地デジ、ワンセグのリピータ(中継アンテナ)をクワトロヘンテナと広帯域アンプで製作する
2011年7月13日。久々のアップ。いろいろやっているが、やる事だけに必死で記録ができていない。しかし、今回は実に面白い製作だったので、地デジ化も近いということで旬のネタだと思うのでUPしておく。
きっかけは「お風呂でテレビが見たい。」という妻の一言。「ケータイで見れば?」と言ったがお風呂どころか家の中は窓際以外どこもだめ。家はモルタルの外壁で、モルタルの下地に金網があって、それが電波をシールドしている模様。そういやラジオも入らんな。
こうなれば、出番だ。自分の得意分野に関して依頼があれば、プライドにかけてもそれに応えたくなる。クワトロヘンテナの実力を試す時が来た。クワトロヘンテナは受信アンテナとしてではなく、電波の入って来ない室内に電波を届かせる送信アンテナとして使うのだ。
注.ブースタアンプを付けた場合、放送周波数付近では、微弱局の基準が非常に厳しく、3m離れたところで35μV/m以下でないと電波法違反になります。再現される方は電波法に違反しないよう、細心の注意を払ってください。
クワトロヘンテナは縦1/6λ、横1/3λ、周1λの矩形ループを4個つないで中央から給電するものだ。
家は京都だが地デジのチャンネルは14ch~25chで479MHz~545MHz。切のいいところで500MHzを中心周波数にしてエレメントを太くして帯域を稼ごうと思う。ループアンテナの製作記事などをいろいろ見ていると、思ったより中心周波数が下にずれる傾向にある。短縮率とか難しい理論はいろいろあるのだろうけどそんなのは無視して、経験則としては、エレメントのの外周が中心周波数に合うように作ればいい感じ。
それで縦10cm横80cmのループを4分割することにした。エレメントの太さは帯域を広くしたいので1cmにした。わかりやすい!ごちゃごちゃ考えるのは面倒だし、とにかく作ってだめなら改良すればいいのだ。
材料はこれ。東名電子だったかで昔買ったプリント乱尺基板。これはベーク板だ。
幅1cmで、20cmが8本、8cmが5本必要。(写真は4本だが組み立てたら1本足りないことに気づいた。がはは!)
マスキングテープで固定して、半田でくっつける。半田ごての温度が適温だと半田がうまく流れすぎてくっつかない。温度は低めにして半田を盛るような感じでかつ芋半田にならないようにやる。慣れればそんなに難しいものではない。
中央の給電部は5mmの幅で銅箔をめくった。
例によってフロートバランの代わりにその辺に転がっているフェライトの適当なやつを適当にはめる。
2時間ぐらいですぐできた。反対側はアンテナのコンセントに挿す。そこから出てきた電波がこのヘンテナで部屋中に送信され、満たされるというわけだ。
効果はたしかにあった。しかし、実用には無理。家は隣のアパートとアンテナを共用していて、分配がものすごいたくさんあって、アンテナコンセントに来ている電波自体が弱い。携帯電話をアンテナから20cmくらいまで近づければワンセグが写る。それ以上離すともうだめ。まあね。多分そうだろうと思ってた。
それで、ブースターを買おうと思ってD2やコーナンやミドリやコジマやタニヤマを回ったが最低でも¥4000ぐらいする。下手すると1万円。そんなのつけてられるか!ヤフーオークションならもう少し安いのがあったが時間かかるし、…。作れ!
部品箱を見ると、昔、秋月で仕入れて眠っているICが「使ってくれ!」って叫んでた。これは、ショートホープの箱に入っている。もう、タバコはやめた。
μPC1677Cは3個入ってたので、それにしよう。
これは、もう10年ほど前に製造中止になっているが、検索をかけたらまだ売っているところがあった。
イーエレという通販専門のマニアックな部品屋さん。ICのカタログを見ると、懐かしい名前のやつがたくさんある。
μPC1677Cもまだ400個以上あるみたい。面白いな。ここのカタログ見てると、昔トラ技の後ろの方の秋月のかわら版やサトー電気の細かい字を飽きもせずにずっと見ていた頃を思い出す。昭和の匂いがする。中国赴任体験記なんて読み物もある。面白い。
最近はこの種のデバイスは携帯電話などで使われるから信じられないほど高性能で小さくなっている。でも、半田付けする前に拡大鏡を買わないと見えないだろう。老眼鏡では歯がたたん。
秋月のサイトをちょっと見たら、今売っているのはμPC1659G他数種類。やはりチップ部品で小さい。しかし、いくらでも手に入りそうだ。インターネット通販で、自作環境は以前に比べれば格段に良くなってきている。
因みにヤフオクで使えそうな広帯域アンプICを検索すると、けっこう出品されている。
使えそうな広帯域アンプをヤフオクで物色する
利得は標準で24dB。1段で足りるか?
