じる。
そうすると何も出てこないのにコンプレッサーが引くだけになるので配管内はピューと圧力下がり、3分もすれば負圧(1気圧以下)にまでなる。
負圧になった直後に低圧バルブを閉めすぐにポンプダウンをやめる。
これでコンプレッサーオイルも冷媒もすべて室外機に封じ込められる。
低圧ゲージを使えばこういうことが目に見えて判断できるのだが、使わなければ、高圧を閉めてから、3分後に低圧を閉め、すぐに電源OFFにすれば問題なし。
両方のバルブ閉めたらコンプレッサーがしんどいので、すぐに切らないとやばいぞ。
まあ、ちょっとやそっとで壊れるってこともないだろうけどね。

4.旧冷媒、新冷媒の冷凍サイクル内の圧力

【エアコンの冷凍サイクル内の圧力】
例えば旧冷媒のR-22でさえも運転していない状態の圧力は1.5MPaぐらい。それって、15気圧!
冷房運転すると低圧側はやや下がるが通常は0.5~1.2MPaの範囲。
5気圧から12気圧という高圧。(1気圧を約0MPaとすると、気圧の表記は+1だけど、感覚として大きい圧力であるということを掴みたかったのでわかりやすいように書いた。)
外気温にもよるが、この圧力が0.5MPa以下だと冷媒不足の疑い。ガス欠かもしれない。

■代替フロン(HCFC)R-22の正常運転時のガス圧(冷房時)
低圧側(太い銅管): 0,39~0,59 Mpaのゲージ圧力
高圧側(凝縮後) : 1,57~1,96 Mpaのゲージ圧力
■新冷媒(HFC)R-410Aの正常運転時のガス圧(冷房時)
低圧側(太い銅管): 0,56~1,20 Mpaのゲージ圧力
高圧側(凝縮後) : 2,36~2,85 Mpaのゲージ圧力

これを見ても、結構幅があるんだなってわかる。何が言いたいかというと

「R-410Aってすげー圧力だな。高圧側は自動車のタイヤの10倍だぜ。」
「冷凍サイクルの圧力測ったって冷媒がどのくらい減ってるか足りてるかなんてわからんぜ。」

R-410Aは、素人が適当にやればガスがもれて当たり前だな。
冷媒の継ぎ足しというかガスチャージというか、そりゃ、厳密には無理。
厳密には全部抜いて真空にして、規定量を入れるしかない。ガスの入れ替えだ。
ただし、抜いたやつをそこらに放出したら犯罪。温暖化の罪じゃ。

冷媒ガスの変遷など
http://www.norimura.ecnet.jp/gasu.html

オゾン層破壊、温暖化という大義名分の下、どんどん冷媒が素人には使いにくいものになっている。
原則エアコンは資格の問題は別としても業者の人がやるのが自然な流れだ。
素人がやるには、よほど強い動機や意志がないとだめ。軽い気持では無理。
エアコンの工事代浮かせるためだけの動機ならばやめた方がいい。
どうしても自分でやりたいのだという強い気持ちがなければやらない方がイイに決まっている。
最低限の道具そろえるだけでも結構な出費だからね。

ともかく、ここで書いたこの程度のことは完全に頭に入っていないと室外機のコンプレッサーつぶしたり、真空ポンプ逆流させたり(逆止弁あるにせよ)、真空ゲージ振り切れさせて針曲げたり、簡単にどんどん出費がかさんでいくと思う。
趣味ということで、それも楽しめるのならいいけどね。


5.そもそも、何で自分でやりたい?(動機)

フロンからフロン22に変わった直後の1992年のこと。今から20年も前になるんだ。日立のルームエアコンRAS-50YCX2単相200Vの50型。張り込んでつけた。バブル崩壊してたが物価自体は下がっていなかったし、工事代も含めて50万位の見積もりだった。家を改装して、リビングを広くしたためにでかいエアコンが欲しかったのだ。当時としては画期的なインバーター、ニューロファジーとかマイコン制御とか言ってやたら高かった。モーターは日立と思っていたんだな。今となっては神話。個人的にはもはやどのメーカーも同じと思う。それどころか日立はマニュアルや仕様を調べるのにデータがWEB上にあまりないので印象としては良くない。電話の対応でも素人が強制冷房運転のやり方聞いたりしても教えてくれない。

それはさて置きだ。このエアコン、期待してたがほとんど効かなかった。つけたのが春。だから冷房使うまで数ヶ月あった。ためしにつけた時はそれほど暑い時期でなかったのでまあ、こんなもんかと思っていたが、いよいよ真夏になって活躍してもらおうと思ったら、「なんかイマイチ」って感じ。業者に連絡したら、一応ガスチャージしに来て、まあ、少しましになったような気がした。しかし、きりっと冷えない感じ。また業者に連絡したら、「代替フロンはこんなもんですわ。」と言われた。まあ、20年も前の話だから、記憶もあやふやだけどね。ものすごくがっかりしたのを覚えている。それからずっと8年ほど我慢しつつ使い続けた。最後の方は扇風機と同じようなもんだったな。そして、8年後、2000年にまた改装した時、捨てるかどうか迷ったが50万もしたやつだし、勿体ないからまあ、僕のDIYの根城である屋根裏部屋に移設した。効かなくても被害は僕だけが被るわけなので。移設は改装した工務店の電気屋さんがやった。その電気屋さん曰く