入力2mWで出力89mWとなりクリップ。そんな使い方はもちろんしない。入力10mWでオシャカ。ダイオードリミッタつける?いいさ。壊れたらまた別の方法で作る。
外付け部品は適当なコイル1個とコンデンサ数個でいい。
帯域は余裕。0.5G(500MHz)は最も得意とするような感じ。
1段でやったが結局実用にはならなかったので2段にした。普通に作れば100%発振だ。
そこは経験則。入出力を分離して、電源供給の線にはビーズを入れ、パスコンで高周波をアースし、段間は3dBパッドで大幅にマッチングがずれたりしないようにする。
入力部。
出力部。右側は電源部。7805で5Vを供給。これで一応実験したところでは、実用になりそうだ。やや発振気味。
僕がこれらのノウハウを学んだのは、この本だ。これはすごい。理屈だけじゃなく実際にやった内容が書いてあるからすごい。3dBパッドのことはこの本で学んだ。
75オームの場合の3dBパッド。
利得がありすぎて発振気味なので入出力にもパッドをつける。これは出力部。赤い電源コードはFB802で高周波を遮断。ICの電源端子にはパスコン。高周波をアースにバイパス。ガラエポとかチップ部品とかどうでもいい。やることをちゃんとやっとけばGHzでも、ベーク板でも昔の部品でも空中配線でも発振しない。空中配線だから発振しないとも言える。3次元的に最短距離でつなぐことができるからね。
これは、入力部のパッド。
電源部。ケミコンとパスコン。適当。どーでもいい。こんなこと、たいした手間じゃない。部品は少ないし。この後が問題。
仕切るわけです。とにかく出力の電波が入力に戻らぬように仕切る。
結局全部仕切って蓋まで半田付けした。分解するときは半田付けをとらないといけない。
横から。
別角度。
ACアダプタとか、いろいろ全セット。
テレビに入っている電波を分配器でこのアンプに入れようと思っていたが、この分配器、以前中身を取り出したらしく、もぬけの空だった。そういう時は作る。作るって言っても抵抗3本でできる。
多少の損失はあるが下手にコイルやコンデンサを使うよりよほど確実。BSまで何の問題もなく分配できる。ほんとは、こんなケースなんて要らない。線と抵抗を直接半田付けしてテープ巻いときゃいいんだ。
クワッドヘンテナは、クローゼットの中に据え付けた。
テレビの裏のアンテナ線を分配してアンプに入れるんだけど、テレビの裏って、ぐちゃぐちゃだな。ビデオとか、DSとか、コンポとかいろいろあるんで、ほんとにひどい。まあ、とにかくつないだ。
すると、ワンセグの電波の強さが3本になりました。お風呂でも3本。
試しにアンプの電源を切ると、電波は×となり、
しばらくするとモザイク状態となってやがて消え行くことになる。これまで家中そういう状態だった。それが、クワトロヘンテナリピーターで家中どこでも大体良好に受信できるようになった。これはおもろい!大成功。ワンセグどころか、フルセグも、家中どこでも室内アンテナで見ることができる感じ。画期的じゃ!もちろんその室内アンテナはヘンテナで。それも1ループで十分な気がする。そのうち実験やってみる。地デジ電波は、比叡山という見通しがきくローカル中継局から来ているので、クワトロヘンテナを受信アンテナとして使えるかどうかもやってみたい。そのうち実験やってみる。
因みに、テレビでアナログ放送を見て、アンプを点けたり切ったりして、TVIを確認したが、VHFの最も低い周波数の1、2chで若干の画像の乱れがあったものの他のチャンネルではTVIは無いようだ。もちろんUHFは全く問題なし。ヘンテナの真横にテレビがあるので、発振していたらアナログどころか、地デジでさえ映らない。TVIがほとんど無いので、スプリアスはそれほど出ていない。つまり出力はクリップしていない。
FMラジオの聞こえかたも良くなったような気がする。周波数はかなり違いますけど。
最後に、
出力が出すぎている場合は電波法違反となります。多分僕がやったのは駄目だと思います。僕はあくまで実験的にちょこっとやっただけで、恒常的に実用しているわけではありません。このやり方を推奨しているわけでもありませんので念のため。実用化しようという方が居られたら、ちゃんとした電界強度計で3mはなれた位置の電界強度を測って、放送周波数帯の基準35μV/m以下という微弱局の範囲に収まるように細心の注意を払ってアッテネータを調整する必要があります。
と、申し上げておきます。
しかし、実際不可能に近い?ウィキペディアにはそう書いてあった。
メーカーはそれこそ特定小電力で技適取って周波数を変えて再送信するほんとのリピーターとして売り出せば売れるんじゃないかと思うけど、あまり見かけませんな。バッファローからワンセグ受信用 室内延長アンテナというのが出てますが、これはブースターなし。
「※本製品をブースターと組み合わせて使用することはできません。電波法に抵触します。」
とまで書いてある。しかし、実際問題、マンションのように共用アンテナの場合、アンテナ直下でブースターが入っているからその場合は電波法違反になるのか?それは大丈夫だろう。あくまで、このアンテナに直接ブースターを付けるなよって事だろ。以前ブースターと組み合わせた製品が出ていたように思うが、消えている。ということは、これって電波法違反なのかな。そうだろな。放送局に免許されてる周波数の電波は、相当弱くないと送信してはいけないような気がする。でも、FMトランスミッターとか結構出回ってる。まあその周波数帯は、500μV/m以下だからけっこう規制がゆるい。
もうすぐ地デジ化。ビル陰、室内、交通機関内でフルセグやワンセグが思うように受信できない場合が噴出しそう。そういうときに合法的で安価なリピーター(中継アンテナ)が売り出されれば、役に立つと思いますが。出力リミッタなどで基準内に収めることは簡単にできると思うんですが問題があるんでしょうかね。電波は資源で、むちゃくちゃやる奴が出るととんでもない混乱になるので当局も頑張っておられるようです。しかし、ちゃんとしたところがちゃんとしたものを作って売り出せばみんな喜ぶと思います。それも認めないから裏で僕みたいな人間が怪しいことやりだすんじゃないでしょうか。しかし、これを読んだ人、電波法違反は絶対にやめましょう。僕もこれを書いていろいろ調べているうちにこれはマズイなと思えてきました。2.4Gのクワトロヘンテナも、無線LANのアンテナにしないでくださいね。
最終更新:2015年02月02日 23:27