「一応移設しましたけど、移設前から効かなかったですね。」
「そうなんですよ。どうすりゃいいですか。」
「ガスチャージやるとしても完全に入れ替えでやった方がいいので4、5万ぐらいかかります。」
「そんなにかかりますか。」

だからチャージはやらず、とりあえず、移設だけした。8年で捨てるには忍びなかった。そんなわけで今日まで、20年間このエアコンはまともに働いたことがないのだ。僕としては、どうにかしてこいつを一度でいいからまともに働かせてみたいと常々思い続けて来た。何しろ移設してからの12年間というものは全く役に立っていない。外機の余熱に30Wほど使っていたのを最近知って、ブレーカーを落としていなかったことを今さらながら後悔した。1KWh24円とすれば12年間で7万5千円だ。それはさておき、

このエアコンの設置説明書があったけど、エアパージは真空引きじゃなく、ガス追い出し式。1992年当時としては当たり前だろう。追い出し式が全て悪だとは思わない。適切にやれば何の問題もないはず。しかし、R-22になった直後とあって、それまでのフロンとは勝手が違っていたのかもしれない。勘と経験が十分になければ危険な方法だ。多分最初の業者はエアパージも配管の接続もミスってたと思う。そうとしか思えない。まあ、ともかくこれが業者不信のはじまり。

数年前、父(嫁の)の家のエアコン2台を取り替える時に僕が業者を手配した。新冷媒ということもあり、真空引きを選定条件にした。しかし、その業者、真空ポンプを持って来なかった。キャンセルするのも面倒なのでやってもらったが、結局1台は効きが悪かったらしく、父は僕に内緒で別の電気店に発注して取り替えたという。僕の顔をつぶしてはいけないと思って内緒にしていたという。

僕は、ワンルームの賃貸マンションもやっていて、そこのエアコンがそろそろ替え時。新冷媒になってから真空引きが必須であると知り、タニヤマ無線でそれをやってくれるか聞いたら真空引きは取り付け業者によってはやらないこともあるということだった。ミドリ電化に聞くと必ずやるということだったので発注した。しかし、標準工事にフレア加工がないのか、余った配管は外機の裏でとぐろ巻いてる。

2012年11月9日に空いた部屋のエアコンを替えようと思って、ヨドバシに行った。機種は予め選定してあった。パナソニックのCS-252CFR-W¥74800基本工事込みということで買う気満々で行った。
売り場で三菱のはっぴ着た人に、パナでもいいですかって聞いてもちろんですってことなのでこれがほしいと言った。ところで真空引きについて聞くと
「原則としてやります。」
ということなので、
「やらない場合というのはどういう場合ですか。」
と聞くと
「普通はやると思います。」
という答。
「だからどういう場合にやらないのですか。」
と問いただすと、
「埋め込み配管とか、できない場合がありますから。」
「はあ?」
話にならん。それは、配管の交換ができないということだろ。真空引きとは関係ない。それにうちは埋め込み配管じゃない。だからいやなんだ。まったくおっしゃっている意味がわからん。それはそうと、
「壁のアングルに取り付けるのは別途費用がかかりますか?」と聞くと、
「別途¥10000かかります。」
「アングルは、前のエアコンのものを利用しても?」
「そうですね、高所作業などの技術料です。」
「そうですか、わるいけど、やめときます。」
と言って帰ってきた。買う気満々で行ったのにな。このようにして、エアコンに関して業者に頼む気がしなくなってしまった。
結局通販で、同機種を¥37800で仕入れ、トルクレンチをオークションで2本¥4000ぐらいで落とし、初めてなので、とりあえず教えてもらおうと思ってセントラルサービス
http://www.c-svc.com/eakon.html
エアコンDIYサポートサービスを利用したというわけ。

よく、Yahoo!知恵袋などで、エアコンの工事について、内容や価格が適切かどうかの質問をしている人が居る。その回答の中に、「文句があるんだったら自分でやれば?」というのがある。やれるもんならやってみろ、みたいな言い方であまりいい感じじゃないが、これは確かに一理ある。僕の場合、人にやってもらっても結局何だかんだと文句つけたくなるので、納得するにはもはや自分でやる以外に方法は無い。満足できるかどうかはわからないが、自分でやれば文句は言えないし納得するしかないでしょう。

長々と書いたが、これが動機。やるしかないでしょ。
最終更新:2018年10月22日 09:09